説明

脆性材料製板の折割装置

【課題】脆性材料製板を、高速で連続切断すると共に切断する作業効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】表面に切れ目が入れられた脆性材料製板1を上記切れ目に直交する方向に送り出す送出ローラ機構3を設ける。又、該送出ローラ機構3から送られた脆性材料製板1を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構4を、上記送出ローラ機構3に対して、上記脆性材料製板1の裏面側に、上記脆性材料製板1を上記送出ローラ機構3との間で上記切れ目に沿って折り割ることができる変位量を設けて設置する。脆性材料製板1の切れ目部分が、送出ローラ機構3と巻出ローラ機構4との間に搬送されると、上記切れ目部分に、上記変位量に基づくせん断力が作用するので、脆性材料製板1を折り割ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス連続シート、セラミックス板、アクリル板などの如き脆性材料製板を、その表面に入れた切れ目に沿って折り割るために用いられる脆性材料製板の折割装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脆性材料製板には、一般的に、フローティング法(フロート法)やフュージョン法などにより生産される連続したガラスシート(以下、ガラス連続シートと云う)や、セラミックス板、アクリル板などがあり、これらの脆性材製板を目的に応じたサイズに切断する装置として、現在では、脆性材料性板をその表面に設けた切れ目に沿って折り割る折割装置が提案されてきている。
【0003】
このような折割装置は、一例として、下面に刻線(切れ目)が入れられた水平方向に移動するガラス連続シートをエアシリンダの伸長動作で上方へ傾動させるベンディングコンベアと、該傾動させたガラス連続シートの上記刻線部分にエアシリンダの伸長動作で上方から押圧力を加える折り割りローラと、を備えた構成のものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3638042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載された折割装置は、ガラス連続シートの表面に設けた切れ目ごとにエアシリンダを伸縮動作させることにより、ガラス連続シートの表面に折り割りローラを押し当てて、該ガラス連続シートに押圧力を作用させるものである。
【0006】
このため、ガラス連続シートの切断を高速化させようとする場合には、エアシリンダの伸縮動作を高速化させる必要がある。しかし、エアシリンダの伸縮動作を、上記ガラス連続シートに付与する押圧力を安定させた状態に保持したまま高速化させることは、困難である。又、エアシリンダの伸縮動作によるタイムロスもある。したがって、特許文献1に記載されたような折割装置では、ガラス連続シートのような脆性材料製板を高速で連続切断することができないという問題がある。
【0007】
又、上記特許文献1に記載された折割装置は、ガラス連続シートを折り割るたびに、エアシリンダを伸縮動作させるものであるため、ガラス連続シートを折り割りしてなるガラス枚葉シートを1枚生産するのに要するエネルギー消費量が高く、エアシリンダのメンテナンスの必要性も頻繁に生じる。したがって、脆性材料製板を切断する作業効率が悪いという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、ガラス連続シート、セラミックス板、アクリル板の如き脆性材料製板を、高速で連続切断することができると共に、脆性材料製板を切断する作業効率を向上させることができる脆性材料製板の折割装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、表面に切れ目が入れられた脆性材料製板を該切れ目に直交する脆性材料製板搬送方向に送り出す送出ローラ機構と、該送出ローラ機構に対して上記脆性材料製板の裏面側に変位量を設けて設置されて上記送出ローラ機構から送り出された脆性材料製板を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構と、を備え、上記変位量は、上記脆性材料製板を上記送出ローラ機構と上記巻出ローラ機構との間で上記脆性材料製板の切れ目部分を裏面側に折り曲げることにより上記切れ目に沿って折り割ることができる変位量に設定するようにした構成とする。
【0010】
又、請求項2に対応して、上記構成において、送出ローラ機構又は巻出ローラ機構を巻出ローラ機構又は送出ローラ機構に対して移動させる変位機構と、設定した変位量に基づいて上記変位機構を駆動させる機能を有する制御装置と、を設けるようにした構成とする。
【0011】
更に、請求項3に対応して、上記各構成における送出ローラ機構を、脆性材料製板の表面と裏面に外周面を接触させて設けた2本の送出ローラを備えてなる構成とすると共に、巻出ローラ機構を、脆性材料製板の表面と裏面に外周面を接触させて設けた2本の巻出ローラを備えてなる構成とし、且つ上記送出ローラの周速よりも、上記巻出ローラの周速を速くさせるようにした構成とする。
【0012】
更に又、請求項4に対応して、上記請求項3において、送出ローラ機構と巻出ローラ機構との間に脆性材料製板に入れた切れ目が移動したときに、送出ローラの周速よりも巻出ローラの周速を速くさせるようにした構成とする。
【0013】
又、請求項5に対応して、上記請求項1、請求項2における送出ローラ機構を、脆性材料製板の表面に外周面を接触させて設けた送出ローラと、脆性材料製板の裏面に外周面を接触させて設けた、上記送出ローラよりも大径の大径ローラと、を備えてなる構成とすると共に、巻出ローラ機構を、上記大径ローラと、脆性材料製板の表面に外周面を接触させて設けた、上記大径ローラよりも小径の巻出ローラと、を備えてなる構成とし、且つ上記巻出ローラ機構の下流側に設けた、上記脆性材料製板を搬送する駆動ローラの周速を、上記巻出ローラ機構の各ローラの周速よりも速くさせるようにした構成とする。
