脂質代謝改善用組成物および食品
【課題】PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状、特にインスリン抵抗性糖尿病や高脂血症、の治療、予防、および改善に用いられる組成物および食品の提供。
【解決手段】フムロン類、イソフムロン類、もしくはルプロン類、またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる食品が提供される。
【解決手段】フムロン類、イソフムロン類、もしくはルプロン類、またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物を含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる食品が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体:peroxisome proliferator-activated receptor)アゴニスト活性を有する薬剤に関し、より詳細にはインスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる薬剤に関する。本発明はこれらの薬剤を配合してなる食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化が進むにつれて、国民一人あたりの脂肪摂取量も上昇し、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの生活習慣病と呼ばれる疾患が急激に増えている。これらの疾患はお互いに合併し易く、その根底にはインスリン抵抗性の存在が大きく関与するとされている。
【0003】
山田らにより報告されている様に、耐糖能に異常を示す患者の多くは高中性脂肪血症、高コレステロール血症、低HDL−コレステロール血症を合併する事が多い(Diabetes Care 17:107-114,1994)。Reavenはインスリン抵抗性に起因する耐糖能障害、高血圧、高VLDL−コレステロール血症、低HDL−コレステロール血症を有するものをシンドロームXと呼び、この改善が脳血管障害、冠動脈疾患予防には重要だとしている(Diabetes 37:1595-1607, 1988)。この様に糖尿病・高脂血症・高血圧などのいわゆる成人病は、一人の患者に重積しやすく、これらは脳血管障害、冠動脈疾患の原因としてマルチプルリスクファクターと呼ばれる。
【0004】
インスリン抵抗性に起因する糖尿病患者およびその予備群とされる人の総数は日本では1300万人を超えるとされ、その数は増加の一途をたどっている。インスリン抵抗性による過剰なインスリン分泌は脂質代謝の異常によるLDLコレステロールや中性脂肪の増加、高血圧などを引き起こすとされる。また、糖尿病による血糖値の上昇は神経障害や網膜症、腎臓障害などの合併症を引き起こす。このため、インスリン抵抗性や高血糖を改善する薬剤の開発が重要となっている。インスリン抵抗性改善薬としてはチアゾリジン誘導体等の薬剤が知られているが、長期の服用による体脂肪の増加などの副作用も報告されており、新たな薬剤開発が必要である。また、インスリン抵抗性の発症が生活習慣と密接に関連している性質上、日常の食事で改善作用をもつ飲食品を継続的に摂取できることも望ましい。
【0005】
脂質代謝異常は、インスリン抵抗性によってだけでなく脂肪やコレステロールの過剰摂取によっても生じる。血中のLDLコレステロールや中性脂肪量の増加とHDLコレステロール量の低下は、いずれも動脈硬化を引き起こす原因となる。虚血性心疾患、脳血管障害を含めた動脈硬化症による死亡率は悪性腫瘍(がん)の死亡率を上回っており、若年相における脂肪摂取量の増加と全年齢における動物性脂肪の摂取量の増加が著しいことから、将来的に動脈硬化症による死亡率がさらに上昇することが予想される。このような状況下、脂質代謝改善効果、脂肪蓄積抑制効果、さらには、末梢組織からの過剰なコレステロール引きぬく作用を有する善玉コレステロールであるHDLを上昇させる効果を有する、医薬品、飲食品が強く望まれている。従来、脂質代謝改善剤としてリノール酸等の多価不飽和脂肪酸を摂取する方法や、フィブレート製剤やニコチン酸等を用いる方法が知られていた。しかしながら多価不飽和脂肪酸の摂取は長期連用が必要な上、過剰摂取に問題があり、フィブレート製剤は筋痙攣等の副作用があり、またニコチン酸にも全身紅潮や胃腸障害等の副作用があると言う難点がある。
【0006】
インスリン抵抗性や脂質代謝異常等の病態を改善する薬剤として、チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン、トログリタゾンなど)やフィブレート製剤(フェノフィブレートやベザフィブレートなど)があり、これらはPPARのアゴニストとして作用することが明らかにされている。前者は主に脂肪組織に分布するγ型(以下「PPARγ」という)を、後者は肝臓、腎臓、心臓、消化管に存在するα型(以下「PPARα」という)をターゲットとして作用する。
【0007】
ところで、ホップはヨーロッパ原産のクワ科多年草(学名:Humulus luplus)であり、その毬果(雌花が成熟したもの)を一般にはホップと呼びビールの苦味、香りづけに用いられることで有名であり、長く人々が摂取してきている。これらの苦味、香りは、ホップのルプリン部分(毬果の内苞の根元に形成される黄色の顆粒)よりもたらされる。ホップはまた、民間薬としても用いられており、その効用は、鎮静効果、入眠・安眠効果、食欲増進、健胃作用、利尿作用など多くの生理効果が知られている。またその抗糖尿病作用についても報告がされている(特開昭50−70512号公報、特開昭59−59623号公報)。しかし、ホップ中のどのような成分がこれらの生理的作用を引き起こすかについては明かにされていない。
【0008】
また、最近では、ホップ毬果よりルプリン部分を除いたホップ苞に由来するポリフェノール類に関し、リパーゼ阻害作用、体重増加抑制作用等があるとの報告もされている(特開2001−321166号公報、特開2001−131080号公報)。しかし、ホップ苦味成分であるフムロン類やイソフムロン類に関してPPARアゴニストとしての活性やそれを示唆するような脂肪細胞分化に関わる活性やβ酸化酵素の活性化に関わる活性については知られていない。さらに、このホップの苦味成分についてインスリン抵抗性改善、血中HDLコレステロール増加や肝臓脂質の蓄積抑制効果など脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果、脂肪蓄積防止効果などについてはいずれも開示されていない。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、ホップの主要な苦味成分であるフムロン類およびその異性化物等がPPARαおよびPPARγのアゴニスト作用を有することを見出した。本発明者等はまた、これらの化合物が、血中の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、インスリン濃度、およびレジスチン濃度の低下作用や、耐糖能の改善作用等のインスリン抵抗性の改善作用を有することを見出した。本発明者等は更に、これらの化合物が血中HDLコレステロール濃度増加作用、肝臓のコレステロールおよび中性脂肪蓄積の抑制作用等の脂質代謝改善作用を有すること、内臓脂肪の蓄積抑制作用を有すること、高脂肪や高コレステロール摂取による体重増加の抑制作用を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0010】
本発明はPPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状、特にインスリン抵抗性糖尿病や高脂血症、の治療、予防、または改善に用いられる組成物および食品の提供をその目的とする。
【0011】
本発明はまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、および痩身等に用いられる組成物および食品の提供をその目的とする。
【0012】
本発明による医薬組成物は、
【化1】
【0013】
[上記式中、R1およびR2はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表し、R3およびR4は水酸基、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表すが、R3とR4が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化2】
【0014】
[上記式中、R5、R6、およびR7は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R8およびR9は水素原子、水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R10、または−CH(−OH)R10を表し、R10はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R8とR9が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化3】
【0015】
[上記式中、R11およびR12は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R13およびR14は水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R15、または−CH(−OH)R15を表し、R15はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R13とR14が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化4】
【0016】
[上記式中、R16、R17、およびR18は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表す。]、または
【化5】
【0017】
[上記式中、R19はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す。]
の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物(以下、「本発明による有効成分」ということがある)を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬組成物である。
【0018】
本発明による組成物は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物である。
【0019】
本発明による組成物は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化用組成物である。
【0020】
本発明による食品は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品である。
【0021】
インスリン抵抗性糖尿病や高脂血症は慢性の病気であり、かつその病態は複雑で、糖代謝異常と同時に脂質代謝異常や循環器系異常を伴う。その薬剤による治療は長期間にわたることが多く、投与量の増大や投与の長期化による副作用の発現など種々の問題が無視できない。本発明による組成物の有効成分は長年食品として用いられてきたホップに含まれるものである。従って、本発明による組成物は患者が長期間にわたって服用しても副作用が少なく、安全性が高い点で有利である。
【発明の具体的な説明】
【0022】
有効成分およびその製造法
本明細書において、C1−6アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。C1−6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、第2ペンチル、第3ペンチルが挙げられる。C1−6アルキル基は好ましくはC3−5アルキル基であることができる。
【0023】
本明細書において、C2−6アルケニル基とは、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を表す。C2−6アルケニル基の例としては、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−2−ブテン、3−メチル−3−ブテンが挙げられる。C2−6アルケニル基は好ましくはC3−5アルケニル基であることができる。
【0024】
R1は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0025】
R2は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0026】
R3は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンまたは水酸基を表す。
【0027】
R4は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンまたは水酸基を表す。
【0028】
R5は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0029】
R6は、好ましくは、水素原子、3−メチル−2−ブテン、またはイソペンチルを表す。
【0030】
R7は、好ましくは、水素原子または3−メチル−2−ブテンを表す。
【0031】
R8は、好ましくは、水素原子、水酸基、−C(=O)CH2CH=C(CH3)2、−CH(OH)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−CH=CH−CH(CH3)2、または−CH(OH)−CH2CH=C(CH3)2を表す。
【0032】
R9は、好ましくは、好ましくは、水素原子、水酸基、−C(=O)CH2CH=C(CH3)2、−CH(OH)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−CH=CH−CH(CH3)2、または−CH(OH)−CH2CH=C(CH3)2を表す。
【0033】
R11は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0034】
R12は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0035】
R13は、好ましくは、水酸基または−C(=O)−CH=CHCH(CH3)2を表す。
【0036】
R14は、好ましくは、水酸基または−C(=O)−CH=CHCH(CH3)2を表す。
【0037】
R16は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0038】
R17は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0039】
R18は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0040】
R19は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0041】
本発明による有効成分の一つである式(I)の化合物はフムロン類およびルプロン類を表す。
【0042】
フムロン類としては、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンが挙げられる。
【0043】
ルプロン類としては、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン、およびプレルプロンが挙げられる。
【0044】
式(I)の好ましい化合物としては、
R1がイソブチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(フムロン)、
R1が1−メチル−プロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドフムロン)、
R1がイソプロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コフムロン)、
R1がエチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストフムロン)、
R1がイソペンチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレフムロン)、
R1はイソブチルを表し、R2は3−メチル−2−ブテンを表し、R3は3−メチル−2−ブテンを表し、R4は3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ルプロン)、
R1が1−メチル−プロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドルプロン)、
R1がイソプロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コルプロン)、
R1がエチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストルプロン)、および
R1がイソペンチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレルプロン)
が挙げられる。
【0045】
本発明による有効成分の一つである式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は、イソフムロン類を表す。
【0046】
イソフムロン類としては、
シスまたはトランスイソフムロン、
シスまたはトランスイソアドフムロン、
シスまたはトランスイソコフムロン、
シスまたはトランスイソポストフムロン、
シスまたはトランスイソプレフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソアドフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソコフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソポストフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソプレフムロン、
シスまたはトランスアロイソフムロン、
シスまたはトランスアロイソアドフムロン、
シスまたはトランスアロイソコフムロン、
シスまたはトランスアロイソポストフムロン、
シスまたはトランスアロイソプレフムロン、
シスまたはトランスパライソフムロン、
シスまたはトランスパライソアドフムロン、
シスまたはトランスパライソコフムロン、
シスまたはトランスパライソポストフムロン、
シスまたはトランスパライソプレフムロン、
シスまたはトランスフムリニック酸、
シスまたはトランスアドフムリニック酸、
シスまたはトランスコフムリニック酸、
シスまたはトランスポストフムリニック酸、
シスまたはトランスプレフムリニック酸、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソアドフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソコフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソポストフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソプレフムロン、
シスまたはトランスアンチイソフムロン、
シスまたはトランスアンチイソアドフムロン、
シスまたはトランスアンチイソコフムロン、
シスまたはトランスアンチイソポストフムロン、
シスまたはトランスアンチイソプレフムロン、
フルポン、
アドフルポン、
コフルポン、
ポストフルポン、
プレフルポン、
トリサイクロデハイドロイソフムロン、
トリサイクロデハイドロイソアドフムロン、
トリサイクロデハイドロイソコフムロン、
トリサイクロデハイドロイソポストフムロン、および
トリサイクロデハイドロイソプレフムロン
が挙げられる。
【0047】
式(II)の化合物の好ましい例としては、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドコイソコフムロン)、
R5が1メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソアドフムロン)、
R5が1メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−フムリニック酸)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−フムリニック酸)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−コフムリニック酸)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−コフムリニック酸)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−アドフムリニック酸)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アドフムリニック酸)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−ポストフムリニック酸)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ポストフムリニック酸)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−プレフムリニック酸)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソプレフムリニック酸)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソプレフムロン)、および
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソプレフムロン)
が挙げられる。
【0048】
式(III)の化合物の好ましい例としては、
R11がイソブチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソフムロン)、
R11がイソプロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソコフムロン)、
R11が1メチル−プロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソアドフムロン)、
R11がエチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソポストフムロン)、
R11がイソペンチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソプレフムロン)、
R11がイソブチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソフムロン)、
R11がイソプロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソコフムロン)、
R11が1メチル−プロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソアドフムロン)、
R11がエチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソポストフムロン)、および
R11がイソペンチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソプレフムロン)が挙げられる。
【0049】
式(IV)の化合物の好ましい例としては、
R16がイソブチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(フルポン)、
R16がイソプロピルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コフルポン)、
R16が1メチル−プロピルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドフルポン)、
R16がエチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストフルポン)、および
R16がイソペンチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレフルポン)
が挙げられる。
【0050】
式(V)の化合物の好ましい例としては、
R19がイソブチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソフムロン)、
R19がイソプロピルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソコフムロン)、
R19が1メチル−プロピルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソアドフムロン)、
R19がエチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソポストフムロン)、および
R19がイソペンチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソプレフムロン)
が挙げられる。
【0051】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は薬学上許容される塩とすることができ、例えば、酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、サリチル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、カルボキシル基を有する化合物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属との塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。
【0052】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は薬学上許容される溶媒和物とすることができ、例えば、水和物、アルコール和物(例えば、メタノール和物、エタノール和物)、エーテル和物が挙げられる。
【0053】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物においては、置換基のアルケニル基に由来するシス−トランス異性体が存在しうるが、いずれの異性体およびそれらの混合物も本発明に包含されるものである。
【0054】
本発明による有効成分は、市販されているものを入手することができる。
【0055】
本発明による有効成分は公知の方法に従って製造することができ、例えば、Developments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS, M. Verzele, ELSEVIERに記載の方法に従って合成することができる。
【0056】
式(I)の化合物は、Riedl et al., Brauwiss 52(1951),81(1951),85(1951),133(1951)に従って製造できる。出発原料としてはphloracylphenonesを使用できる。phloracylphenonesは、触媒としてboron trifluorideの存在下、phoroglucinolとacid chlorides、nitriles、またはcarboxylic acidsとを凝縮させることにより容易に製造することができる。このようにして得られたphloracylphenoneをアセチル化すると、一種類のモノアルキル化誘導体(Ia)、二種類のジアルキル化誘導体(Ib、Ic)、および一種類のトリ−またはテトラ−アルキル化誘導体(Id、Ie)が得られる。
【化6】
【0057】
(上記式中、R1は前記で定義した内容と同義であり、R’はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す)
式(Ib)の化合物を酸化し、アロマ炭素にアルケニル側鎖を付加させることにより、フムロンを得ることができる。酸化反応の方法としては種々の方法があり、例えば、−50℃でantimony pentachlorideと反応させた後、銀イオンの存在下で加水分解することにより酸化することができる。また酢酸溶液存在下、あるいはトリフルオロ酢酸と過酸化水素の存在下で、酢酸鉛と酸化反応させてもよい。酸化反応は、ベンゾイルペルオキシドとアルカリ触媒反応させることにより、あるいはジクロロメタンの存在下でdiphenylseleninic anhydrideと酸化反応させることにより行ってもよい。
【0058】
式(II)の化合物は、2−メチル−2−ペンテン−4−インから製造することができる。2−メチル−2−ペンテン−4−インは1−ブロモ−4−メチルペンタ−1,2−ジエンをCu2(CN)2の存在下、1,4消去反応させることにより得ることができる。また、ピルビン酸エチルに得られた2−メチル−2−ペンテン−4−インを添加し、加水分解反応させことにより、2,6−ジメチル−2−ヒドロキシ−5−ヘプテン−3−イン酸を得ることができる。得られた溶液に(COCl)2を添加し、得られたCl塩を3−オキソ−5−メチルヘキサン酸エチルにマグネシウム塩の存在下で添加することにより、環化された2−(3−メチルビタノイル)−3,4−ジヒドロキシ−4−(4−メチル−3−ペンテン−1−イニル)−2−シクロペンテノンを得ることができる。得られた化合物に1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンを反応させ、3重結合を水和することによりイソフムロン類を得ることができる。
【0059】
式(II)が表すシスまたはトランス-アロイソフムロンは、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-アロイソアドフムロン、シスまたはトランス-アロイソコフムロン、シスまたはトランス-アロイソポストフムロン、シスまたはトランス-アロイソプレフムロンを製造することができる。シスまたはトランス-アロイソフムロンは例えば、F. Alderweireldtらの方法(Bull. Soc. Chim. Belges, 74 (1965) 29)またはM. Verzeleらの方法(J. Inst. Brewing, 71 (1965) 232)によって製造することが出来る。フムロンをpH9.0のリン酸緩衝液中で1時間煮沸を行う。冷却後、塩酸によって、pH1.0にした後、イソオクタンで抽出し、乾燥し溶媒を蒸発させる。その後向流分配法(Counter-Current Distribution法(以下CCD法))により、イソオクタンとpH5.5の緩衝液である水相により分配することにより、シス−アロイソフムロン、及びトランス−アロイソフムロンの分取を行うことが出来る。
