説明

脂質を主材料とする担体に内封された、不溶性小分子治療剤の製剤

本発明は、少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、および両親媒性もしくは疎水性薬物を含む製剤、ならびにこれらの製剤を製造する方法を提供する。特に、本発明は、少なくとも1種の不飽和リン脂質、および両親媒性もしくは疎水性ピリミジン薬物の製剤、これらの製剤を製造する方法、ならびに、例えば、腫瘍およびがん等のような増殖性障害の治療を含む、種々の状況でのこのような製剤の使用を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年12月6日に出願された米国特許出願第60/742,954号の米国特許法119(e)条に基づく恩典を主張するものであり、この出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本発明は、概して、少なくとも一つの不飽和両親媒性脂質および両親媒性もしくは疎水性薬物の製剤、ならびにこれらの製剤を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも一つの不飽和リン脂質および両親媒性もしくは疎水性の2,4-ピリミジンジアミン薬物の製剤、これらの製剤を製造する方法、ならびに例えば、腫瘍およびがん等のような増殖性障害の治療を含む、様々な状況でのこのような製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
実質的なインビトロでの生物学的活性を有する多くの薬物は、水溶解度に乏しいため、インビボでの治療有効性に欠ける。薬物がインビボで特定の投薬形態から溶解する比率は、吸収決定の律速段階となることが多く、また薬物の治療有効性と強く相関することが多い。
【0004】
脂質を主材料とする液状製剤(例えば、リポソームおよび/またはベシクル)は、不十分なバイオアベイラビリティを有する貧可溶性または不溶性の小分子治療剤、特に抗がん剤を送達するために使用されてきた。(Campbell et al., 米国特許第6,680,068号;Asvar et al. 米国特許第6,689,381号;Bernstein et al., 米国特許第6,423,345号;Knight et al., 米国特許第5,049,388号;Radhakrishnan et al., 米国特許第4,895,719号)。通常、リポソームおよび/またはベシクルにおいて、小分子治療剤は、脂質に取り囲まれた水性のコア(core)中に隔離されている。従って、このような製剤は普通、静脈内投与または吸入により投与される。
【0005】
脂質を主材料とする製剤に伴う利点としては、不活性、優れた毒性プロフィール、および安全な取り扱いが挙げられる。バイオアベイラビリティの増大を伴って、静脈内投与または吸入による投与だけでなく、場合によっては、薬物を経口的、腹腔的、および鼻腔内に投与可能であるため、脂質二分子膜マトリックスへの溶解により、両親媒性または疎水性化合物を効果的に水溶液に可溶化する脂質を主材料とする分散体は、場合によっては大いに価値がある。従って、必要なものは、送達を容易にし、かつバイオアベイラビリティを増大させる、特に両親媒性または疎水性薬物の経口投与を経る、脂質を主材料とする製剤である。これらの新規製剤は、通常、両親媒性または疎水性薬物のバイオアベイラビリティを増大させるであろう。
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、両親媒性もしくは疎水性薬物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシドの新規な脂質を主材料とする製剤、およびこれらの製剤を製造する方法を提供することにより、これらおよび他の必要性を満足させる。いくつかの態様において、両親媒性または疎水性薬物は、脂質二分子膜マトリックスへの溶解により可溶化され、静脈内投与または吸入による投与だけでなく、経口的、腹腔的、および鼻腔内に投与され得る。
【0007】
一局面において、少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、および両親媒性もしくは疎水性薬物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシドを含有する、脂質を主材料とする製剤を提供する。いくつかの態様において、不飽和両親媒性脂質はリン酸脂質であり、かつ両親媒性または疎水性薬物はピリミジン誘導体、特に2,4-ピリミジンジアミン誘導体である。他の態様において、薬物と脂質は、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する。
【0008】
他の局面において、脂質を主材料とする製剤を製造する方法を提供する。少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、両親媒性もしくは疎水性薬物、および溶媒を混合する。該溶媒を除去して、薬物および脂質を含む残渣を形成する。次いで、該残渣を水または水溶液と混合する。好ましくは、薬物と脂質は、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する。
【0009】
多くの2,4-ピリミジンジアミン誘導体は、インビトロアッセイにおいて、例えば、腫瘍細胞の増殖等のような異常細胞の増殖の強力な阻害剤である。それゆえ、さらに他の局面において、本発明は、異常細胞、特に腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、一般に、例えば、腫瘍細胞のような異常細胞を、その増殖を阻害するために有効な量の、1つまたは複数の、両親媒性もしくは疎水性の2,4-ピリミジンジアミン誘導体もしくはそのプロドラッグ、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、ならびに不飽和両親媒性脂質を含有する製剤と接触させる段階を包含する。この方法は、例えば、腫瘍形成性がん等のような増殖性障害の治療または予防に向けた治療的なアプローチとして、インビトロ状況またはインビボ状況において実行され得る。
【0010】
さらに他の局面において、増殖性障害を治療する方法を提供する。該方法は、獣医学的状況にある動物において、またはヒトにおいて実行され得る。この方法は、一般に、動物またはヒト対象に、障害を治療するために有効な量の、1つもしくは複数の両親媒性もしくは疎水性の2,4-ピリミジンジアミン誘導体もしくはそのプロドラッグ、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、ならびに不飽和両親媒性脂質を含有する製剤を投与する工程を包含する。これらの方法によって治療され得る増殖性疾患としては、腫瘍形成性がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
詳細な説明
1. 定義
本明細書で用いられる以下の用語は、以下の意味を有することを意図する。
【0012】
単独での、または他の置換基の一部分としての「アルキル」は、親アルカン、アルケン、またはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、規定数の炭素原子(すなわち、C1〜C6とは、1〜6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和の、または分岐状、直鎖状、もしくは環状の一価炭化水素遊離基のことを言う。典型的なアルキル基としては、メチル;例えば、エタニル、エテニル、エチニル等のようなエチル;例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル、シクロプロパン-1-イル、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イル、シクロプロパ-2-エン-1-イル、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル等のようなプロピル;および例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル、2-メチル-プロパン-1-イル、2-メチル-プロパン-2-イル、シクロブタン-1-イル、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イル等のようなブチル等が挙げられるが、これらに限定されない。特定の飽和レベルを意図している場合、以下で定義する「アルカニル」、「アルケニル」、および/または「アルキニル」という術語が使用される。「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基のことを言う。
【0013】
単独での、または他の置換基の一部分としての「アルカニル」は、親アルカンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、飽和の、分岐状、直鎖状、または環状のアルキルのことを言う。典型的なアルカニル基としては、メタニル;エタニル;例えば、プロパン-1-イル、プロパン-2-イル(イソプロピル)、シクロプロパン-1-イル等のようなプロパニル;および例えば、ブタン-1-イル、ブタン-2-イル(sec-ブチル)、2-メチル-プロパン-1-イル(イソブチル)、2-メチル-プロパン-2-イル(t-ブチル)、シクロブタン-1-イル等のようなブタニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
単独での、または他の置換基の一部分としての「アルケニル」は、親アルケンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、少なくとも1つの炭素‐炭素二重結合を有する、不飽和の、分岐状、直鎖状、または環状のアルキルのことを言う。該基は、二重結合に関するシスまたはトランスのいずれかの立体配座であり得る。典型的なアルケニル基としては、エテニル;例えば、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル、プロパ-2-エン-2-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イル、シクロプロパ-2-エン-1-イル等のようなプロペニル;および例えば、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1,3-ジエン-1-イル等のようなブテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
単独での、または他の置換基の一部分としての「アルキニル」は、親アルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することにより誘導される、少なくとも1つの炭素‐炭素三重結合を有する不飽和の、分岐状、直鎖状、または環状のアルキルのことを言う。典型的なアルキニル基としては、エチニル;例えば、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル等のようなプロピニル;および例えば、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イル等のようなブチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の薬理活性を保持する薬物の塩のことを言う。このような塩としては、以下が挙げられる。
(1) 例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸等のような無機酸で形成される酸付加塩;または例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、およびムコン酸等のような有機酸で形成される酸付加塩;あるいは、
(2) 親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンで置き換えられた場合、または例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびN-メチルグルカミン等のような有機塩基と配位した場合に形成される塩。
【0017】
「薬学的に許容される賦形剤」は、両親媒性または疎水性薬物と共に投与される、希釈剤、補助剤、補形剤、または担体のことを言う。
【0018】
2. 製剤
