説明

脂質組成を調節するための組成物および方法

本主題は、薬用植物および油の新規組成物、ならびに動物における脂肪酸組成および代謝を調節するための方法に関する。一態様において、本主題は、ローズマリー抽出物と、オレガノ抽出物と、多価不飽和油とを含む組成物に関与する。特定の実施形態において、多価不飽和油は、魚油またはその誘導体である。いくつかの実施形態において、主題は、リポタンパク質粒子もしくは細胞膜の食餌必須脂肪酸組成を調節するため、必須脂肪酸代謝を調節するため、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼの活性を制御するため、心臓血管の健康を向上させるため、ならびに/または細胞増殖性の疾病および疾患を抑制するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、薬用植物および油の新規組成物、ならびに動物における脂肪酸組成および代謝を調節するための方法に関する。一態様において、本主題は、ローズマリー抽出物と、オレガノ抽出物と、多価不飽和油とを含む組成物に関与する。特定の実施形態において、多価不飽和油は、魚油またはその誘導体である。いくつかの実施形態において、本発明の主題は、リポタンパク質粒子もしくは細胞膜の食餌必須脂肪酸組成を調節するため、必須脂肪酸代謝を調節するため、リポキシゲナーゼ(LOX)およびシクロオキシゲナーゼ(COX)の活性を制御するため、心血管の健康を向上させるため、ならびに/または細胞増殖性の疾病および疾患を抑制するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
必須脂肪酸(EFA)は、通常、18、20、または22炭素原子の鎖長を有する、自然に発生する不飽和脂肪酸である。脂肪酸の主な自然形態は、トリグリセリド分子の一部としてである。トリグリセリドの形態は、通常、生物の体内で脂肪酸の吸収、貯蔵、および利用を促進するのに役立つ。遊離脂肪酸もまた体内で自然に発生するが、その程度はかなり少ない。
【0003】
人体は、必要な飽和脂肪酸のほとんどを生成することが可能である。しかしながら、人体は、必要な不飽和脂肪酸の全てを生成することはできない。全てのEFAはヒトの食物源に見出すことができるが、人体は、リノール酸およびαリノレン酸から他の全てのEFAを合成できる酵素を保有するため、これらの2つの脂肪酸のみが本当に必須であると考えられる。また、上記が事実である一方、ヒトの代謝がエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を形成する相対的な能力はそれほど高くはない。この能力の低さが、食餌における健康的なオメガ‐3脂肪酸の相対的な割合を増加させるために、魚油等の補助的な食用油が必要な理由である。EPAおよびDHAは、最も重要な、いわゆるオメガ‐3脂肪酸を構成する。魚油は、これらのオメガ‐3脂肪酸の一般的な源として知られている。例えば、種油、植物油、藻油、および卵等の、オメガ‐3脂肪酸の追加の源もまた既知である。
【0004】
疫学的観察は、魚油および哺乳動物宿主内で生成されるそれらに由来する脂質生成物が、血小板凝集および血清トリグリセリドを減少させ(心筋梗塞、高血圧、粥状動脈硬化のリスクを低下させ得る)、特定の種類の癌のリスクを低下させることに関与する可能性があることを示唆している。また、魚油に由来するEPAおよびDHAが、ほとんどの細胞の膜において重要な構造的役割を果たし、全血粘度の低下ならびに赤血球の柔軟性および変形能の増加によって表されるように、細胞膜の流動性に影響を及ぼすことが示されている。さらに、EPAおよびDHAを含むEFAは、プロスタグランジンおよびトロンボキサン等のプロスタノイド、ロイコトリエン、ならびにヒドロキシ脂肪酸を含む化合物のクラスである、エイコサノイドの既知の前駆体である。エイコサノイドは、血小板凝集、血管壁の透過性および緊張、血圧、ならびに免疫炎症反応に影響を及ぼすことが分かっている。
【0005】
n‐6系脂肪酸とn‐3系脂肪酸の間の食餌による平衡は、膜の脂肪酸組成の制御における有意な要因である。また、n‐3食餌脂肪酸のn‐6食餌脂肪酸に対する比率の減少が、健康上の問題、疾患、および病態の発生率の増加に関係してきている。2系統のエイコサノイドの前駆体であるアラキドン酸(n‐6)の過剰な存在、またはその前駆体であるリノール酸(n‐6)の過剰な存在は、血栓形成の増加、出血時間の短縮、多形核単球および白血球の炎症反応における増加、ならびにアレルギーに対する平滑筋の反応性の増加をもたらし得る。対照的に、魚を食べる集団の食餌のように、主にn‐3系の長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA)に基づく食餌は、出血時間における若干の増加、ならびに、粥状動脈硬化等の循環器疾患、関節炎、喘息、および他の疾病の発生率の低下をもたらす。これは、n‐3系のこれらの長鎖PUFAが、3系統のエイコサノイドの前駆体であるという事実に一部起因している。
【0006】
魚油を摂取することにおける主な目的のうちの1つは、それらに見出される重要な構成成分を組織膜に取り込ませることであり、そこで、構成成分は、細胞シグナル伝達事象を調節し(例えば、炎症を減少させる)、膜の流動性を増加させる役割を果たす。エイコサノイドを形成するためのホスホリパーゼの作用により、細胞膜から脂肪酸を放出するように細胞が活性化されると、EPAおよびDHAは、COXおよびLOX酵素のためにアラキドン酸と競合する。放出されたアラキドン酸が炎症性のプロスタグランジン生成物(例えば、PGE)を生じさせる一方で、魚油の脂質は、AA(アラキドン酸)に由来する生成物(例えば、PGEおよびLTB)よりも有意に炎症を引き起こしにくいプロスタグランジンおよびリポキシゲナーゼ生成物(例えば、PGEおよびLTB)を生成する。さらに、レゾルビンおよびプロテクチンとして知られる特定の分子は、魚油に由来する多価不飽和脂質EPAおよびDHAのみから形成される。これらの新しく発見された生成物は、炎症の消散を司る。
【0007】
前立腺癌、乳癌、および肺癌等の癌の早期診断および治療、ならびに循環器疾患の治療および予防において、目覚しい進歩がなされてきた。しかしながら、循環器疾患および癌は、依然として、米国における疾患と関連する死亡の主要原因である。有益な脂質代謝を改善し、多価不飽和脂質の生化学的経路および生体膜への取り込みを促進する、新規栄養補助食品の必要性が残っている。そのような栄養補助食品は、例えば、心血管の健康を向上させる、ならびに/または、癌等の細胞増殖性の疾病および疾患を治療もしくは予防することを含む、有益な健康への影響を促進する。
【0008】
出願人は、優良で有益な多価不飽和脂質の有意に増強された取り込みおよび代謝、ならびに健康効果に結果の改善を提供する、新規薬用植物組成物を予期せず発見した
【発明の概要】
【0009】
本発明の主題は、薬用植物および油の新規組成物、ならびに動物における必須脂肪酸組成および代謝を調節するための方法に関する。一態様において、本主題は、ローズマリー抽出物と、オレガノ抽出物と、多価不飽和油とを含む組成物に関与する。一態様において、多価不飽和油は、魚油等の海洋生物由来の油であり得る。一実施形態において、組成物は、治療的に有効な量のローズマリーの超臨界抽出物と、オレガノの超臨界抽出物と、魚油または多価不飽和食餌性脂肪とを含む油を含む。さらなる実施形態において、魚油または多価不飽和食餌性脂肪を含む油は、野生で捕獲されたアラスカサーモンの油等のサーモン油である。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明の主題は、リポタンパク質粒子もしくは細胞膜の食餌必須脂肪酸組成を調節するため、必須脂肪酸代謝を調節するため、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼの活性を制御するため、心血管の健康を向上させるため、ならびに/または細胞増殖性の疾病および疾患を抑制するための方法に関する。
【0011】
出願人は、本発明の主題の組成物の投与が、血清および/または細胞膜の脂肪酸含有量の予期せぬ迅速な修正、「善玉脂肪」の「悪玉脂肪」に対する比率の予期せぬ増加、ならびに、c‐RP(c‐反応性タンパク質)の予期せぬ減少、LDL(「悪玉」コレステロール)の予期せぬ減少、およびコレステロール/HDL比の予期せぬ減少をもたらすことを思いがけず発見した:それらは全て、ヒトの健康な脂質プロファイルにおける改善を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の主題のある例示的な組成物(本明細書において、図面を参照して「WholeMega」と示される)(2gまたは4g/日)の摂取は、容易に検出可能な血清レベルのEPA(オメガ‐3PUFAに由来する代表的な魚油)を生成する。血清中のEPAの濃度は、摂取される量と相関する。
【図2】ヒトボランティア(n=8)に用量2gのWholeMegaを投与し、脂質分析のために連続的に血液試料を採取した。平均EPA、オレイン酸、およびパルミトレイン酸(それぞれ、WholeMegaオメガ‐3、‐5、および‐7多価不飽和脂肪酸の代表例である)における時間依存性の変化を図に表す。脂質クラスにおける変化の幅を明らかにするために、オメガ3(EPA)、オメガ7(パルミトレイン酸)、およびオメガ9(オレイン酸)における変化をプロットした。破線は、単にベースライン(投与前)レベルを示す。WholeMega由来の脂質には、最長24時間まで持続する変化を見ることができる。
【図3】WholeMega(2g)を摂取した後の、オメガ‐3脂質(上)ならびにオメガ‐7およびオメガ‐9脂質(下)の細胞(PBMC)膜含有量における変化。1日2gの用量のWholeMegaを3日間対象に投与した。投与前と、3回目かつ最終用量の投与後24時間との間の細胞膜脂質組成における相違を比較した。
【図4】2グラムまたは4グラムのいずれかのWholeMegaの摂取は、血中AA/EPA比に容易に検出可能な変化をもたらす。2gの用量がこの比率に平均37%の減少をもたらすのに対し、4gの用量は、血清AA/EPA比に平均50%の減少をもたらす。データは、1度に2gのWholeMegaを摂取した8人の対象および4gのWholeMegaを摂取した5人の対象に由来する。データは平均値+/‐SEで表す。
【図5】WholeMegaを摂取した固体における血清AA/EPA比の変化の例を上のグラフに示す。データは平均値+/‐SEで表す。全てのWholeMegaの値は、処方前の値とは有意に(p<0.05)異なる。
【図6】1日当たり2gまたは4gのいずれかのWholeMegaの摂取は、末梢血単核球の膜組成に変化をもたらす。WholeMegaに由来するEPAのより高い取り込みの結果として、膜のアラキドン酸が減少する。このプロットの重要な点は、たとえ2g/日のWholeMegaであっても、組織(白血球)の膜組成における健康的な変化を達成し、アラキドン酸に由来する炎症の可能性を減少させることが可能であるということである。上記プロットは、連続3日間、2g/日のWholeMegaを摂取した4人の被験者から得たデータに由来する。末梢血単核球は、投与前およびWholeMegaを投与した3日後に採取した。重要なオメガ‐3脂肪酸であるEPAの含有量に関しては、細胞膜脂質組成が増加する。
【図7】ホスホリパーゼの作用によって細胞膜から遊離したアラキドン酸の代謝を示す略図。放出されたアラキドン酸は、それを炎症の原因となる脂質生成物(エイコサノイド等)に変換するシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ酵素のための基質としての役割を果たす。
【図8】炎症性脂質の減少において、EPA等の特定の多価不飽和脂肪酸が有する役割を示す略図。魚由来のEPA等の油は、細胞膜に取り込まれ、酵素ホスホリパーゼの活性により遊離される。放出されたEPAは、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ酵素のための基質としての役割を果たすが、アラキドン酸によって生成されるものと比較して、生成される生成物の炎症の可能性は大きく減少する。
【図9】ヒト肺癌A549異種移植片(COX‐2を過剰発現する)およびH1299異種移植片(COX‐2を発現しない)において、特別に配合された魚油食餌の抗腫瘍効果を調べた。EPAは、A549細胞の増幅を阻害するが、H1299細胞の増幅は阻害しない。
【図10】ヒト肺癌A549異種移植片(COX‐2を過剰発現する)およびH1299異種移植片(COX‐2を発現しない)において、特別に配合された魚油食餌の抗腫瘍効果を調べた。EPAに曝露されたヒト肺癌A549およびH1299細胞におけるPGE2およびPGE3の生成(Yang,P.et al.J.Lipid Res.2004)。
【図11】PGE2は、A549細胞の増殖を若干刺激する一方で、PGE3は、これらの特定の細胞の増殖を阻害する。
【図12A】EPAの抗増殖活性は、A549細胞におけるPGE3の形成と関連する。
【図12B】EPAの抗増殖活性は、A549細胞におけるPGE3の形成と関連する。
【図13】細胞におけるこの酵素(COX‐2)の発現をブロックするCOX‐2 siRNAでトランスフェクトしたA549細胞において、EPAの抗増殖効果は減少する。
【図14】肺癌における魚油由来のPGE3の代謝の可能な機構の例。
【図15】3つの異なる魚油生成物、WholeMega(本発明の主題の組成物)、Nordic Natural Ultimate Omega、およびCarlson Oilで処理したA549細胞において、PGE2およびPGE3の形成を調べた。異なる魚油で処理したA549細胞におけるPGE2およびPGE3の形成の比較が示されており、比較は等しい量(μg/mL)のこれらの魚油生成物を使用して行われた。
【図16】異なる魚油で処理したA549細胞におけるPGE2およびPGE3の形成の比較が示されており、比較は魚油生成物中の異なる量(μg/mL)のEPAを使用して行われた。
【図17】A549およびH1299ヒト非小細胞肺癌細胞における魚油の抗増殖効果を示す。COX‐2が過剰発現される癌細胞において、本発明の主題の組成物(WholeMega)は、予期せずに、他の魚油組成物よりも実質的に優れた結果を提供した。
【図18A】ヒトA549肺癌細胞におけるCOX‐2、5‐および12‐LOXならびにAkt/pAktの発現に対するWholeMega、Ultimate Omega、およびCarlson Super Fish Oil生成物の効果。関連性のあるタンパク質発現をウエスタンブロット法により測定し、3つの魚油生成物の濃度測定によって定量化した(図18A)。WholeMega(図18B)およびCarlsonの魚油(図18C)について、異なる用量の魚油でのタンパク質発現の変化率を示す。
【図18B】ヒトA549肺癌細胞におけるCOX‐2、5‐および12‐LOXならびにAkt/pAktの発現に対するWholeMega、Ultimate Omega、およびCarlson Super Fish Oil生成物の効果。関連性のあるタンパク質発現をウエスタンブロット法により測定し、3つの魚油生成物の濃度測定によって定量化した(図18A)。WholeMega(図18B)およびCarlsonの魚油(図18C)について、異なる用量の魚油でのタンパク質発現の変化率を示す。
【図18C】ヒトA549肺癌細胞におけるCOX‐2、5‐および12‐LOXならびにAkt/pAktの発現に対するWholeMega、Ultimate Omega、およびCarlson Super Fish Oil生成物の効果。関連性のあるタンパク質発現をウエスタンブロット法により測定し、3つの魚油生成物の濃度測定によって定量化した(図18A)。WholeMega(図18B)およびCarlsonの魚油(図18C)について、異なる用量の魚油でのタンパク質発現の変化率を示す。
【図19】Wholemegaで処理したヒト非小細胞肺癌A549細胞における炎症遺伝子アレイの発現。有意に減少したものの20%未満であった遺伝子を上の図に示し、より高い程度にまで(20〜50%)減少したものを下の図に示す。
【図20】Wholemegaで処理したRAWマクロファージ細胞における炎症遺伝子アレイの発現。記号(*)は、WholeMegaにより20%を超えて減少した発現レベルを示す。RAW細胞のCOXおよび5‐LOXならびにホスホリパーゼと関連する受容体または酵素の発現は、未処理の対照細胞と比較して減少した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「投与者」、「投与すること」、および「投与」は、健全な医療行為において、治療効果を提供するための様式で対象に組成物を送達する任意の方法を指す。
【0015】
本明細書で使用される句「誘導体」は、特定の化学物質の化合物または分子の任意の水和物、溶媒和化合物、塩、ラセミ体、異性体、鏡像異性体、プロドラッグ、代謝物、エステル、または他の類似体もしくは誘導体を指す。用語「誘導体」はまた、開示される化合物の加水分解、還元、または酸化生成物を含むが、これらに限定されない、開示される化合物に対する修飾も意味する。加水分解、還元、および酸化反応は、当該技術分野において既知である。
【0016】
用語「調節すること」は、生物の生物学的活性、機能、健康、または状態に影響を及ぼすプロセスを指し、そのような生物学的活性、機能、健康、または状態は、その生物の総体的な健康および福祉と一致する様式において維持、増強、減少、または処置される。生物の生物学的活性、機能、健康、または状態を「増強する」という用語は、増大させること、強化すること、補強すること、または改善するプロセスを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、活性薬剤もしくは成分、または薬学的に活性な薬剤もしくは成分(本明細書において同義である)の「有効量」または「治療的な有効量」という句は、投与されると治療効果を有するのに十分な薬学的に活性な薬剤の量を指す。治療的に有効な量の薬学的に活性な薬剤は、症状の緩和をもたらすことができるか、もたらすか、またはもたらすことが予測される。有効量の薬学的に活性な薬剤は、治療される特定の状態(単数または複数)、状態の重症度、治療の期間、使用される組成物の特定の構成要素等の要因によって異なる。
【0018】
生物の生物学的活性、機能、健康、または状態を「増強する」という用語は、増大させること、強化すること、補強すること、または改善するプロセスを指す。
【0019】