【0060】
式(II)が表すシスまたはトランス-フムリニック酸は、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-アドフムリニック酸、シスまたはトランス-コフムリニック酸、シスまたはトランス-ポストフムリニック酸、シスまたはトランス-プレフムリニック酸を製造することができる。シスまたはトランス-フムリニック酸は例えば、フムロンを強アルカリ中で加水分解することによって製造することができ(H. Wieland, Ber. 59 (1926) 2352、又はJ.F. Carson, J. Am. Chem. Soc.,74 (1952) 4615)、好ましくはメタノール中、2Nの水酸化ナトリウムを添下し、67℃、20分間、窒素ガス下で熱することにより製造することが出来る。反応を冷却した2Nの塩酸で停止させた、クロロホルム抽出後、溶媒を蒸発させた後、CCD法により、クロロホルムとpH5.1の緩衝液である水相によって分取することが出来る。
【0061】
式(II)が表すシスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンは、シスまたはトランス-イソフムロンをそれぞれ原料として製造できる。例えば、シスまたはトランス-イソアドフムロン、シスまたはトランス-イソコフムロン、シスまたはトランス-イソポストフムロン、シスまたはトランス-イソプレフムロンを原料として、それぞれシスまたはトランス-テトラハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソプレフムロンを製造することが出来る。シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンは例えば、シスまたはトランス-イソフムロンを炭素上のパラジウムを用いることにより、メタノール中で水素添加することによりそれぞれ製造することができ、好ましくは、水素添加後に溶媒を蒸発、乾固後、イソオクタン中で再結晶することによって製造することができる。テトラハイドロイソフムロンは市販されており、これを使用することもできる。
【0062】
式(II)が表すシスまたはトランス-ヘキサハイドロイソフムロンは、シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンを原料として製造できる。例えば、シスまたはトランス-テトラハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソプレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソプレフムロンを製造することが出来る。シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソフムロンは例えば、シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンより、NaBH4により還元することによりそれぞれ製造できる。ヘキサハイドロイソフムロンは市販されており、これを使用することもできる。
【0063】
式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は、後述するようにホップ毬果、ホップ抽出物やその異性化物中に存在する化合物を抽出・精製することにより、必要であればこれから更に適宜修飾することにより得ることができる。
【0064】
式(III)で表されるシスまたはトランス-アンチイソフムロンは、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス−アンチイソアドフムロン、シスまたはトランス−アンチイソコフムロン、シスまたはトランス−アンチイソポストフムロン、シスまたはトランス−アンチイソプレフムロンを製造することが出来る。具体的にはシスまたはトランス−アンチイソフムロンは、フムロンをpH5.4〜11.0の水溶液中で煮沸することによって製造することが出来る。pHは好ましくは約11.0で反応時間は好ましくは約1.5時間である。煮沸後に冷却し、塩酸で酸性に処理しイソオクタンで抽出を行い、その後、蒸発、乾固後、CCD法により、エーテルとpH5.5の緩衝液である水相により、シス−アンチイソフムロン、トランス−アンチイソフムロンを分取することが出来る。
【0065】
式(IV)で表されるフルポンは、ルプロンを原料として製造できる。例えば、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン、プレルプロンを原料として、それぞれ、アドフルポン、コフルポン、ポストフルポン、プレフルポンを製造できる。具体的にはフルポンは、ルプロンの酸化により製造することが出来る(D. Wright, Proc. Chem. Soc., 315 (1961)、D. Wright, J. Chem. Soc., 1769 (1963))。例えば、ルプロンをシクロヘキサン中で酸素下で振とうし、溶媒を除去し、明るい黄色のオイルを留出によって分離することによりフルポンを製造できる。より好ましくは亜硫酸ナトリウムをメタノール中でルプロンに添加し、ガスの吸収が観察されなくなるまで、酸素ガス下で振とうを行い、その後溶媒を除去し、残留物を暖めたヘキサンで抽出を2回行ない、抽出物をメタノールに懸濁し、2Nの塩酸で酸性にした後、水で希釈を行い、ヘキサンで再度抽出を行ない、留出することによりフルポンを製造できる。
【0066】
本発明による有効成分は、ホップ等天然物から調製されたものを使用してもよい。本発明による有効成分は、例えば、ホップ毬花あるいはホップ抽出物やその異性化物中に存在し、各種クロマトグラフィーを用いてこれらから本発明による有効成分を分取することができる(「醸造物の成分」平成11年12月10日(財)日本醸造協会発行、前掲Developments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS、および後記参考例を参照)。また、遠心分配クロマトグラフィーを用いてホップ毬花の超臨界抽出物(ホップエキス)から、高純度のフムロン、アドフムロン、コフムロンを大量に精製することもできる(A. C. J. Hermans-Lokkerbol et al., J.Chromatography A 664 (1994) pp45-53)。さらにこれらの混合物を再結晶化することにより、純粋な化合物を得ることもできる。例えば、ホップ毬花の超臨界抽出物(ホップエキス)に1,2−ジアミノベンゼンを添加することにより、1,2−ジアミノベンゼンとフムロン類とからなる特異的な複合体を形成させることができる。この複合体を繰り返し再結晶化することにより、最も含量の多いフムロンと1,2−ジアミノベンゼンとの複合体を特異的に結晶化させることができる。結晶化した化合物をメタノールに溶解させ、ゼオライト等のレジンで1,2−ジアミノベンゼンを分離し高純度なフムロンを得ることができる(Colin P. et al.,J. Inst. Brew. June-July, 1993, Vol.99、pp.347-348参照)。これらの方法は全てDevelopments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS, M. Verzele, ELSEVIERに記載されており、当業者であればこれらの方法を容易に実施することができる。
【0067】
本発明による組成物においては、ホップのルプリン部に由来する抽出物をそのままあるいはそれを異性化して有効成分として使用してもよい。ホップは桑科に属する多年生植物であり、その毬花(未受精の雌花が熟成したもの)である。ホップのルプリン部は、ビール醸造原料であり、ビールに苦味、芳香を付与する為に用いる。またビール中の醸造過程においてホップ中のフムロン類(コフムロン、アドフムロン、ポストフムロン、プレフムロン等)がイソフムロン類(イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン等)に異性化され、ビールに特有の味と香りを付与する。
【0068】
ホップの抽出物は、例えば毬花やその圧縮物をそのままもしくは粉砕後、抽出操作に供することによって調製することができる。抽出方法としては、例えば、ビール醸造に用いられるホップエキスの調製法として用いられるエタノール溶媒による抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法などがある。このうち超臨界二酸化炭素抽出はポリフェノール成分が少なく、苦味質と精油成分がより高く濃縮されるなどの特徴を有する。また、ホップ抽出法として、その他一般に用いられる方法を採用することができ、例えば、溶媒中にホップの毬花、その粉砕物などを冷浸、温浸等によって浸漬する方法;加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法;またはパーコレーション法等を挙げられる。得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様により、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮若しくは乾燥して用いてもよい。また濃縮乃至は乾燥後、さらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。更に、本発明においては、例えば、上記のようにして得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によりホップ抽出エキス乾燥物として使用することもできる。
【0069】
上記の抽出に用いられる溶媒としては、例えば、水;メタノール,エタノール,プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼンやヘキサン等の炭化水素;エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒を挙げることができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
その後必要に応じて不溶物をろ過により除去したり、減圧等により濃縮し、溶媒を乾固させてもよい。また毬花を粉砕したものを超臨界点炭酸抽出、あるいは液化炭酸ガス抽出することも好ましい。また、これら抽出した粗エキスをアルカリ、または酸化マグネシウム存在下で加熱化し異性化することも好ましい。異性化によりフムロン類はイソフムロン類に変換される。このような状態の抽出物を直接製剤化に用いても良いが、さらに有効成分を高濃度に含有する分画物を使用することも好ましい。また、種々の方法で抽出されたホップエキス、および異性化されたエキスはビール添加物として市販されており、これを用いて使用することも好ましい。例えば、ホップ毬花粉砕物から主にフムロン類とルプロン類を超臨界二酸化炭素抽出したホップエキス(例、CO2 Pure Resin Extract(Hopsteiner社))、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化したエキス(例、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社)、イソフムロン類とルプロン類が主成分)、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化した後、さらにカリウム塩化して粘性の低い液体とした水溶性エキス(例、ISOHOPCO2N(English Hop Products社)、イソフムロン類が主成分)などを用いることができる。
【0071】
またこれらのエキスより、さらに有効成分を高濃度に含有する分画物を前記等の方法も含め濃縮できることは言うまでもない。
【0072】
用途
本発明による有効成分はPPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性を有する(実施例9、10、および11参照)。
【0073】
PPARαは脂質代謝に深く関与し、PPARαの合成リガンドであるフィブレート製剤は血管内でのリポ蛋白質リパーゼの活性を亢進し、肝臓のβ酸化を亢進させ、肝臓での脂肪酸結合蛋白質の活性化に作用して肝臓への脂肪酸の流入を高めて肝臓からのVLDLの産生を抑制し、結果的に血中のVLDLを低下させることが知られている(「変貌する生活習慣病−糖尿病・高脂血症・高血圧・肥満−」メディカルレビュー社、2000年5月25日発行)。
【0074】
PPARαリガンドであるフィブレート製剤はまたインスリン抵抗性を解除すると考えられている(Guerre-Millo M. et al., J.B.C.275:16638-166642、2000)。PPARαリガンドは肝臓を初めとする組織の脂肪酸酸化を亢進して脂肪毒性を低下し、グルコース代謝効率を改善し、インスリン抵抗性を解除すると考えられる。
【0075】
PPARγは、脂肪細胞の分化を司るマスターレギュレーターであることが明らかにされている(Cell 79 : 1147-1156, 1994)。従って、PPARγのアゴニストは脂肪細胞の分化を促進するが、このPPARγの活性化によるインスリン抵抗性の改善作用の機序として次のようなことが考えられている。PPARγ活性化によって生じた正常な機能を有する脂肪細胞が糖や遊離脂肪酸を処理する能力が高くなり、血液中の糖および遊離脂肪酸を低下させ、筋肉の遊離脂肪酸の低下とインスリン抵抗性の改善が生じる。更に、脂肪細胞はTNFαやレジスチンなどインスリン抵抗性を増悪させるとされる重要な生理活性メディエーターを分泌するが、PPARγ活性化による脂肪細胞の分化によってこれらの分泌量が減少することが明らかになっている。また、筋肉や肝臓で少量発現するPPARγに対するアゴニストの作用も考えられる。
【0076】
本発明による有効成分を含むエキスはまた、インスリン非依存性糖尿病で発現が増加し、インスリン抵抗性の発症に関わると考えられているレジスチン(Resistin)の発現を遺伝子レベルで抑制する(実施例6参照)。レジスチンとインスリン抵抗性発症との関係はPeraldi P., et al., Mol Cell Biochem. 183,169-175,1998; Steppan C M et al., Nature, 409, 307-312, 2001に報告されている。
【0077】
インスリン抵抗性により高脂血症を発症することが知られている。高脂血症につながる機構は次のように考えられている。インスリン抵抗性は、骨格筋や脂肪組織で生じるが、インスリン抵抗性に伴う耐糖能異常を正常化すべく、生体はすい臓より過剰なインスリンを分泌し、血糖のホメオスタシスを保とうとする。このようにしてもたらされた高インスリン血症は、血圧の上昇や脂質代謝の異常を引き起こす。インスリンは通常は脂肪組織での脂肪の分解を抑制しているが、インスリン抵抗性状態ではこの抑制作用が減弱することにより脂肪分解による遊離脂肪酸の過放出が起きる。過剰の脂肪酸は筋肉での糖の取りこみと分解を抑制し、耐糖能を悪化させる。また、脂肪酸は肝臓にも取りこまれ、肝臓での中性脂肪の合成を高めて、血中へ中性脂肪に富んだVLDLコレステロールの分泌が高まる。高インスリン血症時にはVLDLの過剰な産生が起きる。さらに、インスリン抵抗性下ではリポ蛋白リパーゼ活性が低下するのでVLDLの中性脂肪の水解も低下し、LDLコレステロールの異化異常によって血中のLDLやIDLコレステロール、中性脂肪が増加する。さらに、HDLコレステロールの合成減少と異化の亢進によりHDLコレステロール量の低下も生じることが知られている。
【0078】
インスリン抵抗性と肥満との関連性についても報告がなされている。皮下に蓄積する脂肪より内臓周囲に蓄積する内臓脂肪の蓄積のほうがよりインスリン抵抗性発症に関わるとされる。内臓脂肪から放出される遊離脂肪酸が門脈血領域に過剰に供給されることが肝臓でのインスリン抵抗性、ひいては末梢の骨格筋でのインスリン抵抗性を惹起すると考えられている。
【0079】
本発明による有効成分を含むエキスは実際に血中HDLコレステロール量の増加、血中リン脂質の増加、血中中性脂肪量の減少、動脈硬化指数の改善、腎臓周囲脂肪量の減少、体重増加抑制をもたらした(実施例1〜4参照)。
【0080】
本発明による有効成分を含むエキスは実際に肝β酸化系を遺伝子レベルで亢進した(実施例5参照)。
【0081】
本発明による有効成分を含むエキスはまた、インスリン抵抗性改善作用を示した(実施例7および8参照)。
【0082】
従って、本発明による有効成分並びにホップエキスおよび/または異性化ホップエキスは、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いることができる。
【0083】
PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状としては、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病);糖尿病性合併症(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、および狭心症等の虚血性心疾患;脳梗塞等の脳動脈硬化症;動脈瘤やネフローゼ症候群等の腎疾患;脂肪肝またはそれに伴って生じる肝臓疾患);脂質代謝異常(例えば、高脂血症、動脈硬化症、および脂肪肝)、特に、高脂血症(例えば、高コレステロール血症、低HDL-コレステロール血症、高中性脂肪血症);インスリン抵抗性およびこれに関連する疾患(例えば、高インスリン血症、耐糖性異常);肥満症;および体重増加が挙げられる。
【0084】
本発明による有効成分並びにホップエキスおよび/または異性化ホップエキスはまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身(ダイエット)に用いることができる。
【0085】
インスリン抵抗性改善作用は、具体的にはインスリンの濃度低下、レジスチンの濃度低下、TNFαの濃度低下、耐糖能改善、血中の中性脂肪・遊離脂肪酸濃度低下、脂肪細胞の小型化(正常化)等の作用によるものであり、これらも本発明の用途の一部を構成する。
【0086】
脂質代謝改善作用は、具体的にはHDL血中コレステロール濃度上昇、動脈硬化指数改善、血中の中性脂肪低下、肝臓脂質蓄積抑制等の作用によるものであり、これらも本発明の用途の一部を構成する。そして脂質代謝改善作用により抗動脈硬化作用がもたらされるが、これも本発明の用途の一部を構成する。
【0087】
体重増加抑制作用は、脂肪蓄積抑制、特に、内臓脂肪蓄積抑制の作用によるものであり、これも本発明の用途の一部を構成する。
【0088】
本発明によれば、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0089】
本発明によればまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0090】
本発明によれば更に、PPAR活性化用組成物の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0091】
本発明によれば、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善方法が提供される。
【0092】
本発明によればまた、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身方法が提供される。
【0093】
本発明によれば更に、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化方法が提供される。
【0094】
組成物および食品
本発明による組成物を医薬として提供する場合には、本発明による有効成分またはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを薬学上許容される添加物と混合することにより製造できる。本発明による組成物は、経口投与または非経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。
【0095】
製剤は、例えば、下記のようにして製造できる。
【0096】
経口剤は、有効成分に、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。
【0097】
注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
【0098】
外用剤は、有効成分を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造することができる。例えば、上記固状の組成物は、有効成分をそのまま、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、白糖)、増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体)などを添加、混合して粉状とすることにより製造できる。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様にして製造できる。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟骨状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれもpH調節剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム)などを含んでいてもよい。坐剤は、有効成分を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造できる。該組成物に用いる油性基剤としては、高級脂肪酸のグリセリド〔例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)〕、中級脂肪酸〔例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製)〕、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油)が挙げられる。水性基剤としては、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコールが挙げられる。また、水性ゲル基剤としては、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体が挙げられる。
【0099】
本発明による食品は、本発明による有効成分を有効量含有した飲食品である。ここで「有効成分を有効量含有した」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲で有効成分が摂取されるような含有量をいう。本発明による食品には本発明による有効成分をそのままあるいは上記のような組成物の形態で、食品に配合することができる。より具体的には、本発明による食品は、本発明による有効成分の少なくとも1つあるいは前述するホップの粉砕物若しくは抽出物をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、一般の飲食品へ添加したものであってもよい。
【0100】
本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品を含む意味で用いられる。
【0101】
また「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であってもよい。
【0102】
本発明による有効成分は、インスリン抵抗性改善作用や脂質代謝改善作用、脂肪やコレステロール摂取による内臓脂肪の蓄積や体重増加の抑制作用を有する。このため、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する健康食品や機能性食品、好適にはコレステロールや脂肪を含有する食品等に本発明の有効成分あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを配合することにより、肥満の防止、インスリン抵抗性に合併する高脂血症並びに動脈硬化症の発症の予防および改善、並びに糖尿病予備群のインスリン非依存性糖尿病への移行防止といった機能を併せ持つ食品を提供することができる。すなわち、本発明による食品は、血清コレステロールが高めの消費者に適した食品や血糖値が気になる消費者に適した食品のような特定保健用食品として提供することができる。
【0103】
かかる飲食品として具体的には、飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;ジュースや清涼飲料水、乳飲料等の各種飲料;卵を用いた加工品、魚介類(イカ、タコ、貝、ウナギなど)や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)などを例示することができるが、これらに特に制限されない。
【0104】
本発明による有効成分あるいはホップの粉砕物または抽出物を一般食品の原料に添加配合して食品として加工して用いる場合は、ホップの苦みが飲食品の味に影響しない範囲で用いるか、あるいは苦味がマスクされるような工夫をすることが好ましい。
【0105】
本発明による組成物および食品は、人類が飲食品として長年摂取してきたホップ抽出成分またはその誘導物であることから、毒性も低く、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いられる。本発明による有効成分の投与量または摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明による有効成分を医薬として経口投与する場合、成人1人当たり0.5〜100mg/kg体重(好ましくは1〜50mg/kg体重)、非経口的に投与する場合は0.05〜50mg/kg体重(好ましくは0.5〜50mg/kg体重)の範囲で一日1〜3回に分けて投与することができる。本発明による有効成分と組み合わせて用いる他の作用機序を有する薬剤も、それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜決定できる。また、食品として摂取する場合には、成人1人1日当たり100〜6000mgの範囲、好ましくは200〜3000mgの範囲の摂取量となるよう本発明による有効成分を食品に配合することができる。
【0106】
実施例
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0107】
参考例
イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロンの水溶性エキスからの精製、およびフムロン、コフムロンのホップエキスからの精製例を示す。後述実施例2に記載の水溶性エキスより、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロンについて、分取用HPLC(島津製作所 LC-8ポンプ、PDA連動フラクションコレクターシステム)を用いた精製を行った。条件は、移動層:85%メタノール、15%(1%ギ酸水)、カラム:YMC-ODS-AQ 25X250mm、流速:20ml/分で行った。フムロン、コフムロンについては、実施例2に記載のホップエキスから移動層:67%メタノール、33%(1%ギ酸水)、カラム:YMC-ODS-AQ 25X250mm、流速:20ml/分で精製を行った。分取した画分について酢酸エチルで抽出を行なった後、減圧乾固し重量測定を行った。
【0108】
実施例1
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群9〜10匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー社)をCE2(日本クレア社)、および水を自由摂取させ1週間飼育した。その後、高脂肪・高コレステロール食(Lipids 28, 599-605 1993 Nishinaらの方法に従って作成した餌)を1週間投与した。餌の組成は表1に記す。
【0109】
表 1
無塩バター 15%
スクロース 52.45%
カゼイン 20%
コーンオイル 1%
セルロース 5%
ミネラル 3.5%
ビタミン 1%
塩化コリン 0.25%
シスチン 0.3%
コレステロール 1%
コール酸ナトリウム 0.5%
1週間予備飼育後、1晩絶食を行ない尾静脈よりヘマトクリットチューブを用いて採血を行なった。血漿を得た後に総コレステロール、およびHDLコレステロールをコレステロールC-IIワコー(和光純薬社製)、HDL-コレステロール-テストワコー(和光純薬社製)を用いてそれぞれ添付のマニュアルに従って測定し2群に分割した。1群については上記高脂肪・高コレステロール食にKettleエキス(商品名、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社製)、毬花粉砕物を炭酸ガス抽出し、異性化したエキスであり、イソフムロン類が主成分であるがルプロン類も含まれる)を0.5%(重量%)混餌し自由摂取させた(但し初日は0.2%のみ混餌する餌を与えた)(図中「Kettle」)。もう1群のコントロール群については、餌にセルロースを0.5%(重量%)混餌し自由摂取させた(図中「コントロール」)。餌は2日毎に取り替え、摂食量を記録した。また採血は2週、4週、および解剖時に、それぞれ1晩絶食後に行なった。解剖時のみ採血は腹部大静脈より行ない、2週、4週では尾静脈より行った。総コレステロール、HDL-コレステロールに加え血中中性脂肪についてもトリグリセライドGテストワコー(和光純薬社製)を用いて添付のマニュアルに従って測定した。また総コレステロールよりHDLコレステロールを減じ、これをHDLコレステロールで除した値を動脈硬化指数とした。それぞれの結果を図1〜4に示す。
【0110】
これらの結果から、Kettleエキス投与2週、および4週後においてHDLコレステロールを特異的に上昇させ、結果として動脈硬化指数を減少させることが明らかとなった。また血中中性脂肪は有意な差ではないが、Kettleエキスにより減少する傾向が示された(図4)。
【0111】
解剖時の体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量を図5に示す。腎臓周囲脂肪はヒトにおいて内臓脂肪に相当するとの報告があるが、Kettleエキスにより有意に減少することが明らかになった。また摂食量は2群間で大きな差は観察されないが有意な体重差が認められ、Kettleエキスにより、体重上昇抑制効果が観察されることが明かとなった(図6および7)。
【0112】
