説明

脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム及び反射板

【課題】 優れた光反射性を有し、使用により経時的に黄変したり、光反射性が低下することがなく、かつ、形状保持性に優れた反射フィルムを提供することができる。
【解決手段】 脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂および微粉状充填剤を含有する樹脂組成物から形成される反射フィルムであって、反射フィルムの黄色度(YI値)が3.6未満である。
この微粉状充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム及びこの反射フィルムを備えて成る反射板に関し、特に、液晶表示装置、照明器具、照明看板等の反射板等に使用される反射フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置用の反射板、投影用スクリーンや面状光源の部材、照明器具用反射板および照明看板用反射板等の分野で、反射フィルムが使用されている。例えば、液晶ディスプレイの反射板では装置の大画面化及び表示性能の高度化の要求から、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させるために、高い反射性能の反射フィルムが求められている。
【0003】
また、ノートブック型のコンピューターなどの表示装置としては、薄型化が可能で、しかも画像が見易い、バックライトユニット及び液晶表示素子を備えた液晶表示装置が用いられている。このようなバックライトユニットには、透光性を有する導光板の一側端部に蛍光管のような線状光源を併設するエッジライト方式が多く用いられる。このようなエッジライト方式では、導光板の一方の面を光拡散物質で部分的に被覆し、その面の全面をさらに反射材で被覆して面光源を構成するものが多い。このような反射材には、高い反射性能が要求される。
【0004】
反射フィルムとしては、芳香族ポリエステル系樹脂に酸化チタンを添加して形成された白色シート(例えば特許文献1参照)が知られているが、要求されるような高い光反射性を有するものではなかった。また芳香族ポリエステル系樹脂に充填剤を添加して形成されたシートを延伸することによってシート内に微細な空隙を形成させ、光散乱反射を生じさせたもの(例えば、特許文献2参照)があるが、要求されるような高い光反射性を有するものではなかった。さらに、これらを形成する芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によってフィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという欠点があった。
【0005】
また、近年は折り曲げ加工等を施した反射フィルムを、液晶表示装置内に組み込んで使用することがある。この場合、折り曲げた時の形状を保留することができる性質を示す形状保持性が良好であることが反射フィルムに求められる。しかしながら、従来の反射フィルムでは形状保持性に乏しいという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−138150号公報
【特許文献2】特開平4−239540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、優れた光反射性を有し、使用により経時的に黄変したり、光反射性が低下することがなく、かつ形状保持性に優れた反射フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂および微粉状充填剤を含有する樹脂組成物から形成される反射フィルムであって、該反射フィルムの黄色度(YI値)が3.6未満であることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記微粉状充填剤は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つであることができる。
【0010】
本発明において、前記酸化チタンは、バナジウムの含有量が5ppm以下であることが好ましい。
また、前記酸化チタンの表面は、シリカ、アルミナ、および、ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆されていることが好ましい。
【0011】
前記微粉状充填剤の含有量は、前記樹脂組成物中、10質量%以上、60質量%以下であることができる。
【0012】
本発明において、前記脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率は1.52未満であることができる。
また、前記脂肪族ポリエステル系樹脂は乳酸系重合体であることが好ましい。
また、前記脂肪族ポリエステル系樹脂の黄色度(YI値)は20以下であることができる。
【0013】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、フィルム内部の空隙率が50%以下となるように空隙を有することができる。
【0014】
本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂および前記微粉状充填剤を含有する樹脂組成物を溶融製膜してなるフィルムを、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸することができる。
【0015】
また、波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率が95%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の反射板は、上記いずれかの脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い光反射性を有し、経時的に光反射性が低下せず、かつ、形状保持性に優れた反射フィルムを得ることができる。また、本発明の反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆することにより、光反射性等の特性に関しバランスのとれた優れた、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に使用される反射板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0019】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂および微粉状充填剤を主成分として含有する樹脂組成物から形成される。ただし、この脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、黄色度(YI値)が3.6未満であり、3.5未満であることが好ましい。黄色度が3.6未満であれば、この反射フィルムが組み込まれた液晶ディスプレイ等は、その画面が黄色味を帯びることなく、精彩性が良好になる。
