説明

脂肪族および芳香族炭化水素の混合物を製造するプロセス

本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成に改質ガスを提供することによって、脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素を製造するプロセスに関する。本プロセスに使用される改質ガスは、Ni/La触媒上での炭化水素供給物の自己熱乾式改質により生成され、合成ガス(H2およびCO)、酸素(O2)および必要に応じて、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)および不活性ガスからなる群より選択されるさらに別の成分から実質的になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒が、炭化水素供給物を改質することよって生成される合成ガスと接触させられる、フィッシャー・トロプシュ合成により脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素の混合物を含む生成物流を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
メタンなどの炭化水素供給物が、その炭水化物供給物が合成用ガス(合成ガス)に最初に転化され、その後、合成ガスがフィッシャー・トロプシュ合成(F−T合成)によって炭化水素生成物流に転化される第2の工程が続くプロセスによって、より複雑な炭化水素を含む生成物流に転化できることが以前に記載されている。
【0003】
特許文献1において、例えば、最初に、炭化水素供給原料および炭化水素流の混合物に触媒流改質を行って第1改質ガスを生成し、次いで、この改質ガスを、第2改質触媒上で酸素含有ガスにより部分的に燃焼させて、合成ガスを生成する、そのようなプロセスが記載されている。この合成ガスは、F−T合成により炭化水素を合成するために使用される。特許文献1によるプロセスは、F−T合成工程において得られた廃ガスが第1改質ガスに再循環されることを特徴とする。
【0004】
特許文献2において、炭化水素供給流が合成ガスに転化される改質工程、および生成された合成ガスが炭化水素生成物流に転化されるF−T合成工程を含む、炭化水素を製造する複合プロセスが記載されている。特許文献2における合成ガスは、触媒自己熱改質または(触媒)部分酸化などの、酸素を使用する技術によって生成されることが好ましい。
【0005】
特許文献3において、合成ガス混合物が、(a)炭化水素供給物を予備改質して、メタン、水素および二酸化炭素の混合物を生成し、(b)工程(a)において得られた混合物を650℃超に加熱し、(c)酸素の供給源により(b)の加熱混合物の部分酸化を行うことによって、調製される、F−T合成生成物を調製するプロセスが記載されている。
【0006】
改質工程とF−T合成工程を組み合わせた、炭化水素を製造するための従来のプロセスの欠点は、F−T合成工程における二酸化炭素とメタンの非選択的生成である。これにより、C2〜C6炭化水素の選択率が比較的低くなり、そのプロセスが経済的でなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第03/016250号パンフレット
【特許文献2】仏国特許発明第2878858号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/097440号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある技術的課題は、脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素の選択性が改善された、メタン(CH4)を脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素の混合物に転化するプロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題に対する解決策は、ここに下記に記載され、請求項に特徴付けられたプロセスを提供することによって達成される。
【0010】
したがって、本発明は、フィッシャー・トロプシュ合成によって脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素の混合物を含む生成物流を製造するプロセスであって、フィッシャー・トロプシュ触媒を、改質触媒の存在下で炭化水素供給物の自己熱乾式改質により生成される改質ガスと接触させる工程を有してなり、この改質ガスは、合成ガス(H2およびCO)、酸素(O2)および必要に応じて、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)および不活性ガスからなる群より選択されるさらに別の成分から実質的になるものであるプロセスを提供する。
