説明

脂肪由来の幹細胞および格子

【課題】脂肪由来の幹細胞および格子の提供。
【解決手段】脂肪細胞および赤血球を実質上含まない脂肪由来幹細胞ならびに結合組織幹細胞のクローン集団。該細胞は単独でもしくは生物学的に適合した組成物内で、分化した組織および構造をつくり出すために、インビボおよびインビトロの両方で用いることができる。さらに、ホルモンを産生させるために、そして他の細胞の集団の増殖および拡大をサポートするための条件培養培地を提供するために、該細胞を拡大し、そして培養することができる。さらに、細胞を実質上含まない、脂肪組織由来の細胞外マトリックス材料を含む脂肪由来の格子により、インビボであろうとインビトロであろうと、原基またはいっそう成熟した組織もしくは構造への細胞の増殖および分化を容易にするための基質として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
近年、主として骨髄から得られる間葉性幹細胞の同定は組織再生および分化における進歩を導いてきた。そのような細胞は骨髄および骨膜で発見された多分化能性細胞であり、そしてそれらは種々の間葉性組織または結合組織に分化することができる。例えば、そのような骨髄由来幹細胞は5−アザシチジンのような薬剤に曝露することで筋細胞へ発達を誘導することができる(Wakitaniら, Muscle Nerve, 18(12), 1417-26 (1995))。そのような細胞は軟骨、脂肪、および骨のような組織の修復に有用であること(例えば、米国特許 5,908,784号、5,906,934号、5,827,740号、5,827,735号参照)、およびそれらはまた遺伝子の修飾による適用を有することが示唆されてきた(例えば5,591,625号参照)。そのような細胞の同定が組織再生および分化における進歩を導いてきたが、そのような細胞の使用はいくつかの技術的障害によって妨げられている。そのような細胞の使用に対する一つの障害は、それらが非常にまれで(1/2,000,000細胞くらいの少なさに相当する)、それらを得るためのおよび単離するためのいかなる方法も困難でかつ多大な費用を要するということである。勿論、骨髄採取は一般的にドナーに痛みを伴う。さらに、特に選別されたロットの血清を使用して、そのような幹細胞の使用にさらにコストと労力を加えなければ、そのような細胞は分化を誘導することなく培養することが困難である。従って、より容易に入手可能な、多分化能性幹細胞、特に培養材料を費用をかけて前もって選別する必要なく培養することができる細胞の供給源が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
組織工学における他の進歩は、細胞が、三次元構造を生み出すために特別に定義づけられた(defined)培養中で増殖されうることを示した。空間的広がりのある定義づけは典型的には、細胞の増殖および分化をサポートしかつ誘導するための種々の無細胞の格子またはマトリックスを使用することで達成される。この技術はいまだその初期段階であるが、動物モデルにおける実験では、組織全体を再生するために種々の無細胞の格子材料を用いることができるということが実証されている(例えばProbstら, BJU Int., 85(3), 362-7 (2000) 参照)。適当な格子材料は、腫瘍細胞系から単離される分泌型の細胞外マトリックス材料(例えば Engelbreth-Holm-Swarm腫瘍分泌マトリックス−「マトリゲル(matrigel)」)である。この材料はIV型コラーゲンおよび増殖因子を含み、かつ細胞増殖のための優れた基質を提供する(例えばVukicevicら, Exp. Cell Res, 202(1), 1-8 (1992)参照)。しかし、この材料はまたある種の細胞の悪性変異を促進するので (例えばFridmanら, Int. J. Cancer, 51(5), 740-44 (1992)参照)、それは臨床応用に適当でない。他の人工の格子が開発されてきたが、インビボで使用した場合これらが細胞に対してかあるいは患者に対して毒性であるということが判明しうる。従って、細胞の集団を培養しおよび増殖させる際に基質として使用するのに適当な格子材料が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
(本発明の要旨)
本発明は脂肪由来幹細胞および格子を提供する。一態様では、本発明は脂肪細胞および赤血球を実質上含まない脂肪由来幹細胞ならびに結合組織幹細胞のクローン集団を提供する。該細胞は単独でもしくは生物学的に適合した組成物内で、分化した組織および構造をつくり出すために、インビボおよびインビトロの両方で用いることができる。さらに、ホルモンを産生させるために、そして他の細胞の集団の増殖および拡大をサポートするための条件培養培地を提供するために、該細胞を拡大し、そして培養することができる。別の態様では、本発明は、細胞を実質上含まない、脂肪組織由来の細胞外マトリックス材料を含む脂肪由来の格子を提供する。該格子は、インビボであろうとインビトロであろうと、原基またはいっそう成熟した組織もしくは構造への細胞の増殖および分化を容易にするための基質として使用することができる。
【発明の効果】
【0004】
どれくらい多くの脂肪組織が存在するのか考えてみると、本発明の細胞および格子は多分化能性幹細胞の容易な供給源となる。さらに、該細胞は血清のロットを前もって選別する必要のない培養条件下、未分化の状態で培養中継代することができるので、本発明の細胞は、他の型の幹細胞より相当少ない費用で維持することができる。これらのおよび他の本発明の利点およびさらなる本発明の特徴は、添付図面からおよび以下の詳細な説明中で明らかになるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明のある一態様は脂肪由来幹細胞に関する。好ましくは、該幹細胞は、他の細胞型(例えば、脂肪細胞、赤血球、他のストロマ細胞等)、および細胞外マトリックス材料を実質上含まず、そして更に好ましくは、該幹細胞はそのような他の細胞型およびマトリックス材料を全く含まない。好ましくは、本発明の細胞は、霊長類、さらに好ましくはより高度な霊長類(例えばヒヒまたは猿)の脂肪組織から得られる。典型的には、本発明の細胞は、本明細書に記載されるような方法を使用して、ヒト脂肪組織から得られるだろう。
【0006】
本発明の細胞は組織工学における使用のためのいかなる型の幹細胞であってもよいが、望ましくは該細胞は中胚葉由来である。典型的には、そのような細胞は単離すると、2以上の中胚葉のまたは間葉性の発生上の表現型を有する(すなわち、それらは多分化能性である)。特に、そのような細胞は概して中胚葉組織(例えば、成熟脂肪組織、骨、心臓の種々の組織(例えば、心膜、心外膜、心筋外膜、心筋、心膜、弁組織等)、皮膚結合組織、血管組織(hemangial tissue)(例えば、血球、心内膜、血管上皮組織等)、筋組織(骨格筋、心筋、平滑筋等が挙げられる)、泌尿性器組織(例えば、腎、前腎、後腎の導管および中腎の導管、後腎の憩室、尿管、腎臓の腎盂、集合管、女性の生殖構造の上皮(特に卵管、子宮、および膣))、胸膜組織および腹膜組織、内臓、中胚葉腺組織(例えば、副腎皮質組織)、ならびにストロマ組織(例えば、骨髄))を発生する能力を有する。勿論、該細胞は成熟細胞に進化する能力を有しうるので、適切な前駆細胞 (例えば、前脂肪細胞、前筋細胞、前骨細胞等)に分化することによって、それはまたそれの発生上の表現型能を実現することができる。また、培養条件次第では、該細胞はまた発生上の表現型(例えば、胚性の、胎児性の(fetal)、造血性(hematopoetic)の、神経原性の、または神経痛原性(neuralgiagenic)の発生上の表現型)を表しうる。この点で、本発明の細胞は2以上の発生上の表現型(例えば、脂肪形成性、軟骨原性、心臓原性、皮膚原性、造血性、血管原性、筋原性、腎原性、神経原性、神経痛原性、尿生殖器原性、骨原性、心膜原性、腹膜原性、胸膜原性、内臓原性(splanchogenic)、およびストロマ性の発生上の表現型)を有しうる。そのような細胞はこれらの発生上の表現型のうち2以上を有しうるが、好ましくは、そのような細胞はそのような発生上の表現型を3以上(例えば、4以上の中胚葉性のまたは間葉性の発生上の表現型)を有し、本発明の幹細胞のうちいくつかのタイプは、分化の過程を通じて任意の中胚葉の表現型を獲得する能力を有する。
【0007】
本発明の幹細胞は任意の適当な方法によって脂肪組織から得ることができる。そのような方法のいずれにおいても最初の工程は、供給源動物からの脂肪組織の単離を必要とする。該動物内の脂肪ストロマ細胞が生存できる限り、その動物は生きていても死んでいてもよい。典型的には、ヒト脂肪ストロマ細胞は、外科のまたは吸引の脂肪組織切除術のようなよく知られているプロトコルを用いて、生きているドナーから得られる。事実、脂肪吸引方法は非常によく知られているので、脂肪吸引の溶出液は本発明の細胞が得られうる特に好ましい供給源である。
【0008】