【0020】
本発明においては、フィルムの黄色度(YI値)が3.6未満であればいかなる方法によって調整されてもよいが、フィルムの黄色度は、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを形成するベース樹脂の種類、フィルムに含有される不純物、金属等の種類や量などによって変動すると考えられる。本発明においては、ベース樹脂の黄色度(YI値)が20以下であることが好ましい。このようなベース樹脂を用いて反射フィルムを形成すれば、反射フィルムの黄色度を3.6未満にすることが容易になる。
【0021】
なお、黄色度(YI値)は、測定方法(計測方法)に依存するため、フィルムの厚みを薄くすることによって形式的に黄色度(YI値)を下げることは可能であるが、フィルムの厚みを薄くすると一般的に反射率も低下してしまう。本発明においては、フィルムの厚みを薄くすることなく、同じ厚みのフィルムであっても、ベース樹脂の種類や不純物等を制御して黄色度(YI値)を下げることにより、精彩性が良好となり、反射率の向上を図ることができるのである。
【0022】
本発明の反射フィルムを構成するベース樹脂は、屈折率(n)が1.52未満であることが好ましく、本発明においては、屈折率(n)が1.52未満の脂肪族ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
フィルム内に微粉状充填剤を含有する反射フィルムは、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面における屈折散乱を利用して光反射性を発現する。この屈折散乱効果は、ベース樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差が大きくなるに従って大きくなる。したがって、ベース樹脂としては、微粉状充填剤との屈折率差が大きくなるように、屈折率の小さい樹脂を用いることが好ましいので、芳香環を含み、屈折率が約1.55以上である芳香族ポリエステルよりも、屈折率が1.52未満である脂肪族ポリエステルを用いることが好ましく、脂肪族ポリエステルの中でも屈折率の小さい乳酸系重合体(屈折率が1.46未満)を用いることが好ましい。
【0024】
脂肪族ポリエステル系樹脂は、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさない。したがって、紫外線に晒されて、あるいは、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によっても、反射フィルムが劣化したり、黄変することがないので、フィルムの反射率が低下することがない。
【0025】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、化学合成されたもの、微生物により発酵合成されたもの、及び、これらの混合物を用いることができる。化学合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ラクトンを開環重合して得られるポリε−カプロラクタム等、二塩基酸とジオールとを重合して得られるポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリテトラメチレンサクシネート、シクロヘキサンジカルボン酸/シクロヘキサンジメタノール縮合重合体等、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリ乳酸、ポリグリコール等や、上記した脂肪族ポリエステルのエステル結合の一部を、例えばエステル結合の50%以下をアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等に置き換えた脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0026】
本発明において、乳酸系重合体とは、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいい、具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、更にはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
【0027】
乳酸系重合体は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法で製造することが出来る。例えば、縮合重合法では、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0028】
本発明に用いられる乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15であるか、またはD−乳酸:L−乳酸=0:100〜15:85であることが好ましく、さらに好ましくは、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、または、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95である。
【0029】
D−乳酸とL−乳酸との構成比が100:0もしくは0:100である乳酸系重合体は非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性および機械物性に優れる傾向がある。すなわち、フィルムを延伸したり熱処理したりする際に、樹脂が結晶化して耐熱性及び機械物性が向上するので好ましい。
【0030】
一方、D−乳酸とL−乳酸とで構成された乳酸系重合体は、柔軟性が付与され、フィルムの成形安定性及び延伸安定性が向上するので好ましい。したがって、得られる反射フィルムの耐熱性と、成形安定性及び延伸安定性とのバランスを勘案すると、本発明に用いられる乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、又は、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95であることが、より好ましい。
【0031】
乳酸系重合体は、L−乳酸とD−乳酸とを混合して、LL−ラクチド、DL−ラクチド、DD−ラクチドの3種類の2量体を生成させる。そこで、260℃でオクチル酸スズを触媒として重合すると、LL−ラクチドとDD−ラクチドはポリマーとなるが、DL−ラクチドは残試料として残る。この残ったDL−ラクチドは、次の重合に使用される。
