説明

胚幹細胞を用いたトランスジェニック鳥類の生産方法

本発明は、鳥類の胚幹(ES)細胞を培養する方法であって、a)鳥類未孵卵受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)および毛様体神経栄養因子(CNTF);ならびに動物血清;さらに所望により、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン11(Il−11)、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンを含んでなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子、を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間さらに培養する工程;c)所望により、該培養培地から、SCF、FGF、Il−6、Il−6R、LIF、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンならびにIl−11から選択される少なくとも1つの増殖因子を除去する工程;d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、鳥類バイオテクノロジー、特にトランスジェニック鳥を生産する方法に関する。本発明は、卵において目的の組換えタンパク質を大量に発現するトランスジェニック鳥を作り出すのに特に有用である。
【0002】
臨床開発において生体分子は400を超え、市場は300億ドルを越えて、治療分野はこの15年で加速的成長を経験した。大部分の組換えタンパク質は、完全な生物学的活性を得るために特異的な翻訳後修飾を必要とし、そのため大規模バイオリアクター内で増殖させた哺乳類細胞において生産しなければならない。かかる生産システムにかかわるコストは、重要な量的必要性と相まって、製品開発までのプロセス全体の遅延増大に関与する。これに関連して、とりわけ前記修飾が生殖細胞系列を通じてその後代に伝達され得るならば、トランスジェニック動物は経済的に魅力的な代替手段に相当し得る。
【0003】
ウサギ、ヤギおよびウシは目的の多量性を導いたが、長年にわたり雌鳥がニワトリ卵における治療用組換えタンパク質の迅速でコスト効果の高い生産のための最も魅力的な生物学的生産システムと考えられてきた。実際に、商業雌鳥は1年に約250個の卵を産み、各卵には大体4gの卵白タンパク質が含まれるため、ニワトリの産卵能力は並外れている。1個の卵によって100mgの組換えタンパク質しか生産されなかったとしても、1000匹の雌鳥の小群によって1年に25kgの未加工組換えタンパク質材料を生産することができるであろう。加えて、商業卵産業はすでに高度に自動化されており、数十年にわたってニワトリ卵によって多くのヒトワクチンが生産されていることから監督官庁も卵由来製品に不安を抱かない。
【0004】
また、養鶏業では商業的関心の高い遺伝形質の選抜促進のために遺伝子導入を利用すること(すなわち「メタ−クローニング技術(meta-cloning technology)」)にも関心を寄せる場合がある。所望の雛を短期間に得るために古典的な選抜スキーム:[系統−>GGP−>GP−>PS]をバイパスすることがその狙いであろう。家禽生産におけるトランスジェニック技術の最も有望な利用は、トランスジェニック植物においては一般的なことである病害抵抗性を与えることまたは食物同化を改善することである。加えて、トランスジェニック技術は、鳥類遺伝資源を保存する戦略でもある。これまでのところ、養鶏業において最も価値のある動物である純種動物を異なる場所に分割することが、繁殖用施設において問題(例えばウイルス感染)が発生した場合における数年間にわたる選抜プログラムの損失を防ぐ唯一の方法である。かかるアプローチは費用がかかり、2003年におけるオランダの場合のように、ウイルス感染を検査するために地元の家禽総ての予防的排除を実行する国家公衆衛生決議に対して保証するものではない。
【0005】
改変動物の工学技術には、まずその動物のゲノムへの導入遺伝子の安定した導入が含まれる。25年来研究されている異なるDNA導入技術は:(i)DNAマイクロインジェクション、(ii)ウイルス形質導入、(iii)精子を介した遺伝子導入、(iv)核移植、(v)始原生殖細胞、または(vi)胚幹細胞を利用した細胞に基づいた導入である。雛では、導入遺伝子の生殖細胞系伝達に関してDNAマイクロインジェクションアプローチ(Love et al, 1994 Biotechnology 12:60-63)およびウイルス形質導入(Bosselman et al, 1990 J. Reprod. Fertil. Suppl. 41: 183-195)の有効性しか確認されていない。しかしながら、これら2つの技術はいくつかの制限を受け;それらは厄介で困難なものであり、一つには導入遺伝子のランダム組込みおよびサイレンシングが原因で有効性は低い。ウイルス形質導入技術には、ウイルスベクターに組み込む導入遺伝子のサイズというさらなる制限がある。これら2つの技術では現在も商業的開発に適合するタンパク質発現レベルに到達させることができなかった。
【0006】
予めin vitroで遺伝学的に操作した始原生殖細胞(PGC)または胚幹(ES)細胞の発生中の雛胚への注入は、とりわけこれらの技術によって、導入遺伝子の高発現レベルを可能にするゲノム内特定部位への導入遺伝子の組込みを対象とすることができることから鳥類遺伝子導入の有望な技術に含まれる。しかしながら、トランスジェニック雛の生産にこのアプローチを利用するためには、重要な要件を満たさねばならず:細胞はin vitro操作に対して生き延び、一方でなお、レシピエント胚内に組み込まれ、その生殖細胞系列に定着し、その後、その後代に修飾を伝達するそれらの能力を維持しなければならない。
【0007】
これまでに、それぞれのプロセスステップでの異なる技術的障害を克服するために多くの試みがなされ、現在では、非孵卵胚から単離した新鮮単離胚盤葉細胞を産まれたての胚の胚下腔に注入することによって体細胞および生殖細胞系列キメラが得られている。ドナー細胞およびレシピエント細胞の寄与は、(i)白黒色素沈着試験を通してメラニン細胞集団により(Barred RocksまたはBrown LeghornsはI遺伝子座に劣性対立遺伝子を有し、一方White LeghornsはI遺伝子座に優性対立遺伝子を有する);(ii)DNAフィンガープリント解析を通して赤血球集団により;(iii)ドナー由来表現型を有する後代の解析を通して生殖腺により(Petitte et al, 1990 Development 108:185-189; Carsience et al, 1993 Development 117:669-675; Thoraval et al, 1994 Poultry Science 73:1897-1905; Pain et al, 1996 Development 122:2339-2348)評価した。体細胞組織と生殖細胞系列の両方への寄与を示すキメラは、胚盤葉細胞を培養から48時間後(Etches et al, 1996 Mol. Reprod. Dev. 45:291-288)最大7日後まで(Pain et al, 1996)注入したときに観察された。Etches et al, 1996では、マウス繊維芽細胞と同時培養した細胞の注入後に体細胞性が著しく強いキメラが観察されることが示されている。Pain et al (1996)では、鳥類胚盤葉細胞をSTOマウス繊維芽細胞系統上に播種した。培養維持した細胞のES状態は、ECMA−7およびSSEA−1エピトープの発現ならびにテロメラーゼ活性に依存した(Pain et al, 1996)。胚盤葉細胞の分化がない増殖は、白血病抑制因子(LIF)および他の因子、Il−11、SCF、bFGF、IGF−1の存在によって刺激を受け、抗レチノイン酸モノクローナル抗体への曝露によって分化は阻害された(Pain et al, 1996)。レシピエント胚を、ドナー細胞の注入前に照射暴露によって損傷させたときに、ドナー由来細胞による胚の定着が促進されることは示されている(Carsience et al, 1993)。
【0008】
しかしながら、培養維持した胚盤葉細胞では、新たに調製した細胞の注入後に観察された体細胞キメラ現象の頻度および程度と比較して体細胞組織への寄与の低下を示す少数のキメラが得られた。さらに、それでも細胞に基づいた鳥類遺伝子導入戦略の各構成部分が成し遂げられる可能性があることが示されたが;ES細胞技術を用いて得られたトランスジェニック動物は記載されていない。
【0009】
トランスジェニックニワトリを作製する効率的な方法がなお必要である。これが本発明の目的である。
【0010】
この目的を達成するために、そして本発明の目的に従って、本明細書において具体化し、広く記載したとおり、本発明は、鳥類胚幹(ES)細胞を培養する方法であって、
a)好ましくは未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、
−インスリン様増殖因子−1(IGF−1)および/または繊毛様神経栄養因子(CNTF);さらに
−所望により、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン11(Il−11)、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンを含んでなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子;
ならびに
−動物血清;
を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間、好ましくは、2〜20代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCF、FGF、Il−6、Il−6R、LIF、オンコスタチン、カルジオトロフィンおよびIl−11から選択された少なくとも1つの増殖因子を除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程;
を含んでなる方法を提供する。
【0011】
好ましい実施形態では、本発明の鳥類胚幹(ES)細胞培養方法は、
a)好ましくは未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)および繊維芽細胞増殖因子(FGF)ならびに動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間、好ましくは、2〜20代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCF、FGF、Il−6およびIl−6Rを含んでなる群から選択された少なくとも1つの増殖因子を除去する、好ましくは、該培養培地から、増殖因子SCF、FGF、IL−6およびIL−6Rを除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程;
を含んでなる。
【0012】
別の好ましい実施形態では、本発明の鳥類胚幹(ES)細胞培養方法は、
a)好ましくは未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)および動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCFおよびFGFを含んでなる群から選択された少なくとも1つの増殖因子を除去する、好ましくは、該培養培地から、両方の増殖因子 SCFおよびFGFを除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程;
を含む。
【0013】
本発明の方法の任意選択工程c)は、培養中にES細胞の死および/または分化の徴候が観察されるときに実施する。分化の徴候の例は、例えば特徴的な形態型(例えば上皮細胞種または繊維芽細胞種など)への細胞の形態学的変化である。分化の別の例は、ES細胞マーカー(ES細胞マーカーであるテロメラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、SSEA−1抗原など)の発現の不在または減少である。
【0014】
より好ましい実施形態では、本発明の、鳥類胚幹(ES)細胞培養方法は、
a)好ましくは未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、少なくともインスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)および動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を工程a)の培地中でさらに培養する工程;
を含む。
【0015】
別のより好ましい実施形態では、本発明の、鳥類胚幹(ES)細胞培養方法は、
a)鳥類未孵卵受精卵胚盤葉板(blastoderm disk of fertilized un-incubated avain egg(s))由来のES細胞を少なくともインスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)および動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を工程a)の培地中でさらに培養する工程;
を含む。
【0016】
別のより好ましい実施形態では、本発明の、鳥類胚幹(ES)細胞培養方法は、
