説明

脂質代謝促進組成物

【課題】本発明は、脂肪細胞に蓄積された脂肪などの脂質の代謝を促進し、しかも安全で継続的に摂取することのできる脂質代謝促進組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を含有することを特徴とする脂質代謝促進組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を含有する、脂質代謝を促進することにより、脂質蓄積および/または脂質代謝障害による種々の疾患、例えばメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化などを予防または治療するための組成物、ならびに該組成物を含む食品、化粧料、飼料および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活が豊かになった結果、カロリー摂取過剰となるとともに、運動不足も原因となり、肥満や糖尿病になる成人が急激に増加している。肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧は「死の四重奏」とも呼ばれ、動脈硬化などの心血管疾患の最大の原因となっている。最近の研究では、死の四重奏の上流には内臓脂肪蓄積が存在することが明らかになっている。肥満とは、脂肪細胞が過剰に脂肪を蓄積した状態をいい、合併症として高脂血症や動脈硬化症、さらには糖尿病をもたらすことが知られている。これまで脂肪細胞は、脂肪を蓄積するだけの組織であると考えられてきたが、近年では、脂肪細胞はレプチン、アディポネクチン、TNF-α、レジスチン、遊離脂肪酸をはじめとする様々なアディポサイトカインを分泌し、生体で最も活発な内分泌臓器であることが分かってきている。正常な脂肪細胞はインスリン感受性を獲得するアディポネクチンを分泌するが、肥満に陥り、脂肪細胞が脂肪を蓄積して肥大化すると、アディポネクチンの分泌が低下し、インスリン抵抗性を惹起するTNF−αやレジスチンの分泌が増加する。このことがインスリン抵抗性の原因となり、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化などの疾患につながると考えられている。
【0003】
したがって、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化などの疾患を予防、改善するためには、生体の脂質代謝を促進し、脂肪細胞が蓄積している脂肪を減少させ、肥大した脂肪細胞を減少させることが重要である。このような作用を有する医薬品が多数医療現場で用いられているが、これらの医薬品には強い副作用があり、継続的な使用には問題がある。そのため、脂質代謝促進作用を有する素材を、日々簡便に、安全な食品として摂取することが重要と考えられる。食品素材としてそのような観点から研究された例として、例えば動物肉に含まれるカルニチンやコエンザイムQ10、ショウガ、トウガラシ、カカオエキス、パントテン酸などが挙げられる。
【0004】
そして、これら素材の組合せについても報告されており、例えば特許文献1には、L−カルニチンと、ヒドロキシクエン酸またはパントテン酸との組合せが記載されており、また特許文献2には、ヒドロキシクエン酸とカルニチンとの組合せが記載されている。しかしながらこれらの効果は未だ不十分なものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−176004号
【特許文献2】特開2004−321171号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の課題を解消し、脂肪細胞に蓄積された脂肪などの脂質の代謝を促進し、しかも安全で継続的に摂取することのできる脂質代謝促進組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、脂質代謝促進作用を有する素材を種々組み合わせてその効果を確認した。その結果、カルニチンにヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を組み合わせると、極めて強い脂質代謝促進作用が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を含有することを特徴とする脂質代謝促進組成物。
(2)(1)記載の脂質代謝促進組成物を含有する食品、化粧料または飼料。
(3)メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化を予防または改善するためのものである、(2)記載の食品、化粧料または飼料。
(4)(1)記載の脂質代謝促進組成物を含有してなる、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化を予防または治療するための医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脂肪細胞の脂肪などの脂質の燃焼・代謝を促進し、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化などの疾患を予防、改善するために有用な食品、化粧料、飼料および医薬組成物を提供できる。脂質の代謝が促進されると、体脂肪の燃焼による熱産生、エネルギー産生が亢進し、体感温度が上昇したり発汗が促されて新陳代謝が促進されると共に、疲れにくくなったり運動能力が高められるなどの効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明において脂質代謝促進とは、例えば、体脂肪の脂肪燃焼促進作用、体脂肪軽減作用または脂肪蓄積防止作用等により、体内の脂質量を低下させることをさす。本発明の組成物は、活性成分としてカルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の3成分を含む。これら3成分を含有する組成物を摂取すると、3成分の相乗効果により、高い脂質代謝促進効果が得られる。体内の脂肪細胞が蓄積している脂肪を代謝することにより、発熱、発汗作用が得られ、基礎代謝が向上することにより、新陳代謝が活発化して身体機能が向上する効果が得られる。従って、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を含む組成物は、発汗促進のための組成物や疲労回復のための組成物としても使用できる。