本発明は、両親媒性または疎水性薬物の、新規な脂質を主材料とする製剤を提供する。該脂質を主材料とする製剤は少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、および両親媒性もしくは疎水性薬物、またはそれらの薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシドを有する。いくつかの態様において、不飽和両親媒性脂質はリン酸脂質であり、かつ両親媒性または疎水性薬物はピリミジン誘導体、特に2,4-ピリミジンジアミン誘導体である。他の態様において、両親媒性薬物は、脂質二分子膜マトリックスへの溶解により可溶化され、静脈内投与または吸入による投与だけでなく、経口的、腹腔的、および鼻腔内投与され得る。いくつかの他の態様において、薬物と脂質は、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する。
【0019】
両親媒性薬物は、親水性部分と疎水性部分の両方を含有する。親水性部分の例としては、アシル基、アミン、アミン塩、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸塩、ケトン、アルデヒド、エーテル、チオール、エステル、アミド、およびハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード)が挙げられるが、これらに限定されない。疎水性部分の例としては、直鎖状および分岐状の炭化水素鎖、芳香族基、ならびに無極性結合をもたらす他の官能基が挙げられる。その他の親水性部分と疎水性部分は、化学分野の当業者に公知である。
【0020】
例えば、解熱剤および抗炎症薬、鎮痛剤、抗関節炎薬、鎮痙剤、抗うつ剤、抗精神病薬、精神安定剤、抗不安薬、麻薬拮抗薬、抗パーキンソン薬、コリン作動性拮抗薬、化学療法剤、免疫抑制剤、抗ウイルス薬、殺寄生虫薬、食欲抑制剤、制吐薬、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、冠血管拡張薬、脳血管拡張薬、末梢血管拡張剤、ホルモン剤、避妊薬、抗血栓剤、利尿薬、抗高血圧薬、心臓血管薬、オピオイド、およびビタミンを含む、治療的に重要な化合物の多くは、両親媒性または疎水性化合物である。両親媒性または疎水性薬物の具体例としては、リドカイン、ドキソルビシン、ビノレルビン、チオペンタールナトリウム、コレステロール、テストステロン、α-トコフェロール、フェニルブタゾン、ジフェニルヒドラミン、ピリラミン、およびデスロラタジン(desloratidine)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
ピリミジン誘導体、特に2,4-ピリミジンジアミン誘導体、例えばその開示が参照により本明細書に組み入れられ、2003年1月31日および2003年7月29日にそれぞれ出願された米国特許出願第10/355,543号および同第10/631,029号に記載された、2,4-ピリミジンジアミン誘導体は、両親媒性または疎水性化合物である治療剤のもう一つの分類である。両親媒性2,4-ピリミジンジアミン誘導体の具体例としては、以下に挙げられるが、これらに限定されない。

【0022】
一般に、両親媒性または疎水性薬物は、約3より大きいかまたは等しく、かつ約5より小さいかまたは等しいlog P値を有する。分配係数Pは、当業者に周知であり、かつ下記の式により定義される。
P = Cn-オクタノール/C
式中、Cn-オクタノールはオクタノール中の親油性物質の平衡濃度であり、Cは水中の親油性物質の平衡濃度である。薬物分子に対するlog Pの算出および測定方法は、例えば、以下に記載するように、当業者の範囲内である。
【0023】
一般に、両親媒性分子は、構造の少なくとも1つの末端に位置する親水性基(例えば、塩素、フッ素等)を有する。他の両親媒性分子としては、疎水性部分に結合した極性鎖を有する化合物が挙げられる。
【0024】
不飽和両親媒性脂質は、親水性基と疎水性部位の両方を含有する。不飽和両親媒性脂質に見られる一般的な親水性基としては、アシル基、アミン、アミン塩、ヒドロキシル、カルボン酸、カルボン酸塩、ケトン、アルデヒド、エーテル、チオール、エステル、アミド、およびハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード)が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和両親媒性脂質中の疎水性基は、通常、12個またはそれ以上の炭素原子の不飽和炭化水素鎖である。
【0025】
不飽和両親媒性脂質の大まかな分類の例としては、例えば、界面活性剤(detergent)、表面活性剤(surfactant)、セッケン、リン脂質、カルジオリピッド(cardiolipid)、ホスホノ脂質(例えば、セラミドホスホニルエチルアミン)、エーテル脂質、グリセロ糖脂質等が挙げられ、これらは当業者に公知である。不飽和両親媒性脂質のより具体的な例としては、不飽和脂肪酸(例えば、ミリストレイン、パルミトレイン、エライジン、ペトロセリン、オレイン、バクセン、ゴンド、エルカ、ネルボン、リノール、γ-リノール、α-リノール、アラキドン、エイコサペンタエン、ドコサヘキサエン)、対応する脂肪酸誘導体(例えば、アミド、エステル等)、対応するスルホン酸、対応するスルホン酸誘導体(例えば、スルホンアミド、スルホン酸エステル等)、対応する脂肪アルコール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの態様において、脂質としては、1つまた複数の不飽和アシル部分が挙げられる。他の態様において、両親媒性脂質は、1つまた複数の不飽和アシル部分を含むリン脂質である。いくつかの他の態様において、不飽和アシル部分は、n-アルケニルである。さらに他の態様において、不飽和アシル部分は、cis-アルケニルである。さらに他の態様において、不飽和アシル部分は、cis-n-アルケニルである。さらに他の態様において、不飽和アシル部分は、C12-C24アルケニルである。さらに他の態様において、不飽和アシル部分は、C16-C20アルケニルである。さらに他の態様において、不飽和アシル部分は、ペトロセリニル、エルシル、オレオイル、エライドイル、パルミトレオイル、ミリストレオイル、アラキドニル、リノレオイル、リノレニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0027】
図1は、架橋部により相互連結された、親水性極性頭部基および疎水性尾部を有する、従来のリン脂質の例を図に示す。いくつかの態様において、架橋部は、グリセロールであり、結果として生じる脂質はグリセロリン脂質である。グリセロールのC1およびC2にあるヒドロキシルは、例えば、R1およびR2として指定される種々の脂肪酸でエステル化され得、一方、C3にあるヒドロキシルは、リン酸エステル部分でエステル化され、グリセロリン脂質を与える。グリセロール主鎖は、D-エリトロ配置またはL-トレオ配置のいずれかを有し得る。
【0028】
不飽和両親媒性リン脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、不飽和両親媒性リン脂質は、ホスファチジルコリンである。他の態様において、前記リン脂質の不飽和アシル部分は、ペトロセリニル、エルシル、オレオイル、エライドイル、パルミトレオイル、ミリストレオイル、アラキドニル、リノレオイル、リノレニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。ホスファチジルコリンの例としては、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジペトロセリニルホスファチジルコリン、ジエルシルホスファチジルコリン、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン、ジミリストレオイルホスファチジルコリン、ジアルキドニルホスファチジルコリン(diarchidonylphosphatidylcholine)、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジリノレニルホスファチジルコリン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの他の態様において、ホスファチジルコリンは、ジオレオイルホスファチジルコリンである。
【0029】
いくつかの態様において、求核体(例えば、アミン、ヒドラジン、アニリン、アジド、ヒドロキシル、ペルオキシド、チオール、ラジカル、ジラジカル、または炭素アニオン)と、求電子体(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトン、アルデヒド、エポキシド、無水物、酸クロリド、アルキルハライド、スルホニルクロリド、スルホン酸エステル、スルフィン酸エステル、イソシアン酸、イソチオシアン酸、ケテン、ボロン酸、ホスホン酸エステル、ホスホリルクロリド、またはホスフィン酸エステル)との任意の組み合わせを有するグリセロール置換を、種々のリン脂質に対する主鎖として用いることができる。例えば、適したグリセロール置換としては、エリトロース、トレオース、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン等が挙げられる。
【0030】
他の不飽和両親媒性リン脂質としては、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、およびスフィンガニン等のようなスフィンゴ脂質が挙げられる。スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、およびスフィンガニンは、脂肪酸分子でN-アミド化されてセラミドを与えるアミノ官能基を有する。セラミドの例としては、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルイノシトール、グリコシルセラミド、スルホグリコスフィンゴ脂質、およびオリゴグリコシルセラミド(例えば、ガングリオシド)が挙げられる。
【0031】
さらに他の不飽和両親媒性脂質としては、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールを含有する表面活性剤で修飾された不飽和脂質が挙げられる。これらのペグ化脂質は、通常、インビボにおいて、それらのペグ化されていない対応する脂質よりも実質的に安定である。このようなペグ化脂質は、常法により合成することができるか、または市販されている(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL)。
【0032】
多くの不飽和両親媒性脂質は、天然源(例えば、卵黄、脳、または植物源)から抽出することができるか、商業的に(例えば、Sigma-Aldrich および Avanti Polar Lipidsから)購入できるか、または当業者に公知の方法(例えば、"Phospholipids Handbook" G. Cevc, ed., Marcel Dekker (1993); Hermanson, "Bioconjugate Techniques" Academic Press (1996); Subramanian et al., ARKIVOC VII: 116-125 (2002))により合成することができる。
【0033】
不飽和両親媒性脂質の重要な特徴は、転移温度(Tm)であり、それらの飽和類似体と比べて、不飽和脂質での転移温度は典型的に低い。転移温度より上で、典型的に、脂質は流体様の性質を特徴とする液晶相の状態にあり、一方、転移温度より下で、普通、脂質は剛性ゲル相の状態にある。両親媒性または疎水性薬物は、生理的温度より下の転移温度で脂質に溶解され得る。
【0034】
【表10】

【0035】
以下、表10に示すように、Tm脂質中の疎水性鎖の長さおよび飽和度に依存する。それゆえ、疎水性鎖の長さが長いほど、および飽和度が高いほど、その特定の膜に対する転移温度は高くなる。いくつかの態様において、不飽和両親媒性脂質は、約30℃より低いTmを有する。他の態様において、不飽和両親媒性脂質は、20℃より低いTmを有する。
【0036】
不飽和両親媒性脂質は、水性の環境に置かれた場合、多くの異なった構造の形を取り得る。いくつかの態様において、脂質は、水性の環境で二分子膜を形成する。脂質二分子膜は、両親媒性または疎水性薬物を水性の環境から優先的に隔離し得る。あるいは、換言すれば、両親媒性薬物は脂質二分子膜中に溶解し得る。
【0037】
他の態様において、水溶液中に置かれた場合、脂質はリポソームを形成し得る。リポソームは、両親媒性脂質が水により水和した場合に自己集合し得る、自己閉鎖した二分子膜構造である。通常、リポソームは、疎水性脂質二分子膜に取り囲まれた水性コアを有する。ここで、親水性極性基は水溶液へ向けた内向きと外向きに誘導され、かつ疎水性脂肪酸は脂質二分子膜内で、疎水性脂肪酸同士で会合する。いくつかの態様において、両親媒性薬物または疎水性薬物をリポソームの脂質二分子膜中に溶解する。他の態様において、両親媒性薬物または疎水性薬物は、リポソームの水性コアの中にある。