a)鳥類未孵卵受精卵胚盤葉板由来のES細胞を少なくともインスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)および動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を工程a)の培地中でさらに培養する工程;
を含む。
【0017】
本明細書における用語「鳥類」とは、分類学上の綱”ava”の生物の任意の種、亜種または品種、限定されるものではないが、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミューおよびヒクイドリなどを指すことが意図される。本明細書における用語「鳥類」、「鳥」、「鳥綱(aves)」または「ava」は、同じ意味を有することが意図され、区別せずに用いられる。好ましい実施形態では、「鳥」とは、以下の分類学上の目の任意の動物を指す:
−「ガンカモ目(Anseriformes)」(すなわちカモ、ガチョウ、ハクチョウおよび同類)。ガンカモ目というこの目には、3つの科に属する約150種の鳥が含まれる:サケビドリ科(Anhimidae)(サケビドリ類)、カササギガン科(Anseranatidae)(カササギガン)、およびガンカモ科(Anatidae)(140種を超えるミズドリ、中でもカモ、ガチョウ、およびハクチョウを含む)。前記目に属する総ての種は、水表面での水中生活に高度に適応している。総てには、効率的に遊泳するために足に水かきがある(一部は後に主として陸生となった)。この用語には、カモの様々な系統、例えばPekin duckおよびMuscovy duckが含まれる。
【0018】
−「キジ目(Galliformes)」(すなわちニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、キジおよび同類)。このキジ目は、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラおよびキジを含む鳥目である。世界的には約256種が認められる。この用語には、セキショクヤケイ(Gallus gallus)、またはニワトリの様々な系統、例えばS86N、Valo、White Leghorn、Brown Leghorn、Sussex、New Hampshire、Rhode Island、Ausstralorp、Minorca、Amrox、California Gray、East Lansing、Italian-Partridge-colored、Marans、Barred Rock、Cou Nu Rouge(CNR)、GF30、ISAならびにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、および一般的に繁殖させる他の家禽の系統が含まれる。
【0019】
−「ハト目(Columbiformes)」(すなわちイエバトおよび同類)。ハト目というこの鳥目には非常に一般的なハトおよびイエバトが含まれる。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明の鳥類細胞はニワトリ細胞である。前記ニワトリは、S86N、Valo、White Leghorn、Brown Leghorn、Sussex、New Hampshire、Rhode Island、Ausstralorp、Minorca、Amrox、California Gray、East Lansing、Italian-Partridge-colored、Marans、Barred Rock、Cou Nu Rouge (CNR)、GF30、ISAを含んでなるニワトリ系統の群から選択されることが好ましい。より好ましい実施形態では、本発明のニワトリES細胞はBarred-Rock系統である。別の好ましい実施形態では、本発明の鳥類細胞はカモ細胞である。より好ましい実施形態では、本発明のカモES細胞はPekinまたはMuscovy系統である。
【0021】
工程a)の細胞は鳥類胚幹細胞である。胚幹細胞(ES細胞)は、極めて初期(例えば胞胚期)の胚の一部または総ての培養から得られるという特徴を有する幹細胞である。これらのES細胞は、in vitroで幹細胞の総ての特徴を示し、in vivoで胚の形態形成に寄与し、それらが方法の如何を問わずレシピエント胚に再移植されるときには生殖細胞系列定着に関与する独自の能力を示す。成熟期後に発生する精細胞または卵母細胞の前駆細胞である始原生殖細胞(PGC)は、多能性ES細胞であり、ES細胞のサブタイプとなる。好ましくは、本発明の鳥類胚幹細胞は、Eyal-Giladi & Kochav分類のステージVI〜XIIの間に含まれる、より好ましくは、Eyal-Giladi & Kochav分類のステージX前後の発生段階にある鳥類受精卵の胚盤葉板から単離される(EYAL-GILADI分類:EYAL-GILADI and KOCHAV, 1976, ≪ From cleavage to primitive streack formation: a complementary normal table and a new look at the first stages of the development in the chick ≫. "General Morphology" Dev. Biol. 49: 321-337参照)。好ましい実施形態では、工程a)の細胞は、産まれたての受精卵すなわち産卵と名付けられた発生段階にある受精卵から単離される。Sellier et al. (2006, J. Appl. Poult. Res., 15:219-228)によれば、産卵はEyal-Giladi分類による次の発生段階に相当する:
−Muscovy duck:ステージVII
−ホロホロチョウ:ステージVII〜VIII
−シチメンチョウ:ステージVII〜VIII
−Pekin duck:ステージVIII
−ニワトリ:ステージX
−ニホンウズラ:ステージXI
−ガチョウ:ステージXI。
【0022】
好ましくは、工程a)のPekin duck胚幹(ES)細胞は、Eyal-Giladi分類のステージVIII(産卵)前後の胚を分離することによって得られる。
【0023】
好ましくは、工程a)のMuscovy duck胚幹(ES)細胞は、Eyal-Giladi分類のステージVII(産卵)前後の胚を分離することによって得られる。
【0024】
好ましくは、工程a)のニワトリ胚幹(ES)細胞は、Eyal-Giladi分類のステージX(産卵)前後の胚を分離することによって得られる。
【0025】
より好ましくは、前記卵は一度も孵卵されていない(すなわち「未孵卵(un-incubated)」)。胚盤葉板から単離された細胞は、鳥類胚細胞、より詳細には鳥類胚幹(ES)細胞を含んでなり;これらの鳥類胚細胞は全能性または多能性細胞である。胚盤葉細胞は、コロニーとして増殖する密に結合した細胞であり;それらの細胞は丸型形態を示し、大きな核と小さな細胞質を有する(図2参照)。胚盤葉細胞の形態は培養中に、密に結合した細胞から結びつきがよりゆるいより分散した細胞へと進化する(本発明の方法の工程 図2b&c)。工程c)において得られた鳥類ES細胞は、よりゆるい結びつきを示すことが好ましい。
【0026】
別の実施形態によれば、工程a)の細胞は、始原生殖細胞(PGC)が豊富な胚幹細胞集団である。より好ましくは、工程a)の鳥類ES細胞は精製PGCである。鳥類種では、始原生殖細胞は胚盤葉の中心領域から発生する(Ginsburg and Eyal-Giladi, 1987 Development 101(2):209-19; Karagenc et al, 1996 Dev Genet 19(4):290-301; Petitte et al, 1997 Poult Sci. 76(8): 1084-92)。その後、始原生殖細胞は前方の胚体外部位である生殖三日月環へと移動し、胚発生2.5日〜5日間に血管系に取り込まれるに至って、生殖隆起に到達する。始原生殖細胞は生殖隆起に定着し(colonize)、そこで始原生殖細胞は最後には卵母細胞または精母細胞へと分化する(Nieuwkoop and Sutasurya, 1979. The Migration of the primordial germ cells. In: Primordial germ cell in Chordates. London: Cambridge University Press p113-127)。ドナー鳥類胚からのPGCの単離方法については文献で報告されており、当業者であれば容易に実施することができる(例えば1993年9月7日公開(公開番号第05−227947号)のJP924997; Chang et al. 1992. Cell Biol. Int. 19(2): 143-149; Naito et al. 1994 Mol. Reprod. Dev. 39: 153-161; Yasuda et al. 1992. J. Reprod. Fert. 96: 521-528; Chang et al. 1992 Cell Biol. Int. Reporter 16(9): 853-857参照)。一実施形態によれば、PGCは、Hamburger & Hamilton分類のステージ12〜14(Hamburger & Hamilton 1951 A series of normal stages in the development of chick embryo. J. Morphol. 88: 49-92)にあるニワトリ胚の背側大動脈から採取した胚血管から採取される。別の好ましい実施形態では、PGCは、ニワトリ胚の機械的切開によって生殖三日月環からまたは生殖腺から採取された。しかしながら、上述のとおり、他のPGC単離方法も知られており、代わりに用いることができる。
【0027】
「完全培養培地」とは、少なくとも1つの増殖因子および動物血清が添加された、基礎培地、好ましくは基礎合成培地を意味する。完全培養培地の例は、WO03/076601、WO05/007840、EP787180、US6,114,168、US5,340,740、US6,656,479、US5,830,510およびPain et al. (1996, Development 122:2339-2348)に記載されている。本発明によれば、「基礎培地」とは、単独で、少なくとも細胞生存、さらによくは、細胞増殖を可能にする古典的な培養処方の培地を意味する。基礎培地の例は、BME(基礎イーグル培地)、MEM(最少イーグル培地)、199培地、DMEM(ダルベッコの改変イーグル培地)、GMEM(Glasgow改変イーグル培地)、DMEM−HamF12、Ham−F12およびHam−F10、イスコフの改変ダルベッコ培地、マッコイの5A培地、RPMI 1640である。基礎培地は、無機塩(例えば:CaCl、KCl、NaCl、NaHCO、NaHPO、MgSO、...)、アミノ酸、ビタミン(チアミン、リボフラビン、葉酸、D−パントテン酸Ca、...)および他の成分(グルコース、β−メルカプト−エタノール、ピルビン酸ナトリウムなど)を含んでなる。好ましくは、基礎培地は合成培地である。本発明の最も好ましい基礎培地は、2mM L−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1%非必須アミノ酸、0.16mM β−メルカプト−エタノールが添加されたDMEM−HamF12である。
【0028】
あるいは、前記完全培養培地は、馴化培地、好ましくはBRL馴化培地である。一例として、BRL馴化培地は、Smith and Hooper(1987, Dev. Biol. 121: 1-9)によって記載されているような当技術分野で認められている技術によって調製される。BRL細胞はATCC受託番号CRL−1442で入手可能である。馴化培地には、以下に記載する外因性増殖因子を添加してよい。
【0029】
本明細書における用語「増殖因子」とは、培養下の鳥類細胞の生存および増殖に必要な培養培地に添加される外因性増殖因子を意味する。2つのファミリーの増殖因子を概略的に区別することができる:サイトカインおよび栄養因子。前記サイトカインは、主としてgp130タンパク質と関連している受容体を通じて作用するサイトカインである。例えば、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン11、インターロイキン6、インターロイキン6受容体、毛様体神経栄養因子(CNTF)、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンは、特定鎖の受容体レベルにおける補充および単量体形または場合によってはヘテロ−二量体形でのgp130タンパク質との受容体の組合せに関して類似した作用機序を有する。前記栄養因子は、主として幹細胞因子(SCF)、インスリン増殖因子1(IGF−1)および繊維芽細胞増殖因子(FGF)、好ましくは塩基性FGF(bFGF)またはヒトFGF(hFGF)である。
【0030】
本発明の方法の工程a)において使用される完全培養培地は、基礎培地、好ましくは基礎合成培地、ならびにgp130タンパク質と関連している受容体を通じて作用する少なくとも1つのサイトカインおよび/または少なくとも1つの栄養因子を含んでなる。好ましくは、本発明による完全培養培地は、基礎培地、および白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチン、カルジオトロフィン、インスリン増殖因子1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン6受容体(IL−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン11(IL−11)からなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子を含んでなる。