【0032】
例えばポリ(L−乳酸)を目的物とする場合には、重合中の組成調整等による過剰な熱履歴によってD体が変色する。したがって、熱履歴が多いとD体の変色度合いも大きくなり、その結果、得られた目的物のポリマーの黄色度は大きくなる。そのため、ポリ(L−乳酸)主体の乳酸系重合体の黄色度(YI値)を20以下とするためには、D体の含有量が少ないことが望ましく、具体的には、D−乳酸のモル比率を2.2%未満とすることで、黄色度(YI値)20以下を達成することができる。ポリ(D−乳酸)の場合のL体の含有量の場合も同様であり、L乳酸のモル比率を2.2%未満とすることが好ましい。
【0033】
その他に、乳酸系の黄色度(YI)を支配する因子として、残触媒、モノマー純度、オリゴマー、鉄、亜鉛などの金属成分等が挙げられる。例えば、黄色度(YI)の高い乳酸系重合体をアセトン等の溶媒で洗浄すると、黄色度(YI)を小さくすることができることが確認されている。これは、残触媒などの成分が溶出したためであると推察される。
【0034】
本発明においては、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合には、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。D−乳酸とL−乳酸のホモポリマーと、共重合体とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
【0035】
本発明に用いられる乳酸系重合体は高分子量であることが好ましく、例えば、重量平均分子量が5万以上であることが好ましく、6万以上、40万以下であることが更に好ましく、10万以上、30万以下であることが特に好ましい。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万未満であると、得られたフィルムは機械的性質に劣る場合がある。
【0036】
本発明の反射フィルムを形成する樹脂組成物には、微粉状充填剤が含まれる。本発明に用いられる微粉状充填剤としては、有機質微粉体、無機質微粉体等が挙げられる。
【0037】
有機質微粉体としては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末や、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等からなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられることが好ましい。
【0038】
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等からなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられることが好ましい。
【0039】
得られるフィルムの光反射性を勘案すれば、フィルムを構成するベース樹脂との屈折率差が大きいものを用いることが好ましく、すなわち、屈折率の大きい無機質微粉体等を用いることが好ましい。具体的には、屈折率が1.6以上である炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、または酸化亜鉛を用いることが更に好ましく、屈折率が2.5以上である酸化チタンを用いることが特に好ましい。なお、得られるフィルムの長期耐久性を勘案すると、酸やアルカリに対して安定な硫酸バリウムを配合することが好ましい。
【0040】
酸化チタンは屈折率が高く、ベース樹脂との屈折率差を大きくすることができるため、酸化チタン以外の充填剤を使用した場合よりも少ない配合量でフィルムに高い反射性能と、低い光透過性を付与することができる。また、酸化チタンを用いれば、フィルムの厚みが薄くても高い反射性能および低い光透過性を有するフィルムを得ることができる。
【0041】
本発明に用いられる酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型及びルチル型のような結晶構造を持つ酸化チタンが挙げられる。フィルムを構成するベース樹脂との屈折率差を大きくするという観点からは、屈折率が2.7以上の酸化チタンであることが好ましく、例えば、ルチル型の結晶構造を持つ酸化チタンを用いることが好ましい。屈折率差が大きいほど、ベース樹脂と酸化チタンとの境界面で光の屈折散乱作用が大きくなり、フィルムに光反射性を容易に付与することができる。
【0042】
フィルムに高い光反射性を付与するためには、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタンを用いることが必要である。酸化チタンの光吸収能を小さくするには、酸化チタンに含有されている着色元素の量が少ないことが好ましい。例えば、バナジウムの含有量が5ppm以下の酸化チタンを用いれば、高い光反射性を有する反射フィルムを得ることができる。なお、光吸収能を小さくするという観点からは、酸化チタンに含まれる、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素も少ないことが好ましい。
【0043】
塩素法プロセスで製造される酸化チタンは純度が高く、この製造方法によれば、バナジウムの含有量が5ppm以下の酸化チタンを得ることができる。塩素法プロセスでは、酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1,000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼させることにより、高純度の酸化チタンを得ることができる。なお、酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。
【0044】
本発明に用いられる酸化チタンは、その表面が不活性無機酸化物で被覆処理されていることが好ましい。酸化チタンの表面を不活性無機酸化物で被覆処理することにより、酸化チタンの光触媒活性を抑制することができ、フィルムの耐光性を高めることができる。不活性無機酸化物としては、シリカ、アルミナ、およびジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましい。これらの不活性無機酸化物を用いれば、酸化チタンを用いた場合に発揮する高い光反射性を損なうことなくフィルムの耐光性を高めることができる。また、2種類以上の不活性無機酸化物を併用することが更に好ましく、中でもシリカを必須とする組み合わせが特に好ましい。
【0045】