【0011】
本発明に関して、意外なことに、フィッシャー・トロプシュ合成反応のC2〜C6炭化水素の選択率が、このフィッシャー・トロプシュ合成反応の供給流が分子酸素(O2)を含む場合に、著しく増加させられることが分かった。その結果として、二酸化炭素の形態にある炭素原子の損失を減少させることができ、これにより、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスの炭素効率が著しく増加する。フィッシャー・トロプシュ合成供給原料の酸素含有量は、好ましくは1000pp未満に減少させるべきであると従来技術に教示されているので、この効果は極めて意外である。例えば、米国特許出願公開第2004/0198845号明細書参照のこと。
【0012】
したがって、本発明は、脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素を製造するプロセスであって、
(a) ここに定義された「改質ガス」が、「改質触媒」の存在下で炭化水素供給物の自己熱乾式改質によって生成される、「改質工程」、および
(b) 「フィッシャー・トロプシュ触媒」が、フィッシャー・トロプシュ合成を可能にするプロセス条件下で、(a)において生成された「改質ガス」に接触させられる、「フィッシャー・トロプシュ合成工程」、
を有してなるプロセスを提供する。
【0013】
本発明のプロセスに使用される「改質ガス」は、合成ガス(H2およびCO)、酸素(O2)および必要に応じて、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)および不活性ガスからなる群より選択されるさらに別の成分から実質的になる。
【0014】
本発明の「改質ガス」は、好ましくは少なくとも0.1モル%のO2、より好ましくは少なくとも0.2モル%のO2、さらにより好ましくは少なくとも0.3モル%のO2、特に好ましくは少なくとも0.35モル%のO2を含む。さらに、本発明の「改質ガス」は、好ましくは5モル%以下のO2、より好ましくは2.5モル%以下のO2、さらにより好ましくは1モル%以下のO2、特に好ましくは0.5モル%以下のO2を含む。本発明のプロセスに使用される改質ガスは約0.4モル%の酸素(O2)を含むことが最も好ましい。
【0015】
ここに用いられる「不活性ガス」という用語は、フィッシャー・トロプシュ触媒が改質ガスと接触させられる条件下で気相にあり、フィッシャー・トロプシュ合成反応に関与および/または干渉しない任意の元素に関する。したがって、改質ガス中に存在してよい「不活性ガス」は、改質ガスの残りのガス成分の不活性希釈剤として機能を果たすことができる。不活性ガスが窒素(N2)であることが好ましい。
【0016】
本発明のプロセスに使用される「改質ガス」の主成分は合成用ガス(合成ガス;H2およびCOの混合物)であることが好ましい。したがって、本発明の改質ガスは少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも55モル%の合成ガスを含む。それでも、フィッシャー・トロプシュ合成工程は、さらに高い比率の合成ガスを有する「改質ガス」を使用して行ってよいことが当業者には明らかであろう。
【0017】
本発明のプロセスに使用される改質ガスは、好ましくは少なくとも1の、より好ましくは少なくとも1.2の、さらにより好ましくは少なくとも1.4の、特に好ましくは少なくとも1.6であるが、好ましくは4以下の、より好ましくは3以下の、さらにより好ましくは2以下の、特に好ましくは1.8以下の、水素(H2)の一酸化炭素(CO)に対する比を有する。「改質ガス」が、少なくとも1.6であるが、1.8以下のH2のCOに対する比(1.6〜1.8のH2対CO比)を有することが最も好ましい。
【0018】
本発明の改質ガスは、改質触媒の存在下で炭化水素供給物の触媒自己熱乾式改質により生成される。炭化水素供給物中に含まれる炭化水素は、メタン、天然ガスまたは液化石油ガス(LPG)などのガス状炭化水素だけでなく、C6+炭化水素などのより重質の炭化水素も含んでよい。ある実施の形態において、炭化水素供給物は、フィッシャー・トロプシュ合成反応により生成される望ましくない副生成物を含む。本発明のプロセスの炭化水素供給物中に含まれる主な炭化水素成分はメタンであることが好ましい。本発明に関して、「主な炭化水素成分」という用語は、所定の炭化水素が、全ての含まれる炭化水素の50モル%超、より好ましくは全ての含まれる炭化水素の60モル%超、さらにより好ましくは全ての含まれる炭化水素の70モル%超、最も好ましくは全ての含まれる炭化水素の75モル%超を構成することを意味する。したがって、本発明の改質ガスに含まれる合成ガスを製造するための特の好ましいプロセスは、メタンの触媒自己熱乾式改質(ATDRM)である。