【0031】
第一の好ましい実施形態によれば、前記完全培養培地は、動物血清ならびに少なくともIGF−1およびCNTFを添加した基礎培地である。
【0032】
第二の好ましい実施形態によれば、前記完全培養培地は、動物血清ならびに少なくともIGF−1、CNTF、IL−6およびIL−6Rを添加した基礎培地である。
【0033】
第三の好ましい実施形態によれば、前記完全培養培地は、動物血清ならびに少なくともIGF−1、CNTF、IL−6、IL−6R、SCF、FGFを添加した基礎培地である。
【0034】
別の実施形態によれば、前記完全培養培地は、増殖因子(すなわち例えばBRL細胞によって発現される)を含んでなり、所望により、白血病阻害因子(LIF)、インスリン増殖因子1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン6受容体(IL−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インターロイキン11(IL−11):を含んでなる群において選択された少なくとも1つの外因性増殖因子を添加した馴化培養培地である。
【0035】
前記基礎培地中または前記馴化培養培地中の増殖因子IGF−1、CNTF、IL−6、IL−6R、SCF、FGF、IL−11の濃度は、約0.01〜10ng/ml、好ましくは0.1〜5ng/ml、より好ましくは約1ng/mlの間で含まれる。
【0036】
本発明の鳥類胚幹細胞は、フィーダー細胞層上で培養される。フィーダー細胞は、ES細胞を得るために培養される細胞または細胞系統であり得る。あるいは、前記フィーダー細胞は、細胞外マトリックスと結合した増殖因子とで置き換えることができる。従って、フィーダーマトリックスはフィーダー細胞または細胞外マトリックスを指す。本明細書におけるフィーダーマトリックスは、当技術分野で公知の手法に従って構築される。上述のとおり、前記フィーダーマトリックスは予め馴化されることが好ましい。用語「予め馴化される」とは、鳥類受精卵胚盤葉板由来の細胞が前記フィーダーマトリックスと接触して沈着する前に、前記フィーダーマトリックスが培地の存在下で、ある期間、例えば前記フィーダーマトリックスにより例えば、増殖因子または他の因子の生産が開始され、確立されるのに十分な時間、培養されることを意味し;通常フィーダーマトリックスは、鳥類受精卵胚盤葉板由来の細胞がそのフィーダーマトリックスと接触して沈着する前に、そのフィーダーマトリックスを単独で1〜2日間培養することにより予め馴化させる。前記フィーダー細胞は、マウス繊維芽細胞を好ましくは含んでなる。STO繊維芽細胞が好ましいが、初代繊維芽細胞も好適である。また、本発明は、マウス細胞フィーダーマトリックスの使用に関して記載しているが、他のネズミ種(例えばラット);他の哺乳類種(例えば;有蹄動物、ウシ、ブタ種);または鳥類種(例えばGallinacea、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ)由来の細胞を含んでなるフィーダーマトリックスも使用してよいと考えられる。別の実施形態では、本発明のフィーダー細胞は、例えばSTO細胞において鳥類SCFなどの増殖因子の構成的発現を可能にする発現ベクターでトランスフェクトしてよい。このようにして、この「フィーダー」は、前記細胞の原形質膜中に溶解しかつ/または付着している状態の前記因子を生産する。従って、本発明の培養方法は、フィーダー細胞の単層を確立することを所望により含んでよい。フィーダー細胞は標準的な技術を用いて分裂不能にされる。例えば、前記フィーダー細胞は、X線またはγ線照射(例えば4000ラドのγ線)に曝してよくまたはマイトマイシンC(例えば10μg/ml 2〜3時間)で処理してよい。細胞を分裂不能にするための手法もまた、American Type Culture Collection(ATCC), 10801 University Boulevard, Manassas, Va. 20110-2209から細胞とともに一般に送られる情報に詳述されている(例えばSTOフィーダー細胞はATCC受託番号1503で入手可能である)。単層は、所望により、約80%コンフルエントまで、好ましくは約90%コンフルエントまで、より好ましくは約100%コンフルエントまで培養してよい。単層としての前記フィーダー細胞の構造が前記培養に好ましい構造であるが、いずれもの好適な構造が本発明の範囲内であると考えられる。従って、例えば、フィーダー細胞の層、単層、クラスター、凝集体または他の会合体もしくは集団は、本発明の範囲内に入ると考えられ、特に用語「マトリックス」の意味の範囲内に入ると考えられる。
【0037】
本発明の培養培地には動物血清が添加される。使用することが好ましい動物血清は、動物胎児血清である。ウシ胎児血清が好ましい。また、本発明は、ウシ胎児血清の使用に関して記載しているが、他の動物種(例えばニワトリ、ウマ、ブタ、有蹄動物など...)由来の血清を含んでなる動物血清も使用してよいと考えられる。前記培養培地中の動物血清の終濃度は、およそ1〜25%間、好ましくは5%〜20%間、より好ましくは8%〜12%間で含まれる。その好ましい実施形態では、前記培養培地中の動物血清の終濃度はおよそ10%である。好ましい実施形態によれば、前記培養培地はおよそ10%のウシ胎児血清を含んでなる。本発明の培養培地には、細菌汚染を防ぐために、さらに抗生物質(例えばペニシリンおよびストレプトマイシンなど)を含めてよい。
【0038】
別の実施形態によれば、本発明は、鳥類胚幹細胞を遺伝学的に改変する方法であって、
a)上述の方法によって得られ、培養されたES細胞をベクターでトランスフェクトする工程;
b)トランスフェクトされたES細胞を、好ましくは、培地中に例えば抗生物質、アミノ酸、ホルモンなどの選抜薬剤を加えることによって、選抜する工程;
c)遺伝学的に改変された耐性ESクローンのスクリーニングおよび増幅する工程、
d)前述のとおりの培養培地中、フィーダー細胞層上で工程c)の該遺伝学的改変ES細胞を培養する工程
を含んでなる方法を提供する。
【0039】
第一の実施形態によれば、工程d)の前記培養培地は、動物血清、およびIGF1、CNTF、IL−6、IL−6R、Il−11、LIF、FGF、SCF、オンコスタチン、カルジオトロフィンを含んでなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子を含んでなる。好ましい実施形態によれば、工程d)の前記培養培地は、動物血清ならびにIGF1およびCNTFを含んでなる。別の実施形態によれば、工程d)の前記培養培地は、動物血清ならびにIGF1およびCNTF、さらに所望により、IL−6、IL−6R、Il−11、LIF、FGF、SCF、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンを含んでなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子を含んでなる。、第三の好ましい実施形態によれば、工程d)の前記培養培地は、動物血清ならびにIGF1、CNTF、IL−6およびIL−6Rを含んでなる。第四の好ましい実施形態によれば、工程d)の前記培養培地は、動物血清ならびにIGF1、CNTF、IL−6、IL−6R、SCFおよびFGFを含んでなる。
【0040】
工程c)のES細胞は遺伝学的に改変される。遺伝子改変は、ES細胞において、前記ベクターでの一過性または安定トランスフェクションにより実施される。好ましい実施形態によれば、前記ESは、当業者により周知の技術によって前記ベクターで安定にトランスフェクトされる。第一の実施形態によれば、前記ベクターはES細胞のゲノムに無作為に挿入される。好ましい実施形態によれば、前記ベクターは、相同組換えによってES細胞のゲノムに挿入される。WO03/043414では、ES細胞を相同組換えにより遺伝学的に修飾するためのプロトコールおよび発現ベクターが記載されている。
【0041】
工程a)のES細胞は、レシピエント胚への導入前にin vitroで長期間維持され、培養され得る。この長い期間によって前記細胞を遺伝学的に改変させることができる。好ましい実施形態によれば、前記細胞はin vitroで少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも25日間、少なくとも50日間、少なくとも75日間、少なくとも100日間培養される。
【0042】
本明細書における用語「ベクター」とは、細胞内にトランスフェクトすることができ、その宿主細胞ゲノムとは独立にまたはその宿主細胞ゲノム内で複製することができる天然もしくは合成一本鎖もしくは二本鎖プラスミドまたはウイルス核酸分子を指す。環状二本鎖プラスミドは、該プラスミドベクターのヌクレオチド配列に基づいた適当な制限酵素での処理により線状化することができる。核酸は、ベクターを制限酵素で切断し、それらの断片を一緒に連結することによって、ベクターに挿入することができる。前記核酸分子はRNAまたはDNAであってもよい。本明細書における用語「プラスミド」とは、細菌または酵母宿主細胞内での独立した複製が可能である小さな環状DNAベクターを指す。前記核酸ベクターは、「対象となるポリペプチド」をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも1つの調節配列をさらに含む。調節配列は当技術分野で周知であり、当業者であれば過度に実験を行わずに前記連結ヌクレオチド配列の良好な発現を確実にするように選択し得る。本明細書において、用語「調節配列」には、発現を制御し得るプロモーター、エンハンサー、および他のエレメントが含まれる。好適な発現ベクター、プロモーター、および他の発現制御エレメントを設計するために、標準的な分子生物学テキスト例えばSambrook et al. eds "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" 2nd ed. Cold Spring Harbor Press (1989)およびLodish et al. eds., "Molecular Cell Biology," Freeman (2000)を参考にしてよい。しかしながら、好適な発現ベクターの選択は複数の因子(形質転換させる宿主細胞の選択および/または発現させるタンパク質のタイプを含む)に依存することは認識すべきである。また、様々な用途には、組織選択的(すなわち組織特異的)プロモーター、すなわち、1以上の他のタイプの組織に対して、ある特定の種類の組織の細胞において優先的に発現をもたらすプロモーターが有用である。例示的な組織特異的プロモーターは、鳥類卵白のタンパク質(オボアルブミン、リゾチーム、オボムコイド、コンアルブミンおよびオボムチンなどを含む)と本来関係があるニワトリ卵管特異的プロモーターである。有用なプロモーターには、外因性誘導プロモーターも含まれる。これらは、一般に内因性代謝産物やサイトカインではない外部から供給された薬剤または刺激に応じて「作動させる」ことができるプロモーターである。例としては、抗生物質誘導プロモーター(テトラサイクリン誘導プロモーターなど)、熱誘導プロモーター、光誘導プロモーター、またはレーザー誘導プロモーターが挙げられる(例えば、Halloran et al., 2000, Development 127(9): 1953-1960; Gemer et al., 2000, Int. J. Hyperthermia 16(2): 171-81 ; Rang and Will, 2000, Nucleic Acids Res. 28(5): 11205; Hagihara et al., 1999, Cell Transplant. 8(4): 4314; Huang et al., 1999, Mol. Med. 5(2): 129-37; Forster, et al., 1999, Nucleic acids Res. 27(2): 708-10; およびLiu et al., 1998, Biotechniques 24(4): 624-8, 630-2 (1998))。本明細書において用語「対象となるポリペプチド」または「対象となるタンパク質」とは、ペプチド結合によって連結された、連続的に配列された3個以上のアミノ酸からなるアミノ酸ポリマーを指す。用語「ポリペプチド」には、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質類似体、オリゴペプチド、ペプチドなどが含まれる。用語「ポリペプチド」は、核酸によってコードされ、組換え技術によって作出され、適当な起源から単離されまたは合成される、上記で定義したポリペプチドを意図する。ポリペプチドの限定されない例は、成長ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、酵素、免疫グロブリンまたはその断片である。本明細書における用語「トランスフェクション」または「トランスフェクトされた」とは、核酸を宿主細胞(すなわち前記鳥類ES)に挿入する方法を指す。原核生物または真核生物への核酸のトランスフェクションを容易にする多くの技術が当業者に周知である。これらの方法は、宿主細胞を前記核酸分子の取り込みに適したものにするために、限定されるものではないが、前記細胞を高濃度の塩(カルシウムまたはマグネシウム塩などであるがそれだけではない)、電場(すなわちエレクトロポレーション)、界面活性剤、またはリポソーム媒介トランスフェクション(すなわちリポフェクションなど)により処理することを含む種々の技術を必要とする。