また、解剖時に肝臓を取得し、肝臓総コレステロール、中性脂肪、リン脂質含量を測定した。解剖後、肝臓は即液体窒素下で凍結し、その後一部を破砕後取得し、重量で9倍量の生理食塩水下でテフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いて氷冷下破砕した。その後Timothy P. Carr et al.,Clinical Biochemistry 26, 39-42, 1993に記載の方法に従って、脂質を抽出した。即ち1mlの肝臓破砕液に5mlのクロロホルム・メタノール(2:1)を加えて激しく撹拌後、更に亜0.5mlの0.06NH2SO4を加え、再度撹拌した後、遠心しクロロホルム相を抽出した。クロロホルム相の一部について、窒素ガス下で乾固後、リン脂質テストワコー(過マンガン酸塩灰化法)(和光純薬社製)を用いてリン脂質を測定した(図8)。また別のクロロホルム相の一部に1%トライトン-X100を含むクロロホルムを混ぜた後に、窒素ガス下で乾固し、水に懸濁後、上記方法で総コレステロール、中性脂肪を測定した。結果を図9および10にそれぞれ記す。結果Kettleエキスにより有意に肝臓コレステロール、中性脂肪が減少し、リン脂質は有意に上昇することが示された。
【0113】
また日立7170型血漿自動分析装置(日立製作所社製)を使用して、添付のマニュアルに従って、肝臓障害指標となる酵素である、GOT(グルタミック オキサロ トランスアミナーゼ)、GPT(グルタミック ピルビック トランスアミナーゼ)、ALP(アルカリフォスファターゼ)を測定したところ、いずれの数値もKettleエキス投与群で減少しており、肝臓障害が生じていないことを確認した。
【0114】
以上の結果から、高脂肪・高コレステロール食を与えたモデルにおいて、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスは、優れた、血中HDLコレステロール増加作用、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果、脂肪蓄積抑制効果、高脂肪高コレステロール食摂取による体重増加抑制効果、を有することが明かになった。
【0115】
実施例2
C57BL/6マウスを用いて、実施例1の高脂肪・高コレステロール食を与え、2週間の条件で、Kettleエキス(実施例1に記載)の0.2%、0.5%混餌による容量変化による効果、またホップエキス(商品名、CO2 Pure Resin Extract (Hopsteiner社製)、ホップ毬花よりフムロン類とルプロン類を抽出したもの)、水溶性エキス(商品名、ISOHOPCO2N (English Hop Products社製)、ホップ毬花よりフムロン類を抽出後、イソフムロン類に異性化しカリウム塩化したものであり、フムロン類やルプロン類がほとんど含まれていない)の効果について評価を行なった。さらに通常食群としてAIN76A(Dyets社)を自由摂取させる群を設定した。即ち、1群8〜9匹の5週齢C57BL/6NCrj雌をCE2、および水を自由摂取させ1週間飼育した。その後、高脂肪・高コレステロール食(実施例1に記載の方法に従って作成した餌)を1週間投与した。本実施例においては餌は水を加えてペレット状に固形化し冷凍庫に保存したものを使用した。また毎日新しい餌と交換し、摂食量の記録を行なった。1週間予備飼育後、1晩絶食を行ない尾静脈よりヘマトクリットチューブを用いて採血を行ない、総コレステロール、HDL-コレステロールの定量を実施例1の方法に従って行ない、各群で差がないように群分けを行なった。その後、Kettleエキスについては重量比で0.2%、0.5%の2群を(K 0.2、K 0.5)、ホップエキスは0.2%を(H 0.2)、水溶性エキスは1%を(W 1.0)それぞれ高脂肪・高コレステロール食に重量比で混餌したものを作成し自由摂取させた。またコントロールの餌には0.5%セルロースを添加した。1週間後に尾静脈より、非絶食条件下で採血を行ない、2週後に絶食下で腹部静脈より採血を行なった。
【0116】
総コレステロール、HDLコレステロール、動脈硬化指数の結果を図11〜13にそれぞれ示す。Kettleエキス(K 0.2、K 0.5)により容量依存的にHDLが上昇し、動脈硬化指数が改善されることが明らかになった。さらに、異性化されていないホップエキスについても、脂質代謝改善効果を有することが明かになった。またコントロールおよび水溶性エキス(W 1.0)を投与したマウスの血漿150μlについてゲルろ過クロマトグラフィーを実施し、その結果を図14に示す。方法はY. C. HAらの方法に従った(Journal of Chromatography, 341 (1985) 154-159)。即ち、Superose6Bカラム(アマシャムファルマシア社)を用いて、移動相0.15M NaCl、 0.01% EDTANa2、0.02%NaN3、pH7.2で、P-500ポンプ(アマシャムファルマシア社)、流速0.33ml/の条件で行なった。フラクションは0.5mlづつ集めた。各フラクションについて総コレステロールの測定を行なった。
【0117】
その結果、本方法からも水溶性エキスにより、15ml以降に溶出されるHDL画分のみが特異的に上昇することが明かになった。また、1日の1匹あたりの摂食量の変化を図15に、また体重変化を図16に示す。水溶性エキス(W 1.0)を除いて、摂食量に各群で変化がないにも係らず、体重はAIN76A群、コントロール群に比較して有意にKettleエキス(K 0.2、K 0.5)、水溶性エキス(W 1.0)、およびホップエキス投与群(H 0.2)で減少した。
【0118】
以上の結果から、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスに加えて、イソフムロン類が主成分である水溶性エキスやフムロン類とルプロン類を主成分とするホップエキス、いずれについても血中HDLコレステロールの増加作用、動脈硬化指数の低下作用などの脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果を有することが明かになった。
【0119】
実施例3
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雄)を用いて評価を行なった。即ち、1群5〜6匹の5週齢C57BL/6NCrj雄(日本チャールズリバー社より購入)をCE2、および水を自由摂取させて自由摂取させ1週間飼育した。その後、AIN76A(Dyets社)に0.2%コレステロールを添加した餌を先ず作成し、1群については同餌に水溶性エキス(実施例2)を1%添加し(図中「W 1.0」)、もう1群については同餌にKettleエキス(実施例1)を0.2%添加(図中「K 0.2」)し、コントロール群としては0.5%セルロースを添加した餌を実施例2の方法に従って作成し自由摂取させた。毎日の1匹あたりの摂食量と、体重推移を図17および18にそれぞれ示す。摂食量は水溶性エキス(W 1.0)がコントロール群に比較して、上昇傾向にあるものの、体重は解剖前日において有意に減少することが明らかになった。1週間後、1晩絶食後、腹部静脈より全血採血を行ない、実施例1の方法に従い、総コレステロール、HDL-コレステロールの測定を行なった。結果、水溶性エキス(W 1.0)により、HDLコレステロールが特異的に上昇し、動脈硬化指数が有意に減少することが明らかになった(図19〜21)。また肝臓1gあたりのコレステロール量、中性脂肪量、リン脂質を実施例1の方法に従って定量したところ、水溶性エキス(W 1.0)によりコレステロール量、中性脂肪量が有意に減少することが、またKettleエキス(K 0.2)により減少することが明らかになった(図22〜24)。また解剖時の体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量は水溶性エキス(W 1.0)、Kettleエキス(K 0.2)により有意に減少することが、また副精巣周囲脂肪重量は減少傾向にあることが示された(図25)。
【0120】
以上の結果から、低濃度のコレステロールを添加した餌を与えたモデルにおいても、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスとイソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスには、それぞれ優れた血中HDLコレステロール増加作用、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果や内臓脂肪の蓄積抑制効果、体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0121】
実施例4
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群5〜6匹の5週齢C57BL/6NCrj雄(日本チャールズリバー社)をCE2(日本クレア社)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび1%水溶性エキスを添加した餌を与える群、AIN76Aに0.3%セルロースを添加した餌を与える群、AIN76Aに1%水溶性エキスを添加した餌を与える群の4群の設定を行なった。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。1週後非絶食下で解剖を行ない、腹部静脈より全血採血を行ない、総コレステロール、HDLコレステロールを実施例1の方法に従って測定した。有意な差ではないものの、HDLコレステロールの水溶性エキスによる上昇と、それに伴う動脈硬化指数の減少が確認された(図26〜28)。また肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ、水溶性エキスにより、コレステロール非添加条件で、コレステロールの有意な減少を、コレステロール添加条件でコレステロール含量、および中性脂肪含量の有意な減少を確認した(図29〜31)。
【0122】
以上の結果から、コレステロール非添加食においても、イソフムロン類を主成分とする水溶性エキスには、血中HDLコレステロール増加作用、、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果が認められた。
【0123】
実施例5
実施例4において、肝臓は液体窒素を用いて解剖後瞬時に凍結保存を行った。肝臓組織約100mgより、Isogen (ニッポンジーン社製)を用いて、添付のマニュアルに従ってRNAを採取した。分光光度計を用いてRNA量の測定を行った後に、Thermo Script TM RT-PCRシステム(ライフテック オリエンタル社製)を用いて添付のマニュアルに従いoligo dTとアニーリングを行い、同RNAを逆転写し、cDNAを取得した。得られたcDNAについて、Acyl‐CoA oxidase (ACO)についてはセンスプライマーとして、
5’‐ATCTATGACCAGGTTCAGTCGGGG‐3’(配列番号1)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐CCACGCCACTTCCTTGCTCTTC‐3’(配列番号2)、
Acyl‐CoA synthetase (ACS)についてはセンスプライマーとして、
5’‐GGAACTACAGGCAACCCCAAAG‐3’(配列番号3)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐CTTGAGGTCGTCCATAAGCAGC‐3’(配列番号4)、
Fatty acid transpot protein (FATP)についてはセンスプライマーとして、
5’‐TGCTAGTGATGGACGAGCTGG‐3’(配列番号5)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐TCCTGGTACATTGAGTTAGGGTCC‐3’(配列番号6)、
3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A synthase (HMGCS)についてはセンスプライマーとして、
5’‐CCTTCAGGGGTCTAAAGCTGGAAG‐3’(配列番号7)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CAGCCAATTCTTGGGCAGAGTG‐3’(配列番号8)、
3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase (HMGCR)についてはセンスプライマーとして、
5’‐TTGGCCTCCATTGAGATCCG‐3’(配列番号9)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐GATCTTGTTGTTGCCGGTGAAC‐3’(配列番号10)、
Low density lipoprotein receptor (LDLR)についてはセンスプライマーとして、
5’‐CATCAAGGAGTGCAAGACCAACG‐3’(配列番号11)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CACTTGTAGCTGCCTTCCAGGTTC‐3’(配列番号12)、
Apo-AIについてはセンスプライマーとして
5’‐TGTATGTGGATGCGGTCAAAGAC‐3’(配列番号13)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐TCATCTCCTGTCTCACCCAATCTG‐3’(配列番号14)、
Apo-CIIIについてはセンスプライマーとして
5’‐AGGGCTACATGGAACAAGCCTC‐3’(配列番号15)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CGACTCAATAGCTGGAGTTGGTTG‐3’(配列番号16)、
Lipoprotein Lipase (LPL)についてはセンスプライマーとして
5’‐GTTTGGCTCCAGAGTTTGACCG‐3’(配列番号17)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CATACATTCCCGTTACCGTCCATC‐3’(配列番号18)、
cholesterol alpha-7-hydroxylase (CYP7A1)についてはセンスプライマーとして
5’‐ACGGGTTGATTCCATACCTGGG‐3’(配列番号19)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐TGTGTCCAAATGCCTTCGCAG‐3’(配列番号20)、
をそれぞれ用いて測定した。内部標準遺伝子としてはacidic ribosomal phosphoprotein PO(酸性リボゾーム蛋白質 36B4)遺伝子を使用した。36B4について、センスプライマーとしては
5’‐CCAAGCAGATGCAGCAGATCC‐3’(配列番号21)、
アンチセンスプライマーとしては、
5’‐CAGCAGCTGGCACCTTATTGG‐3’(配列番号22)
を使用した。ライトサイクラー(ロシュ社製)、および反応キットとしてはFastStart DNA Master SYBR Green I(ロシュ社製)を用いて、添付のマニュアルに従ってcDNAを基に各mRNAの定量を行った。コレステロール添加条件下における水溶性エキス添加条件下での内部標準に対する発現量を1とした各遺伝子の発現結果を図32に示す。2元配置分散分析を行ったところ、ACO、ACS、FATP、Apo-AI、Apo-CIII、LPLについて水溶性エキスについて相関関係が確認された。これらの遺伝子はPPARαのリガンドであるフェノフィブレート投与によっても同様の発現変動を示すことが報告されている(最新・分子動脈硬化学 森崎信尋ら メディカルレビュー社、J. Clin. Invest. 1996. 97:2408-2416、Laurence Berthouら)。
【0124】
以上の結果から、イソフムロン類の摂取による脂質代謝改善作用は、肝β酸化系の亢進によって引き起こされることが示唆されたが、この遺伝子発現変動はイソフムロン類によるPPARαアゴニスト作用によって生じる可能性が考えられる。
【0125】
実施例6
インスリン抵抗性改善効果について、KKAyマウス(雄)を用いて評価を行った。即ち、1群8〜9匹の5週齢 KKAy/Ta Jcl(日本クレア社)を、CE-2(日本クレア社)および水を自由摂取させて1週間馴化飼育を行った。その後、精製原料を使用して作成したAIN93(アメリカ国立栄養研究所による標準組成)粉末飼料での飼育に切り替えた。実験群としては対照群(AIN93)、KettleエキスをAIN93に0.1および0.6%(重量%)添加した群(K0.1、K0.6群)、ピオグリタゾン(商品名アクトス、武田社製)粉末を0.05%(重量%)添加した群(Pio群)、水溶性エキスを1.2%(重量%)添加した群(W群)を設定した。水溶性エキス混餌は粉末飼料にエキス希釈水を加え、成形して使用した。対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群については粉末飼料5gを毎日与えた。この量は1日で各個体が食べきれる量であり、本給餌方法により各群間の摂餌量を一定にすることが出来る。W群については自由摂取条件とした。飲水量は毎週測定した。飼育開始後2週および4週目に15時間程度の絶食を行い、その後尾静脈より採血し、血中の中性脂肪および遊離脂肪酸濃度を測定した。中性脂肪はリピドスリキッド(東洋紡社製)を、遊離脂肪酸はNEFA C-テストワコー(和光純薬社製)を用いて測定した。4週目採血時には絶食時の血糖値測定も実施した。飼育5週目には対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群、W群に対して10gの給餌を1回行い、翌日に尾静脈より採血し非絶食時の血糖値を測定した。血糖値測定はグルテストセンサー(三和化学研究所社製)を使用した。飼育6週目には対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群、W群に対して10gの給餌を行い、非絶食条件下で解剖を行い、副精巣周囲脂肪組織採取および腹部大静脈より全採血を実施した。解剖時血液についても血中中性脂肪および遊離脂肪酸濃度を測定した。副精巣周囲脂肪からはISOGEN(ニッポンジーン社製)を使用してトータルRNAを調製した。調製したトータルRNAを用いて定量RT-PCR法によりResistin遺伝子の発現量を測定した。逆転写反応はサーモスクリプトRT-PCRシステム(Gibco BRL社製)を用いて行い、定量PCRはLightCycler(Roche社)およびLightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche社製)を使用した。使用したプライマーの配列は
5' -CGTGGGACATTCGTGAAGAAAAAG-3'(配列番号23)
5'- TGTGCTTGTGTGTGGATTCGC-3'(配列番号24)
である。Resistin発現量は、酸性リボソーム蛋白質36B4のプライマー
5' - CCAAGCAGATGCAGCAGATCC -3'(配列番号25)
5'- CAGCAGCTGGCACCTTATTGG -3'(配列番号26)
を用いた時の測定値で標準化を行った。飼育期間中の1日当りの飲水量を図33に示した。インスリン抵抗性が惹起し高血糖を発症したKKAyマウスは飲水量が多くなり、抵抗性が改善したマウスでは減少することが知られている(Biosci. Biotech. Biochem., 60(2), 204-208, 1996, Kakudaら)が、K0.6群やW群でも糖尿病改善薬投与群であるPio群と同様の飲水量減少が確認された。5週目非絶食時および4週目絶食時の血糖値を図34および35に示した。K0.6群およびW群ではPio群と同様に非絶食時、絶食時血糖値が共に対照群よりも有意に低下していた。飼育2週目、4週目の絶食時および6週目(解剖時)非絶食時の血中遊離脂肪酸濃度および血中中性脂肪濃度をそれぞれ図36および37に示した。これら血中脂質濃度はK0.1、K0.6、Wの各群で対照群よりも有意に低下していた。図38に示した様に、Resistin遺伝子の発現量はK0.6群、W群で対照群よりも有意に低下していた。
【0126】
以上のように図33〜38に示した結果は全てKKAyマウスのインスリン抵抗性が、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスとイソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスによって軽減したことを示しており、これらエキスに著明なインスリン抵抗性改善作用があることが明らかになった。
【0127】
実施例7
5週齢のKKAyマウスを1週間馴化飼育(実施例6に記載)後、標準飼料(実施例6に記載)を投与する対照群およびKettleエキス0.6%混餌(実施例6に記載)を投与するK0.6群をそれぞれ1群6匹で設定し、餌および水自由摂取条件下で12週間飼育を行った。12週目に5時間の絶食を行い、耐糖能試験を以下の要領で実施した。即ちグルコース投与前に0分時の血糖値を実施例6と同様の方法で測定した。その後、投与グルコース量が体重1kg当り2gになる様に20%(w/v)グルコース水溶液を経口ゾンデを用いて各個体に投与し、15分、30分、60分、120分後にそれぞれ血糖値を測定した。インスリン感受性試験は耐糖能試験実施1週間後に以下の要領で実施した。即ちインスリン投与前に非絶食条件下のマウスの0分時血糖値を、採取した血液を生理食塩水で2倍に希釈した後、耐糖能試験と同様に測定した。その後投与インスリン量が体重1kg当り0.75Uになる様に、生理食塩水で75mU/mlに調製したブタインスリン溶液を腹腔内に投与した。投与後15分、30分、60分、120分、180分後にそれぞれ血糖値を測定した。
【0128】
図39に示した様に、K0.6群では対照群に比べて耐糖能が改善していることが明らかになった。さらに図40に示した様に、重度のインスリン抵抗性を示す対照群と比較して、K0.6群では抵抗性が改善している傾向が観察された。以上の結果から、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスにはインスリン抵抗性改善作用があることが明らかになった。
【0129】
実施例8
C57BL/6に高脂肪食負荷すると、肥満および高血糖を呈する事が知られている(Ikemotoら、Metabolism, 45 (12), 1539-46, 1996)。そこで食餌由来のインスリン抵抗性発現に対するホップエキスの作用を検討した。即ち、1群8匹の5週齢C57BL/6 NCrj(日本チャールズリバー社)を、CE-2(日本クレア社)および水を自由摂取させて1週間馴化飼育を行った。その後、精製原料を使用して作成した高脂肪飼料(表2)での飼育に切り替えた。
【0130】
表2 高脂肪飼料組成(数値は重量%)
―――――――――――――――――――――――
Safflower oil 33.5
Casein 29.0
Sucrose 23.3
Vitamin mix(オリエンタル酵母社製) 1.45
Mineral mix(オリエンタル酵母社製) 5.08
Cellulose powder 7.25
L-cystin 0.44
―――――――――――――――――――――――
実験群としては高脂肪食給餌群および、高脂肪食にKettleエキスを0.3%(重量%)添加した群(K群)、水溶性エキスを0.6%(重量%)添加した群(W群)を設定した。飼料および飲料水は飼育期間中自由摂取とし、飼料は毎日新しいものに交換した。飼育開始後毎週体重測定を実施した。図41に示した様に、K群、W群では対照群に比べて体重増加が緩やかであった。また、飼育開始後60日目以降に1日当りの摂餌量を測定(6回)したところ、図42に示した様に各群で摂餌量に有意差が認められなかった。以上の結果から、ホップエキス中に高脂肪食負荷による肥満を抑制する作用があることが確認された。更に飼育開始後84日目に、対照群およびW群の2群について、各4個体を用いて耐糖能試験を実施した。方法は実施例7に記述した方法で行った。耐糖能試験の結果、図43に示した様にW群で最高血糖値、120分後血糖値のいずれも対照群よりも低かった。
【0131】
以上の結果から、イソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスには耐糖能増悪を改善する作用もあることが確認された。
【0132】
実施例9
PPARγ アゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0133】
ヒトPPARγ発現プラスミドの構築のために、human heart cDNA library(Gibco社製)からPPARγORFをクローニングした。クローニングしたORFはシークエンスを確認後、発現ベクターpCI neo(Promega社製)のNheI-SalI部位に接続した。クローニングに使ったプライマーの配列は次の通り。
【0134】
5’ GCTAGCATGGTGGACACGGAAAGCCC 3’(配列番号27)
5’ GTCGACAGTACATGTCCCTGTAGATCTC 3’(配列番号28)
次にレポータープラスミド構築のために、PPREを3回繰り返したオリゴDNAを作製し、ホタルルシフェラーゼレポーターベクターpGL3-promoter vector(Promega社製)のKpnI-BglII部位に挿入後、シークエンスを確認した。PPREを含むオリゴDNAの配列は以下の通り。
【0135】
5’CAGGGGACCAGGACAAAGGTCACGTTCGGGAAGGGGACCAGGACAAAGGTCACGT 3’(配列番号29)
5’GATCTTCCCGAACGTGACCTTTGTCCTGGTCCCCTTCCCGAACGTGACCTTTGTC 3’(配列番号30)
以上のプラスミドを補正用ウミシイタケルシフェラーゼレポーターベクターpRL-SV40 vector(Promega社製)と共にCV-1細胞にLipofect AMINE(Gibco社製)を用いてトランスフェクションした。CV-1はトランスフェクション前日に10% 牛胎仔血清(Gibco社製)、ペニシリン・ストレプトマイシン(それぞれ10000単位、1mg/ml、Gibco社製)を含有するDMEM(Gibco社製)2mlを入れた12穴プレートで、5×104 cells / mlの濃度で、37℃、5%CO2条件下で培養したものを用いた。トランスフェクション後、ポジティブコントロールはピオグリタゾン(武田社製)1μMを含む前述のDMEM培地で培養した。48時間培養後、細胞を回収し、Dual-Luciferase reporter assay system(Promega社製)でライセートを作製し、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Luminous CT-9000D, DIA-IATRON社)で測定した。ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性で割った値を相対ルシフェラーゼ活性とした。
【0136】
上述のアッセイ系を使用して一連のフムロン化合物(フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン)のPPARγ / RXR alpha活性化作用について検討した。それぞれ1、5、10、50μMの濃度で検討した結果、全てのフムロン化合物において活性が確認され、概ねその活性は10μMの時、ピオグリタゾン1μMに相当した(図44)。さらにテトラハイドロイソフムロンについても同様の活性が認められた(図45)。
【0137】
実施例10
融合蛋白質からなるPPARγ アゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0138】
ヒトPPARγ発現プラスミドの構築のために、human heart cDNA library(Gibco社製)からPPARγリガンド結合領域(LBD; 204a.a.-505a.a.)をクローニングした。クローニングしたORFはシークエンスを確認後、発現ベクターpBind(Promega社製)のBamHI-KpnI部位に接続し、PPARγと酵母Gal4タンパク質との融合タンパク質を発現するベクター、pGR-Gal4-PPARγを構築した。クローニングに使用したプライマーの配列は次の通りである。
【0139】
5’ GGATCCTTTCTCATAATGCCATCAGGTTTG 3’(配列番号31)
5’ GGTACCTTCCGTGACAATCTGTCTGAG 3’(配列番号32)
次に、pBindのGal4領域のN末端側にhuman Glucocorticoid receptor(GR)のN末端側配列(1a.a.-76a.a.)をGal4と読み枠が一致する様に接続した。 GRはheart cDNA library(Gibco社製)からPCRによりクローニングした。クローニングに使用したプライマーの配列は以下の通りである。
【0140】
5’ GCTAGCATGGACTCCAAAGAATCATTAAC 3’(配列番号33)
5’ TGGCTGCTGCGCATTGCTTA 3’(配列番号34)
レポータープラスミドとして、プロモーター領域にGal4結合サイトが5コピー導入されたホタルルシフェラーゼ発現ベクターであるpG5luc(Promega社製)を用いた。pGR-Gal4-PPARγとpG5lucをCV-1細胞にLipofectAMINE(Gibco社製)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション後検体または対照(ピオグリタゾン)を添加した培地(DMEM、Gibco社製)に交換し、48時間培養後に細胞を回収した。細胞回収後Dual-Luciferase reporter assay system(Promega社製)で細胞溶解液を作製し、ホタルルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Luminous CT-9000D, DIA-IATRON社)で測定した。また、細胞溶解液のタンパク質濃度をDc Protein asssay (BIO-RAD)により測定し、ホタルルシフェラーゼ活性の値をタンパク質濃度で標準化した。結果は、陰性対照の値を1としたときの相対値で表記した。
【0141】
上述のアッセイ系を使用して、Kettleエキスおよび一連のフムロン化合物(フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソコフムロン)のPPARγ活性化作用について検討した。Kettleエキスは0.05、0.5、5μg/mlで、フムロン化合物はそれぞれ1、3、10μMの濃度で検討した結果、実施例9と同様に、試験を行った全ての試料において活性が確認された(図46)。
【0142】
実施例11
PPARαアゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0143】