【0019】
メタン(CH4)、酸素(O2)および二酸化炭素(CO2)の混合物を適切な触媒と接触させることによって、一回の実施で、吸熱乾式改質および発熱メタン酸化を行うことができ、これは、合成ガス合成中のエネルギー消費を減少させるための効果的な手段を表す。例えば、MORTOLA,et al. The perfomance of Pt/CeZrO2/Al2O3 catalysts on the partial oxidation and autothermal reforming of methane Edited by NORONHA, et al. Elsevier, 2007. p.409-414を参照のこと。ATDRMのさらに別の利点は、生成された合成ガス組成物のH2/CO比は約1.4〜1.8であり、これは、F−T合成に使用するのに非常に都合よい。
【0020】
炭化水素供給物の自己熱乾式改質は、「改質触媒」の存在下で行われる。炭化水素供給物の自己熱乾式改質を触媒するのに有用な改質触媒が以前に記載されてきた;例えば、MORTOLA, et al. The perfomance of Pt/CeZrO2/Al2O3 catalysts on the partial oxidation and autothermal reforming of methane. Edited by NORONHA, et al. Elsevier, 2007. p.409-414またはPASSOS, et al. Catalysis Today. 2005, vol.1, p.23-30を参照のこと。他の公知の改質触媒としては、以下に限られないが、Ni/La23触媒;Ni/Al23触媒;およびNi/MgO−Al23触媒が挙げられる。本発明のプロセスに使用される改質触媒がNi/La23触媒であることが好ましい。炭化水素の自己熱乾式改質に有用な触媒を製造する方法が、当該技術分野において公知である。例えば、国際公開第00/43121号パンフレットまたはSOUZA, et al. Autothermal reforming of methane over nickel catalysts prepared from hydrotalcite-like compounds. Edited by NORONHA, et al. Elsevier, 2007. p.451-456を参照のこと。
【0021】
その場で調製されたNi/La23触媒を本発明のプロセスに使用することが最も好ましい。「その場で調製された」という用語は、触媒が、自己熱乾式改質プロセスを行うべきプロセス装置内にすでに配置されている触媒エンクロージャ内で調製されること、または触媒が、プロセス装置に直接配置できる触媒エンクロージャ内で調製されることを意味する。「その場で調製されたNi/La23触媒」は、以下のように調製できる:La23粒子を最終的な触媒エンクロージャ内に配置する。次いで、この担体を含む触媒に、加熱されたメタン含有ガス状混合物(例えば、450℃〜500℃に加熱されたCH4+O2+CO2)を供給して、担体を安定化させる。その後、触媒組成物が指定の量のNiを含むまで、担体にNi−塩溶液を含侵させる。その場で調製されたNi/La23触媒が3〜5質量%のNiを含むことが好ましい。使用したNi−塩がNi(NO32であることが好ましい。含侵工程後、担体を含む触媒に供給されるガス状混合物の温度を上昇させる(例えば、660℃〜700℃に)。その結果、含侵されたLa23粒子に含まれるNi−酸化物がメタンにより還元される。ここに例示したように、得られた「その場で調製されたNi/La23触媒」は、例えば、メタンから合成ガスを生成するために、炭化水素供給物の自己熱乾式改質のためのプロセスに有用である。
【0022】
したがって、CH4、O2およびCO2を含む供給流が、その供給流を、例えば、約710℃の反応温度でその場で調製されたNi/La23触媒と接触させることによって、ほぼ22モル%のCO、35モル%のH2および0.4モル%のO2を含む改質ガスを生成することによって、触媒自己熱乾式改質によって転化されるであろう。
【0023】