【0038】
リポソームは、小さな一枚膜、大きな一枚膜、もしくは多重膜、またはそれらの組み合わせであり得る。小さな一枚膜リポソームは、直径約20 nm〜200 nmであり、一方、大きな一枚膜は、およそ1ミクロンである。多重膜リポソームは、通常、同心二分子膜(concentric bilayer)を有する。オリゴラメラリポソームは、普通、二分子膜間の水性空間が増大した多重膜リポソームまたは、非同心円状に二分子膜内に入れ子になったリポソームを有する多重膜リポソームといわれている。多重膜リポソームおよびオリゴラメラリポソームは、機械的エネルギー(例えば、押し出し成形)または音波エネルギー(例えば、超音波処理)により、一枚膜リポソームに都合よく減らされ得る。リポソームキットが市販されている(例えば、Boehringer-Mannheim、ProMega,、および Life Technologies (Gibco)から)。
【0039】
いくつかの他の態様において、脂質は、水性の環境にさらされるとミセルを形成し得る。ミセルは、両親媒性脂質の濃度が臨界ミセル濃度(CMC)に到達した場合に形成する、コロイド凝集体である。水性の環境で、親水性基が非極性内部を水から遮蔽するように、両親媒性脂質は、臨界ミセル濃度で自発的に配向する。ミセルは、当技術分野において周知の様に、球状、扁円状、扁長状、または立方体状であり得る。
【0040】
他の態様において、両親媒性脂質は、単独で、またはミセル、リポソーム、もしくは脂質二分子膜との平衡混合物として、ミクロスフェア、凝集体、懸濁液、コロイド、分散体、エマルション、またはそれらの組み合わせを形成し得る。従って、このような全ての構造およびそれらの組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0041】
いくつかの態様において、薬物はピリミジン誘導体であり、かつ脂質はリン脂質である。好ましくは、ピリミジン誘導体は2,4-ピリミジンジアミン誘導体である。他の態様において、リン脂質はホスファチジルコリンであり、かつ2,4-ピリミジン誘導体は以下の図に示す化合物の一つである。

【0042】
前記の態様において好ましくは、ホスファチジルコリンは、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジペトロセリニルホスファチジルコリン、ジエラシルホスファチジルコリン、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン、ジミリストレオイルホスファチジルコリン、ジアルキドニルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジリノレニルホスファチジルコリン、またはそれらの組み合わせである。他の態様において、ホスファチジルコリンは、ジオレオイルホスファチジルコリンである。さらに他の態様において、ピリミジンは、

であり、かつリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリンである。
【0043】
保持容量は、不飽和両親媒性脂質を飽和させる、両親媒性または疎水性薬物の量である。両親媒性脂質の保持容量は、薬物の物理学的および化学的特性ならびに脂質の疎水性特性だけでなく、疎水性または両親媒性薬物の分配係数を含む多くの要因により決定される。いくつかの態様において、脂質は、約2 mg/mL〜約8 mg/mLの範囲で、両親媒性または疎水性薬物の保持容量を有する。他の態様において、両親媒性または疎水性薬物と不飽和両親媒性脂質の比率は、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲である。いくつかの他の態様において、両親媒性または疎水性薬物と不飽和両親媒性脂質の比率は、モル/モル基準で約0.05〜約0.12の範囲である。さらに他の態様において、両親媒性または疎水性薬物と不飽和両親媒性脂質の比率は、モル/モル基準で約0.10である。
【0044】
不飽和両親媒性脂質は、飽和脂質とともに製剤化され、転移温度(Tm)および保持容量を変え得る。飽和脂質としては、例えば、界面活性剤、表面活性剤、セッケン、2つの飽和脂肪酸鎖を有するリン脂質、および例えばリゾファチジルコリン(lysophatidylcholine)等のような単一の飽和脂肪酸鎖を有するリン脂質が挙げられる。飽和脂質鎖は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびベヘン酸からなる群より選択され得る。界面活性剤としては、α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシナート(TPGS)、PS-80、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、およびビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシナートのナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。他の適した賦形剤を以下に記載する。
【0045】
適した賦形剤としては、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン(POE-POP)ブロック共重合体、シクロデキストリン(例えば、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン誘導体(例えば、スルホブチルまたはヒドロキシプロピル)、ポリオキシル40ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol(登録商標))、ソルビタンモノオレアート(Span-80)、ソルビタンモノラウラート(Span 20)、PEG-20ソルビタンモノパルミタート(Tween 40)、PEG-20ソルビタンモノステアレート(Tween 60)、PEG-20 ソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80またはTween 80)、モノ/ジオレイン酸グリセリル(Capmul GMO-K)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(Imwitor(登録商標)988)、ならびにモノおよびジアセチル化モノグリセリド(Myvacet(登録商標)9-45)、リノレオイルモノグリセリド(Labrafil 2125CS)、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、α-トコフェロール、酢酸α-トコフェロール、コハク酸α-トコフェロール、α-トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200-8000) スクシナート、α-トコフェロールポリエチレングリコール400スクシナート、dl-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナートおよびd-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナート、脂肪酸、アルコール、脂肪酸誘導体、胆汁酸、ステロール、修飾物質、高分子材料、溶媒、添加剤、糖類、抗酸化剤、安定化剤、キレ−ト剤、乳化剤、表面活性剤、界面活性剤、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
脂肪酸およびアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラクニド酸(arachnidoic acid)、ベヘン酸、およびそれらの対応する薬学的に許容される塩等のようなC6-C22脂肪酸およびアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪酸誘導体およびアルコール誘導体としては、ジオクチルナトリウムスルホスクシナート、ラウリル硫酸ナトリウム、アミドエステル(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ナトリウムラウリルサルコシナート、ラウロイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、およびミリストイルカルニチン)、ヒドロキシ酸とのエステル(例えば、ステアロイルラクチル酸ナトリウム)、糖エステル[例えば、乳酸ラウリル、グルコースモノカプリラート、ジグルコースモノカプリラート、スクロースラウラート、ソルビタンモノラウラート(Arlacel(登録商標)20)、ソルビタンモノパルミタート(Span-40)、ソルビタンモノオレアート(Span-80)、ソルビタンモノステアラート、およびソルビタントリステアラート]、低級アルコール脂肪酸エステル[例えば、オレイン酸エチル(Crodamol EO)、ミリスチン酸イソプロピル(Crodamol IPM)およびパルミチン酸イソプロピル(Crodamol IPP)]、プロピレングリコールとのエステル[例えば、プロピレングリコールモノラウラート(Lauroglycol FCC)、プロピレングリコールリシノレアート(Propymuls)、プロピレングリコールモノオレアート(Myverol(登録商標)P-O6)、プロピレングリコールモノカプリラート(Capryol(登録商標)90)、プロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート(Captex(登録商標)200)およびプロピレングリコールジオクタノアート(Captex 800)]、グリセロールとのエステル[例えば、モノオレイン酸グリセリル(Peceol)、リシノール酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル(Capmul(登録商標)GDL)、ジオレイン酸グリセリル(Capmul GDO)、グリセロールモノリノレアート(Maisine(登録商標))、モノ/ジオレイン酸グリセリル(Capmul GMO-K)、カプリル酸/カプリン酸グリセリル(Capmul MCM)、カプリル酸モノ/ジグリセリド(Imwitor(登録商標)988)、モノおよびジアセチル化モノグリセリド(Myvacet(登録商標)9-45)、トリグリセリド(例えば、コーン油、扁桃油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、硬化ココナッツ油、Pureco 100、Hydrokote AP5、Captex 300、350、Miglyol 812、Miglyol 818およびGelucire 33/01)]、プロピレングリコールエステルとグリセロールエステルの混合物[例えば、プロピレングリコールとグリセロールのオレイン酸エステル(Arlacel 186)と、例えば、オレイン酸ポリグリセリル(Plurol(登録商標)Oleique)、ジオレイン酸ポリグリセリル-2(Nikkol DGDO)、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ラウリン酸ポリグリセリル-10(Nikkol Decaglyn 1-L)、オレイン酸ポリグリセリル-10(Nikkol Decaglyn 1-O)、およびモノ、ジオレイン酸ポリグリセリル-10(Caprol(登録商標)PEG 860)等のようなポリグリセロール化(polyglycerized)脂肪酸の混合物]が挙げられるが、これらに限定されない。他の脂肪酸誘導体としては、ポリエトキシ化(polyethoxylated)脂肪酸(例えば、ラウリン酸PEG-8、オレイン酸PEG-8、ステアリン酸PEG-8、オレイン酸PEG-9、ラウリン酸PEG-10、オレイン酸PEG-10、ラウリン酸PEG-12、オレイン酸PEG-12、オレイン酸PEG-15、ラウリン酸PEG-20、およびオレイン酸PEG-20)、PEG-脂肪酸ジエステル(例えば、ジラウリン酸PEG-20、ジオレイン酸PEG-20、ジステアリン酸PEG-20、ジラウリン酸PEG-32、およびジオレイン酸PEG-32)、PEG-脂肪酸モノエステルとPEG-脂肪酸ジエステルの混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル(例えば、PEG化グリセロール-12アシロキシステアリン酸エステル、ラウリン酸PEG-20グリセリル、ラウリン酸PEG-30グリセリル、ラウリン酸PEG-40グリセリル、オレイン酸PEG-20グリセリル、およびオレイン酸PEG-30グリセリル)ならびにアルコール‐油エステル交換反応生成物[例えば、ポリオキシル40ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH40)、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor ELまたはIncrocas 35)、トリオレイン酸PEG-25(TAGAT(登録商標)TO)、PEG-60トウモロコシグリセリド(Crovol M70)、PEG-60扁桃油(Crovol A70)、PEG-40パーム核油(Crovol PK70)、PEG-50ヒマシ油(Emalex C-50)、PEG-50水添ヒマシ油(Emalex HC-50)、PEG-60水添ヒマシ油(Cremophor RH60)、PEG-8カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Labrasol(登録商標))、ラウロイルマクロゴール-32グリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)、リノレオイルマクロゴグリセリド(Labrafil(登録商標))、ステアロイルマクロゴール-32グリセリド(Gelucire 50/13)、およびPEG-6カプリル酸/カプリン酸グリセリド(Softigen(登録商標)767)]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