用語「エイコサノイド」は、アラキドン酸およびリノール酸に由来する等、多価不飽和脂肪酸に由来する化合物のクラスのうちのいずれかを指す。エイコサノイドは、オメガ‐3(ω‐3)またはオメガ‐6(ω‐6)EFAのいずれかに由来する。ω‐6エイコサノイドは一般に抗炎症性であるが、ω‐3’sはその程度が低い。エイコサノイドには、プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、およびロイコトリエンの4つのファミリーが存在する。それぞれに、ω‐3またはω‐6のいずれかのEFAに由来する2つまたは3つの別の系統が存在する。これらの系統の異なる活性は、ω‐3およびω‐6脂肪の特定の健康への影響と相関してきた。本発明の主題の組成物はまた、多価不飽和脂質EPAおよびDHAから形成されるレゾルビンおよびプロテクチンの生成または代謝を調節することによって、本明細書に記載される生理学的効果を調節するができる。
【0020】
用語「オキシゲナーゼ」は、酸素分子のその基質内への取り込みを触媒する酵素のクラスのいずれかを指す。
【0021】
本明細書で使用される用語「超臨界気体」または「超臨界流体」は、温度臨界点まで加熱された気体を指し、その温度を超えると、気体は圧力に関わらず、その気体状態を維持し、液体にならない。その臨界点を超える温度まで加熱された気体は、圧縮されると非常に高密度になるため、その特徴は流体の特徴に似ているが、液体になるであろう。超臨界流体が要求される用途において、二酸化炭素が一般的に使用される。超臨界流体の一般的な特性および抽出プロセスにおける超臨界流体の一般的な使用は、例えば、Taylor,Supercritical Fluid Extraction,Wiley,1996;McHugh and Krukonis,Supercritical Fluid Extraction:Principles and Practice,2nd ed.,Butterworth‐Heinemann,1994、およびWilliams and Clifford,Supercritical Fluid Methods and Protocols,Humana Press,2000に記載され、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
出願人は、多価不飽和油と混合された薬用植物抽出物を含む混合物を開発した。好ましい実施形態において、多価不飽和油は、例えば、野生で捕獲されたアラスカサーモンを含む、野生で捕獲された鮭等の、特有の海洋生物由来の油である。出願人の組成物は、組成物のいくつかの成分が超臨界CO抽出プロセスを介して調製されるという点で特有である。従来の溶媒系抽出法とは異なり、超臨界CO抽出は、調製物中に化学的残留物を残さずに、薬用植物における天然産物を得ることを可能にする。
【0023】
本明細書で使用される用語「超臨界抽出」は、超臨界流体を用いて、試料から疎水性化合物を抽出することができる技術を指す。圧力および温度がそれらの臨界点を超えて増加するにつれて、超臨界流体の溶媒和力が増加し、疎水性分子の単離に効果的な溶媒を生成する。用語「超臨界抽出物」または「SCE」は、超臨界抽出によって調製される抽出物を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪酸」は、遊離形態、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、それらのエステルもしくは溶媒和物、それらの組み合わせ、またはそれらの薬学的に許容される塩であり得る、炭素原子数6〜26の飽和または不飽和の脂肪酸を指す。好ましい実施形態において、本発明の主題の組成物中の脂肪酸は、一般に、体内における脂肪酸の吸収、貯蔵、およびの利用を促進するのに役立つトリグリセリド分子の形態で存在する。いくつかの実施形態において、本発明の主題の組成物中の脂肪酸は、遊離脂肪酸として、トリグリセリドの一部として、その塩として、またはそれらの組み合わせとして存在する。
【0025】
「必須脂肪酸」(EFA)は、人体によって製造されないため、食餌において摂取しなければならない脂肪である。EFAは、リノール酸およびその誘導体を含むオメガ‐6EFAと、αリノレン酸およびその誘導体を含むオメガ‐3EFAの2つのグループに分類される。オメガ‐3およびオメガ‐6EFAはどちらも多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。この2つの種類を区別するものは、それらの炭化水素鎖における(分子のメチル末端に対して)最初の二重結合の配置である:オメガ‐3EFAは、3番目の炭素の位置に第1の二重結合を有し、一方、オメガ‐6EFAは、6番目の炭素の位置に第1の二重結合を有する。全てのEFAはヒトの食物源に見出すことができるが、人体は、リノール酸およびαリノレン酸から他の全てのEFAを合成できる酵素を保有するため、これらの2つの脂肪酸のみが、本当に必須であると考えられる。また、上記は事実であるものの、ヒトの代謝がEPAおよびDHAを形成する相対的な能力はそれほど高くはなく、それが、食餌における健康的なオメガ‐3脂肪酸の相対的な割合を増加させるために、なぜ補助的な魚油が必要であるかの理由である。
【0026】
好ましいオメガ‐3脂質は、例えば、αリノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含む。オメガ‐6脂質は、例えば、リノール酸(LA)、アラキドン酸(AA)、ジホモ‐リノール酸(DHGA)、およびγ‐リノール酸(GLA)を含む。
【0027】
【表1】

【0028】
以下は、本明細書に含まれるデータを提供する、本発明の主題の組成物(WholeMega compositions)の分析において使用する場合、何を「善玉」、「悪玉」、および「中性」脂肪酸の分類であると見なすことができるかの説明である。いくつかの例は、1gのカプセル当たり30mg以上の濃度でWholeMegaに含有される。「C20:1W9」という記号表示は、例えば、「オメガ‐9の位置」において最初の二重結合が(分子のメチル末端に対して)9番目の炭素上に位置する、20個の炭素(C20)および1個の二重結合を有する分子(脂肪酸)として説明される。同様に、DHAの記号表示はC22:6W3と記載され、最初の二重結合が分子の末端(オメガの位置)から3番目の炭素で生じる、22個の炭素および6個の二重結合を有する分子を表す。これは「オメガ‐3脂肪酸」である。
【0029】
1.「善玉」脂肪
一価不飽和脂肪酸(MUFA)
C15:1W5CIS
C16:1W7Cパルミトレイン酸
C17:1W7
C18:1W9Cオレイン酸
C20:1W9エイコセン酸=ガドレイン酸
C22:1W9ドコセン酸=エルカ酸
C24:1W9C
必須脂肪酸(EFA)
C18:3W3α‐リノレン酸
C18:2W6Cリノール酸
高度不飽和脂肪酸(HUFA)
C20:5W3エイコサペンタエン酸(EPA)
C22:6W3ドコサヘキサエン酸(DHA)
【0030】
2.「悪玉」脂肪
飽和脂肪酸
C16:0パルミチン酸
C17:0ヘプタデカン酸
C18:0ステアリン酸
C20:0アラキン酸
C21:0ヘンエイコサン酸
C22:0ベヘン酸
C23:0トリコサン酸
C24:0リグノセリン酸
トランス脂肪酸(TFA)
C18:1W9T
C18:2W6T
【0031】
3.「中性」脂肪
多価不飽和脂肪酸(PUFA)
C20:3W3エイコサトリエン酸(ETA)
C18:3W6γ‐リノレン酸
C20:2W6エイコサジエン酸
C20:3W6DGLA
C20:4W6アラキドン酸(AA)
C22:2W6DDA
【0032】
本明細書で使用される場合、「被験者」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」は、診断、予後、または治療が所望される任意の被験者、特に哺乳類対象、例えば、ヒトである。
【0033】
本明細書で使用される場合、疾病、疾患、または状態の「治療」または「治療すること」は、それらの少なくとも1つの症状の緩和、それらの重症度の軽減、またはそれらの進行の遅延、阻止、もしくは阻害を包含する。治療は、疾病、疾患、または状態が完全に治癒することを意味する必要はない。本明細書において有用な組成物は、疾病、疾患、または状態の重症度を軽減するため、それらと関連する症状の重症度を軽減するため、患者または被験者の生活の質に改善を提供するため、または疾病、疾患、または状態の発生を遅延、予防、または阻害することのみを必要とする。
【0034】
本明細書に列挙される任意の濃度範囲、百分率の範囲、または比率の範囲は、別途記載のない限り、整数の10分の1および100分の1等、その範囲内の任意の整数およびその分数の濃度、割合、または比率を含むことを理解されたい。
【0035】
上記および本明細書の他の箇所で使用される場合、用語「a」および「an」は、列挙される構成要素の「1つ以上」を指すことを理解されたい。当業者には、単数形の使用は、別途記載の無い限り、複数形を含むことは明白である。したがって、用語「a」、「an」、および「少なくとも1つ」は、本出願において交換可能に使用される。例えば、「a」ポリマーは、1つのポリマーか、または2つ以上のポリマーを含む混合物の両方を指す。
【0036】
本出願を通して、種々の実施形態の記載は「含む」という文言を使用しているが、当業者は、いくつかの特別な場合において、「本質的に〜からなる」または「からなる」という文言を使用して、代替的に実施形態を記載できることを理解するであろう。
【0037】
本発明の教示をより理解するため、また教示の範囲を決して制限しないために、別途記載のない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される量、割合または比率、および他の数値を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていることを理解されたい。したがって、特に反対の記載がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記述される数値パラメータは、獲得することが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数を考慮して、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0038】
本明細書で使用される他の用語は、当該技術分野におけるそれらの一般的に知られる意味によって定義されることが意図される。
【0039】
主題の組成物
【0040】
主題の組成物は、抗増殖活性、抗炎症活性、抗酸化活性、抗血管新生、およびアポトーシス活性を示す構成成分を含む、多種薬用植物および多価不飽和油の調製物の類である。主題の治療用組成物は、治療的な有効量の(A)薬用植物組成物および(B)多価不飽和油組成物を含む。
【0041】
薬用植物組成物
【0042】
いくつかの実施形態において、薬用植物組成物は、ローズマリーの抽出物およびオレガノの抽出物からなる群から選択される、治療的に有効な量の少なくとも1つの薬用植物構成要素を含む。一実施形態において、薬用植物組成物は、ローズマリーの超臨界抽出物、オレガノの超臨界抽出物、またはそれらの組み合わせを含む。他の非限定的なローズマリーおよびオレガノの抽出物は、例えばアルコール抽出物を含むことができる。別の実施形態において、薬用植物組成物は、本質的に治療的な有効量のローズマリーの超臨界抽出物およびオレガノの超臨界抽出物からなる。薬用植物組成物はまた、植物油等の1つ以上の追加の構成要素を含むことができ、好適な植物油の非限定的な例は、ヒマワリ油である。一実施形態において、ヒマワリ油は、溶液に抽出物を注入および混合し易くするために、担体としてローズマリー超臨界抽出物に加えられる。一実施形態において、ローズマリー超臨界抽出物2mgごとに0.04mgのヒマワリ油が加えられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、薬用植物組成物は、本発明の主題の多価不飽和油組成物と組み合わせられると、抗酸化機能および/または配合物安定機能を提供する。特定の実施形態において、薬用植物組成物は、多価不飽和脂質の酸化を阻害し、かつ/または本発明の主題の組成物中の多価不飽和脂質の固有の化学反応性を安定させ、それによって、本発明の主題の組成物のより長期の保存期間および/またはより一貫した化学プロファイルを提供する。
【0044】
市販の魚油は、通常、トコフェロール等の天然の抗酸化剤を添加することによって加工される。そのような多価不飽和油に加えられるトコフェロールのレベルは、多価不飽和油の過度の酸化を防ぐために一般的に十分であると考えられてきた。本発明の主題の薬用植物油組成物は、最初に油が加工されるときに加えられる抗酸化剤(500ppmのα‐トコフェロール等)によって提供されるレベルを超えて多価不飽和油の酸化をさらに抑制するために有用であることが、予期せずして発見された。酸化試験を実施したところ、本発明の主題の薬用植物油組成物は、追加の予想外に有意な酸化からの保護を多価不飽和油に提供することが分かった。
【0045】
表IIは、本発明の主題の薬用植物組成物を含むおよび含まない多価不飽和油の比較酸化試験を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
この例では、本発明の主題の組成物の所定レベルの酸化を誘導するために必要とされる時間を測定するために、ランシマット誘導時間法を用いた。Metrohm679のランシマット用機器で、試料の酸化レベルおよび酸化安定性を測定した。このテストでは、4グラムの試料を計器内に配置し、80℃の空気を1時間当たり10リットルで試料全体に流した。次いで、計器上で十分な酸化ピークが測定されるまで、7.2および7.5時間、対照試料(加工者によって加えられたα‐トコフェロール500ppmを含有する加工サーモン油のみ)の実験を行った。測定された酸化レベルに達するまでの時間に「保護値」1.0を割り当てた。次いで、サーモン油組成物に指示されたローズマリーおよびオレガノ油の抽出物を加えた試験試料で実験を行った。次いで、酸化試験を実行したところ、試料は、7.2および7.5時間の終りに対照が到達したのと同じ酸化レベルに達するまでに有意により長くかかったことが分かった。試験試料において同じ酸化レベルに達するまでの時間は、少なくとも2倍かかっており、具体的には、試験試料は、少なくとも2.9倍、そして最大3.5倍で増加した。したがって、薬用植物油組成物を含まないサーモン油の保護値1.0と比較すると、これらの試料の「保護値」は、約2.9〜約3.5の範囲であった。
【0048】
本発明の主題において使用されるローズマリーおよびオレガノの超臨界抽出物は、例えば、E.Stahl,K.W.Quirin,D.Gerard,Dense Gases for Extraction and Refining,Springer Verlag 4 1988(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されるような既知の超臨界抽出法にしたがって調製することができる。
【0049】
別の実施形態において、多価不飽和油を含まない薬用植物組成物は、
(A)多価不飽和油を含まない薬用植物組成物の約5重量%〜約80重量%、代替として約50重量%〜約75重量%のローズマリーの超臨界抽出物と、
(B)多価不飽和油を含まない薬用植物組成物の約5重量%〜約60重量%、代替として約15重量%〜約40重量%のオレガノの超臨界抽出物と、を含む。
【0050】
さらなる実施形態において、薬用植物組成物は、約1:1の比率で、より好ましくは約2:1の比率で、ローズマリーSCE:オレガノSCEの比率を含む。さらなる実施形態において、薬用植物組成物は、多価不飽和油組成物と組み合わせることができる。一実施形態において、2mgのローズマリーSCEおよび1mgのオレガノSCEが、2グラムの多価不飽和油と組み合わせられる。
【0051】
多価不飽和油組成物
【0052】
さらなる実施形態において、海洋生物油または多価不飽和油組成物は、DHA、EPA、およびαリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1つの必須脂肪酸を含む。いくつかの実施形態において、多価不飽和油組成物は海洋生物油である。さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、好ましくは野生で捕獲されたアラスカサーモンからのサーモン油を含む。他の実施形態において、多価不飽和油組成物は、魚油、種油、植物油、および藻油からなる群から選択される1つ以上の油源に由来する多価不飽和脂肪酸を含む。
【0053】
さらなる実施形態において、海洋生物油または多価不飽和油組成物は、例えば、野生で捕獲された鮭に自然に見られる少なくとも1つの非脂肪酸構成要素等の、少なくとも1つの非脂肪酸構成要素をさらに含む。一実施形態において、少なくとも1つの非脂肪酸構成要素は、非脂肪酸脂質(コレステロール等)、ビタミン(ビタミンD等)、抗酸化剤(トコフェロール等)、色素(アスタキサンチン等)、またはそれらの混合物である。一実施形態において、多価不飽和油組成物は、脂肪酸構成要素(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸、エステル化脂肪酸、その塩、またはそれらの組み合わせの形態等)、コレステロール、ビタミンD、およびアスタキサンチンを含む。
【0054】
ヘキサン等の有機溶媒は、魚または藻等の油源から多価不飽和油を精製または濃縮するために使用されることがあり、精製した油に微量の溶媒が残り、健康への有害な影響の原因となり得る。本発明の主題の一実施形態において、多価不飽和油は、ヘキサン等の有機溶媒を含まず、したがって、そのような健康への有害な影響を及ぼさない。
【0055】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約10重量%〜約60重量%、代替として約15重量%〜約35重量%、さらに代替として約20重量%のDHA(ドコサヘキサエン酸)を含む。
【0056】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約10重量%〜約60重量%、代替として約10重量%〜約35重量%、さらに代替として約10重量%のEPA(エイコサペンタエン酸)を含む。
【0057】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約1.0重量%〜約2.4重量%、代替として約0.8重量%〜約2.2重量%、さらに代替として約2重量%のオクタデカトリエン酸を含む。
