説明

肺炎連鎖球菌PBP2xのミニタンパク質およびその使用

肺炎連鎖球菌PBP2xに由来し、ミニPBP2xと呼ばれ、R6株のPBP2xタンパク質の配列(SWISSPROT P14677またはGENBANK 18266817)を参照して、74〜90位、186〜199位、218〜228位および257〜750位に位置するアミノ酸にそれぞれ対応するフラグメントの連鎖からなり、当該フラグメントのそれぞれの前に、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントが存在する改変された組換えタンパク質、および肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に対して活性である抗生物質を選択および同定するためにこのミニPBP2xタンパク質を使用すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)のPBP2xに由来する改変組換えタンパク質(ミニPBP2xと呼ぶ)に関し、また肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に対して活性である抗生物質を選択および同定するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質に対する耐性は、抗感染治療において主要な問題を代表する。ここ数年、60年以上もの間世界中で最も一般に使用されている抗生物質を代表するβ−ラクタムファミリーの化合物(ペニシリンおよびセファロスポリンなど)に非常に耐性である細菌株が出現する数が増加していることが観察されている。現在では、上気道の主要な病原体の1つである肺炎連鎖球菌の臨床分離株の21%が、β−ラクタムに対して非常に耐性である(最小阻害濃度(MIC)>2μg/ml;Doernら、Antimicrob.Agents Chemother,2001,45,1721-1729)。
【0003】
β−ラクタムの標的は、細菌壁ペプチドグリカンの合成の本質的工程を触媒する膜タンパク質であるPBP(ペニシリン結合性タンパク質)である。それぞれの細菌種はいくつかのPBPを有し、その分子量は30kDa〜100kDaの間で変化する。
【0004】
高分子量PBPは、短い細胞質ドメイン、単一の膜貫通ドメインおよび大きな細胞周辺腔ドメインを含み、クラスA(トランスペプチダーゼ活性およびグリコシルトランスフェラーゼ活性(橋架け)の両方を有する)およびクラスB(未知の機能のN末端ドメインおよびトランスペプチダーゼ活性が局在するドメインを有する)に分けられ、これらは、それぞれのクラスのPBPについて保存されているアミノ酸の単位により容易に同定可能である。
低分子量PBPは、本質的にはカルボキシペプチダーゼ活性を保有する。生化学的研究により、高分子量PBPのみが細菌生存に必須の多機能性酵素であり、他方、低分子量PBPは、必須でなく細菌壁の橋架けの程度のみを調節することが示されている。
【0005】
β−ラクタムの作用の方法は、β−ラクタムの環とペプチドグリカンのペプチドのC末端部のD−アラニル−D−アラニンとの間の構造的相似に基づく。β−ラクタムはトランスペプチダーゼの偽基質であり、このトランスペプチダーゼの活性部位のセリン残基をアシル化することができ(トランスペプチダーゼはその後非常にゆっくりと脱アシル化される)、よってペプチドグリカン合成を撹乱する。
【0006】
グラム陽性菌におけるβ−ラクタム耐性の機構は、本質的には、β−ラクタムが標的(PBP)に到達する前にβ−ラクタムの環を加水分解するβ−ラクタマーゼの産生、膜透過性の変化およびPBPの改変を含む。
肺炎連鎖球菌は、そのPBPを改変することによりβ−ラクタム耐性を発現する。PBP遺伝子における点変異と、これら遺伝子と関連連鎖球菌株(S.mitis、S.oralis)の遺伝子との相同組換えの事象との組合せにより、β−ラクタムに対して低いアフィニティを有するPBPの産生が生じる。
【0007】
肺炎連鎖球菌のPBPの中で、肺炎連鎖球菌の生存に必須でありβ−ラクタムに対する耐性の主因を構成する(Hakenbeckら、J.Bacteriol.,1998,180,1831-1840)PBP2xタンパク質は、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に対して活性である新規な抗生物質を同定するための主要な標的を代表する。
PBP2xは、細胞質領域(1〜18位)、膜貫通領域(19〜48位)、非ペニシリン結合性ドメイン(またはn-PB、49〜265位)、ペニシリン結合性ドメイン/トランスペプチダーゼドメイン(266〜615位)およびC末端ドメイン(616〜750位)を含む750アミノ酸タンパク質である。
PBP2xの構造−機能分析により、β−ラクタムに対するPBP2xの耐性の分子機構を特定することが可能になった(Mouzら、P.N.A.S.,1998,95,13403-13406;J.Biol.Chem.,1999,274,19175-19180)。
【0008】
PBP2xの三次元構造は、細胞質領域および膜貫通領域の欠失を含むPBP2x(PBP2x*と呼ぶ)から決定されている。この構造は、肺炎連鎖球菌(R6株:Paresら、Nature Struct.Biol.,1996,3,284-289;Gordonら、J.Mol.Biol.,2000,299,477-485)のβ−ラクタム感受性株および耐性臨床分離株(Dessenら、J.Biol.Chem.,2001,276,45106-45112;データベースPROTEIN DATA BANK(http://www.rcsb.org/)の受入番号それぞれ1PMD、1QMEおよび1K25)について、それぞれ3.5、2.4および3.2Åの解像度で決定されている。
感受性株(R6株)のPBP2x*とβ−ラクタム(セフロキシム)との間の複合体の三次元構造もまた、2.8Åの解像度で決定されている(データベースPROTEIN DATA BANKの受入番号1QMFおよびGordonら、J.Mol.Biol.,2000,299,477-485)。
【0009】
しかし、特に、ネイティブのPBP2x(野生型、β−ラクタムに対して感受性)、PBP2x−阻害剤複合体およびPBP2xのβ−ラクタム耐性変種について良好な回折パワー(2.5Å)を有する結晶を得ることが困難であるために、現在利用可能なデータでは、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に対して活性である新規な抗生物質作用分子を同定することは可能になっていない。