胆汁酸およびステロール誘導体としては、コラート、ウルソデオキシコラート、ケノデオキシコラート、タウロケノデオキシコラート、タウロウルソデオキシコラート、グリコケノデオキシコラート、グリコウルソデオキシコラート、ステロール、およびステロールエステル、または例えば、PEG-24コレステロールエーテル(Solulan(登録商標)C-24)等のようなエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。トコール誘導体としては、トコール構造[2-メチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデシル)クロマン-6-オール]またはトコトリエノール構造[2-メチル-2-(4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル)クロマン-6-オール]を有する物質の誘導体が挙げられる。特に、トコフェロールとして一般に知られている、モノ-、ジ-、トリメチル-トコールならびにそれらの有機酸エステル、例えば、それらの酢酸エステル、ニコチン酸エステル、コハク酸エステル、およびポリエチレングリコールコハク酸エステル(polyethylnene glycol succinate ester)等が挙げられる。例えば、酢酸α-トコフェロール、ニコチン酸α-トコフェロール、コハク酸α-トコフェロール、コハク酸α-トコフェロールポリエチレングリコール(分子量200-8000)、コハク酸α-トコフェロールポリエチレングリコール400、コハク酸d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000(Vitamin E-TPGS, Eastman Chemical Co.)が、混合dl-ラセミ型、ならびに純粋なd-およびl-エナンチオマーとして挙げられる。
【0048】
高分子材料の具体例としては、高分子量ポリエチレングリコール、セルロース誘導体[例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシナート(HPMCS)、酢酸セルロース、ニトロセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース]、セラック、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、アクリル重合体[例えば、ポリアクリル酸(Carbomer)、メタクリラートの中性ポリマー(例えば、Eudragit NE)、官能基としてトリメチルアミノエチルメタクリラートを有するメタクリラート共重合体(例えば、Eudragit RS、RS 100、RL、RL 100)、メタクリル酸およびメタクリラートのアニオン重合体(Eudragit L 100、L 100-55、S 100)、ポリビニルピロリドン共重合体[例えば、ポリビニルピロリドン‐酢酸ビニル共重合体(Kollidon VA 64、Kollidon SR)]、ゲラクトースマンナート(gelactose mannate)、高分子量ポリサッカライドガムおよび樹脂(例えば、アラビアガム、キサンタンガム、トラガカント、セラック等)、グリクロナン共重合体(glycuronan polymer)(例えば、アルギン酸および薬学的に許容される塩)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
脂質製剤は、任意で1つまたは複数の添加剤を含み得る。添加剤の具体的な、限定されない例を以下に記載する。適した添加剤としては、例えば、凝集、気中懸濁冷却(air suspension chilling)、気中懸濁乾燥(air suspension drying)、球状化(balling)、コアセルベーション、粉砕、圧縮、ペレット化、凍結ペレット化、押し出し成形、造粒、均質化、包接複合体形成、凍結乾燥、ナノカプセル化、融解、混合、成型、パンコーティング、溶媒脱水、超音波処理、球形化(spheronization)、噴霧冷却、噴霧凝固、噴霧乾燥、または当技術分野で公知の他のプロセス等の加工工程を容易にするために一般に利用される、添加剤が挙げられる。該添加剤を前コーティングするかまたはカプセル化することもできる。適当なコーティングは当技術分野で周知である。
【0050】
製剤は、薬物の水溶解度を増加させる化合物は除外して、担体中の有効成分または他の組成物成分の溶解度を増加させるために、任意で1種またはそれ以上の溶媒、すなわち、添加剤を含み得る。本発明の製剤での使用に適した溶媒としては、酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸等)、アルコールおよび多価アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールおよびその異性体、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ジメチルイソソルビド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等)、約200〜約6000の平均分子量を有するポリエチレングリコールのエーテル[例えば、テトラヒドロフルフリルアルコールPEGエーテル(グリコフロール、商品名TetraglycolでBASFから市販されている)またはメトキシPEG(Union Carbide)]、アミド(例えば、2-ピロリドン、2-ピペリドン、カプロラクタム、N-アルキルピロリドン、N-ヒドロキシアルキルピロリドン、N-アルキルピペリドン、N-アルキルカプロラクタム、ジメチルアセトアミド、ポリビニルピロリドン等)、エステル(例えば、プロピオン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、酪酸エチル、トリアセチン、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセタート、カプロラクトンおよびその異性体、バレロラクトンおよびその異性体、ブチロラクトンおよびその異性体等)、ならびに例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド(Arlasolve DMI(ICI))、N-メチルピロリドン(Pharmasolve(ISP))、モノオクタノインおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル(商品名TranscutolでGattefosseから市販されている)等のような当技術分野で公知の他の溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒の混合物も、本発明の範囲内である。これらの化合物は、標準的な商品供給源から容易に調達することができるか、または当業者に公知の製法を用いて合成することができる。
【0051】
本明細書に記載の製剤中に含まれ得る溶媒の量は特に限定されない。勿論、このような製剤を最終的に患者に投与する場合、与える溶媒の量は生体的に許容される(bioacceptable)量に限定され、この量は当業者によって容易に決定される。
【0052】
製剤中に常用されている他の添加剤を含有することができ、これらの添加剤は当技術分野で周知である。このような添加剤としては、固結防止剤(固着防止剤、流動化剤、流動促進剤、潤滑剤)[例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、フュームドシリカ(Carbosil, Aerosil)、微粉末シリカ(Syloid No. FP 244, Grace U.S.A.)、ポリエチレングリコール、表面活性剤、ワックス、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸誘導体、デンプン、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ロイシン、PEG-4000、およびラウリル硫酸マグネシウム]、抗凝固剤(例えば、アセチル化モノグリセリド)、消泡剤(例えば、長鎖アルコールおよびシリコン誘導体)、抗酸化剤(例えば、BHT、BHA、没食子酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、トコフェロール等)、結合剤(接着剤)、すなわち、粒子−粒子間結合を介して粉末材料に凝集性を付与する薬剤[例えば、マトリックス結合剤(乾燥デンプン、乾燥糖類)、フィルム結合剤(PVP、デンプンペースト、セルロース、ベントナイト、ショ糖)]、化学結合剤[例えば、カルボキシメチルセルロース、HPC、HPMC等のような高分子セルロース誘導体、糖蜜(sugar syrup)、コーンシロップ、水溶性多糖類(例えば、アラビアゴム、トラガカント、グアー、アルギン酸等)、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、寒天、ショ糖、デキストロース、非セルロース結合剤(例えば、PVP、PEG、ビニルピロリドン共重合体、アルファ化デンプン、ソルビトール、グルコース等)]、酸が薬学的に許容される酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸(hydroquinosulfonic acid)、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、尿酸等)、および塩基が薬学的に許容される塩基(例えば、アミノ酸、アミノ酸エステル、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム・アルミニウム、ジイソプロピルエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリイソプロパノールアミン、または酢酸、アクリル酸、アジピン酸、アルギン酸、アルカンスルホン酸、アミノ酸、アスコルビン酸、安息香酸、ホウ酸、酪酸、炭酸、クエン酸、脂肪酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、ヒドロキノスルホン酸、イソアスコルビン酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、タンニン酸、酒石酸、チオグリコール酸、トルエンスルホン酸、および尿酸の薬学的に許容される塩)である緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTAおよびEDTA塩)、凝固剤(例えば、アルギナート)、着色剤または不透明化剤(例えば、二酸化チタン、食品用色素、レーキ、天然植物性着色剤、酸化鉄、ケイ酸塩、硫酸塩、水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウム)、冷却剤[例えば、ハロゲン化炭化水素(例えば、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ジクロロメタン、フルオロトリクロロメタン)、ジエチルエーテル、および液体窒素]、不凍剤(例えば、トレハロース(trehelose)、リン酸塩、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、デキストラン、マンニトール等)、希釈剤または充填剤(例えば、乳糖、マンニトール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸、噴霧乾燥乳糖、加水分解デンプン、直接圧縮可能なデンプン、結晶セルロース、セルロース誘導体、ソルビトール、ショ糖、ショ糖を主材料とする材料、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム)、ならびにデキストロース崩壊剤またはスーパー崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、デンプン誘導体、クレー(clay)、ガム、セルロース、セルロース誘導体、アルギナート、架橋ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、および結晶セルロース)、水素結合剤(例えば、酸化マグネシウム)、香味料または減感剤(例えば、噴霧乾燥香料、エッセンシャルオイル、およびエチルバニリン)、イオン交換樹脂(例えば、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体、および第四級アンモニウム化合物)、可塑剤[例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル)、アセチル化モノグリセリド、グリセリン、トリアセチン、プロピレングリコール、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル)、ヒマシ油、ソルビトール、およびジブチルセッカート(dibutyl