【0014】
又、請求項6に対応して、上記請求項5において、送出ローラ機構と巻出ローラ機構との間に脆性材料製板に入れた切れ目が移動したときに、上記巻出ローラ機構の各ローラの周速よりも駆動ローラの周速を速くさせるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の脆性材料製板の折割装置によれば、表面に切れ目が入れられた脆性材料製板を該切れ目に直交する脆性材料製板搬送方向に送り出す送出ローラ機構と、該送出ローラ機構に対して上記脆性材料製板の裏面側に変位量を設けて設置されて上記送出ローラ機構から送り出された脆性材料製板を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構と、を備え、上記変位量は、上記脆性材料製板を上記送出ローラ機構と上記巻出ローラ機構との間で上記脆性材料製板の切れ目部分を裏面側に折り曲げることにより上記切れ目に沿って折り割ることができる変位量に設定するようにした構成としてあるので、上記脆性材料製板の切れ目部分に、上記設定した変位量に基づく曲げ力およびせん断力(折り割り力)により応力集中を生じさせることができる。よって、上記脆性材料製板を、その表面に入れた切れ目に沿って高速で連続切断することができる。又、脆性材料製板の切断に際して、該脆性材料製板の切れ目部分に曲げ力およびせん断力を作用させるためにシリンダなどを伸縮作動させる必要はないので、脆性材料製板を切断するのに要するエネルギー消費量を低減することができる。又、これに伴い、折割装置自体のメンテナンス量を低減させることができる。よって、脆性材料製板を切断する作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の脆性材料製板の折割装置の実施の一形態を示すもので、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A方向矢視図である。
【図2】送出ローラ機構を示すもので、図1(a)のB−B方向矢視図である。
【図3】巻出ローラ機構及び変位機構を示すもので、図1(a)のC−C方向矢視図である。
【図4】図1の脆性材料製板の折割装置に備えた制御装置の制御構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の脆性材料製板の折割装置の実施の他の形態を示すもので、(a)は概略平面図、(b)は(a)のD−D方向矢視図である。
【図6】送出ローラ機構を示すもので、図5(a)のE−E方向矢視図である。
【図7】巻出ローラ機構及び変位機構を示すもので、(a)は図5(b)のF−F方向矢視図、(b)は(a)のG−G方向矢視図である。である。
【図8】駆動ローラ機構を示すもので、図5(a)のH−H方向矢視図である。
【図9】図5の脆性材料製板の折割装置に備えた制御装置の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)(b)及至図4は本発明の実施の一形態を示すもので、本発明の脆性材料製板の折割装置は、脆性材料製板としてのガラス連続シート1の表面にそのシート搬送方向Xに直交する方向(シート幅方向)の切れ目(傷)を入れるスクライバ2と、該スクライバ2により切れ目が入れられたガラス連続シート1を上記シート搬送方向Xに沿って送り出す送出ローラ機構3と、該送出ローラ機構3のシート搬送方向X下流側であって該送出ローラ機構3の位置よりも上記ガラス連続シート1の裏面側に変位量を設けて設置されて上記送出ローラ機構3から送り出されたガラス連続シート1を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構4と、該巻出ローラ機構4を上記シート搬送方向Xに直交するガラス連続シート1の表裏面方向(上下方向)に移動させる変位機構5と、を備え、更に、予め記憶させておいた、ガラス連続シート1を上記送出ローラ機構3と上記巻出ローラ機構4との間で切れ目が開くような方向に上記ガラス連続シート1を折り曲げることにより上記切れ目に沿って割ることができる上記変位量に、上記巻出ローラ機構4を移動させるように、上記変位機構5の駆動を制御する変位機構制御部6bを有する制御装置6を備えた構成とする。つまり、送出ローラ機構3を通過するときのガラス連続シート1の高さ(即ち、送出ローラ機構3のニップ部の位置)よりも、巻出ローラ機構4を通過するときのガラス連続シート1の高さ(即ち、巻出ローラ機構4のニップ部の位置)が低くなるように、送出ローラ機構3及び巻出ローラ機構4が配置されるようにする。
【0019】
詳述すると、上記スクライバ2は、図1(a)(b)に示す如く、水平方向に搬送されるガラス連続シート1の表面(上面)にカッター又はレーザーの如き切断機7aにより所要深さの切れ目を入れるスクライバ本体7と、該スクライバ本体7を取り付けたリニアガイドブロック8と、上記ガラス連続シート1のシート搬送方向Xに対して水平方向の所要の傾斜角で配置されてシート搬送方向X上流側の一端部とシート搬送方向X下流側の他端部との間で上記リニアガイドブロック8を移動可能に支持するリニアガイドレール9と、該リニアガイドレール9の両端部を上記ガラス連続シート1の幅方向(シート搬送方向Xに直交する水平方向)の両側で支持する図示してないリニアガイドレール支持台と、上記リニアガイドブロック8を上記リニアガイドレール9に沿って移動させる図示してない駆動装置と、を備えた構成としてある。上記スクライバ2に備えられている図示してない駆動装置は、後述する制御装置6のスクライバ制御部6dに制御されることにより、上記リニアガイドレール9におけるシート搬送方向Xの上流側端部から下流側端部にかけて上記リニアガイドブロック8を移動させるときの該リニアガイドブロック8の移動速度におけるシート搬送方向Xの成分が、ガラス連続シート1の搬送速度に一致するようにしてある。これにより、上記スクライバ2は、上記ガラス連続シート1の表面に、そのシート搬送方向Xに直交する水平方向の切れ目を入れるようにしてある。又、上記スクライバ2は、ガラス連続シート1の表面に切れ目を入れ終えると、スクライブ終了信号を後述する制御装置6の巻出ローラ回転駆動装置制御部6cに送るようにしてある。