具体的には、2.4Åで回折するPBP2x結晶(1QME、Gordonら、J.Mol.Biol.,2000,299,477-485)の分析により、これらが、182位の残基と183位の残基との間のペプチド結合で部分的にタンパク質分解される形態のPBP2xを含むことが示されている。この形態のPBP2xは、結晶化プロセスの間に、数ヶ月間25℃にPBP2xタンパク質を曝露することから生じる再現不可能な実験条件下で得られた。
【0010】
本発明者らは、モデルとして、その三次元構造が既知である肺炎連鎖球菌のペニシリン感受性株(R6株)のPBP2xを選択して、再現可能な様式でより結晶化可能でありしかもより良好な回折パワーを有するPBP2xを得ることが可能であるか否かを研究してきた。
このようにして、本発明者らは、PBP2xの酵素的特性(β−ラクタムへの結合およびトランスペプチダーゼ活性)を改変しない、n-PBドメイン(PBP2xの50〜265位)に対応する領域中の追加の欠失により、より良好な質の回折を有する結晶を容易に得ることができることに気付いた。
考案したアプローチは、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム感受性または抵抗性の株に由来する任意のPBP2xに適用可能である。
このミニタンパク質は、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に対して活性である新規な抗生物質の選択および同定に完全に適したツールを代表する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の主題は、肺炎連鎖球菌R6株のPBP2xタンパク質の配列(SWISSPROT P14677またはGENBANK 18266817)を参照として、74〜90位に位置するアミノ酸、186〜199位に位置するアミノ酸、218〜228位に位置するアミノ酸、および257〜750に位置するアミノ酸にそれぞれ対応するフラグメントの連鎖(concatenation)からなり、フラグメントの各々の前に、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントが存在することを特徴とする肺炎連鎖球菌PBP2x由来のタンパク質である。
本発明に従うタンパク質は、以後本明細書中で、PBP2xミニタンパク質またはミニPBP2xと呼び、したがって、これは、上記に規定のような1〜73位、91〜185位、200〜217位、および229〜256位にそれぞれ位置するアミノ酸の欠失、ならびに、これら欠失の代わりとして、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントの挿入を含む。
このミニPBP2xタンパク質の有利な実施形態によれば、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントは、上記に規定のような74位、186位、218位および257位の残基に関しては−1〜−7位に位置するアミノ酸および/または上記に規定のような90位、199位および228位の残基に関しては+1〜+7位に位置するアミノ酸に対応する肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質の配列のアミノ酸を含む。
このミニPBP2xタンパク質の別の有利な実施形態によれば、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントは、側鎖の体積が小さいアミノ酸、例えば、アラニン(A)、セリン(S)、グリシン(G)またはスレオニン(T)を含む。
【0012】
本発明の目的のためには、肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質は、以下の特徴によって規定される。
・肺炎連鎖球菌R6株のゲノム中でNCBI受入番号AE008411またはGENBANK受入番号15457852を有する遺伝子座の2263位〜4515位に位置する遺伝子に対応するpbpXと呼ばれる遺伝子によってコードされる;
肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質は、クラスBのPBPに特異的な以下のアミノ酸単位(一文字表記)を含む:
M1: RGXhX(D/S)RSGXXXA
M2: (R/K)XXPXG
M3: (G/Y)hEXXXDXXL
M4: hXX(S/T)hDXXXQ
M5: T(G/S)EhhXXXXSPXh(D/N)
M6: hEP(A/G)SXXK
M7: hXXSXNh
M8: K(T/S)G
上記配列中、下線を付したアミノ酸は、クラスBのPBPの配列中で厳密に保存される。「/」は、選択肢を表し、例えば、D/Sはアスパラギン酸またはセリンを表す。「x」は任意のアミノ酸を表す。「h」は疎水性アミノ酸を表し、他の文字はその位置で最も一般的に遭遇するアミノ酸を表す。そして
肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質の配列は、全体にわたって、R6株の配列(SWISSPROT P14677)と、少なくとも30%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性、または少なくとも85%の類似性を示す。
【0013】
参照配列に対する配列の同一性は、それらの間に最大の対応関係が得られるように2つの配列を整列させたときに同一であるアミノ酸残基の割合の関数として評価する。
参照配列と少なくともX%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、本発明において、その配列が参照配列の100アミノ酸あたり(100−X)までの変更を含むことができる一方で、同時に参照タンパク質の機能的特性を保存するタンパク質として規定される。本発明の目的のためには、用語「変更」は、参照配列中のアミノ酸の欠失、置換または挿入(これらは連続しているかまたは散在している)を含む。
【0014】
参照配列に対する配列の類似性は、それらの間に最大の対応関係が得られるように2つの配列を整列させたとき、同一であるかまたは保存的置換により異なるアミノ酸残基の割合の関数として評価する。本発明の目的のためには、用語「保存的置換」は、類似の化学特性(サイズ、電荷または極性)を有する別のものとのアミノ酸の置換を意味することを意図される。この置換は、一般には、タンパク質の機能的特性を改変しない。
参照配列と少なくともX%の類似性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、本発明において、その配列が参照配列の100アミノ酸あたり(100−X)までの非保存的な変更を含むことができるタンパク質として規定される。本発明の目的のためには、用語「非保存的変更」には、参照配列中のアミノ酸の欠失、非保存的置換または挿入(これらは連続しているかまたは散在している)が含まれる。