あるいはまた、酸化チタンの樹脂への分散性を向上させるために、酸化チタンの表面をシロキサン化合物、シランカップリング剤等からなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機化合物や、ポリオール、ポリエチレングリコール等からなる群から選ばれる少なくとも1種類の有機化合物で表面処理してもよい。
【0046】
本発明に用いられる酸化チタンは、粒径が0.1μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.5μm以下であることが更に好ましい。酸化チタンの粒径が0.1μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が良好であり、均質なフィルムを得ることができる。また、酸化チタンの粒径が1μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの界面が緻密に形成されるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。
【0047】
酸化チタン以外の微粉状充填剤を用いる場合には、この微粉状充填剤についても、樹脂への分散性を向上させるために、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施すことができる。
【0048】
このような微粉状充填剤は、平均粒径が0.05μm以上、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒径が0.1μm以上、10μm以下である。微粉状充填剤の平均粒径が0.05μm以上であれば、フィルムの粗表面化に伴い光散乱反射が生じるので、得られるフィルムの反射指向性が小さくなる。また微粉状充填剤の平均粒径が15μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との界面が緻密に形成されるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。
【0049】
酸化チタン等の微粉状充填剤は、脂肪族ポリエステル系樹脂に分散配合されることが好ましい。また、この微粉状充填剤の含有量は、フィルムの光反射性の発現、機械的性質、生産性等を考慮すると、反射フィルムを形成するための樹脂組成物中、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上、55質量%未満であることが更に好ましく、20質量%以上、50質量%以下であることが特に好ましい。微粉状充填剤の含有量が、樹脂組成物中、10質量%以上であれば、樹脂と微粉状充填剤との境界面の面積を充分に確保することができるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。また、微粉状充填剤の含有量が60質量%以下であれば、フィルムに必要な機械的性質を確保することができる。
【0050】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、反射率の点を考慮すると、フィルム内部に空隙を有することが好ましい。フィルムの空隙率(空隙がフィルム中に占める割合)は50%以下であることが好ましく、5%以上、50%以下の範囲内であることが更に好ましい。特に、反射率向上の点からは、空隙率は20%以上であることが好ましく、最も好ましくは30%以上である。空隙率が50%を超えると、フィルムの機械的強度が低下してフィルム製造中にフィルムが破断したり、使用時に耐熱性等の耐久性が不足することがある。例えば微粉状充填剤等を添加して延伸することにより、フィルム内部に空隙を形成することができる。
【0051】
バナジウムの含有量が5ppm以下である酸化チタンを用いれば、フィルム内部に存在する空隙率が低くても高い光反射性を達成することができるので、例えば、フィルム内部に空隙が存在していなくても高い光反射性を達成することができる。これは、酸化チタンの屈折率が高く、隠蔽力が高いことに起因すると推察される。また、充填剤の使用量を少なくすることができるならば、延伸により形成される空隙の数も少なくなる。したがって、このような酸化チタンを用いれば、フィルム内部に存在する空隙の数を少なくすることができるので、高い反射性能を維持しつつフィルムの機械的性質を向上させることができる。あるいは、充填剤の使用量が多い場合でも、延伸量を小さくして空隙の数を少なくすれば、充填剤の使用量を少なくした場合と同様に、機械的性質を向上させることができる。このようにフィルム内部に存在する空隙の数を少なくすることは、フィルムの寸法安定性の向上の点においても有利である。薄肉でも高い反射性能が確保されれば、例えば、ノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ用の反射フィルム等として使用することができる。
【0052】
本発明において、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、波長が550nmの光に対する表面の反射率が95%以上であることが好ましく、97%以上であることが更に好ましい。反射率が95%以上であれば、反射フィルムは良好な反射特性を示し、この反射フィルムを組み込んだ液晶ディスプレイ等はその画面が黄色味を帯びることなく、精彩性が良好になる。
【0053】
反射フィルムは紫外線に晒された後でも優れた反射率を保持することが好ましい。上述したように、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、ベース樹脂として分子鎖中に芳香環を含まない脂肪族ポリエステル系樹脂を用いるので、紫外線によって反射フィルムが劣化せず、優れた反射性を保持することができる。
【0054】
ところで、近年、液晶ディスプレイはパソコン用ディスプレイの他、自動車用カーナビゲーションシステムや車載用小型テレビ等にも使用されるようになり、高温度、高湿度に耐えるものが必要になってきた。そのため、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムには、耐久性を付与する目的で、更に加水分解防止剤を添加することが好ましい。
【0055】
本発明に好ましく用いられる加水分解防止剤としては、カルボジイミド化合物等が挙げられる。カルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式に示す基本構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。

―(N=C=N−R−)

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。nが2以上の場合に、2以上のRは同一でも異なっていてもよい。
【0056】