【0043】
本発明はまた、キメラ雛を得る方法であって、
a)本発明の方法によって得られ、培養された鳥類ES細胞をレシピエント鳥類胚の胚下腔に導入する工程;および
b)雛として孵化(hatch)させるために、工程a)において得られた胚をインキュベートする工程;
c)該雛に定着した異種細胞を含んでなる該キメラ雛を選抜する工程
を含んでなる方法も提供する。
【0044】
本明細書における用語「雛(chick)」とは、幼鳥を意味し、これには幼鶏が含まれる。用語「胚下腔(subgerminal cavity)」とは、胚盤葉と卵黄の間の空間を意味する。胚盤葉細胞がアルブミンから水分を吸収し、それをそれら自体と卵黄の間に分泌するとこの空間が作り出される。
【0045】
遺伝学的に修飾されたキメラ雛を得る方法であって、
a)本発明の方法によって得られ、培養された遺伝学的修飾ESをレシピエント鳥類胚の胚下腔に導入する工程;および
b)雛として孵化させるために、工程a)において得られた胚をインキュベートする工程;
c)該雛に定着した遺伝学的修飾異種細胞を含んでなる該キメラ雛を選抜する工程
を含んでなる方法を提供することも本発明の目的である。
【0046】
前記キメラ雛の選抜は、表現型解析または遺伝子型解析のいずれかによって実施することができる。好ましい実施形態によれば、前記キメラ雛は、羽毛(plumage)の表現型解析によって選抜される。
別の実施形態によれば、本発明のキメラ雛を得る方法は、ES細胞の導入前にレシピエント胚の性別を決定するさらなる工程を含んでよい。
【0047】
別の実施形態によれば、前記レシピエント胚は、産まれたての未孵卵の卵に由来し、5,000個前後〜70,000個前後間の細胞を含む。好ましくは、前記レシピエント胚は、Eyal-Giladi & Kochav分類のステージVl〜XIIの間に含まれる、好ましくは:
−前記胚がニワトリであるときにはEyal-Giladi & Kochav分類のステージX前後の;
−前記胚がMuscovy duckであるときにはEyal-Giladi & Kochav分類のステージVII前後の;
−前記胚がPekin duckであるときにはEyal-Giladi & Kochav分類のステージVIII前後の;
−前記胚がニホンウズラまたはガチョウであるときにはEyal-Giladi & Kochav分類のステージXI前後の;
−前記胚がホロホロチョウまたはシチメンチョウであるときにはEyal-Giladi & Kochav分類のステージVII〜VIII前後の;
段階にある。
【0048】
好ましくは、少なくとも1000個のES細胞、少なくとも10,000個のES細胞、少なくとも15,000個のES細胞、少なくとも30,000個のES、少なくとも45,000個のES細胞、少なくとも65,000個のES細胞、少なくとも85,000個のES細胞または少なくとも100,000個のES細胞が、前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される。好ましい実施形態によれば、少なくとも30,000個のES細胞が前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される。
【0049】
前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入されるES細胞は、雌および雄ES細胞の混合集団であってよい。別の実施形態によれば、前記レシピエント胚およびドナーES細胞は、導入前に予め性別判定される。好ましい実施形態によれば、雌ES細胞は、雌レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される。別の好ましい実施形態によれば、雄ES細胞は、雄レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される。
【0050】
本発明のキメラ雛を得るための方法は、ES細胞の、レシピエント胚の胚下腔への導入前に、レシピエント胚にX線またはγ線照射で弱く照射する任意選択工程を含む。好ましい実施形態によれば、前記ニワトリレシピエント胚は、3〜6グレイ間のX線、好ましくは4グレイ前後のX線で照射される。好ましい実施形態によれば、事前に4グレイ前後でX線照射された前記レシピエントニワトリ胚の胚下腔に、15,000個前後のニワトリES細胞が導入される。別の好ましい実施形態によれば、前記非照射レシピエントニワトリ胚の胚下腔に、少なくとも30,000個のニワトリES細胞が導入される。
【0051】
第一の実施形態によれば、レシピエントニワトリ胚はWhite Leghorn系統のものであり、前記ドナーニワトリES細胞はbarred rock系統、Marans系統、S86N系統からなる群において選択される系統に由来する。第二の実施形態によれば、前記レシピエントニワトリ胚は、barred rock系統、Marans系統およびS86N系統を含んでなる群において選択されるニワトリ系統のものであり、前記ドナーニワトリES細胞はWhite Leghorn系統に由来する。
【0052】
異種細胞を含んでなる本発明のキメラ雛の選抜は、
a)前記キメラ雛から遺伝物質のサンプルを得る工程;
b)該鳥類ゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列における多型の存在についてアッセイする工程であって、該多型が、フォワードプライマー5’−GGTGTAAATATCAAAATTATC−3’(配列番号1)およびリバースプライマー5’−CGGTTAAAATACGAATAGAGA−3’(配列番号2)のセットとフォワードプライマー5’−CTATGAGCAGTTACGAGGGTC−3’(配列番号3)およびリバースプライマー5’−CGGACCAACAGGCTAGTCTC−3’(配列番号4)のセットからなる群において選択されたプライマーセットによる増幅によって同定可能である工程
を含む。好ましい実施形態によれば、前記ニワトリES細胞はbarred rock種に由来し、前記レシピエント胚はWhite Leghorn種のものである。前記増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素PCRによって実施され、この際、前記解析は、PCR増幅DNAの制限酵素HincIIでの消化を含む。
【0053】
多型の有無を同定する前記方法は、制限断片長多型(RFLP)解析、ヘテロ二本鎖解析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE) 温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)およびジデオキシ−フィンガープリント法(ddF):からなる群から選択される。
【0054】
前記多型の存在についてアッセイする前記工程は、
a)HincII制限酵素で前記遺伝物質を消化する工程;
b)該消化から得られた断片を分離する工程;
c)該断片によって生じた制限パターンを検出する工程;および
d)所望により、該パターンを、HincII制限酵素を用いてのWhite Leghorn、Marans、Barred Rock、S86N遺伝物質の消化によって得られる少なくとも1つの制限パターンと比較する工程であって、工程c)およびd)において検出された制限パターンの違いが異種細胞を含んでなるキメラ雛の指標となる工程
を含む。
【0055】
本発明はまた、前記キメラ雛の後代を得る方法であって、次の工程:
a)本発明の方法によって得られた前記選抜キメラ雛を成鳥として成熟させる工程;
b)内部に異種細胞を有する該成鳥を繁殖させ、その結果、鳥後代を生み出す工程;および
c)異種細胞を含んでなる該後代において該鳥を選抜する工程
を含む方法を含む。
【0056】
前記鳥の選抜は、羽毛の表現型解析によって、または可能であれば前記鳥ゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列におけるHincII多型の存在についてアッセイすることによる遺伝子型解析によって実施してよい。
【0057】
前記方法は、遺伝学的に改変された異種細胞中に含まれる前記ベクターによってコードされる異種ポリペプチドを発現させる工程をさらに含んでよい。好ましくは、前記異種ポリペプチドは、前記鳥の生体液(血液、精子、尿など)または前記遺伝学的改変鳥の雌によって産み出された発生中の鳥類卵の卵白に送達される。
【0058】
本発明はまた、遺伝学的および非遺伝学的に改変された鳥類胚幹(ES)細胞、好ましくはニワトリおよびカモES細胞用の培養培地であって、動物血清が添加され、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、インターロイキン11、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、白血病阻害因子(LIF)、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンからなる群において選択された少なくとも1つの増殖因子を含んでなり、少なくとも10日間、少なくとも30日間、好ましくは少なくとも100日間、より好ましくは無限期間培養する該ニワトリ胚幹細胞の維持に十分である培養培地にも関する。
【0059】
好ましい実施形態によれば、本発明はまた、遺伝学的または非遺伝学的に改変された鳥類胚幹(ES)細胞、好ましくはニワトリおよびカモES細胞用の基礎培養培地であって、動物血清が添加され、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)および毛様体神経栄養因子(CNTF)が添加された基礎培養培地にも関する。
【0060】
第二の好ましい実施形態によれば、本発明は、遺伝学的または非遺伝学的に改変された鳥類胚幹(ES)細胞、好ましくはニワトリおよびカモES細胞用の基礎培養培地であって、動物血清が添加され、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)およびインターロイキン6受容体(Il−6R)が添加された基礎培養培地に関する。
【0061】
第三の好ましい実施形態によれば、本発明は、遺伝学的または非遺伝学的に改変された鳥類胚幹(ES)細胞、好ましくはニワトリおよびカモES細胞用の基礎培養培地であって、動物血清が添加され、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)が添加された基礎培養培地に関する。
【0062】
前記培地は、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも30日間、少なくとも50日間、好ましくは少なくとも100日間培養する前記鳥類胚幹(ES)細胞、好ましくはニワトリおよびカモES細胞の維持に十分である。
【0063】
本発明の培養培地は、所望により、インターロイキン−11、カルジオトロフィン、オンコスタチンおよび/またはLIFを含んでなる群において選択される少なくとも1つの化合物をさらに含んでもよい。本発明の培養培地は、フィーダー細胞の層(すなわちローン)をさらに含んでもよい。
【0064】
本発明はまた、White Leghornニワトリ系統を別のニワトリ系統と区別するための遺伝子多型解析方法であって、
a)該White Leghornニワトリ系統から遺伝物質のサンプル、および該他ニワトリ系統から遺伝物質のサンプルを得る工程;
b)該ニワトリゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列における多型の存在についてアッセイする工程であって、該多型が、フォワードプライマー5’−GGTGTAAATATCAAAATTATC−3’(配列番号1)およびリバースプライマー5’−CGGTTAAAATACGAATAGAGA−3’(配列番号2)のセットとフォワードプライマー5’−CTATGAGCAGTTACGAGGGTC−3’(配列番号3)およびリバースプライマー5’−CGGACCAACAGGCTAGTCTC−3’(配列番号4)のセットからなる群において選択されたプライマーセットによる増幅によって同定可能である工程
を含む方法も提供する。
【0065】
本発明による遺伝子多型解析方法では、前記増幅は、好ましくは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素PCRによって実施される。
【0066】
前記多型の存在についてアッセイする前記工程は、
a)HincII制限酵素でPCR増幅DNAを消化する工程;
b)該消化から得られた断片を分離する工程;
c)該断片によって生じた制限パターンを検出する工程;および
d)HincII制限酵素を用いてWhite Leghorn遺伝物質の消化によって得られる該パターンと、前記他ニワトリ系統の遺伝物質の消化によって得られる該パターンとを比較する工程であって、HincII制限部位の存在がWhite Leghorn系統の指標となり、HincII制限部位の不在がWhite Leghorm系統でないことの指標となる工程
を含む。
【0067】
多型の有無を同定する前記方法は、制限断片長多型(RFLP)解析、ヘテロ二本鎖解析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)およびジデオキシ−フィンガープリント法(ddF)からなる群から選択される。