【0015】
本発明は、肺炎連鎖球菌の任意のβ−ラクタム感受性株または耐性株、特にβ−ラクタム耐性臨床分離株のPBP2xに由来するミニPBP2xを包含する。限定的でない例としては、Laibleら(Mol.Microbiol.,1989,3,1337-1348)の論文に記載のβ−ラクタム耐性株C506を挙げてもよい。
ミニPBP2xタンパク質の有利な実施形態によれば、それは、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に由来する。
ミニPBP2xタンパク質の別の有利な実施形態によれば、それは、β−ラクタム感受性肺炎連鎖球菌R6株のPBP2x(SWISSPROT P14677)の上記に規定のようなフラグメントの連鎖からなり、配列番号1の配列を有する。
ミニPBP2xタンパク質の別の有利な実施形態によれば、それは、少なくとも1つのメチオニン残基のセレノメチオニン残基との置換を含む。
ミニPBP2xタンパク質の別の有利な実施形態によれば、それは、リガンドと、特にミニPBP2x/リガンド複合体の形態で、会合している。
本発明に従えば、リガンドは、有機分子、特にタンパク質(例えば抗体)、または無機分子からなる。リガンドは、特に基質、例えば、ミニPBP2xタンパク質とその活性部位を介して結合でき、ミニPBP2xの活性を阻害することができる偽基質である。
ミニPBP2xタンパク質のさらに別の有利な実施形態によれば、それは、結晶の形態である。
本発明に従えば、結晶は、遊離形態かまたは上記に規定のようなリガンドと会合したミニPBP2xからなる。
本発明に従えば、ミニPBP2xの結晶化の条件は、浮遊液滴法(suspended drop technique)により決定される。例えば、ミニPBP2xの結晶は、以下の条件下で得られる:ミニPBP2x(12mg/ml)、100mM Hepesナトリウム(pH7.5)、2%V/V PEG 400、2M硫酸アンモニウム、8℃の温度にて。
【0016】
肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株からのPBP2xのフラグメントからなるミニPBP2xは、新規な抗生物質をスクリーニングおよび同定するために有用である。肺炎連鎖球菌の感受性株からのPBP2xのフラグメントからなるミニPBP2x、特に配列番号1の配列のミニPBP2xは、抗生物質のスクリーニングおよび同定におけるコントロールとして有用である。
【0017】
本発明の主題はまた、上記に規定のようなミニPBP2xタンパク質の少なくとも7アミノ酸のフラグメントからなり、上記に規定のような74位、90位、186位、199位、218位、228位および257位に位置する残基から選択される少なくとも1つの残基を含むことを特徴とするペプチドである。このペプチドは、ミニPBP2xを特異的に認識する抗体を産生するために特に有用である。
例えば、ペプチドが7アミノ酸を有し、3位に、上記に規定のようなミニPBP2xタンパク質の74位に対応する残基を含む場合、このペプチドは、当該ミニPBP2xタンパク質を参照して(74−2)位から始まり(74+4)位で終わり、以下の配列を有する:Ala-Lys-Arg-Gly-Thr-Ile-Tyr。
これらペプチドはすべて、本発明のミニPBP2xタンパク質に特異的である。なぜなら、これらは接合部の位置に対応し、すなわちこれらは上記に規定のような1〜7アミノ酸のフラグメントを常に含むからである。
【0018】
本発明の主題はまた、上記に規定のようなペプチドを指向することを特徴とする抗体である。
本発明に従えば、抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれかである。
これら抗体は、それ自体は公知である従来の方法により得ることができる。その方法は、特に、本発明に従うタンパク質またはペプチドを指向する抗体を産生するようにさせるために動物をそのタンパク質またはペプチドで免疫することを含む。
この抗体は、固体支持体にミニPBP2xを固定化するために、あるいは抗体−ミニPBP2x複合体の形態でミニPBP2xを同時結晶化するために特に有用である。
【0019】
本発明の主題はまた、センスまたはアンチセンスである、上記に規定のようなミニPBP2xをコードする配列および前記配列に相補的な配列からなる群より選択されることを特徴とする単離核酸分子である。
本発明の主題はまた、PBP2xをコードする配列を特異的に増幅することを意図されるプライマーであって、配列番号2〜3の一対の配列からなる群より選択されることを特徴とするプライマーである。
本発明の主題はまた、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントとPBP2xのフラグメントとの接合部に位置するヌクレオチドに対応する約10〜30ヌクレオチドの配列を含むことを特徴とするプローブおよびプライマーである。これらプローブおよびこれらプライマーにより、ミニPBP2xをコードする核酸分子を特異的に検出/増幅することが可能になる。
プローブおよびプライマーの有利な実施形態によれば、これらは、配列番号4〜9の配列からなる群より選択される配列を有する。
本発明に従う核酸分子は、それ自体は公知である従来の方法により、Current Protocols in Molecular Biology(Frederick M.AUSUBEL,2000,Wiley and son Inc,Library of Congress,USA)に記載されたプロトコルのような標準的なプロトコルに従って得られる。
【0020】
PBP2xをコードする配列は、PCRまたはRT-PCRによる核酸配列の増幅によって、あるいは相同プローブでのハイブリダイゼーションによりゲノムDNAライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる。例えば、これらは、適切な一対のプライマー(例えば、配列番号2〜3の一対の配列)を使用するPCRにより増幅される。
ミニPBP2xをコードする誘導核酸分子は、核酸配列中に変異を導入することを可能にする従来の方法(これ自体は公知である)によって、上記の標準的プロトコルに従って得られる。例えば、ミニPBP2xをコードする配列は、上記に規定のような配列番号4〜7のプライマーを使用して、Kunkelら(P.N.A.S.,1985,82,488-492)の方法に従う部位特異的変異誘発、次いで上記に規定のような配列番号8および9のプライマーを使用するPCR増幅によって得ることができる。
【0021】