【0058】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約0.3重量%〜約1.4重量%、代替として約0.8重量%〜約1.2重量%、さらに代替として約1重量%のヘンエイコサペンタエン酸を含む。
【0059】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約0.03重量%〜約0.4重量%、代替として約0.08重量%〜約0.2重量%、さらに代替として約0.05重量%のテトラデセン酸を含む。
【0060】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約2.6重量%〜約6.4重量%、代替として約1.8重量%〜約8.2重量%、さらに代替として約5%重量%のヘキサデセン酸を含む。
【0061】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約14.0重量%〜約20.0重量%、代替として約10.8重量%〜約20.2重量%、さらに代替として約15重量%のオクタデセン酸を含む。
【0062】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約4.0重量%〜約10.0重量%、代替として約5.8重量%〜約9.2重量%、さらに代替として約8重量%のエイコセン酸を含む。
【0063】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約5.0重量%〜約10.0重量%、代替として約5.8重量%〜約8.2重量%、さらに代替として約7重量%のドコセン酸を含む。
【0064】
さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、約0.4重量%〜約1.4重量%、代替として約0.8重量%〜約2.2重量%、さらに代替として約1重量%のテトラコセン酸を含む。
【0065】
好ましい組成物は、以下の多価不飽和油を少量(0.01〜3重量%)含有することができることを認識されたい:オクタデカジエン酸、オクタデカテトラエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサジエン酸、ヘプタデセン酸、およびエイコサトリエン酸。
【0066】
特定の実施形態において、主題の組成物は、善玉脂肪の悪玉脂肪に対する好ましい比率を有する多価不飽和油組成物を含む。例えば、リン脂質油組成物は、C15:1W5CIS;C16:1W7Cパルミトレイン酸;C17:1W7;C18:1W9Cオレイン酸;C20:1W9エイコセン酸=ガドレイン酸;C22:1W9ドコセン酸=エルカ酸;C24:1W9C;C18:3W3α‐リノレン酸;C18:2W6Cリノール酸;C20:5W3エイコサペンタエン酸(EPA);およびC22:6W3ドコサヘキサエン酸(DHA)からなる群から選択される、増加した濃度の「善玉脂肪」を含むことができる。また、例えば、リン脂質油組成物は、C16:0パルミチン酸;C17:0ヘプタデカン酸;C18:0ステアリン酸;C20:0アラキン酸;C21:0ヘンエイコサン酸;C22:0ベヘン酸;C23:0トリコサン酸;C24:0リグノセリン酸;C18:1W9T;およびC18:2W6Tからなる群から選択される、減少した濃度の「悪玉脂肪」を含むことができる。いくつかの実施形態において、リン脂質油組成物はまた、C20:3W3エイコサトリエン酸(ETA);C18:3W6γ‐リノレン酸;C20:2W6エイコサジエン酸;C20:3W6DGLA;C20:4W6アラキドン酸(AA);およびC22:2W6DDAからなる群から選択される「中性脂肪」も含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、多価不飽和油組成物は、2:1〜100:1の範囲、例えば、5:1、7:1、10:1、15:1、20:1、25:1、または30:1の善玉脂肪対悪玉脂肪の比率を含む。少なくとも1つの実施形態において、多価不飽和油組成物中には検出可能な悪玉脂肪が存在しない。
【0068】
治療用組成物
【0069】
特定の実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、治療的に有効な量のローズマリーの超臨界抽出物およびオレガノの超臨界抽出物を含む。一実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、本質的に治療的な有効量のローズマリーの超臨界抽出物およびオレガノの超臨界抽出物からなる。
【0070】
他の実施形態において、治療用組成物は、本明細書に記載される薬用植物組成物を、本明細書に記載される多価不飽和油組成物と組み合わせることによって調製される。
【0071】
別の実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、治療的に有効な量のローズマリーの超臨界抽出物およびオレガノの超臨界抽出物を、多価不飽和油組成物と組み合わせて含む。さらなる実施形態において、多価不飽和油組成物は、魚油、例えば、サーモン油等を含む。一実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、本質的に治療的な有効量のローズマリーの超臨界抽出物と、オレガノの超臨界抽出物と、サーモン油等の魚油とからなる。
【0072】
一実施形態において、治療用組成物は、1:5〜1:5000の範囲、例えば、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:100、1:200、1:300、1:500、1:1000、1:2000、1:3000、1:4000、または1:5000の薬用植物組成物対多価不飽和油の比率を含む。
【0073】
代替の態様において、治療用組成物は、抗腫瘍薬、抗酸化剤、成長抑制剤、薬用植物抽出物、および他の栄養素からなる群から選択される追加の薬剤を含む。特定の実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、治療的に有効な量のウコンもしくは生姜の超臨界抽出物、または治療的に有効な量のホーリーバジル、生姜、ウコン、コガネバナ(Scutellaria baicalensis)、ローズマリー、緑茶、イタドリ、黄蓮、もしくはメギの含水アルコール抽出物、またはそれらの組み合わせを含有しない。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の主題の治療用組成物は、薬用植物組成物Zyflamend(登録商標)(NewChapter,Inc.、Brattleboro,VT)を含有しない。
【0074】
表IIIに記載するのは、本発明の主題の方法において使用される、不活性成分を除く経口投与組成物の例示的実施形態である。表IIに列挙する量は、記載される成分のカプセル用量を表す。
【0075】
【表3】

【0076】
いくつかの実施形態において、組成物は、2グラムの魚油と、2グラムのローズマリーSCEと、1mgのオレガノSCEとを含む。一実施形態において、魚油は、一番絞りの野生のアラスカサーモンの油等のアラスカサーモンの油を含む。さらなる実施形態において、組成物は、本質的に多価不飽和油と、ローズマリーSCEと、オレガノSCEとからなる。
【0077】
特定の実施形態において、組成物は、野生のアラスカサーモンの油からの1000〜2000mgの脂肪、5〜20mgのコレステロール、20〜200IUのビタミンD、2〜10マイクログラムのアスタキサンチン、1〜6mgのローズマリーSCE、および1〜3mgのオレガノSCEを含む。特定の実施形態において、2000mgの多価不飽和油は、約480mgの飽和脂肪、約840mgの一価不飽和脂肪、および約680mgの多価不飽和脂肪を含む。さらなる実施形態において、2000mgの多価不飽和油は、約500mgのオメガ‐3脂肪酸、約1mgのオメガ‐5脂肪酸、約140mgのオメガ‐6脂肪酸、約100mgのオメガ‐7脂肪酸、および約660mgのオメガ‐9脂肪酸を含む。さらに別の実施形態において、多価不飽和油中の500mgのオメガ‐3脂肪酸は、約180mgのEPA、約220mgのDHA、および100mgの他のオメガ‐3脂肪酸(ドコサペンタエン酸、リノレン酸、ヘンエイコサペンタエン酸等)を含む。さらなる実施形態において、多価不飽和油は、2:1〜1:10、2:1〜1:5、1:1〜1:3、1:1.5〜1:3、または1:2〜1:2.5の範囲の比率でEPA:DHAを含む。
【0078】
本明細書で使用される用語「WholeMega」は、図および実施例に記載される種々の試験のために使用された本発明の主題の組成物の1つの例示的な配合物を指す。WholeMegaは、本明細書で使用される場合、野生のアラスカサーモンの油からの2000mgの脂肪、15mgのコレステロール、100IUのビタミンD、6マイクログラムのアスタキサンチン、2mgのローズマリーSCE、および1mgのオレガノSCEを含む。Wholemegaの2000mgの脂肪は、約480mgの飽和脂肪、約840mgの一価不飽和脂肪、および約680mgの多価不飽和脂肪を含む。さらに、WholeMegaの2000mgの脂肪は、約500mgのオメガ‐3脂肪酸、約1mgのオメガ‐5脂肪酸、約140mgのオメガ‐6脂肪酸、約100mgのオメガ‐7脂肪酸、および約660mgのオメガ‐9脂肪酸を含む。また、WholeMega中の500mgのオメガ‐3脂肪酸は、約180mgのEPA、約220mgのDHA、および約100mgの他のオメガ‐3脂肪酸(ドコサペンタエン酸、リノレン酸、ヘンエイコサペンタエン酸等)を含む。WholeMega配合物の追加の非限定的な例も企図され、「WholeMega」と表示される今後の組成物は、上述した配合における変動を有する可能性があり、今後の変動は、必要に応じて、更新された製品表示に記載される。
【0079】
本発明の主題の方法
【0080】
本発明の主題の組成物は、一般に、標準的な超臨界COによるローズマリーおよびオレガノの濃縮抽出物と、任意で多価不飽和油組成物とを含む。
【0081】
組織膜に多価不飽和脂質を取り込む能力について主題の組成物を調べたところ、それらは、細胞シグナル伝達事象を調節し(例えば、炎症を減少させる)、膜の流動性を増加させる役割を果たす。対象組成物の投与後の血清脂質含有量における変化は、EPA等の健康的なオメガ‐3油の増加、およびオメガ‐6油アラキドン酸(AA)に相対的な減少をもたらした。この変化は、用量依存性であることが示されており、有益であると考えることができ、炎症の可能性を減少させる。
【0082】
いくつかの実施形態において、治療的な有効投与量の本発明の主題の組成物は、酸化した低密度リポタンパク質による動脈プラークの蓄積に起因する循環器疾患を治療するために有用である。また、さらなる実施形態において、治療的な有効投与量の本発明の主題の組成物は、体内の高密度リポタンパク質HDL)の存在を促進し、有益な健康への影響を有すると考えられる。例えば、HDLは、リポタンパク質のより可溶性の形態として知られており、したがって、その存在は、動脈プラークの形成に有意に寄与しない。また、HDLは、プラーク物質を吸収することが可能であることが分かっており、よって、動脈プラークの量を直接的に減少させる。
【0083】
一実施形態において、本発明の主題の組成物は、血小板凝集および血清トリグリセリドを減少させるために効果的であり、心筋梗塞、高血圧、粥状動脈硬化、および特定の種類の癌のリスクを低下させることができる。別の実施形態において、本発明の主題の組成物は、健康のために有益なエイコサノイドの合成および調節を促進するために効果的である。
【0084】
一実施形態において、本発明の主題の組成物は、糖原病、脳卒中、糖尿病、関節リウマチ、脊椎痛、変形性関節症、炎症性大腸炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、喘息、黄斑変性症、湿疹、乾癬、産後の鬱病、月経痛、アルツハイマー病、パーキンソン病、鬱病、双極性障害、統合失調症、高リポタンパク血症、または高コレステロール血症を治療するために効果的である。
【0085】
さらに他の実施形態において、本発明の主題の組成物は、過剰増殖疾患、癌、白血病、およびリンパ腫のリスクを防止、治療、または低下するために効果的である。
【0086】
本発明の主題の組成物を使用するためのさらなる方法は、特定の不飽和脂質の補充と関連し得る有益な健康への影響を促進することを含む。本発明の主題のいくつかの実施形態は、以下の例の不飽和脂質を含むことができ、それによって、それらの有益な健康への影響を促進することができる。表IVは、本発明の主題のいくつかの実施形態におけるサーモン油の不飽和脂肪酸組成物の例を提供する。いくつかの実施形態において、海洋生物油または本発明の主題の多価不飽和油組成物は、表IVに記載される脂質のうちの1つ以上、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0087】
【表4】

【0088】
本発明の主題はまた、本明細書に記載される薬用植物組成物のうちの1つを本明細書に記載される多価不飽和油組成物のうちの1つと組み合わせることを含む、薬用植物および多価不飽和油を組み合わせた組成物を作成するプロセスも提供する。プロセスの一実施形態において、薬用植物油は、ローズマリーSCE2mgおよびオレガノSCE1mgを含み、多価不飽和油は、野生で捕獲されたアラスカサーモンの油等の魚油2000mgを含み、薬用植物油と多価不飽和油が一緒に合わせられ、任意でカプセル等の剤形に調製される。
【0089】
1.EPAおよびDHA
【0090】
オメガ‐6(例えば、アラキドン酸)の摂取量に対してEPAおよびDHA等のオメガ‐3脂肪酸の摂取量を増加させることの健康効果について、多くのことが明らかになっている。例えば、Dr.Joseph C.Maroonが2006年に出版した「Fish Oil. The Natural Anti‐Inflammatory」という標題の本を参照のこと。
【0091】
2.オレイン酸
【0092】
オレイン酸は、体内における主要な一価不飽和脂肪酸である。身体の主なオレイン酸源は動物の食餌によって提供されるが、δ9‐デサチュラーゼの作用によりステアリン酸から限られた量で合成することもできる。最も注目すべき食物源は、70〜80%がオレイン酸からなるオリーブ油である。他の良好な源は、ブドウ種子油、シーバックソーン油、およびブラジル産のヤシ科のベリーであるアサイの果肉を含む。多数の研究が、オリーブ油を豊富に含む食餌は、酸化ストレスおよび炎症性メディエータを抑制することにより、粥状動脈硬化の発生を減少させ、血清コレステロールを低下させることを示している。オリーブ油の健康効果は存在するフェノール化合物によるものであることが多いが、最近の研究では、オレイン酸自体がその血圧を低下させる効果に寄与することが示唆されている。また、オレイン酸は、抗腫瘍活性を示す。オレイン酸は、乳癌患者の約30パーセントに存在するHER‐2/neuと呼ばれる癌の原因となる癌遺伝子の作用をブロックするだけでなく、乳癌治療薬ハーセプチンの有効性を向上させることが分かっている。
【0093】
オレイン酸は、副腎白質ジストロフィーと呼ばれる稀有な神経生物学的疾患のための実験的治療薬ロレンツォのオイルの成分である。Proc Natl Acad Sci USA.2008 Sep 16;105(37):13811‐6.Epub 2008 Sep 4.Oleic acid content is responsible for the reduction in blood pressure induced by olive oil.Teres S,Barcelo‐Coblijn G,Benet M,Alvarez R,Bressani R,Halver JE,Escriba PV.Laboratory of Molecular Cell Biomedicine,Department of Biology,Institut Universitari d’Investigacions en Ciencies de la Salut,University of the Balearic Islands,Carretera de Valldemossa Km 7.5,E‐07122 Palma de Mallorca,Spain。
【0094】
多数の研究が、オリーブ油の高摂取量が血圧(BP)を低下させることを示している。オリーブ油のこれらの好ましい効果は、他の油には存在しないα‐トコフェロール、ポリフェノール、および他のフェノール化合物等、その微量の構成要素が原因であるとされることが多かった。しかしながら、最近、オリーブ油の降圧効果は、オレイン酸(OA)の含有量が高い(約70〜80%)ことによるものであることが明らかになった。オリーブ油の摂取が膜のOAレベルを増加させ、Gタンパク質媒介性シグナル伝達をコントロールするような様式で膜脂質構造(H(II)相の性質)を制御し、BPの低下を引き起こすことが提案されている。この効果は、一部には、アデニリルシクラーゼおよびホスホリパーゼCを制御するGタンパク質関連カスケードに対するその制御作用によるものである。また、OA類似体、エライジン酸およびステアリン酸は降圧活性を有さないことから、膜脂質構造とBP制御を関連付ける分子機構は非常に特殊であることが示唆される。同様に、大豆油(OA含有量が低い)はBPを低下させない。オリーブ油が、OAの作用によって降圧効果を誘導することが実証されている。
【0095】
Ann Oncol.2005 Mar;16(3):359‐71.Epub 2005 Jan 10.Oleic acid,the main monounsaturated fatty acid of olive oil,suppresses Her−2/neu(erbB−2)expression and synergistically enhances the growth inhibitory effects of trastuzumab(Herceptin)in breast cancer cells with Her−2/neu oncogene amplification.Menendez JA,Vellon L,Colomer R,Lupu R.Department of Medicine,Breast Cancer Translational Research Laboratory,Evanston Northwestern Healthcare Research Institute,1001 University Place,Evanston,IL 60201,USA.