【0068】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。当業者がより明確に理解し、本発明を実施することができるように、次の調製および実施例を示す。しかしながら、本発明は、例示された実施形態の範囲に限定されず、それらの実施形態は単に本発明の単一態様を例示するものであり、機能的に同等の方法は本発明の範囲内である、実際、当業者には上述の説明および添付の図面から、本明細書に記載したものの他に本発明の様々な修飾も明らかになるであろう。かかる修飾は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。説明の残りの部分については、以下の図面の説明に言及する。
【実施例】
【0069】
実施例
実施例1:材料および方法
胚盤葉細胞
産まれたての未孵卵卵から胚を採取した。カットアウト領域中央の胚盤を有する胚の上に滅菌フィルターペーパーリングを置いた。そのディスク(disk)の外側周囲で卵黄膜を切断した。そのディスクをさっとひっくり返し、室温のPBSのペトリ皿に移した。過剰の卵黄を慎重に洗い流した。パスツールピペットで軽く吸引して胚盤葉全体を取り出し、PBS中に移した。平均200個の胚を一緒にプールした。それらの細胞を300gで2回遠心分離した。この細胞ペレットを培養培地中で機械的に解離した。完全培養培地中の細胞を不活性化STOフィーダー層上に播種した。胚盤葉細胞を7.5%CO中39℃で維持した。これらの細胞を、プロナーゼ溶液(5〜2%w/v)中39℃でのインキュベーションにより解離した。解離細胞を、完全培地中、新たなフィーダー層細胞上に播種した。3〜5代継代間の細胞を最少培地中、STOフィーダー層上に播種した。
【0070】
培養培地
前記完全培養培地は、10%胎児子ウシ血清(JRH)、0.16mM β−メルカプトエタノール(SIGMA)、1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)、1ng/ml IGF1(Tebu)、1ng/ml CNTF(Eurobio)、1ng/ml Il−6(Eurobio)、1ng/ml Il−6R(Tebu)、1ng/ml SCF(Tebu)、1ng/ml bFGF(Peprotech)、1%ペニストレプトマイシン(penistreptomycine) (Biowhittaker)を添加したDMEM−F12ベースで構成した。
【0071】
あるいは、前記完全培養培地は、10%胎児子ウシ血清(JRH)、0.16mM b−メルカプトエタノール(SIGMA)、1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)、1ng/ml IGF1(Tebu)、1ng/ml CNTF(Eurobio)、1ng/ml Il−6(Eurobio)、1ng/ml Il−6R(Tebu)、1%ペニストレプトマイシン (Biowhittaker)を添加したDMEM−F12ベースで構成した。
【0072】
また、前記完全培養培地は、10%胎児子ウシ血清(JRH)、0.16mM b−メルカプトエタノール(SIGMA)、1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)、1ng/ml IGF1(Tebu)、1ng/ml CNTF(Eurobio)、1%ペニストレプトマイシン(Biowhittaker)を添加したDMEM−F12ベースで構成してもよい。
【0073】
フィーダー細胞の調製
前記マウス繊維芽細胞STO細胞系統(ATCC)を、4%胎児子ウシ血清(JRH)および1%グルタミン(Biowhittaker)を添加したDMEM(Cambrex)中37.5℃、7.5%COで維持した。STO細胞をサブコンフルエンスにおいてプロナーゼ(Roche)1Xで解離し、PBSで洗浄し、γ線源を用いて45グレイで照射した。フィーダー細胞を100mm皿内の新鮮培地に1.5x10〜2x10細胞で播種した。
【0074】
トランスフェクション
STO細胞系統:pGPARαおよびpMEHCSは、Bertrand Pain医師によって提供された。PCINeoは、Promegaから購入した。プラスミドDNAは、アルカリ溶菌法およびPEG精製を用いて調製した。トランスフェクションでは、朝、細胞を100mm皿当たり0.5x10細胞で播種した。夕方、それらをFuGENE 6(Roche)リポフェクション試薬を用いて3.0μgの環状pCINeo、15μg pGPARαまたはpMEHCSでトランスフェクトした。翌日、細胞を洗浄し、その培地を交換した。ネオマイシン、0.3mg/mlでの選抜はD1に開始し、8日間適用した。耐性細胞を増幅し、液体窒素で冷凍した。
【0075】
アルカリ性ホスファターゼ反応:
細胞をPBSで2回洗浄し、1.5%ホルムアルデヒド、0.5%グルタルアルデヒド、0.1%lgepalにより4℃で10〜20分間固定した。洗浄後、細胞を、100mM NaCl、100mM Tris pH9.5、50mM MgCl2、1mg/ml NBT、0.1mg/ml BCIPで構成されるアルカリ性ホスファターゼ染色溶液中で37℃でインキュベートした。PBS 1xまたはH2Oを加えることによってこの反応を停止させた。
【0076】
免疫蛍光解析:
SSEA−1抗体は、Developmental Studies Hybridoma Bank of the University of IOWAから購入した。
【0077】
細胞を、1.5%ホルムアルデヒド、0.5%グルタルアルデヒドにより、または0.2%グルタルアルデヒド、0.01%IGEPALにより4℃で20分、あるいはパラホルムアルデヒド4%またはメタノールにより室温にて10分固定した。
【0078】
細胞をPBS−BSA 0.1%中で2時間〜4時間インキュベートした。第一の希釈抗体を一晩加えた。洗浄後、第二のFITC標識抗IgG抗体を4℃で1時間加えた。前記抗体を除去し、前記細胞をPBSで洗浄することによって反応を停止させた。細胞を蛍光顕微鏡で観察した。
【0079】
PCR RFLP:
18日間インキュベートした胚組織由来のDNAを、QIAamp DNA mini-kitの使用説明書に従って精製した。前記ゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの断片を、次のプライマー対を用いたPCRによって増幅した:
【0080】
オリゴ(157−158):
フォワード:5’−GGTGTAAATATCAAAATTATC(配列番号1)
リバース:5’−CGGTTAAAATACGAATAGAGA(配列番号2)
オリゴ(78−81):
フォワード:5’−CTATGAGCAGTTACGAGGGTC(配列番号3)
リバース:5’−CGGACCAACAGGCTAGTCTC(配列番号4)
【0081】
アンプリコンはそれぞれ3106bpおよび1004bpである。Barred Rockニワトリ由来のDNAに対するプライマー157の特異性は、White Leghorn由来のDNAよりも高い。結果として得られたアンプリコンはHincII酵素で切断される。
RT PCR解析:
【0082】
RNAを、Promega SV total RNA isolation kitの使用説明書に従って精製した。インキュベーションから5日後の胚から頭部RNAを、15日間インキュベートした大腿骨胚から骨髄RNAを、成体ニワトリから精巣RNAを抽出した。BR15細胞由来のRNAを、Qiagen RNeasy kitの使用説明書に従って抽出した。RNAを、Promega Random primer kitおよびAMV Reverse transcriptase kitの使用説明書に従って逆転写した。PCR増幅を次のプライマーを用いて実現した。
【0083】
オリゴvasa:
Vasaフォワード:TTTGGTACTAGATGAAGCAGACC(配列番号5)
Vasaリバース:GTTCCCTATCTCCATGAATGC(配列番号6)
オリゴBrachyury:
Brachyuryフォワード:CACAAAGACATGATGGAGGAAG(配列番号7)
フォワード2:TGAAGTCCTCTCCAAAACCATT(配列番号8)
Brachyuryリバース:CATAAGTTCGGGTACTGACTGG(配列番号9)
リバース2:CACAAAATCATTCTGCGGTAAA(配列番号10)
オリゴGAPDH:
GAPDHフォワード:AGGTGCTGAGTATGTTGTGGAGTC(配列番号11)
GAPDHリバース:AGAACTGAGCGGTGGTGAAGA(配列番号12)
オリゴThy−1:
フォワード:AGGACAACAGGAAGCACATCAT(配列番号13)
リバース:GTTCTGGATCAAGAGGCTGAAG(配列番号14)
【0084】
レシピエント胚への細胞注入:
照射する場合には、産まれたての未孵卵卵を、加速器源からの4グレイのX線照射に曝すことによってレシピエント胚を調製した。それらの胚にはその卵の長軸に切り込んだ窓から操作した。卵殻を粉砕により除去した。1滴のPBSを加えることによって卵殻膜を湿った状態に維持した。細胞注入直前にその卵殻膜を切断して胚を露出させた。培養培地中の細胞3μlをマイクロピペットを用いてレシピエント胚の胚下腔に注入した。
【0085】
卵白に予め浸した卵殻膜の2切断端を合わせることによって前記窓を閉鎖した。卵殻膜が乾燥する場合には、それらの窓をサージカルテープで密閉した。卵を、37.5℃、50%相対湿度に維持した通常のインキュベーター内でインキュベートし、18日間1時間ごとに90°回転させた。その後、卵を37℃、85%相対湿度の通常の孵卵器に移し、孵化させた。インキュベーションから18日後の胚において表現型および体細胞キメラ現象を評価した。注入した鳥をBarred Rockニワトリとかけ合わせることによって、ドナー細胞の生殖細胞系列寄与を評価した。
【0086】
実施例2:ニワトリES細胞の単離および増幅
ニワトリ胚幹細胞は産みたての卵から単離した。平均200胚をプールし、照射マウス繊維芽細胞のフィーダー層に播種した。実際に、Etches et al. (1996 Mol. Reprod. Dev. 45:291-288)は、マウス繊維芽細胞と同時培養したニワトリ胚盤葉細胞の注入後に有意に多い体細胞キメラが見られたことを示している。最初の播種から継代培養3〜5代まで、胚盤葉細胞を10%ウシ胎児血清(JRH)、0.16mM β−メルカプトエタノール(SIGMA)、1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)、1ng/ml IGF−1(TEBU)、1ng/ml CNTF(Eurobio)、1ng/ml IL−6(Eurobio)、1ng/ml IL−6R(TEBU)、1ng/ml SCF(TEBU)、1ng/mlウシFGF(Peprotech)、1%ペニストレプトマイシン(Biowhittaker)を添加したDMEM−F12塩基からなる完全培養培地で増殖させた。次に、数代後、数種の増殖因子を除去し、分化を避けるために最小培養培地で細胞を増殖させた。除去した増殖因子は(SCFとFGF)、または(SCF、FGF、IL−6、IL−6R)のいずれかであった。
【0087】
分化を避けてニワトリES細胞を増殖させる培養培地は、10%ウシ胎児血清(JRH)、0.16mM β−メルカプトエタノール(SIGMA)、 1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)、および1ng/ml IGF−1、1ng/ml CNTF、1ng/ml IL−6、1ng/ml IL−6R、1%ペニストレプトマイシンを添加した基礎培地(すなわちDMEM−F12)からなった。あるいは、分化を避けてニワトリES細胞を増殖させる培養培地は、10%ウシ胎児血清(JRH)、0.16mM β−メルカプトエタノール(SIGMA)、1%非必須アミノ酸(Biowhittaker)、1mMピルビン酸ナトリウム(Biowhittaker)、2mM L−グルタミン(Biowhittaker)を添加し、1ng/ml IGF−1、1ng/ml CNTF、1%ペニストレプトマイシン(Biowhittaker)を添加した基礎培地(すなわちDMEM−F12)を含む。
【0088】
ニワトリES細胞は種々のニワトリ系統から単離および拡張することができる(表1)。
【0089】
【表1】

【0090】
in vitroで単離および増幅された細胞のES状態の特定は、マウスおよびヒトES細胞に特異的であることが実証されている一連の生物学的基準:自己再生特性、細胞形態、幹細胞特異的マーカーの発現、および細胞の全能性、すなわち、in vitroにおいて様々な系統へ分化する、また、in vivoにおいて胚の構成に寄与するそれらの能力による。ほとんどの単離物の増殖特徴は1年以上培養維持されたニワトリ胚盤葉細胞で見られるものと同等であり(図1)、これはそれらの不明確な自己再生の可能性を示している。胚盤葉細胞はコロニーとして増殖した。それらは大きな核とわずかな細胞質を有する丸い細胞であった(図2のBR22p2およびBR22p3)。興味深いことに、胚盤葉細胞の形態が培養中に密に結合した細胞(図2のBR22p2およびBR22p3)から結びつきがよりゆるいより分散した細胞(図2のBR29p12)へと進化することが見出された。結びつきがよりゆるい細胞は最小培地での長期培養で安定化させることができた。これら形態の異なる細胞を幹細胞特異的マーカーの発現および胚の構成に寄与するそれらの能力に関してさらに特性決定した。
【0091】