【0012】
本発明の脂質代謝促進組成物に用いられるカルニチンとは、通常、生体の脂質代謝に関与するL−カルニチンをさす。別名ビタミンBTとも呼ばれ、生体内ではアミノ酸のリジンとメチオニンから生合成される。脂肪酸が脂質代謝の場であるミトコンドリアの生体膜を通過する際に、カルニチンが用いられるため、脂質代謝に重要な働きを有する。カルニチンは、動物の肉などの食品に含まれることが知られている。従って、カルニチンは、カルニチンを含有する食品からの抽出物であってもよい。動物肉からカルニチンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば水性の液体や有機溶媒を用いて抽出する方法、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体を用いて抽出する方法などが挙げられる。
【0013】
本発明のカルニチンには、アルカノイル−L−カルニチンも包含される。アルカノイル−L−カルニチンにおけるアルカノイル基は、通常2〜8個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルカノイル基である。特に好ましくは、アセチル−L−カルニチン、プロピオニル−L−カルニチン、ブチリル−L−カルニチン、バレリル−L−カルニチンおよびイソバレリル−L−カルニチンである。本発明のL−カルニチンまたはアルカノイル−L−カルニチンには、その塩も包含される。塩としては例えば、コハク酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸および酒石酸などの有機酸との塩、塩酸、硫酸、リン酸および硝酸などの鉱酸との塩、ならびにクロライド、ブロマイド、オロテート、酸アスパルテート、酸シトレート、酸ホスフェート、酸フマレート、ラクテート、マレエート、酸マレエート、酸オキサレート、酸スルフェート、グルコースホスフェート、タルトレートおよび酸タルトレート塩などが挙げられる。さらに本発明のカルニチンには、その前駆体であるリジンおよびメチオニンも包含される。
【0014】
本発明の脂質代謝促進組成物に用いられるヒドロキシクエン酸は、オトギリソウ科フクギ属のガルシニア・カンボジア(Garcinia cambogia)、別名インディアンデイト、ゴカラ、マラバールタマリンドなどと呼ばれる植物に含まれる果実成分をさす。摂取すると食欲が抑制され、また脂肪の合成を抑制することが知られている。ヒドロキシクエン酸は、上記のようなヒドロキシクエン酸を含有する植物からの抽出物であってもよい。植物からヒドロキシクエン酸を抽出する方法は、特に限定されないが、例えば水性の液体や有機溶媒を用いて抽出する方法、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体を用いて抽出する方法などが挙げられる。また本発明のヒドロキシクエン酸には、その塩またはエステルも包含される。塩としては例えば、ヒドロキシクエン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、ヒドロキシクエン酸カリウムなどアルカリ金属塩が挙げられる。
【0015】
本発明の脂質代謝促進組成物に用いられるパントテン酸は、ビタミンB群に分類される物質で、D(+)−N−(2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブチリル)−β−アラニンをさす。補酵素Aの構成成分であり、脂質代謝に関与している重要分子である。本発明のパントテン酸には、パントテン酸の誘導体も包含される。そのような誘導体としては、4'−ホスホパントテネート、4'−ホスホパントテニルシステイン、4'−ホスホパントテイン、パンテテインおよびパンテチンなどが挙げられる。また、パントテン酸には、パントテン酸およびパントテン酸誘導体の塩も包含される。塩としては例えば、パントテン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、パントテン酸カリウムなどアルカリ金属塩が挙げられる。パントテン酸は、パントテン酸を含有する食品からの抽出物でもよい。そのような食品としては、乾燥酵母、卵、牛乳、大豆など、様々な食品が挙げられる。乾燥酵母、卵、牛乳、大豆などからパントテン酸を抽出する方法は特に限定されないが、例えば水性の液体や有機溶媒を用いて抽出する方法、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体を用いて抽出する方法などが挙げられる。
【0016】
本発明の脂質代謝促進組成物は、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸という、それぞれ生体の脂質代謝に重要な働きを有する、作用機序の異なる3成分を含有することにより、それら成分の相乗効果によって効果的に脂質の代謝を促進させることができる。