【0020】
上記送出ローラ機構3は、図1(a)(b)、図2に示す如く、上下2段に平行に配置して上記ガラス連続シート1の表面と裏面にその幅方向の全長に亘り外周面を接触させるようにした2本の送出ローラ10と、該各送出ローラ10の両端部の回転軸10a,10bがそれぞれ図示してない軸受を介して回転自在に支持される送出ローラ支持台12a,12bと、たとえば、上記送出ローラ支持台12aに取り付けられると共に上記各送出ローラ10の一端側の回転軸10aに図示してないカップリングを介して連結させて各送出ローラ10をそれぞれ回転させるサーボモータの如き送出ローラ回転駆動装置11と、上記2本の送出ローラ10の少なくとも一方を上記ガラス連続シート1の表面、裏面に密着させる方向に付勢する図示してない付勢手段と、を備えてなる構成としてある。上記各送出ローラ支持台12a,12bは、上記ガラス連続シート1の幅方向の両側に立設させるようにしてある。これにより、上記送出ローラ機構3は、上記スクライバ2により表面に切れ目が入れられたガラス連続シート1を、シート搬送方向X下流側に送り出せるようにしてある。
【0021】
上記巻出ローラ機構4は、図1(a)(b)、図3に示す如く、上下2段に平行に配置して上記送出ローラ機構3から送り出されたガラス連続シート1の表面と裏面にその幅方向の全長に亘り外周面を接触させるようにした2本の巻出ローラ13と、該各巻出ローラ13の両端部の回転軸13a,13bが図示してない軸受を介して回転自在にそれぞれ支持される巻出ローラ搬送テーブル15a,15bと、たとえば、上記巻出ローラ搬送テーブル15aに取り付けられると共に上記該各巻出ローラ13の一端側の回転軸13aに図示してないカップリングを介して連結させて各巻出ローラ13をそれぞれ回転させるサーボモータの如き巻出ローラ回転駆動装置14と、上記2本の巻出ローラ13の少なくとも一方を上記ガラス連続シート1の表面、裏面に密着させる方向に付勢する図示してない付勢手段と、を備えた構成としてある。これにより、上記巻出ローラ機構4は、上記送出ローラ機構3から送り出されたガラス連続シート1を、シート搬送方向X下流側に送り出せるようにしてある。又、上記巻出ローラ機構4は、変位機構5に支持させるようにしてある。
【0022】
上記変位機構5は、図1(a)(b)、図3に示す如く、上記各巻出ローラ13の一端側の巻出ローラ搬送テーブル15aにおける上記巻出ローラ13の位置から見た場合の外側面の上下両端部に設けられたアーム部15cと、該各アーム部15cにそれぞれ取り付けられたリニアガイドブロック16と、上記各巻出ローラ13の他端側の巻出ローラ搬送テーブル15bに取り付けられたリニアガイドブロック16と、該リニアガイドブロック16が上記シート搬送方向Xに直交する上下方向に移動可能に取り付けられたリニアガイドレール17と、上記巻出ローラ搬送テーブル15a,15bを上記リニアガイドレール17に沿って移動させるリニアモータ、シリンダ等の図示してない駆動装置と、上記各リニアガイドレール17を上下方向にそれぞれ固定してガラス連続シート1の幅方向の両側に立設させた巻出ローラ支持台18a,18bと、を備えた構成としてある。これにより、上記変位機構5は、上記巻出ローラ機構4を上記シート搬送方向Xに直交する上下方向に移動させることができるようにしてある。
【0023】
又、上記巻出ローラ支持台18a,18bには、たとえば、上記変位機構5におけるリニアガイドレール17と平行に、リニアスケールの如き図示してない位置検出器を設けるようにしてある。これにより、上記巻出ローラ機構4の高さ位置は、上記リニアガイドレール17に沿う方向の任意の位置を基準とした絶対位置として検出されることができ、上記送出ローラ機構3に対する上記巻出ローラ機構4の上記ガラス連続シート1の裏面側への変位量を容易に設定できるようにしてある。
【0024】
次に、上記制御装置6は、図4に示す如く、上記送出ローラ機構3と上記巻出ローラ機構4との間の位置で切れ目が開くような方向に上記ガラス連続シート1を折り曲げることにより上記ガラス連続シート1をその表面の切れ目に沿って折り割ることができる、上記送出ローラ機構3に対する上記巻出ローラ機構4の配置ずれ、すなわち、上記送出ローラ機構3に対する上記巻出ローラ機構4の上記ガラス連続シート1の裏面側への変位量を、記憶する変位量記憶部6aと、後述する巻出ローラ回転駆動装置制御部6c、回転駆動装置制御部6eによる制御を開始する前(ガラス連続シート1の折り割り開始前)に上記変位量記憶部6aから読み込んだ変位量に基づいて上記変位機構5を駆動させて上記巻出ローラ機構4を予め上下方向に移動させておく制御を行う変位機構制御部6bと、を備えると共に、上記スクライバ2から出力されたスクライブ終了信号に基づいて上記各巻出ローラ13の周速を上記各送出ローラ10の周速よりも早くさせるように上記巻出ローラ回転駆動装置14の制御を行う巻出ローラ回転駆動装置制御部6cを備え、更に、上記スクライバ2におけるリニアガイドブロック8の移動速度の上記シート搬送方向Xの成分とガラス連続シート1の搬送速度とを一致させた状態でガラス連続シート1の表面に切れ目を入れる制御を上記スクライバ2に対して行うスクライバ制御部6dと、上記各送出ローラ10が同期して所要の周速で回転するように上記各送出ローラ回転駆動装置11を制御すると共に上記各巻出ローラ13が同期して所要の周速で回転するように上記各巻出ローラ回転駆動装置14を制御する回転駆動装置制御部6eと、を備えた構成としてある。