ES細胞は従来、種々のマーカー、ECMA−7(Kemler et al. 1981 J. Embryol. Exp. Morphol. 64:45-60)、SSEA−1(Solter and Knowles, 1978 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75(11):5565-5569)、EMA−1(Hahnel and Eddy, 1986 J. reprod. Immunol. 10(2)89-110)の発現;特異的酵素活性テロメラーゼおよびアルカリ性ホスファターゼ活性の存在;ならびにTROMA−1のような分化細胞のマーカーの不在によって定義されている。EMA−1およびSSEA−1マーカーおよびアルカリ性ホスファターゼ活性の発現を、in vitroで増幅された胚盤葉細胞で評価した。分析を全うするため、培養中に変化する胚盤葉細胞の形態、生殖細胞系列 (Tsunekawa et al, 2000 Development 127:2741-2750)、中胚葉系列(Wilkinson et al, 1990, Nature 343:657-659)および造血系列(Uchida et al, 1994 Blood 83:3758-3779)に特異的なマーカーを加えた。Brachyuryに対する抗体Thy−1およびvasaは利用できないことから、対応する遺伝子の転写をRT PCRにより評価した。この分析を長期培養期間中、異なる形態に関して行った。SSEA−1およびEMA−1は長期培養期間中発現し続けた(図3)。アルカリ性ホスファターゼ活性もまた、同じ培養期間中、安定し続けていた(図4)。
【0092】
図5は、細胞が培養維持されている際の分化マーカーの発現の進化を示している。Vasa mRNAは、予測されたように男性生殖腺は強く存在していた(図5レーン3)。Vasa mRNAはステージXの胚には検出されなかった(レーン4)が、生殖細胞はステージXの胚に存在する。Vasa遺伝子は、培養維持された細胞で再現性よく発現されたが弱かった(レーン18〜36)。ステージXの胚にVasa転写物が存在しないことは、RT PCRの感受性の低さによって説明することができる。in vitroで増幅された細胞におけるvasa遺伝子の発現は、これらの細胞が生殖細胞系列能を有するか、またはステージXの胚に存在する生殖細胞がin vitroで増幅されたかのいずれかを意味し得る。中胚葉系列のマーカーであるBrachyury mRNAはすでにステージXの胚(産みたての卵からの胚)で検出されている(図5レーン4)。細胞が培養維持されている間、発現は増大した(図5 BR8 レーン12および13;BR15 レーン19〜26;BR18 レーン27〜30およびBR19 レーン32〜34)。造血系列は中胚葉を起源としたものである。造血系列のマーカーThy−1 mRNAもまた、培養維持された細胞で検出された(レーン7、8;11、12、13;16〜24;27〜34)。雛の神経冠細胞のマーカーであるHNK1が胚盤葉細胞により発現された。HNK1の発現は細胞が培養維持されている間安定であり続けた(データは示されていない)。未分化細胞のマーカーは総ての培養期間に発現された(データは示されていない)。培養胚盤葉細胞は未分化細胞のマーカーならびに神経冠細胞および中胚葉マーカーを発現した。驚くことに、生殖細胞特異的である考えられたVasa遺伝子はES細胞で転写される。
【0093】
in vitro増幅されたニワトリ細胞の全能性は、in vivoにおいて胚の再構成に寄与するそれらの能力を評価することにより確認した。
【0094】
キメラ現象のレベルに対する作用を決定するため、レシピエントニワトリ胚に異なる数のニワトリES細胞を注入する試験を設定した。定着効率に対するレシピエント胚の照射の影響も検討した。注入と照射の作用をモニタリングするため、(i)胚の生存力;(ii)表現型キメラの割合%(有色羽(feathers)を有する胚の割合%);(iii)表現型キメラ現象の程度(有色羽の割合%);(iv)体細胞キメラ現象の割合%(羽以外の組織におけるキメラ現象)の4つのパラメーターを選択した。
【0095】
予めγ線で傷つけた、または照射を行わなかった産みたてのレシピエント胚の胚下腔に300、5,000、15,000または30,000のESドナー細胞を注入した。注入された卵を標準的な条件に従って孵卵させた。その培養時間で、定着能の進化を測定するため、培養14日〜43日に毎週、培養胚盤葉細胞を注入した。孵卵18日目に総ての胚を分析した。
【0096】
培養胚盤葉細胞(ドナー細胞)は、優性白色遺伝子座Iにおける同型接合劣性(II)である有色Barred RockまたはS86N系統に由来するものであった。ドナー細胞を、I遺伝子座において同型接合優性であるWhite Leghorn系統(レシピエント系統)から得られたレシピエント胚に注入した。体細胞キメラは孵化において黒色の産毛(black down)の存在によって同定した。しかしながらやはり、ドナー細胞およびレシピエント胚からの遺伝的フィンガープリントを識別するために、PCR RFLPアプローチも行った(図6)。レシピエント系統のPCR RFLPパターンは個体によって異なる1または2バンドプロフィールである。ドナー系統のPCR RFLPパターンは3バンドプロフィールである。キメラ組織はドナーに典型的な3バンドプロフィールにより同定した。その後、注入した細胞が羽以外の組織に定着する能力を有するかどうかを判定することが可能であった。特異的マーカーの発現と同様に、細胞を長期培養で、細胞形態に従って維持しながらin vitro定着能を調べた。
【0097】
いくつかの表現型(すなわち、ドナー系統由来の細胞によって定着された羽を有する動物)と体細胞ニワトリキメラ(すなわち、ドナー系統由来の細胞によって定着された羽以外の組織を有する動物)が確認された。ドナー細胞は生殖腺を含む3つの胚葉層の総ての派生物に存在することが示された。この結果は、本発明の方法に従って得られたin vitroで拡張されたニワトリES細胞が、生殖腺を含むレシピエント胚の種々の組織を接ぎ足し(engraft)、再構成することができたことを示す。
【0098】
驚くことに、本発明者らは、先行技術で推奨された量(すなわち、照射細胞300〜500個前後)よりも多量の細胞の注入でも胚の生存力に影響がないことを実証する。さらに、表現型キメラ現象の割合%は、照射段階の有無にかかわらず、多量の細胞(すなわち、15000を超え、さらには30000前後)を注入する場合に有意に高まった。30000細胞の注入は上限ではなく、さらに多い細胞の注入も考えられ、制限は、これらの細胞を受容した後にレシピエント胚が生存および発達可能であるかどうかということだけである。本発明者らは、照射レシピエント胚では15000細胞の注入が、また、非照射胚では30000細胞の注入が良好な結果をもたらし、特に、生殖腺がキメラである胚の割合%が高まったことを実証する。
【0099】
本発明者らは、使用範囲の照射ではニワトリ胚の生存力に影響を及ぼさないことを実証する。さらに、定着の可能性は胚盤葉ニワトリ細胞の培養期間に依存しているとは思われなかった(データは示されていない)。
【0100】
これらのデータを考え合わせると、in vitroで単離および増幅されたES細胞が真の胚幹細胞であるということを裏付けるものである。
【0101】
実施例3:ニワトリES細胞による生殖細胞系列伝達
最良の注射法を開発したところ、注入された鳥の9%の生殖腺がキメラであった(データは示されていない)。生殖細胞系列伝達の課題に取り組むため、生殖腺の最適な定着が可能であることが示されている最良の方法に従い、レシピエント胚に培養細胞を注入することによって584個体の一群の動物を作出した。これらの鳥の表現型キメラ現象は、孵化時の数枚の羽(これらは後に喪失)から成鳥では95%を超えるまで拡大した(図7および表2)。
【0102】
【表2】

【0103】
生殖細胞系列へのドナー系列の寄与を評価するため、Barred Rock細胞を注入した雌鳥とBarred Rocks雄鳥を交尾させた。生殖細胞系列伝達は後代の黒色と黄色の分布を調べることで評価した。221羽の雌鳥の後代を調べた。16006羽のF1鳥のうち、5羽の雛は様々な割合%の白色羽を示し(1羽は孵化前に死亡)、1羽の雛はBarred Rockに典型的な羽毛色素沈着を示した(図8A)。Barred-Rock様の羽毛色素沈着を有する後代を産んだ雌鳥の説明および注入条件の説明は表3に示されている。培養59日後であっても、細胞は生殖細胞系列定着能を保持していた。生殖細胞系列伝達は雌鳥の高い割合%の表現型キメラ現象と相関していなかった。実際、Barred Rock様の雛の母鳥は白色であった。PGC注入可能数を評価したところ、50のPGC(Eyal-Giladi et al, 1976)がステージXの胚に存在しているものと思われた。最終的なPGC数は、細胞の連続継代培養から得られた希釈率ならびにレシピエント胚に注入された細胞懸濁液の濃度および容量に従って算出した。
【0104】
【表3】

【0105】
F1後代(16006羽)の5羽の雛のうち4羽が成鳥まで生存した。これら4羽の雌鳥にBarred Rock雄鳥の精液を受精させた。雌鳥5664−5665の後代はBarred Rock様であった(図8Bおよび表4)。他の3羽の雌鳥の後代はBarred Rock様およびWhite Leghorn様の雛であった(表4)。
【0106】
【表4】

【0107】
本発明者らはニワトリES細胞を培養する方法を提供する。胚盤葉細胞の増幅は、White LeghornおよびBarred Rockニワトリ系統に関してのみ記載されている(Pain et al, 1996 Dev. 122(8) 2339-2348)、Petitte et al,1990 108(1): 185-189、Zhu et al, 2005 Nat. Biotechnol. 23(9):1159-1169)。この研究で開発された培養法、特に、特定の増殖因子と時間内でのその進化の組合せにより、種々のニワトリ系統から細胞を再現性よく単離および増殖することができた。増幅効率は系統に依存し、この結果はマウスにおいて記載されている(Kawase et al, 1994 Int.J. Dev. Biol. 38(2):385-390)ES細胞の確立における系統差と一貫している。興味深いことに、マウスとは異なり、長期間培養維持された雛ES細胞の全能性は、いくつかの増殖因子の除去によって裏付けられる。すなわち、ニワトリES細胞は完全培養培地でも、また、IL−6、IL−6R、SCFおよびFGFなどの増殖因子を除去した完全培地でも、長期培養中、全能性が保持される。注目すべきは、ヒトES細胞はマウスES細胞に関して確立された培養条件では維持できないことである。
【0108】
Pain et al (1996)は、ニワトリ胚盤葉長期培養(160日を超える)において、マウスES細胞と同様の典型的な「ES様」形態羽を有する雛において、小細胞の大きなコロニーが密に詰まっていたことを記載している。対照的に、本発明者が長期培養維持したニワトリ胚盤葉細胞の形態はそれほど安定ではなく、密に結合した丸い形状を有する細胞から結びつきがよりゆるい細胞へ変化した。この形態学的進化は一貫しており、ニワトリの系統によらない。この形態変化は、ES細胞に特異的な自己再生特性には影響を及ぼさなかった。(i)免疫蛍光またはRT PCR分析による細胞の生化学的同定;(ii)培養細胞の生物学的特性を評価するための遺伝子導入法、によって、種々の系列の細胞の関与の可能性を検討した。細胞を外胚葉、中胚葉および内胚葉の3つの胚葉層の総てに特異的なマーカーに関して特性決定した。極めて早期の分化を示すマーカーが選択された。マーカーの特定の組合せを示す形態はなかった。未分化細胞のマーカーである、3つ総ての胚葉層のマーカーならびにvasaのような生殖細胞系列も検出できた。形態変化に特異的なマーカー発現の進化はなかった。形態学的に最も分化した細胞であっても、ES細胞に特異的なマーカーを発現し、分化のマーカーは発現しなかった。
【0109】
in vitroで増幅された細胞懸濁液をレシピエント胚に注入した。羽の色素沈着は、メラニン細胞から羽の軸へ色素が移動することにより起こる。メラニン細胞は胚の胴部の神経冠細胞に由来する。神経冠細胞の分化は胚発達の極めて初期に起こる。
【0110】
黒色系のニワトリの細胞を注入した白色レシピエント胚の羽毛の色素沈着は、注入細胞の全能性を反映し得ないが、メラニン細胞系列へ方向付けられた細胞は、レシピエントのメラニン芽細胞系列を連結することができたことを示し得る。よって、注入細胞のレシピエント胚への寄与の研究は、羽毛の観察に限定されなかったが、3つの胚葉層総ての組織派生物を含んだ。表現型キメラおよび体細胞キメラは、培養において観察された細胞の主要な各形態(コード、クランプおよび彗星状)で得られ、その形態によらず未分化状態を裏付けた。興味深いことに、生殖腺に注入細胞が定着した。
【0111】
細胞のES状態の最終的な証明は生殖細胞系列の伝達である。1羽のF0(注入)雌鳥(0.3%)が生殖細胞系列の伝達を裏付けた。この雌鳥の後代の雛16羽中、1羽のF1雛がBarred Rock様であった(6.25%)。F1雌鳥からのF2雛は総てBarred Rockの表現型を示し、これはドナー形質の獲得が数世代で安定であることを示している。様々な割合%の黒色羽を示したF1雌鳥の後代の半数がBarred Rock様であり、他の半数はメンデルの遺伝の法則から予測されるようにWhite Leghornの表現型を有していた。
【0112】
従って、本発明者らは、ニワトリ胚盤葉細胞の生殖細胞系列能を実証する。よって、ニワトリ胚盤葉細胞は鳥類の遺伝子導入に有用である。
【0113】
実施例4:カモES細胞の単離および増幅:
4.1−原材料
カモ卵