seccate)]、防腐剤(例えば、アスコルビン酸、ホウ酸、ソルビン酸、安息香酸、およびそれらの塩、パラベン、フェノール、ベンジルアルコール、ならびに第四級アンモニウム化合物)、溶媒(例えば、アルコール、ケトン、エステル、塩素化炭化水素、および水)、天然甘味料(例えば、マルトース、ショ糖、グルコース、ソルビトール、グリセリン、およびデキストリン)および人工甘味料(例えば、アスパルテーム、サッカリン、およびサッカリン塩)を含む甘味料、増粘剤(粘度調整剤、濃厚剤)(例えば、糖類、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリマー、およびアルギナート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
添加剤は、例えば、タンパク質(例えば、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、イガイタンパク質、リポタンパク質)、炭水化物(例えば、アルギナート、カラゲーナン、セルロース誘導体、ペクチン、デンプン、キトサン)、ガム(例えば、キサンタンガム、アラビアガム)、鯨蝋、天然または合成ワックス、カルナウバ・ワックス(carnuaba wax)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸)、脂肪族アルコール、糖類、例えば、糖類(例えば、乳糖、ショ糖、デキストロース)もしくはデンプンを主材料とするもの等のようなセラック、多糖類を主材料とするセラック(例えば、マルトデキストリンおよびマルトデキストリン誘導体、デキストラート(dextrate)、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体)、セルロースを主材料とするセラック(例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸セルロース、トリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、無機物(例えば、リン酸二カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、タルク、およびチタニア)、ポリオール類(例えば、マンニトール、キシリトール、およびソルビトールポリエチレングリコールエステル)、およびポリマー(例えば、アルギナート、乳酸・グリコール酸共重合体(poly(lactide coglycolide))、ゼラチン、架橋ゼラチン、および寒天)等のような材料でもあり得る。
【0054】
本明細書に記載の薬物および脂質は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含有し得、それゆえ、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体、またはジアステレオマー等のような立体異性体として存在し得る。従って、キラル中心での立体化学が特に規定されない場合、本明細書に示される化学構造は、立体異性体的に純粋な形(例えば、幾何学的に純粋、鏡像異性的に純粋、またはジアステレオマー的に純粋)ならびに鏡像異性体混合物および立体異性体混合物を含む、それらのキラル中心での全ての可能な立体配置を包含する。鏡像異性体混合物および立体異性体混合物は、当業者に周知である分離手法またはキラル合成手法を用いて、鏡像異性体またはジアステレオマーというそれらの成分に分割され得る。本明細書に記載の薬物および脂質は、エノール形、ケト形、およびそれらの混合物を含む数種の互変異性型でも存在し得る。従って、本明細書に示される化学構造は、図示した化合物の全ての可能な互変異性型を包含する。
【0055】
本明細書に記載の薬物および脂質は、1個または複数の原子が標準的に自然界に見られる原子質量とは異なる原子質量を有する、同位体標識した化合物も含み得る。該化合物に組み込まれ得る同位元素の例としては、2H、3H、11C、13C、14C、15N、17O、および18Oが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書に開示された薬物および脂質は、水和物を含む溶媒和物およびN-オキシドとしてだけでなく、非溶媒和物でも存在し得る。一般に、水和物、溶媒和物、およびN-オキシド体は、本発明の範囲内である。ある特定の薬物は、結晶多形または非晶質形で存在し得る。一般に、全ての物理的形状は、本明細書で意図する使用に対して同等であり、本発明の開示の範囲内であることを意味する。
【0057】
3. 脂質を主材料とする製剤を製造する方法
本発明は、脂質を主材料とする製剤を製造する方法も提供する。両親媒性もしくは疎水性薬物またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、ならびに溶媒を混合し、次いで、該溶媒を除去して、薬物および脂質の残渣を提供する。次いで、該残渣を水または水溶液と混合して、脂質を主材料とする製剤を提供する。いくつかの態様において、該薬物と該脂質は、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する。
【0058】
溶媒は、有機溶媒、界面活性剤、表面活性剤、またはそれらの組み合わせであり得る。有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ハロアルカン、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコール、多価アルコール、水、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、有機溶媒はジクロロメタンである。
【0059】
界面活性剤としては、TPGS、PS-80、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシナートのナトリウム塩、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の界面活性剤を以下に記載した。
【0060】
攪拌(stirring)、スピニング(spinning)、配合(blending)、加熱、振盪(shaking)、かきまぜ(agitating)、超音波処理、ボルテックス処理、遠心分離、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、種々の方法により混合物を混合し、薬物、脂質、および溶媒の均一溶液を形成することができる。溶媒は、逆相蒸発、回転蒸発、蒸留、真空蒸発、凍結乾燥、または不活性ガス通気(inert gas transfer)等を含む、多くの常法より除去され、薬物および脂質の残渣を与え得る。薬物および脂質の残渣は、あらゆる物理的形状を取り得、該形状としては、膜、オイル、液体、エマルション、懸濁液、コロイド、分散体、凝集体、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、残渣は、真空蒸発により残留有機溶媒を完全に含まない膜であり得る膜である。
【0061】
残渣の水和は、残渣を水または水溶液(例えば、緩衝液、生理食塩水、および、例えば糖溶液等のような非電解質)で混合して達成され得る。いくつかの態様において、リン酸緩衝液が残渣の水和に用いられる。混合を確実にするために、水和工程は、攪拌、スピニング、配合、加熱、振盪、かきまぜ、超音波処理、ボルテックス処理、遠心分離等と同時にまたは別々に進めることができる。いくつかの態様において、水和溶液は、不飽和両親媒性脂質の転移温度より上の温度で加熱され得る。
【0062】
一般に、残渣は水和媒体で少なくとも1時間混合され、完全な水和を確保する。当業者には明らかなように、薬物と脂質の異なる組み合わせは、異なる水和時間を有するであろう。いくつかの態様において、水和された残渣を終夜静置してもよい。
【0063】
他の態様において、再構成脂質‐薬物残渣の稠度(consistency)および/または粘度は、塩(例えば、MgCl2、NaCl、KCl等)を水和媒体に添加して調節することができる。
【0064】
4. 2,4-ピリミジンジアミン化合物を用いる方法
2,4-ピリミジンジアミンの種々の塩、プロドラッグ、水和物、およびN-オキシド体を含む、2,4-ピリミジンジアミンの製剤は、種々の状況で細胞増殖を阻害するために用いられ得る。方法のいくつかの態様によれば、細胞または細胞集団を、該細胞または該細胞集団の増殖を阻害するために有効な量のこのような製剤と接触させる。製剤は、細胞毒性的に作用して細胞を殺すか、または細胞増殖抑制的に作用して細胞を殺さずに増殖を阻害し得る。
【0065】
いくつかの態様において、方法は、増殖性障害の治療に向けた治療的なアプローチとして実行され得る。それゆえ、特定の態様において、2,4-ピリミジンジアミン(および本明細書に記載の種々の形)の製剤は、ヒトを含む動物対象における増殖性障害を治療するために用いられ得る。該方法は、一般に、該障害を治療するために有効な量の該製剤を該対象に投与する段階を含む。一態様において、対象は、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、齧歯類、または霊長類を含むがこれらに限定されない、哺乳動物である。他の一態様において、対象はヒトである。
【0066】
種々の細胞増殖性障害が、本発明の製剤で治療され得る。一態様において、製剤は、罹患した対象における種々のがんを治療するために用いられる。がんは、伝統的に、がん細胞が生じる組織および細胞の種類に基づいて分類される。癌腫は、上皮細胞から生じるがんと見なされており、一方、肉腫は、結合組織または筋肉から生じるがんと見なされている。他のがんの種類としては、造血細胞から生じる白血病、および神経組織から生じる神経系細胞のがんが挙げられる。非浸潤性腫瘍に関して、腺腫は、腺組織を有する良性上皮性腫瘍と見なされており、一方、軟骨腫は、軟骨から生じる良性腫瘍である。本発明において、記載された製剤は、癌、肉腫、白血病、神経細胞腫瘍、および非浸潤性腫瘍を包含する、増殖性障害を治療するために用いられ得る。
【0067】
特定の態様において、製剤は、種々の組織型から生じる固形腫瘍を治療するために用いられ、該固形腫瘍としては、骨、乳房、気道、脳、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭部、頸部、甲状腺、副甲状腺のがん、およびそれらの転移性形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
具体的な増殖性障害としては、以下が挙げられる:
a) 浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、腺管癌、上皮内小葉癌、および転移性乳がんが挙げられるがこれらに限定されない、乳房の増殖性障害; b) 基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫、およびカポジ肉腫が挙げられるがこれらに限定されない、皮膚の増殖性障害; c) 小細胞および非小細胞肺癌、気管支腺腫(bronchial adema)、胸膜肺芽腫、ならびに悪性中皮腫が挙げられるがこれらに限定されない、気道の増殖性障害; d) 脳幹および視床下部の神経膠腫、小脳および大脳の星状細胞腫、髄芽細胞腫(medullablastoma)、上衣腫瘍、乏突起膠腫瘍(oligodendroglial)、髄膜腫、ならびに神経外胚葉性腫瘍および松果体腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない、脳の増殖性障害; e) 前立腺がん、精巣がん、および陰茎がんが挙げられるがこれらに限定されない、雄性生殖器の増殖性障害; f) 子宮がん(子宮内膜がん)、子宮頚部がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、子宮肉腫、卵巣胚細胞腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない、雌性生殖器の増殖性障害; g) 肛門がん、大腸がん、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん(stomach cancer)(胃がん(gastric cancer))、膵臓がん、膵臓がん‐膵島細胞がん、直腸がん、小腸がん、および唾液腺のがんが挙げられるがこれらに限定されない、消化管の増殖性障害; h) 肝細胞癌、胆管細胞癌、混合型肝細胞・胆管細胞癌、および原発性肝がんが挙げられるがこれらに限定されない、肝臓の増殖性障害; i) 眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、および横紋筋肉腫が挙げられるがこれらに限定されない、眼の増殖性障害; j) 喉頭がん、下咽頭がん、鼻咽頭がん、口腔咽頭がん、ならびに唇および口腔のがん、頸部扁平上皮がん、転移性副鼻腔がんが挙げられるがこれらに限定されない、頭部の増殖性障害およびがん; k) 種々のT細胞およびB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系のリンパ腫が挙げられるがこれらに限定されない、リンパ腫の増殖性障害; l) 急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、および有毛細胞白血病が挙げられるがこれらに限定されない、白血病; m) 甲状腺がん、胸腺腫、および悪性胸腺腫が挙げられる、甲状腺の増殖性障害; n) 軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫が挙げられるがこれらに限定されない、肉腫。
【0069】
当然のことながら、増殖性障害の内容は、前記の状態には限定されず、制御できない増殖および悪性腫瘍を特徴とする他の障害を包含する。さらに、増殖性障害としては、本明細書に記載の腫瘍およびがんの種類の、種々の転移性形態が挙げられることが理解される。2,4-ピリミジンジアミン製剤は、本明細書に記載の障害に対する有効性、および既に確立されている治療効果のある療法(regimen)について、試験され得る。以下でさらに記載するように、有効性としては、腫瘍の縮小もしくは寛解、細胞増殖速度の減少、または細胞成長への細胞増殖抑制効果もしくは細胞毒性効果が挙げられる。
【0070】
5. 併用療法
本発明の2,4-ピリミジンジアミン製剤は、単独で、互いに組み合わせて、または他の既に確立されている抗増殖剤療法に対する補助剤として、もしくはそれらと併用して用いられ得る。それゆえ、本発明の2,4-ピリミジンジアミン製剤は、例えば、γ線およびX線の形態での電離放射線等のような、がんの伝統療法と共に用いられ得、放射性化合物の埋め込み(implantation)により外部または内部に送達され得、また腫瘍の外科的除去に対する追跡調査として使用され得る。
【0071】
他の局面において、本発明の2,4-ピリミジンジアミン製剤は、治療される障害または状態に有用な他の化学療法剤と併用され得る。これらの2,4-ピリミジンジアミン製剤は、同じ投与経路により、または異なった経路により、同時に、連続して、投与され得る。
【0072】
一態様において、本発明の2,4-ピリミジンジアミン製剤は、他の抗癌剤または細胞毒性剤と併用され得る。種々の種類の抗癌性および抗腫瘍性化合物としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ビンカ・アルキロイド、タキサン、抗生物質、酵素、サイトカイン、白金配位錯体、置換尿素、チロシン・キナーゼ阻害剤、ホルモンおよびホルモン拮抗薬が挙げられるが、これらに限定されない。アルキル化剤の例示としては、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、スルホン酸アルキル(例えば、ブスルファン)およびカルムスチンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。代謝拮抗剤の例示としては、葉酸類似体メトトレキセート;ピリミジン類似体フルオロウラシル、シトシンアルビノシド;プリン類似体メルカプトプリン、チオグアニンおよびアザチオプリンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。ビンカ・アルキロイドの例示としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン、パクリタキセル、およびコルヒチンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。抗生物質の例示としては、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、およびブレオマイシンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。抗腫瘍剤として有効な酵素の例示としては、L-アスパラギナーゼが挙げられる。配位化合物の例示としては、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。ホルモンおよびホルモン関連化合物の例示としては、副腎皮質ステロイドであるプレドニゾンおよびデキサメサゾン;アロマターゼ阻害剤であるアミノグルテチミド、フォルメスタン、およびアナストロゾール;プロゲスチン化合物であるカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン;ならびに抗エストロゲン化合物であるタモキシフェンが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。
【0073】
これらのおよび他の有用な抗癌性化合物は、Merck Index, 13th Ed. (O'Neil M.J. et al., ed) Merck Publishing Group (2001)、およびGoodman and Gilmans The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Edition, Hardman, J.G. and Limbird, L.E. eds., pg. 1381-1287, McGraw Hill, (1996) に記載されており、これら両方の内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
本発明の2,4-ピリミジンジアミン製剤との併用に有用な、さらなる抗増殖性化合物としては、成長因子受容体に対する抗体(例えば、抗Her2);T細胞を活性化する抗体(例えば、抗CTLA-4抗体);ならびに例えば、インターフェロンαおよびインターフェロンγ、インターロイキン2およびGM-CSF等のようなサイトカインが挙げられるが、これらは一例であって限定されない。
【0075】
このような病気を治療または予防するために使用する場合、製剤は、単独で、1つもしくは複数の製剤の混合物として、あるいはこのような病気および/もしくはこのような病気に伴う症状の治療に有用な他の薬剤との混合物でまたは組み合わせて、投与され得る。また活性化合物は、他の障害または疾病(malady)を治療するために有用な薬剤、例えば、ステロイド、膜安定化剤等との混合物でまたは組み合わせて、投与され得る。
【0076】
6. 投与方法
本発明の脂質製剤は、例えば、局所性、眼内、経口的、口腔内、全身性、経鼻、注射、経皮的、直腸、膣内の投与等を含む、実質的に任意の投与様式に適した形態、または吸入または吹送による投与に適した形態をとり得る。
【0077】
局所性投与ために、製剤は、当技術分野で周知である、液剤、ゲル、軟膏剤、クリーム、懸濁剤等の形態をとり得る。
【0078】
全身性製剤としては、経皮的、口腔経粘膜的、または肺の投与のために設計されたものだけでなく、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、または腹腔内注射による投与のために設計されたものが挙げられる。
【0079】
有用な注射用製剤としては、活性化合物の水性または油性賦形剤中の、無菌懸濁剤、液剤、または乳剤が挙げられる。注射のための製剤は、単位投薬形態で、例えば、アンプルまたは複数回用量の容器で存在し得、また追加の防腐剤を含有し得る。
【0080】
あるいは、この注射用製剤は、無菌のパイロジェンフリー水、緩衝液、デキストロース溶液等を含むがこれらに限定されない、適した媒体で使用時に再構成するための粉末形状で提供され得る。この目的のために、活性製剤は、任意の公知技術、例えば、凍結乾燥等で乾燥され得、使用前に再構成され得る。
【0081】
経粘膜的投与ために、障壁を通過させるために適当な浸透剤が、本発明の製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で公知である。
【0082】
経口投与ために、製剤は、例えば、飴剤(lozenge)、錠剤、またはカプセル剤の形態をとり得、これらは、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、乳糖、結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン)等のような、薬学的に許容される補形剤と共に常法により調製される。錠剤は、例えば、糖類、フィルムまたは腸溶コーティングで、当技術分野で周知の方法により被覆され得る。
【0083】
経口投与用の液状製剤は、例えば、エリキシル剤、液剤、シロップ剤、もしくは懸濁剤の形態をとり得るか、または、使用時に水または他の適した媒体とともに組成を成すための乾燥製品として提供され得る。このような液状製剤は、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性賦形剤(例えば、扁桃油、油性エステル、エチルアルコール、Cremophore(商標)、または分画植物油);および防腐剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾアート、またはソルビン酸)等のような、薬学的に許容される添加剤と共に常法により調製され得る。また、該製剤は、緩衝塩、防腐剤、矯味剤、着色剤および甘味剤を必要に応じて含有し得る。
【0084】
口腔投与のために、製剤は、常法により処方される錠剤または飴剤の形態をとり得る。
【0085】
直腸および膣内投与経路のために、製剤は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリド等のような従来の坐剤の基剤を含有する、液剤(停留浣腸用)、座剤、または軟膏剤であり得る。
【0086】
経鼻投与、または吸入もしくは吹き入れ(insufflation)による投与のために、製剤は、適した噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、フッ化炭素、二酸化炭素、または他の適した気体を使用して、加圧パックからのエアロゾル噴霧または噴霧器の形態で、都合よく送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量した量を送達するバルブを設けることにより決定され得る。吸入器または注入器(insufflator)で使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンから成るカプセルおよびカートリッジ)は、製剤と、例えば、乳糖またはデンプン等のような、適した粉末基剤との粉末混合物を含有し得る。
【0087】