炭化水素を改質することによって生成される「改質ガス」は、F−T合成の供給物として使用してよい。F−T合成は、一酸化炭素と水素の混合物である合成用ガス(合成ガス)が、合成ガスをF−T合成条件下でF−T触媒と接触させることによって炭化水素化合物の複雑な混合物に転化される、よく知られた触媒化学反応である。例えば、KANEKO TAKAO, et al. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry. 7th edition. John Wiley , 1997. p.17-31を参照のこと。
【0024】
F−T合成に有用な最も一般的な触媒(「F−T触媒」)はFeおよび/またはCo系であるが、Ni−およびRu−系触媒も記載されてきた;例えば、米国特許第4177203号明細書;COMMEREUC, et al. J. Chem. Soc., Chem. Commun.. 1980, p.154 - 155;OKUHARA, et al. J. Chem. Soc., Chem. Commun.. 1981, p.1114-1115を参照のこと。一般に、Ni−系触媒が、メタンの製造に比較的より選択的であるのに対し、Co−、Fe−およびRu−系触媒は、少なくとも2つの炭素原子を有する炭化水素(C2+炭化水素)についてより選択的である。さらに、C2+炭化水素の選択率は、H2/CO比を減少させること、反応温度を低下させること、および反応装置の圧力を減少させることによって、増加させることができる。酸素被毒を受けやすいフィッシャー・トロプシュ触媒は、本発明のプロセスに使用するには適していないことが明らかである。そのような不適切なフィッシャー・トロプシュ触媒は、それらが、Mn、Cr、Mo、CuおよびVなどの高いレドックス特性を有する元素を含むという点で特徴的である。公知のフィッシャー・トロプシュ触媒が酸素被毒を受けやすいか否かを、例えば、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスの供給流中に分子酸素の存在下と不在下で、長期間に亘りフィッシャー・トロプシュ触媒の触媒活性を測定することによって、判定することが、当業者の十分範囲内である。
【0025】
本発明のプロセスにおいて好ましく使用されるフィッシャー・トロプシュ触媒は、コバルト−鉄−二成分酸化物(Co−Fe−O)触媒である。コバルト−鉄−二成分酸化物は、不活性担体上に担持されてもよい。適切な不活性担体が、当該技術分野において公知であり、その例としては、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)およびマグネシア(MgO)、並びにそれらの混合物が挙げられる。コバルト−鉄−二成分酸化物がシリカ(SiO2)上に担持されていることが好ましい。そのようなCo−Fe−O/SiO2触媒が、例えば、YONGHONG BI, et al. The Canadian Journal of Chemical Engineering. 2003, vol.81, p.230-242に記載されている。フィッシャー・トロプシュ合成反応は、典型的に、275〜350℃の反応温度および400〜1200h-1の合成ガスの総空間速度で行われる。
【0026】
本発明のプロセスの生成物流は、脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素を含む。ここに用いたように、「C2〜C6炭化水素」という用語は、2つから6つの炭素原子を有する有機化合物に関する。したがって、本発明のプロセスの生成物流は、2つから6つの炭素原子を有する脂肪族および芳香族炭化水素を含む。それでも、トルエンおよびキシレンを含む他の有機化合物も、少量、フィッシャー・トロプシュ合成反応において生成され、それゆえ、生成物流中に含まれるであろうことが当業者には明白である。
【0027】
本発明のプロセスのフィッシャー・トロプシュ合成工程において生成される特異的なさらに別の炭化水素の1つはメタン(CH4)である。このメタンは、必要に応じて、生成物流に含まれる二酸化炭素(CO2)と共に、炭化水素供給物に再循環され、そこから改質ガスが生成されることが好ましい。それに加え、フィッシャー・トロプシュ合成生成物流に含まれる他の炭化水素も、その生成物流から分離され、改質ガスを生成する改質工程の「炭化水素供給物」に再循環されてもよい。それでも、特定の望ましくない炭化水素の蓄積を防ぐために、改質工程の所定のプロセス条件下で合成ガスに改質できる炭化水素のみが改質工程に再循環されることが明らかである。したがって、特定の脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素がフィッシャー・トロプシュ合成プロセス工程の生成物流から分離され、フィッシャー・トロプシュ生成物流の残りの成分(必要に応じて二酸化炭素を含む)は、改質工程の供給物粒に部分的にまたは完全に再循環されるであろう。