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明においては、フィルムを構成する脂肪族ポリエステル系樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物を0.1〜3.0質量部添加することが好ましい。カルボジイミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、得られるフィルムに耐加水分解性の改良効果が十分に発現される。また、カルボジイミド化合物の添加量が3.0質量部以下であれば、得られるフィルムの着色の度合いが少なく、高い光反射性が得られる。
【0058】
また、例えば、夏場の炎天下に駐車中の車内では、自動車用カーナビゲーションシステム、車載用小型テレビ等は高温にさらされることになり、液晶表示装置が長時間使用されると光源ランプ周辺は高温にさらされることになる。したがって、カーナビゲーションシステム、液晶表示装置等の液晶ディスプレイに使用される反射フィルムには110℃程度の耐熱性が要求される。例えば、反射フィルムが120℃の温度条件下で5分間放置されたときのフィルムの熱収縮率は10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。フィルムの熱収縮率が10%より大きいと、高温で使用したときに経時的にフィルムに収縮が生ずることがあり、また、反射フィルムが鋼板等に積層されている場合には、フィルムのみが変形してしまうことがある。大きな収縮が生じたフィルムは、反射を促す表面が小さくなったり、フィルム内部の空隙が小さくなるので、反射率が低下する。
【0059】
熱収縮を防ぐためにはフィルムの結晶化を完全に進行させることが望ましい。2軸延伸を行うことのみで脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムの結晶化を完全に進行させることは困難なので、本発明においては、フィルムを延伸した後、熱固定処理を行うことが好ましい。フィルムの結晶化を促進させることによって、フィルムに耐熱性を付与すると共に、耐加水分解性も向上させることができる。
【0060】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、および、その他の添加剤を添加することができる。
【0061】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、埋め立て処分された場合には微生物等による分解が可能で、廃棄に伴う種々の問題が生じない。脂肪族ポリエステル系樹脂は、土壌中で、エステル結合部が加水分解されて分子量が1,000程度に低下し、引き続き土壌中の微生物等により生分解される。
【0062】
一方、芳香族ポリエステル系樹脂は分子内の結合安定性が高く、エステル結合部の加水分解が起こりにくい。したがって、芳香族ポリエステル系樹脂は、土壌中に埋められても分子量の低下は起らず、微生物等による生分解も起こらない。その結果、長期にわたって土壌中に残存して、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題が生じる。
【0063】
以下に、本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムの製造方法について一例を挙げて説明するが、下記製造法に何等限定されるものではない。
【0064】
まず、脂肪族ポリエステル系樹脂に微粉状充填剤を配合し、更に、加水分解防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合して樹脂組成物を作製する。具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂に微粉状充填剤を加え、さらに加水分解防止剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えばポリ乳酸の場合には170℃〜230℃)で混練することにより樹脂組成物を得ることができる。または、脂肪族ポリエステル系樹脂、微粉状充填剤、加水分解防止剤等を別々のフィーダー等により所定量添加することにより樹脂組成物を得ることができる。あるいは、予め、微粉状充填剤、加水分解防止剤等を脂肪族ポリエステル系樹脂に高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂とを混合して所望の濃度の樹脂組成物とすることもできる。
【0065】
次に、このようにして得られた樹脂組成物を溶融し、フィルム状に形成する。例えば、樹脂組成物を乾燥した後、押出機に供給し、樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する。あるいは、樹脂組成物を乾燥させずに押出機に供給しても良いが、乾燥させない場合には溶融押出する際に真空ベントを用いることが好ましい。押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であるが、例えば、押出し温度はポリ乳酸の場合であれば170℃〜230℃の範囲が好ましい。その後、溶融した樹脂組成物をTダイのスリット状の吐出口から押し出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0066】
本発明の反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂および微粉状充填剤等を配合してなる樹脂組成物を用いて溶融製膜された後、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸されることが好ましい。延伸することにより、フィルム内部に微粉状充填剤を核とした空隙が形成されるので、フィルムの光反射性を更に向上させることができる。これは、樹脂と空隙との界面、および空隙と微粉状充填剤との界面が新たに形成され、界面で生じる屈折散乱の効果が増大するためと考えられる。
【0067】
本発明の反射フィルムは、面積倍率として5倍以上に延伸されていることが好ましく、7倍以上に延伸されていることが更に好ましい。面積倍率が5倍以上になるようにキャストシートを延伸すれば、フィルム内部に5%以上の空隙率を実現することができ、7倍以上に延伸することにより20%以上の空隙率を実現することができ、7.5倍以上に延伸することにより、30%以上の空隙率も実現することができる。
【0068】
キャストシートを延伸する際の延伸温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)程度から(Tg+50℃)の範囲内の温度であることが好ましく、例えばポリ乳酸の場合には50℃以上、90℃以下であることが好ましい。延伸温度がこの範囲であれば、延伸時にフィルムが破断することなく安定して行うことができ、また、延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高い反射率を有するフィルムが得られやすい。