どのようにして得られるとしても、該脂肪組織は材料の残留物から幹細胞を単離するために処理される。あるプロトコルでは、該脂肪組織を生理学的に適合した食塩溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS))で洗浄し、かつその後強く撹拌し、そして置いて沈殿させる、脂肪組織から遊離した成分(例えば、損傷を受けた組織、血液、赤血球等)を除く工程。従って、一般に洗浄および沈殿の工程は上澄み液が比較的デブリスの無い状態になるまで繰り返される。
【0009】
残留している細胞は概して種々の大きさの塊で存在するだろうし、そして該プロトコルは細胞自身への損傷を最小化すると同時にその大きな構造を分解するために測定される工程を使用して進行する。この目的を達成する方法の一つは、洗浄した細胞塊を、細胞間の結合を弱めるかまたは破壊する酵素(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン等)で処理することである。そのような酵素処理の量および期間は、用いられる条件に応じて変化するだろうが、そのような酵素の使用は一般的に技術上公知である。そのような酵素処理のかわりになるものとしてまたはそのような酵素処理と共同して、該細胞塊を他の処理(例えば、機械撹拌、音波エネルギー、熱エネルギー等)を使用して分解することができる。もし分解が酵素による方法で達成されるならば、細胞に対する有害な影響を最小限におさえるために、適当な期間後酵素を中和することが望ましい。
【0010】
該分解工程は、典型的には凝集した細胞(一般的にリポソーム)のスラリーまたは懸濁液、および一般的に遊離のストロマ細胞(例えば、赤血球、平滑筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、および幹細胞)を含む液体分画を生産する。該分離工程の次段階は、凝集した細胞をストロマ細胞から分離することである。これは、ストロマ細胞を上澄み液でカバーされたペレットにする遠心分離によって達成されうる。上澄み液はその後捨てることができ、かつペレットは生理学的に適合した液体中に懸濁する。さらに、懸濁した細胞には典型的には赤血球が含まれ、ほとんどのプロトコルにおいてはこれらを溶解することが望ましい。選択的に赤血球を溶解させるための方法は技術上公知であり、任意の適当なプロトコルを用いることができる(例えば、高張のまたは低張の培地中でのインキュベーション)。勿論、もし赤血球を溶解するのであれば、残りの細胞はその後溶解産物から、例えば濾過または遠心分離によって、単離されるべきである。勿論、赤血球を溶解するかどうかに関わらず、懸濁した細胞を、1以上の連続した回数洗浄し、再遠心分離し、そして再懸濁してより高い純度を達成することができる。かわりに、該細胞をセルソーターを用いて、あるいは細胞の大きさや粒度を基にして分離することができる、幹細胞は比較的小さく無顆粒である。テロメラーゼの発現はまた幹細胞特異的なマーカーとして働きうる。それらはまた、例えばパンニングまたは磁気ビーズを使用することによって、免疫組織学的に分離することができる。本発明の細胞を単離するためのいかなる工程および方法も、所望すれば、手動で実施することができる。あるいは、そのような細胞を単離する工程は、その多くが技術上公知である(例えば、米国特許5,786,207号参照)適当な装置によって容易となりうる。
【0011】
最終の単離および再懸濁に続いて、該細胞を培養し、所望すれば、収率を決定するために数および生存度を分析してもよい。望ましくは、細胞を、標準的な細胞培養培地(例えば、典型的には5-15%(例えば、10%)血清(例えば、ウシ胎仔血清、ウマ血清等)を補ったDMEM)を使用して、分化させることなく培養されうる。好ましくは、細胞は、それらの発生上の表現型を依然として保有しながら、そのような培地中で分化することなく少なくとも5回継代することができ、更に好ましくは、細胞は発生上の表現型を失うことなく少なくとも10回(例えば、少なくとも15回またはさらには少なくとも20回)継代されうる。従って、通常間葉性幹細胞(例えば、骨髄由来)の場合、分化を誘導することなく本発明の細胞を培養するということは、特に選別されたロットの血清を用いることなく達成することができる。生存度および 収率を測定する方法は、技術上公知である(例えば、トリパンブルー排除能)。
【0012】
単離に続いて、該幹細胞は、2以上の前述の発生上の表現型を有するそれらの細胞を同定するために、表現型の同定によって更に単離される。典型的には、該ストロマ細胞は、望ましい密度(例えば、約100細胞/cm2〜約100,000細胞/cm2の間(例えば、約500細胞/cm2〜約50,000細胞/cm2の間、または、より具体的には約1,000細胞/cm2 〜約20,000細胞/cm2の間))でプレーティングされる。もしそれより低い密度(例えば、約300細胞/cm2)でプレーティングされた場合、細胞は、いっそう容易にクローン単離することができる。例えば、数日後、そのような密度でプレーティングされた細胞は、集団へと増殖するだろう。
【0013】
所望すれば、細胞集団をクローニングするのに適当な方法を使用して、そのような細胞および集団をクローン性増殖させることができる。例えば、増殖した細胞の集団を物理的にひろい別個のプレート(もしくはマルチウェルプレートのウェル)に播種してもよい。あるいは、該細胞は、各々のウェルに一つの細胞を置く(例えば、約0.1〜約1細胞/ウェルまたはさらには約0.25〜約0.5細胞/ウェル、例えば0.5細胞/ウェル)ことを容易にするために統計に基づく比でマルチウェルプレート上でサブクローニングしてもよい。勿論、該細胞は低い密度で(例えば、ペトリ皿または他の適当な基質の中で)それらをプレーティングすることによって、またクローニングリングなどの装置を使用して他の細胞からそれらを単離することによってクローニングすることができる。あるいは、放射線源が入手可能な場所では、細胞を単層に増殖させることおよび、その後に単層内の一つを遮へいし残りの細胞に放射線を照射することによってクローンを得ることができる。生き残っている細胞がその後クローン集団へと増殖するだろう。クローン集団の生成は任意の適当な培養培地中で拡大されうるが、幹細胞(例えば、本発明の幹細胞または他の幹細胞)をクローニングするための好ましい培養条件は、F12培地+20%血清(好ましくはウシ胎仔血清)を約2/3と約1/3の、ストロマ細胞(例えば、脂肪吸引液の間質性血管分画から得られる細胞)で条件付けられた(conditioned)標準培地である(相対的な割合は容積測定で決定される)。
【0014】
いずれにしても、クローンであろうとなかろうと、単離された細胞は、それらの発生上の表現型が決定されうる適当な時点まで培養されうる。前述のように、本発明の細胞は、前述の発生上の表現型のうち少なくとも2つを有する。従って、得られたクローンから取り出された1以上の細胞を、それがそのような発生の能力を有するかどうかを確認するために処理してもよい。処理の一つの型は、分化するための個々のタイプの成熟細胞(またはそれらの前駆細胞)に曝露されることによって条件付けられた培養培地中で本発明の細胞を培養することである(例えば、筋細胞に曝露されることによって条件付けられた培地は筋原性分化を誘導することができる、心臓弁細胞に曝露されることによって条件付けられた培地は心臓弁組織への分化を誘導することができる等)。勿論、分化を引き起こすため定義づけられた培地もまた使用することができる。例えば、脂肪原性の発生上の表現型は、例えば、糖質コルチコイド(例えば、イソブチル−メチルキサンチン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾン等)、インスリン、細胞内のcAMPレベルを上昇させる化合物(例えば、ジブチリル−cAMP、8−CPT−cAMP(8-(4)クロロフェニルチオ)−アデノシン3',5'サイクリック1リン酸;8−ブロモ−cAMP;ジオクタノイル−cAMP、フォルスコリン等)、および/またはcAMPの分解を阻害する化合物(例えばメチルイソブチルキサンチン、テオフィリン、カフェイン、インドメタシン、などのようなホスホジエステラーゼ阻害剤)を含む、脂肪生成を促進する培地に該細胞を曝露することによって評価することができる。従って、約10-9M〜約10-6M(例えば、約1μM)のデキサメタゾンと組み合わせて約1μMと約10μMの間のインスリンに幹細胞を曝露することは脂肪細胞分化を誘導することができる。そのような培地はまた、所望すれば、インドメタシン(例えば、約100μM〜約200μM)のような他の薬剤を含むことができ、かつ好ましくは該培地は血清を含まない。骨原性の発生上の表現型は、約10μM〜約50μMのアスコルビン酸−2−リン酸および約10nMと約50nMの間のβ−グリセロリン酸と組み合わせて約10-7Mと約10-9Mの間のデキサメタゾン(例えば、約1μM)に該細胞を曝露することで評価することができ、かつ該培地はまた血清(例えば、ウシ血清、ウマ血清等)を含有することができる。