【0025】
上記変位量記憶部6aには、ガラス連続シート1の通常部分(切れ目のない部分)は折り割り(切断)できないが、ガラス連続シート1における切れ目部分は折り割りできる変位量、すなわち、上記送出ローラ機構3に対する上記巻出ローラ機構4の上記ガラス連続シート1の裏面側への変位量を、たとえば、ガラス連続シート1の厚さとガラス連続シート1の切れ目部分の厚さに基づいて片持ち梁のたわみを求める式などにより求めたり、実験などにより求めたりして、ガラス連続シート1の厚さと該ガラス連続シート1の切れ目部分の厚さのデータ毎に、予め記憶させるようにしてある。
【0026】
上記変位機構制御部6bは、これから折り割り(切断)するガラス連続シート1の厚さと、スクライバ2に設定した切れ目の深さから求まるガラス連続シート1の切れ目部分の厚さが入力されると、該入力値に基づいて、上記変位量記憶部6aから変位量を読み込み、該読み込んだ変位量に基づいて、上記変位機構5における図示してない駆動装置を駆動させて、上記巻出ローラ機構4を、予め、上記送出ローラ機構3に対して、ガラス連続シート1を上記送出ローラ機構3と上記巻出ローラ機構4との間の位置で切れ目が開くような方向に上記ガラス連続シート1を折り曲げることにより上記切れ目に沿って折り割りすることができる変位量となるようにガラス連続シート1の裏面側の位置に移動させるようにしてある。これにより、上記ガラス連続シート1の折り割りを開始して、上記ガラス連続シート1の切れ目部分が、上記送出ローラ機構3と上記巻出ローラ機構4の間の位置に搬送されたときに、該ガラス連続シート1の切れ目部分には、上記変位量(撓み量)に基づく曲げ力およびせん断力(折り割り力)により応力集中が生じて、上記ガラス連続シート1を、その表面に入れた上記切れ目に沿って折り割ることができるようにしてある。
【0027】
上記巻出ローラ回転駆動装置制御部6cは、たとえば、上記スクライバ2がガラス連続シート1の表面に切れ目を入れ終えた位置から上記送出ローラ機構3における各送出ローラ10がガラス連続シート1に接触する位置(送出ローラ10の軸心位置)までの水平方向距離と、各送出ローラ10の周速、すなわち、ガラス連続シート1の搬送速度から、ガラス連続シート1の切れ目部分が送出ローラ機構3の位置に到達するまでの切れ目到達時間を求めると共に、各送出ローラ10がガラス連続シート1に接触する位置から上記巻出ローラ機構4における各巻出ローラ13がガラス連続シート1に接触する位置(巻出ローラ13の軸心位置)までの水平方向距離と、各送出ローラ10の周速から、ガラス連続シート1の切れ目部分が巻出ローラ機構4の位置を通過するまでの切れ目通過時間を求めるようにしてある。又、切れ目到達時間と切れ目通過時間とを求めると、上記スクライブ終了信号を受けて切れ目到達時間が経過してから、切れ目通過時間が経過するまでの間、上記巻出ローラ機構4における各巻出ローラ13の周速を、上記送出ローラ機構3における各送出ローラ13の周速よりも速くなるように、上記巻出ローラ回転駆動装置14を制御するようにしてある。これにより、上記変位量に基づく上下方向(鉛直方向)の曲げ力およびせん断力(折り割り力)に加えて、上記送出ローラ10の周速と上記巻出ローラ13の周速との差に基づく水平方向の張力(引き裂き力)が、ガラス連続シート1の切れ目部分に作用するようにして、ガラス連続シート1を確実に折り割ることができるようにしてある。なお、上記各巻出ローラ13の周速は、上記張力がガラス連続シート1の通常部分を引き裂ける力未満になるように制御するようにしてある。
【0028】
このように、上記構成の脆性材料製板の折割装置によれば、表面に切れ目が入れられたガラス連続シート1をその切れ目に直交する方向に送り出す送出ローラ機構3に対して、該送出ローラ機構3から送り出されたガラス連続シート1を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構4は、上記ガラス連続シート1を上記送出ローラ機構3との間で上記ガラス連続シート1の切れ目部分を裏面側に折り曲げることにより上記切れ目に沿って割ることができる変位量を上記ガラス連続シート1の裏面側に設定して設置されるようにしてあるので、上記ガラス連続シート1の切れ目部分が、上記送出ローラ機構3と上記巻出ローラ機構4との間の位置に搬送されたときに、該切れ目部分に、上記設定した変位量(撓み量)に基づく曲げ力およびせん断力(折り割り力)により応力集中を生じさせることができる。よって、上記構成の脆性材料製板の折割装置では、上記ガラス連続シート1を、その表面に入れた切れ目に沿って高速で連続切断することができる。
【0029】
又、上記構成の脆性材料製板の折割装置では、ガラス連続シート1の切断に際して、該ガラス連続シート1の切れ目部分に曲げ力およびせん断力を作用させるためにシリンダなどを伸縮作動させる必要はないので、ガラス連続シート1を折り割してなるガラス枚葉シートを生産するのに要するエネルギー消費量を低減することができる。又、これに伴い、折割装置自体のメンテナンス量を低減させることができる。よって、上記構成の脆性材料製板の折割装置では、ガラス連続シート1を切断する作業効率を向上させることができる。
【0030】