【0069】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムは、例えば、延伸倍率等を適宜選択して延伸することによって、フィルム内部に空隙が形成されるが、これは、延伸時に脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタン等の微粉状充填剤との延伸挙動が異なるからである。つまり脂肪族ポリエステル系樹脂に適した延伸温度で延伸を行えば、マトリックスとなる脂肪族ポリエステル系樹脂は延伸されるが、微粉状充填剤はそのままの状態でとどまろうとするため、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との界面が剥離して、空隙が形成される。
【0070】
本発明の反射フィルムは、さらに、2軸方向に延伸されていることが好ましい。2軸延伸することにより、空隙率は更に高くなり、フィルムの光反射性を更に高めることができるからである。
また、フィルムを1軸延伸したのみでは、形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされた円盤状形態になる。すなわち、2軸延伸することによって、樹脂と微粉状充填剤との界面の剥離面積が増大し、フィルムの白化が進行し、その結果、フィルムの光反射性を高めることができる。さらにまた、2軸延伸するとフィルムの収縮方向に異方性がなくなるので、反射フィルムの耐熱性を向上させることができ、また、フィルムの機械的強度を増加させることもできる。
【0071】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMD(フィルムの引取り方向)に延伸した後、テンター延伸によってTD(MDに直角な方向)に延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。
【0072】
本発明においては、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムに耐熱性および寸法安定性を付与するために、延伸後に熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は90〜160℃であることが好ましく、110〜140℃であることが更に好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【0073】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常は30μm〜500μmであり、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜500μm程度の範囲内であることが好ましい。特に、小型、薄型の反射板用途の反射フィルムとしては、厚みが30μm〜100μmであることが好ましい。かかる厚みの反射フィルムを用いれば、例えばノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ等にも使用することができる。
【0074】
また、本発明の反射フィルムは、単層構成でもよいが、2層以上積層した多層構成としてもよい。
【0075】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを用いて液晶ディスプレイ等に用いられる反射板を形成することができる。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆して反射板を形成することができる。この反射板は、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射板として有用である。以下に、このような反射板の製造方法について一例を挙げて説明する。
【0076】
反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆する方法としては、接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等があり、特に限定されるものではない。例えば、金属板もしくは樹脂板の反射フィルムを貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射フィルムを貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射フィルムを貼り合わせる金属板等の表面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、板の表面を所定の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。この場合、金属板等の表面を210℃以下に保持すると、反射板の光反射性を高く維持することができる。なお、金属板等の表面温度は160℃以上であることが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0078】
(測定および評価方法)
(1)屈折率
樹脂の屈折率は、JIS K−7142のA法に基づいて測定した。
【0079】
(2)酸化チタン中のバナジウム含有量(ppm)
酸化チタンを、マイクロウェーブ試料分解装置内でフッ化水素酸により分解し、得られた溶液について、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析を行った。
【0080】
(3)平均粒径
(株)島津製作所製の型式「SS−100」の粉体比表面測定器(透過法)を用い、断面積2cm、高さ1cmの試料筒に試料3gを充填して、500mm水柱で20ccの空気透過の時間より算出した。
【0081】
(4)空隙率(%)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率を求めた。

空隙率(%)=
{(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0082】
(5)黄色度(YI値)
黄色度は、JIS K−7103に基づいて測定した。なお、測定は、分光測色計(「SC−T」、スガ試験機(株)製)を用いて行った。また、黄色度は、反射フィルムについてのみならず、ベース樹脂の黄色度も測定した。
【0083】
(6)反射率(%)
分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長550nmの光に対する反射率を測定した。なお測定前に、アルミナ白板の反射率が100%になるように光度計を設定した。