筋原性分化は、好ましくは血清の豊富な培地(例えば、約10%と約20%の間の血清(ウシ、ウマ、かそれらの混合物か)を含む)中で、約10μMと約 100μMの間のヒドロコルチゾンに該細胞を曝露することによって誘導されうる。軟骨原性分化は、約1μM〜約10μMの間のインスリンおよび約1μM〜約10μMの間のトランスフェリン、約1ng/mlと10ng/mlの間のトランスフォーミング増殖因子(TGF)β1、ならびに約10nMと約50nMの間のアスコルビン酸−2−リン酸(50nM)に該細胞を曝露することによって誘導されうる。軟骨原性分化のためには、好ましくは該細胞は高密度(例えば、約数百万細胞/mlでまたは微小集積培養(micromass culture)技術を使用して)で、かつまた少量の血清(例えば約1%〜約5%)の存在下培養される。該細胞はまた、発生上より未発達の表現型(例えば、胎児性のまたは胚性の表現型)を呈するように誘導されうる。そのような誘導は胎児および胚の中の条件によく似た条件に本発明の細胞を曝露することによって達成される。例えば、本発明の細胞または集団は胎児もしくは胚から単離された細胞と、または胎児血清の存在下、共培養してもよい。このような方針に沿って、該細胞は、個々のタイプの成熟細胞あるいはそれらの前駆細胞と共培養することで前述の任意の中胚葉系列への分化を誘導されうる。従って、例えば、筋原性分化は、本発明の細胞を筋細胞または前駆細胞と共培養することで誘導することができ、かつ同様の結果は本明細書に記載される他の組織型についても達成されうる。分化を誘導する他の方法は技術上公知であり、それらの多くは適切に用いられうる。
【0015】
分化誘導培地中で適当な期間(例えば、数日から1週間以上)細胞を培養した後、実際それらが分化して所定の細胞タイプの物理的特質を得たかどうかを決定するために該細胞を分析することができる。分化そのものの測定の一つにテロメア長がある−未分化の幹細胞は分化した細胞より長いテロメアを有する。従って該細胞はテロメラーゼ活性のレベルで評価することができる。あるいは、細胞からRNAまたは蛋白を抽出し、所望の表現型を表示するマーカーの存在について分析することができる(ノーザンハイブリダイゼーション、rtPCR、ウェスタンブロット分析等を用いて)。勿論、組織特異的な染料を用いて該細胞を免疫組織化学的に分析する、または染色することができる。従って、例えば、脂肪原性の分化を評価するために、脂肪特異的な染料(例えば、オイルレッドO、サファリンレッド、スダンブラック等)で該細胞を染色することができ、あるいは脂肪関連因子(例えば、IV型コラーゲン、PPAR−γ、アジプシン、リポプロテインリパーゼ等)の存在を評価するために該細胞について精査することができる。同様に、骨生成は骨特異的な染料(例えば、アルカリホスファターゼ、フォン・コッサ(von Kossa)等)で細胞を染色することによって評価することができ、または骨特異的なマーカー(例えば、オステオカルシン、オステオネクチン、オステオポンチン、I型コラーゲン、骨誘導蛋白質、cbfa等)の存在について精査することができる。筋発生は、古典的な形態学的変化(例えば、多核細胞、シンシチウム形成等)を同定することで評価することができ、または筋特異的な因子(例えば、myo D、ミオシン重鎖、NCAM等)の存在で生化学的に評価することができる。軟骨原性は、軟骨(cartallge)特異的な染料(例えば、アルシアンブルー(alcian blue))を用いて細胞を染色することによって、または軟骨特異的な分子(例えば、培地中の硫酸グリコサミノグリカン類およびプロテオグリカン類(例えば、ケラチン、コンドロイチン等)、II型コラーゲン等)の発現/生成について精査することによって測定することができる。発生上の表現型を評価する他の方法は技術上公知であり、それらのうちいかなるものも適切である。例えば、大きさおよび粒度によって該細胞を選別することができる。また、該細胞はモノクローナル抗体を生み出すために使用することができ、ついでそれらが選択的に所定の細胞タイプに結合するかどうかを評価するのに使用することができる。抗原性の相関は、所定の発生上の経路に従って幹細胞が分化したことを確認することができる。
【0016】
該細胞は単独でかつ他の細胞から単離されていてもよいが、好ましくはそれは細胞の集団内にあり、そして本発明は本発明の細胞を包含する定義づけられた集団を提供する。いくつかの具体例においては、該集団は異種(heterogeneous)である。すなわち、例えば、該集団は本発明の細胞に因子を供給するための支持細胞(support cell)を含むことができる。勿論、本発明の幹細胞はそれ自身他の型の細胞(例えば、他の型の幹細胞、例えば、神経幹細胞(NSC)、造血幹細胞(HPC、特にCD34+幹細胞)、胚幹細胞(ESC)およびそれらの混合物)を培養するための支持細胞として働くことができ、かつ該集団はそのような細胞を含むことができる。他の具体例においては、集団は実質上同種(homogeneous)であり、本発明の脂肪由来幹細胞から本質的になる。
【0017】
本発明の細胞はクローン化されうるので、それらを含む実質上同種な集団はクローンでありうる。事実、本発明はまた、中胚葉幹細胞、結合組織幹細胞、またはそれらの混合物から本質的になる任意の定義づけられたクローンの細胞集団に関する。この具体例においては、細胞は脂肪由来であってもよく、あるいは他の中胚葉もしくは結合細胞組織(例えば、骨髄、筋等)から技術上公知の方法を使用して得ることができる。単離後、本明細書に記載されるように細胞をクローン性に増殖させることができる。
【0018】
本発明の細胞(および細胞集団)は、種々の目的のために使用されうる。前述されたように、該細胞は他のタイプの細胞の増殖および拡大をサポートすることができ、かつ本発明はこれを達成する方法に関する。一態様では、本発明は本発明の幹細胞を用いて培養培地を条件付ける方法ならびにそのような方法で生産された条件培地(conditioned medium)に関する。細胞がそれを条件付けるのに十分な条件下で細胞に所望の培養培地を曝露することによって培地は条件付けられる。典型的には、培地は、ホルモン、細胞マトリックス材料、および他の因子を培地中へ分泌する本発明の細胞の増殖をサポートするために使用される。適当な期間(例えば、1日または数日)の後に、分泌された因子を含む培養培地は、細胞から単離され、将来の使用のために保存することができる。勿論、本発明の細胞および集団は、所望すれば培地を条件付けるために連続して再使用されうる。他の応用(例えば、本発明の細胞を他のタイプの細胞と共培養するため)において、細胞は条件培地の中に維持することができる。従って、所望すれば、本発明はこの方法を用いて得られる本発明の細胞を含むかあるいは本発明の細胞を実質上含まない、条件培地を提供する。
【0019】
該条件培地は、所望の細胞タイプの増殖および拡大をサポートするために使用することができ、そして本発明は条件培地を使用して細胞(特に幹細胞)を培養する方法を提供する。該方法は、細胞がかわらず生存できるままである条件下、条件培地中で所望の細胞を維持することを含む。細胞は、技術上公知であるような、それらを培養するための任意の適当な条件下で維持されうる。望ましくは、該方法は細胞有糸分裂の連続ラウンドが拡大した集団を形成することを可能にする。正確な条件(例えば、温度、CO2レベル、撹拌、抗生物質の存在等)は培地の他の成分および細胞タイプによるであろう。しかし、これらのパラメータを最適化することは当業者の範囲内である。いくつかの具体例においては、培地は、本明細書に記載されたように培地を条件付けるために使用される脂肪由来の細胞を実質上含まないことが望ましい。しかし、他の具体例においては、脂肪由来の細胞を条件培地中に保持することおよび目的の細胞と共培養することが望ましい。事実、本発明の脂肪由来の細胞は細胞内伝達の細胞表面メディエーター(mediator)を発現することができるので、本発明の細胞および所望の他の細胞を2つのタイプの細胞が接触する条件下で共培養することがしばしば望ましい。これは、例えば、細胞の異種集団として該細胞を適当な培養基質上に播種することによって達成されうる。あるいは、本発明の脂肪由来細胞は最初コンフルエンスにまで増殖し、第2の所望の細胞が条件培地中で培養されるための基質として働くであろう。
【0020】
他の具体例においては、本発明の脂肪由来の細胞は、例えば、外因性の遺伝子を発現するかあるいは内因性の遺伝子の発現を抑制するために遺伝子学的に変更されていてもよく、そして本発明はそのような細胞および集団を遺伝子学的に変更する方法を提供する。この方法に従って、細胞を導入遺伝子を包含する核酸を含む遺伝子導入ベクターに曝露し、そうして導入遺伝子が細胞内で発現されるのに適切な条件下で核酸が細胞内に導入される。導入遺伝子は通常適当なプロモーターに機能的に連結したコードポリヌクレオチドを包含する発現カセットである。該コードポリヌクレオチドは蛋白をコードすることができ、またはそれは生物学的に活性なRNA(例えば、アンチセンスRNAまたはリボザイム)をコードすることができる。従って、例えば、コードポリヌクレオチドは毒素に対する抵抗性を与える遺伝子、ホルモン(例えば、ペプチド増殖ホルモン、ホルモン放出因子、性ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、サイトカイン(例えば、インターフェロン(interferin)、インターロイキン、リンフォカイン)等)、細胞表面結合性の細胞内のシグナル伝達部分(例えば、細胞接着分子、ホルモン受容体等)、所定の分化系列を促進する因子等をコードすることができる。勿論、所定の導入遺伝子を送達するための遺伝子導入技術を用いることが望まれる場合、それの配列は公知であろう。