次に、図5(a)(b)及至図9は、本発明の脆性材料製板の折割装置の実施の他の形態を示すもので、図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態において、送出ローラ機構3と巻出ローラ機構4とを別々なものとして、送出ローラ機構3に対して巻出ローラ機構4をガラス連続シート1の裏面側へ変位させて設置するようにした構成に代えて、送出ローラ機構19を、送出ローラ25と該送出ローラ25よりも大径の大径ローラ26とを備えてなる構成とすると共に、巻出ローラ機構20を、上記大径ローラ26と該大径ローラ26よりも小径の巻出ローラ30とを備えてなる構成とする。又、変位機構21は、上記巻出ローラ機構20を上記大径ローラ26の軸心を中心に回転移動させることができるようにした構成とする。更に、上記巻出ローラ機構20のシート搬送方向X下流側には、該巻出ローラ機構20から送り出されたガラス連続シート1を図示してないコンベア、搬送ロボットの如き搬送装置に送り出す駆動ローラ機構22と、該駆動ローラ機構22を上記シート搬送方向Xに直交する上下方向に移動させる駆動ローラ機構変位装置23と、を備え、更に、上記駆動ローラ機構22における駆動ローラ36の周速を制御する駆動ローラ回転駆動装置制御部24dと、上記変位機構21に同期して上記設定した変位量に上記駆動ローラ機構22が移動するように上記駆動ローラ機構変位装置23の駆動を制御する駆動ローラ機構変位装置制御部24cを有する制御装置24を備えるようにした構成とする。
【0031】
詳述すると、上記送出ローラ機構19は、図5(a)(b)、図6に示す如く、上記スクライバ2により切れ目が入れられたガラス連続シート1の表面にその幅方向(シート搬送方向Xに直交する水平方向)の全長に亘り外周面を接触させるようにした送出ローラ25と、該送出ローラ25よりも大径としてあって上記ガラス連続シート1の裏面にその幅方向の全長に亘り外周面を接触させるように設置した大径ローラ26と、上記送出ローラ25の両端部の回転軸25a,25bと上記大径ローラ26の両端部の回転軸26a,26bが図示してない軸受を介して回転自在に支持されるローラ支持台29a,29bと、上記ローラ支持台29aに取り付けられると共に上記送出ローラ25の一端側の回転軸25aに図示してないカップリングを介して連結させて送出ローラ25を回転させるサーボモータの如き送出ローラ回転駆動装置27と、上記ローラ支持台29aに取り付けられると共に上記大径ローラ26の一端側の回転軸26aに図示してないカップリングを介して連結させて大径ローラ26を回転させるサーボモータの如き大径ローラ回転駆動装置28と、上記送出ローラ25を上記ガラス連続シート1の表面に密着させる方向に付勢する図示してない付勢手段と、を備えてなる構成としてある。上記一方のローラ支持台29aは、上下方向に延びるローラ支持部と、該ローラ支持部に対向して所要の間隔を置いて設けられるアーム支持部と、該アーム支持部の下端と上記ローラ支持部の下端とを接続するベース部と、を備えてなる構成としてある。該ローラ支持台29aのローラ支持部には、上記送出ローラ25、大径ローラ26の一端側の回転軸25a,26aを回転自在に支持させるようにしてある。又、上記送出ローラ回転駆動装置27、大径ローラ回転駆動装置28は、上記ローラ支持台29aのローラ支持部とアーム支持部との間の空間に配置して、上記ローラ支持部に支持させるようにしてある。これにより、上記送出ローラ機構19は、上記スクライバ2により表面に切れ目が入れられたガラス連続シート1を、シート搬送方向X下流側に送り出せるようにしてある。
【0032】
上記巻出ローラ機構20は、図5(a)(b)、図7(a)(b)に示す如く、上記大径ローラ26と、該大径ローラ26よりも小径としてあって上記送出ローラ機構19から送り出されたガラス連続シート1の表面にその幅方向の全長に亘り外周面を接触させるようにした巻出ローラ30と、上記大径ローラ回転駆動装置28と、上記巻出ローラ30の両端部の回転軸30a,30bが図示してない軸受を介して回転自在に支持される支持ブロック31a,31bと、上記一方の支持ブロック31aに取り付けられると共に上記巻出ローラ30の一端側の回転軸30aに図示してないカップリングを介して連結させて巻出ローラ30を回転させるサーボモータの如き巻出ローラ回転駆動装置32と、上記巻出ローラ30を上記ガラス連続シート1の表面に密着させる方向に付勢する図示してない付勢手段と、を備えてなる構成としてある。上記巻出ローラ30の一端側の支持ブロック31aは、巻出ローラ支持アーム33aの先端部に支持させるようにしてあると共に、上記巻出ローラ30の他端側の支持ブロック31bは、別の巻出ローラ支持アーム33bの先端部に支持させるようにしてある。これにより、上記巻出ローラ機構20は、上記送出ローラ機構19から送り出されたガラス連続シート1を、シート搬送方向X下流側に送り出せるようにしてある。又、上記各巻出ローラ支持アーム33a,33bは、その基端部の軸心を、上記大径ローラ26の軸心線上に配置して、該巻出ローラ支持アーム33a,33bの基端部を、上記ローラ支持台29aのアーム支持部における上記大径ローラ26の位置から見た場合の外側面、上記別のローラ支持台29bにおける上記大径ローラ26の位置から見た場合の外側面に回転自在に支持させるようにしてある。
【0033】
上記変位機構21は、図5(a)(b)、図7(a)(b)に示す如く、上記巻出ローラ支持アーム33a,33bと、該巻出ローラ支持アーム33a,33bの巻出ローラ取付側端部に一端部をピンを介して回動可能に連結すると共に他端部を固定面(床面)に、たとえば、ピンを介して回動可能に連結したシリンダの如きアクチュエータ34と、を備えた構成としてある。これにより、上記変位機構21では、アクチュエータ34を伸縮作動させることで、上記巻出ローラ30を、大径ローラ26の軸心を中心に該大径ローラ26の外周面に沿って移動させることができるようにしてあると共に、上記巻出ローラ機構20を、上記大径ローラ26の軸心を中心に回転変位させることができるようにしてある。
【0034】