本発明の主題はまた、ミニPBP2xをコードする核酸分子および上記に規定のようなそれらのフラグメントからなる群より選択される挿入物を含むことを特徴とする組換えベクターである。
好ましくは、組換えベクターは、核酸分子またはそのフラグメントの1つが転写および翻訳を調節する適切なエレメントの制御下に配置されている発現ベクターである。加えて、このベクターは、挿入物の5'および/または3’末端とインフレームで融合し、そのベクターから発現するタンパク質を固定化および/または検出および/または精製するために有用である配列(タグ)を含んでもよい。
好ましくは、発現ベクターは原核生物のベクターである。
これらのベクターは、それ自体は公知である組換えDNAおよび遺伝子操作の従来方法によって、構築され宿主細胞中に導入される。
【0022】
本発明の主題はまた、上記に規定のような組換えベクターで形質転換した細胞である。
本発明の有利な実施態様によれば、その細胞は原核細胞である。
上記で規定したような組換えベクターおよび形質転換細胞は、ミニPBP2xおよび上記で規定したような誘導ペプチドを製造するために特に有用である。
【0023】
本発明の主題はまた、抗生物質をスクリーニングおよび同定するために上記に規定のようなミニPBP2xを使用することである。
本発明の有利な実施形態によれば、スクリーニングは以下の工程を少なくとも含む方法によって実施される:
1)上記に規定のようなミニPBP2xを試験物質に接触させる工程、
1)試験分子とミニPBP2xとの結合および/またはこの結合に基因するミニPBP2xの活性の阻害を任意の適切な手段で検出する工程、および
1)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害することができ、抗生物質として使用可能である活性物質を選択する工程。
【0024】
試験分子とミニPBP2xとの結合は、特に発色団または蛍光体で予め標識したリガンド、例えば、発色団とカップリングさせたセファロスポリン(ニトロセフィン)を用いて活性セリン(R6株のPBP2xの配列を参照としてS337)で共有結合できる分子を検出することを可能にする従来の結合アッセイを使用して、あるいはJaminら(Biochem.J.,1993,292,735-741)の論文に記載されたようにミニPBP2xの固有蛍光の減少を測定することによって測定することができる。
ミニPBP2xの酵素活性の阻害は、チオールエステル基質の加水分解の阻害を測定することによるか、またはZhaoら(J.Bacteriol.,1997,179,4901-4908)の論文に記載されたような従来の技法を使用して活性セリンのアシル化の効率を測定することによって決定することができる。
【0025】
本発明の別の有利な実施形態によれば、同定は、以下の工程を少なくとも含む方法により実施される:
2)上記に規定のようなミニPBP2xから結晶を調製する工程、
2)a2)で得られた結晶からミニPBP2xの三次元構造を決定する工程、および
2)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害でき、抗生物質として使用可能である活性物質を同定する工程。
本発明に従えば、
− 結晶は、浮遊液滴法により、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム感受性株または耐性株からのPBP2xに由来する遊離ミニPBP2xから、あるいはミニPBP2x/リガンド複合体から調製され;
− ミニPBP2xの三次元構造は、それ自体は公知である従来技法(例えば、核磁気共鳴およびX線回折)により決定され;
− PBP2x阻害剤は、遊離ミニPBP2xまたはミニPBP2x/リガンド複合体の構造のモデリングにより同定される。
【0026】
有利には、
− 工程a2)に従うミニPBP2xを、リガンドの存在下または非存在下で、温度によるかまたは化学物質による変性工程を含む事前処理に付し、続いて適切な条件下での再生工程に付し;
− 工程a1)またはa2)に従うミニPBP2xは、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株からのPBP2xの上記に規定のようなフラグメントの連鎖からなり;そして
− 工程b1)で実施される検出またはそれぞれ工程b2)およびc2)で実施される決定および同定は、肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム感受性株からのPBP2xの上記に規定のようなフラグメントの連鎖からなるミニPBP2xとの比較より実施する。
【0027】
本発明の主題はまた、上記に規定のような少なくとも1つのタンパク質、少なくとも1つのペプチド、少なくとも1つの抗体、少なくとも1つのベクター、少なくとも1つの細胞、少なくとも1つのプローブまたは少なくとも1つのプライマーを含むことを特徴とする、上記に規定のような方法を実施するためのキットである。
本発明に従うミニPBP2xは、すべてのPBP2xについて、容易に結晶化可能である可溶な機能的形態で大量に製造することができ、以下の利点を有する:
− 機能的アッセイを使用する新規な抗生作用分子の系統的スクリーニング(高スループットスクリーニング)に適切であり、
− PBP2xのβ−ラクタム耐性変種の構造−機能研究および新規な抗生作用分子の合理的設計(分子モデリングまたは薬物設計)に適切である。
【0028】
上記構成の他に、本発明はまた以下の記載から明らかになる他の構成を含む。以下の記載は、本発明の主題であるミニPBP2xの使用の例および本出願人の配列を要約する表Iおよび添付の図面に言及する。添付図面において、
− 図1は、β−ラクタム感受性の肺炎連鎖球菌R6株のPBP2x(SWISSPROT P14677)に由来するミニPBP2xのアミノ酸配列(配列番号1)を説明する。ミニPBP2xで欠失されたPBP2xのアミノ酸は、ダッシュ記号で置き換えられており、このペプチドフラグメントの挿入されているアミノ酸は、イタリック体で表されている。クラスBのPBPに特異的な単位には下線を付している。
【表1】

しかし、これらの例は、本発明の主題の説明のためにのみ提供されるのであり、それらはいかなる意味においても限定を構成しないことを明確に理解すべきである。
【実施例】
【0029】
実施例1:組換えミニPBP2xの製造
1)ミニPBP2xの発現用ベクターの構築
a)材料および方法
ミニPBP2xの発現用ベクターを、β−ラクタム感受性の肺炎連鎖球菌R6株のPBP2x*(GENBANKアミノ酸配列P14677のPBP2xのフラグメント49〜750、GENBANKヌクレオチド配列X16367に対応)をコードする配列を含むプラスミドpGEX-S-PBP2x*-f1(Mouzら、J.Biol.Chem.,1999,274,19175-19180)から構築した。