【0021】
発現カセット内で、該コードポリヌクレオチドは適当なプロモーターに機能的に連結されている。適当なプロモーターの例として原核生物のプロモーターおよびウイルスのプロモーター(例えば、レトロウイルスのITRs、LTRs、例えばヘルペスウイルスIEp(例えば、ICP4-IEpおよびICP0-IEp)、サイトメガロウイルス(CMV)IEpなどの前初期ウイルスのプロモーター(IEp)、および例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、およびマウス白血病ウイルス(MLV)プロモーターなどの他のウイルスのプロモーター)が挙げられる。他の適当なプロモーターは、例えばエンハンサー(例えば、ウサギβ−グロビン調節領域)、構成的に活性なプロモーター(例えば、β−アクチンプロモーター等)、シグナル特異的プロモーター(例えば、RU486応答性プロモーター等の誘導プロモーター)、および組織特異的なプロモーターなどの真核細胞のプロモーターである。あらかじめ規定された細胞のコンテクスト中で遺伝子発現を駆動させるために適当なプロモーターを選択することは十分に熟練の範囲内である。該発現カセットは1以上のコードポリヌクレオチドを含めることができ、かつそれは、望まれるように、他の領域(例えば、ポリアデニル化配列、膜挿入シグナルまたは分泌リーダーをコードしている配列、リボソームエントリー配列、転写調節領域(例えば、エンハンサー、サイレンサー等)等)を含んでいてもよい。
【0022】
導入遺伝子を含む該発現カセットは導入遺伝子を細胞に送達するのに適当な遺伝子ベクターに組み込まれるべきである。所望の目的とする応用によって、任意のそのようなベクターを、細胞を遺伝子学的に変更するためにそんなふうに使用することができる(例えば、プラスミド、裸のDNA、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、パピローマウイルス、レトロウイルス等のウイルス)。そのようなベクター内の望ましい発現カセットを構成する方法のいずれもが使用することができ、その多くは技術上公知である(例えば、直接クローニング、相同的組換え等)。勿論、ベクターの選択は主として細胞にベクターを導入するために使用される方法(例えば、プロトプラスト融合、カルシウム−リン酸沈降、遺伝子銃、電気穿孔、ウィルスベクターによる感染等によって)を決定するだろうし、それは通常技術上公知である。
【0023】
遺伝子学的に変更された細胞を導入遺伝子の生成物を生産するためのバイオリアクターとして用いることができる。他の具体例においては、遺伝子学的に変更された細胞を導入遺伝子およびその産物を動物に送達するために用いることができる。例えば、該細胞は、いったん遺伝子学的に変更されていると、導入遺伝子がインビボで発現されるのに十分な条件下で動物に導入されうる。
【0024】
遺伝子変更のための有用な標的として働くことに加えて、本発明の多くの細胞および集団は、ホルモン(例えば、サイトカイン、ペプチドまたは他の増殖因子(例えばモノブチリン(monobutyrin))等)を分泌する。最初の単離でそのようなホルモンを自然に分泌する細胞もあれば、本明細書に記載されているように、ホルモンを分泌するために遺伝子学的に変更されうる細胞もある。ホルモンを分泌する本発明の細胞はインビボおよびインビトロで種々のコンテクスト中で使用されうる。例えば、そのような細胞を所定のホルモンの容易な供給源を提供するバイオリアクターとして用いることができ、かつ本発明はそのような細胞からホルモンを得る方法に関する。該方法に従って、細胞はそれらがホルモンを培養培地中に分泌するのに適当な条件下で培養される。適当な時間の後に、かつ好ましくは定期的に、培地を採取し、培地からホルモンを単離するために処理される。いかなる標準的方法(例えば、ゲルクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィー、透析、凍結乾燥等)も培地からホルモンを精製するために使用されることができ、その多くは技術上公知である。
【0025】
他の具体例においては、ホルモンを分泌する本発明の細胞(および集団)は治療薬として用いることができる。概して、そのような方法は所望の組織に該細胞をインビトロ(例えば、体内移植または組織移植に優先する移植片として)かあるいはインビボ(動物組織に直接)のどちらかで導入することを含む。細胞は所望の組織に任意の方法により適切に導入されうるが、その方法は通常組織の型に従って変わるであろう。例えば、細胞を含む培養培地に移植片をつけること(またはそれを注入すること)によって、細胞は移植片に導入されうる。あるいは、該細胞は集団を樹立するために組織内の所望の部位上に播種してもよい。細胞は、例えば、カテーテル、トロカール、カニューレ、ステント(細胞と一緒に播種されうる)等の装置を用いてインビボで部位に導入されうる。これらの応用のために、好ましくは、細胞はサイトカインまたは成長ホルモン(例えば、ヒト成長因子、線維芽細胞増殖因子、神経成長因子、インスリン様増殖因子、造血幹細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子ファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子ファミリーのメンバー、血管および 内皮の細胞成長因子、TGFbファミリーのメンバー(骨誘導因子を包含する)、または先天性疾患に特異的な酵素(例えば、ジストロフィン))を分泌する細胞である。
【0026】
一つの応用において、本発明はそのような細胞を使用して患者の傷のふさがりを促進する方法を提供する。該方法に従って、細胞がホルモンを産生するのに十分な条件下、ホルモンを分泌する本発明の細胞を傷の近傍に移す。傷の近傍での該ホルモンの存在は傷のふさがりを促進する。該方法は外側の(例えば表面)傷と内部の傷の両方のふさがりを促進する。本発明の方法がふさがりを促進するのに有用である傷は、擦り傷、剥離、吹き傷(blowing wound)、火傷、挫傷、銃創、切り傷、開放創、貫通創、穿孔創、刺切創、串線創、刺創、手術創、皮下創傷、または擦過創が挙げられるが、これらに限定されない。該方法は傷の完全な治癒およびふさがりを達成する必要はなく、該方法が傷のふさがりをある程度促進すれば十分である。この点で、該方法は、単独でまたは傷ついた組織を治すための他の方法に添える方法として用いられうる。
【0027】
本発明の細胞が血管新生ホルモン(例えば、血管増殖因子、血管および内皮細胞増殖因子等)を分泌する場合、それら(およびそれらを含む集団)を組織内の血管新生を誘導するために用いることができる。つまり、本発明はそのような細胞を用いて組織内の血管新生を促進する方法を提供する。この方法に従って、該細胞は細胞が血管新生ホルモンを生み出すのに十分な条件下、所望の組織に導入される。組織内部のホルモンの存在は組織内部での血管新生を促進する。
【0028】
本発明の幹細胞は発生上の表現型を有するので、それらは組織工学で用いられうる。この点で、本発明は、本発明の細胞が増殖し、そして分化して所望する素材を形成するのに十分な条件下で細胞を維持することを含む動物素材を生産する方法を提供する。該素材は、成熟組織、あるいは器官全体さえも包含することができる(本発明の細胞が本明細書に記載されているように分化しうるタイプの組織を含む)。典型的には、そのような素材は、脂肪、軟骨、心臓、皮膚結合組織、血液組織、筋、腎、骨、胸膜組織、内臓組織、血管組織等を含むだろう。さらに典型的には、該素材はこれらの組織型の組み合わせ(すなわち1以上の組織型)を含むだろう。例えば、素材は動物器官(例えば、心臓、腎)または四肢(例えば、脚、翼、腕、手、足等)の全てまたは一部を含むことができる。勿論、細胞は分裂および分化してそのような構造を生み出すことができるかぎり、それらはまたそのような構造の原基を形成することもできる。初期段階において、そのような原基は所望の成熟構造または器官の将来の発生のために冷凍保存されうる。
【0029】