【実施例】
【0028】
本発明を実施するための態様
ここで、本発明を以下の非限定的実施例により十分に記載する。
【0029】
実施例1
メタンの自己熱乾式改質のための改質触媒「その場での3%Ni/La23」を以下のように調製した:粒径25〜40メッシュのLa23を2ml、内径12mm、長さ45cmの管状石英反応装置に装填した。装填済み反応装置に、約28.4モル%のCH4+11モル%のO2+17.4モル%のCO2+42.8モル%のN2からなるガス状混合物を450℃で供給した。担体を反応混合物で処理して(24時間未満)安定相組成物を得た後、Ni(NO32水溶液をガス流に注入して、徐々にLa23担体にNi塩を含侵させることによって、La23担体の0.1〜0.3%のNi(NO32水溶液による含侵を開始した。La23担体のNi(NO32含侵を、3質量%のNi/La23基準の計算量に到達するまで続けた。Ni(NO32含侵工程中にNO2の形成が観察され、これは、Niの酸化物がLa23担体内に形成されることを示す。
【0030】
Ni(NO32含侵工程を完了した後、反応温度を660℃に上昇させて、メタン含有ガス状混合物によりNi−酸化物を還元した。結果として得られたその場で調製された改質触媒「その場での3%Ni/La23」は最初に、メタンをCO2に完全に酸化する。しかしながら、定常状態に到達した後、「その場での3%Ni/La23」触媒は、COおよびH2を形成する。
【0031】
約28.4モル%のCH4+11モル%のO2+17.4モル%のCO2+42.8モル%のN2からなる供給流を、0.5秒の接触時間に亘り680〜710℃で改質触媒「その場での3%Ni/La23」と接触させて、約21.5モル%のCO+35.5モル%のH2+34.79モル%のN2+6.17モル%のCH4+1.55モル%のCO2+0.4モル%のO2からなる合成ガス組成物Aを生成した。その場で調製された触媒は、120時間超に亘り安定な活性を示したのに対し、比較実験において、反応装置に装填する前にLa23にNi塩を含侵することによって調製された触媒は同等の活性を示したが、その活性は動作の50時間以内に徐々に低下した。
【0032】
F−T触媒を以下のように調製した:20.2gのFe(NO32・9H2Oを100mlの水中に溶解させ、21.8gのCo(NO32・6H2Oを150mlの水中に溶解させ、26.5gのNa2CO3を500mlの水中に溶解させた。FeおよびCo溶液を混合し、FeおよびCoの塩の結果として得られた混合物を、pH6でNa2CO3溶液を加えることによって沈殿させた。調製されたゲルを40メッシュのSiO2粒子0.11gと混合し、70℃で2時間に亘り撹拌した。この沈殿物を濾過し、洗浄して、SiO2+ゲルからNaを除去した。Fe+Co混合物に対するSiO2の量は1.5質量%であった。触媒組成物中のFe対Coの比は40/60であった。混合物を120℃で一晩乾燥させた。次いで、調製されたサンプルを空気中において6時間に亘り400℃でか焼した。結果として得られた触媒を触媒1と表す。
【0033】
沈殿工程中に、Na2CO3溶液をpH8で加え、触媒を600℃の温度でか焼したことを除いて、上述した手法を繰り返した。結果として得られた触媒を触媒2と表す。
【0034】
フィッシャー・トロプシュ(F−T)プロセスを、2mlの触媒1を装填した内径10mmの石英反応装置において273℃の反応温度で行った。先に記載したように生成された合成ガス組成物AをF−T合成プロセスにおける改質ガス供給流として使用した。合成ガス組成物の流量は36cc/分であった。このF−Tプロセスの結果が、表1の「合成ガスA触媒1」の欄に記載されている。
【0035】
それに加え、F−Tプロセスを、反応温度が285℃であったことを除いて、触媒1を使用したときと同じプロセス条件下で触媒2の存在下で行った。このF−Tプロセスの結果が、表1の「合成ガスA触媒2」の欄に記載されている。
【0036】
COの転化率および炭化水素に対する選択率を、以下のように炭素の収支に基づいて計算した:
COの転化率=反応したCOのモル数/供給したCOのモル数
炭化水素に対する選択率=n*炭化水素のモル数/反応したCOのモル数
(n=炭化水素中の炭素原子の数)
CO2に対する選択率=(出るCO2のモル数−入るCO2のモル数)/反応したCOのモル数
【0037】
実験2(比較)