【0084】
(7)耐加水分解性
温度60℃、相対湿度95%RHに保持した恒温恒湿槽内で、フィルムを1000時間放置した後、フィルムを構成する脂肪族ポリエステル系樹脂の重量平均分子量を測定した。測定値を下記式に代入し、分子量保持率(%)を求め、下記評価基準に基づいて耐加水分解性の評価を行った。ただし、記号「○」および「△」は実用レベル以上である。

分子量保持率(%)=(放置後重量平均分子量/放置前重量平均分子量)×100

評価基準:
○ 分子量保持率が90%以上の場合
△ 分子量保持率が60%以上、90%未満の場合
× 分子量保持率が60%未満の場合
【0085】
(8)黄変防止性
サンシャインウェザーメーター試験器(水の間欠噴霧なし)内で、フィルムに紫外線を1,000時間照射する。その後、フィルムの表面を肉眼で観察し、視覚判断によりフィルム表面の色目が白色であるものを「白」、黄味がかかっているものを「黄」と表示した。
また、上記(6)の測定方法にしたがって、紫外線照射後のフィルムの反射率(%)も測定した。
【0086】
(9)形状保持性
下記に示すデッドフォールド性試験により形状保持性を評価した。
フィルムの長手方向を幅方向、その直交方向を長さ方向として、幅20mm、長さ150mmのサンプルフィルムを切出す。このサンプルフィルムの一方の短辺側を保持し、保持していないもう一方の短辺(他端)側を、他端から30mmの位置で、この位置の直線が折り山(又は折り谷)となるように180度折り曲げて、0.15MPaの荷重をかける。0.15MPaの荷重を0.5秒間かけた後、即座に荷重を取り除き、折った部分を開いて他端を手で元の位置まで戻した後、手を離し、保留された折り曲げ角度を測定する。すなわち、手を離したときに他端がもとの位置から離れた角度を分度器で測定する。この数値は最大で180度、最小で0度であり、この数値が大きいほど、デッドフォールド性に優れ、すなわち形状保持性に優れている。
【0087】
(10)反射板加工性
直角曲げ(R=0mm)、スクリュー密着曲げ、井型エリクセン(5mm)の3項目のそれぞれについて、下記評価基準に基づき評価を行った。
評価基準:
○ フィルム剥がれがない
× フィルム剥がれがある
【0088】
(11)反射板反射率
上記(6)の測定方法にしたがって、反射板の反射率(%)を測定した。
【0089】
[実施例1]
(樹脂組成物の作製)
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製、D体含有量1.5%)のペレットと、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−711;石原産業(株)製)とを、50質量%/50質量%の割合で混合して混合物を形成した。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を3質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチと乳酸系重合体とを40質量%/60質量%の割合で混合し、樹脂組成物を作製した。その後、樹脂組成物を220℃に加熱された押出機に供給した。
【0090】
(フィルムの作製)
押出機から、溶融状態の樹脂組成物を、Tダイを用いてシート状に押出し、冷却固化してフィルムを形成した。得られたフィルムを、温度65℃で、MDに2.5倍、TDに2.8倍の二軸に延伸した後、140℃で熱処理し、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、黄色度(YI)、空隙率、紫外線照射前の反射率と紫外線照射後の反射率、黄変防止性、耐加水分解性、形状保持性の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0091】
[実施例2]
表1に示すように、実施例1において、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−711;石原産業(株)製)の替わりに、平均粒径が0.24μmの酸化チタン(タイペークR−630;石原産業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0092】
[実施例3]
表1に示すように、実施例1において、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−711;石原産業(株)製)の替わりに、平均粒径が0.7μmの硫酸バリウム(B−55;堺化学工業(株)製)を用い、マスターバッチと乳酸系重合体との配合量を60質量%:40質量%の割合で混合して樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0093】
[実施例4]
表1に示すように、実施例1において、平均粒径が0.25μmの酸化チタン(タイペークPF−711;石原産業(株)製)の替わりに、平均粒径が0.15μmの炭酸カルシウム(StaVigot−15A;白石カルシウム(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0094】
[実施例5]
表1に示すように、シート厚を250μmから188μmに変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ188μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)とは、表1に示す値であった。
【0095】
[実施例6]
実施例1において、MDに2.5倍、TDに2.8倍延伸する替わりに、MDに3倍、TDに3.2倍の二軸延伸を行い、シート厚を100μmに変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ100μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0096】
[実施例7]
表1に示すように、実施例1において、重量平均分子量が20万のポリ乳酸系重合体(NW4032D)のペレットの替わりに、重量平均分子量が20万のポリ乳酸系重合体(NW5040D;カーギルダウポリマー社製、D体含有量2.2%)のペレットをアセトンで洗浄したものを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0097】
[比較例1]
表1に示すように、実施例1において、乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製)の替わりに、重量平均分子量が20万の乳酸系重合体(NW5040D:カーギルダウポリマー社製、D体含有量2.2%)のペレットを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0098】