又、上記巻出ローラ機構20のシート搬送方向X下流側には、図5(a)(b)に示す如く、該巻出ローラ機構20から送り出されたガラス連続シート1のシート搬送方向Xを水平方向に修正するためのガイド装置34aと、該ガイド装置34aによりシート搬送方向Xを修正されたガラス連続シート1をガイドするローラ35と、該ローラ35にガイドされたガラス連続シート1を下流側に設けられたコンベア、搬送ロボットの如き図示してない搬送装置に送り出す駆動ローラ機構22を設けるようにしてある。
【0035】
該駆動ローラ機構22は、図5(a)(b)、図8に示す如く、上下2段に平行に配置してガラス連続シート1の表面と裏面にその幅方向の全長に亘り外周面を接触させるようにした2本の駆動ローラ36と、該各駆動ローラ36の両端部の回転軸36a,36bが図示してない軸受を介して回転自在にそれぞれ支持される駆動ローラ搬送テーブル38a,38bと、たとえば、上記ローラ搬送テーブル38aに取り付けられると共に上記各駆動ローラ36の一端側の回転軸36aに図示してないカップリングを介して連結させて各駆動ローラ36をそれぞれ回転させるサーボモータの如き駆動ローラ回転駆動装置37と、上記駆動ローラ36の少なくとも一方を上記ガラス連続シート1の表面、裏面に密着させる方向に付勢する図示してない付勢手段と、を備えた構成としてある。これにより、駆動ローラ機構22は、上記巻出ローラ機構20から送り出されたガラス連続シート1を、シート搬送方向X下流側に設置した図示してない搬送装置に送り出せるようにしてある。又、上記駆動ローラ機構22は、駆動ローラ機構変位装置23に支持させるようにしてある。
【0036】
上記駆動ローラ機構変位装置23は、図5(a)(b)、図8に示す如く、上記各駆動ローラ36の一端側の駆動ローラ搬送テーブル38aにおける上記駆動ローラ36の位置から見た場合の外側面の上下両端部に設けられたアーム部38cと、該各アーム部38cにそれぞれ取り付けられたリニアガイドブロック39と、上記各駆動ローラ36の他端側の駆動ローラ搬送テーブル38bに取り付けられたリニアガイドブロック39と、該リニアガイドブロック39が上記シート搬送方向Xに直交する上下方向に移動可能に取り付けられたリニアガイドレール40と、上記駆動ローラ搬送テーブル38a,38bを上記リニアガイドレール40に沿って移動させるリニアモータ、シリンダ等の図示してない駆動装置と、上記各リニアガイドレール40を上下方向にそれぞれ固定してガラス連続シート1の幅方向の両側に立設させた駆動ローラ支持台41a,41bと、を備えた構成としてある。又、上記ガイド装置34aと上記ローラ35は、上記駆動ローラ機構22の移動と同期して移動できるようにしてある。
【0037】
なお、図中42は上記スクライバ2と送出ローラ機構19との間に設置した上記駆動ローラ機構22と同様の構成のローラ機構であり、42aはローラ、42bはローラ42aを回転駆動させるためのローラ回転駆動装置である。
【0038】
次に、上記制御装置24について説明する。制御装置24は、図9に示す如く、上記送出ローラ機構19と上記巻出ローラ機構20との間の位置で切れ目が開くような方向に上記ガラス連続シート1を折り曲げることにより上記ガラス連続シート1をその表面の切れ目に沿って折り割ることができる変位量、すなわち、上記送出ローラ機構19に対する上記巻出ローラ機構20の上記ガラス連続シート1の裏面側への変位量を、記憶する変位量記憶部24aと、後述する駆動ローラ回転駆動装置制御部24d、回転駆動装置制御部24fによる制御を開始する前(ガラス連続シート1の折り割り開始前)に上記変位量記憶部24aから読み込んだ変位量に基づいて上記変位機構21を駆動させて上記巻出ローラ機構20を予め移動させておく制御を行う変位機構制御部24bと、該変位機構制御部24bの制御に同期して上記変位量記憶部24aから読み込んだ変位量に基づいて上記駆動ローラ機構変位装置23を駆動させて上記駆動ローラ機構22を予め上記変位量に移動させておく制御を行う駆動ローラ機構変位装置制御部24cと、を備えると共に、上記スクライバ2から出力されたスクライブ終了信号に基づいて上記各駆動ローラ36の周速を上記送出ローラ25、大径ローラ26、巻出ローラ30の周速よりも早くさせるように上記駆動ローラ回転駆動装置37の制御を行う駆動ローラ回転駆動装置制御部24dを備え、更に、上記スクライバ2におけるリニアガイドブロック8の移動速度の上記シート搬送方向Xの成分とガラス連続シート1の搬送速度とを一致させた状態でガラス連続シート1の表面に切れ目を入れる制御を上記スクライバ2に対して行うスクライバ制御部24eと、上記送出ローラ25と大径ローラ26と巻出ローラ30とローラ機構42のローラ42aが同期して所要の周速で回転するように上記各ローラ25,26,30,42aのローラ回転駆動装置27,28,32,42bを制御すると共に上記各駆動ローラ36が同期して所要の周速で回転するように上記駆動ローラ回転駆動装置37を制御するローラ回転駆動装置制御部24fと、を備えた構成としてある。
【0039】
上記変位量記憶部24aには、ガラス連続シート1の通常部分(切れ目のない部分)は折り割り(切断)できないが、ガラス連続シート1における切れ目部分は折り割りできる変位量、すなわち、上記送出ローラ機構19に対する上記巻出ローラ機構20の上記ガラス連続シート1の裏面側への変位量を、たとえば、ガラス連続シート1の厚さとガラス連続シート1の切れ目部分の厚さに基づいて片持ち梁のたわみを求める式などにより求めたり、実験などにより求めたりして、ガラス連続シート1の厚さと該ガラス連続シート1の切れ目部分の厚さのデータ毎に、予め記憶させるようにしてある。
【0040】