【0096】
一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸(OA、18:1n‐9)の最も豊富な食物源であるオリーブ油の摂取と、乳癌のリスクおよび進行との間の関係は、議論の余地を残す問題となっている。さらに、乳癌に対するオリーブ油の保護効果は、OAの直接的な効果ではなく、油の何か他の構成要素が原因であるかもしれないと提案されている。
【0097】
方法
【0098】
フローサイトメトリー、ウエスタンブロット法、免疫蛍光顕微鏡法、代謝状態(MTT)、軟寒天コロニー形成法、アポトーシス誘導性DNA二本鎖切断のインサイツ酵素標識化(TUNELアッセイ分析)、およびカスパーゼ‐3依存性ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断アッセイを用いて、OAの外的補給がHer‐2/neu癌遺伝子の発現に与える影響を明らかにした。Her‐2/neu癌遺伝子の発現は、乳癌の病因および促進に能動的に関与する。また、Her‐2/neuでコードされたp185(Her‐2/neu)腫瘍性タンパク質の細胞外ドメインに高親和性で結合するヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)の有効性にOAが与える影響を調べた。これらの問題を検討するために、Her‐2/neu癌遺伝子の増幅を自然に示す乳癌細胞BT‐474およびSKBr‐3を使用した。
【0099】
結果
【0100】
フローサイトメトリー分析により、Her‐2/neu過剰発現体BT‐474およびSK‐Br3をOAで処理した後に、細胞表面関連連p185(Her‐2/neu)の劇的な減少(最大46%)が示された。実際に、この効果は、最適濃度のトラスツズマブへの曝露後に見られる効果に匹敵するものであった(20マイクログラム/mLのトラスツズマブで最大48%の減少)。注目すべきは、フローサイトメトリー(最大70%の減少)、免疫ブロット法、および免疫蛍光顕微鏡試験によって測定されたように、OAおよび準最適濃度のトラスツズマブ(5マイクログラム/mL)への同時曝露が、Her‐2/neuの発現を相乗的に下方制御したことである。MTTに基づく細胞生存率および足場非依存性軟寒天コロニー形成アッセイによって評価されたように、OAとトラスツズマブとの間の細胞傷害性相互作用の性質は、強い相乗作用を示した。さらに、TUNELおよびカスパーゼ‐3依存性PARP切断によって確認されたように、OAの同時曝露は、アポトーシス性細胞死と関連するDNA断片化を促進することにより、Her‐2/neu過剰発現体に対するトラスツズマブの有効性を相乗的に強化した。また、OAおよびトラスツズマブを用いた処置は、Her‐2/neuに関連する乳癌の発症および進行において重要な役割を果たすサイクリン依存性キナーゼ阻害因子であるp27(Kip1)の発現および核集積の両方を劇的に増加させた。最後に、OAの共曝露は、AKTおよびMAPK等のリン酸化タンパク質を含む、Her‐2/neuの下流のシグナル伝達経路を阻害するトラスツズマブの能力を有意に増強した。結論:これらの知見は、オリーブ油の主な一価不飽和脂肪酸であるOAが、Her‐2/neu癌遺伝子の増幅を伴う乳癌細胞のアポトーシス性細胞死を促進することにより、Her‐2/neuの過剰発現を抑制し、同時に、抗Her‐2/neu免疫療法と相乗的に相互作用することを示すものである。この、以前には認識されていなかったOAの特性は、個々の脂肪酸、および本発明の主題の組成物が乳癌細胞の悪性挙動を制御することが可能であり、したがって、将来の疫学的試験のデザイン、また最終的には食生活に関するカウンセリングにおいて有用である新規分子機構を提供する。
【0101】
Am J Clin Nutr.1998 Jul;68(1):134‐41.Tissue stores of individual mono monounsaturated fatty acids and breast cancer:the EURAMIC study.European Community Multicenter Study on Antioxidants,Myocardial Infarction,and Breast Cancer.Simonsen NR,Fernandez‐Crehuet Navajas J,Martin‐Moreno JM,Strain JJ,Huttunen JK,Martin BC,Thamm M,Kardinaal AF,van’t Veer P,Kok FJ,Kohlmeier L.University of North Carolina,Chapel Hill,27599,USA.
【0102】
一価不飽和脂肪が乳癌のリスクに影響を及ぼし得るという最も有力な証拠は、南欧の集団の試験に由来しており、オレイン酸源、とりわけオリーブ油の摂取が保護的であると考えられる。そのような集団において、脂肪組織の脂肪酸含有量と乳癌との関係について以前に調査が行われたことはなかった。南欧(Malaga,Spain)を含む欧州の5ヶ所の施設で収集された多様な脂肪摂取パターンの脂肪生検を用いて、オレイン酸または他の一価不飽和脂肪の蓄積が乳癌と逆相関関係にあるという仮説を検証した。閉経後に発生した乳癌患者291人と、対照の対象351人から臀部脂肪吸引物を採取した(年齢および診療圏に対して頻度を一致させた)。一価不飽和脂肪による乳癌をモデル化するために、確立された危険因子を補正したロジスティック回帰を使用した。スペインの施設において、オレイン酸が乳癌との強い逆相関を示した。75パーセンタイルと25パーセンタイルとの間のオッズ比は、Malagaにおいて0.40(95%CI:0.28、0.58)、他の全ての施設を統合すると1.27(0.88、1.85)であり、Zeistのピークは2.36(1.01、5.50)であった。パルミトレイン酸およびミリストレイン酸はスペイン以外で逆相関の証拠を示し、cis‐バクセン酸は3ヶ所の施設で明確な関連性を示した。これらのデータは、スペイン以外の集団において、オレイン酸の組織蓄積量の増加が乳癌に対して保護的であるという仮説を支持しなかった。この知見は、食餌試験においてオリーブ油の摂取量について報告されている強い保護的関連性が、油の何か他の保護的な構成要素に起因するものであって、オレイン酸摂取の直接的な効果ではない可能性を暗示するものである。代替として、オリーブ油の高摂取量が、これらの女性の生活様式の何か他の保護的態様を示唆するものである可能性がある。
【0103】
3.エルカ酸
【0104】
エルカ酸は、菜種、アラセイトウの種子、カラシの種子を含むアブラナ科の顕花植物の種子(それらは全て40〜50%のエルカ酸を含有する)によく見られる一価不飽和脂肪酸である。通常、エルカ酸は、体脂肪中には微量も見られないかまたは生じないが、食餌が菜種油を含む場合、貯蔵脂肪、臓器脂肪、および乳脂肪にエルカ酸が見られる。エルカ酸およびオレイン酸の4対1の混合物は、稀有な神経生物学的疾患である副腎白質ジストロフィーのための実験的治療薬、ロレンツォのオイルを構成する。
【0105】
ヒトにおける健康への悪影響は記録されていないものの、高エルカ酸菜種油の長期摂取が、ラットにおいて心臓病変および成長遅延を引き起こすことが示されているため、一般に、エルカ酸は好ましい脂肪酸とは見なされない。科学者達は、ラットはヒトと同じようには脂肪を代謝しないので、それらはヒトにおけるエルカ酸の影響を理解するための良好なモデルを提供しないと指摘している。それにも関わらず、1991年には、欧州連合が大量のエルカ酸を含有する食物を禁止した。菜種の低エルカ酸形態としてカノーラ油が販売されている。
【0106】
Can J Comp Med.1975 Jul;39(3):261‐9.Cardiac lesions in rats fed rapeseed oils.Charlton KM,Corner AH,Davey K,Kramer JK,Mahadevan S,Sauer FD.
【0107】
乳離れしたばかりのオスおよびメスのSD系ラットに、異なる量のエルカ酸(1.6%、4.3%、および22.3%)を含有する完全に精製した菜種油を、食餌の20重量%で最長112日間の期間給餌した。心筋繊維における脂肪滴の蓄積を特徴とする一過性の心筋リピドーシスが、22.3%のエルカ酸を含有する酸化および未酸化の菜種油を給餌したオスおよびメスのラットにおいて著しく、4.3%のエルカ酸を含有する菜種油では中程度、1.6%のエルカ酸を含有する菜種油を給餌したラットにおいて非常にわずかに見られた。心筋リピドーシスのピーク強度は3〜7日で現れ、その後は元に戻った。異なるレベルのエルカ酸を含有する菜種油を112日間給餌したオスのラットに、局所的な心筋壊死および線維症が見られた。心筋壊死および線維症の発生率はメスのラットにおいて顕著に低く、これらの病変の発生率は、いずれの性別においても、これらの油の酸化状態による影響を受けなかった。第2の実験において、未精製か、部分的に精製したか、または完全に精製した菜種油を含有する食餌をオスのラットに給餌した。心筋壊死および線維症の病巣数と油の精製状態との間に相関関係は見られなかったが、全体的に、最も低いレベルのエルカ酸を有する油を給餌したラットに病変が少なかった。
【0108】
Acta Med Scand Suppl.1975;585:5‐13.Physiopathological effects of rapeseed oil:a review.Borg K.菜種油は、動物において成長遅延作用を有する。研究者の中には、菜種油中のエルカ酸含有量が高いことが単独でこの影響を引き起こすと主張する者もあれば、菜種油における飽和/一価不飽和脂肪酸の比率が低いことが要因であると見なす者もある。通常、エルカ酸は、体脂肪中には微量も見られないかまたは生じないが、食餌が菜種油を含む場合、貯蔵脂肪、臓器脂肪、および乳脂肪にエルカ酸が見られる。エルカ酸は、体内で代謝されてオレイン酸になる。菜種油が、生殖器および副腎、睾丸、卵巣、肝臓、脾臓、腎臓、血液、心臓、および骨格筋に及ぼす影響について調査されてきた。心筋細胞における脂肪浸潤が調査した種に観察されている。ラットにおける長期実験では、エルカ酸が心筋の線維症を引き起こす。エルカ酸は、心臓のミトコンドリアの呼吸能を低下させる。呼吸能の低下は、食餌中のエルカ酸含有量と大体比例しており、エルカ酸の持続投与でさらに弱まる。ラットの寿命は、トウモロコシ油、大豆油、ヤシ油、鯨油、および菜種油の食餌で同じである。エルカ酸または他のドコセン酸を含む食餌を給餌したラットは、低温ストレス(+4℃)に対する耐性の低下を示した。スウェーデンでは、現在の約0.4%と比較して、1970年までは、エルカ酸がカロリーの平均摂取量の3〜4%を占めていた。
【0109】
4.ガドレイン酸
【0110】
ガドレイン酸は、植物油および魚油に存在するcis‐不飽和脂肪酸である。Dr.Jim Dukeによれば、それに関する生物学的活性は記録されていない。
【0111】
5.パルミトレイン酸
【0112】
パルミトレイン酸は、ヒトの食餌および血液中に見られる微量の一価不飽和のオメガ7脂肪酸である。食物源は、特に魚由来の動物脂肪、ならびにマカダミアナッツおよびシーバックソーンベリーを含む。δ9‐デサチュラーゼの酵素活性によって、食餌中に含まれる最も一般的な飽和脂肪酸であるパルミチン酸から体内で生成することができる。パルミトレイン酸は、ヒト脂肪組織を構成するトリグリセリドの一般的な構成成分である。このため、血清レベルは、トリグリセリド血症および腹部肥満の独立したマーカーであると考えられる。
【0113】
パルミトレイン酸は、脂肪組織および膵臓における脂肪代謝および血糖代謝の制御において重要な役割を果たすと考えられる。パルミトレイン酸は、マウスの筋肉において、インスリン作用を強く刺激し、脂肪肝を抑制するリポカイン(ホルモン)として機能することが示された。脂肪組織は、リポカインを使用して、離れた器官と連絡し、全身の代謝恒常性を制御する。また、パルミトレイン酸は、膵臓でインスリンを生成するβ細胞の健康を維持するために重要である可能性がある。生体外試験により、パルミトレイン酸は、パルミチン酸のβ細胞に対する細胞傷害効果を相殺することができると同時に、β細胞の機能を向上させことができることが示されている。
【0114】
パルミトレイン酸は、皮膚、血管、および粘膜を構成するような上皮細胞の細胞膜における主要な脂肪酸であり、そこで保護的な役割を果たすと考えられる。ヒトの皮脂に存在する全ての脂肪酸のうち、パルミトレイン酸が、グラム陽性菌に対する最も強い抗菌作用を有することが示された。同じ研究により、パルミトレイン酸が、カンジダアルビカンス病原株のブタ角質層への付着をブロックしたことが分かった。
【0115】
パルミトレイン酸は、LDLコレステロール中の飽和脂肪のように挙動すると非難されてきたが、最近の動物実験により、パルミトレイン酸が血漿リポタンパク質プロファイルまたは大動脈コレステロール蓄積に悪影響を及ぼすことはなく、不飽和脂肪酸を豊富に含む他の油と同様に挙動すると結論付けられた。Clin Exp Pharmacol Physiol.2004 Dec;31 Suppl 2:S37‐8.Serum lipid effects of a monounsaturated(palmitoleic)fatty acid‐rich diet based on macadamia nuts in healthy,young Japanese women.Hiraoka‐Yamamoto J,Ikeda K,Negishi H,Mori M,Hirose A,Sawada S,Onobayashi Y,Kitamori K,Kitano S,Tashiro M,Miki T,Yamori Y.Frontier Health Science,Mukogawa Women’s University,Nishinomiya,Japan.junko@mwu.mukogawa‐u.ac.jp
【0116】
最近の研究により、ナッツ類(それらのほとんどが相当量の一価不飽和脂肪酸(MUFA)を有する)を食べることの潜在的な有益な効果が同定されている。マカダミアナッツは、75重量%が脂肪からなり、その80%がMUFA(パルミトレイン酸)である。2.マカダミアナッツに基づく高MUFA食に応じた血清脂質レベルにおける変化を調べるために、若年の健康な日本人女子学生において、マカダミアナッツ、ココナッツ、およびバターを用いた3週間の介入が決定された。3.3週間の介入後、総コレステロールおよび低密度リポタンパク質‐コレステロールの血清濃度が、マカダミアナッツおよびココナッツ食において有意に減少し、体重および肥満度指数がマカダミアナッツ給餌群において減少したが、バター給餌群には統計的に有意な変化は見られなかった。
【0117】
J Nutr. 2009 Feb;139(2):215‐21.Epub 2008 Dec 23.Effects of dietary palmitoleic acid on plasma lipoprotein profile and aortic cholesterol accumulation are similar to those of other unsaturated fatty acids in the F1B golden Syrian hamster.Matthan NR,Dillard A,Lecker JL,Ip B,Lichtenstein AH.Cardiovascular Nutrition Laboratory,Jean Mayer USDA Human Nutrition Research Center on Aging at Tufts University,Boston,MA 02111,USA.