PPARαについても、以下に記述した点以外は全てPPARγの場合と同様にスクリーニング系を構築した。クローニングに用いたプライマーの配列は以下の通りである。
【0144】
5’ GGATCCTTTCACACAACGCGATTCGTTTTG 3’(配列番号35)
5’ GGTACCGTACATGTCCCTGTAGATCTC 3’(配列番号36)
トランスフェクションもPPARγの系と同様に実施したが、PPARαの場合、対照にWy 14,643 (和光純薬社製)を使用した。
【0145】
上述のアッセイ系を用いて、水溶性エキスを50、100、500μg/mlの濃度で検討した結果、50、100μg/mlのときに水溶性エキスのPPARα活性化能が確認された(図47)。
【0146】
実施例12:食品への配合例
砂糖650gに水飴300gを150℃で加熱融解し、120℃に冷却後、クエン酸10gを加えた後に、実施例2に記載の水溶性エキスを30g、香料10gを添加後、撹拌し、均一化した後に、成形し、冷却してキャンディーを得た。
【0147】
実施例13
分画したシスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、およびトランスイソコフムロンを含有する画分の脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、水溶性エキス(実施例2記載)より、同エキスに含まれる、シスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、トランスイソコフムロンからなる画分(以下、「精製イソフムロン類画分」という)の分画を行った。水溶性エキスを塩酸で中和した後、凍結乾燥し、凍結乾燥物 3.5gをシリカゲルクロマトグラフィー(3.5×33cm)で分画した。カラムはヘキサン:酢酸エチル(2:1)で平衡化し、溶出した。溶出液を20mlずつフラクションコレクターで分取し、HPLCで純度を確認した(分析条件は参考例に記載)。24番目から60番目のフラクションを集め遮光下、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固することにより、シスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、およびトランスイソコフムロンからなる精製イソフムロン類画分1gを得た。該画分の組成比は、HPLCのクロマトグラムの面積比に基づけば、イソコフムロン(シス型+トランス型):イソフムロン(シス型+トランス型):イソアドフムロン((シス型+トランス型)=50.2:27.1:22.7であった。1群8匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー)をCE2(日本クレア)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群(以下「C群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび1%水溶性エキスを添加した餌を与える群(以下「W群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび上記精製イソフムロン類画分を0.3%添加した餌を与える群(以下「IH群」とする;本餌に含まれるイソフムロン類の含量とW群の餌に含まれるイソフムロン類の含量はほぼ等量である)の3群の設定を行った。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。尚本実験においては個別飼育を行い、毎日3.5gの餌を与えた。又ふるいを使用することにより食べ残した餌量の測定も行い、摂食量についてはその値を減じて計算した。1週後非絶食下で解剖を行ない、腹部静脈より全採血を行ない、中性脂肪の測定を実施例1の方法に従って測定した(図48)。IH群およびW群のいずれにおいても有意に血中中性脂肪量を低下させた。また肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ(図49〜51)、IH群、W群のいずれにおいても、コレステロール含量の有意な低下、および中性脂肪含量の減少傾向を確認した。また体重推移を図52に、また摂取カロリーあたりの体重増加量を図53に示す。W群において、有意な体重の低下、およびIH群において摂取カロリーあたりの体重増加が有意に少ないことが示された。以上の実施例より、精製イソフムロン類画分は、脂質代謝改善効果、血漿の中性脂肪低下効果、肝臓へのコレステロールの蓄積防止効果、および体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0148】
実施例14
分画したルプロンの脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、ホップペレット(CASペレット、チェコスロバキア国、ザーツ産)より、ルプロンの精製を行った。約2.5kgのホップペレットを4リットルの酢酸エチルで3回抽出を行い、減圧濃縮を行い濃緑色のエキスを得た(329.17g)。同エキスのうち262.7gからシリカゲルカラムにより分画を行った。カラムはヘキサン−酢酸エチルの混液を用いてステップワイズで溶出させ、15個のフラクションを得た。3番目のフラクション(41.8g)についてシリカゲルカラムを用いて再度分画を行い、ヘキサン:酢酸エチル(20:1)溶液で溶出したフラクションを再結晶し、ルプロン(1.88g、白い針晶、収量約0.094%)を得た。また1群8匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー)をCE2(日本クレア)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群(以下「C群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよびルプロンを0.3%添加した餌を与える群(以下「L群」とする)の2群の設定を行った。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。試験食投与1週後、非絶食下で解剖を行なった。肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ(図54〜56)、L群においてコレステロール含量の有意な低下を確認した。また体重推移を図57に、また摂取カロリーあたりの体重増加量を図58に示す。L群において、有意な体重の低下、および摂取カロリーあたりの体重増加が有意に少ないことが示された。以上の実施例より、ルプロンは、脂質代謝改善効果、肝臓へのコレステロールの蓄積防止効果、および体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0149】
実施例15
C57BL/6に実施例8に示した高脂肪食を12週間摂取させ、インスリン抵抗性を惹起させたマウスに対して、水溶性ホップエキスを10日間連続経口投与(100、330mg/kg/day)を実施した。投与終了後、16時間絶食の後に耐糖能試験(OGTT)を実施した。また、参考例に記載した方法に従って調製したイソコフムロンの精製品(シス体とトランス体の混合物)を同じくインスリン抵抗性を惹起させたマウスに対して、10日間連続経口投与(10、30mg/kg/day)実施した。それぞれ投与終了後、16時間絶食の後に耐糖能試験(OGTT)を実施した。OGTTは、採血および血糖値測定後にグルコース水溶液を1g/kgで投与し、15、30、60分で採血および血糖値の測定を、120分で血糖値測定を行った。経時的な血中インスリン濃度変化をインスリン測定キット(森永生科学研究所)を用いて測定した。
【0150】
水溶性エキス投与群の血糖値とインスリン濃度の変動を図59および60に示した。水溶性エキス投与群(図中「W群」と表記)では耐糖能、インスリン抵抗性の改善が認められた。精製したイソコフムロン投与群(図中「IH群」と表記)の血糖値とインスリン濃度の変動を図61および62に示した。精製イソコフムロン投与群でも水溶性エキス投与群と同様、耐糖能の改善が認められた。さらに、インスリン濃度についてもブドウ糖投与前の濃度が有意に低下し、その後の濃度についても低下傾向が認められたことから、インスリン抵抗性の改善が示唆された。以上の結果から、10日間のホップエキス短期投与によって高脂肪食負荷マウスのインスリン抵抗性が改善すること、またその作用はイソコフムロン精製品についても同様に認められること、が確認された。
【0151】
実施例16
ApoEノックアウトマウス(Jackson laboratoryより輸入)、雄8週齢を18匹購入し、実施例1、表1に記載の高脂肪・高コレステロール食摂取下で、水溶性エキス群(実施例2に記載)(W)およびコントロール群(C)に9匹づつ群分けし、10週間飼育を行った。10週間経過後、エーテル麻酔下、腹部大静脈より脱血により屠殺した。肝臓、脂肪等の臓器を取得後、肝臓については液体窒素で瞬時に凍結した。また心臓を付けた状態で大動脈を摘出した。大動脈については、胸部大動脈と腹部大動脈を展開したまま10%ホルマリン液で固定を行い、その後Oil−red−O染色を行った。大動脈弓、大動脈弁については10%ホルマリン液に浸漬固定後、輪切り状態でパラフィン包埋し、薄切後、Hematoxylin EosinおよびElastica Van gieson染色を行った。Oil−red−O染色を行った胸部大動脈、腹部大動脈の粥状硬化病巣面積、血管総面積、EVG染色を行った大動脈弓、大動脈弁の断面内膜面積、および断面総面積の解析は微小計測用タブレット・メジャーユニット VM−30(オリンパス光学)を用いて行った。結果の算出は胸部大動脈、腹部大動脈のそれぞれについて粥状硬化病変面積率(=Oil−red−O濃染面積÷血管総面積×100)、大動脈弓、大動脈弁のそれぞれについて内膜肥厚度(=内膜面積÷中膜面積、より詳しくは=内膜断面積÷(内膜〜中膜断面積−内膜断面積))を算出した。血漿中のホモシステイン量について、ホモシステイン測定試薬(ユニチカ社)を用いて添付のマニュアルに従って測定した。肝臓中性脂肪については実施例1の方法に従って測定した。
【0152】
その結果、胸部大動脈粥状硬化巣面積(図63)、腹部大動脈粥状硬化巣面積(図64)、大動脈弓内膜肥厚度(図65)、大動脈弁内膜肥厚度(図66)のいずれも水溶性エキス(W)により減少が観察された。併せて解剖時の体重(図67)、および腹腔内脂肪重量(図68)はW群で有意に低く、また肝臓の中性脂肪含量の減少が観察された(図69)。さらに血漿中のホモシステイン量が水溶性エキス(W)により減少することが示された(図70)。
【0153】
以上から、イソフムロン類を主成分とする水溶性エキス(W)は優れた抗動脈硬化作用効果、脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果、内臓脂肪の蓄積抑制効果を有することが明らかになった。
【0154】
実施例17
ホップエキスおよび水溶性エキスの大腸粘膜への影響について評価を行った。指標としてはFischer344ラット(雄)における、大腸粘膜のPGE2産生量を用いた。具体的には4週齢のFischer344雄ラット(日本チャールスリバー社)をAIN−76A(実施例3に記載)および水を自由摂取させ、3日間飼育し、馴化させた。その後、5週齢より、1群当たり4匹ずつ合計3群に群分けし、試験食投与を開始した。即ち、1群はAIN−76A群(C)、2群はAIN−76Aに1%のホップエキス(実施例2に記載)を添加した群(H)、3群はAIN−76Aに1%水溶性エキス(実施例2に記載)を添加した群(W)である。1週後、解剖を行い、大腸を摘出し、生理食塩水にて腸内容物を洗浄後、縦方向に切り開いた。この大腸の粘膜組織をスライドグラス(マツナミ)により削り取り、500μlのPBSに懸濁させた。本粘膜組織をホモジナイザーにより破砕し、10000gで5分間遠心し、上清をPGE2測定に供した。PGE2測定は、プロスタグランジンE2エンザイムイムノアッセイシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社、製品コードRPN222)を使用し、その操作手順に従い定量を行った。
【0155】
その結果、ホップエキス1%混餌投与群(H)に有意なPGE2産生量の増加を確認したが、水溶性エキス1%混餌投与群(W)には有意なPGE2産生量の増加は認められなかった(図71)。また、ホップエキス1%混餌投与群(H)には盲腸の肥大および下痢の症状が認められた。
【0156】
以上から、高濃度で摂取した場合、フムロン類を主成分とするホップエキスを投与した場合に観察される炎症がイソフムロン類を主成分とする水溶性エキスを投与した場合には認められないことが明らかになった。
【0157】
本発明は下記の通りである。
(1) 式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、または式(V)の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬組成物。
(2) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(1)に記載の医薬組成物。
(3) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物。
(4) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化組成物。
(5) 食品の形態で提供される、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
(6) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品。
(7) 健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または病者用食品である、(6)に記載の食品。
(8) 飲料の形態で提供される、(6)または(7)に記載の食品。
(9) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(10) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(9)に記載の使用。
(11) インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(12) PPAR活性化用組成物の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(13) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善方法。
(14) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(13)に記載の方法。
(15) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身方法。
(16) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、PPAR活性化方法。
(17) 有効成分が食品の形態で投与される、(13)、(15)、または(16)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】実施例1における、血中総コレステロール濃度の推移を示した図である。図中の*;危険率5%以下を示すものである(以下同様)。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図2】実施例1における、血中HDLコレステロール濃度の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図3】実施例1における、動脈硬化指数の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図4】実施例1における、血中中性脂肪濃度の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図5】実施例1における、体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量を示した図である。
【図6】実施例1における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図7】実施例1における、マウスの体重推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図8】実施例1における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図9】実施例1における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図10】実施例1における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)をを示した図である。
【図11】実施例2における、血中総コレステロール濃度の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図12】実施例2における、血中HDLコレステロール濃度の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図13】実施例2における、動脈硬化指数の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図14】実施例2における、リポタンパク質の分布を示した図である。コントロール群および水溶性エキス投与群のマウスの血漿をゲルろ過により分析した。水溶性エキスにより、HDL画分の特異的な上昇が示されている。
【図15】実施例2における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。
【図16】実施例2における、マウスの体重推移を示した図である。
【図17】実施例3における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。
【図18】実施例3における、マウスの体重推移を示した図である。
【図19】実施例3における、解剖時の血中総コレステロール濃度を示した図である。
【図20】実施例3における、解剖時の血中HDLコレステロール濃度を示した図である。
【図21】実施例3における、解剖時の動脈硬化指数を示した図である。
【図22】実施例3における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図23】実施例3における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)を示した図である。
【図24】実施例3における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図25】実施例3における、体重1kgあたりの臓器周囲(副精巣周囲および腎臓周囲)脂肪重量を示した図である。
【図26】実施例4における、解剖時血中総コレステロール濃度を示した図である。
【図27】実施例4における、解剖時血中HDLコレステロール濃度を示した図である。
【図28】実施例4における、解剖時動脈硬化指数を示した図である。
【図29】実施例4における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図30】実施例4における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)を示した図である。
【図31】実施例4における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図32】実施例5における、各遺伝子の酸性リボゾーム蛋白質36B4遺伝子に対する相対発現量を示した図である。
【図33】実施例6における、1日あたりのマウスの飲水量を示した図である。
【図34】実施例6における、5週目非絶食時の血糖値を示した図である。
【図35】実施例6における、4週目絶食時の血糖値を示した図である。
【図36】実施例6における、飼育2週目、4週目の絶食時、および6週目(解剖時)非絶食時の血中中性脂肪濃度を示した図である。
【図37】実施例6における、飼育2週目、4週目の絶食時、および6週目(解剖時)非絶食時の血中遊離脂肪酸濃度を示した図である。
【図38】実施例6における、解剖時副精巣周囲脂肪におけるレジスチン遺伝子の酸性リボゾーム蛋白質36B4に対する相対発現量を示した図である。
【図39】実施例7における、耐糖能試験の結果を示した図である。
【図40】実施例7における、インスリン感受性試験の結果を示した図である。
【図41】実施例8における、体重増加の推移を示した図である。
【図42】実施例8における、1日あたりの餌の摂食量の推移を示した図である。
【図43】実施例8における、耐糖能試験の結果を示した図である。
【図44】実施例9における、フムロン類およびイソフムロン類のPPARγ活性を示した図である。
【図45】実施例9における、テトラハイドロイソフムロンのPPARγ活性を示した図である。
【図46】実施例10における、ホップエキス、フムロン類およびイソフムロン類のPPARγ活性を示した図である。
【図47】実施例11における、水溶性ホップエキスのPPARα活性を示した図である。
【図48】実施例13における血中中性脂肪濃度(mg/dl)を示した図である。
【図49】実施例13における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg/g)を示した図である。
【図50】実施例13における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg/g)を示した図である。
【図51】実施例13における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg/g)を示した図である。
【図52】実施例13における、体重の推移を示した図である。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキス投与群(W群)を、三角形が精製したイソフムロン類投与群(IH群)をそれぞれ示す。
【図53】実施例13における、カロリーあたりの体重増加量を示した結果である(g/kcal)。
【図54】実施例14における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg/g)を示した図である。
【図55】実施例14における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg/g)を示した図である。
【図56】実施例14における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg/g)を示した図である。
【図57】実施例14における、体重の推移を示した図である。菱形がコントロール群(C群)を、四角形がルプロン投与群(L群)をそれぞれ示す。
【図58】実施例14における、カロリーあたりの体重増加量を示した結果である(g/kcal)。
【図59】実施例15における、水溶性ホップエキス投与実験群のOGTTの際の血糖値変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキスを100mg/kg/day投与した群(W100群)を、三角形が水溶性エキスを330mg/kg/day投与した群(W330群)をそれぞれ示す。
【図60】実施例15における、水溶性ホップエキス投与実験群のOGTTの際の血中インスリン濃度変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキスを100mg/kg/day投与した群(W100群)を、三角形が水溶性エキスを330mg/kg/day投与した群(W330群)をそれぞれ示す。
【図61】実施例15における、精製イソコフムロン投与実験群のOGTTの際の血糖値変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が精製したイソコフムロンを10mg/kg/day投与した群(IH10群)を、三角形が精製したイソコフムロンを30mg/kg/day投与した群(IH30群)をそれぞれ示す。
【図62】実施例15における、精製イソコフムロン投与実験群のOGTTの際の血中インスリン濃度変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が精製したイソコフムロンを10mg/kg/day投与した群(IH10群)を、三角形が精製したイソコフムロンを30mg/kg/day投与した群(IH30群)をそれぞれ示す。
【図63】実施例16において解析した胸部大動脈粥状硬化病巣の面積(%)を示した図である。
【図64】実施例16において解析した腹部大動脈粥状硬化病巣の面積(%)を示した図である。
【図65】実施例16において解析した大動脈弓内膜肥厚度を示した図である。
【図66】実施例16において解析した大動脈弁内膜肥厚度を示した図である。
【図67】実施例16において測定した解剖時の体重(g)を示した図である。
【図68】実施例16において測定した解剖時の腹腔内脂肪重量(g)を示した図である。
【図69】実施例16において解析した解剖時の肝臓中性脂肪含量(mg/g)を示した図である。
【図70】実施例16において解析した解剖時の血漿ホモシステイン量(nM/L)を示した図である。
【図71】実施例17において解析した大腸のPGE2産生量を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体:peroxisome proliferator-activated receptor)アゴニスト活性を有する薬剤に関し、より詳細にはインスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる薬剤に関する。本発明はこれらの薬剤を配合してなる食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化が進むにつれて、国民一人あたりの脂肪摂取量も上昇し、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの生活習慣病と呼ばれる疾患が急激に増えている。これらの疾患はお互いに合併し易く、その根底にはインスリン抵抗性の存在が大きく関与するとされている。
【0003】
山田らにより報告されている様に、耐糖能に異常を示す患者の多くは高中性脂肪血症、高コレステロール血症、低HDL−コレステロール血症を合併する事が多い(Diabetes Care 17:107-114,1994)。Reavenはインスリン抵抗性に起因する耐糖能障害、高血圧、高VLDL−コレステロール血症、低HDL−コレステロール血症を有するものをシンドロームXと呼び、この改善が脳血管障害、冠動脈疾患予防には重要だとしている(Diabetes 37:1595-1607, 1988)。この様に糖尿病・高脂血症・高血圧などのいわゆる成人病は、一人の患者に重積しやすく、これらは脳血管障害、冠動脈疾患の原因としてマルチプルリスクファクターと呼ばれる。
【0004】
インスリン抵抗性に起因する糖尿病患者およびその予備群とされる人の総数は日本では1300万人を超えるとされ、その数は増加の一途をたどっている。インスリン抵抗性による過剰なインスリン分泌は脂質代謝の異常によるLDLコレステロールや中性脂肪の増加、高血圧などを引き起こすとされる。また、糖尿病による血糖値の上昇は神経障害や網膜症、腎臓障害などの合併症を引き起こす。このため、インスリン抵抗性や高血糖を改善する薬剤の開発が重要となっている。インスリン抵抗性改善薬としてはチアゾリジン誘導体等の薬剤が知られているが、長期の服用による体脂肪の増加などの副作用も報告されており、新たな薬剤開発が必要である。また、インスリン抵抗性の発症が生活習慣と密接に関連している性質上、日常の食事で改善作用をもつ飲食品を継続的に摂取できることも望ましい。
【0005】
脂質代謝異常は、インスリン抵抗性によってだけでなく脂肪やコレステロールの過剰摂取によっても生じる。血中のLDLコレステロールや中性脂肪量の増加とHDLコレステロール量の低下は、いずれも動脈硬化を引き起こす原因となる。虚血性心疾患、脳血管障害を含めた動脈硬化症による死亡率は悪性腫瘍(がん)の死亡率を上回っており、若年相における脂肪摂取量の増加と全年齢における動物性脂肪の摂取量の増加が著しいことから、将来的に動脈硬化症による死亡率がさらに上昇することが予想される。このような状況下、脂質代謝改善効果、脂肪蓄積抑制効果、さらには、末梢組織からの過剰なコレステロール引きぬく作用を有する善玉コレステロールであるHDLを上昇させる効果を有する、医薬品、飲食品が強く望まれている。従来、脂質代謝改善剤としてリノール酸等の多価不飽和脂肪酸を摂取する方法や、フィブレート製剤やニコチン酸等を用いる方法が知られていた。しかしながら多価不飽和脂肪酸の摂取は長期連用が必要な上、過剰摂取に問題があり、フィブレート製剤は筋痙攣等の副作用があり、またニコチン酸にも全身紅潮や胃腸障害等の副作用があると言う難点がある。
【0006】
インスリン抵抗性や脂質代謝異常等の病態を改善する薬剤として、チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン、トログリタゾンなど)やフィブレート製剤(フェノフィブレートやベザフィブレートなど)があり、これらはPPARのアゴニストとして作用することが明らかにされている。前者は主に脂肪組織に分布するγ型(以下「PPARγ」という)を、後者は肝臓、腎臓、心臓、消化管に存在するα型(以下「PPARα」という)をターゲットとして作用する。
【0007】
ところで、ホップはヨーロッパ原産のクワ科多年草(学名:Humulus luplus)であり、その毬果(雌花が成熟したもの)を一般にはホップと呼びビールの苦味、香りづけに用いられることで有名であり、長く人々が摂取してきている。これらの苦味、香りは、ホップのルプリン部分(毬果の内苞の根元に形成される黄色の顆粒)よりもたらされる。ホップはまた、民間薬としても用いられており、その効用は、鎮静効果、入眠・安眠効果、食欲増進、健胃作用、利尿作用など多くの生理効果が知られている。またその抗糖尿病作用についても報告がされている(特開昭50−70512号公報、特開昭59−59623号公報)。しかし、ホップ中のどのような成分がこれらの生理的作用を引き起こすかについては明かにされていない。
【0008】