そのような構造を生み出すために、本発明の細胞および集団はそれらが増殖し、分裂して所望の構造を形成するのに適当な条件下で維持される。いくつかの応用においては、このことは動物に該細胞を移す(すなわちインビボ)、典型的には新しい素材を所望の部位に移すことで達成される。従って、例えば、本発明は該細胞が組織(例えば、骨、筋、軟骨、腱、脂肪等)に移植された動物においてそのような組織の再生を促進することができる。他の具体例、および特に原基をつくり出すための具体例においては、該細胞はインビトロで組織への分化および拡大を誘導されうる。そのような応用において、細胞は組織発生を促す三次元構造の形成を容易にする基質上で培養される。従って、例えば、細胞は生体適合性格子(例えば、細胞外マトリックス材料、合成ポリマー、サイトカイン、増殖因子を含む格子等)上で培養することができ、または播種することができる。そのような格子は組織型への発生を容易にするために所望される形状に成型されうる。また、少なくともそのような培養の間の初期の段階では、培地および/または基質は、適切な組織型および構造の発生を容易にする因子(例えば、増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス材料等)で満たされている。事実、いくつかの具体例においては、本明細書に記載されているように、細胞をそれぞれの組織型の成熟細胞またはそれらの前駆細胞と共培養すること、あるいは細胞を各々の条件培地に曝露することが望ましい。
【0030】
そのような動物素材および組織を生産するための本発明の脂肪由来細胞および集団の使用を容易にするために、本発明は本発明の細胞(および集団)ならびに生物学的に適合した格子を含む組成物を提供する。典型的には、該格子は典型的には約100μmと約300μmの間のオーダーで空間を有するメッシュまたはスポンジの状態で繊維を有するポリマー材料から形成される。そのような構造は細胞が成長し増殖するのに十分な領域を提供する。望ましくは、該格子は時のたつのにつれ生物分解性で、その結果発生するにつれてその動物素材に吸収されるであろう。従って、適当なポリマーの格子はモノマー(例えば、グリコール酸、乳酸、フマル酸プロピル、カプロラクトン、ヒアルロナン(hyaluronan)、ヒアルロン酸等)から形成されうる。他の格子は蛋白質、多糖類、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物(polyanhydride)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)、または合成ポリマー(特に生物分解性のポリマー)を含むことができる。勿論、そのような格子を形成するのに適当なポリマーは1以上のモノマー(例えば、既述のモノマーの組み合わせ)を含むことができる。また、該格子はまた、所望であれば、ホルモン(例えば増殖因子、サイトカイン、およびモルフォゲン(例えば、レチノイン酸、アラキドン酸(aracadonic acid)等)、所望の細胞外マトリックス分子(例えば、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン等)、または他の材料(例えば、DNA、ウイルス、他の細胞型等)を含むことができる。
【0031】
該組成物を形成するために、細胞はそれらが格子内部の空間に入り込むように格子の中へ導入される。例えば、マトリックスは細胞を含む溶液または懸濁液中に浸してもよく、またはそれらをマトリックス中に染みこませもしくは注入してもよい。特に好ましい組成物はポリマーを含む懸濁液を架橋することによって形成され、かつまたその中に分散された本発明の細胞を有するヒドロゲルである。この形成方法は細胞が格子の至る所に拡散することを許容し、細胞で格子を更にいっそう満たすことを容易にする。勿論、該組成物はまた、所望の表現型の成熟細胞またはそれらの前駆細胞を含むことができ、特に格子内部で、本発明の幹細胞が適切に分化することを誘導することを促進する(例えば、格子内部でそのような細胞を共培養する効果として)。
【0032】
該組成物は望ましい組織型、構造、または原基の増殖および発生を促進する任意の適当な方法で用いられうる。例えば、該組成物は三次元的または定位的(sterotactic)モデリング技術を用いて構築されうる。従って、例えば、組成物内部の層またはドメインは骨原性分化の用意ができている細胞によって占められていてもよく、そして組成物内部の他の層またはドメインは筋原性および/または軟骨原性の発生の用意ができている細胞に占められていてもよい。そのようなドメインを互いに並ばせることは複合組織型(例えば、四肢で見られるような筋に囲まれた骨)を含む複雑な構造の成形および分化を容易にする。所望の構造の増殖および分化に導くために、適切であれば該組成物はバイオリアクターまたはインキュベーター内で、エクスビボ(ex vivo)で培養してもよい。他の具体例においては、その構造は宿主動物内組織または構造を増殖させることが望ましい部位にいつでも直接移植される。さらに別の具体例では、該組成物は、使用できるようになるまで増殖しおよび成熟するであろう宿主(典型的には動物 (例えば、ブタ、ヒヒ等))に移植されうる。その後、該成熟構造(または原基)は宿主から切除されそして適切であれば、宿主に移植される。
【0033】
該組成物への含有が適当な格子は、任意の適当な供給源(例えば、マトリゲル)から得ることができ、および適当な格子の商業的供給源が存在する(例えば、適当なポリグリコール酸はEthicon N.J.などの供給源から得ることができる)。他の適当な格子は脂肪組織の無細胞部分−すなわち細胞を実質上含まない脂肪組織細胞外のマトリックス素材から得ることができ、そして本発明はそのような脂肪由来の格子を提供する。典型的には、そのような脂肪由来の格子は、細胞増殖のための優れた基質として働く蛋白(例えばプロテオグリカン、糖蛋白、ヒアルロニン(hyaluronin)、フィブロネクチン、コラーゲン(I型、II型、III型、IV型、V型、VI型等)等)を含む。そのうえ、そのような脂肪由来の格子はマトリックス中に播種された細胞の増殖を促進するホルモン、好ましくはサイトカインおよび増殖因子を含むことができる。
【0034】
脂肪由来のマトリックスは、無細胞分画に存在するであろうものを除き、上記と同様にして脂肪組織から単離することができる。例えば、脂肪組織またはそれらの誘導体(例えば、上記のように遠心分離の結果生じる細胞分画)を、音波または熱エネルギーに曝露しうる、および/またはマトリックス材料を回収するために酵素処理することができる。また、望ましくは脂肪組織の細胞分画は、例えばリパーゼ、界面活性剤、プロテアーゼでそれを処理することによって、および/または機械のもしくは音波の破砕(例えば、ホモジナイザーもしくはソニケーターの使用)によって単離される。どのように単離されたとしても、該材料は初期に粘性のある材料として確認されるが、所望すれば、所望の目的とする使用次第で続けて処理してもよい。例えば、未加工のマトリックス材料を、所望の格子材料を生産するために処理してもよい(例えば、透析されてもよいしあるいはプロテアーゼもしくは酸で処理されてもよい等)。従って格子は水和された形で調製されてもよく、または実質上無水の形もしくは粉体に乾燥されもしくは凍結乾燥されていてもよい。その後、該粉体は、例えばそれを適当な細胞培養培地中に懸濁することによって、細胞培養基質として使用するために再水和してもよい。この点で、脂肪由来の格子は上記されたような他の適当な格子材料と混合されうる。勿論、本発明は脂肪由来の格子および細胞または細胞の集団(例えば、本発明の脂肪由来の細胞および他の細胞等(特に他の型の幹細胞))を含む組成物に関する。
【0035】
上述されたように、本発明の細胞、集団、格子、および組成物は組織工学および組織再生に使用されうる。従って、本発明はこれらの本発明の特徴のいずれをも包括する移植可能な構造(すなわち移植片)に関する。移植片の正確な性質はそれが置かれた使用方法に従って変化するであろう。該移植片は、上記されたように、成熟組織であるか、もしくはそれを含むことができ、またはそれは未成熟な組織または格子を含むことができる。従って、例えば、移植片の一つの型は骨原性分化を受けている(または用意のできている)本発明の細胞の集団を含む骨移植片であってもよく、上述のように、適当な大きさおよび体積の格子内部に任意に播種される。そのような移植片は患者内の成熟した骨組織の発生または再生を促すために宿主内に注入されうるかあるいは移植されうる。同様の移植片が患者内部の筋、脂肪、軟骨、腱等の成長または再生を促すために使用されうる。他の型の移植片は、いったん患者に移植されると、適切な構造へ発達するであろう肢芽、指芽、発生中の腎等の原基(本明細書に記載されているような)である。
【0036】
脂肪由来の格子は、細胞培養キットの一部として都合よく使用することができる。従って、本発明は、本発明の脂肪由来の格子および1以上の他の構成要素(例えば、水和剤(例えば、水、生理学的に適合した食塩水、調製された細胞培養培地、血清またはそれらの誘導体等)、細胞培養基質(例えば、培養ディッシュ、プレート、バイアル等)、細胞培養培地(液状であろうと粉体状であろうと)、抗生物質、ホルモン等)を含むキットを提供する。該キットは任意のそのような成分を含むことができるが、適切な組み合わせの際には所望の細胞型の培養および増殖をサポートするのに必要な全ての成分を含めることが好ましい。勿論、所望であれば、該キットはまた、本明細書に記載されているように格子の中へ播種されることができる細胞(典型的には冷凍された)を含むことができる。
【0037】