【0017】
本発明の脂質代謝促進組成物に含まれる、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸は、いずれも水によく溶解し、生体への吸収性が高い。酸性、中性、アルカリ性のいずれの条件においても安定性が高く、その機能を維持した状態で飲食品に配合することが容易である。また、摂取開始後短期間で効果が期待でき、少量の摂取でも十分な効果を得られるため、利用価値が高い。そのため、本発明の食品は、例えば一般の食品だけでなく、健康食品、特定保健用食品、栄養機能食品などであってよい。
【0018】
本発明の脂質代謝促進組成物に含まれる、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の含有量は本発明の効果が得られる限り制限されないが、一般的な成人一日当たりの量が、カルニチンは1〜1500mg、好ましくは50〜1000mg、ヒドロキシクエン酸は1〜2000mg、好ましくは50〜1000mg、パントテン酸は1〜1500mg、好ましくは50〜800mgとなるように配合される。
【0019】
(脂質代謝促進組成物)
本発明の脂質代謝促進組成物は、含まれる3成分をそのまま単独で脂質代謝促進組成物として摂取に供してもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、後述する添加剤、他の公知の脂肪細胞分化促進物質、脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質などを単独または複数組み合わせて配合して摂取に供してもよい。
【0020】
本発明の脂質代謝促進組成物の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤などの皮膚外用剤、点滴剤、注射剤などが挙げられる。これらのうちでは、経口剤が好ましい。
【0021】
このような剤型の脂質代謝促進組成物は、上述した成分に、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料などの添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水または他の適当な媒体に溶解または懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。
【0022】
本発明の脂質代謝促進組成物が、上記添加剤や他の脂肪細胞分化促進物質、脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質などを含む場合、本発明の脂質代謝促進組成物の含有量は、その剤型により異なるが、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の混合物の乾燥質量として、通常は、0.001〜99質量%、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは1〜75質量%の範囲であり、上述した成人1日当たりの摂取量を達成できるように、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。
【0023】
さらに、本発明の脂質代謝促進組成物には、医薬組成物、食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤を配合することができ、種々の物質と共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂、生薬、アミノ酸、多価アルコール、天然高分子、ビタミン、ミネラル、食物繊維、界面活性剤、精製水、賦形剤、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料および香料などが挙げられる。
【0024】
前記各種油脂としては、例えば大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂が挙げられる。
【0025】
前記生薬としては、例えば牛黄、地黄、枸杞子、ロイヤルゼリー、人参、鹿茸などが挙げられる。
【0026】
前記アミノ酸としては、例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなどが挙げられる。
【0027】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコールなどが挙げられる。前記糖アルコールとして、例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなどが挙げられる。
【0028】
前記天然高分子としては、例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテンまたはグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなどが挙げられる。
【0029】