49〜73位、94〜183位、200〜217位および230〜256位に位置するアミノ酸の欠失および当該欠失の代わりにそれぞれ連結フラグメントGly-Ser-Gly、Gly-Gly、GlyおよびGly-Gly-Glyの挿入を、Mouzら(J.Biol.Chem.,1999,274,19175-19180)に記載のようなプロトコルを使用して、Kunkelら(P.N.A.S.,1985,82,488-492)の方法に従う部位特異的変異誘発により実施した。
【0030】
より正確には、pGEX-S-PBP2x*-f1と呼ばれるファージミドが単鎖に変換され、次いで変異誘発工程(欠失および挿入)のためのマトリクスとして使用される。変異誘発工程を2段階で実施した。第1段階にはオリゴヌクレオチドMini 1(配列番号4)およびMini 3(配列番号6)を用い、第2段階にはオリゴヌクレオチドMini 2(配列番号5)およびMini 4(配列番号7)を用いた。
Mini 1
5'-CATAAATAGTCCCACGTTTGGCCCCGGATCCACGCGGAACCAG-3'
このオリゴヌクレオチドにより、PBP2xの49位〜73位に位置するアミノ酸に対応するヌクレオチド配列を欠失させることおよびその欠失に代えてペプチドGly-Ser-Glyに対応する連結フラグメントを挿入することが可能になる。
Mini 2
5'-GTTTGGGTAACTACGATTGGGACCTCCAGAGGTTGCATCCTCAGCAATCGG-3'
このオリゴヌクレオチドにより、PBP2xの94位〜183位に位置するアミノ酸に対応するヌクレオチド配列を欠失させることおよびその欠失に代えてペプチドGly-Glyに対応する連結フラグメントを挿入することが可能になる。
Mini 3
5'-GTTCAAGGAACTCTCCATTCCACCGCCGATAAAACTAGAAGCAAATTG-3'
このオリゴヌクレオチドにより、PBP2xの200位〜217位に位置するアミノ酸に対応するヌクレオチド配列を欠失させることおよびその欠失に代えてペプチドGlyに対応する連結フラグメントを挿入することが可能になる。
Mini 4
5'-TGTATAAACATCCTTACCGTCCCCACCTCCCCCTGCAAGAATACTGTTC-3'
このオリゴヌクレオチドにより、PBP2xの230位〜256位に位置するアミノ酸に対応するヌクレオチド配列を欠失させることおよびその欠失に代えてペプチドGly-Gly-Glyに対応する連結フラグメントを挿入することが可能になる。
【0031】
このようにして得られたプラスミドをpGEX-S-ミニPBP2x-f1と名付け、マトリクスとして使用して、ミニPBP2xに対応するDNAフラグメントをPCR増幅し、市販のベクターpET30b(NOVAGEN)中へのクローニング用のNdeIおよびXhoI制限部位を末端に導入した。PCR増幅に使用したオリゴヌクレオチドは以下のとおりである:
オリゴMini2x NdeI(配列番号8)
5'-CCGCATATGGCCAAACGTGGGACTATTTAT-3'
オリゴMini2x XhoI(配列番号9)
5'-GGCTCGAGTTAGTCTCCTAAAGTTAATGTAAT-3'
このようにして得られたpET30b-ミニPBP2xと名付けられた発現ベクター中のミニPBP2xのヌクレオチド配列を、自動配列決定により確認した。
【0032】
b)結果
自動配列決定より得られたヌクレオチド配列から推定されるペプチド配列は、ミニPBP2xについて予測された配列に対応する配列番号1の配列(図1)を有する。
ミニPBP2xは、PBP2x(SWISSPROT受入番号P14677)の74〜93位、184〜199位、218〜229位および257〜750位に位置するアミノ酸にそれぞれ対応するフラグメントの連続からなる。各フラグメントの前には、それぞれ、連結フラグメントGSG、GG、GおよびGGGが存在する。
【0033】
2)ミニPBP2xの製造および精製
a)材料および方法
ミニPBP2xを、実施例1.1に記載の発現ベクターを使用してE.coli中に製造し、次いで連続してQ-Sepharose、Resource QおよびSuperdex 200カラムでのクロマトグラフィーにより精製する。得られた生成物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により、そして質量分析(エレクトロスプレーイオン化質量分析、ESI-MS)により分析する。
より正確には、プラスミドpET30b-ミニPBP2xで形質転換したE.coli BL21株(DE 3)の2リットルの培養物を、光学密度1(600nm)で、16℃にて15時間誘導する。遠心分離後、細菌ペレットを、プロテアーゼインヒビターを含有する500mlの緩衝液A(20mM Tris HCl(pH8.0)、20mM NaCl、1mM EDTA)で洗浄し、次いで50mlの同じ緩衝液に再懸濁する。
【0034】
超音波処理(氷/エタノール床で6分)後、50mlの細菌溶解物を、40000gで+4℃にて20分間遠心分離し、得られた上清を、緩衝液Aで予め平衡化した20mlイオン交換カラム(Q-Sepharose、AMERSHAM-PHARMACIA)に充填する。直線ナトリウムグラジエントを、緩衝液B(20mM Tris HCl(pH8.0)、300mM NaCl、1mM EDTA)で作成する。ミニPBP2xタンパク質を38%緩衝液Bから溶離する。溶離画分を、PBP2x*を指向するウサギポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロッティングにより分析し、次いで併せてプールする。ミニPBP2xを含有する画分のプールを、NaClを含まない緩衝液Aに10倍に希釈し、次いで緩衝液Aで予め平衡化した6ml Resource Qカラム(AMERSHAM-PHARMACIA)に充填する。直線ナトリウムグラジエントをその緩衝液で作成する。ミニPBP2xタンパク質を、55%の緩衝液Bから溶離する。溶離ピークに対応する画分を、SDS−15%PAGEにより分析する。最も純粋な画分を併せてプールし、得られたプールを2〜4mlの容量まで濃縮し、次いで10mM Hepes緩衝液(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA中で予め平衡化したゲルクロマトグラフィーカラム(Superdex 200,16/60,AMERSHAM-PHARMACIA)に充填する。ミニPBP2xを60kDaの見かけの質量に対応する溶離容量の対称ピークに溶離させる。
【0035】
b)結果