また、最近では、ホップ毬果よりルプリン部分を除いたホップ苞に由来するポリフェノール類に関し、リパーゼ阻害作用、体重増加抑制作用等があるとの報告もされている(特開2001−321166号公報、特開2001−131080号公報)。しかし、ホップ苦味成分であるフムロン類やイソフムロン類に関してPPARアゴニストとしての活性やそれを示唆するような脂肪細胞分化に関わる活性やβ酸化酵素の活性化に関わる活性については知られていない。さらに、このホップの苦味成分についてインスリン抵抗性改善、血中HDLコレステロール増加や肝臓脂質の蓄積抑制効果など脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果、脂肪蓄積防止効果などについてはいずれも開示されていない。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、ホップの主要な苦味成分であるフムロン類およびその異性化物等がPPARαおよびPPARγのアゴニスト作用を有することを見出した。本発明者等はまた、これらの化合物が、血中の遊離脂肪酸濃度、中性脂肪濃度、インスリン濃度、およびレジスチン濃度の低下作用や、耐糖能の改善作用等のインスリン抵抗性の改善作用を有することを見出した。本発明者等は更に、これらの化合物が血中HDLコレステロール濃度増加作用、肝臓のコレステロールおよび中性脂肪蓄積の抑制作用等の脂質代謝改善作用を有すること、内臓脂肪の蓄積抑制作用を有すること、高脂肪や高コレステロール摂取による体重増加の抑制作用を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0010】
本発明はPPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状、特にインスリン抵抗性糖尿病や高脂血症、の治療、予防、または改善に用いられる組成物および食品の提供をその目的とする。
【0011】
本発明はまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、および痩身等に用いられる組成物および食品の提供をその目的とする。
【0012】
本発明による医薬組成物は、
【化1】
【0013】
[上記式中、R1およびR2はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表し、R3およびR4は水酸基、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表すが、R3とR4が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化2】
【0014】
[上記式中、R5、R6、およびR7は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R8およびR9は水素原子、水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R10、または−CH(−OH)R10を表し、R10はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R8とR9が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化3】
【0015】
[上記式中、R11およびR12は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R13およびR14は水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R15、または−CH(−OH)R15を表し、R15はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R13とR14が同時に水酸基を表すことはない。]、
【化4】
【0016】
[上記式中、R16、R17、およびR18は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表す。]、または
【化5】
【0017】
[上記式中、R19はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す。]
の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物(以下、「本発明による有効成分」ということがある)を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬組成物である。
【0018】
本発明による組成物は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物である。
【0019】
本発明による組成物は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化用組成物である。
【0020】
本発明による食品は、本発明による有効成分を含んでなる、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品である。
【0021】
インスリン抵抗性糖尿病や高脂血症は慢性の病気であり、かつその病態は複雑で、糖代謝異常と同時に脂質代謝異常や循環器系異常を伴う。その薬剤による治療は長期間にわたることが多く、投与量の増大や投与の長期化による副作用の発現など種々の問題が無視できない。本発明による組成物の有効成分は長年食品として用いられてきたホップに含まれるものである。従って、本発明による組成物は患者が長期間にわたって服用しても副作用が少なく、安全性が高い点で有利である。
【発明の具体的な説明】
【0022】
有効成分およびその製造法
本明細書において、C1−6アルキル基とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表す。C1−6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、第2ペンチル、第3ペンチルが挙げられる。C1−6アルキル基は好ましくはC3−5アルキル基であることができる。
【0023】
本明細書において、C2−6アルケニル基とは、炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を表す。C2−6アルケニル基の例としては、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−2−ブテン、3−メチル−3−ブテンが挙げられる。C2−6アルケニル基は好ましくはC3−5アルケニル基であることができる。
【0024】
R1は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0025】
R2は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0026】
R3は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンまたは水酸基を表す。
【0027】
R4は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンまたは水酸基を表す。
【0028】
R5は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0029】
R6は、好ましくは、水素原子、3−メチル−2−ブテン、またはイソペンチルを表す。
【0030】
R7は、好ましくは、水素原子または3−メチル−2−ブテンを表す。
【0031】
R8は、好ましくは、水素原子、水酸基、−C(=O)CH2CH=C(CH3)2、−CH(OH)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−CH=CH−CH(CH3)2、または−CH(OH)−CH2CH=C(CH3)2を表す。
【0032】
R9は、好ましくは、好ましくは、水素原子、水酸基、−C(=O)CH2CH=C(CH3)2、−CH(OH)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−(CH2)2−CH(CH3)2、−C(=O)−CH=CH−CH(CH3)2、または−CH(OH)−CH2CH=C(CH3)2を表す。
【0033】
R11は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0034】
R12は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0035】
R13は、好ましくは、水酸基または−C(=O)−CH=CHCH(CH3)2を表す。
【0036】
R14は、好ましくは、水酸基または−C(=O)−CH=CHCH(CH3)2を表す。
【0037】
R16は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0038】
R17は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0039】
R18は、好ましくは、3−メチル−2−ブテンを表す。
【0040】
R19は、好ましくは、イソブチル、イソプロピル、1−メチル−プロピル、エチル、またはイソペンチルを表す。
【0041】
本発明による有効成分の一つである式(I)の化合物はフムロン類およびルプロン類を表す。
【0042】
フムロン類としては、フムロン、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、およびプレフムロンが挙げられる。
【0043】
ルプロン類としては、ルプロン、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン、およびプレルプロンが挙げられる。
【0044】
式(I)の好ましい化合物としては、
R1がイソブチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(フムロン)、
R1が1−メチル−プロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドフムロン)、
R1がイソプロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コフムロン)、
R1がエチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストフムロン)、
R1がイソペンチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が水酸基を表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレフムロン)、
R1はイソブチルを表し、R2は3−メチル−2−ブテンを表し、R3は3−メチル−2−ブテンを表し、R4は3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ルプロン)、
R1が1−メチル−プロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドルプロン)、
R1がイソプロピルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コルプロン)、
R1がエチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストルプロン)、および
R1がイソペンチルを表し、R2が3−メチル−2−ブテンを表し、R3が3−メチル−2−ブテンを表し、R4が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレルプロン)
が挙げられる。
【0045】
本発明による有効成分の一つである式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は、イソフムロン類を表す。
【0046】
イソフムロン類としては、
シスまたはトランスイソフムロン、
シスまたはトランスイソアドフムロン、
シスまたはトランスイソコフムロン、
シスまたはトランスイソポストフムロン、
シスまたはトランスイソプレフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソアドフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソコフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソポストフムロン、
シスまたはトランステトラハイドロイソプレフムロン、
シスまたはトランスアロイソフムロン、
シスまたはトランスアロイソアドフムロン、
シスまたはトランスアロイソコフムロン、
シスまたはトランスアロイソポストフムロン、
シスまたはトランスアロイソプレフムロン、
シスまたはトランスパライソフムロン、
シスまたはトランスパライソアドフムロン、
シスまたはトランスパライソコフムロン、
シスまたはトランスパライソポストフムロン、
シスまたはトランスパライソプレフムロン、
シスまたはトランスフムリニック酸、
シスまたはトランスアドフムリニック酸、
シスまたはトランスコフムリニック酸、
シスまたはトランスポストフムリニック酸、
シスまたはトランスプレフムリニック酸、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソアドフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソコフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソポストフムロン、
シスまたはトランスヘキサハイドロイソプレフムロン、
シスまたはトランスアンチイソフムロン、
シスまたはトランスアンチイソアドフムロン、
シスまたはトランスアンチイソコフムロン、
シスまたはトランスアンチイソポストフムロン、
シスまたはトランスアンチイソプレフムロン、
フルポン、
アドフルポン、
コフルポン、
ポストフルポン、
プレフルポン、
トリサイクロデハイドロイソフムロン、
トリサイクロデハイドロイソアドフムロン、
トリサイクロデハイドロイソコフムロン、
トリサイクロデハイドロイソポストフムロン、および
トリサイクロデハイドロイソプレフムロン
が挙げられる。
【0047】
式(II)の化合物の好ましい例としては、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−イソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドコイソコフムロン)、
R5が1メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソアドフムロン)、
R5が1メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表す化合物(シス−テトラハイドロイソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH2 CH2CH(CH3)2(イソヘキサノイル基)を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−テトラハイドロイソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表す化合物(シス−アロイソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−C(=O)CH=CHCH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アロイソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(シス−パライソプレフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH=C(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−パライソプレフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−フムリニック酸)、
R5がイソブチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−フムリニック酸)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−コフムリニック酸)、
R5がイソプロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−コフムリニック酸)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−アドフムリニック酸)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−アドフムリニック酸)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−ポストフムリニック酸)、
R5がエチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ポストフムリニック酸)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が水素原子を表す化合物(シス−プレフムリニック酸)、
R5がイソペンチルを表し、R6が3−メチル−2−ブテンを表し、R7が水素原子を表し、R8が水素原子を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−イソプレフムリニック酸)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソフムロン)、
R5がイソブチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソコフムロン)、
R5がイソプロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソコフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソアドフムロン)、
R5が1−メチル−プロピルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソアドフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソポストフムロン)、
R5がエチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソポストフムロン)、
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が水酸基を表し、R9が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表す化合物(シス−ヘキサハイドロイソプレフムロン)、および
R5がイソペンチルを表し、R6がイソペンチルを表し、R7が水素原子を表し、R8が−CH(−OH)CH2CH2CH(CH3)2を表し、R9が水酸基を表す化合物(トランス−ヘキサハイドロイソプレフムロン)
が挙げられる。
【0048】
式(III)の化合物の好ましい例としては、
R11がイソブチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソフムロン)、
R11がイソプロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソコフムロン)、
R11が1メチル−プロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソアドフムロン)、
R11がエチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソポストフムロン)、
R11がイソペンチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表し、R14が水酸基を表す化合物(シス−アンチイソプレフムロン)、
R11がイソブチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソフムロン)、
R11がイソプロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソコフムロン)、
R11が1メチル−プロピルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソアドフムロン)、
R11がエチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソポストフムロン)、および
R11がイソペンチルを表し、R12が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が水酸基を表し、R14が−C(=O)CH2CH=C(CH3)2を表す化合物(トランス−アンチイソプレフムロン)が挙げられる。
【0049】
式(IV)の化合物の好ましい例としては、
R16がイソブチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(フルポン)、
R16がイソプロピルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(コフルポン)、
R16が1メチル−プロピルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(アドフルポン)、
R16がエチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(ポストフルポン)、および
R16がイソペンチルを表し、R17が3−メチル−2−ブテンを表し、R13が3−メチル−2−ブテンを表す化合物(プレフルポン)
が挙げられる。
【0050】
式(V)の化合物の好ましい例としては、
R19がイソブチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソフムロン)、
R19がイソプロピルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソコフムロン)、
R19が1メチル−プロピルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソアドフムロン)、
R19がエチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソポストフムロン)、および
R19がイソペンチルを表す化合物(トリサイクロデハイドロイソプレフムロン)
が挙げられる。
【0051】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は薬学上許容される塩とすることができ、例えば、酸付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、シュウ酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、サリチル酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、カルボキシル基を有する化合物は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属との塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。
【0052】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は薬学上許容される溶媒和物とすることができ、例えば、水和物、アルコール和物(例えば、メタノール和物、エタノール和物)、エーテル和物が挙げられる。
【0053】
式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物においては、置換基のアルケニル基に由来するシス−トランス異性体が存在しうるが、いずれの異性体およびそれらの混合物も本発明に包含されるものである。
【0054】
本発明による有効成分は、市販されているものを入手することができる。
【0055】
本発明による有効成分は公知の方法に従って製造することができ、例えば、Developments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS, M. Verzele, ELSEVIERに記載の方法に従って合成することができる。
【0056】
式(I)の化合物は、Riedl et al., Brauwiss 52(1951),81(1951),85(1951),133(1951)に従って製造できる。出発原料としてはphloracylphenonesを使用できる。phloracylphenonesは、触媒としてboron trifluorideの存在下、phoroglucinolとacid chlorides、nitriles、またはcarboxylic acidsとを凝縮させることにより容易に製造することができる。このようにして得られたphloracylphenoneをアセチル化すると、一種類のモノアルキル化誘導体(Ia)、二種類のジアルキル化誘導体(Ib、Ic)、および一種類のトリ−またはテトラ−アルキル化誘導体(Id、Ie)が得られる。
【化6】
【0057】
(上記式中、R1は前記で定義した内容と同義であり、R’はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す)
式(Ib)の化合物を酸化し、アロマ炭素にアルケニル側鎖を付加させることにより、フムロンを得ることができる。酸化反応の方法としては種々の方法があり、例えば、−50℃でantimony pentachlorideと反応させた後、銀イオンの存在下で加水分解することにより酸化することができる。また酢酸溶液存在下、あるいはトリフルオロ酢酸と過酸化水素の存在下で、酢酸鉛と酸化反応させてもよい。酸化反応は、ベンゾイルペルオキシドとアルカリ触媒反応させることにより、あるいはジクロロメタンの存在下でdiphenylseleninic anhydrideと酸化反応させることにより行ってもよい。
【0058】
式(II)の化合物は、2−メチル−2−ペンテン−4−インから製造することができる。2−メチル−2−ペンテン−4−インは1−ブロモ−4−メチルペンタ−1,2−ジエンをCu2(CN)2の存在下、1,4消去反応させることにより得ることができる。また、ピルビン酸エチルに得られた2−メチル−2−ペンテン−4−インを添加し、加水分解反応させことにより、2,6−ジメチル−2−ヒドロキシ−5−ヘプテン−3−イン酸を得ることができる。得られた溶液に(COCl)2を添加し、得られたCl塩を3−オキソ−5−メチルヘキサン酸エチルにマグネシウム塩の存在下で添加することにより、環化された2−(3−メチルビタノイル)−3,4−ジヒドロキシ−4−(4−メチル−3−ペンテン−1−イニル)−2−シクロペンテノンを得ることができる。得られた化合物に1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンを反応させ、3重結合を水和することによりイソフムロン類を得ることができる。
【0059】
式(II)が表すシスまたはトランス-アロイソフムロンは、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-アロイソアドフムロン、シスまたはトランス-アロイソコフムロン、シスまたはトランス-アロイソポストフムロン、シスまたはトランス-アロイソプレフムロンを製造することができる。シスまたはトランス-アロイソフムロンは例えば、F. Alderweireldtらの方法(Bull. Soc. Chim. Belges, 74 (1965) 29)またはM. Verzeleらの方法(J. Inst. Brewing, 71 (1965) 232)によって製造することが出来る。フムロンをpH9.0のリン酸緩衝液中で1時間煮沸を行う。冷却後、塩酸によって、pH1.0にした後、イソオクタンで抽出し、乾燥し溶媒を蒸発させる。その後向流分配法(Counter-Current Distribution法(以下CCD法))により、イソオクタンとpH5.5の緩衝液である水相により分配することにより、シス−アロイソフムロン、及びトランス−アロイソフムロンの分取を行うことが出来る。
【0060】
式(II)が表すシスまたはトランス-フムリニック酸は、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-アドフムリニック酸、シスまたはトランス-コフムリニック酸、シスまたはトランス-ポストフムリニック酸、シスまたはトランス-プレフムリニック酸を製造することができる。シスまたはトランス-フムリニック酸は例えば、フムロンを強アルカリ中で加水分解することによって製造することができ(H. Wieland, Ber. 59 (1926) 2352、又はJ.F. Carson, J. Am. Chem. Soc.,74 (1952) 4615)、好ましくはメタノール中、2Nの水酸化ナトリウムを添下し、67℃、20分間、窒素ガス下で熱することにより製造することが出来る。反応を冷却した2Nの塩酸で停止させた、クロロホルム抽出後、溶媒を蒸発させた後、CCD法により、クロロホルムとpH5.1の緩衝液である水相によって分取することが出来る。
【0061】
式(II)が表すシスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンは、シスまたはトランス-イソフムロンをそれぞれ原料として製造できる。例えば、シスまたはトランス-イソアドフムロン、シスまたはトランス-イソコフムロン、シスまたはトランス-イソポストフムロン、シスまたはトランス-イソプレフムロンを原料として、それぞれシスまたはトランス-テトラハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソプレフムロンを製造することが出来る。シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンは例えば、シスまたはトランス-イソフムロンを炭素上のパラジウムを用いることにより、メタノール中で水素添加することによりそれぞれ製造することができ、好ましくは、水素添加後に溶媒を蒸発、乾固後、イソオクタン中で再結晶することによって製造することができる。テトラハイドロイソフムロンは市販されており、これを使用することもできる。
【0062】
式(II)が表すシスまたはトランス-ヘキサハイドロイソフムロンは、シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンを原料として製造できる。例えば、シスまたはトランス-テトラハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-テトラハイドロイソプレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソアドフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソコフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソポストフムロン、シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソプレフムロンを製造することが出来る。シスまたはトランス-ヘキサハイドロイソフムロンは例えば、シスまたはトランス-テトラハイドロイソフムロンより、NaBH4により還元することによりそれぞれ製造できる。ヘキサハイドロイソフムロンは市販されており、これを使用することもできる。