【0118】
PUFAと比較したパルミトレイン酸の酸化に対する低感受性(16:1)は、半硬化脂肪の許容可能な代替品を見つけることに関して機能的な利点を付与し得るが、心血管系リスク因子に与えるその影響に関する利用可能なデータが限られている。この試験は、マカダミア油[一価不飽和脂肪酸(MUFA)16:1]、ヤシ油(SFA,16:0)、カノーラ油(MUFA,18:1)、またはヒマワリ油(PUFA,18:2)を豊富に含む食餌(10%脂肪、0.1%コレステロール、wt:wt)が、F1Bゴールデンシリアンハムスター(n=16/群)のリポタンパク質プロファイルおよび大動脈コレステロール蓄積に及ぼす影響を調査した。12週間後、各群の8匹のハムスターを屠殺した(第1相)。ヤシ油を給餌した残りのハムスターは、ココナッツ油を含有する食餌に変更し、他の食餌群のハムスターは、さらに6週間、元の食餌を継続した(第2相)。わずかな例外はあったものの、時間的経過および食餌性SFA源は、試験の結果を変化させなかった。マカダミア油を給餌したハムスターは、ヤシ油およびココナッツ油を給餌したハムスターと比較すると、より低い非HDLコレステロールおよびトリグリセリド濃度を有し、ココナッツ油、カノーラ油、およびヒマワリ油を給餌したハムスターと比較すると、より高いHDL‐コレステロールを有していた。大動脈コレステロール濃度は、食餌の脂肪の種類による影響を受けなかった。肝臓コレステロール濃度は、飽和油を給餌したハムスターと比較して、不飽和においてより高かった。RBC膜および大動脈コレステロールエステル、トリグリセリド、ならびにリン脂質脂肪酸プロファイルは、食餌性油のプロファイルを反映するものであった。これらのデータは、パルミトレイン酸を比較的多く含む油は、血漿リポタンパク質プロファイルまたは大動脈コレステロール蓄積に有害な影響を及ぼすことはなく、不飽和脂肪酸を豊富に含む他の油と同様であったことを示唆するものである。
【0119】
Apoptosis.2006 Jul;11(7):1231‐8.Differential protective effects of palmitoleic acid and cAMP on caspase activation and cell viability in pancreatic beta−cells exposed to palmitate.Welters HJ,Diakogiannaki E,Mordue JM,Tadayyon M,Smith SA,Morgan NG.Institute of Biomedical and Clinical Science,Peninsula Medical School,Devon,Research Way,Plymouth,PL6 8BU,UK.
【0120】
飽和および一価不飽和脂肪酸は、慢性曝露の間に、膵臓のβ細胞生存率に異なる影響を及ぼす。長鎖飽和分子(例えば、パルミチン酸)は、β細胞に細胞傷害性であり、これはカスパーゼの活性化およびアポトーシスの誘導に関連している。それとは対照的に、一価不飽和脂肪酸(例えば、パルミトレイン酸)は毒性がなく、パルミチン酸の有害な影響から保護することができる。本研究において、我々は、BRIN‐BD11β細胞におけるパルミトレイン酸の保護作用が、パルミチン酸に曝露した後にカスパーゼ活性化を減弱させることと、上昇したcAMPレベルを有する細胞で同様の応答が起こることを示している。しかしながら、パルミトレイン酸とは異なり、cAMPの上昇は、アポトーシスから壊死への細胞死経路の変更を引き起こしたため、パルミチン酸の細胞傷害作用を防止することはできなかった。パルミトレイン酸がBRIN‐BD11細胞のcAMPレベルを変動させることはなく、その結果は、cAMPにおける変化が、この脂肪酸の保護効果を媒介することに関与していないことを示唆するものである。さらに、それらの結果から、カスパーゼの活性化が減弱されることは、培養β細胞における細胞生存率の変動と常に相関しているわけではないことが明らかになり、一価不飽和脂肪酸は、cAMPによって及ぼされた影響とは異なるアポトーシス経路における段階を制御することによって細胞生存率をコントロールすることが示唆される。
【0121】
Diabetes.2001 Jan;50(1):69‐76.Distinct effects of saturated and monounsaturated fatty acids on beta−cell turnover and function.Maedler K,Spinas GA,Dyntar D,Moritz W,Kaiser N,Donath MY.Division of Endocrinology and Diabetes,University Hospital,Zurich,Switzerland.
【0122】
糖毒性および脂肪毒性は、2型糖尿病において観察されるβ細胞機能障害の原因となる。ここで、我々は、異なるグルコース濃度の飽和および不飽和脂肪酸がβ細胞の増殖およびアポトーシスに及ぼす影響を調べる。ウシ角膜内皮細胞由来の細胞外マトリックスでコーティングしたプレート上で、成獣ラットの膵島を培養した。5.5、11.1、または33.3mmol/Lのグルコースを含む培地で飽和脂肪酸(0.5mmol/Lパルミチン酸)に膵島を4日間曝露した結果、β細胞DNA断片化に5〜9倍の増加が見られた。対照的に、一価不飽和パルミトレイン酸のみ(0.5mmol/L)、またはパルミチン酸(それぞれ0.25または0.5mmol/L)との組み合わせは、DNA断片化に影響を及ぼさなかった。グルコース濃度の増加は、パルミチン酸によって劇的に減少されたβ細胞の増殖を促進した。パルミトレイン酸は、5.5mmol/Lのグルコースを含む培地において増殖活性を強化したが、より高いグルコース濃度(11.1および33.3mmol/L)ではさらなる影響は見られなかった。細胞透過性のセラミド類似体であるC2セラミドは、パルミチン酸誘導によるβ細胞のアポトーシスおよび増殖の減少の両方を模倣した。さらに、セラミド合成酵素阻害剤フモニシンB1は、パルミチン酸がβ細胞の生存率に及ぼす悪影響をブロックした。また、パルミトレイン酸ではなく、パルミチン酸が、ミトコンドリアのアデニンヌクレオチドトランスロケーターの発現を減少させ、ミトコンドリアから細胞質ゾル内へのシトクロムcの放出を誘導した。最後に、パルミトレイン酸は、パルミチン酸によって減少されたβ細胞分泌機能を向上させた。総合すると、これらの結果から、飽和パルミチン酸の脂肪毒性効果は、β細胞の増殖能の低下に加えてアポトーシス速度の増加に関与し、インスリンの分泌の障害となったことが示唆される。パルミチン酸がβ細胞のターンオーバーに及ぼす有害な影響は、セラミドの形成およびアポトーシスのミトコンドリア経路の活性化によって媒介される。対照的に、一価不飽和パルミトレイン酸は、β細胞のアポトーシスに影響を及ぼさないが、低グルコース濃度でβ細胞の増殖を促進し、パルミチン酸の悪影響を相殺するとともに、β細胞の機能を向上させる。
【0123】
Skin Pharmacol Appl Skin Physiol.2003 May‐Jun;16(3):176‐87.Palmitoleic acid isomer(C16:1delta6)in human skin sebum is effective against gram‐positive bacteria.Wille JJ,Kydonieus A.ConvaTec,Bristol‐Myers Squibb Co.,Princeton,NJ,USA.
【0124】
プールしたヒト皮脂の薄層クロマトグラフィーによって分析された脂質組成の割合:セラミド(13%)、脂肪酸(47%)、コレステロール(7%)、コレステロールエステル(2%)、スクワレン(11%)、トリグリセリド(3%)、およびワックスエステル(17%)。全皮脂脂質(2〜4mg/mL)を細菌培養培地で超音波処理したところ、グラム陽性菌、黄色ブドウ球菌、唾液連鎖球菌および嫌気性フソバクテリウム・ヌクレアタムの成長に4〜5倍のlogの減少を引き起こしたが、ほとんどのグラム陽性菌に対しては無効であった。皮脂脂質の分画は、飽和および不飽和脂肪酸の両方が高い抗菌活性を保持していたことを示した。ラウリン酸(C12:0)は、最も活性な飽和脂肪酸であった。不飽和脂肪酸であるパルミトレイン酸(C16:1δ6、cPA)は、最も優勢なモノエンであると同時に最も活性な抗菌脂肪酸であった。精製したcPA(>99%)は、グラム陽性菌に対して10〜20マイクログラム/mLという典型的な最小抑制濃度(MIC)値をもたらした。有機的に合成されたcPA異性体では、天然の物質に匹敵するMIC値が得られた。天然および合成cPAの両方が、カンジダアルビカンスの病原株のブタ角質層への付着をブロックする上で最も活性な皮脂の脂質分画であることが分かった。エタノールをcPAと合わせると、緑膿菌、アクネ菌、大腸菌、および黄色ブドウ球菌のうちのいくつかのメチシリン耐性菌株を含むグラム陽性病原菌に対する相乗的な殺菌活性を発揮する。パルミトレイン酸は、創傷被覆材におけるグラム陽性菌抗菌剤として、またスキンケアおよびヘアケア製品における天然グラム陽性の抗菌性保存剤として、二次的なグラム陽性菌感染の治療のための局所用製剤において有用であり得る。Copyright 2003 S.Karger AG,Basel Prostaglandins s Leukot Essent Fatty Acids.2006 Feb;74(2):149‐56.Epub 2005 Dec 15.Relationships between fatty acids and psychophysiological parameters in depressive inpatients under experimentally induced stress. Irmisch G,Schlafke D,Richter J.Department of Psychiatry and Psychotherapy,Rostock University,Gehlsheimer Str.20,D‐18147,Rostock,Germany.
【0125】
脂肪酸は、体内における重要な細胞およびホルモンのプロセスに影響を与えることができる。例えば血中の脂肪酸含有量が十分でないと、種々の疾病の原因となるか、および/または種々の疾病をもたらす。鬱病患者において脂肪酸濃度における変化が見られた(特にオメガ3‐脂肪酸の欠乏)。この論文は、精神心理学的パラメータと脂肪酸組成における変化との間に何らかの関係が存在するかどうかという疑問を提起している。実験的に誘導された約1時間のストレスの前および後に直接測定された118人の精神病入院患者の血清中の脂肪酸濃度を、入院時、退院時、および3ヶ月後の経過観察の間に持続的に記録した精神心理学的パラメータと関連付けて分析した。収縮期および拡張期血圧、指尖脈波振幅、前額温(FD)、および頬骨筋のEMG活性が、単一不飽和オレイン酸(18:1n‐9)およびエルカ酸(22:1)ならびに飽和ミリスチン酸(14:0)およびラウリン酸(12:0)の濃度と一貫して相関していた。FDと、アラキドン酸(20:4n‐6)およびパルミトレイン酸(16:1)の濃度との間に逆相関が見られた。さらに、退院時のエルカ酸濃度が高いほど、ベック鬱病評価尺度(BDI)によって評価される鬱病スコアが高かった。パルミトレイン酸およびラウリン酸の高い濃度は、鬱病の低いレベルと関連していた(BDIおよびハミルトンスコア)。鬱病における追加の治療計画のために、これらの知見の意義が検討される。
【0126】
Cell.2008 Sep 19;134(6):933‐44.Identification of a lipokine,a lipid hormone linking adipose tissue to systemic metabolism.Cao H,Gerhold K,Mayers JR,Wiest MM,Watkins SM,Hotamisligil GS.Department of Genetics and Complex Diseases,Harvard School of Public Health,Boston,MA 02115,USA.
【0127】
個々の組織における脂質代謝の調節不全は、インスリン作用およびグルコース代謝の全身性の破壊を引き起こす。定量的なリピドミクス解析と、脂肪組織の脂質シャペロンaP2およびmal1を欠損するマウスを用いて、我々は、脂肪組織における代謝の変動が、どのように脂質シグナルを介して全身代謝と関連しているのかを調査した。新規脂質生成における堅調な増加は、これらのマウスの脂肪組織を、食餌性脂質曝露の有害な影響に対して耐性にした。全身脂質プロファイルはまた、筋肉のインスリン作用を強く刺激し、脂肪肝を抑制する、脂肪組織に由来する脂質ホルモンとしてのC16:1n7‐パルミトレイン酸の同定へと結びついた。我々のデータは、脂質媒介性の内分泌ネットワークを明らかにし、脂肪組織が、離れた器官と連絡して全身の代謝恒常性を制御するために、C16:1n7‐パルミトレイン酸等のリポカインを使用することを示している。
【0128】
6.ミリストレイン酸
【0129】
ミリストレイン酸、または9‐テトラデセン酸は、酵素δ9デサチュラーゼによってミリスチン酸から生合成されるオメガ‐5脂肪酸である。自然に見られることは稀であり、ヒトにおける生物学的有意性は不確かである。この脂肪酸の主要な源のうちの1つは、時にはその最も名の知れたメンバーにちなんで「ナツメグ科」と呼ばれることのある顕花植物の科の、ニクズク属の植物の種油である。いくつかの種において、ミリストレイン酸は油の最大30パーセントを構成することができる。ミリストレイン酸はまた、海洋動物、ビーバー、およびウシの脂肪の天然の構成要素である。
【0130】
ノコギリヤシから抽出されるミリストレイン酸は、ヒト前立腺癌LNCaP細胞においてアポトーシスおよび壊死を誘導することが分かっている。さらに、チーズを製造する際の副産物に見出されるミリストレイン酸は、カンジダアルビカンスの発芽の阻害において最も活性な3つの脂肪酸のうちの1つである。最後に、ミリストレイン酸は、歯周病を罹患する患者において大量に見られる細菌であるセレノモナス・アルテミジス(Selenomonas artemidis)の成長を阻害することが分かっている。
【0131】
Prostate.2001 Apr;47(1):59‐65.Myristoleic acid,a cytotoxic component in the extract from Serenoa repens,induces apoptosis and necrosis in human prostatic LNCaP cells.Iguchi K,Okumura N,Usui S,Sajiki H,Hirota K,Hirano K.Laboratory of Pharmaceutics,Gifu Pharmaceutical University,Gifu,Japan.
【0132】
背景
【0133】
前立腺腫瘍は、ホルモン療法に抵抗性を示す末期状態に進行することは周知である。この段階では、臨床成績に影響を及ぼすような化学療法薬は存在しない。これらの前立腺細胞のための効果的な細胞死誘導剤が、魅力的な抗腫瘍剤としての候補であり得る。ノコギリヤシの抽出物は、前立腺疾患の状態を向上させるために使用されてきており、我々は、その抽出物から有効な構成要素を同定することを試みた。
【0134】
方法
【0135】
ホルモン療法抵抗性前立腺腫瘍の生体外モデルであるLNCaP細胞において細胞生存率を調べた。
【0136】
結果
【0137】
ノコギリヤシの抽出物への曝露が、LNCaP細胞の細胞死をもたらしたことが判明した。ミリストレイン酸はまた、抽出物中の細胞傷害性構成要素のうちの1つとしても同定された。Hoechst33342染色によって判定したところ、細胞死は、アポトーシス性および壊死性の両方の核形態を呈していた。細胞死はまた、カスパーゼの活性化とも一部関連していた。
【0138】
結論
【0139】
ノコギリヤシの抽出物およびミリストレイン酸が、LNCaP細胞においてアポトーシスと壊死の混合した細胞死を誘導することが示された。これらの結果は、抽出物およびミリストレイン酸から前立腺癌の治療のための魅力的な新規ツールを開発できることを示唆するものである。
【0140】
FEMS Yeast Res.2007 Mar;7(2):276‐85.Epub 2006 Oct 10.Whey‐derived free fatty acids suppress the germination of Candida albicans in vitro.Clement M,Tremblay J,Lange M,Thibodeau J,Belhumeur P.Department de Microbiologie et Immunologie,Universite de Montreal,C.P. 6128,succ.Centre‐ville,Montreal,QC,Canada.