Pekin系統GL30からのカモ卵をGRIMAUD FRERES SELECTION (La Corbiere, Roussay France)から得た。親カモに大腸菌(Escherichia Coli)(自己ワクチンColi 01および02)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)(Landavax)、カモウイルス肝炎(Hepatovax)、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)(Ruvax)、鳥類メタニューモウイルス(Avian metapneumovirus)(Nemovac)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)および腸炎菌(Enteridis)(自己ワクチン)、リエメレラ・アンチペスティファー(Riemerella antipestifer)(自己ワクチンRiemerella)、鳥類メタニューモウイルス(Avian metapneumovirus)(Nobilis RTV不活性型)およびブタ丹毒菌(Ruvax)に対してワクチン接種されたものである。受け取った後、受精したPekin duck卵を次亜塩素酸塩(hypochloryde)浴中で殺菌を行った後、殻に付着した埃に関連した汚染のリスクを避けるためにFermacidal (Thermo)で除染した。
【0114】
フィーダー細胞
カモ幹細胞の多能性を維持するために、ネズミ起源の細胞(STO細胞)をフィーダー層として用いた。これらのフィーダー細胞をγ線照射(45〜55グレイ)により分裂不能とした後、プラスチック上に播種する。この照射量は、細胞周期の明らかな停止を誘発してなお、非分化細胞の細胞増殖の促進に必要な増殖因子および細胞外マトリックスの産生を可能とする、致死量以下の用量である。STO細胞系統は、SIM(Sandos Inbred Mice)マウス胚繊維芽細胞からA. Bernstein, Ontario Cancer Institute, Toronto, Canadaが誘導し、American Type Culture Collection (ATCC) (STO製品番号: CRL-1503, バッチ番号1198713)が供給したものである。新鮮なフィーダー層を週2回調製した。指数関数的に細胞を分離し、計数した。活力のある培養物を維持するために細胞の一部を播種し、別の一部を照射した。照射に関しては、本発明者らは試験管中10×10細胞/mLの細胞懸濁液を作製した。細胞を45〜55グレイの線量に曝し、プラスチック上に播種した。播種後、不活性化したフィーダー細胞でコーティングしたディッシュまたはプレートを最大5日間用いた。
【0115】
培地
培地GTM−3(Sigma、カタログ番号G9916)
DMEM−HamF12(Cambrex、カタログ番号BE04−687)
添加物
グルタミン(Cambrex、カタログ番号BE17−605E)
抗生物質:ペニシリン/ストレプトマイシン(Cambrex、カタログ番号BE17−602E))
非必須アミノ酸(Cambrex、カタログ番号BE13−114E)
ピルビン酸ナトリウム(Cambrex、カタログ番号BE13−115)
ビタミン(Cambrex、カタログ番号13−607C)
βメルカプトエタノール(Sigma、カタログ番号M7522)
酵母自己融解物(SAFC、カタログ番号58902C)
【0116】
因子
6つの異なる組換え因子を用いた。
組換えヒト毛様体神経栄養因子(CNTF)(Peprotech Inc、カタログ番号450−13)
組換えヒトインスリン様因子I(IGF1)(Peprotech Inc、カタログ番号100−11)
組換えヒトインターロイキン6(IL6)(Peprotech Inc、カタログ番号200−06)
組換えヒト可溶性インターロイキン6受容体(sIL6r)(Peprotech Inc、カタログ番号200−06R)
組換えヒト幹細胞因子(SCF)(Peprotech Inc、カタログ番号300−07)
組換えヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)(Peprotech Inc、カタログ番号100−18B)
【0117】
これらの総ての因子、推定IL6rを大腸菌で産生される。可溶性IL6rはトランスフェクトHEK293細胞で発現される。
【0118】
ウシ胎児血清
非照射ウシ胎児血清(FBS)(JRH、カタログ番号12003)
本プログラムで用いた非照射血清はオーストラリアで採取および生産されたものである。採取に用いた動物はUSDAの視察を受け、屠殺者に許容されるものであった。これを鳥類幹細胞培養中、培地に加えた。このバッチは幹細胞の培養維持に不可欠であり得る重要なタンパク質または成分の破壊を避けるために照射を行わなかった。
【0119】
照射血清(JRH、カタログ番号12107)
このプログラムに用いた照射バッチは米国で採取した。この照射バッチは、STO細胞(フィーダー細胞)の培養に用いたDMEM培地中の添加物として加えた。これらの細胞は幹細胞のように、増殖および培養維持に特定の品質の血清を必要としない。培地中の高濃度の血清を最小限にするため、本発明者らはSTO細胞を4%のFBSの存在下でのみ増殖するようにした。
【0120】
4.2−カモES細胞の単離および培養の方法
360前後の受精したカモ卵を割り、割っているときに卵白から卵黄を分離した。パンチを用いて予め孔の開いたリングの形に切り抜いた小さな吸収性の濾紙(Whatmann 3M paper)を用い、卵黄から胚を取り出した。切り抜きの直径は約5mmである。これらの小さなリングをオーブン内で約30分間、乾熱を用いて滅菌した。実際には、胚採取の段階で、小さな濾紙のリングを卵黄の表面にのせ、胚の中心に置き、従って胚は濾紙のリングに取り囲まれる。次に、これを小さなはさみで切り抜き、そのまま取り出してペトリ皿にのせ、PBSを満たす。このようにリングによって取り出された胚から培地中で余分な卵黄を除去し、このように余分な卵黄素を含まない胚子板をパスツールピペットで採取した。
【0121】
これらのカモ胚を、PBS1×を含む50mL試験管に入れた。次に、カモ胚を機械的に剥離し、PBSで洗浄し、39℃、7.5% COで完全培養培地中、フィーダーSTO細胞の不活化層に播種した。このフィーダー細胞は2.7×10細胞/cm前後で6ウェルプレートまたはディッシュに播種した。完全培養培地は、10%ウシ胎児血清、終濃度1ng/mlのIGF1、CNTFおよび所望により、Il−6、Il−6R、SCFおよびウシFGF、1%非必須アミノ酸、市販のビタミンの1%混合物、終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、終濃度0.5mMのβ−メルカプト−エタノール、終濃度2.1mMのグルタミン、終濃度100U/mlのペニシリン、終濃度100μg/mlのストレプトマイシンおよび酵母自己融解物1×を添加した無血清培地DMEM−Ham F12からなった。早くは、継代培養4代に、抗生物質の混合物をもはや培地に加えない。
【0122】
カモES細胞を継代培養4代までDMEM−Ham F12完全培養培地で培養した。4代後、基本培地を改変し、DMEM−Ham F12完全培地を下記のいずれかに置き換えた:
【0123】
10%ウシ胎児血清、終濃度1ng/mlのIGF1およびCNTF、1%非必須アミノ酸、市販のビタミンの1%混合物、終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、終濃度0.5mMのβ−メルカプト−エタノール、終濃度2.1mMのグルタミンおよび酵母自己融解物1×を添加したXGTM−3培地、または
【0124】
10%ウシ胎児血清、終濃度1ng/mlのIGF1、CNTF、Il−6、Il−6R、SCF、FGF、1%非必須アミノ酸、市販のビタミンの1%混合物、終濃度0.1mMのピルビン酸ナトリウム、終濃度0.5mMのβ−メルカプト−エタノール、終濃度の2.1mMのグルタミンおよび酵母自己融解物1×を添加したGTM−3培地。
カモES細胞は、分化させずに、この新たな培養培地で少なくとも14代さらに培養された。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】鳥類ES細胞の細胞培養動態。ニワトリES細胞を、10%ウシ胎児血清およびIGF1、CNTF、IL6、IL6R、SCF、FGFを添加した培養培地中、マウスフィーダー層上で増殖させた。解離ごとに細胞の数を決定した。各解離時に得られた細胞の数を加えて、累積増殖係数を決定した
【図2】ニワトリES細胞の形態。胚盤葉細胞の形態:(A)BR22p2および(B)BR22p3:大きな核とわずかな細胞質を有する丸型細胞。(C)BR29p12:結びつきがよりゆるい分散した胚盤葉細胞。
【図3】細胞特異的マーカーSSEA−1の発現。in vitroで異なる培養期間維持した胚盤葉細胞においてES細胞特異的マーカーSSEA−1の発現を試験した。左パネルA:位相差。右パネルB:抗体染色。
【図4】ES細胞のアルカリ性ホスファターゼ活性。胚盤葉細胞の内因性アルカリ性ホスファターゼ活性。細胞を異なる培養期間アルカリ性ホスファターゼ活性染色した。
【図5】細胞を培養維持する一方での分化マーカーVASA、THY1、BRACHYURYの発現の進化。マーカーおよび培養。1:骨髄、2:胚(頭部);3:雄生殖腺、4:胚(ステージX);5:フィーダー(STO);6:フィーダー(SN);7:BR 4−5;8:BR4−6;9:BR 5−2;10:BR 8−7;11:BR 8−8;12:BR 8−9;13:BR 8−12;14:V 9−19;15:BR 15−0;16:BR 15−1;17:BR 15−2;18:BR 15−3;19:BR 15−5;20:BR 15−6;21:BR 15−7;22:BR 15−8;23:BR 15−8;24:BR 15−9;25:BR 15−10;26:BR 15−11;27:BR 18−2;28:BR 18−3;29:BR 18−4;30:BR 18−5;31:BR 19−1;32:BR 19−2;33:BR 19−3;34:BR 19−4;35:BR 20−2;36:BR 20−3;37:S1 p20;38:gDNA Barred Rock;39:水;40:水。異なる培養期間中のVasa、Thy−1およびBrachuyry(T)マーカーの発現。GAPDH対照マーカー。細胞を数週間培養維持した。解離ごとに細胞ペレットを冷凍した。各細胞ペレットのRNA抽出およびRT−PCRを同時に実施した。
【図6】ドナーおよびレシピエントニワトリ系統とキメラのPCR RFLPプロフィール解析。ドナーおよびレシピエントニワトリ系統とキメラのPCR RFLPプロフィール。ドナーおよびレシピエントニワトリ系統からの産まれたての有胚卵7個を5日間インキュベートした。全胚からDNAを抽出した。体細胞キメラ:ドナー細胞を注入した胚を18日間インキュベートした。血液、心臓、肝臓、脾臓および生殖腺からDNAを抽出した。
【図7】キメラ鳥。ドナーニワトリ細胞をレシピエントニワトリ胚に注入した。レシピエント胚を孵化までインキュベートした。キメラ鳥を成体まで飼育した。
【図8】F1およびF2後代。8A:典型的なBarred-Rock羽毛色素沈着を示すF1鳥。8B:5664−5665雌鳥からのF2鳥。雌鳥をBarred Rock雄鳥の精液で人工授精させた。卵を孵化までインキュベートした。
【図9】カモES細胞の形態。カモES細胞を、10%ウシ胎児血清およびIGF1、CNTF、IL6、IL6R、SCF、FGFを添加したDMEM培養培地中、マウスフィーダー層上で増殖させた。
【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】

【図4C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類胚幹(ES)細胞を培養する方法であって、
a)未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、
−インスリン様増殖因子−1(IGF−1)および毛様体神経栄養因子(CNTF);さらに
−動物血清;ならびに
−所望により、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン11(Il−11)、オンコスタチンおよびカルジオトロフィンを含んでなる群において選択される少なくとも1つの増殖因子;
を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCF、FGF、Il−6、Il−6R、LIF、オンコスタチン、カルジオトロフィンおよびIl−11から選択された少なくとも1つの増殖因子を除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程
を含んでなる、方法。
【請求項2】
a)未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)および繊維芽細胞増殖因子(FGF)、ならびに動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCF、FGF、Il−6およびIl−6Rを含んでなる群から選択される少なくとも1つの増殖因子を除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程;
を含んでなる、請求項1に記載の鳥類胚幹(ES)細胞を培養する方法。
【請求項3】
a)未孵卵の、鳥類受精卵胚盤葉板由来のES細胞を、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)および動物血清を添加した基礎培養培地に懸濁する工程;