【0063】
式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物は、後述するようにホップ毬果、ホップ抽出物やその異性化物中に存在する化合物を抽出・精製することにより、必要であればこれから更に適宜修飾することにより得ることができる。
【0064】
式(III)で表されるシスまたはトランス-アンチイソフムロンは、フムロンを原料として製造できる。例えば、アドフムロン、コフムロン、ポストフムロン、プレフムロンを原料として、それぞれ、シスまたはトランス−アンチイソアドフムロン、シスまたはトランス−アンチイソコフムロン、シスまたはトランス−アンチイソポストフムロン、シスまたはトランス−アンチイソプレフムロンを製造することが出来る。具体的にはシスまたはトランス−アンチイソフムロンは、フムロンをpH5.4〜11.0の水溶液中で煮沸することによって製造することが出来る。pHは好ましくは約11.0で反応時間は好ましくは約1.5時間である。煮沸後に冷却し、塩酸で酸性に処理しイソオクタンで抽出を行い、その後、蒸発、乾固後、CCD法により、エーテルとpH5.5の緩衝液である水相により、シス−アンチイソフムロン、トランス−アンチイソフムロンを分取することが出来る。
【0065】
式(IV)で表されるフルポンは、ルプロンを原料として製造できる。例えば、アドルプロン、コルプロン、ポストルプロン、プレルプロンを原料として、それぞれ、アドフルポン、コフルポン、ポストフルポン、プレフルポンを製造できる。具体的にはフルポンは、ルプロンの酸化により製造することが出来る(D. Wright, Proc. Chem. Soc., 315 (1961)、D. Wright, J. Chem. Soc., 1769 (1963))。例えば、ルプロンをシクロヘキサン中で酸素下で振とうし、溶媒を除去し、明るい黄色のオイルを留出によって分離することによりフルポンを製造できる。より好ましくは亜硫酸ナトリウムをメタノール中でルプロンに添加し、ガスの吸収が観察されなくなるまで、酸素ガス下で振とうを行い、その後溶媒を除去し、残留物を暖めたヘキサンで抽出を2回行ない、抽出物をメタノールに懸濁し、2Nの塩酸で酸性にした後、水で希釈を行い、ヘキサンで再度抽出を行ない、留出することによりフルポンを製造できる。
【0066】
本発明による有効成分は、ホップ等天然物から調製されたものを使用してもよい。本発明による有効成分は、例えば、ホップ毬花あるいはホップ抽出物やその異性化物中に存在し、各種クロマトグラフィーを用いてこれらから本発明による有効成分を分取することができる(「醸造物の成分」平成11年12月10日(財)日本醸造協会発行、前掲Developments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS、および後記参考例を参照)。また、遠心分配クロマトグラフィーを用いてホップ毬花の超臨界抽出物(ホップエキス)から、高純度のフムロン、アドフムロン、コフムロンを大量に精製することもできる(A. C. J. Hermans-Lokkerbol et al., J.Chromatography A 664 (1994) pp45-53)。さらにこれらの混合物を再結晶化することにより、純粋な化合物を得ることもできる。例えば、ホップ毬花の超臨界抽出物(ホップエキス)に1,2−ジアミノベンゼンを添加することにより、1,2−ジアミノベンゼンとフムロン類とからなる特異的な複合体を形成させることができる。この複合体を繰り返し再結晶化することにより、最も含量の多いフムロンと1,2−ジアミノベンゼンとの複合体を特異的に結晶化させることができる。結晶化した化合物をメタノールに溶解させ、ゼオライト等のレジンで1,2−ジアミノベンゼンを分離し高純度なフムロンを得ることができる(Colin P. et al.,J. Inst. Brew. June-July, 1993, Vol.99、pp.347-348参照)。これらの方法は全てDevelopments in Food Science 27, CHEMISTRY AND ANALYSIS OF HOP AND BEER BITTER ACIDS, M. Verzele, ELSEVIERに記載されており、当業者であればこれらの方法を容易に実施することができる。
【0067】
本発明による組成物においては、ホップのルプリン部に由来する抽出物をそのままあるいはそれを異性化して有効成分として使用してもよい。ホップは桑科に属する多年生植物であり、その毬花(未受精の雌花が熟成したもの)である。ホップのルプリン部は、ビール醸造原料であり、ビールに苦味、芳香を付与する為に用いる。またビール中の醸造過程においてホップ中のフムロン類(コフムロン、アドフムロン、ポストフムロン、プレフムロン等)がイソフムロン類(イソコフムロン、イソアドフムロン、イソポストフムロン、イソプレフムロン等)に異性化され、ビールに特有の味と香りを付与する。
【0068】
ホップの抽出物は、例えば毬花やその圧縮物をそのままもしくは粉砕後、抽出操作に供することによって調製することができる。抽出方法としては、例えば、ビール醸造に用いられるホップエキスの調製法として用いられるエタノール溶媒による抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法などがある。このうち超臨界二酸化炭素抽出はポリフェノール成分が少なく、苦味質と精油成分がより高く濃縮されるなどの特徴を有する。また、ホップ抽出法として、その他一般に用いられる方法を採用することができ、例えば、溶媒中にホップの毬花、その粉砕物などを冷浸、温浸等によって浸漬する方法;加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法;またはパーコレーション法等を挙げられる。得られた抽出液は、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去した後、使用の態様により、そのまま用いるか、または溶媒を留去して一部濃縮若しくは乾燥して用いてもよい。また濃縮乃至は乾燥後、さらに非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いても、またこれを更に適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。更に、本発明においては、例えば、上記のようにして得られた溶媒抽出液を、減圧乾燥、凍結乾燥等の通常の手段によりホップ抽出エキス乾燥物として使用することもできる。
【0069】
上記の抽出に用いられる溶媒としては、例えば、水;メタノール,エタノール,プロパノールおよびブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の極性溶媒;ベンゼンやヘキサン等の炭化水素;エチルエーテルや石油エーテルなどのエーテル類等の非極性溶媒の公知の有機溶媒を挙げることができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
その後必要に応じて不溶物をろ過により除去したり、減圧等により濃縮し、溶媒を乾固させてもよい。また毬花を粉砕したものを超臨界点炭酸抽出、あるいは液化炭酸ガス抽出することも好ましい。また、これら抽出した粗エキスをアルカリ、または酸化マグネシウム存在下で加熱化し異性化することも好ましい。異性化によりフムロン類はイソフムロン類に変換される。このような状態の抽出物を直接製剤化に用いても良いが、さらに有効成分を高濃度に含有する分画物を使用することも好ましい。また、種々の方法で抽出されたホップエキス、および異性化されたエキスはビール添加物として市販されており、これを用いて使用することも好ましい。例えば、ホップ毬花粉砕物から主にフムロン類とルプロン類を超臨界二酸化炭素抽出したホップエキス(例、CO2 Pure Resin Extract(Hopsteiner社))、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化したエキス(例、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社)、イソフムロン類とルプロン類が主成分)、ホップ毬花粉砕物の炭酸ガス抽出物を異性化した後、さらにカリウム塩化して粘性の低い液体とした水溶性エキス(例、ISOHOPCO2N(English Hop Products社)、イソフムロン類が主成分)などを用いることができる。
【0071】
またこれらのエキスより、さらに有効成分を高濃度に含有する分画物を前記等の方法も含め濃縮できることは言うまでもない。
【0072】
用途
本発明による有効成分はPPARαアゴニスト活性およびPPARγアゴニスト活性を有する(実施例9、10、および11参照)。
【0073】
PPARαは脂質代謝に深く関与し、PPARαの合成リガンドであるフィブレート製剤は血管内でのリポ蛋白質リパーゼの活性を亢進し、肝臓のβ酸化を亢進させ、肝臓での脂肪酸結合蛋白質の活性化に作用して肝臓への脂肪酸の流入を高めて肝臓からのVLDLの産生を抑制し、結果的に血中のVLDLを低下させることが知られている(「変貌する生活習慣病−糖尿病・高脂血症・高血圧・肥満−」メディカルレビュー社、2000年5月25日発行)。
【0074】
PPARαリガンドであるフィブレート製剤はまたインスリン抵抗性を解除すると考えられている(Guerre-Millo M. et al., J.B.C.275:16638-166642、2000)。PPARαリガンドは肝臓を初めとする組織の脂肪酸酸化を亢進して脂肪毒性を低下し、グルコース代謝効率を改善し、インスリン抵抗性を解除すると考えられる。
【0075】
PPARγは、脂肪細胞の分化を司るマスターレギュレーターであることが明らかにされている(Cell 79 : 1147-1156, 1994)。従って、PPARγのアゴニストは脂肪細胞の分化を促進するが、このPPARγの活性化によるインスリン抵抗性の改善作用の機序として次のようなことが考えられている。PPARγ活性化によって生じた正常な機能を有する脂肪細胞が糖や遊離脂肪酸を処理する能力が高くなり、血液中の糖および遊離脂肪酸を低下させ、筋肉の遊離脂肪酸の低下とインスリン抵抗性の改善が生じる。更に、脂肪細胞はTNFαやレジスチンなどインスリン抵抗性を増悪させるとされる重要な生理活性メディエーターを分泌するが、PPARγ活性化による脂肪細胞の分化によってこれらの分泌量が減少することが明らかになっている。また、筋肉や肝臓で少量発現するPPARγに対するアゴニストの作用も考えられる。
【0076】
本発明による有効成分を含むエキスはまた、インスリン非依存性糖尿病で発現が増加し、インスリン抵抗性の発症に関わると考えられているレジスチン(Resistin)の発現を遺伝子レベルで抑制する(実施例6参照)。レジスチンとインスリン抵抗性発症との関係はPeraldi P., et al., Mol Cell Biochem. 183,169-175,1998; Steppan C M et al., Nature, 409, 307-312, 2001に報告されている。
【0077】
インスリン抵抗性により高脂血症を発症することが知られている。高脂血症につながる機構は次のように考えられている。インスリン抵抗性は、骨格筋や脂肪組織で生じるが、インスリン抵抗性に伴う耐糖能異常を正常化すべく、生体はすい臓より過剰なインスリンを分泌し、血糖のホメオスタシスを保とうとする。このようにしてもたらされた高インスリン血症は、血圧の上昇や脂質代謝の異常を引き起こす。インスリンは通常は脂肪組織での脂肪の分解を抑制しているが、インスリン抵抗性状態ではこの抑制作用が減弱することにより脂肪分解による遊離脂肪酸の過放出が起きる。過剰の脂肪酸は筋肉での糖の取りこみと分解を抑制し、耐糖能を悪化させる。また、脂肪酸は肝臓にも取りこまれ、肝臓での中性脂肪の合成を高めて、血中へ中性脂肪に富んだVLDLコレステロールの分泌が高まる。高インスリン血症時にはVLDLの過剰な産生が起きる。さらに、インスリン抵抗性下ではリポ蛋白リパーゼ活性が低下するのでVLDLの中性脂肪の水解も低下し、LDLコレステロールの異化異常によって血中のLDLやIDLコレステロール、中性脂肪が増加する。さらに、HDLコレステロールの合成減少と異化の亢進によりHDLコレステロール量の低下も生じることが知られている。
【0078】
インスリン抵抗性と肥満との関連性についても報告がなされている。皮下に蓄積する脂肪より内臓周囲に蓄積する内臓脂肪の蓄積のほうがよりインスリン抵抗性発症に関わるとされる。内臓脂肪から放出される遊離脂肪酸が門脈血領域に過剰に供給されることが肝臓でのインスリン抵抗性、ひいては末梢の骨格筋でのインスリン抵抗性を惹起すると考えられている。
【0079】
本発明による有効成分を含むエキスは実際に血中HDLコレステロール量の増加、血中リン脂質の増加、血中中性脂肪量の減少、動脈硬化指数の改善、腎臓周囲脂肪量の減少、体重増加抑制をもたらした(実施例1〜4参照)。
【0080】
本発明による有効成分を含むエキスは実際に肝β酸化系を遺伝子レベルで亢進した(実施例5参照)。
【0081】
本発明による有効成分を含むエキスはまた、インスリン抵抗性改善作用を示した(実施例7および8参照)。
【0082】
従って、本発明による有効成分並びにホップエキスおよび/または異性化ホップエキスは、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いることができる。
【0083】
PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状としては、糖尿病(例えば、インスリン抵抗性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病);糖尿病性合併症(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、および狭心症等の虚血性心疾患;脳梗塞等の脳動脈硬化症;動脈瘤やネフローゼ症候群等の腎疾患;脂肪肝またはそれに伴って生じる肝臓疾患);脂質代謝異常(例えば、高脂血症、動脈硬化症、および脂肪肝)、特に、高脂血症(例えば、高コレステロール血症、低HDL-コレステロール血症、高中性脂肪血症);インスリン抵抗性およびこれに関連する疾患(例えば、高インスリン血症、耐糖性異常);肥満症;および体重増加が挙げられる。
【0084】
本発明による有効成分並びにホップエキスおよび/または異性化ホップエキスはまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身(ダイエット)に用いることができる。
【0085】
インスリン抵抗性改善作用は、具体的にはインスリンの濃度低下、レジスチンの濃度低下、TNFαの濃度低下、耐糖能改善、血中の中性脂肪・遊離脂肪酸濃度低下、脂肪細胞の小型化(正常化)等の作用によるものであり、これらも本発明の用途の一部を構成する。
【0086】
脂質代謝改善作用は、具体的にはHDL血中コレステロール濃度上昇、動脈硬化指数改善、血中の中性脂肪低下、肝臓脂質蓄積抑制等の作用によるものであり、これらも本発明の用途の一部を構成する。そして脂質代謝改善作用により抗動脈硬化作用がもたらされるが、これも本発明の用途の一部を構成する。
【0087】
体重増加抑制作用は、脂肪蓄積抑制、特に、内臓脂肪蓄積抑制の作用によるものであり、これも本発明の用途の一部を構成する。
【0088】
本発明によれば、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0089】
本発明によればまた、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0090】
本発明によれば更に、PPAR活性化用組成物の製造のための、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用が提供される。
【0091】
本発明によれば、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善方法が提供される。
【0092】
本発明によればまた、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身方法が提供される。
【0093】
本発明によれば更に、本発明による有効成分、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を、必要であれば薬学上許容される製剤添加物と共に哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化方法が提供される。
【0094】
組成物および食品
本発明による組成物を医薬として提供する場合には、本発明による有効成分またはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを薬学上許容される添加物と混合することにより製造できる。本発明による組成物は、経口投与または非経口投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤(糖衣錠を含む)、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤が挙げられる。非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤(例えば、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例えば、直腸坐剤、膣坐剤)が挙げられる。これらの製剤は、当分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバターを担体として使用できる。
【0095】
製剤は、例えば、下記のようにして製造できる。
【0096】
経口剤は、有効成分に、例えば賦形剤(例えば、乳糖、白糖、デンプン、マンニトール)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム)、結合剤(例えば、α化デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)または滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造することができる。コーティング剤としては、例えばエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびオイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)などを用いることができる。
【0097】
注射剤は、有効成分を分散剤(例えば、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、転化糖)などと共に水性溶剤(例えば、蒸留水、生理的食塩水、リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などの植物油、プロピレングリコール)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造することができる。この際、所望により溶解補助剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)等の添加物を添加してもよい。
【0098】
外用剤は、有効成分を固状、半固状または液状の組成物とすることにより製造することができる。例えば、上記固状の組成物は、有効成分をそのまま、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、白糖)、増粘剤(例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体)などを添加、混合して粉状とすることにより製造できる。上記液状の組成物は、注射剤の場合とほとんど同様にして製造できる。半固状の組成物は、水性または油性のゲル剤、あるいは軟骨状のものがよい。また、これらの組成物は、いずれもpH調節剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム)などを含んでいてもよい。坐剤は、有効成分を油性または水性の固状、半固状あるいは液状の組成物とすることにより製造できる。該組成物に用いる油性基剤としては、高級脂肪酸のグリセリド〔例えば、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社製)〕、中級脂肪酸〔例えば、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製)〕、あるいは植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油)が挙げられる。水性基剤としては、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコールが挙げられる。また、水性ゲル基剤としては、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体が挙げられる。
【0099】
本発明による食品は、本発明による有効成分を有効量含有した飲食品である。ここで「有効成分を有効量含有した」とは、個々の飲食品において通常喫食される量を摂取した場合に、後述するような範囲で有効成分が摂取されるような含有量をいう。本発明による食品には本発明による有効成分をそのままあるいは上記のような組成物の形態で、食品に配合することができる。より具体的には、本発明による食品は、本発明による有効成分の少なくとも1つあるいは前述するホップの粉砕物若しくは抽出物をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、一般の飲食品へ添加したものであってもよい。
【0100】
本発明において「食品」とは、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、病者用食品を含む意味で用いられる。
【0101】
また「食品」の形態は特に限定されるものではなく、例えば、飲料の形態であってもよい。
【0102】
本発明による有効成分は、インスリン抵抗性改善作用や脂質代謝改善作用、脂肪やコレステロール摂取による内臓脂肪の蓄積や体重増加の抑制作用を有する。このため、日常摂取する食品やサプリメントとして摂取する健康食品や機能性食品、好適にはコレステロールや脂肪を含有する食品等に本発明の有効成分あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを配合することにより、肥満の防止、インスリン抵抗性に合併する高脂血症並びに動脈硬化症の発症の予防および改善、並びに糖尿病予備群のインスリン非依存性糖尿病への移行防止といった機能を併せ持つ食品を提供することができる。すなわち、本発明による食品は、血清コレステロールが高めの消費者に適した食品や血糖値が気になる消費者に適した食品のような特定保健用食品として提供することができる。
【0103】
かかる飲食品として具体的には、飯類、麺類、パン類およびパスタ類等炭水化物含有飲食品;クッキーやケーキなどの洋菓子類、饅頭や羊羹等の和菓子類、キャンディー類、ガム類、ヨーグルトやプリンなどの冷菓や氷菓などの各種菓子類;ジュースや清涼飲料水、乳飲料等の各種飲料;卵を用いた加工品、魚介類(イカ、タコ、貝、ウナギなど)や畜肉(レバー等の臓物を含む)の加工品(珍味を含む)などを例示することができるが、これらに特に制限されない。
【0104】
本発明による有効成分あるいはホップの粉砕物または抽出物を一般食品の原料に添加配合して食品として加工して用いる場合は、ホップの苦みが飲食品の味に影響しない範囲で用いるか、あるいは苦味がマスクされるような工夫をすることが好ましい。
【0105】
本発明による組成物および食品は、人類が飲食品として長年摂取してきたホップ抽出成分またはその誘導物であることから、毒性も低く、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し安全に用いられる。本発明による有効成分の投与量または摂取量は、受容者、受容者の年齢および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、本発明による有効成分を医薬として経口投与する場合、成人1人当たり0.5〜100mg/kg体重(好ましくは1〜50mg/kg体重)、非経口的に投与する場合は0.05〜50mg/kg体重(好ましくは0.5〜50mg/kg体重)の範囲で一日1〜3回に分けて投与することができる。本発明による有効成分と組み合わせて用いる他の作用機序を有する薬剤も、それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜決定できる。また、食品として摂取する場合には、成人1人1日当たり100〜6000mgの範囲、好ましくは200〜3000mgの範囲の摂取量となるよう本発明による有効成分を食品に配合することができる。
【0106】
実施例
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0107】
参考例
イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロンの水溶性エキスからの精製、およびフムロン、コフムロンのホップエキスからの精製例を示す。後述実施例2に記載の水溶性エキスより、イソフムロン、イソアドフムロン、イソコフムロンについて、分取用HPLC(島津製作所 LC-8ポンプ、PDA連動フラクションコレクターシステム)を用いた精製を行った。条件は、移動層:85%メタノール、15%(1%ギ酸水)、カラム:YMC-ODS-AQ 25X250mm、流速:20ml/分で行った。フムロン、コフムロンについては、実施例2に記載のホップエキスから移動層:67%メタノール、33%(1%ギ酸水)、カラム:YMC-ODS-AQ 25X250mm、流速:20ml/分で精製を行った。分取した画分について酢酸エチルで抽出を行なった後、減圧乾固し重量測定を行った。
【0108】
実施例1
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群9〜10匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー社)をCE2(日本クレア社)、および水を自由摂取させ1週間飼育した。その後、高脂肪・高コレステロール食(Lipids 28, 599-605 1993 Nishinaらの方法に従って作成した餌)を1週間投与した。餌の組成は表1に記す。
【0109】
表 1
無塩バター 15%
スクロース 52.45%
カゼイン 20%
コーンオイル 1%
セルロース 5%
ミネラル 3.5%
ビタミン 1%
塩化コリン 0.25%
シスチン 0.3%
コレステロール 1%
コール酸ナトリウム 0.5%
1週間予備飼育後、1晩絶食を行ない尾静脈よりヘマトクリットチューブを用いて採血を行なった。血漿を得た後に総コレステロール、およびHDLコレステロールをコレステロールC-IIワコー(和光純薬社製)、HDL-コレステロール-テストワコー(和光純薬社製)を用いてそれぞれ添付のマニュアルに従って測定し2群に分割した。1群については上記高脂肪・高コレステロール食にKettleエキス(商品名、Isomerized Kettle Extract (SS. Steiner社製)、毬花粉砕物を炭酸ガス抽出し、異性化したエキスであり、イソフムロン類が主成分であるがルプロン類も含まれる)を0.5%(重量%)混餌し自由摂取させた(但し初日は0.2%のみ混餌する餌を与えた)(図中「Kettle」)。もう1群のコントロール群については、餌にセルロースを0.5%(重量%)混餌し自由摂取させた(図中「コントロール」)。餌は2日毎に取り替え、摂食量を記録した。また採血は2週、4週、および解剖時に、それぞれ1晩絶食後に行なった。解剖時のみ採血は腹部大静脈より行ない、2週、4週では尾静脈より行った。総コレステロール、HDL-コレステロールに加え血中中性脂肪についてもトリグリセライドGテストワコー(和光純薬社製)を用いて添付のマニュアルに従って測定した。また総コレステロールよりHDLコレステロールを減じ、これをHDLコレステロールで除した値を動脈硬化指数とした。それぞれの結果を図1〜4に示す。
【0110】
これらの結果から、Kettleエキス投与2週、および4週後においてHDLコレステロールを特異的に上昇させ、結果として動脈硬化指数を減少させることが明らかとなった。また血中中性脂肪は有意な差ではないが、Kettleエキスにより減少する傾向が示された(図4)。
【0111】
解剖時の体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量を図5に示す。腎臓周囲脂肪はヒトにおいて内臓脂肪に相当するとの報告があるが、Kettleエキスにより有意に減少することが明らかになった。また摂食量は2群間で大きな差は観察されないが有意な体重差が認められ、Kettleエキスにより、体重上昇抑制効果が観察されることが明かとなった(図6および7)。
【0112】
また、解剖時に肝臓を取得し、肝臓総コレステロール、中性脂肪、リン脂質含量を測定した。解剖後、肝臓は即液体窒素下で凍結し、その後一部を破砕後取得し、重量で9倍量の生理食塩水下でテフロン(登録商標)ホモジナイザーを用いて氷冷下破砕した。その後Timothy P. Carr et al.,Clinical Biochemistry 26, 39-42, 1993に記載の方法に従って、脂質を抽出した。即ち1mlの肝臓破砕液に5mlのクロロホルム・メタノール(2:1)を加えて激しく撹拌後、更に亜0.5mlの0.06NH2SO4を加え、再度撹拌した後、遠心しクロロホルム相を抽出した。クロロホルム相の一部について、窒素ガス下で乾固後、リン脂質テストワコー(過マンガン酸塩灰化法)(和光純薬社製)を用いてリン脂質を測定した(図8)。また別のクロロホルム相の一部に1%トライトン-X100を含むクロロホルムを混ぜた後に、窒素ガス下で乾固し、水に懸濁後、上記方法で総コレステロール、中性脂肪を測定した。結果を図9および10にそれぞれ記す。結果Kettleエキスにより有意に肝臓コレステロール、中性脂肪が減少し、リン脂質は有意に上昇することが示された。
【0113】