上記変位機構制御部24bは、これから折り割り(切断)するガラス連続シート1の厚さと、スクライバ2に設定した切れ目の深さから求まるガラス連続シート1の切れ目部分の厚さが入力されると、該入力値に基づいて、上記変位量記憶部24aから変位量を読み込み、該読み込んだ変位量に基づいて、上記変位機構21におけるアクチュエータ34を駆動させて、上記巻出ローラ機構20を、予め、上記送出ローラ機構19に対して、ガラス連続シート1を上記送出ローラ機構19と上記巻出ローラ機構20との間の位置で切れ目が開くような方向に上記ガラス連続シート1を折り曲げることにより上記切れ目に沿って割ることができる変位量となるガラス連続シート1の裏面側の位置に移動させるようにしてある。これにより、上記ガラス連続シート1の折り割りを開始して、上記ガラス連続シート1の切れ目部分が、上記送出ローラ機構19と上記巻出ローラ機構20の間の位置に搬送されたときに、該ガラス連続シート1の切れ目部分には、上記変位量(撓み量)に基づく曲げ力およびせん断力(折り割り力)により応力集中が生じるようにして、上記ガラス連続シート1を、その表面に入れた上記切れ目に沿って折り割ることができるようにしてある。
【0041】
上記駆動ローラ機構変位装置制御部24cは、上記変位機構制御部24bと同期して、上記変位量記憶部24aから変位量を読み込み、該読み込んだ変位量に基づいて、上記駆動ローラ機構変位装置23における図示してない駆動装置を駆動させて、上記駆動ローラ機構22を、上記巻出ローラ機構20の上記送出ローラ機構19に対する上下方向の変位量に移動させるようにしてある。これにより、上記巻出ローラ機構20から送り出されるガラス連続シート1を、下流側の図示してない搬送装置に送り出せるようにしてある。この際、図示してない制御部により、上記ガイド装置34a及びローラ35を、上記駆動ローラ機構22の移動に同期して、上記巻出ローラ機構20の上記送出ローラ機構19に対する上下方向の変位量に移動させるようにしてある。
【0042】
上記駆動ローラ回転駆動装置制御部24dは、たとえば、上記スクライバ2がガラス連続シート1の表面に切れ目を入れ終えた位置から上記送出ローラ機構19における送出ローラ25がガラス連続シート1の表面に接触する位置(送出ローラ25の軸心位置)までの水平方向距離と、送出ローラ25、大径ローラ26の周速、すなわち、ガラス連続シート1の搬送速度から、ガラス連続シート1の切れ目部分が送出ローラ機構19の位置に到達するまでの切れ目到達時間を求めると共に、送出ローラ25がガラス連続シート1の表面に接触する位置から上記巻出ローラ30がガラス連続シート1の表面に接触する位置(巻出ローラ30の軸心位置)までの水平方向距離と、ガラス連続シート1の搬送速度から、ガラス連続シート1の切れ目部分が巻出ローラ機構20の位置を通過するまでの切れ目通過時間を求めるようにしてある。又、切れ目到達時間と切れ目通過時間とを求めると、上記スクライブ終了信号を受けて切れ目到達時間が経過してから、切れ目通過時間が経過するまでの間、上記駆動ローラ機構22における各駆動ローラ36の周速は、上記送出ローラ25、大径ローラ26、巻出ローラ30の周速よりも速くなるように、上記駆動ローラ回転駆動装置37を制御するようにしてある。これにより、上記変位量に基づく上下方向(鉛直方向)の曲げ力およびせん断力(折り割り力)に加えて、上記送出ローラ25、大径ローラ26、巻出ローラ30の周速と上記駆動ローラ36の周速との差に基づく水平方向の張力(引き裂き力)が、ガラス連続シート1の切れ目部分に作用させられて、ガラス連続シート1を確実に折り割ることができるようにしてある。なお、上記各駆動ローラ36の周速は、上記張力がガラス連続シート1の通常部分を引き裂ける力未満になるように制御するようにしてある。
【0043】
その他の構成は、図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態と同様であり、同一のものには同一符号が付してある。
【0044】
このように、図5(a)(b)及至図9に示した実施の形態の脆性材料製板の折割装置によれば、表面に切れ目が入れられたガラス連続シート1をその切れ目に直交する方向に送り出す送出ローラ機構19に対して、該送出ローラ機構19から送り出されたガラス連続シート1を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構20は、上記ガラス連続シート1を上記送出ローラ機構19との間で上記ガラス連続シート1の切れ目部分を裏面側に折り曲げることにより上記切れ目に沿って割ることができる変位量を上記ガラス連続シート1の裏面側に設定して予め設置されるようにしてあるので、図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態と同様に、上記ガラス連続シート1の切れ目部分が、上記送出ローラ機構19と上記巻出ローラ機構20との間の位置に搬送されたときに、該切れ目部分に、上記設定した変位量(撓み量)に基づく曲げ力およびせん断力(折り割り力)により応力集中を生じさせることができる。よって、上記構成の脆性材料製板の折割装置では、図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態と同様に、上記ガラス連続シート1を、その表面に入れた切れ目に沿って高速で連続切断することができる。又、図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態の構成に比べて少ないローラ本数でガラス連続シート1を折り割りすることができる。よって、ガラス連続シート1を折り割りする際にローラを回転させる駆動装置の数を減らせるので、ガラス連続シート1を折り割してなるガラス枚葉シートを生産するのに要するエネルギー消費量を低減することができる。
【0045】
なお、上記各実施の形態では、ガラス連続シート1を折り割りする場合について説明したが、折り割りする対象はこれに限られるものではなく、他の脆性材料製板、たとえば、セラミックス板、アクリル板などであってもよい。
【0046】