このようにして得られたミニPBP2xタンパク質の調製物は、95%より高い純度を有する。精製ミニPBP2xタンパク質の最終収率は、調製物に依存して、10〜15mg/リットル培養物である。
ゲルクロマトグラフィーによる精製によって、オリゴマー化に関してこのタンパク質が均質であることを反映する対称的な溶離ピークの存在が示される。溶離容量はモノマータンパク質に対応する。
ミニPBP2xタンパク質は、沈降することなく15mg/mlまで濃縮することができるので、優れた溶解性を示す。
質量分析による分析によって、アミノ酸配列から算出した分子量に対応する59465Daの分子量を有する均質なタンパク質の存在が示される。
【0036】
実施例2:ミニPBP2xの物理化学的特性および酵素特性の分析
1)材料および方法
実施例1で得られた精製ミニPBP2xの物理化学的特性および酵素特性を、Mouzら(P.N.A.S.,1998,95,13403-13406)に記載されるようなPBP2xの変種のそれらと同様な方法で測定した。
より正確には、
a)分子量
分子量をESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)により決定した。
b)等電点
理論上の等電点を、ミニPBP2xのアミノ酸組成から決定した。
c)消衰係数
モル消衰係数を、セフォタキシムによるミニPBP2xの阻害を測定することにより実験的に、またはアミノ酸配列から理論的に決定した。
d)アシル化速度論
β−ラクタムによるミニPBP2xのアシル化の効率(これは、式1(Eq1)に従って値k2/K(式中、K=k-1/k)により規定される)を、セフォタキシム(第3世代抗生物質)の存在下で決定した。PBP(酵素E)とβ−ラクタム(I)との相互作用は、式Eq1により表される。ここで、EI、EI*およびPはそれぞれミカエリス−メンテン複合体、アシル−酵素共有結合複合体および生成物(分解β−ラクタム)を表す:
123
E+I←――→EI⇒EI*⇒E+P (Eq1)。
-1
e)加水分解速度論
ミニPBP2xのトランスペプチダーゼ活性(加水分解活性)(値kcat/Kmにより規定される)を、Adamら(Biochem.J.,1990,270,525-529)に記載のプロトコルに従って合成した2つのPBP2x基質アナログ[N−ベンゾイル−D−アラニルメルカプト酢酸チオールエステル(S2d)およびカルボキシメチルベンゾイルアミノチオ酢酸チオールエステル(S2a)]の存在下で決定した。
【0037】
2)結果
ミニPBP2xの物理化学的特徴を下記表IIに提供する。
【表2】

ミニPBP2xの速度論パラメータを、PBP2x*の速度論パラメータ(Jaminら、Biochem.J.,1993,292,735-741;Mouzら、P.N.A.S.,1998,95,13403-13406)と比較して表IIIに提供する。
【表3】

PBP2xの変種の速度論パラメータの分析は、PBP2x*(これからは、PBP2xの細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインのみが欠失している(残基1〜48))との比較により、ミニPBP2x(これは、n-PBドメイン(非ペニシリン結合性ドメイン)に追加の欠失を有する)は、PBP2x*の酵素特性と等価の酵素特性(β−ラクタムとの結合およびトランスペプチダーゼ活性)を有することを示す。
【0038】
実施例3:ミニPBP2xの結晶化
1)材料および方法
ミニPBP2xを、実施例1に記載のように精製する。浮遊液滴法により得られたミニPBP2xの結晶化の条件は、以下のとおりである:ミニPBP2x(12mg/ml)、100mM Hepesナトリウム(pH7.5)、2%V/V PEG 400、2M硫酸アンモニウム、8℃の温度にて。
2)結果
結晶は2〜3週間後に現れる。それらは、150μmのオーダーの長さを有する六方晶系の両錘体形態を示す。
【0039】
実施例4:ミニPBP2xの回折特性の分析
1)材料および方法
回折データを、ESRF(European Synchrotron Radiation Facility,Grenoble,France)に登録した。より正確には、結晶を、エチレングリコール(10%V/V)を補充した実施例3に記載のような結晶化緩衝液中に浸漬した後に、液体窒素中で迅速に冷却した。回折データをID14-EH2ビームラインに記録し、CCP4スイート(Acta Crystallograph.Sect.D,1994,54,905-921)のMOSFLMおよびSCALAプログラムを用いて処理した。
【0040】
2)結果
2.5Åまで回折する結晶は、六方晶系の基本格子(elemental cell)を示し(a=b=136.4Å、c=142.8Å)、2つの分子が非対称単位にある空間群P61/P65に属する。ESRFで収集した完全な回折セットの結果を、可溶性PBP2x*で以前に得られたデータ(Dessenら、J.Biol.Chem.,2001,48,45106-45112;Gordonら、J.Mol.Biol.,2000,299,477-485)と比較して下記の表IVに示す。
【表4】

表IVは、ミニPBP2xからの回折データは、帰するところ、10%のRsym(回折の最終層で30%:2.64〜2.5Å)を有し、99.9%の完全度を有する総計51815の固有反射になることを示す。
ミニPBP2xで得られたデータのより精緻な分析を、解像度の関数として、下記の表Vに示す。最も有意なデータを太字で示す。
【表5】

上記表IVおよびVに示されたデータは、ミニPBP2xが、良好な回折パワー(2.5Å)を有する結晶が得られることを可能にすることを示す。
【0041】
実施例5:ミニPBP2xを使用する抗生作用物質のスクリーニング
抗生物質として使用可能であるミニPBP2xの阻害剤のスクリーニングは、試験分子の存在下で、結合アッセイを使用してかまたはミニPBP2xの酵素活性(加水分解活性)の阻害についてのアッセイを使用して実施する。
1)ミニPBP2x結合アッセイ
PBP2xの固有蛍光は、β−ラクタムのような阻害剤の活性部位での結合の間、減少することが示されている(Jaminら、Biochem.J.292,735-741)。結果として、抗生物質として使用可能であるミニPBP2x阻害剤は、同様な方法でスクリーニングされる。
より正確には、実施例1に記載のように調製したミニPBP2xを、プレートのウェル中に分配し(10mMリン酸緩衝液(pH7)中に2〜500μlのミニPBP2x)、次いで試験分子を添加して、プレートを5℃〜40℃の温度にて30秒〜1時間の期間インキュベートする。試験分子の存在下または非存在下でミニPBP2xの蛍光の変動を、280nmの波長での励起後、305〜360nmの波長窓で測定する。この測定は、連続してか、または30秒〜1時間の種々のインキュベーション時間の後に行なう。ミニPBP2xの活性部位に結合することができる分子(ミニPBP2xの固有蛍光の減少が観察される分子に対応する)を選択する。