前記ビタミンとしては、例えばビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB群、ビタミンE(トコフェロール)の他に、ビタミンA、D、K、酪酸リボフラビンなどが含まれる。また、ビタミンB群には、ビタミンB1誘導体、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、さらにビオチン、ニコチン酸、葉酸などの各種ビタミンB複合体が包含される。ビタミンB1誘導体には、チアミンまたはその塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミンまたはその塩、ジセチアミン、ビスブチチアミン、ビスベンチアミン、ベンフォチアミン、チアミンモノフォスフェートジスルフィド、シコチアミン、オクトチアミン、プロスルチアミンなどのビタミンB1の生理活性を有する全ての化合物が包含される。
【0030】
前記ミネラルとしては、例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などが挙げられる。
【0031】
前記食物繊維としては、例えばガム類、マンナン、ペクチン、ヘミセルロース、リグニン、β−グルカン、キシラン、アラビノキシランなどが挙げられる。
【0032】
前記界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
前記賦形剤としては、例えば白糖、ブドウ糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、乳糖、デキストリン、澱粉、結晶セルロース、サイクロデキストリンなどが挙げられる。
【0034】
また、他の公知の脂肪細胞分化促進物質、脂肪蓄積抑制物質、脂肪分解促進物質、脂肪代謝改善物質、あるいは種々の機能性成分や種々の添加剤として、上記以外に、例えば、タウリン、グルタチオン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、テアニン、γ−アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドンなどを配合することができる。
【0035】
これら任意成分の配合量は、その種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、一般的には0.01〜90質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜50質量%の範囲である。
【0036】
本発明の脂質代謝促進組成物は、脂肪の燃焼・代謝を促進し、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化などの疾患に対して優れた予防および治療効果を示す。また、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の脂質代謝促進組成物は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの生活習慣病に対する予防、改善または治療のための食品、化粧料および飼料にも使用できる。さらに、本発明の脂質代謝促進組成物、食品、化粧料または飼料を、上述した摂取量を管理できる形態で摂取することにより、該脂質代謝促進組成物を用いる、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの生活習慣病に対する予防方法、改善方法および治療方法が提供される。
【0037】
(食品および飼料)
上述したように、本発明の脂質代謝促進組成物は、脂肪の燃焼・代謝を促進するうえ、食品成分として認められているカルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を有効成分としているため、種々の食品に添加して継続的に摂取することができ、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの生活習慣病の予防および改善が期待される。また、体内の脂肪細胞が蓄積している脂肪を代謝することにより、発熱、発汗作用が得られ、基礎代謝が向上することにより、新陳代謝が活発化して身体機能が向上する効果が得られる。
【0038】
本発明の食品は、上述した脂質代謝促進組成物を含有する。本発明において、食品には飲料も包含される。本発明の脂質代謝促進組成物を含有する食品には、脂肪の燃焼・代謝を促進する作用により健康増進を図る健康食品、機能性食品、栄養機能食品、特定保健用食品などの他、上記脂質代謝促進組成物を配合できる、全ての食品が含まれる。
【0039】
食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠剤、錠菓、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤などの健康食品または栄養補助食品、緑茶、ウーロン茶や紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水などの飲料、バター、ジャム、ふりかけ、マーガリンなどのスプレッド類、マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、牛乳、ヨーグルト、スープまたはソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。
【0040】
本発明の食品は、上記脂質代謝促進組成物のほかに、その食品や飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。
【0041】