【0141】
チーズ製造産業からのウシ乳清は、健康を促進し、疾患を予防するいくつかの生理活性因子を含む。乳清中に存在する免疫グロブリン、ラクトペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、リゾチーム、および小ペプチドが、いくつかの病原微生物に対する抗菌活性を有することを示すための努力は、何年にもわたって行われてきたが、乳清の脂質分画については、今までそのような活性が調査されてなかった。そこで、我々は、生体外アッセイに基づく分画手順を使用して、乳清クリームに由来する遊離脂肪酸が、病原性と関連する形態変化であるカンジダアルビカンスの発芽を特異的に阻害することを示した。HPLCによるさらなる分画により、これらの活性は、主にラウリン酸、ミリストレイン酸、リノール酸、およびアラキドン酸に起因し得ることが明らかになった。
【0142】
Oral Microbiol Immunol.1996 Oct;11(5):350‐5.The inhibitory action of fatty acids on oral bacteria.Shapiro S.Institut fur orale Mikrobiologie und allgemeine Immunologie,Zentrum fur Zahn‐,Mund‐und Kieferheilkunde,Universitat Zurich,Switzerland.
【0143】
選択された3つの口腔細菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス、セレノモナス・アルテミジス、およびストレプトコッカス・ソブリナスに対する成長阻害効果について、飽和および不飽和脂肪酸ならびに脂肪酸誘導体を調べた。調査した45個の化合物のうち、唯一、ミリストレイン酸だけが、<100マイクログラム/mLの濃度でS.アルテミジスに対して阻害性であった。cis‐ヘキサデセン酸およびcis‐オクタデセン酸は、通常、P.ジンジバリスおよびS.ソブリナスに対して阻害性であるが、二重結合の位置と最小抑制濃度との間に相関性は存在しなかった。パルミトレイン酸の最小抑制濃度を超える濃度では、P.ジンジバリスもしくはS.ソブリナスのいずれかからの細胞内物質の漏出、または阻害されたS.ソブリナスによるL‐イソロイシンの取り込みも促進しなかった。試験株の成長抑制に対する、予期されるチモールとの相乗的または拮抗的な相互作用についても脂肪酸および誘導体を調べた。ラウリン酸およびミリスチン酸は、各々、チモールと相乗的に挙動して、少なくとも1つの試験株の成長を抑制したのに対し、cis‐10‐ヘプタデセン酸およびチモールは、S.ソブリナスの成長に対して著しく拮抗的であった。
【0144】
上に開示した本発明の主題の方法の全てにおける動物または個体は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、もしくは他の家畜、またはヒト等の哺乳動物であり得る。特定の実施形態において、動物はヒトである。ヒトの疾病、疾患、および状態を治療するための使用に加えて、本発明の主題の方法は、獣医学的用途を有し得る。したがって、特定の脂肪酸を含有する本発明の主題の組成物は、上記の状態を治療または予防するために有用であり得、上記疾病および疾患の発症または重症度を回避することに関して固体の健康を向上することができる。
【0145】
投与経路
【0146】
特定の実施形態において、経口投与組成物は、1つ以上のカプセル、1つ以上の錠剤、または1つ以上の丸薬の形態である。
【0147】
主題の組成物は、薬学的に許容される担体によって患者に送達される。そのような担体は、当該技術分野において周知であり、通常、固体または液体のいずれかの形態である。本発明の主題にしたがって調製することができる固体形態の薬用植物調製物は、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤、および座剤を含む。一般に、固体形態の調製物は、活性薬剤の約5%〜約90重量%を占める。
【0148】
固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、または錠剤崩壊剤としても作用することができる1つ以上の物質であり得、また、カプセル化材料であってもよい。散剤において、担体は、粘性の活性化合物と混合された微粉化固体である。錠剤において、活性化合物は、必要な結合特性を有する担体と好適な割合で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。好適な固体担体は、炭酸マグネシウム、タルク、砂糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等を含む。用語「調製物」は、担体としてカプセル化材料を含む活性化合物の配合物を含むことが意図され、担体はカプセルを提供し、活性構成要素(他の担体を含むかまたは含まない)が担体に包囲されている、すなわち、活性構成要素が担体に関連している。同様に、カシェ剤が含まれる。錠剤、散剤、カシェ剤、およびカプセル剤は、経口投与に好適な固体剤形として使用することができる。簡便性または患者の承諾の理由から必要である場合には、本発明の主題にしたがって調製される薬学的錠剤は、当該技術分野において周知の技術を用いて咀嚼可能な形態で提供されてもよい。
【0149】
座剤を調製するためには、脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物等の低融点ワックスを最初に溶解させ、撹拌によって有効成分をその中に均質に分散させる。次いで、溶融均質混合物を都合のよい寸法の型に注入し、冷却することによって固化させる。
【0150】
液体形態の調製物は、非経口注入用の溶液、懸濁液、および乳濁液を含み、この液体調製物は、水または水/プロピレングリコール溶液を含むことができる。液体調製物はまた、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として配合されてもよい。経口的使用に好適な水溶液は、活性構成要素を水に溶解させ、必要に応じて好適な着色剤、香味料、安定剤、および増粘剤を加えることによって調製することができる。経口的使用に好適な水性懸濁液は、微粉化した活性構成要素を、粘性材料、すなわち、天然または合成のガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムと、他の周知の懸濁剤とともに、水に分散させることによって作製することができる。液体薬学的調製物は、主題の活性剤の100重量%まで占めることができる。
【0151】
経口または非経口投与のいずれかのために、使用する直前に液体形態の調製物に変換されることが意図される固体形態の調製物もまた、好適な担体として企図される。そのような液体形態は、溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。このような特定の固体形態の調製物は、単位用量形態で最も簡便に提供され、したがって、単一の液体投与単位を提供するために使用される。代替として、液体形態に変換された後に、注射器、茶さじ、または他の体積測定用の容器で液体形態の調製物の所定の体積を測定することによって、複数の個々の液体用量を得ることができるように、十分な固体が提供されてもよい。そのようにして複数の液体用量が調製される場合、可能な分解を遅延させるために、上記液体用量の未使用分を低温(すなわち冷蔵)で維持することが好ましい。液体形態に変換されることが意図される固体形態の調製物は、活性材料に加えて、香味料、着色剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含有することができる。有用な液体形態の調製物を調製するために用いられる液体は、水、等張水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール等、およびそれらの混合物であり得る。一実施形態において、液体形態は、合わせた多価不飽和油および薬用植物組成物を含有する、グリセリンと水を含むゼラチンカプセル等のカプセルの形態で調製することができる。
【0152】
当然のことながら、用いられる液体は、投与経路を考慮して選択される。例えば、大量のエタノールを含有する液体調製物は経口的使用には適さない。
【0153】
本発明の主題の薬用植物調製物は、安息香酸、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の、当該技術分野で周知の1つ以上の保存剤を含むことができる。保存剤は、通常、薬学的組成物の最大約1重量%、好ましくは約0.05〜約0.5重量%の量で存在する。
【0154】
本発明の主題の目的のために有用な緩衝剤は、薬学的組成物の最大約1重量%、好ましくは約0.05〜約0.5重量%の量のクエン酸‐クエン酸ナトリウム、リン酸‐リン酸ナトリウム、および酢酸‐酢酸ナトリウムを含む。有用な懸濁剤または増粘剤は、薬学的組成物の最大約20重量%、好ましくは約1%〜約15重量%の量のメチルセルロース等のセルロース、アルギン酸等のカラギーナンおよびその誘導体、キサンタンガム、ゼラチン、アカシア、ならびに微結晶性セルロースを含む。
【0155】
利用することのできる甘味料は、当該技術分野で周知の天然および人工の両方の甘味料である。キシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ブドウ糖、スクロース、マルトース、部分的に加水分解した澱粉またはコーンシロップ固形分等の単糖類、二糖類および多糖類等、ならびにソルビトール、キシリトール、マンニトール、およびそれらの混合物等の糖アルコール等の甘味料が、薬学的組成物の約10重量%〜約60重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%の量で用いられてもよい。サッカリンおよびサッカリン塩(ナトリウムまたはカルシウム等)、チクロ塩、アセサルフェーム‐K、アスパルテーム等、ならびにそれらの混合物等の水溶性人工甘味料が、組成物の約0.001重量%〜約5重量%の量で用いられてもよい。
【0156】
本発明の主題の薬用植物生成物に用いることのできる香味料は、天然および人工の両方の香味料、ならびにペパーミント等のミント、メントール、バニラ、人工バニラ、チョコレート、人工チョコレート、シナモン、種々のフルーツ香味料を、個別におよび混合された状態の両方で、薬学的組成物の約0.5重量%〜約5重量%の量で含む。
【0157】
本発明の主題において有用な着色剤は、組成物の最大約6重量%の量で組み込まれてもよい色素を含む。好ましい色素である二酸化チタンは、最大約1重量%の量で組み込まれてもよい。また、着色剤は、FD&C染料として知られる食品、医薬品、および化粧品の用途に好適な他の染料等を含むことができる。そのような染料は、通常、薬学的組成物の最大約0.25重量%、好ましくは約0.05重量%〜約0.2重量%の量で存在する。全てのFD&CおよびD&C染料、ならびにそれらの対応する化学構造の完全な記述はKirk‐Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Volume5の857〜884ページに見出すことができ、その記述は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
有用な可溶化剤は、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を含み、香味料を可溶化するために使用されてもよい。可溶化剤は、通常、薬学的組成物の最大約10重量%、好ましくは約2重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0159】
必要に応じて本組成物中に使用することのできる滑沢剤は、シリコーン油、または置換および非置換ポリシロキサン、例えば、ジメチコンとしても知られるジメチルポリシロキサン等の流体を含む。他の周知の滑沢剤が用いられてもよい。
【0160】
薬用植物調製物はまた、単位投与量形態で調製することもできる。そのような形態において、調製物は適切な量の活性構成要素を含有する単位用量に細分化される。単位投与量形態は包装された調製物であってもよく、その包装が個別の量の調製物、例えば、小型包装された錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の散剤を含有する。単位投与量形態はまた、カプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤自体であってもよいか、または適切な数のこれらのうちのいずれかが包装形態になっていてもよい。
【0161】
本発明の主題の化合物が、他の合成のまたは天然に発生する物質と有意に有害な相互作用を示すことは予想されない。したがって、本発明の主題の化合物は、例えば、癌を治療するための他の有用な化合物および組成物と併用投与することができる。特に、本発明の主題の化合物は、本発明の主題の他の化合物、化学療法剤等と併用投与されてもよい。
【0162】
所望の薬用植物配合物は、投与経路および所望の投与量等の考慮すべき事柄に依存して、当業者により決定される。例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,18th ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042),pp.1435‐1712(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。そのような配合物は、本発明の主題の本治療剤の物理的状態、安定性、生体内での放出速度、および生体内でのクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0163】
投与量
【0164】
体重1キログラム当たり約0.001mg〜約100mg程の有効成分の化合物または組成物の投与量レベルが、本明細書に記載される状態の治療において有用である。一実施形態において、好ましい全投与量は、個体当たり200mg/1日〜2000mg/1日の範囲である。他の実施形態は、個体当たり>2000mg/1日の1日用量を含む。本発明の主題の化合物および組成物は、1日に2回または3回の用量で投与することができる。1日2回の低用量(200〜300mg)から開始して、必要に応じて、徐々により高い用量に増加させることが、企図されるストラテジーである。単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることのできる有効成分の量は、治療される宿主および特定の投与様式によって異なる。一実施形態において、単一の投与単位は、単一カプセル中に1000mgの本発明の主題の組成物を含み、単一カプセルは、1日当たり2000mgの合計用量で1日2回投与される。
【0165】
しかしながら、任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、用いられる特定の化合物の活性;患者の年齢、体重、総体的な健康、性別および食生活;投与期間;排泄率;薬剤の併用;治療される特定の疾患の重症度;および投与形態を含む、多様な要因に依存することを理解されたい。当業者は、そのような要因の変異性を認識し、予期しない結果が示される場合を除いて、単なるルーチン実験を用いて特定の用量レベルを確立することが可能であろう。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、本発明の主題を例示するものであって、それを制限することを意図するものではない。別途記載のない限り、全ての割合は最終組成物の100重量%に基づく。用語「WholeMega」の使用は、本発明の主題の組成物である、多価不飽和油組成物と組み合わせた、治療的に有効な量のローズマリーの超臨界抽出物およびオレガノの超臨界抽出物を含む組成物を指す。
【0167】
実施例1:本発明の組成物(WholeMega組成物)を用いた臨床試験:サーモン油の脂質の吸収
【0168】
本発明の主題の組成物であるWholeMegaサーモン油生成物を2gまたは4g摂取したヒトボランティアにおいて臨床試験を行った。血清中の主な魚油の脂質の存在を経時的に測定した。結果は、WholeMegaの脂質は、消化管膜を通過して吸収され、血清中で検出可能であったことを示した。
【0169】
結果は、WholeMegaサーモン油の脂質の吸収および血液中にそれらが出現したことを明白に示すものであった。図1および2に示すように、用量2gまたは4gのWholeMegaの摂取は、EPAオメガ‐3の血清含有量に濃度依存性および時間依存性の変化をもたらす。本発明の主題の組成物はまた、図2に示される平均EPA、オレイン酸、およびパルミトレイン酸(それぞれ、WholeMegaオメガ‐3、‐5、および‐7多価不飽和脂肪酸の代表例である)における時間依存性の変化をもたらす。オメガ3(EPA)、オメガ7パルミトレイン酸)、およびオメガ9(オレイン酸)における変化は、脂質クラスにおける変化の幅を表す。破線は、単にベースライン(投与前)のレベルを示す。WholeMegaに由来する脂質には、最長24時間までの持続する変化を見ることができる。他の実施形態において、本発明の主題の他の組成物もまた、脂質組成におけるこれらの変化を実現するために有用である。
【0170】
実施例2:多価不飽和脂質の細胞膜への取り込み
【0171】
本発明の主題の組成物の摂取後に、細胞膜脂質組成が改変されたかどうかを評価するために、末梢血単核球(PBMC)の試料を投与前および投与後に採取し、膜脂質含有量をGC/MSによって測定した。下の図3に示すように、たとえ用量2gのWholeMegaの単回投与であっても、WholeMegaに由来する脂質の膜組成に容易に確認可能な増加をもたらした。データは、連続3日間WholeMega(2g/日)を摂取した4人のボランティアから得た。投与前と投与後3日との膜脂質組成における違いを判定した。
【0172】
いくつかの実施形態において、本発明の主題の組成物を摂取することにおける目的は、多価不飽和脂肪酸を組織膜に取り込むことであり、そこで、脂肪酸は、細胞シグナル伝達事象を調節(例えば、炎症を減少させる)し、膜の流動性を増加させる役割を果たす。エイコサノイドを形成するためのホスホリパーゼの作用により、細胞膜から脂肪酸を放出するように細胞が活性化されると、EPAおよびDHAは、COXおよびLOX酵素のためにアラキドン酸と競合する。放出されたアラキドン酸が、炎症性のプロスタグランジン生成物(例えば、PGE)を生じさせる一方で、魚油の脂質は、AAに由来する生成物(例えば、PGEおよびLTB)よりも有意に炎症を引き起こしにくいプロスタグランジンおよびリポキシゲナーゼ生成物(例えば、PGEおよびLTB)を生成する。他の実施形態では、本発明の主題の他の組成物もまた、脂質組成におけるこれらの変化を実現するため、また、同じ細胞シグナル伝達事象を調節するために有用である。