本発明の態様の多くは組織増殖および分化に関するが、本発明は同様に他の応用も有する。例えば、脂肪由来の格子は、例えば組織増殖および分化のために改良された格子および基質を開発中に実験試薬として使用されうる。脂肪由来の格子はまた、例えばしわ、傷痕、皮膚の陥没等を隠すためまたは組織増加のため、美容的に用いられうる。そのような応用のためには、好ましくは該格子は単位投与形態にフォルム化されまたパッケージ化される。所望であれば、担体(例えば、グリセリンまたはアルコールのような溶媒)、香料、抗生物質、着色剤、および化粧品中で通例用いられる他の成分と混合されうる。該基質をまた、自家移植的にあるいは同種移植として用いることができ、そしてそれは傷の治癒を促進するための軟膏または包帯剤として使用することができ、また内部に含めることができる。該脂肪由来の細胞はまた実験試薬として使用されうる。例えば、それらは分化における初期の事象を招く薬剤の発見を容易にするために用いることができる。例えば、本発明の細胞を、特定の系統の分化誘導用の培地に曝露することができ、ついで遺伝子の弁別的な発現が分析される(例えば、ランダムプライムド(random-primed)PCRまたは電気泳動または蛋白またはRNA等によって)。
【0038】
本発明の幹細胞または脂肪由来の格子を単離するための任意の工程について、本発明は脂肪組織からそのような試薬を単離するためのキットを提供する。該キットは患者から脂肪組織を単離するための手段(例えば、カニューレ、針、吸引器等)およびストロマ細胞を単離するための手段(例えば、本明細書に記載されている方法によって)を含むことができる。該キットは、例えばその後に適切であれば同一個体から再導入されることができる幹細胞の臨床供給源として用いることができる。つまり、該キットは、同じ方法であっても、所望の組織型の再生長を要する患者に移植するための脂肪由来幹細胞の単離を容易にすることができる。この点で、該キットはまた、本明細書に記載されているような細胞に分化するための培地を含んでいてもよい。適切には、該細胞は、必要とされるような患者内部でそれらが分化するようにする培地に曝露することができる。勿論、該キットはインビトロでの操作(例えば、本明細書に記載されているようにクローニングすることまたは分化させること)のための幹細胞の都合のよい供給源として用いることができる(can me used)。他の具体例においては、該キットは、本明細書に記載されているように脂肪由来の格子を単離するために用いることができる。
【実施例】
【0039】
当業者は前述の詳細な説明を読めば本発明を十分に実施可能であるが、以下の実施例は本発明の特徴のいくつかを明らかにするのに役立つであろう。特に、それらは、成熟細胞を実質上含まないヒト脂肪由来幹細胞の単離、そのような細胞のクローン集団の単離、そのような細胞がインビボおよびインビトロで分化しうること、およびそのような細胞が他のタイプの幹細胞の増殖をサポートしうることを実証する。本実施例はまた、細胞培養のための適当な基質として働くことができる細胞を実質上含まない脂肪由来の格子の単離を実証する。勿論、これらの実施例は単に例示的な目的で示されているので、それらは本発明の範囲を限定的に解釈するために使用されるべきではなく、むしろ全体として前述の本発明の説明をさらに詳述するものとして理解されるべきである。
【0040】
これらの実施例中で用いられる方法、例えば、手術法、細胞培養、酵素的消化、組織学、ならびに蛋白およびポリヌクレオチドの分子的解析は当業者に周知である。そのような理由から、および簡潔を期すために、実験の詳細は詳しく述べない。
【0041】
(実施例1)
本実施例は成熟脂肪細胞を実質上含まないヒト脂肪由来幹細胞の単離を実証する。
【0042】
未精製の脂肪吸引液は待機手術を受ける患者から取得した。脂肪吸引処置の前に、血液による吸引液の汚染を最小化するために該患者にエピネフリンを投与した。該吸引液を濾して結合した脂肪組織片を結合した液体不要物から単離した。単離した組織を中性のリン酸緩衝食塩水で徹底的にすすいだ後、0.075%(w/v)コラゲナーゼで37℃、約20分間断続的に撹拌しながら酵素的に解離した。消化に続いて、コラゲナーゼを中和して、スラリーを約260gで約10分間遠心分離すると、多層の上澄み液と細胞のペレットとを生じた。上澄み液を除いてさらなる使用のために保管し、ペレットは赤血球溶解溶液中に再懸濁して約25℃で約10分間撹拌せずにインキュベートした。インキュベーションの後、培地を中和し、細胞を約250gで約10分間再び遠心分離した。2度目の遠心分離に続いて、細胞を懸濁し、生存度(トリパンブルー排除能を用いて)および細胞数を調べた。その後、細胞を約1x106細胞/100mmディッシュの密度でプレーティングした。それらをDMEM+ウシ胎仔血清(約10%)中37℃、約5%CO2中で培養した。
【0043】
細胞の大部分は付着性で、小さく、単核で、比較的無顆粒の線維芽細胞様の細胞であり、目に見える脂肪滴を含まなかった。大部分の細胞はオイルレッドOおよびフォン・コッサで陰性に染色された。細胞はまた、HeLa細胞およびHN-12細胞を陽性のコントロールとして用いて、テロメラーゼ(市販のTRAP分析キットを使用)の発現についても調べられた。ヒト陰茎包皮線維芽細胞およびHN-12の加熱細胞抽出液を陰性のコントロールとして使用した。テロメリック(telomeric)生成物を12.5%ポリアクリルアミドゲル(cells)上で分離し、シグナルをホスホイメージングによって決定した。テロメラーゼ活性を表しているテロメリックラダーは、脂肪由来幹細胞において陽性のコントロールと同程度に観察された。陰性のコントロールではラダーは観察されなかった。
【0044】
従って、これらの細胞は筋細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、または血液細胞と同定できなかった。これらの結果は、以前にヒト幹細胞で報告されたのと同様に脂肪由来の細胞がテロメラーゼ活性を発現することを実証する。
【0045】
次いで、これらの細胞の部分集団を以下の培地に曝露しそれらの発生上の表現型を評価した:
【0046】
【表1】

【0047】
集団を軟骨発生培地中で数週間高密度培養した。組織培養およびパラフィン切片の組織学的分析は2、7、14日目にH&E、アルシアンブルー、トルデンブルー(toludene blue)、およびゴルドナーのトリクローム染色にて実施した。免疫組織化学をコンドロイチン-4-硫酸およびケラチン硫酸およびII型コラーゲンに対する抗体を使用して実施した。染色しているマトリックスの定性的評価もまた実施された。その結果、軟骨膜細胞の明確な境界を有する軟骨球状結節は、初期処理後48時間程度の早さで形成されることが示された。未処理のコントロール細胞は軟骨原性分化の徴候を示さなかった。これらの結果は幹細胞が軟骨原性の発生上の表現型を有することを裏付けている。
【0048】
集団はコンフルエントに近い状態まで培養した後、脂肪生成培地に数週間曝露した。プレーティングから2週間後、および4週間後に、オイルレッドO染色後の相対不透明度の比色測定により集団を試験した。脂肪生成は2週間目に進行中であり、4週間目ではかなり進行していることが確認された(相対不透明度はそれぞれ1および5.3)。骨髄由来の幹細胞を陽性のコントロールとして用いたところ、これらの細胞はわずかに小さな脂肪分化能を示した(相対密度はそれぞれ0.7および2.8)。
【0049】
集団をコンフルエントに近い状態まで培養した後、骨発生培地に数週間曝露した。プレーティングから2週間後および4週間後に、フォン・コッサ染色後の相対不透明度の比色測定により集団を試験した。骨発生は2週間目に進行中であり、4週間目ではかなり進行していることが確認された(相対不透明度はそれぞれ1.1および7.3)。骨髄由来の幹細胞を陽性のコントロールとして用いたところ、これらの細胞はわずかに小さな骨生成能を示した(相対密度はそれぞれ0.2および6.6)。
【0050】
集団をコンフルエントに近い状態まで培養した後、筋発生培地に数週間曝露した。プレーティングから1、3、および6週間後に、多核細胞の評価と筋特異的な蛋白(MyoDおよびミオシン重鎖)の発現とによって集団を試験した。ヒト陰茎包皮線維芽細胞および骨格筋芽細胞をコントロールとして使用した。MyoDおよびミオシンを発現している細胞は、幹細胞集団では筋発生培地に曝露した後の全時点で見られ、そのような細胞の割合は3週間、6週間で増加した。多核細胞は6週間で観察された。対照的に、線維芽細胞はいかなる時点においてもこれらの特徴を全く示さなかった。
【0051】
これらの結果は成熟脂肪細胞を実質上含まないヒト脂肪由来の多分化能性幹細胞が単離されたことを実証するものである。
【0052】
(実施例2)
本実施例は脂肪由来幹細胞が5−アザシチジンに応答して分化しないことを実証する。
【0053】
実施例1によって得られた脂肪由来幹細胞を5−アザシチジンの存在中で培養した。骨髄由来の幹細胞とは対照的に、この薬剤に曝露しても筋原性分化は誘導されなかった。(Wakitaniら, supra参照).