2)ミニPBP2xの酵素活性の阻害についてのアッセイ
チオエステル型の偽基質[N−ベンゾイル−D−アラニルメルカプト酢酸チオールエステル(S2d)およびカルボキシメチルベンゾイルアミノチオ酢酸チオールエステル(S2a)]の加水分解を、Zhaoら(前出)に記載のようなプロトコルに従って、ミニPBP2xを単独でかまたは試験分子の存在下で用いて測定する。ミニPBP2xの加水分解活性を阻害することができる分子を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】β−ラクタム感受性の肺炎連鎖球菌R6株のPBP2x(SWISSPROT P14677)に由来するミニPBP2xのアミノ酸配列(配列番号1)を説明する。ミニPBP2xで欠失されたPBP2xのアミノ酸は、ダッシュ記号で置き換えられており、このペプチドフラグメントの挿入されているアミノ酸は、イタリック体で表されている。クラスBのPBPに特異的な単位には下線を付している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎連鎖球菌R6株のPBP2xタンパク質の配列(SWISSPROT P14677またはGENBANK 18266817)を参照として、74〜90位、186〜199位、218〜228位および257〜750位に位置するアミノ酸にそれぞれ対応するフラグメントの連鎖からなり、各フラグメントの前に、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントが存在することを特徴とする肺炎連鎖球菌PBP2xに由来するタンパク質。
【請求項2】
ペプチドフラグメントが、請求項1に規定された74位、186位、218位および257位の残基に対して−1〜−7位に位置する肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質のアミノ酸ならびに/または請求項1に規定された90位、199位および228位に対して+1〜+7位に位置する肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質のアミノ酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
ペプチドフラグメントがアラニン(A)、セリン(S)、グリシン(G)およびスレオニン(T)から選択されるアミノ酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に由来することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号1の配列を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
少なくとも1つのメチオニン残基のセレノメチオニン残基との置換を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項7】
リガンドと会合していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
結晶の形態であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のミニPBP2xタンパク質の少なくとも7アミノ酸のフラグメントからなり、請求項1に規定された74位、90位、186位、199位、218位、228位および257位に位置する残基から選択される少なくとも1つの残基を含むことを特徴とするペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載のペプチドを指向することを特徴とする抗体。
【請求項11】
センスであるかまたはアンチセンスである請求項1〜6のいずれか1項に記載のミニPBP2xをコードする配列および前記配列に相補的な配列からなる群より選択されることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項12】
配列番号2〜3の配列を有することを特徴とする一対のプライマー。
【請求項13】
請求項1に規定された1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントとPBP2xのフラグメントとの接合部に位置するヌクレオチドに対応する約10〜30ヌクレオチドの配列を含むことを特徴とするプローブおよびプライマー。
【請求項14】
配列番号4〜9の配列からなる群より選択される配列を有することを特徴とする請求項13に記載のプライマー。
【請求項15】
請求項11に記載のミニPBP2xをコードする核酸分子からなる群より選択される挿入物を含むことを特徴とする組換えベクター。
【請求項16】
原核生物ベクターからなることを特徴とする請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
請求項15および16のいずれか1項に記載の組換えベクターで形質転換された細胞。
【請求項18】
原核細胞であることを特徴とする請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
抗生物質をスクリーニングするための請求項1〜8のいずれか1項に記載のミニPBP2xの使用。
【請求項20】
少なくとも以下の工程:
1)請求項1〜7のいずれか1項に記載のミニPBP2xを試験物質と接触させる工程、
1)試験分子とミニPBP2xとの結合および/またはこの結合に基因するミニPBP2xの活性の阻害を、任意の適切な手段により検出する工程、および
1)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害でき、抗生物質として使用可能である活性物質を選択および同定する工程
を含むことを特徴とする抗生物質をスクリーニングするための方法。
【請求項21】
少なくとも以下の工程:
2)請求項1〜7のいずれか1項に記載のミニPBP2xから結晶を調製する工程、
2)a2)で得られた結晶からミニPBP2xの三次元構造を決定する工程、および
2)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害でき、抗生物質として使用可能である活性物質を同定する工程
を含むことを特徴とする抗生物質を同定するための方法。
【請求項22】