眼内投与のために、製剤は、目に投与するために適した、液剤、乳剤、懸濁剤等であり得る。化合物を目に投与するために適した種々の賦形剤は、当技術分野で公知である。限定されない具体例は、米国特許第6,261,547号;米国特許第6,197,934号;米国特許第6,056,950号;米国特許第5,800,807号;米国特許第5,776,445号;米国特許第5,698,219号;米国特許第5,521,222号;米国特許第5,403,841号;米国特許第5,077,033号;米国特許第4,882,150号;および米国特許第4,738,851号に記載されている。
【0088】
長時間持続する送達(prolonged delivery)のために、製剤は、埋め込みまたは筋肉内注射による投与のためのデポー製剤の形態をとり得る。該製剤は、適した高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容されるオイル中のエマルションとして)、またはイオン交換樹脂を、あるいは難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として、含有し得る。
【0089】
必要に応じて、製剤は、活性化合物を含有する1つまたは複数の単位投薬形態を含み得るパックまたはディスペンサー装置で提供され得る。パックは、例えば、ブリスター包装等のような金属箔またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサー装置には投与のための説明書が添付され得る。
【0090】
製剤は、一般に、意図する結果を達成するために有効な量で、例えば、治療する特定の病気を治療または予防するために有効な量で用いられるであろう。製剤は、治療学的成果を達成するために、治療的に投与され得る。治療学的成果とは、治療する根底にある障害の根絶または改善、および/または、患者が依然として根底にある障害に苦しみ得るにもかかわらず、患者が感覚もしくは状態が改善したと報告するといった、根底にある障害に関連する1つもしくは複数の症状の根絶もしくは改善を意味する。治療学的成果としては、また、改善が実感されるかどうかとは関係なく、病気の進行を停止または遅延することも挙げられる。
【0091】
7. 有効投薬量
投与される製剤の量は、例えば、治療する特定の適応症、投与様式、治療する適応症の重症度、ならびに患者の年齢および体重、特定の活性化合物のバイオアベイラビリティ等を含む、種々の要因に依存するであろう。有効投薬量の決定は、十分当業者の能力の範囲内である。
【0092】
有効投薬量は、最初のうち、インビトロ試験から推定され得る。例えば、動物に使用する初期量は、例えば、実施例の項に記載のインビトロ試験等のようなインビトロ試験で測定される特定化合物のIC50またはそれより上である、活性化合物の循環血液または血清濃度を達成するように、処方され得る。特定化合物のバイオアベイラビリティを考慮して、このような循環血液または血清濃度を達成する投薬量を計算することは、十分当業者の能力の範囲内である。指針として、読者は、Fingl & Woodbury, "General Principles," In: Goodman and Gilman 's The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Chapter 1, pp. 1-46, 最新版, Pergamon Press、およびその中で引用された参考文献を参照されたい。
【0093】
初期量は、また、例えば、動物モデル等のようなインビボデータからも推定され得る。前記の種々の病気を治療または予防する化合物の有効性を試験するために有用な動物モデルは、当技術分野で周知である。投薬量は、通常、約0.0001または0.001または0.01 mg/kg/日〜約100 mg/kg/日の範囲であるだろうが、他の要因の中でとりわけ、化合物の活性、そのバイオアベイラビリティ、投与様式、および前記で論じた種々の要因に依存して、これより高くまたは低くされ得る。投薬量および投薬間隔は、治療効果または予防効果を維持するために十分な化合物の血漿中濃度を与えるように、個別に調節され得る。例えば、製剤は、とりわけ、投与様式、治療する特定の適応症、および担当医の判断に依存して、1週間に1回、1週間に数回(例えば、1日おきに)、1日に1回、または1日に複数回、投与され得る。例えば、局部局所投与等のような局部投与または選択的吸収の場合、活性化合物の有効局部濃度は、血漿濃度には関連し得ない。当業者は、過度の実験なしに、有効局部投薬量を最適化できるであろう。
【0094】
8. キット
本明細書に記載の製剤は、キットの形態で構成され得る。いくつかの態様において、キットは、投与用の製剤を提供する。製剤は、乾燥もしくは凍結乾燥の形態で、または液剤、特に無菌液剤であり得る。製剤が乾燥形態である場合、キットは、液状製剤を調製するための薬学的に許容される希釈剤を含有し得る。キットは、注射器、ピペット、経皮パッチ、または吸入剤を含むがこれらに限定されない製剤を、投与または調剤するための装置を含み得る。
【0095】
キットは、本明細書に記載の製剤と併用して使用するための他の治療化合物を含み得る。いくつかの態様において、治療剤は、他の抗癌および抗腫瘍化合物である。これらの化合物は、別個の形態で提供され得るか、または本発明の製剤と混合され得る。
【0096】
キットは、組成物の調製および投与、組成物の副作用、ならびに任意の他の関連情報についての適切な使用説明書を含むであろう。該使用説明書は、印刷物、ビデオテープ、コンピューターに読み込み可能なディスク、または光ディスクを含むがこれらに限定されない、任意の適した形式であり得る。
【0097】
実施例
脂質製剤および該脂質製剤を調製するための方法を説明する、以下の実施例を参照することにより、本発明をさらに定義する。本発明の範囲から逸脱することなく、材料および方法の両方への多様な変更を実行し得ることは、当業者に明らかであろう。
【0098】
実施例1:1の脂質製剤の調製
化合物1(それぞれ、7.21 mg、14.22 mg、または28.17 mg)とDOPC(それぞれ、356.51 mg、351.33 mg、または354.20)をジクロロメタン(1.5 mL)中で混合した。脂質と薬物を完全に溶解した後、溶媒を窒素ガス通気(transfer)により除去し、続いて残渣を真空下で終夜乾燥して、1の均一な膜を得た。この膜をpH 7.4のPBS(3.15 mL)で水和し、次いでボルテックス処理を行い、1の脂質製剤を得た(化合物:脂質のモル対モル比率は、0.0331、0.0663、または0.1333)。偏光顕微鏡(Olympus BX51)(図1)、および示差走査熱量測定(TA Instruments, Model Q100, New Castle, DE、50 mL/分のN2ガス流量を伴い10℃/分の加熱速度で)(図7A、7B、8、および9)により、脂質製剤の特徴を明らかにした。偏光顕微鏡画像では結晶は見られず、脂質製剤中への化合物の完全な可溶化を示唆した。
【0099】
DOPCを含有する製剤中の1のDSC走査を図7(下)に示し、一方、1のみのDSC走査を図7(上)に示す。図7に示したように、2つのDSC走査は全く異なる。
【0100】
PBSに懸濁した1のDSC走査を図8に示し、PBSのみのDSC走査を図9に示す。
【0101】
実施例2:2の脂質製剤の調製
化合物2(4.27 mg)とDOPC(103.90 mg)をジクロロメタン(1.0 mL)中で混合し、短時間で40℃まで温め、次いで化合物とDOPCが完全に溶解するまで徹底的に混合した。溶媒を窒素ガス通気により除去し、次いで得られた残渣を真空下で終夜乾燥して、均一な膜を得た。この膜をpH 7.4のPBS(0.9 mL)で水和し、次いでボルテックス処理を行い、脂質製剤を形成した(化合物:脂質のモル対モル比率は、0.0647)。偏光顕微鏡(Olympus BX51)(図2)により、脂質製剤の特徴を明らかにした。偏光顕微鏡画像では結晶は見られず、脂質製剤中への化合物の完全な可溶化を示唆した。
【0102】
実施例3:3の脂質製剤の調製
化合物3(4.25 mg)とDOPC(100.74 mg)をジクロロメタン(1.0 mL)中で混合し、短時間で40℃まで温め、次いで化合物とDOPCが完全に溶解するまで徹底的に混合した。溶媒を窒素ガス通気により除去し、次いで得られた残渣を真空下で終夜乾燥して、均一な膜を得た。この膜をpH 7.4のPBS(0.9 mL)で水和し、次いでボルテックス処理を行い、脂質製剤を形成した(化合物:脂質のモル対モル比率は、0.0647)。偏光顕微鏡(Olympus BX51)(図3)により、脂質製剤の特徴を明らかにした。偏光顕微鏡画像では結晶は見られず、脂質製剤中への化合物の完全な可溶化を示唆した。
【0103】
実施例4:4の脂質製剤の調製
化合物4(1.97 mg)とDOPC(51.8 mg)をジクロロメタン(1.0 mL)中で混合し、短時間で40℃まで温め、次いで化合物とDOPCが完全に溶解するまで徹底的に混合した。溶媒を窒素ガス通気により除去し、次いで得られた残渣を真空下で終夜乾燥して、均一な膜を得た。この膜をpH 7.4のPBS(0.45 mL)で水和し、次いでボルテックス処理を行い、脂質製剤を形成した(化合物:脂質のモル対モル比率は、0.0645)。偏光顕微鏡(Olympus BX51)(図4)により、脂質製剤の特徴を明らかにした。偏光顕微鏡画像では結晶は見られず、脂質製剤中への化合物の完全な可溶化を示唆した。
【0104】
実施例5:5の脂質製剤の調製
化合物5(1.97 mg)とDOPC(51.8 mg)をジクロロメタン(1.0 mL)中で混合し、短時間で37℃まで温め、次いで化合物とDOPCが完全に溶解するまで徹底的に混合した。溶媒を窒素ガス通気により除去し、次いで得られた残渣を真空下で終夜乾燥して、均一な膜を得た。この膜をpH 7.4のPBS(0.45 mL)で水和し、次いでボルテックス処理を行い、脂質製剤を形成した(化合物:脂質のモル対モル比率は、0.0644)。偏光顕微鏡(Olympus BX51)(図3)により、脂質製剤の特徴を明らかにした。偏光顕微鏡画像では結晶は見られず、脂質製剤中への化合物の完全な可溶化を示唆した。
【0105】
実施例6:1の脂質製剤のマウス薬物動態試験
マウス薬物動態試験をBalb/Cマウスを用いて行った。1の脂質製剤を腹腔内投与し、経時的にマウス中の1の濃度を測定した。薬物動態試験の結果を図10Aおよび10Bに示す。図10Aで実証されているように、1の脂質製剤が、脂質賦形剤を含まない生理食塩水懸濁液として1を腹腔内投与した場合と比較して、1のCmaxを20倍まで増強することを、薬物動態試験は示唆する。
【0106】
脂質賦形剤を含まない生理食塩水に懸濁した1(2 mg/mL, 5 mg/kg)の動態結果に関して、図10Aを正規化したものを図10Bに示す。図10AにおけるCmaxの増加を強調する図10Bは、脂質賦形剤への1の可溶化に起因する
【0107】
実施例7:1の脂質製剤のラット薬物動態試験
ラット薬物動態試験をSprague Dawleyラットを用いて行った。1の脂質製剤を腹腔内投与し、経時的にラット中の1の濃度を測定した。薬物動態試験の結果を図11に示す。図11に示したように、薬物動態試験[脂質賦形剤を含まない生理食塩水に懸濁した1(2 mg/mL; 5 mg/kg)に対して正規化したもの]は、1を可溶化するための脂質賦形剤を有する製剤が、ラットでの1のCmaxを著しく増加させることを示唆する。
【0108】
最後に、注目すべきは、本発明を実施する代替法があることである。従って、本態様は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、本発明は、本明細書中で記述した詳細に限定されるべきではないが、本明細書に由来する特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内で変更され得る。本明細書に引用した全ての刊行物および特許は、それらの全体が参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の意図する脂質の一態様を模式図で示す。
【図2】リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および両親媒性薬物 1 を含有する製剤の偏光顕微鏡画像を示す。
【図3】リン酸緩衝生理食塩水にDOPCおよび両親媒性薬物 2 を含有する製剤の偏光顕微鏡画像を示す。
【図4】リン酸緩衝生理食塩水にDOPCおよび両親媒性薬物 3 を含有する製剤の偏光顕微鏡画像を示す。
【図5】リン酸緩衝生理食塩水にDOPCおよび両親媒性薬物 4 を含有する製剤の偏光顕微鏡画像を示す。
【図6】リン酸緩衝生理食塩水にDOPCおよび両親媒性薬物 5 を含有する製剤の偏光顕微鏡画像を示す。
【図7】DOPCの製剤中の両親媒性薬物 1の示差走査熱量測定(DSC)走査(上)、およびPBS中の両親媒性薬物 1 のDSC(下)を示す。
【図8】PBS中の両親媒性薬物 1 のDSC走査を示す。