b)工程a)において得られたES細胞の懸濁液をフィーダー細胞層上に播種し、該ES細胞を少なくとも2〜10代継代の間さらに培養する工程;
c)所望により、該培養培地から、SCFおよびFGFを含んでなる群から選択される少なくとも1つの増殖因子を除去する工程;
d)工程c)の培地中、フィーダー細胞層上で該ES細胞をさらに培養する工程;
を含んでなる、請求項1に記載の鳥類胚幹(ES)細胞を培養する方法。
【請求項4】
前記鳥類がニワトリである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記鳥類がカモである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鳥類胚幹細胞を遺伝学的に改変する方法であって、
a)請求項1〜5に記載の方法によって培養されたES細胞をベクターでトランスフェクトする工程;
b)トランスフェクトされたES細胞を選抜する工程;
c)遺伝学的に改変された選抜ESクローンをスクリーニングおよび増幅する工程、
d)動物血清ならびに少なくともインスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)および所望により、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含んでなる群において選択される少なくとも1つの増殖因子を含んでなる培養培地中、フィーダー細胞層上で、工程c)の該遺伝学的改変ES細胞を培養する工程
を含んでなる、方法。
【請求項7】
キメラ雛を得る方法であって、
a)請求項1〜5に記載の方法によって培養されたES細胞をレシピエント鳥類胚の胚下腔に導入する工程;および
b)雛として孵化させるために、工程a)において得られた胚をインキュベートする工程;
c)該雛に定着した異種細胞を含んでなる該キメラ雛を選抜する工程
を含んでなる、方法
【請求項8】
遺伝学的に改変されたキメラ雛を得る方法であって、
a)請求項6に記載の工程d)において得られた遺伝学的改変ES細胞をレシピエント鳥類胚の胚下腔に導入する工程;および
b)雛として孵化させるために、工程a)において得られた胚をインキュベートする工程;
c)該雛に定着した遺伝学的改変異種細胞を含んでなる該キメラ雛を選抜する工程
を含んでなる、方法
【請求項9】
前記キメラ雛の選抜が、羽毛の表現型解析によって実施される、請求項7および請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ES細胞の導入前にレシピエント胚の性別を決定する工程をさらに含んでなる、請求項7〜9に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の培養されたES細胞が、in vitroで少なくとも5日間培養されたものである、請求項7および請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レシピエント胚が、産まれたての未孵卵の卵に由来し、5,000個前後〜70,000個前後の細胞を含む、請求項7〜11に記載の方法。
【請求項13】
前記レシピエント胚が、Eyal-Giladi & Kochav分類のステージVI〜XIIの間に含まれる段階、好ましくはEyal-Giladi & Kochav分類のステージX前後の段階にある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1000個のES細胞、好ましくは少なくとも15,000個のES細胞が、前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される、請求項7〜13に記載の方法。。
【請求項15】
少なくとも30,000個のES細胞が、前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される、請求項7〜14に記載の方法。
【請求項16】
前記レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入されるES細胞が、雌および雄ES細胞の混合集団である、請求項7〜15に記載の方法。
【請求項17】
雌ES細胞が、雌レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される、請求項7〜15に記載の方法。
【請求項18】
雄ES細胞が、雄レシピエント鳥類胚の胚下腔に導入される、請求項7〜15に記載の方法。
【請求項19】
ES細胞の前記レシピエント胚の胚下腔への導入前に、前記レシピエント胚にX線またはγ線照射を照射する工程をさらに含んでなる、請求項7〜18に記載の方法。
【請求項20】
ニワトリレシピエント胚が、3〜6グレイ間のX線、好ましくは4グレイ前後のX線で照射される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
事前に4グレイ前後でX線照射された前記レシピエントニワトリ胚の胚下腔に、15,000個前後のニワトリES細胞が導入される、請求項7〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記非照射レシピエントニワトリ胚の胚下腔に、少なくとも30,000個のニワトリES細胞が導入される、請求項7〜20に記載の方法。
【請求項23】
前記レシピエントニワトリ胚が、White Leghorn系統のものであり、前記ニワトリES細胞が、barred rock系統、Marans系統、S86N系統からなる群において選択される系統に由来する、請求項7〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記レシピエントニワトリ胚が、barred rock系統、Marans系統およびS86N系統からなる群において選択されるニワトリ系統のものであり、前記ニワトリES細胞が、White Leghorn系統に由来する、請求項7〜22に記載の方法。
【請求項25】
異種細胞を含んでなる前記キメラ雛の選抜が
a)前記キメラ雛から遺伝物質のサンプルを得る工程;
b)該鳥類ゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列における多型の存在についてアッセイする工程であって、該多型が、フォワードプライマー5’−GGTGTAAATATCAAAATTATC−3’(配列番号1)およびリバースプライマー5’−CGGTTAAAATACGAATAGAGA−3’(配列番号2)のセットとフォワードプライマー5’−CTATGAGCAGTTACGAGGGTC−3’(配列番号3)およびリバースプライマー5’−CGGACCAACAGGCTAGTCTC−3’(配列番号4)のセットからなる群において選択されるプライマーセットによる増幅によって同定可能である工程
を含んでなる、請求項23〜24に記載の方法。
【請求項26】
多型の有無を同定する前記方法が、制限断片長多型(RFLP)解析、ヘテロ二本鎖解析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE) 温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)およびジデオキシ−フィンガープリント法(ddF)からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記多型の存在についてアッセイする前記工程が、
a)HincII制限酵素で前記遺伝物質を消化する工程;
b)該消化から得られた断片を分離する工程;
c)該断片によって生じた制限パターンを検出する工程;および
d)所望により、該パターンと、HincII制限酵素を用いてのWhite Leghorn、Marans、Barred Rock、S86N遺伝物質の消化によって得られる少なくとも1つの制限パターンとを比較する工程であって、工程c)およびd)において検出された制限パターンの違いが異種細胞を含んでなるキメラ雛の指標となる工程
を含む、請求項25および請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素PCRによって実施され、この際、前記解析が、PCR増幅DNAの制限酵素HincIIでの消化を含む、請求項25〜27に記載の方法。
【請求項29】
キメラ雛の後代を得る方法であって、次の工程:
a)請求項7または請求項8に記載の工程c)において得られた選抜キメラ雛を成鳥として成熟させる工程;
b)内部に異種細胞を有する該成鳥を繁殖させ、その結果、鳥後代を生み出す工程;および
c)該後代において対象となる鳥を選抜する工程
を含む、方法。
【請求項30】
前記鳥の選抜が、羽毛の表現型解析によって実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記鳥の選抜が、前記鳥ゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列におけるHincII多型の存在についてアッセイすることによる遺伝子型解析によって実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
遺伝学的に改変された異種細胞中に含まれる前記ベクターによってコードされる異種ポリペプチドを発現させる工程をさらに含んでなる、請求項29〜31に記載の方法。
【請求項33】
前記異種ポリペプチドが、前記遺伝学的改変鳥によって産み出された発生中の鳥類卵の卵白に送達される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
鳥類胚幹細胞用の培養培地であって、少なくともインスリン様増殖因子−1(IGF−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、および所望により、インターロイキン6(Il−6)、インターロイキン6受容体(Il−6R)、幹細胞因子(SCF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)を含んでなる群において選択される少なくとも1つの化合物を含んでなり、少なくとも7日間、好ましくは少なくとも100日間培養する該鳥類胚幹細胞の維持に十分である、培養培地。
【請求項35】
フィーダー細胞の層をさらに含んでなる、請求項34に記載の培養培地。
【請求項36】
White Leghornニワトリ系統と別のニワトリ系統とを区別するための遺伝子多型解析方法であって、
a)該White Leghornニワトリ系統からの遺伝物質のサンプル、および該他ニワトリ系統からの遺伝物質のサンプルを得る工程;
b)該ニワトリゲノムに組み込まれた鳥類白血病ウイルスの配列における多型の存在についてアッセイする工程であって、該多型が、フォワードプライマー5’−GGTGTAAATATCAAAATTATC−3’(配列番号1)およびリバースプライマー5’−CGGTTAAAATACGAATAGAGA−3’(配列番号2)のセットとフォワードプライマー5’−CTATGAGCAGTTACGAGGGTC−3’(配列番号3)およびリバースプライマー5’−CGGACCAACAGGCTAGTCTC−3’(配列番号4)のセットからなる群において選択されるプライマーセットによる増幅によって同定可能である工程
を含む、方法
【請求項37】
前記増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素PCRによって実施される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記多型の存在についてアッセイする前記工程が、
a)HincII制限酵素でPCR増幅DNAを消化する工程;
b)該消化から得られた断片を分離する工程;
c)該断片によって生じた制限パターンを検出する工程;および
d)HincII制限酵素を用いてWhite Leghorn遺伝物質の消化によって得られる該パターンと、前記他ニワトリ系統の遺伝物質の消化によって得られる該パターンとを比較する工程であって、HincII制限部位の存在がWhite Leghorn系統の指標となり、HincII制限部位の不在がWhite Leghorm系統でないことの指標となる工程
を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
多型の有無を同定する前記方法が、制限断片長多型(RFLP)解析、ヘテロ二本鎖解析、一本鎖高次構造多型(SSCP)、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE) 温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)およびジデオキシ−フィンガープリント法(ddF)からなる群から選択される、請求項36〜38に記載の方法。

【図5】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図1】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−500015(P2010−500015A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523296(P2009−523296)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058263
【国際公開番号】WO2008/017704
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504341128)
【Fターム(参考)】