【0054】
(実施例3)
本実施例はヒト脂肪由来幹細胞のクローン集団の産生を実証する。
【0055】
実施例1に記載された方法に従って単離した細胞を約5,000細胞/100mmディッシュでプレーティングし、実施例1で示されたようにして数日間培養した。数回細胞分裂の後、いくつかのクローンをクローニングリングでピックアップし、48ウェルプレート中のウェルに移した。これらの細胞を、週に二度培地を変えながら、それらが約80%〜約90%コンフルエントになるまで(2/3F12培地+20%ウシ胎仔血清および1/3標準培地−実施例1で単離された細胞によって最初に条件付けられた−「クローニング培地」中37℃、約5%CO2中で)数週間培養した。その後、各々の培養物を35mmディッシュに移して増殖させた後、100mmディッシュに再び移してコンフルエントに近い状態まで増殖させた。これに続いて、細胞集団の一つを凍結し、残りの集団を12ウェルプレート上に、1000細胞/ウェルでプレーティングした。
【0056】
細胞をクローニング培地中で15継代以上培養し、実施例1で示されたようにして分化についてモニタリングした。各々のクローンは、何回か連続して分化した後はずっと未分化状態のままであった。
【0057】
次いでクローン集団を樹立し、実施例1に記載されるようにして脂肪生成、軟骨発生、筋発生、および骨発生培地に曝露した。各々の培地に曝露すると、少なくとも一つのクローンが骨、脂肪、軟骨、および筋に分化することができ、ほとんどのクローンは少なくとも3つのタイプの組織に分化出来ることが観察された。細胞が筋および軟骨に発達しうることは、これら脂肪由来幹細胞の多分化能をさらに実証するものである。
【0058】
これらの結果は、脂肪由来幹細胞が、多くの継代の間、特別に前もって選別された血清のロットを必要とせずに未分化の状態のまま維持されうるということを実証する。結果はまた、該細胞がそのような長期の継代後に多分化能を保持することを実証しており、該細胞が実際に幹細胞であって単なる拘束された前駆細胞ではないことを証明している。
【0059】
(実施例4)
本実施例は脂肪由来幹細胞が他のタイプの幹細胞の培養物をサポートすることを実証する。
【0060】
ヒト脂肪由来幹細胞を96ウェルプレート上に、約30,000個/ウェルの密度で継代し、一週間培養した後に放射線照射した。次いで臍帯血から単離されたヒトのCD34+造血幹細胞をウェルに播種した。共培養物をMyeloCult H5100培地中で維持し、細胞生存度および増殖を顕微鏡観察によって主観的にモニタリングした。共培養2週間後に、該造血幹細胞のCD34発現をフローサイトメトリーによって評価した。
【0061】
ストロマ細胞と共培養すると2週間にわたって、造血幹細胞はこんもりとした細胞の大きなコロニーを形成した。フロー分析により、該細胞の62%がCD34+のままであることが明らかとなった。顕微鏡観察によると、ヒト脂肪由来ストロマ細胞は依然として生存しておりかつ臍帯血由来のヒト造血幹細胞の増殖をサポートした。
【0062】
これらの結果は、ヒトの皮下脂肪組織由来のストロマ細胞が他の幹細胞のエクスビボでの維持、増殖および分化をサポートしうることを実証する。
【0063】
(実施例5)
本実施例は脂肪由来幹細胞がインビボで分化しうることを実証する。
【0064】
4つのグループ(A-D) の無胸腺マウス(各12匹)に、以下のものを含んでいるヒドロキシアパタイト/トリカルシウムリン酸立方体を皮下移植した:グループAは実施例1に記載されているようにして骨発生培地で前処理された脂肪由来幹細胞を含んでいた。グループBは未処理の脂肪由来幹細胞を含んでいた。グループCは骨発生培地を含むが細胞を含まなかった。グループDは非骨発生培地を含み、かつ細胞を含まなかった。各々のグループ内で、6匹のマウスを移植後3週間で犠牲にし、残りのマウスは移植から8週間で犠牲にした。立方体を摘出し、固定、脱灰、および切片化した。それぞれの切片はH&E染色、マロリー骨染色(Mallory bone stain)およびオステオカルシンの免疫染色によって分析した。
【0065】
オステオカルシンについて染色し、かつマロリー骨染色する、類骨様組織のはっきり識別される領域が、グループAおよびB由来の切片で観察された。他のグループよりも実質的により多くの類骨組織がグループAおよびBにおいて観察されたが(p<0.05 ANOVA)、グループAとBの間には骨発生における有意差は観察されなかった。さらに、骨増殖における質的な増加がグループAとBの両方において3週間と8週間の間で認められた。これらの結果は脂肪由来幹細胞がインビボで分化しうることを実証するものである。
【0066】
(実施例6)
本実施例は実質上細胞を含まない脂肪由来の格子の単離を実証する。
【0067】
1つのプロトコルにおいては、保存していた実施例1からの上澄み液を0.05%トリプシンEDTA/ 100U/ml デオキシリボヌクレアーゼ中で3日間酵素消化に付して細胞を破壊した。毎日デブリスを生理食塩水ですすぎ、かつ新しい酵素が添加された。その後材料は食塩水で洗い落とされ、そして0.05%コラゲナーゼ(collagease)および約0.1%リパーゼ中に再懸濁して存在している蛋白および脂肪を部分消化した。このインキュベーションを2週間継続した。
【0068】
別のプロトコルにおいては、保存していた実施例1からの上澄み液をEDTA中でインキュベートして全ての上皮細胞を除去した。残存する細胞を、1% NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、5mM EDTA、0.4M NaCl、50mM Tris-HCL(pH 8)およびプロテアーゼ阻害剤を含み、かつロイペプチン、キモスタチン、アンチパインおよびペプスタチンA を各々10μg/ml 含むバッファーを使用して溶解した。最後に、該組織を二価のカチオンを含まないPBS中で徹底的に洗浄した。
【0069】
両方の準備プロトコルの後、残存している物質を洗浄すると、ゲル状の塊として同定された。この物質の顕微鏡分析により、それは細胞を含まず、かつ大量のコラーゲン(おそらくIV型)および種々の増殖因子からなることが明らかになった。この物質の調製物は細胞の増殖をサポートし、それが組織培養のための優れた基質であることを実証した。
【0070】
(言及による包含)
本書類もしくは任意の図面、配列表、または本書類とともに提出される陳述書の中で言及されまたは引用された任意の情報源(例えば、発明者証、特許出願、特許、出版された刊行物、所蔵図書または記録、実用新案、世界中のウエブページ等)は、そのことにそのように言及することによって、結果として本明細書に包含され、本明細書の一部とされる。
【0071】
(解釈の指針)
前述の事項は本発明全体の統合された説明であり、単なるその一面の特定の要素の説明ではない。本説明は、本発明の実施のために本発明者らが知る最良の形態を含めて本発明の「好ましい具体例」を記載する。それを実行する発明者に公知の最良の形態を含むことをいう。勿論、前述の説明を読むと、それらの好ましい具体例の変形は当業者には明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が適切であればそのような変形を用いることを予測し、そして本発明者らは本発明が特に本明細書に記載されるのとは別のやり方で実施されることを意図する。従って、本発明は、適用可能な法によって許容されるように、これに添付された特許請求の範囲に記載された主題のあらゆる変更物および均等物を含む。
【0072】
前述の説明および以下の特許請求の範囲において使用されるように、単数の表示(例えば、「ある(a)」または「一つの(one)」)は、別段の指示がない限り、複数を含む。不連続の数値の範囲の記述は、当該範囲内にあるそれぞれ別個の値に個々に言及する略記方法として働くことを意図しており、各々の別個の値は、まるでそれが個々に列挙されたかのように本明細書に含まれる。さらに、以下の用語は次のように定義される:「原基」は特異的な成熟した構造に発達する能力を有する原始構造である。「発生上の表現型」は、分化の過程を通じて細胞が特定の物理的な表現型を獲得する能力である。「ホルモン」は細胞によって分泌され、かつ接触により同一または他の細胞に表現型の変化を引き起こす任意の物質である。「幹細胞」は少なくとも二つのはっきりと区別される発生経路に従って分化する能力を有する多分化能性細胞である。
【0073】
特に特許請求の範囲に関することとして、用語「から本質的になる」は、本発明の基本的かつ新規な特徴に本質的に影響を及ぼさない、列挙されていない成分または工程が特に列挙された成分または工程に加えて用いられうることを示す。
対照的に、「含む(comprising)」、「有する(having)」、および「包含する(including)」のような用語は、任意の成分または工程が列挙されたものに加えて存在できることを示す。用語「からなる」は列挙された成分または工程だけが存在することを示すが、該成分または工程の均等物が特に列挙されたものの代替となりうる可能性を除外しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟脂肪細胞を実質上含まない哺乳類の脂肪由来の幹細胞。
【請求項2】
DMEM+約10%ウシ胎仔血清中で、分化させることなく少なくとも15回継代して培養することができる、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
脂肪原性、軟骨原性、心臓原性、皮膚原性、造血性、血管原性、筋原性、腎原性、神経原性、神経痛原性、尿生殖器原性、骨原性、心膜原性、腹膜原性、胸膜原性、内臓原性、およびストロマ性の発生上の表現型からなる発生上の表現型の群から選択される2以上の発生上の表現型を有する、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
ヒトである、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞。
【請求項5】
遺伝子学的に変更されている、請求項1〜4のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
細胞表面結合細胞内シグナル伝達部分を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞。
【請求項7】
ホルモンを分泌する、請求項1〜5のいずれかに記載の細胞。
【請求項8】
上記ホルモンがサイトカインおよび増殖因子からなるホルモンの群から選択される、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の細胞を含む定義づけられた細胞集団。
【請求項10】
異種である、請求項9に記載の定義づけられた細胞集団。
【請求項11】
神経幹細胞(NSC)、造血幹細胞(HPC)、胚幹細胞(ESC)およびそれらの混合物からなる細胞の群から選択される幹細胞をさらに含む(compressing)、請求項9または10に記載の定義づけられた細胞集団。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかの細胞から本質的になる、請求項9に記載の定義づけられた細胞集団。
【請求項13】
実質上同種である、請求項9または12に記載の定義づけられた細胞集団。
【請求項14】
クローンである、請求項13に記載の定義づけられた細胞集団。
【請求項15】
集団がクローンであって、中胚葉幹細胞(MHC)、結合組織幹細胞(CTSC)、またはそれらの混合物から本質的になる定義づけられた細胞集団。
【請求項16】
上記幹細胞が、脂肪原性、軟骨原性、心臓原性、皮膚原性、造血性、血管原性、筋原性、腎原性、神経原性、神経痛原性、尿生殖器原性、骨原性、心膜原性、腹膜原性、胸膜原性、内臓原性、およびストロマ性の発生上の表現型からなる発生上の表現型の群から選択される2以上の発生上の表現型を有する、請求項15に記載の集団。
【請求項17】
細胞を実質上含まない脂肪組織細胞外マトリックス材料を含む脂肪由来の格子。
【請求項18】
ヒト蛋白、プロテオグリカン、糖蛋白、ヒアルロニン、またはフィブロネクチン分子を含む、請求項17に記載の脂肪由来の格子。
【請求項19】