【図9】PBSのDSC走査を示す。
【図10A】時間に対する両親媒性薬物 1 の濃度を測定したマウス薬物動態試験を説明する。なお、PBS中の、1 および DOPCの製剤をBalb/Cマウスに腹腔内投与した。
【図10B】図10Aに示したマウス薬物動態試験を正規化した結果を示すグラフである。
【図11】時間に対する両親媒性薬物 1 の濃度を測定したラット薬物動態試験を示すグラフである。なお、PBS中の、1 および DOPCの製剤をSprague-Dawleyラットに腹腔内投与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、および両親媒性もしくは疎水性薬物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシドを含む製剤であって、該薬物と該脂質が、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する製剤。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
薬物が、リドカイン、ドキソルビシン、ビノレルビン、チオペンタールナトリウム、コレステロール、テストステロン、α-トコフェロール、フェニルブタゾン、ジフェニルヒドラミン、ピリラミン(pyiamine)、またはデスロラタジン(desloratidine)である、請求項1記載の製剤。
【請求項4】
薬物がピリミジン誘導体である、請求項1記載の製剤。
【請求項5】
薬物が2,4-ピリミジンジアミン誘導体である、請求項1記載の製剤。
【請求項6】
2,4-ピリミジンジアミン誘導体が、以下に図示する化合物1、2、3、4、および5より選択される、請求項5記載の製剤:


【請求項7】
ピリミジン誘導体が、

である、請求項6記載の製剤。
【請求項8】
薬物が、約3より大きいかまたは等しく、かつ約5より小さいかまたは等しいlog P値を有する、請求項1のいずれか一項記載の製剤。
【請求項9】
脂質が、約30℃より低いまたは約20℃より低い転移温度を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項10】
脂質が、1つまたは複数の不飽和アシル部分を含む、請求項1記載の製剤。
【請求項11】
脂質がリン脂質である、請求項1記載の製剤。
【請求項12】
リン脂質が、1つまたは複数の不飽和アシル部分を含む、請求項11記載の製剤。
【請求項13】
不飽和アシル部分がC12-C24アルケニルである、請求項10のいずれか一項記載の製剤。
【請求項14】
不飽和アシル部分がC16-C20アルケニルである、請求項10のいずれか一項記載の製剤。
【請求項15】
不飽和アシル部分がcis-n-アルケニルである、請求項13記載の製剤。
【請求項16】
不飽和アシル部分がcis-n-アルケニルである、請求項14記載の製剤。
【請求項17】
不飽和アシル部分が、オレオイル、エライドイル、ミリストレオイル、パルミトレオイル、アラキドニル、リノレオイル、リノレニル、ペトロセリニル、およびエルシルからなる群より選択される、請求項12記載の製剤。
【請求項18】
リン脂質が、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジン酸である、請求項12記載の製剤。
【請求項19】
リン脂質が、ホスファチジルコリンである、請求項12記載の製剤。
【請求項20】
不飽和アシル部分が、ペトロセリニル、エルシル、オレオイル、エライドイル、パルミトレオイル、ミリストレオイル、アラキドニル、リノレオイル、リノレニル、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18のいずれか一項記載の製剤。
【請求項21】
ホスファチジルコリンが、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジペトロセリニルホスファチジルコリン、ジエルシルホスファチジルコリン、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン、ジミリストレオイルホスファチジルコリン、ジアラキドニルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジリノレニルホスファチジルコリン、またはそれらの組み合わせである、請求項19記載の製剤。
【請求項22】
ホスファチジルコリンがジオレオイルホスファチジルコリンである、請求項19記載の製剤。
【請求項23】
薬物と脂質が、モル/モル基準で約0.05〜約0.12の範囲にある比率で存在する、請求項1記載の製剤。
【請求項24】
薬物と脂質の比率がモル対モル基準で約0.10である、請求項1記載の製剤。
【請求項25】
脂質が、二分子膜、リポソーム、ミセル、ベシクル、懸濁液、ミクロスフェア、エマルション、またはそれらの組み合わせを形成する、請求項1記載の製剤。
【請求項26】
脂質が二分子膜を形成する、請求項1記載の製剤。
【請求項27】
リポソームが、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソーム、多重膜リポソーム、またはそれらの組み合わせである、請求項26記載の製剤。
【請求項28】
薬物がピリミジン誘導体であり、かつ脂質がリン脂質である、請求項1記載の製剤。
【請求項29】
ピリミジン誘導体が2,4-ピリミジンジアミン誘導体である、請求項1記載の製剤。
【請求項30】
リン脂質がホスファチジルコリンであり、かつ2,4-ピリミジンジアミン誘導体が、以下に図示する化合物1、2、3、4、および5より選択される、請求項29記載の製剤:


【請求項31】
ホスファチジルコリンが、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジエライドイルホスファチジルコリン、ジペトロセリニルホスファチジルコリン、ジエルシルホスファチジルコリン、ジパルミトレオイルホスファチジルコリン、ジミリストレオイルホスファチジルコリン、ジアルキドニルホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジリノレニルホスファチジルコリン、またはそれらの組み合わせである、請求項30記載の製剤。
【請求項32】
ホスファチジルコリンがジオレオイルホスファチジルコリンである、請求項30記載の製剤。
【請求項33】
ピリミジンが、

である、請求項32記載の製剤。
【請求項34】
薬物とリン脂質が、モル/モル基準で約0.05〜約0.12の範囲にある比率で存在する、請求項29のいずれか一項記載の製剤。
【請求項35】
薬物と脂質の比率がモル対モル基準で約0.10である、請求項34記載の製剤。
【請求項36】
脂質が、約2 mg/mL〜約8 mg/mLの範囲で、薬物の保持容量を有する、請求項1記載の製剤。
【請求項37】
ピリミジン誘導体またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、ならびに不飽和両親媒性脂質を含む製剤。
【請求項38】
ピリミジン誘導体が2,4-ピリミジンジアミン誘導体であり、かつ脂質がリン脂質である、請求項37記載の製剤。
【請求項39】
少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、両親媒性もしくは疎水性薬物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、ならびに溶媒を混合する工程;
該溶媒を除去して、薬物および脂質を含む残渣を形成する工程;および
該残渣を水または水溶液と混合する工程
を含む方法であって、該薬物と該脂質が、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する製剤を製造する方法。
【請求項40】
混合する工程が、攪拌(stirring)、配合(blending)、加熱、振盪(shaking)、かきまぜ(agitating)、超音波処理、ボルテックス処理、遠心分離、またはそれらの組み合わせを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
溶媒が、有機溶媒、界面活性剤(detergent)、表面活性剤(surfactant)、またはそれらの組み合わせである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
有機溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、ハロアルカン、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アルコール、多価アルコール、水、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
界面活性剤が、TPGS、PS 80、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、またはビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシナートのナトリウム塩である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
残渣が、膜、オイル、液体、エマルション、懸濁液、コロイド、分散体、凝集体、ミクロスフェア、またはそれらの組み合わせである、請求項39記載の方法。
【請求項45】
残渣が膜である、請求項39記載の方法。
【請求項46】
除去する工程が、凍結乾燥、真空蒸発、逆相蒸発、真空蒸留、風乾、不活性ガス通気(inert gas transfer)、またはそれらの組み合わせを含む、請求項39記載の方法。
【請求項47】
水溶液が緩衝液である、請求項39記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1種の不飽和両親媒性脂質、両親媒性もしくは疎水性薬物、またはその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、もしくはN-オキシド、ならびに溶媒を混合する工程;
該溶媒を除去して、薬物および脂質を含む残渣を形成する工程;および
該残渣を水または水溶液と混合する工程
を含むプロセスにより製造される製剤であって、該薬物と該脂質が、モル/モル基準で約0.015〜約0.15の範囲にある比率で存在する製剤。
【請求項49】
細胞の増殖を阻害するために有効な量の、請求項29のいずれか一項記載の製剤と細胞を接触させる段階を包む、細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項50】
細胞が腫瘍細胞である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
腫瘍細胞が、肺、結腸、乳房、前立腺、膵臓、卵巣、または肝臓の腫瘍細胞である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
増殖性疾患を治療するために有効な量の、請求項29のいずれか一項記載の製剤を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、増殖性疾患を治療する方法。
【請求項53】
増殖性疾患ががんである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
がんが転移性腫瘍である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
がんが、乳房、結腸、膵臓、肺、神経、食道、胃、および黒色腫のがんからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項56】
製剤が、経口的に、腹腔的に、静脈内に、鼻腔内に、または吸入により投与される、請求項52記載の方法。
【請求項57】
対象がヒトである、請求項52記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−518443(P2009−518443A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544619(P2008−544619)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/061502
【国際公開番号】WO2007/111720
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(507122940)リゲル ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】