本発明の食品において、脂質代謝促進組成物の含有量は、食品の形態により異なるが、通常は、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の混合物の食品中の乾燥質量として、0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲で摂取されるが、本発明の脂質代謝促進組成物は安全性の高いものであるため、その摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。上述した、成人1日当たりの脂質代謝促進組成物(乾燥質量)の摂取量を達成できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。
【0042】
本発明の食品に含まれる脂質代謝促進組成物は、上述したとおり、脂肪の燃焼・代謝を促進するため、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの生活習慣病に対して優れた予防および改善作用を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。そのため、得られる食品は、長期間の継続的摂取が容易であり、優れたメタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの予防および改善作用が期待される。なお、本発明の食品を、上述した、成人1日当たりの脂質代謝促進組成物(乾燥質量)の摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該食品を用いる、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの生活習慣病に対する予防方法および改善方法が提供される。
【0043】
さらに本発明の脂質代謝促進組成物は、人用の飲食品のみならず、家畜、競走馬、ペットなどの飼料にも配合することができる。飼料は、対象が人以外であることを除き食品とほぼ等しいことから、上記の食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0044】
(化粧料)
上述したように、本発明の脂質代謝促進組成物は安全性が高いため、化粧料素材として使用することもできる。継続的に適用することができるため、肥満や蜂巣炎などの体脂肪が蓄積される状態の予防および改善効果が期待される。
【0045】
化粧料としては特に限定されるものではないが、機能面からは、例えばフェイスまたはボディ用乳液、化粧液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、シートなどが好ましい。添加量は、特に限定されるものではないが、一例としてあげると、化粧料基材の質量に対して、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の混合物の乾燥質量として通常は、0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲が適当である。
【0046】
(医薬組成物)
本発明の脂質代謝促進組成物は、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などに対して優れた予防、改善および治療効果を有することから、これらの脂質蓄積および/または脂質代謝障害による疾患を治療または予防するための医薬組成物とすることもできる。すなわち、本発明の医薬組成物は、上述の本発明の脂質代謝促進組成物を含むものであり、換言すれば、カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を有効成分として含むものである。
【0047】
本発明の医薬組成物に関し、有効成分であるカルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸の配合量、その摂取量(投与量)、その他の活性成分、機能性成分および添加剤、それらの配合量、剤型などについては、脂質代謝促進組成物について記載したのと同様である。
【0048】
本発明の医薬組成物を投与することにより、脂肪の燃焼・代謝が促進されるため、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの脂質蓄積および/または脂質代謝障害による疾患を治療または予防することできる。また、本発明の医薬組成物は、安全性が高く副作用の心配がないため、長期間の継続的投与が可能であり、優れたメタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、動脈硬化などの予防および治療効果が期待される。
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
カルニチン酒石酸塩(日清ファルマ製)1030g、ヒドロキシクエン酸(ガルシニアパウダー;日本新薬製)417g、パントテン酸カルシウム(第一ファインケミカル製)25gを混合した。前記混合物に、スクラロースSU−100(三栄源製)100g、デキストリン(松谷化学製)628gを混合し、バインダーとしてグアガム(三晶製)を噴霧して全量が2200gとなるよう加えて流動槽造粒法により顆粒を製造し、16メッシュで篩過し、乾燥機中にて50℃で乾燥した。これを2.2gごとに個別包装し、1包当たりカルニチン酒石酸塩1030mg、ヒドロキシクエン酸417mg、パントテン酸カルシウム25mgを含有する顆粒剤を得た。この顆粒剤は水に容易に溶解し、水だけでなく、スポーツドリンク、紅茶などに溶解させて摂取することができた。
【0051】
(実施例2)
実施例1と同様にして、表1の配合にしたがって顆粒剤を得た。この顆粒剤は1包当たりカルニチン酒石酸塩1030mg、ヒドロキシクエン酸417mg、パントテン酸カルシウム25mg、カカオエキス50mg、を含有していた。この顆粒剤は水に容易に溶解し、水だけでなく、スポーツドリンク、紅茶などに溶解させて摂取することができた。