[比較例2]
表1に示すように、実施例2において、乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製)の替わりに、重量平均分子量が20万の乳酸系重合体(NW5040D:カーギルダウポリマー社製、D体含有量2.2%)のペレットを用いた以外は実施例2と同様にして、厚さ250μmの反射フィルムを得た。得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
なお、ベース樹脂の黄色度(YI値)および反射フィルムの黄色度(YI値)は、表1に示す値であった。
【0099】
[実施例8]
実施例1で得られた反射フィルムに亜鉛メッキ鋼板(厚み0.45mm)を被覆して反射板を作製した。すなわち、まず、反射フィルムを貼り合わせる亜鉛メッキ鋼板表面に、市販されているポリエステル系接着剤を、乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度になるように塗布した。次いで、赤外線ヒーターおよび熱風加熱炉により塗布面の乾燥および加熱を行い、鋼板の表面温度を180℃に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却して、反射板を得た。得られた反射板について加工性、反射率の測定及び評価を行った。その結果を表3に示す。
【0100】
[実施例9]
実施例8において、鋼板の表面温度を180℃に保持する替わりに、220℃に保持した以外は、実施例8と同様にして、反射板を得た。得られた反射板について、実施例8と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜7の本発明の反射フィルムは、黄色度(YI値)が3.6未満であり、反射率が95%以上という高い光反射性を有し、かつ、高い精彩性を有していることが分かった。また、実施例1〜7の反射フィルムは、紫外線照射試験後においても反射率が93%以上であり、かつ、色目は白の評価であって、黄変防止性にも優れていることが分かった。中でも実施例1、および実施例3〜7は、紫外線照射前の反射率(初期反射率)が97%以上、紫外線照射後の反射率も95%であり、ともに優れたものであった。また、実施例1〜7のフィルムは、耐加水分解性についても実用レベル以上の評価である。すなわち、実施例1〜7の本発明の反射フィルムは、全ての評価において優れた結果が得られることが分かった。
【0105】
一方、比較例1〜2の反射フィルムは、黄色度(YI値)が3.7以上であり、反射率が95%未満になってしまい、光反射性に関し実施例1〜7の反射フィルムよりも劣っていることが分かった。
【0106】
また、表3から明らかなように、実施例8の反射板は、加工に必要な密着力と高い光反射性が維持されており、非常に優れたものであることが分かった。また、実施例8の反射板は、光反射性の維持という点では、実施例9の反射板より優れていることが分かった。
【0107】
すなわち、本発明によれば、優れた光反射性を有し、使用により経時的に黄変したり、光反射性が低下することがなく、かつ、形状保持性に優れた反射フィルムが得られる。また、本発明の反射フィルムは脂肪族ポリエステル系樹脂をベース樹脂としているので、生分解性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0108】
液晶表示装置、照明器具、照明看板等に使用される反射フィルム及び反射板に利用されるが、これらの類する分野の反射フィルムとしても利用することができる。また、高い反射性が要求される反射フィルムや薄型が要求される反射フィルムとしても利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂および微粉状充填剤を含有する樹脂組成物から形成される反射フィルムであって、該反射フィルムの黄色度(YI値)が3.6未満であることを特徴とする脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項2】
前記微粉状充填剤が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項3】
前記酸化チタンは、バナジウムの含有量が5ppm以下であることを特徴とする請求項2記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項4】
前記酸化チタンの表面が、シリカ、アルミナ、および、ジルコニアからなる群から選ばれる少なくとも1種類の不活性無機酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項5】
前記微粉状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物中、10質量%以上、60質量%以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が1.52未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂が乳酸系重合体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項8】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂の黄色度(YI値)が20以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項9】
フィルム内部の空隙率が50%以下となるように空隙を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項10】
脂肪族ポリエステル系樹脂および前記微粉状充填剤を含有する樹脂組成物を溶融製膜してなるフィルムを、少なくとも1軸方向に1.1倍以上延伸することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項11】
波長550nmの光に対するフィルム表面の反射率が95%以上であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル系樹脂反射フィルムを備えていることを特徴とする反射板。



【公開番号】特開2006−145573(P2006−145573A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331448(P2004−331448)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】