合成ガス組成物Bを、逆水性ガスシフト反応工程を含む改良メタン流改質プロセスによって生成した。その後、従来の水蒸気改質により生成された合成ガス(約20.8モル%のCO+18.3モル%のCO2+60.8モル%のH2の組成)を、8秒間の接触時間に亘り600℃で、Cr−系工業Catofin(登録商標)C4脱水素化触媒と接触させて、約29モル%のCO+12モル%のCO2+59モル%のH2を有する合成ガス組成物Bを生成した。
【0038】
先に記載したようなメタン水蒸気改質により生成された合成ガス組成物BをF−Tプロセスの供給物として使用したことを除いて、フィッシャー・トロプシュプロセスを実施例1に記載したように行った。このF−Tプロセスの結果が、表1の「合成ガスB触媒1」の欄に記載されている。
【0039】
これに加え、合成ガス組成物Bおよび触媒2を使用したことを除いて、F−Tプロセスを実施例1におけるように行った。反応温度は285℃であった。このF−Tプロセスの結果が、表1の「合成ガスB触媒2」の欄に記載されている。
【表1】

【0040】
表1から導かれるように、フィッシャー・トロプシュ合成反応の供給流が合成ガスに加えて分子酸素を含むときに、C1〜C6の選択率および収率が著しく増加する。これにより、CO2の収率の著しい減少から導かれるように、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスの炭素効率が劇的に増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成によって脂肪族および芳香族C2〜C6炭化水素の混合物を含む生成物流を製造するプロセスであって、フィッシャー・トロプシュ触媒を、改質触媒の存在下で炭化水素供給物の自己熱乾式改質により生成される改質ガスと接触させる工程を有してなり、前記改質ガスが、合成ガス(H2およびCO)、酸素(O2)および必要に応じて、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)および不活性ガスからなる群より選択されるさらに別の成分から実質的になることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記不活性ガスが窒素(N2)であることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記生成物流がメタン(CH4)および二酸化炭素(CO2)をさらに含み、これらが前記改質ガスがそれから生成される前記炭化水素供給物に再循環されることを特徴とする請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
前記改質ガスが0.1〜5モル%の酸素(O2)を含むことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
前記改質ガスが1〜4の水素(H2)の一酸化炭素(CO)に対する比を有することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のプロセス。
【請求項6】
前記改質触媒が、Ni/La23触媒;Ni/Al23触媒;およびNi/MgO−Al23触媒からなる群より選択されることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のプロセス。
【請求項7】
前記自己熱乾式改質が、0.4〜1秒間の接触時間に亘り680℃〜710℃の反応温度で行われることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のプロセス。
【請求項8】
前記フィッシャー・トロプシュ触媒が、SiO2上に担持されたCo−Fe触媒であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のプロセス。
【請求項9】
前記フィッシャー・トロプシュ合成が、275〜350℃の反応温度および400〜1200h-1の空間速度で行われることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−520384(P2012−520384A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500130(P2012−500130)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001617
【国際公開番号】WO2010/105786
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】