【0173】
実施例3:WholeMegaは「善玉脂肪」の「悪玉脂肪」に対する比率を改善する
【0174】
WholeMegaの後の血清脂質含有量における変化は、EPA等の健康的なオメガ‐3油の増加、およびオメガ‐6油アラキドン酸(AA)に相対的な減少をもたらした。オメガ‐6対オメガ‐3の比率、またはAA/EPA比におけるこの変化は、図4および5に示すように用量依存性であった。そのような変化は、健康のために有益であると考えられ、炎症の可能性を減少させる。
【0175】
同様に、図6は、1日当たり2gまたは4gのいずれかのWholeMegaの摂取が、末梢血単核球の膜組成に変化をもたらすことを示す。WholeMegaに由来するEPAのより高い取り込みの結果として、膜のアラキドン酸が減少する。このプロットの重要な点は、たとえ2g/日のWholeMegaであっても、組織(白血球)の膜組成における健康的な変化を達成し、アラキドン酸に由来する炎症の可能性を減少させることが可能であるということである。上記プロットは、連続3日間、2g/日のWholeMegaを摂取した4人の対象から得たデータに由来する。末梢血単核球は、投与前およびWholeMegaを投与した3日後に採取した。重要なオメガ‐3脂肪酸であるEPAの含有量に関しては、細胞膜脂質組成が増加する。
【0176】
魚油等の栄養補助剤の影響を評価するための別の方法は、血清および組織膜における「善玉脂肪」の「悪玉脂肪」に対する変化を測定することである。「善玉」および「悪玉」脂肪の分類は、これらの特定の脂肪酸の影響について分かっていることに基づいている。脂肪の相対的な分類については上記考察を参照のこと。
【0177】
善玉脂肪/悪玉脂肪の比率における相対的変化を調べることにより、用量2gのWholeMegaを摂取した固体において、小規模ではあるが、血清および組織膜組成の両方に関して、この比率における変化が明らかになった。比率における5〜10%の変化は数字的には小さいものであるが、「善玉脂肪」/「悪玉脂肪」の比率におけるこの小さな変化の結果であっても、重要な健康への影響がある。
【0178】
【表5】

【0179】
表Vのデータは、2gのWholeMegaを摂取した8人のボランティアのデータの分析から記録された「善玉脂肪」/「悪玉脂肪」の比率における変化を反映している。PBMC膜組成における「善玉脂肪」/「悪玉脂肪」の変化は、連続3日間WholeMega(2g/日)を摂取した4人の個体のデータに由来する。データは平均値+/‐SEで表す。別の実施形態において、本発明の主題の組成物は、「善玉脂肪」/「悪玉脂肪」の比率を、血清中で少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも6.5%、少なくとも7.5%、少なくとも8.0%、または少なくとも8.5%増加させるか、または組織中で、少なくとも5.0%、少なくとも6.0%、少なくとも6.5%、少なくとも7.5%、少なくとも8.0%、少なくとも8.5%、また少なくとも9.2%増加させる。
【0180】
実施例4:WholeMegaは、良好な心血管の健康と関連する血液脂質化学を改善する
【0181】
血液化学分析は、変化するものについてだけではなく、変化しないもの(例えば、魚油のIgE)についても重要である。WholeMegaに起因する血液化学における重要な違いの評価をここに記載する。データは、連続3日間、2g/日のWholeMegaを摂取した4人の個体に由来する。限定的なデータセットは、統計分析のための十分な情報を提供することはできないが、これらは、良好な健康と関連する血清の血液化学における有益な変化の傾向を明白に示している。より長期の投与期間(例えば、2〜4週間)にわたってそのような血液脂質化学を調べると興味深いものになるであろう。
【0182】
【表6】

【0183】
トリグリセリド、コレステロール、およびLDLにおける変化は、高用量の魚油の投与を用いて、他者により以前に指摘されている。しかしながら、この実施例では、2gm/日という比較的低い用量の投与後にのみ、トリグリセリドおよびLDLの変化が予期せずに得られた。魚油に関する以前の研究は、いずれの用量においてもコレステロールにおける変化は報告していないため、これは予想外である。総コレステロールレベルにおいて、少ないながらも意義のある減少が観察された。これはまた、できる限り低いことが望ましいコレステロール/HDL比がわずかに減少したことにも反映されている。
【0184】
最近、European Journal of Clinical Nutrition(実際の出版に先駆けたepub)において、筆者M.A.Micallef et alは、炎症のマーカーであり、循環器関連事象の独立した予測因子であると報告されているC‐反応性タンパク質(CRP)のレベルが、DHAおよびEPAの血中レベルに反比例する関係にあると報告している。本発明の主題の組成物を用いたデータは、この報告と一致している。
【0185】
実施例5:WholeMegaは、サイトカインおよび/またはケモカインのレベルを有意に変化させない
【0186】
サイトカインおよびケモカインのデータの初期の分析は、WholeMegaの単回用量またはさらには複数回用量の投与に起因し得る有意な変化を示していない。後になってみれば分かるように、これは、魚油の正確な投与によって起こることが知られていないため、予想できないことではない。いくつかの実施形態において、魚油は、本試験において測定されたサイトカインを有意に変化させることなく、一旦炎症が起こると、それを調節することができ、また、炎症を引き起こす刺激に対する応答を緩和(すなわち、阻止)することができる。
【0187】
実施例6:WholeMegaはヒトの摂取に対する認容性を有する
【0188】
STT(我々のCRO)によるWholeMega生成物のヒトにおける認容性の評価は、良好であると見なされた。少数の脱落者が存在し、そのうち1人のみが、魚臭いげっぷが出る現象について不満を述べた。
【0189】
実施例7:魚油食餌および肺癌
【0190】
要約すると、本明細書に記載する生体外試験は、n‐6多価不飽和脂肪酸が腫瘍細胞の成長を促進させ、n‐3多価不飽和脂質(EPA等)がヒト肺癌細胞の増殖を阻害することを示した。この効果は、一部、COX‐2の代謝によって媒介されるものであると考えられる。シクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ、脂質メッセンジャー、および膜組成に関与する種々の脂質代謝経路の代表例については、図7および8を参照のこと。
【0191】
魚油n‐3の食餌は、抗炎症性効果を有し、心血管の保護を提供し、免疫調節を提供し、化学療法の細胞傷害効果を増大させることが分かっている。
【0192】
n‐3脂肪酸の抗癌活性の原因となる、可能な分子機構が仮定されている(Hardman,E.J.Nutr.132:3508S,2002)。これらは、例えば、癌細胞の分化を誘導し、NF‐κBの活性化およびBcl‐2の発現を抑制し、AP‐1およびRasの発現を減少させ、癌に関連する悪液質を減少させ、エイコサノイド代謝を改変し、PGE2の生成を阻害する、n‐3脂質および代謝によってそれらから得られる脂質を含む。
【0193】
実施例8:前立腺癌臨床試験
【0194】
実験計画:浸潤性前立腺癌であると診断された466人の男性と、478人の年齢および人種を一致させた対照を用いた症例対照研究
【0195】
遺伝子型分析:9つのCOX‐2タグ一塩基多型(SNP)
【0196】
結果:LC n‐3の取り込み量の増加は、浸潤性前立腺癌のリスクの低下と強い関連性があった(p<0.0001)。この逆の関連性は、特定のCOX‐2変異体SNP(SNP rs4648310)を有する男性においてさらに強かった。
【0197】
結論:食餌によるLC n‐3脂肪酸の摂取は、炎症を減少させ、代わりに、前立腺癌の発生および進行のリスクを低下させることが可能である。この潜在的効果は、脂肪酸代謝および炎症における重要な酵素であるCOX‐2の遺伝的変異体によって修正され得る。
【0198】
実施例9:シクロオキシゲナーゼ‐2と肺癌
【0199】
COX‐2の発現上昇およびPGEの形成が、前浸潤性前駆病変および浸潤性肺癌を含むほとんどの非小細胞肺癌に見られている。PGE2は、BCl‐2、Src、MAPK、VEGF、EGFの上方制御およびBAXシグナル伝達経路の下方制御により、増殖および血管新生を促進し、NSCLC細胞のアポトーシスを防止する。選択的なCOX‐2阻害剤セレコキシブまたはNSAIDを用いたヒトの治療は、非小細胞肺癌に罹患する患者における化学療法の抗腫瘍効果を増大させる。
【0200】
PGE2がA549細胞の増殖を若干刺激するのに対し、PGE3は、これらの特定の細胞の増殖を阻害する。EPAの抗増殖活性は、非小細胞肺癌(NSLC)細胞株A549におけるPGE3の形成と関連している。PGE2は、「悪玉脂肪」であるアラキドン酸に由来する。PGE3は、「善玉脂肪」であるEPAに由来する。善玉脂肪の悪玉脂肪に対する比率を変更した食餌が、ヒト肺癌に異なる影響を及ぼすかどうかを判定するために実験を行った。
【0201】
実施例10:癌におけるCOX‐2発現系の比較
【0202】
ヒト肺癌A549異種移植片(COX‐2を過剰発現する)およびH1299異種移植片(COX‐2を発現しない)において、特別に配合された魚油食餌の抗腫瘍効果を調べた。
【0203】
EPAは、A549細胞の増幅を阻害するが、H1299細胞の増幅は阻害しない。図9を参照のこと。
【0204】
EPAに曝露されたヒト肺癌A549およびH1299細胞におけるPGE2およびPGE3の生成(Yang,P.et al.J.Lipid Res.2004)。EPAは、COX‐2を含有するA549細胞においてCOX‐2が媒介するPGE2の合成を阻害するが、有意なCOX‐2の発現が見られないH1299細胞では阻害しない。EPAはまた、A549細胞中において、また、より低い程度ではあるがH1299ヒト非小細胞肺癌細胞において、比較的炎症性の低いPGE3の生成を引き起こす。図10を参照のこと。
【0205】
PGE2がA549細胞の増殖を若干刺激するのに対し、PGE3(魚油EPAに由来)は、これらの特定の細胞の増殖を阻害する。図11を参照のこと。
【0206】
EPAの抗増殖活性は、A549細胞におけるPGE3の形成と関連している。図12の矢印は、魚油EPAを用いたインキュベーションによってこれらのヒト非小細胞肺癌細胞内にもたらされた効果である、アポトーシス性の死滅細胞を指している。データはまた、この効果が、COX‐1ではなく、COX‐2の阻害によるものであることも示している。選択的なCOX‐2阻害剤セレコキシブの使用は、EPAの抗増殖効果を概ね無効にする。図12を参照のこと。
【0207】
COX‐2 siRNAでトランスフェクトしたA549細胞において、EPAの抗増殖効果が減少した。すなわち、COX‐2の生成および発現をブロックすることにより、epa derge3の形成、ひいては、この魚油の抗増殖効果がブロックされたことになる。図13を参照のこと。
【0208】
要約すると、これらの生体外試験は、COX‐2の代謝によって媒介されるヒト肺癌細胞の増殖を阻害することを示唆している。
【0209】
実施例11:異なる魚油生成物の効果の比較
【0210】
魚油に由来するPGE3の肺癌における代謝の可能な機構の例を図14に示す。3つの異なる魚油に由来する生成物、WholeMega(本発明の主題の組成物)、Ultimate Omega、およびCarlson Oilで処理したA549細胞において、PGE2およびPGE3の形成を調べた。図15を参照すると、等量(μg/mL)の各油を使用して、異なる油組成物で処理したA549細胞におけるPGE2およびPGE3の形成の比較を行った。
【0211】
魚油中の異なる量(μg/mL)のEPAを使用して、異なる魚油生成物で処理したA549細胞におけるPGE2およびPGE3の形成の比較を行った。抗炎症性PGE3の形成に関して、WholeMegaが他の2つの市販の魚油よりも高い効力を持つことは明白である。図16を参照のこと。
【0212】
図17は、WholeMegaおよび2つの市販の魚油生成物が、ヒトA549非小細胞肺癌細胞(上の図)およびヒト1299非小細胞肺癌細胞(下の図)の増殖を阻害する相対的効果を示す。多くの癌細胞がそうであると言われるように、A549細胞はCOX‐2を過剰発現する。H1299細胞はCOX‐2を過剰発現しないため、COX‐2を過剰発現しない癌細胞のための対照を提供する。WholeMegaは、A549細胞に対して他の2つの生成物よりも強力な効果を有する。下の図では、H1299細胞がCOX‐2を過剰発現しておらず、3つの魚油が細胞の増殖に対して同様の阻害効果を示した。A549細胞はCOX‐2を過剰発現しており、そのため、通常、PGE2の過剰発現/過剰生成がもたらされる。しかしながら、魚油EPA等の代替の基質が提供される場合、得られる生成物はPGE2ではなくPGE3である。この変化が、増殖能を遅延させ、したがって、A549細胞の増殖が低下する。検査した3つ全ての魚油組成物はEPAを含むため、このWholeMegaのより強力な効果は、驚きであり、予期しないものであった。なぜWholemegaが、他の2つの油よりもかなり効果的であるかの正確な機構は未知である。明らかに、WholeMega組成物に特有の少なくとも1つの構造的特徴が、さらなる抗腫瘍効果に寄与している。1つの可能性は、他の2つの魚油には存在しないWholemega中の他の油(オメガ‐5、オメガ‐7およびオメガ‐9油)が、癌細胞の成長に対するさらなる阻害効果に寄与しているということである。別の可能性としては、特定の油の相互に対する相対的な分画であろう。さらに別の可能性は、薬用植物油組成物、例えば、ローズマリーSCEおよびオレガノSCEが、癌細胞の成長に対する追加の阻害効果に寄与しているということであろう。他の考えられる非限定的な機構もまた、COX‐2を過剰発現する腫瘍細胞を含む腫瘍細胞の成長を阻害するWholeMegaの予期せぬ能力の一因となっている可能性がある。一実施形態において、薬用植物および多価不飽和油の本発明の主題の組成物は、治療的に有効な用量が動物に投与されると、癌細胞の成長を阻害する。一実施形態において、薬用植物および多価不飽和油の本発明の主題の組成物は、COX‐2を過剰発現する癌細胞の成長を阻害する。
【0213】
COXおよびLOX経路の変更に対する3つの魚油生成物の効果:A549細胞中のCOX‐2、5‐LOXおよび12‐LOXのタンパク質発現に対するこれらの3つの魚油の効果を調べた。図18に示すように、12‐LOXの発現は、Ultimate OmegaおよびWholeMega(1000ug/mL)で処理したA549細胞において、それぞれ、20%および15%と若干減少した。A549細胞において、COX‐2または5‐LOXのいずれのタンパク質発現も変更されなかった。
【0214】
ヒトA549肺癌細胞におけるCOX‐2、5‐および12‐LOX、ならびにAkt/pAktの発現に対するWholeMega、Ultimate Omega、およびCarlson Super Fish Oil生成物の効果。細胞(1×10)を組織培養皿に一晩接着させ、次いで、異なる濃度の魚油で24時間処理した。次いで、細胞を採取して溶解させ、ウエスタンブロット法によりタンパク質発現を測定し、濃度測定によって定量化した。図18のデータは、WholeMegaがCOX‐2または5‐LOXの発現を阻害しなかったこと、そして、12‐LOXの発現をわずかに阻害したのみであったことをを示唆している。対照的に、WholeMega(500ug/mL)は、AktおよびpAktの両方の発現を阻害(30%)した。Carlsonの魚油で処理したA549細胞中のリン酸化Aktのレベルに同程度の阻害が観察されたが、全Aktには観察されなかった。Ultimate Omegaで処理したA549細胞にはそのような効果は観察されなかった。
【0215】
3つの異なる魚油生成物で処理した細胞において、Aktの発現およびAktのリン酸化を測定した。オメガ‐3脂肪酸の抗増殖活性と関連している可能性がある機構のうちの1つは、全Aktの阻害およびAktのリン酸化である。3つの魚油生成物がAktおよびpAktのタンパク質レベルに与える影響を、魚油によって誘導されるヒト肺癌細胞における細胞成長の抑制に一部寄与する潜在的な分子機構として測定した。図18(AおよびB)に示すように、WholeMegaで処理したA549細胞において、全Aktのレベルは30%減少した。さらに、A549細胞においてpAktの発現が減少したこと(32%の減少)からも明らかなように、WholeMegaはAktのリン酸化も抑制した。この抑制効果は、濃度依存性であった。対照的に、Carlson Super Fish Oilは、Aktのリン酸化のみを抑制したが、全Aktのリン酸化は抑制しなかった(図18_C)。同様の量のNordic NaturalのUltimate Omegaで処理した細胞には、AktまたはpAktレベルのいずれにおいても変化が見られなかった(データは表示せず)。これらのデータは、Akt経路の阻害は、WholeMegaの抗増殖活性に寄与する一部の機構であるかもしれないことを示唆している。
【0216】
実施例12:Wholemegaで処理したRAWマクロファージ細胞における炎症遺伝子の発現
【0217】
WholeMegaが炎症経路にどのように影響を及ぼし得るかをさらに説明するために、Inflammation Array分析およびリアルタイムPCRによって、WholeMegaが炎症性サイトカインおよび炎症に関連する遺伝子に与える影響を調べた。簡潔に述べると、100mmプレート上に細胞を播種し、無血清条件において24時間WholeMega(250〜500ug/mL)で処理した。標準的なTrizol(Invitrogen)を使用して、製造者の指示にしたがって細胞からNAを抽出した。次いで、SuperScript(登録商標)II First‐Strand Synthesis Kitを使用してRNAを逆転写した。産生されたcDNAをTaqman Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用して調製した。Inflammation Array Micro Fluidic Card(Applied Biosystems)の各ウェルにアリコート(100uL)を充填し、遠心分離にかけてから密封した。Inflammation Array用のソフトウェアを7900 HT Fast Real‐Time PCR System(Applied Biosystems)にダウンロードした。カードをロードし、遺伝子発現の相対的なレベルとの相関性としてCt値を評価した。図19に示すように、検査した95個の炎症関連遺伝子のうち、全てのアネキシン遺伝子が下方制御され、アネキシンA1が最も強力に阻害された。