また日立7170型血漿自動分析装置(日立製作所社製)を使用して、添付のマニュアルに従って、肝臓障害指標となる酵素である、GOT(グルタミック オキサロ トランスアミナーゼ)、GPT(グルタミック ピルビック トランスアミナーゼ)、ALP(アルカリフォスファターゼ)を測定したところ、いずれの数値もKettleエキス投与群で減少しており、肝臓障害が生じていないことを確認した。
【0114】
以上の結果から、高脂肪・高コレステロール食を与えたモデルにおいて、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスは、優れた、血中HDLコレステロール増加作用、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果、脂肪蓄積抑制効果、高脂肪高コレステロール食摂取による体重増加抑制効果、を有することが明かになった。
【0115】
実施例2
C57BL/6マウスを用いて、実施例1の高脂肪・高コレステロール食を与え、2週間の条件で、Kettleエキス(実施例1に記載)の0.2%、0.5%混餌による容量変化による効果、またホップエキス(商品名、CO2 Pure Resin Extract (Hopsteiner社製)、ホップ毬花よりフムロン類とルプロン類を抽出したもの)、水溶性エキス(商品名、ISOHOPCO2N (English Hop Products社製)、ホップ毬花よりフムロン類を抽出後、イソフムロン類に異性化しカリウム塩化したものであり、フムロン類やルプロン類がほとんど含まれていない)の効果について評価を行なった。さらに通常食群としてAIN76A(Dyets社)を自由摂取させる群を設定した。即ち、1群8〜9匹の5週齢C57BL/6NCrj雌をCE2、および水を自由摂取させ1週間飼育した。その後、高脂肪・高コレステロール食(実施例1に記載の方法に従って作成した餌)を1週間投与した。本実施例においては餌は水を加えてペレット状に固形化し冷凍庫に保存したものを使用した。また毎日新しい餌と交換し、摂食量の記録を行なった。1週間予備飼育後、1晩絶食を行ない尾静脈よりヘマトクリットチューブを用いて採血を行ない、総コレステロール、HDL-コレステロールの定量を実施例1の方法に従って行ない、各群で差がないように群分けを行なった。その後、Kettleエキスについては重量比で0.2%、0.5%の2群を(K 0.2、K 0.5)、ホップエキスは0.2%を(H 0.2)、水溶性エキスは1%を(W 1.0)それぞれ高脂肪・高コレステロール食に重量比で混餌したものを作成し自由摂取させた。またコントロールの餌には0.5%セルロースを添加した。1週間後に尾静脈より、非絶食条件下で採血を行ない、2週後に絶食下で腹部静脈より採血を行なった。
【0116】
総コレステロール、HDLコレステロール、動脈硬化指数の結果を図11〜13にそれぞれ示す。Kettleエキス(K 0.2、K 0.5)により容量依存的にHDLが上昇し、動脈硬化指数が改善されることが明らかになった。さらに、異性化されていないホップエキスについても、脂質代謝改善効果を有することが明かになった。またコントロールおよび水溶性エキス(W 1.0)を投与したマウスの血漿150μlについてゲルろ過クロマトグラフィーを実施し、その結果を図14に示す。方法はY. C. HAらの方法に従った(Journal of Chromatography, 341 (1985) 154-159)。即ち、Superose6Bカラム(アマシャムファルマシア社)を用いて、移動相0.15M NaCl、 0.01% EDTANa2、0.02%NaN3、pH7.2で、P-500ポンプ(アマシャムファルマシア社)、流速0.33ml/の条件で行なった。フラクションは0.5mlづつ集めた。各フラクションについて総コレステロールの測定を行なった。
【0117】
その結果、本方法からも水溶性エキスにより、15ml以降に溶出されるHDL画分のみが特異的に上昇することが明かになった。また、1日の1匹あたりの摂食量の変化を図15に、また体重変化を図16に示す。水溶性エキス(W 1.0)を除いて、摂食量に各群で変化がないにも係らず、体重はAIN76A群、コントロール群に比較して有意にKettleエキス(K 0.2、K 0.5)、水溶性エキス(W 1.0)、およびホップエキス投与群(H 0.2)で減少した。
【0118】
以上の結果から、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスに加えて、イソフムロン類が主成分である水溶性エキスやフムロン類とルプロン類を主成分とするホップエキス、いずれについても血中HDLコレステロールの増加作用、動脈硬化指数の低下作用などの脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果を有することが明かになった。
【0119】
実施例3
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雄)を用いて評価を行なった。即ち、1群5〜6匹の5週齢C57BL/6NCrj雄(日本チャールズリバー社より購入)をCE2、および水を自由摂取させて自由摂取させ1週間飼育した。その後、AIN76A(Dyets社)に0.2%コレステロールを添加した餌を先ず作成し、1群については同餌に水溶性エキス(実施例2)を1%添加し(図中「W 1.0」)、もう1群については同餌にKettleエキス(実施例1)を0.2%添加(図中「K 0.2」)し、コントロール群としては0.5%セルロースを添加した餌を実施例2の方法に従って作成し自由摂取させた。毎日の1匹あたりの摂食量と、体重推移を図17および18にそれぞれ示す。摂食量は水溶性エキス(W 1.0)がコントロール群に比較して、上昇傾向にあるものの、体重は解剖前日において有意に減少することが明らかになった。1週間後、1晩絶食後、腹部静脈より全血採血を行ない、実施例1の方法に従い、総コレステロール、HDL-コレステロールの測定を行なった。結果、水溶性エキス(W 1.0)により、HDLコレステロールが特異的に上昇し、動脈硬化指数が有意に減少することが明らかになった(図19〜21)。また肝臓1gあたりのコレステロール量、中性脂肪量、リン脂質を実施例1の方法に従って定量したところ、水溶性エキス(W 1.0)によりコレステロール量、中性脂肪量が有意に減少することが、またKettleエキス(K 0.2)により減少することが明らかになった(図22〜24)。また解剖時の体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量は水溶性エキス(W 1.0)、Kettleエキス(K 0.2)により有意に減少することが、また副精巣周囲脂肪重量は減少傾向にあることが示された(図25)。
【0120】
以上の結果から、低濃度のコレステロールを添加した餌を与えたモデルにおいても、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスとイソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスには、それぞれ優れた血中HDLコレステロール増加作用、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果や内臓脂肪の蓄積抑制効果、体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0121】
実施例4
脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、1群5〜6匹の5週齢C57BL/6NCrj雄(日本チャールズリバー社)をCE2(日本クレア社)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび1%水溶性エキスを添加した餌を与える群、AIN76Aに0.3%セルロースを添加した餌を与える群、AIN76Aに1%水溶性エキスを添加した餌を与える群の4群の設定を行なった。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。1週後非絶食下で解剖を行ない、腹部静脈より全血採血を行ない、総コレステロール、HDLコレステロールを実施例1の方法に従って測定した。有意な差ではないものの、HDLコレステロールの水溶性エキスによる上昇と、それに伴う動脈硬化指数の減少が確認された(図26〜28)。また肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ、水溶性エキスにより、コレステロール非添加条件で、コレステロールの有意な減少を、コレステロール添加条件でコレステロール含量、および中性脂肪含量の有意な減少を確認した(図29〜31)。
【0122】
以上の結果から、コレステロール非添加食においても、イソフムロン類を主成分とする水溶性エキスには、血中HDLコレステロール増加作用、、動脈硬化指数低下作用、肝臓への中性脂肪やコレステロールの蓄積抑制作用などの脂質代謝改善効果が認められた。
【0123】
実施例5
実施例4において、肝臓は液体窒素を用いて解剖後瞬時に凍結保存を行った。肝臓組織約100mgより、Isogen (ニッポンジーン社製)を用いて、添付のマニュアルに従ってRNAを採取した。分光光度計を用いてRNA量の測定を行った後に、Thermo Script TM RT-PCRシステム(ライフテック オリエンタル社製)を用いて添付のマニュアルに従いoligo dTとアニーリングを行い、同RNAを逆転写し、cDNAを取得した。得られたcDNAについて、Acyl‐CoA oxidase (ACO)についてはセンスプライマーとして、
5’‐ATCTATGACCAGGTTCAGTCGGGG‐3’(配列番号1)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐CCACGCCACTTCCTTGCTCTTC‐3’(配列番号2)、
Acyl‐CoA synthetase (ACS)についてはセンスプライマーとして、
5’‐GGAACTACAGGCAACCCCAAAG‐3’(配列番号3)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐CTTGAGGTCGTCCATAAGCAGC‐3’(配列番号4)、
Fatty acid transpot protein (FATP)についてはセンスプライマーとして、
5’‐TGCTAGTGATGGACGAGCTGG‐3’(配列番号5)、
アンチセンスプライマーとして、
5’‐TCCTGGTACATTGAGTTAGGGTCC‐3’(配列番号6)、
3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A synthase (HMGCS)についてはセンスプライマーとして、
5’‐CCTTCAGGGGTCTAAAGCTGGAAG‐3’(配列番号7)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CAGCCAATTCTTGGGCAGAGTG‐3’(配列番号8)、
3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase (HMGCR)についてはセンスプライマーとして、
5’‐TTGGCCTCCATTGAGATCCG‐3’(配列番号9)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐GATCTTGTTGTTGCCGGTGAAC‐3’(配列番号10)、
Low density lipoprotein receptor (LDLR)についてはセンスプライマーとして、
5’‐CATCAAGGAGTGCAAGACCAACG‐3’(配列番号11)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CACTTGTAGCTGCCTTCCAGGTTC‐3’(配列番号12)、
Apo-AIについてはセンスプライマーとして
5’‐TGTATGTGGATGCGGTCAAAGAC‐3’(配列番号13)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐TCATCTCCTGTCTCACCCAATCTG‐3’(配列番号14)、
Apo-CIIIについてはセンスプライマーとして
5’‐AGGGCTACATGGAACAAGCCTC‐3’(配列番号15)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CGACTCAATAGCTGGAGTTGGTTG‐3’(配列番号16)、
Lipoprotein Lipase (LPL)についてはセンスプライマーとして
5’‐GTTTGGCTCCAGAGTTTGACCG‐3’(配列番号17)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐CATACATTCCCGTTACCGTCCATC‐3’(配列番号18)、
cholesterol alpha-7-hydroxylase (CYP7A1)についてはセンスプライマーとして
5’‐ACGGGTTGATTCCATACCTGGG‐3’(配列番号19)、
アンチセンスプライマーとして
5’‐TGTGTCCAAATGCCTTCGCAG‐3’(配列番号20)、
をそれぞれ用いて測定した。内部標準遺伝子としてはacidic ribosomal phosphoprotein PO(酸性リボゾーム蛋白質 36B4)遺伝子を使用した。36B4について、センスプライマーとしては
5’‐CCAAGCAGATGCAGCAGATCC‐3’(配列番号21)、
アンチセンスプライマーとしては、
5’‐CAGCAGCTGGCACCTTATTGG‐3’(配列番号22)
を使用した。ライトサイクラー(ロシュ社製)、および反応キットとしてはFastStart DNA Master SYBR Green I(ロシュ社製)を用いて、添付のマニュアルに従ってcDNAを基に各mRNAの定量を行った。コレステロール添加条件下における水溶性エキス添加条件下での内部標準に対する発現量を1とした各遺伝子の発現結果を図32に示す。2元配置分散分析を行ったところ、ACO、ACS、FATP、Apo-AI、Apo-CIII、LPLについて水溶性エキスについて相関関係が確認された。これらの遺伝子はPPARαのリガンドであるフェノフィブレート投与によっても同様の発現変動を示すことが報告されている(最新・分子動脈硬化学 森崎信尋ら メディカルレビュー社、J. Clin. Invest. 1996. 97:2408-2416、Laurence Berthouら)。
【0124】
以上の結果から、イソフムロン類の摂取による脂質代謝改善作用は、肝β酸化系の亢進によって引き起こされることが示唆されたが、この遺伝子発現変動はイソフムロン類によるPPARαアゴニスト作用によって生じる可能性が考えられる。
【0125】
実施例6
インスリン抵抗性改善効果について、KKAyマウス(雄)を用いて評価を行った。即ち、1群8〜9匹の5週齢 KKAy/Ta Jcl(日本クレア社)を、CE-2(日本クレア社)および水を自由摂取させて1週間馴化飼育を行った。その後、精製原料を使用して作成したAIN93(アメリカ国立栄養研究所による標準組成)粉末飼料での飼育に切り替えた。実験群としては対照群(AIN93)、KettleエキスをAIN93に0.1および0.6%(重量%)添加した群(K0.1、K0.6群)、ピオグリタゾン(商品名アクトス、武田社製)粉末を0.05%(重量%)添加した群(Pio群)、水溶性エキスを1.2%(重量%)添加した群(W群)を設定した。水溶性エキス混餌は粉末飼料にエキス希釈水を加え、成形して使用した。対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群については粉末飼料5gを毎日与えた。この量は1日で各個体が食べきれる量であり、本給餌方法により各群間の摂餌量を一定にすることが出来る。W群については自由摂取条件とした。飲水量は毎週測定した。飼育開始後2週および4週目に15時間程度の絶食を行い、その後尾静脈より採血し、血中の中性脂肪および遊離脂肪酸濃度を測定した。中性脂肪はリピドスリキッド(東洋紡社製)を、遊離脂肪酸はNEFA C-テストワコー(和光純薬社製)を用いて測定した。4週目採血時には絶食時の血糖値測定も実施した。飼育5週目には対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群、W群に対して10gの給餌を1回行い、翌日に尾静脈より採血し非絶食時の血糖値を測定した。血糖値測定はグルテストセンサー(三和化学研究所社製)を使用した。飼育6週目には対照群、K0.1群、K0.6群、Pio群、W群に対して10gの給餌を行い、非絶食条件下で解剖を行い、副精巣周囲脂肪組織採取および腹部大静脈より全採血を実施した。解剖時血液についても血中中性脂肪および遊離脂肪酸濃度を測定した。副精巣周囲脂肪からはISOGEN(ニッポンジーン社製)を使用してトータルRNAを調製した。調製したトータルRNAを用いて定量RT-PCR法によりResistin遺伝子の発現量を測定した。逆転写反応はサーモスクリプトRT-PCRシステム(Gibco BRL社製)を用いて行い、定量PCRはLightCycler(Roche社)およびLightCycler-FastStart DNA Master SYBR Green I(Roche社製)を使用した。使用したプライマーの配列は
5' -CGTGGGACATTCGTGAAGAAAAAG-3'(配列番号23)
5'- TGTGCTTGTGTGTGGATTCGC-3'(配列番号24)
である。Resistin発現量は、酸性リボソーム蛋白質36B4のプライマー
5' - CCAAGCAGATGCAGCAGATCC -3'(配列番号25)
5'- CAGCAGCTGGCACCTTATTGG -3'(配列番号26)
を用いた時の測定値で標準化を行った。飼育期間中の1日当りの飲水量を図33に示した。インスリン抵抗性が惹起し高血糖を発症したKKAyマウスは飲水量が多くなり、抵抗性が改善したマウスでは減少することが知られている(Biosci. Biotech. Biochem., 60(2), 204-208, 1996, Kakudaら)が、K0.6群やW群でも糖尿病改善薬投与群であるPio群と同様の飲水量減少が確認された。5週目非絶食時および4週目絶食時の血糖値を図34および35に示した。K0.6群およびW群ではPio群と同様に非絶食時、絶食時血糖値が共に対照群よりも有意に低下していた。飼育2週目、4週目の絶食時および6週目(解剖時)非絶食時の血中遊離脂肪酸濃度および血中中性脂肪濃度をそれぞれ図36および37に示した。これら血中脂質濃度はK0.1、K0.6、Wの各群で対照群よりも有意に低下していた。図38に示した様に、Resistin遺伝子の発現量はK0.6群、W群で対照群よりも有意に低下していた。
【0126】
以上のように図33〜38に示した結果は全てKKAyマウスのインスリン抵抗性が、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスとイソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスによって軽減したことを示しており、これらエキスに著明なインスリン抵抗性改善作用があることが明らかになった。
【0127】
実施例7
5週齢のKKAyマウスを1週間馴化飼育(実施例6に記載)後、標準飼料(実施例6に記載)を投与する対照群およびKettleエキス0.6%混餌(実施例6に記載)を投与するK0.6群をそれぞれ1群6匹で設定し、餌および水自由摂取条件下で12週間飼育を行った。12週目に5時間の絶食を行い、耐糖能試験を以下の要領で実施した。即ちグルコース投与前に0分時の血糖値を実施例6と同様の方法で測定した。その後、投与グルコース量が体重1kg当り2gになる様に20%(w/v)グルコース水溶液を経口ゾンデを用いて各個体に投与し、15分、30分、60分、120分後にそれぞれ血糖値を測定した。インスリン感受性試験は耐糖能試験実施1週間後に以下の要領で実施した。即ちインスリン投与前に非絶食条件下のマウスの0分時血糖値を、採取した血液を生理食塩水で2倍に希釈した後、耐糖能試験と同様に測定した。その後投与インスリン量が体重1kg当り0.75Uになる様に、生理食塩水で75mU/mlに調製したブタインスリン溶液を腹腔内に投与した。投与後15分、30分、60分、120分、180分後にそれぞれ血糖値を測定した。
【0128】
図39に示した様に、K0.6群では対照群に比べて耐糖能が改善していることが明らかになった。さらに図40に示した様に、重度のインスリン抵抗性を示す対照群と比較して、K0.6群では抵抗性が改善している傾向が観察された。以上の結果から、イソフムロン類とルプロン類を主成分とする異性化ホップエキスにはインスリン抵抗性改善作用があることが明らかになった。
【0129】
実施例8
C57BL/6に高脂肪食負荷すると、肥満および高血糖を呈する事が知られている(Ikemotoら、Metabolism, 45 (12), 1539-46, 1996)。そこで食餌由来のインスリン抵抗性発現に対するホップエキスの作用を検討した。即ち、1群8匹の5週齢C57BL/6 NCrj(日本チャールズリバー社)を、CE-2(日本クレア社)および水を自由摂取させて1週間馴化飼育を行った。その後、精製原料を使用して作成した高脂肪飼料(表2)での飼育に切り替えた。
【0130】
表2 高脂肪飼料組成(数値は重量%)
―――――――――――――――――――――――
Safflower oil 33.5
Casein 29.0
Sucrose 23.3
Vitamin mix(オリエンタル酵母社製) 1.45
Mineral mix(オリエンタル酵母社製) 5.08
Cellulose powder 7.25
L-cystin 0.44
―――――――――――――――――――――――
実験群としては高脂肪食給餌群および、高脂肪食にKettleエキスを0.3%(重量%)添加した群(K群)、水溶性エキスを0.6%(重量%)添加した群(W群)を設定した。飼料および飲料水は飼育期間中自由摂取とし、飼料は毎日新しいものに交換した。飼育開始後毎週体重測定を実施した。図41に示した様に、K群、W群では対照群に比べて体重増加が緩やかであった。また、飼育開始後60日目以降に1日当りの摂餌量を測定(6回)したところ、図42に示した様に各群で摂餌量に有意差が認められなかった。以上の結果から、ホップエキス中に高脂肪食負荷による肥満を抑制する作用があることが確認された。更に飼育開始後84日目に、対照群およびW群の2群について、各4個体を用いて耐糖能試験を実施した。方法は実施例7に記述した方法で行った。耐糖能試験の結果、図43に示した様にW群で最高血糖値、120分後血糖値のいずれも対照群よりも低かった。
【0131】
以上の結果から、イソフムロン類を主成分とする水溶性ホップエキスには耐糖能増悪を改善する作用もあることが確認された。
【0132】
実施例9
PPARγ アゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0133】
ヒトPPARγ発現プラスミドの構築のために、human heart cDNA library(Gibco社製)からPPARγORFをクローニングした。クローニングしたORFはシークエンスを確認後、発現ベクターpCI neo(Promega社製)のNheI-SalI部位に接続した。クローニングに使ったプライマーの配列は次の通り。
【0134】
5’ GCTAGCATGGTGGACACGGAAAGCCC 3’(配列番号27)
5’ GTCGACAGTACATGTCCCTGTAGATCTC 3’(配列番号28)
次にレポータープラスミド構築のために、PPREを3回繰り返したオリゴDNAを作製し、ホタルルシフェラーゼレポーターベクターpGL3-promoter vector(Promega社製)のKpnI-BglII部位に挿入後、シークエンスを確認した。PPREを含むオリゴDNAの配列は以下の通り。
【0135】
5’CAGGGGACCAGGACAAAGGTCACGTTCGGGAAGGGGACCAGGACAAAGGTCACGT 3’(配列番号29)
5’GATCTTCCCGAACGTGACCTTTGTCCTGGTCCCCTTCCCGAACGTGACCTTTGTC 3’(配列番号30)
以上のプラスミドを補正用ウミシイタケルシフェラーゼレポーターベクターpRL-SV40 vector(Promega社製)と共にCV-1細胞にLipofect AMINE(Gibco社製)を用いてトランスフェクションした。CV-1はトランスフェクション前日に10% 牛胎仔血清(Gibco社製)、ペニシリン・ストレプトマイシン(それぞれ10000単位、1mg/ml、Gibco社製)を含有するDMEM(Gibco社製)2mlを入れた12穴プレートで、5×104 cells / mlの濃度で、37℃、5%CO2条件下で培養したものを用いた。トランスフェクション後、ポジティブコントロールはピオグリタゾン(武田社製)1μMを含む前述のDMEM培地で培養した。48時間培養後、細胞を回収し、Dual-Luciferase reporter assay system(Promega社製)でライセートを作製し、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Luminous CT-9000D, DIA-IATRON社)で測定した。ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性で割った値を相対ルシフェラーゼ活性とした。
【0136】
上述のアッセイ系を使用して一連のフムロン化合物(フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン)のPPARγ / RXR alpha活性化作用について検討した。それぞれ1、5、10、50μMの濃度で検討した結果、全てのフムロン化合物において活性が確認され、概ねその活性は10μMの時、ピオグリタゾン1μMに相当した(図44)。さらにテトラハイドロイソフムロンについても同様の活性が認められた(図45)。
【0137】
実施例10
融合蛋白質からなるPPARγ アゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0138】
ヒトPPARγ発現プラスミドの構築のために、human heart cDNA library(Gibco社製)からPPARγリガンド結合領域(LBD; 204a.a.-505a.a.)をクローニングした。クローニングしたORFはシークエンスを確認後、発現ベクターpBind(Promega社製)のBamHI-KpnI部位に接続し、PPARγと酵母Gal4タンパク質との融合タンパク質を発現するベクター、pGR-Gal4-PPARγを構築した。クローニングに使用したプライマーの配列は次の通りである。
【0139】
5’ GGATCCTTTCTCATAATGCCATCAGGTTTG 3’(配列番号31)
5’ GGTACCTTCCGTGACAATCTGTCTGAG 3’(配列番号32)
次に、pBindのGal4領域のN末端側にhuman Glucocorticoid receptor(GR)のN末端側配列(1a.a.-76a.a.)をGal4と読み枠が一致する様に接続した。 GRはheart cDNA library(Gibco社製)からPCRによりクローニングした。クローニングに使用したプライマーの配列は以下の通りである。
【0140】
5’ GCTAGCATGGACTCCAAAGAATCATTAAC 3’(配列番号33)
5’ TGGCTGCTGCGCATTGCTTA 3’(配列番号34)
レポータープラスミドとして、プロモーター領域にGal4結合サイトが5コピー導入されたホタルルシフェラーゼ発現ベクターであるpG5luc(Promega社製)を用いた。pGR-Gal4-PPARγとpG5lucをCV-1細胞にLipofectAMINE(Gibco社製)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクション後検体または対照(ピオグリタゾン)を添加した培地(DMEM、Gibco社製)に交換し、48時間培養後に細胞を回収した。細胞回収後Dual-Luciferase reporter assay system(Promega社製)で細胞溶解液を作製し、ホタルルシフェラーゼ活性をルミノメーター(Luminous CT-9000D, DIA-IATRON社)で測定した。また、細胞溶解液のタンパク質濃度をDc Protein asssay (BIO-RAD)により測定し、ホタルルシフェラーゼ活性の値をタンパク質濃度で標準化した。結果は、陰性対照の値を1としたときの相対値で表記した。
【0141】
上述のアッセイ系を使用して、Kettleエキスおよび一連のフムロン化合物(フムロン、コフムロン、イソフムロン、イソコフムロン)のPPARγ活性化作用について検討した。Kettleエキスは0.05、0.5、5μg/mlで、フムロン化合物はそれぞれ1、3、10μMの濃度で検討した結果、実施例9と同様に、試験を行った全ての試料において活性が確認された(図46)。
【0142】
実施例11
PPARαアゴニストスクリーニング系の構築と活性の評価結果を示す。
【0143】
PPARαについても、以下に記述した点以外は全てPPARγの場合と同様にスクリーニング系を構築した。クローニングに用いたプライマーの配列は以下の通りである。
【0144】
5’ GGATCCTTTCACACAACGCGATTCGTTTTG 3’(配列番号35)
5’ GGTACCGTACATGTCCCTGTAGATCTC 3’(配列番号36)
トランスフェクションもPPARγの系と同様に実施したが、PPARαの場合、対照にWy 14,643 (和光純薬社製)を使用した。
【0145】
上述のアッセイ系を用いて、水溶性エキスを50、100、500μg/mlの濃度で検討した結果、50、100μg/mlのときに水溶性エキスのPPARα活性化能が確認された(図47)。
【0146】
実施例12:食品への配合例
砂糖650gに水飴300gを150℃で加熱融解し、120℃に冷却後、クエン酸10gを加えた後に、実施例2に記載の水溶性エキスを30g、香料10gを添加後、撹拌し、均一化した後に、成形し、冷却してキャンディーを得た。
【0147】
実施例13