少なくとも1つの請求項1〜18のいずれか1項に記載のタンパク質、ペプチド、抗体、ベクター、細胞、プローブまたはプライマーを含むことを特徴とする請求項20または21に記載の方法を実施するためのスクリーニングキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺炎連鎖球菌R6株のPBP2xタンパク質の配列(SWISSPROT P14677またはGENBANK 18266817)を参照として、74〜90位、186〜199位、218〜228位および257〜750位に位置するアミノ酸にそれぞれ対応するフラグメントの連鎖からなり、各フラグメントの前に、1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントが存在することを特徴とする肺炎連鎖球菌PBP2xに由来するタンパク質。
【請求項2】
ペプチドフラグメントが、請求項1に規定された74位、186位、218位および257位の残基に対して−1〜−7位に位置する肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質のアミノ酸ならびに/または請求項1に規定された90位、199位および228位に対して+1〜+7位に位置する肺炎連鎖球菌PBP2xタンパク質のアミノ酸を含むことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
ペプチドフラグメントがアラニン(A)、セリン(S)、グリシン(G)およびスレオニン(T)から選択されるアミノ酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
肺炎連鎖球菌のβ−ラクタム耐性株に由来することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号1の配列を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項6】
少なくとも1つのメチオニン残基のセレノメチオニン残基との置換を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項7】
リガンドと会合していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
結晶の形態であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のミニPBP2xタンパク質の少なくとも7アミノ酸のフラグメントからなり、請求項1に規定された74位、90位、186位、199位、218位、228位および257位に位置する残基から選択される少なくとも1つの残基を含むことを特徴とするペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載のペプチドを指向することを特徴とする抗体。
【請求項11】
センスであるかまたはアンチセンスである請求項1〜6のいずれか1項に記載のミニPBP2xをコードする配列および前記配列に相補的な配列からなる群より選択されることを特徴とする単離された核酸分子。
【請求項12】
配列番号2〜3の配列を有することを特徴とする一対のプライマー。
【請求項13】
請求項1に規定される1〜7アミノ酸のペプチドフラグメントとPBP2xのフラグメントとの接合部に位置するヌクレオチドに対応する約10〜30ヌクレオチドの配列を含むことを特徴とするプライマー。
【請求項14】
配列番号4〜9の配列からなる群より選択される配列を有することを特徴とする請求項13に記載のプライマー。
【請求項15】
請求項11に記載のミニPBP2xをコードする核酸分子からなる群より選択される挿入物を含むことを特徴とする組換えベクター。
【請求項16】
原核生物ベクターからなることを特徴とする請求項15に記載の発現ベクター。
【請求項17】
請求項15および16のいずれか1項に記載の組換えベクターで形質転換された細胞。
【請求項18】
原核細胞であることを特徴とする請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
抗生物質をスクリーニングするための請求項1〜8のいずれか1項に記載のミニPBP2xの使用。
【請求項20】
少なくとも以下の工程:
1)請求項1〜7のいずれか1項に記載のミニPBP2xを試験物質と接触させる工程、
1)試験分子とミニPBP2xとの結合および/またはこの結合に基因するミニPBP2xの活性の阻害を、任意の適切な手段により検出する工程、および
1)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害でき、抗生物質として使用可能である活性物質を選択および同定する工程
を含むことを特徴とする抗生物質をスクリーニングするための方法。
【請求項21】
少なくとも以下の工程:
2)請求項1〜7のいずれか1項に記載のミニPBP2xから結晶を調製する工程、
2)a2)で得られた結晶からミニPBP2xの三次元構造を決定する工程、および
2)ミニPBP2xに結合できそして/またはミニPBP2xの活性を阻害でき、抗生物質として使用可能である活性物質を同定する工程
を含むことを特徴とする抗生物質を同定するための方法。
【請求項22】
少なくとも1つの請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする請求項20または21に記載の方法を実施するためのスクリーニングキット。
【請求項23】
少なくとも1つの請求項10に記載の抗体をさらに含むことを特徴とする請求項20または21に記載の方法を実施するためのスクリーニングキット。



【図1】
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【公表番号】特表2006−512896(P2006−512896A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−521031(P2004−521031)
【出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003397
【国際公開番号】WO2004/007541
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(500539103)コミッサリア ア レネルジ アトミック (29)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【住所又は居所原語表記】31−33,rue de la Federation,F−75015 Paris FRANCE
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】