【0218】
炎症促進性生成物ロイコトリエンLTB、すなわちLTA加水分解酵素を異化することに寄与する遺伝子の発現も、対照群の発現と比較して減少した。これは、WholeMega(500ug/mL)で処理したA549細胞における酵素生成物LTBの減少と一致する。セロトニン受容体、MAPキナーゼ、および血管接着の発現と関連する遺伝子もまた、対照細胞の遺伝子と比較すると20%を超えて下方制御された。別個のマクロファージ様細胞株に同様の変化が生じるかどうかを確認するために、RAW細胞を使用した。前述したように細胞を処理し、ラット炎症遺伝子のアレイ(Applied Biosystems)解析を行った。ヒトNSCLC A549細胞における炎症関連遺伝子の発現との比較において、WholeMegaで処理したRAW細胞で最も影響を受けた遺伝子は、ホスホリパーゼ活性と関連する遺伝子であった。A549およびRaw細胞の両方で、広くWholeMegaの影響を受けた遺伝子は、アネキシンA3、MAPキナーゼ、ホスホリパーゼAおよびCであった。これらのデータは、WholeMegaが、ロイコトリエンA4加水分解酵素(ロイコトリエン合成、A549細胞)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK、細胞増殖)、および悪性疾患の病因に関与する細胞表面等タンパク質である血管細胞接着分子(VCAM‐1)を含む、一連の重要な炎症関連遺伝子を下方制御する能力を有することを提案するものである。
【0219】
図19は、Wholemegaで処理したヒト非小細胞肺癌A549細胞における炎症遺伝子アレイの発現の結果を示す。Wholemegaの処理により20%未満の減少が見られた遺伝子を上の図に示し、さらに高い程度(20〜50%)まで減少した遺伝子を下の図に示す。一実施形態において、本発明の主題の組成物は、アンドロゲン表面受容体β2(ADBR2)、アネキシンA1(ANXA1)、セロトニン受容体3(HTR3)、ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8(MAPK8)、血管細胞接着分子1(VCAM1)、アネキシンA3、アネキシンA5、β2‐マイクログロブリン、B1ブラジキニン受容体、L型カルシウムチャネルα1Dサブユニット、カルシウムチャネルβ4サブユニット、CD40抗原(TNF受容体スーパーファミリー)、インテグリンαL、インテグリンβ1、血漿カリクレインB(フレッチャー因子)1、核因子κB、ホスホリパーゼA2IB群(膵臓)、ホスホリパーゼCδ1、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリーNo.13b、およびグリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼからなる群から選択される、少なくとも1つの受容体または酵素の発現を阻害するために使用することができる。別の実施形態において、本発明の主題の組成物は、アンドロゲン表面受容体β2(ADBR2)、アネキシンA1(ANXA1)、セロトニン受容体3(HTR3)、ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8(MAPK8)、および血管細胞接着分子1(VCAM1)からなる群から選択される少なくとも1つの受容体または酵素の発現を阻害するために使用することができる。さらなる実施形態において、少なくとも1つの受容体または酵素の発現のレベルは、約3%〜約20%減少する。さらに別の実施形態において、少なくとも1つの受容体または酵素の発現のレベルは、少なくとも約20%、例えば、約20%〜約50%減少する。
【0220】
図20_は、WholeMega(250および500ug/mL)で処理したRAW細胞における炎症遺伝子アレイの発現の結果を、未処理の対照と比較して示したものである。記号(*)は、WholeMegaのために20%を超える減少を示した発現のレベルを示す。RAW細胞におけるCOXおよび5‐LOXならびにホスホリパーゼの発現と関連する受容体または酵素の発現は、未処理の対照細胞の発現と比較すると減少した。
【0221】
これらのデータは、(1)より強い抗増殖活性、(2)ヒトNSCLC A549およびラットマクロファージRaw細胞の両方において、抗増殖性脂質メディエータPGEおよびLTBを形成する能力、ならびに(3)A549細胞におけるAktおよびpAktタンパク質の両方の抑制からも明らかなように、WholeMegaの魚油が、他の2つの市販の魚油生成物、Ultimate OmegaおよびCarlson Super Fish Oilよりも予想外に優れていることを示している。Wholemegaにおけるオメガ‐3脂肪酸の相対濃度はUltimate OmegaおよびCarlson Super Fish Oilにおける相対濃度よりも低いため、このことは特に興味深い。このデータは、本発明の主題の精製された組成物中に存在するWholemegaに特有の少なくとも1つの構成要素が、WholeMegaの抗癌活性に起因している可能性があることを示唆するものである。一実施形態において、これらの予測されなかった効果の原因となる、本発明の主題の組成物中のこの少なくとも1つの特有の構成要素は、脂肪酸、脂肪酸の組み合わせ、薬用植物構成要素、他の非脂肪酸非薬用植物構成要素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。また、炎症と関連する幅広い遺伝子の抑制からも明らかなように、炎症アレイのデータは、本発明の主題の組成物の抗炎症性活性をさらに実証するものである。
【0222】
一実施形態において、本発明の主題の組成物は、α2‐マクログロブリン、β2アドレナリン受容体、アネキシンA3、酸性リボゾームリンタンパク質P0、システイニルロイコトリエン受容体1、ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ15、ヒスタミン受容体H2、細胞間接着分子1、インターロイキン1受容体、ロイコトリエンB4受容体、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ3、ホスホリパーゼA2群V、ホスホリパーゼCβ2、ホスホリパーゼCδ1、ホスホリパーゼCγ2、プロスタグランジンE受容体3、プロスタグランジン‐エンドペルオキシド合成酵素1、およびカスパーゼ1からなる群から選択される、少なくとも1つの受容体または酵素の発現を阻害するために使用することができる。好ましい実施形態において、本発明の主題の組成物は、α2‐マクログロブリン、β2アドレナリン受容体、酸性リボゾームリンタンパク質P0、ヒスタミン受容体H2、細胞間接着分子1、およびプロスタグランジンE受容体3からなる群から選択される、少なくとも1つの受容体または酵素の発現を阻害するために使用することができる。この好ましい実施形態の別の実施形態において、受容体および/または酵素の2つもしくは3つ、または3つもしくはそれ以上、または4つもしくはそれ以上が、少なくとも20%減少した発現のレベルを有する。さらなる実施形態において、受容体または酵素の少なくとも1つの発現のレベルは、約3%〜約20%減少する。さらに別の実施形態において、少なくとも1つの受容体または酵素の発現のレベルには、20%を超えて減少する。
【0223】
参考文献
以下の参考文献は、本発明の主題を、関連技術分野における位置に照らして理解するために有用であると考えられる。本明細書における引用は、引用されるいずれの参考文献も、本発明の主題の特許性に関わるという主張または承認であると見なされるべきではない。出願人は、情報開示陳述書において、特許性に関わる重要な情報を適切に開示する。各参考文献の内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
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【0224】
本発明の主題について記載したが、多くの様式において本発明の主題が修正または変更され得ることは明白であろう。そのような修正または変更は、本発明の主題の主旨および範囲からの逸脱であると見なされるべきではなく、全てのそのような修正または変更は、以下の特許請求項の範囲内に含まれることが意図される。
【0225】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月29日に出願された米国特許仮出願第61/213,334号、および2009年8月19日に出願された同第61/272,130号の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローズマリーの超臨界抽出物(SCE)と、オレガノの超臨界抽出物と、多価不飽和油と、を含む、治療用組成物。
【請求項2】
前記多価不飽和油は、サーモン油である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ローズマリーSCE:オレガノSCEの比率は、約2:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
多価不飽和油に対する前記ローズマリーSCE:オレガノSCEの比率は、1:5〜1:2000である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の全重量パーセントの約0.1〜1重量%のローズマリーSCEと、約0.1〜1重量%のオレガノSCEと、97〜99.8重量%の多価不飽和油と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約2mgのローズマリーSCEと、約1mgのオレガノSCEと、100mg〜2000mgの範囲の多価不飽和油と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約2mgのローズマリーSCEと、約1mgのオレガノSCEと、約500mg〜約1000mgの範囲のサーモン油と、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
動物における細胞増殖性疾患を治療するための方法であって、請求項1〜7に記載の組成物の治療的な有効量を、それを必要とする動物に投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記細胞増殖性疾患は、前立腺癌細胞、乳癌、肺癌、大腸癌、またはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞増殖性疾患は、細胞の癌への形質転換、癌細胞の増殖、癌細胞の転移、癌細胞の侵襲性、癌細胞によって調節される血管新生、癌細胞によって調節されるアポトーシス抑制、またはそれらの組み合わせと関連する異常なエイコサノイド代謝プロセスに関与し、前記組成物の投与は、細胞の癌への形質転換、癌細胞の増殖、癌細胞の転移、癌細胞の侵襲性、癌細胞によって調節される血管新生、癌細胞によって調節されるアポトーシス抑制と関連する前記異常なエイコサノイド代謝プロセスのうちの少なくとも1つを阻害する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物の前記投与は、エイコサノイドオキシゲナーゼまたはNF‐κBのいずれかの活性を阻害する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物の前記投与は、全Aktの発現およびAktのリン酸化の両方を阻害する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記動物は、ヒトである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
減少を必要とする動物において、血清LDL、血清コレステロール、または血清コレステロール/HDLの量を減少させるための方法であって、1日当たり少なくとも2gの請求項1〜7に記載の組成物を少なくとも3日間前記動物に投与することを含み、血清LDLが少なくとも5%(例えば、10%もしくは13%)減少するか、血清コレステロールが少なくとも5%(例えば、8%)減少するか、コレステロール/HDLが少なくとも5%(例えば、7%)減少するか、またはそれらの組み合わせである、方法。
【請求項15】
血清LDLが、少なくとも10%減少する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記動物は、ヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
増加を必要とする動物の、血清中の「善玉脂肪」の「悪玉脂肪」に対する比率を増加させるための方法であって、1日当たり少なくとも2gの請求項1〜7に記載の組成物を少なくとも3日間前記動物に投与することを含み、前記動物の前記血清中の前記善玉脂肪の悪玉脂肪に対する比率が、少なくとも5%(例えば、8%)増加する、方法。
【請求項18】
増加を必要とする動物の、血清中の細胞膜における善玉脂肪の悪玉脂肪に対する比率を増加させるための方法であって、1日当たり少なくとも2gの請求項1〜7に記載の組成物を少なくとも3日間前記動物に投与することを含み、前記動物の前記血清中の前記細胞膜における前記善玉脂肪の悪玉脂肪に対する比率が、少なくとも5%(例えば、8%)増加する、方法。
【請求項19】
前記善玉脂肪の悪玉脂肪に対する比率が、前記血清中の末梢血単核球の前記細胞膜において増加する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
減少を必要とする動物における、癌細胞の増殖を減少させるための方法であって、1日当たり少なくとも2gの請求項1〜7に記載の組成物を少なくとも3日間前記動物に投与することを含み、前記動物における前記癌細胞の前記増殖が、少なくとも15%(例えば、20%または25%)減少する、方法。
【請求項21】
前記動物は、ヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記癌細胞は、COX‐2を過剰発現する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
減少を必要とする動物における、癌細胞の増殖を減少させるための方法であって、
1日当たり少なくとも2gの請求項1〜7に記載の組成物を少なくとも3日間前記動物に投与することと、
アンドロゲン表面受容体β2(ADBR2)、アネキシンA1(ANXA1)、セロトニン受容体3(HTR3)、ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8(MAPK8)、血管細胞接着分子1(VCAM1)、α2‐マクログロブリン、β2アドレナリン受容体、酸性リボゾームリンタンパク質P0、ヒスタミン受容体H2、細胞間接着分子1、およびプロスタグランジンE受容体3からなる群から選択される、少なくとも1つの受容体または酵素の発現を少なくとも20%阻害することと、を含む、方法。
【請求項24】
少なくとも20%阻害される受容体または酵素の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12からなる群から選択され、前記受容体または酵素は、アンドロゲン表面受容体β2(ADBR2)、アネキシンA1(ANXA1)、セロトニン受容体3(HTR3)、ロイコトリエンA4加水分解酵素(LTA4H)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8(MAPK8)、血管細胞接着分子1(VCAM1)、α2‐マクログロブリン、β2アドレナリン受容体、酸性リボゾームリンタンパク質P0、ヒスタミン受容体H2、細胞間接着分子1、およびプロスタグランジンE受容体3からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多価不飽和油の酸化を阻害するための方法であって、
多価不飽和脂肪を含む油を得ることと、
前記油に、ローズマリー油の抽出物およびオレガノ油の抽出物を含む薬用植物組成物を加えることと、を含む、方法。
【請求項26】
前記ローズマリー油の抽出物は、油の0.1重量%〜0.3重量%の範囲の濃度で存在し、オレガノ油の抽出物は、油の0.1重量%〜0.3重量%の範囲の濃度で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ローズマリー油の抽出物および前記オレガノ油の抽出物は、1:1〜3:1の範囲の比率で存在する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ローズマリー油の抽出物および前記オレガノ油の抽出物を加えた後、酸化保護値が少なくとも2倍になる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ローズマリー油の抽出物は、ローズマリーSCEであり、前記オレガノ油の抽出物は、オレガノSCEである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記薬用植物組成物は、ローズマリー油の抽出物と、オレガノ油の抽出物と、好適な担体と、から本質的になる、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−528793(P2012−528793A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513328(P2012−513328)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/036712
【国際公開番号】WO2010/138902
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(506384235)ニュー チャプター,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(507410113)ボード オブ リージェンツ, ザ ユニヴァーシティー オブ テキサス システム (2)
【Fターム(参考)】