分画したシスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、およびトランスイソコフムロンを含有する画分の脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、水溶性エキス(実施例2記載)より、同エキスに含まれる、シスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、トランスイソコフムロンからなる画分(以下、「精製イソフムロン類画分」という)の分画を行った。水溶性エキスを塩酸で中和した後、凍結乾燥し、凍結乾燥物 3.5gをシリカゲルクロマトグラフィー(3.5×33cm)で分画した。カラムはヘキサン:酢酸エチル(2:1)で平衡化し、溶出した。溶出液を20mlずつフラクションコレクターで分取し、HPLCで純度を確認した(分析条件は参考例に記載)。24番目から60番目のフラクションを集め遮光下、ロータリーエバポレーターで濃縮乾固することにより、シスイソフムロン、トランスイソフムロン、シスイソアドフムロン、トランスイソアドフムロン、シスイソコフムロン、およびトランスイソコフムロンからなる精製イソフムロン類画分1gを得た。該画分の組成比は、HPLCのクロマトグラムの面積比に基づけば、イソコフムロン(シス型+トランス型):イソフムロン(シス型+トランス型):イソアドフムロン((シス型+トランス型)=50.2:27.1:22.7であった。1群8匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー)をCE2(日本クレア)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群(以下「C群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび1%水溶性エキスを添加した餌を与える群(以下「W群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよび上記精製イソフムロン類画分を0.3%添加した餌を与える群(以下「IH群」とする;本餌に含まれるイソフムロン類の含量とW群の餌に含まれるイソフムロン類の含量はほぼ等量である)の3群の設定を行った。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。尚本実験においては個別飼育を行い、毎日3.5gの餌を与えた。又ふるいを使用することにより食べ残した餌量の測定も行い、摂食量についてはその値を減じて計算した。1週後非絶食下で解剖を行ない、腹部静脈より全採血を行ない、中性脂肪の測定を実施例1の方法に従って測定した(図48)。IH群およびW群のいずれにおいても有意に血中中性脂肪量を低下させた。また肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ(図49〜51)、IH群、W群のいずれにおいても、コレステロール含量の有意な低下、および中性脂肪含量の減少傾向を確認した。また体重推移を図52に、また摂取カロリーあたりの体重増加量を図53に示す。W群において、有意な体重の低下、およびIH群において摂取カロリーあたりの体重増加が有意に少ないことが示された。以上の実施例より、精製イソフムロン類画分は、脂質代謝改善効果、血漿の中性脂肪低下効果、肝臓へのコレステロールの蓄積防止効果、および体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0148】
実施例14
分画したルプロンの脂質代謝改善効果についてC57BL/6マウス(雌)を用いて評価を行なった。即ち、ホップペレット(CASペレット、チェコスロバキア国、ザーツ産)より、ルプロンの精製を行った。約2.5kgのホップペレットを4リットルの酢酸エチルで3回抽出を行い、減圧濃縮を行い濃緑色のエキスを得た(329.17g)。同エキスのうち262.7gからシリカゲルカラムにより分画を行った。カラムはヘキサン−酢酸エチルの混液を用いてステップワイズで溶出させ、15個のフラクションを得た。3番目のフラクション(41.8g)についてシリカゲルカラムを用いて再度分画を行い、ヘキサン:酢酸エチル(20:1)溶液で溶出したフラクションを再結晶し、ルプロン(1.88g、白い針晶、収量約0.094%)を得た。また1群8匹の5週齢C57BL/6NCrj雌(日本チャールズリバー)をCE2(日本クレア)、および水を自由摂取させて1週間飼育した。その後、AIN76A(実施例2に記載)に0.2%コレステロールおよび0.3%セルロースを添加した餌を与える群(以下「C群」とする)、AIN76Aに0.2%コレステロールおよびルプロンを0.3%添加した餌を与える群(以下「L群」とする)の2群の設定を行った。餌の作成方法、および投与方法は実施例2に従った。試験食投与1週後、非絶食下で解剖を行なった。肝臓1gあたりの、コレステロール含量、中性脂肪含量、リン脂質含量を測定したところ(図54〜56)、L群においてコレステロール含量の有意な低下を確認した。また体重推移を図57に、また摂取カロリーあたりの体重増加量を図58に示す。L群において、有意な体重の低下、および摂取カロリーあたりの体重増加が有意に少ないことが示された。以上の実施例より、ルプロンは、脂質代謝改善効果、肝臓へのコレステロールの蓄積防止効果、および体重増加の抑制効果を有することが明らかになった。
【0149】
実施例15
C57BL/6に実施例8に示した高脂肪食を12週間摂取させ、インスリン抵抗性を惹起させたマウスに対して、水溶性ホップエキスを10日間連続経口投与(100、330mg/kg/day)を実施した。投与終了後、16時間絶食の後に耐糖能試験(OGTT)を実施した。また、参考例に記載した方法に従って調製したイソコフムロンの精製品(シス体とトランス体の混合物)を同じくインスリン抵抗性を惹起させたマウスに対して、10日間連続経口投与(10、30mg/kg/day)実施した。それぞれ投与終了後、16時間絶食の後に耐糖能試験(OGTT)を実施した。OGTTは、採血および血糖値測定後にグルコース水溶液を1g/kgで投与し、15、30、60分で採血および血糖値の測定を、120分で血糖値測定を行った。経時的な血中インスリン濃度変化をインスリン測定キット(森永生科学研究所)を用いて測定した。
【0150】
水溶性エキス投与群の血糖値とインスリン濃度の変動を図59および60に示した。水溶性エキス投与群(図中「W群」と表記)では耐糖能、インスリン抵抗性の改善が認められた。精製したイソコフムロン投与群(図中「IH群」と表記)の血糖値とインスリン濃度の変動を図61および62に示した。精製イソコフムロン投与群でも水溶性エキス投与群と同様、耐糖能の改善が認められた。さらに、インスリン濃度についてもブドウ糖投与前の濃度が有意に低下し、その後の濃度についても低下傾向が認められたことから、インスリン抵抗性の改善が示唆された。以上の結果から、10日間のホップエキス短期投与によって高脂肪食負荷マウスのインスリン抵抗性が改善すること、またその作用はイソコフムロン精製品についても同様に認められること、が確認された。
【0151】
実施例16
ApoEノックアウトマウス(Jackson laboratoryより輸入)、雄8週齢を18匹購入し、実施例1、表1に記載の高脂肪・高コレステロール食摂取下で、水溶性エキス群(実施例2に記載)(W)およびコントロール群(C)に9匹づつ群分けし、10週間飼育を行った。10週間経過後、エーテル麻酔下、腹部大静脈より脱血により屠殺した。肝臓、脂肪等の臓器を取得後、肝臓については液体窒素で瞬時に凍結した。また心臓を付けた状態で大動脈を摘出した。大動脈については、胸部大動脈と腹部大動脈を展開したまま10%ホルマリン液で固定を行い、その後Oil−red−O染色を行った。大動脈弓、大動脈弁については10%ホルマリン液に浸漬固定後、輪切り状態でパラフィン包埋し、薄切後、Hematoxylin EosinおよびElastica Van gieson染色を行った。Oil−red−O染色を行った胸部大動脈、腹部大動脈の粥状硬化病巣面積、血管総面積、EVG染色を行った大動脈弓、大動脈弁の断面内膜面積、および断面総面積の解析は微小計測用タブレット・メジャーユニット VM−30(オリンパス光学)を用いて行った。結果の算出は胸部大動脈、腹部大動脈のそれぞれについて粥状硬化病変面積率(=Oil−red−O濃染面積÷血管総面積×100)、大動脈弓、大動脈弁のそれぞれについて内膜肥厚度(=内膜面積÷中膜面積、より詳しくは=内膜断面積÷(内膜〜中膜断面積−内膜断面積))を算出した。血漿中のホモシステイン量について、ホモシステイン測定試薬(ユニチカ社)を用いて添付のマニュアルに従って測定した。肝臓中性脂肪については実施例1の方法に従って測定した。
【0152】
その結果、胸部大動脈粥状硬化巣面積(図63)、腹部大動脈粥状硬化巣面積(図64)、大動脈弓内膜肥厚度(図65)、大動脈弁内膜肥厚度(図66)のいずれも水溶性エキス(W)により減少が観察された。併せて解剖時の体重(図67)、および腹腔内脂肪重量(図68)はW群で有意に低く、また肝臓の中性脂肪含量の減少が観察された(図69)。さらに血漿中のホモシステイン量が水溶性エキス(W)により減少することが示された(図70)。
【0153】
以上から、イソフムロン類を主成分とする水溶性エキス(W)は優れた抗動脈硬化作用効果、脂質代謝改善効果、体重増加抑制効果、内臓脂肪の蓄積抑制効果を有することが明らかになった。
【0154】
実施例17
ホップエキスおよび水溶性エキスの大腸粘膜への影響について評価を行った。指標としてはFischer344ラット(雄)における、大腸粘膜のPGE2産生量を用いた。具体的には4週齢のFischer344雄ラット(日本チャールスリバー社)をAIN−76A(実施例3に記載)および水を自由摂取させ、3日間飼育し、馴化させた。その後、5週齢より、1群当たり4匹ずつ合計3群に群分けし、試験食投与を開始した。即ち、1群はAIN−76A群(C)、2群はAIN−76Aに1%のホップエキス(実施例2に記載)を添加した群(H)、3群はAIN−76Aに1%水溶性エキス(実施例2に記載)を添加した群(W)である。1週後、解剖を行い、大腸を摘出し、生理食塩水にて腸内容物を洗浄後、縦方向に切り開いた。この大腸の粘膜組織をスライドグラス(マツナミ)により削り取り、500μlのPBSに懸濁させた。本粘膜組織をホモジナイザーにより破砕し、10000gで5分間遠心し、上清をPGE2測定に供した。PGE2測定は、プロスタグランジンE2エンザイムイムノアッセイシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社、製品コードRPN222)を使用し、その操作手順に従い定量を行った。
【0155】
その結果、ホップエキス1%混餌投与群(H)に有意なPGE2産生量の増加を確認したが、水溶性エキス1%混餌投与群(W)には有意なPGE2産生量の増加は認められなかった(図71)。また、ホップエキス1%混餌投与群(H)には盲腸の肥大および下痢の症状が認められた。
【0156】
以上から、高濃度で摂取した場合、フムロン類を主成分とするホップエキスを投与した場合に観察される炎症がイソフムロン類を主成分とする水溶性エキスを投与した場合には認められないことが明らかになった。
【0157】
本発明は下記の通りである。
(1) 式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、または式(V)の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬組成物。
(2) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(1)に記載の医薬組成物。
(3) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物。
(4) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化組成物。
(5) 食品の形態で提供される、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の組成物。
(6) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品。
(7) 健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または病者用食品である、(6)に記載の食品。
(8) 飲料の形態で提供される、(6)または(7)に記載の食品。
(9) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる医薬の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(10) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(9)に記載の使用。
(11) インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる組成物の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(12) PPAR活性化用組成物の製造のための、(1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの使用。
(13) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善方法。
(14) PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、(13)に記載の方法。
(15) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身方法。
(16) (1)に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスの治療上の有効量を哺乳類に投与することを含んでなる、PPAR活性化方法。
(17) 有効成分が食品の形態で投与される、(13)、(15)、または(16)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】実施例1における、血中総コレステロール濃度の推移を示した図である。図中の*;危険率5%以下を示すものである(以下同様)。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図2】実施例1における、血中HDLコレステロール濃度の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図3】実施例1における、動脈硬化指数の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図4】実施例1における、血中中性脂肪濃度の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図5】実施例1における、体重1kgあたりの腎臓周囲脂肪重量を示した図である。
【図6】実施例1における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図7】実施例1における、マウスの体重推移を示した図である。黒四角はKettle投与群を黒三角はコントロール投与群を表す。
【図8】実施例1における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図9】実施例1における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図10】実施例1における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)をを示した図である。
【図11】実施例2における、血中総コレステロール濃度の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図12】実施例2における、血中HDLコレステロール濃度の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図13】実施例2における、動脈硬化指数の推移を示した図である。有意差の表示は行っていない。
【図14】実施例2における、リポタンパク質の分布を示した図である。コントロール群および水溶性エキス投与群のマウスの血漿をゲルろ過により分析した。水溶性エキスにより、HDL画分の特異的な上昇が示されている。
【図15】実施例2における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。
【図16】実施例2における、マウスの体重推移を示した図である。
【図17】実施例3における、マウス1匹あたりの1日の摂食量の推移を示した図である。
【図18】実施例3における、マウスの体重推移を示した図である。
【図19】実施例3における、解剖時の血中総コレステロール濃度を示した図である。
【図20】実施例3における、解剖時の血中HDLコレステロール濃度を示した図である。
【図21】実施例3における、解剖時の動脈硬化指数を示した図である。
【図22】実施例3における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図23】実施例3における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)を示した図である。
【図24】実施例3における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図25】実施例3における、体重1kgあたりの臓器周囲(副精巣周囲および腎臓周囲)脂肪重量を示した図である。
【図26】実施例4における、解剖時血中総コレステロール濃度を示した図である。
【図27】実施例4における、解剖時血中HDLコレステロール濃度を示した図である。
【図28】実施例4における、解剖時動脈硬化指数を示した図である。
【図29】実施例4における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg)を示した図である。
【図30】実施例4における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg)を示した図である。
【図31】実施例4における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg)を示した図である。
【図32】実施例5における、各遺伝子の酸性リボゾーム蛋白質36B4遺伝子に対する相対発現量を示した図である。
【図33】実施例6における、1日あたりのマウスの飲水量を示した図である。
【図34】実施例6における、5週目非絶食時の血糖値を示した図である。
【図35】実施例6における、4週目絶食時の血糖値を示した図である。
【図36】実施例6における、飼育2週目、4週目の絶食時、および6週目(解剖時)非絶食時の血中中性脂肪濃度を示した図である。
【図37】実施例6における、飼育2週目、4週目の絶食時、および6週目(解剖時)非絶食時の血中遊離脂肪酸濃度を示した図である。
【図38】実施例6における、解剖時副精巣周囲脂肪におけるレジスチン遺伝子の酸性リボゾーム蛋白質36B4に対する相対発現量を示した図である。
【図39】実施例7における、耐糖能試験の結果を示した図である。
【図40】実施例7における、インスリン感受性試験の結果を示した図である。
【図41】実施例8における、体重増加の推移を示した図である。
【図42】実施例8における、1日あたりの餌の摂食量の推移を示した図である。
【図43】実施例8における、耐糖能試験の結果を示した図である。
【図44】実施例9における、フムロン類およびイソフムロン類のPPARγ活性を示した図である。
【図45】実施例9における、テトラハイドロイソフムロンのPPARγ活性を示した図である。
【図46】実施例10における、ホップエキス、フムロン類およびイソフムロン類のPPARγ活性を示した図である。
【図47】実施例11における、水溶性ホップエキスのPPARα活性を示した図である。
【図48】実施例13における血中中性脂肪濃度(mg/dl)を示した図である。
【図49】実施例13における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg/g)を示した図である。
【図50】実施例13における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg/g)を示した図である。
【図51】実施例13における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg/g)を示した図である。
【図52】実施例13における、体重の推移を示した図である。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキス投与群(W群)を、三角形が精製したイソフムロン類投与群(IH群)をそれぞれ示す。
【図53】実施例13における、カロリーあたりの体重増加量を示した結果である(g/kcal)。
【図54】実施例14における、肝臓1gあたりのコレステロール量(mg/g)を示した図である。
【図55】実施例14における、肝臓1gあたりの中性脂肪量(mg/g)を示した図である。
【図56】実施例14における、肝臓1gあたりのリン脂質量(mg/g)を示した図である。
【図57】実施例14における、体重の推移を示した図である。菱形がコントロール群(C群)を、四角形がルプロン投与群(L群)をそれぞれ示す。
【図58】実施例14における、カロリーあたりの体重増加量を示した結果である(g/kcal)。
【図59】実施例15における、水溶性ホップエキス投与実験群のOGTTの際の血糖値変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキスを100mg/kg/day投与した群(W100群)を、三角形が水溶性エキスを330mg/kg/day投与した群(W330群)をそれぞれ示す。
【図60】実施例15における、水溶性ホップエキス投与実験群のOGTTの際の血中インスリン濃度変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が水溶性エキスを100mg/kg/day投与した群(W100群)を、三角形が水溶性エキスを330mg/kg/day投与した群(W330群)をそれぞれ示す。
【図61】実施例15における、精製イソコフムロン投与実験群のOGTTの際の血糖値変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が精製したイソコフムロンを10mg/kg/day投与した群(IH10群)を、三角形が精製したイソコフムロンを30mg/kg/day投与した群(IH30群)をそれぞれ示す。
【図62】実施例15における、精製イソコフムロン投与実験群のOGTTの際の血中インスリン濃度変動を示したものである。菱形がコントロール群(C群)を、四角形が精製したイソコフムロンを10mg/kg/day投与した群(IH10群)を、三角形が精製したイソコフムロンを30mg/kg/day投与した群(IH30群)をそれぞれ示す。
【図63】実施例16において解析した胸部大動脈粥状硬化病巣の面積(%)を示した図である。
【図64】実施例16において解析した腹部大動脈粥状硬化病巣の面積(%)を示した図である。
【図65】実施例16において解析した大動脈弓内膜肥厚度を示した図である。
【図66】実施例16において解析した大動脈弁内膜肥厚度を示した図である。
【図67】実施例16において測定した解剖時の体重(g)を示した図である。
【図68】実施例16において測定した解剖時の腹腔内脂肪重量(g)を示した図である。
【図69】実施例16において解析した解剖時の肝臓中性脂肪含量(mg/g)を示した図である。
【図70】実施例16において解析した解剖時の血漿ホモシステイン量(nM/L)を示した図である。
【図71】実施例17において解析した大腸のPGE2産生量を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[上記式中、R1およびR2はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表し、R3およびR4は水酸基、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表すが、R3とR4が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(II):
【化2】
[上記式中、R5、R6、およびR7は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R8およびR9は水素原子、水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R10、または−CH(−OH)R10を表し、R10はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R8とR9が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(III):
【化3】
[上記式中、R11およびR12は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R13およびR14は水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R15、または−CH(−OH)R15を表し、R15はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R13とR14が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(IV):
【化4】
[上記式中、R16、R17、およびR18は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表す。]、または
式(V):
【化5】
[上記式中、R19はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す。]
の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる食品。
【請求項2】
PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化用食品。
【請求項5】
健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または病者用食品である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品。
【請求項6】
飲料の形態で提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食品。
【請求項1】
式(I):
【化1】
[上記式中、R1およびR2はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表し、R3およびR4は水酸基、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表すが、R3とR4が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(II):
【化2】
[上記式中、R5、R6、およびR7は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R8およびR9は水素原子、水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R10、または−CH(−OH)R10を表し、R10はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R8とR9が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(III):
【化3】
[上記式中、R11およびR12は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表し、R13およびR14は水酸基、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、−C(=O)R15、または−CH(−OH)R15を表し、R15はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表すが、R13とR14が同時に水酸基を表すことはない。]、
式(IV):
【化4】
[上記式中、R16、R17、およびR18は水素原子、C1−6アルキル基、またはC2−6アルケニル基を表す。]、または
式(V):
【化5】
[上記式中、R19はC1−6アルキル基またはC2−6アルケニル基を表す。]
の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状の治療、予防、または改善に用いられる食品。
【請求項2】
PPARの活性化により治療、予防、または改善しうる疾患または症状が、糖尿病、糖尿病性合併症、脂質代謝異常、高脂血症、インスリン抵抗性またはこれに関連する疾患、肥満症、または体重増加である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、体重増加の抑制、または痩身に用いられる食品。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはこれらの薬学上許容される塩もしくは溶媒和物、あるいはホップエキスおよび/または異性化ホップエキスを有効成分として含んでなる、PPAR活性化用食品。
【請求項5】
健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または病者用食品である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品。
【請求項6】
飲料の形態で提供される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の食品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【公開番号】特開2010−18631(P2010−18631A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240557(P2009−240557)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2004−18533(P2004−18533)の分割
【原出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年4月15日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.45 Supplement 2」に発表
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2004−18533(P2004−18533)の分割
【原出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成14年4月15日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.45 Supplement 2」に発表
【出願人】(000253503)キリンホールディングス株式会社 (247)
【Fターム(参考)】
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