【0052】
(実施例3)
実施例1と同様にして、表1の配合にしたがって顆粒剤を得た。コエンザイムQ10は、日清ファルマ製の水溶化コエンザイムQ10・P40(コエンザイムQ10を40%含有する)を使用した。この顆粒剤は1包当たりカルニチン酒石酸塩1030mg、ヒドロキシクエン酸417mg、パントテン酸カルシウム25mg、カカオエキス50mg、コエンザイムQ10 30mgを含有していた。この顆粒剤は水に容易に溶解し、水だけでなく、スポーツドリンク、紅茶などに溶解させて摂取することができた。
【0053】
(比較例1)
実施例1と同様にして、表1の配合にしたがって顆粒剤を得た。この顆粒剤は1包当たりカルニチン酒石酸塩1030mg、パントテン酸カルシウム25mg、カカオエキス50mgを含有していた。この顆粒剤は水に容易に溶解し、水だけでなく、スポーツドリンク、紅茶などに溶解させて摂取することができた。
【0054】
【表1】

【0055】
(試験例) 脂質代謝に関する試験
20〜50代の男女11人に、実施例2および比較例1の顆粒剤をそれぞれ別個に3日間の休薬期間を設けて摂取させ、摂取後24時間の自覚症状について、表2のアンケートに回答させた。
【0056】
【表2】

【0057】
アンケート結果から、各スコア点数を合計して表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
疲れの項目について、変わらないと回答したものについては、カウントしなかった。
【0060】
表3の結果から、カルニチン、ヒドロキシクエン酸、パントテン酸の3成分を含む実施例2の顆粒剤は、カルニチンとパントテン酸の2成分しか含まない比較例2の顆粒剤と比較して、体感温度の上昇、発汗の促進、活動時の体感、疲れ易さのいずれの項目においても、優れた効果を示した。したがって、本発明の脂質代謝促進組成物は、高い脂質代謝促進作用を有し、体脂肪の燃焼による熱産生、エネルギー産生が亢進し、体感温度が上昇したり発汗が促されて新陳代謝が促進されると共に、疲れにくくなったり運動能力が高められるなどの効果があることが確認された。そして脂肪細胞の脂肪などの脂質の燃焼・代謝を促進し、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化などの疾患を予防、改善、治療するために有用であるものと考えられた。
【0061】
(実施例4)
カルニチン酒石酸塩(日清ファルマ製)250g、ヒドロキシクエン酸(ガルシニアパウダー;日本新薬製)150g、パントテン酸カルシウム(第一ファインケミカル製)100g、結晶セルロース(旭化成製)310g、還元麦芽糖(日研化成製)150gを混合し、そこにショ糖脂肪酸エステル(三菱化学製)40gを添加してさらに混合し、打錠用粉末を調製する。この粉末を、打錠機を用いて打錠し、1錠当たり500mgの錠剤を調製する。この錠剤は、1錠当たりカルニチン酒石酸塩125mg、ヒドロキシクエン酸75mg、パントテン酸カルシウム50mgを含有していた。
【0062】
(実施例5)
クエン酸(田辺製薬製)1.0g、ブドウ糖液(日本食品加工工業製)200gを精製水649gに室温で撹拌溶解させ、pH3.0〜3.5に調整した。そこに実施例2の顆粒150gを添加・溶解させ、均一な飲料組成物を得た。
【0063】
(実施例6)
小麦粉(強力粉)120gとドライイースト2gを混ぜる。他に、実施例2の顆粒25g、砂糖20g、食塩3g、脱脂粉乳6gを温湯70gに溶かし、鶏卵1個を添加してよく混ぜ、そこにリンゴ酸8gを添加し、さらに混合する。これを小麦粉に添加して、手でよくこねた後、バター約40gを加えてよくこね、20個のロールパン生地を作る。次いで、発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で約12分焼き、ロールパンを製造する。
【0064】
(実施例7)
牛乳200mL、ゼラチン4.5g、砂糖45g、水15gを混合し、火にかけ、ゼラチンを完全に溶かす。溶けたことを確認後、実施例3の顆粒1gをよく混ぜて溶解させる。この後、この混合物を4個のカップに流し込み、冷蔵庫で2時間以上冷やして固め、ミルクゼリーを得る。
【0065】
(実施例8)
実施例2の顆粒40gと粉末状のオーガニック青汁(日清ファルマ製)560gをよく混ぜ、この後、1食分当たり約3gのスティック包装を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチン、ヒドロキシクエン酸およびパントテン酸を含有することを特徴とする脂質代謝促進組成物。
【請求項2】
請求項1記載の脂質代謝促進組成物を含有する食品、化粧料または飼料。
【請求項3】
メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化を予防または改善するためのものである、請求項2記載の食品、化粧料または飼料。
【請求項4】
請求項1記載の脂質代謝促進組成物を含有してなる、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化を予防または治療するための医薬組成物。

【公開番号】特開2008−143811(P2008−143811A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330803(P2006−330803)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(301049744)日清ファルマ株式会社 (61)
【Fターム(参考)】