I型、II型、III型、IV型、V型、VI型コラーゲンからなるコラーゲンの群から選択されるコラーゲンを含む、請求項17または18に記載の脂肪由来の格子。
【請求項20】
ホルモンを含む請求項17〜19のいずれかに記載の脂肪由来の格子。
【請求項21】
上記ホルモンがサイトカインおよび増殖因子からなるホルモンの群から選択される、請求項20に記載の脂肪由来の格子。
【請求項22】
実質上無水である、請求項17〜21のいずれかに記載の脂肪由来の格子。
【請求項23】
凍結乾燥されてなる、請求項17〜22のいずれかに記載の脂肪由来の格子。
【請求項24】
水和されてなる、請求項17〜21のいずれかに記載の脂肪由来の格子。
【請求項25】
請求項17〜24のいずれかに記載の脂肪由来の格子と水和剤、細胞培養基質、細胞培養培地、抗生物質化合物、およびホルモンからなる構成要素の群から選択される1以上の構成要素とを含むキット。
【請求項26】
細胞および請求項17〜24のいずれかに記載の脂肪由来の格子を含む組成物。
【請求項27】
請求項1〜8のいずれかに記載の細胞および生物学的に適合した格子を含む組成物。
【請求項28】
請求項9〜16のいずれかに記載の集団および生物学的に適合した格子を含む組成物。
【請求項29】
上記格子がポリマー材料を含む、請求項27または28に記載の組成物。
【請求項30】
上記ポリマー材料がメッシュまたはスポンジとしてポリマー繊維から形成されるものである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
上記ポリマー材料が、グリコール酸、乳酸、フマル酸プロピル、カプロラクトン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸およびそれらの組み合わせからなるモノマーの群から選択されるモノマーを含む、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
上記ポリマー材料が、蛋白、多糖、ポリヒドロキシ酸、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、合成ポリマーまたはそれらの組み合わせを含む、請求項29〜31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
上記ポリマー材料が、細胞を内部に拡散させているポリマー懸濁液の架橋によって形成されるヒドロゲルである、請求項29〜32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
上記格子が、サイトカインおよび増殖因子からなるホルモンの群から選択されるホルモンをさらに含む、請求項29〜33のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
上記格子が請求項17〜24のいずれかに記載の脂肪由来の格子である、請求項29〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
請求項1〜8のいずれかに記載の細胞を、導入遺伝子を包含する核酸を含む遺伝子導入ベクターに曝露することを含み、それによって該導入遺伝子が細胞内で発現されるような条件下で、該核酸が細胞内に導入される、遺伝子学的に変更された細胞を得る方法。
【請求項37】
上記導入遺伝子が毒素に対する抵抗性を与える蛋白をコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
(a)遺伝子学的に変更された細胞を請求項36または37に従って得ること、および(b)動物に該細胞を導入し、そうして導入遺伝子をインビボで発現することを含む、動物に対する導入遺伝子の送達方法。
【請求項39】
細胞が分化するのに十分な条件下で、形態発生培地中で細胞を培養することを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の細胞を分化させる方法。
【請求項40】
上記培地が、脂肪生成、軟骨発生、心臓発生、皮膚発生、胚性、胎児性、造血性、血管発生、筋発生、腎性、神経発生、神経痛発生、尿生殖器発生、骨発生、心膜発生、腹膜発生、胸膜発生、および内臓発生、またはストロマ発生培地である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記形態発生培地が脂肪生成培地であり、かつ脂肪原性の分化を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
上記形態発生培地が軟骨発生培地であり、かつ軟骨原性分化を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項43】
上記形態発生培地が胚性または胎児性培地であり、かつ胚性または胎児性の表現型を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項44】
上記形態発生培地が筋発生培地であり、かつ筋原性分化を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項45】
上記形態発生培地が骨発生培地であり、かつ骨原性分化を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項46】
上記形態発生培地がストロマ発生培地であり、かつストロマ性または造血性分化を同定するために細胞をモニタリングする、請求項39または40に記載の方法。
【請求項47】
上記細胞がインビトロで分化する、請求項39〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
上記細胞がインビボで分化する、請求項39〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
(a) 請求項7または8に記載の細胞を、細胞がホルモンを培地中に分泌するのに十分な条件下、培地内で培養すること、および(b)該培地から該ホルモンを単離することを含む、ホルモンを生産する方法。
【請求項50】
請求項7または8に記載の細胞を、該細胞がホルモンを生み出すのに十分な条件下、傷の近傍に導入し、それによって該ホルモンの存在が傷のふさがりを促進することを含む、患者内の傷のふさがりを促進する方法。
【請求項51】
請求項7または8に記載の細胞を、該細胞がホルモンを生み出すのに十分な条件下、組織に導入し、それによって該ホルモンの存在が組織内の血管新生を促進することを含む、組織内の血管新生を促進する方法。
【請求項52】
上記組織が動物内にある、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
上記組織が移植片である、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
上記ホルモンが、ヒト成長因子、神経成長因子、血管および内皮細胞増殖因子ならびにTGFβスーパーファミリーのメンバーからなる増殖因子の群から選択される増殖因子である、請求項49〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
細胞が培地を条件付けるのに十分な条件下、請求項1〜7のいずれかに記載の細胞に培養培地を曝露することを含む、培養培地を条件付ける方法。
【請求項56】
上記培地が、条件付けられた後に細胞から単離される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
上記細胞が請求項9〜16のいずれかに記載の集団の内部にある、請求項36〜56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
請求項55または56に記載の方法に従って生産される条件培養培地。
【請求項59】
請求項1〜7のいずれかに記載の細胞を実質上含まない、請求項58に記載の条件培養培地。
【請求項60】
幹細胞が生存を維持するための条件下、請求項58または59に記載の条件培地中で幹細胞を維持することを含む幹細胞を培養する方法。
【請求項61】
幹細胞の拡大した集団を形成するための幹細胞の有糸分裂の連続ラウンドを許容することをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
上記培地が請求項1〜7のいずれかに記載の脂肪由来の細胞を実質上含まない、請求項60または61に記載の方法。
【請求項63】
上記培地が請求項1〜7のいずれかに記載の脂肪由来の細胞を含む、請求項60〜62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
幹細胞および脂肪由来の細胞が接触している、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
上記幹細胞が造血幹細胞である、請求項60〜64のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
請求項18〜26のいずれかに記載の組成物を、該組成物内で細胞が増殖しかつ分化して動物素材を形成するのに十分な条件下で維持することを含む動物素材の製造方法。
【請求項67】
上記素材が、脂肪、軟骨、心臓、皮膚結合組織、血液組織、筋、腎、骨、胸膜の、および内臓の組織、およびそれらの組み合わせからなる組織の群から選択される組織型を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
上記素材が1以上の組織型を含む、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
上記素材が少なくとも動物器官の一部分を含む、請求項66〜68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
上記素材が少なくとも動物四肢の一部分を含む、請求項66〜68のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
上記組成物がインビトロで維持される、請求項66〜70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
上記組成物が動物内に導入されかつインビボで維持される、請求項66〜70のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
請求項1〜7のいずれかに記載の細胞を含む移植片。
【請求項74】
請求項8〜13のいずれかに記載の集団を含む移植片。
【請求項75】
請求項14〜16のいずれかに記載の脂肪由来の格子を含む移植片。
【請求項76】
請求項17〜26のいずれかに記載の組成物を含む移植片。
【請求項77】
脂肪組織を患者から単離する手段および幹細胞を脂肪組織の残留物から単離する手段を含む、脂肪組織から幹細胞を単離するためのキット。
【請求項78】
幹細胞を分化させるための培地をさらに含む、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
上記培地が、脂肪生成、軟骨発生、心臓発生、皮膚発生、胚性、胎児性、造血性、血管発生、筋発生、腎性、神経発生、神経痛発生、尿生殖器発生、骨発生、心膜発生、腹膜発生、胸膜発生、および内臓発生、またはストロマ発生の培地からなる培地の群から選択される、請求項78に記載のキット。

【公開番号】特開2011−78416(P2011−78416A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−241400(P2010−241400)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【分割の表示】特願2000−603416(P2000−603416)の分割
【原出願日】平成12年3月10日(2000.3.10)
【出願人】(500091313)ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション (10)
【出願人】(501354901)ザ リージェンツ オヴ ザ ユニヴァーシティ オヴ カリフォルニア (1)
【Fターム(参考)】