又、上記各実施の形態では、変位機構5,21により巻出ローラ機構4,20を送出ローラ機構3,19に対して移動させて、変位量を設ける場合について説明したが、これに限られるものではなく、変位機構5,21を送出ローラ機構3,19に設けて、該送出ローラ機構3,19を巻出ローラ機構4,20に対して移動させて、変位量を設けるようにしてもよい。
【0047】
更に、上記図1(a)(b)及至図4に示した実施の形態では、制御装置6の巻出ローラ回転駆動装置制御部6cにより、ガラス連続シート1の切れ目部分が、送出ローラ機構3と巻出ローラ機構4の間の位置に移動したときに、巻出ローラ機構4の各巻出ローラ13の周速を、送出ローラ機構3の各送出ローラ10の周速よりも速くする場合について説明したが、上記巻出ローラ回転駆動装置制御部6cにより、ガラス連続シート1の搬送中に、常に、上記各巻出ローラ13の周速を、上記各送出ローラ10の周速よりも速くするようにしてもよい。
【0048】
更に又、上記図5(a)(b)及至図9に示した実施の形態では、制御装置24の駆動ローラ回転駆動装置制御部24dにより、ガラス連続シート1の切れ目部分が、送出ローラ機構19と巻出ローラ機構20の間の位置に移動したときに、駆動ローラ機構22の各駆動ローラ36の周速を、上記送出ローラ機構19、巻出ローラ機構20における、送出ローラ25、大径ローラ26、巻出ローラ30の周速よりも速くする場合について説明したが、上記駆動ローラ回転駆動装置制御部24dにより、ガラス連続シート1の搬送中に、常に、上記各駆動ローラ36の周速を、上記送出ローラ25、大径ローラ26、巻出ローラ30の周速よりも速くするようにしてもよい。
【0049】
又、上記図5(a)(b)及至図9に示した実施の形態では、駆動ローラ機構22の各駆動ローラ36の外周面、及び、ローラ機構42の各ローラ42aの外周面を、ガラス連続シート1の幅方向の全長に亘り接触させる場合について説明したが、これに限られるものではなく、たとえば、駆動ローラ機構22の各駆動ローラ36、及び、ローラ機構42の各ローラ42aを、それぞれ幅方向に2分割して長さを短くすると共に該分割した各ローラに回転駆動装置を取り付けて、ガラス連続シート1の幅方向両端部だけに、ローラの外周面を接触させるようにしてもよい。
【0050】
更に、上記各実施の形態における変位機構5,21は、巻出ローラ機構4を移動させることができれば如何なる構成のものであってもよく、上記図5(a)(b)及至図9に示した実施の形態における駆動ローラ機構変位装置23も、駆動ローラ機構22を移動させることができれば如何なる構成のものであってもよい。
【0051】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 ガラス連続シート(脆性材料製板)
3 送出ローラ機構
4 巻出ローラ機構
6 制御装置
10 送出ローラ
13 巻出ローラ
19 送出ローラ機構
20 巻出ローラ機構
24 制御装置
25 送出ローラ
26 大径ローラ
30 巻出ローラ
36 駆動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に切れ目が入れられた脆性材料製板を該切れ目に直交する脆性材料製板搬送方向に送り出す送出ローラ機構と、該送出ローラ機構に対して上記脆性材料製板の裏面側に変位量を設けて設置されて上記送出ローラ機構から送り出された脆性材料製板を巻き掛けて送り出す巻出ローラ機構と、を備え、上記変位量は、上記脆性材料製板を上記送出ローラ機構と上記巻出ローラ機構との間で上記脆性材料製板の切れ目部分を裏面側に折り曲げることにより上記切れ目に沿って折り割ることができる変位量に設定するようにした構成を有することを特徴とする脆性材料製板の折割装置。
【請求項2】
送出ローラ機構又は巻出ローラ機構を巻出ローラ機構又は送出ローラ機構に対して移動させる変位機構と、設定した変位量に基づいて上記変位機構を駆動させる機能を有する制御装置と、を設けるようにした請求項1記載の脆性材料製板の折割装置。
【請求項3】
送出ローラ機構を、脆性材料製板の表面と裏面に外周面を接触させて設けた2本の送出ローラを備えてなる構成とすると共に、巻出ローラ機構を、脆性材料製板の表面と裏面に外周面を接触させて設けた2本の巻出ローラを備えてなる構成とし、且つ上記送出ローラの周速よりも、上記巻出ローラの周速を速くさせるようにした請求項1又は2記載の脆性材料製板の折割装置。
【請求項4】
送出ローラ機構と巻出ローラ機構との間に脆性材料製板に入れた切れ目が移動したときに、送出ローラの周速よりも巻出ローラの周速を速くさせるようにした請求項3記載の脆性材料製板の折割装置。
【請求項5】
送出ローラ機構を、脆性材料製板の表面に外周面を接触させて設けた送出ローラと、脆性材料製板の裏面に外周面を接触させて設けた、上記送出ローラよりも大径の大径ローラと、を備えてなる構成とすると共に、巻出ローラ機構を、上記大径ローラと、脆性材料製板の表面に外周面を接触させて設けた、上記大径ローラよりも小径の巻出ローラと、を備えてなる構成とし、且つ上記巻出ローラ機構の下流側に設けた、上記脆性材料製板を搬送する駆動ローラの周速を、上記巻出ローラ機構の各ローラの周速よりも速くさせるようにした請求項1又は2記載の脆性材料製板の折割装置。
【請求項6】
送出ローラ機構と巻出ローラ機構との間に脆性材料製板に入れた切れ目が移動したときに、上記巻出ローラ機構の各ローラの周速よりも駆動ローラの周速を速くさせるようにした請求項5記載の脆性材料製板の折割装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−71866(P2013−71866A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211981(P2011−211981)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】