説明

脊椎円板髄核置換用多孔質インプラント

多孔質コンポーネント(7)及び多孔質コンポーネント内に設けられた1つ又は2つ以上の充填要素(22)を有する脊椎インプラントが提供される。組織内方成長が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラント、例えば脊椎インプラントの改良及びこれに関連した改良、特に、髄核の完全置換又は部分置換と関連した改良に関するがこれらには限定されない。
【背景技術】
【0002】
椎間板に関連した問題を解決する目的で、多くの手術方法が知られている。かかる方法は、髄核又はその残部の部分又は完全除去を含む。他の場合、椎間板全体を除去する。次に行われる治療は様々である。或る場合には、2つの椎骨を例えばこれら2つの椎骨相互間に骨チップを密に詰め込むことにより互いに予防させる。他の或る場合には、或る設計のインプラントを開放させた空間内に挿入する。インプラントは、椎間板の機能のうちの幾分かをもたらし又は椎骨の間隔を単に維持しようとするものである場合がある。かかる治療は、損傷及び(又は)疾患に鑑みて必要な場合がある。髄核の一部だけが失われ又は置換されるべき場合、1つ又は2つ以上の切開部が椎間板の輪に設けられる。次に、髄核の必要な部分を切開部により作られた開口部を通して除去する。次に、インプラントそれ自体を挿入する。インプラントを完全に挿入し又はインプラントを挿入後、ヒドロゲル等を導入することによりインフレートさせるのがよい。いったん取り付けられると、切開部を閉じて縫合する。縫合糸を縫合糸が切開部の一方の側の輪を通り、切開部を跨ぎ、次に他方の側の輪を通る状態で輪それ自体に直接適用する。
【0003】
かかる手技が成功するかどうかは、インプラントが椎骨相互間の所望の間隔を長期間にわたりもたらすことができるかどうか及び椎間板の自然な機能が維持される程度にかかっている。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、その目的のうちとりわけ、潜在的に、椎骨相互間の間隔の長期間にわたる維持をもたらすことにある。本発明は、その目的のうちとりわけ、潜在的に、インプラント内及び(又は)インプラント周りへの良好な組織内方成長をもたらすことにある。本発明は、その目的のうちとりわけ、脊椎について可能な限り自然な機能を維持することにある。
【0005】
本発明の第1の特徴によれば、脊椎インプラントであって、多孔質コンポーネント及び多孔質コンポーネント内に設けられた1つ又は2つ以上の充填要素を有するインプラントが提供される。
【0006】
インプラントは、部分髄核代用品であるのがよい。インプラントは、全髄核代用品であってもよい。好ましくは、インプラントは、インプラントが椎骨相互間に設けられた椎骨の離隔度を維持する。インプラントは、天然に存在する髄核の特性をまねるのがよい。好ましくは、インプラントは、生まれつき備わっている髄核により提供される耐圧縮荷重性のうちの何割か又は全てをもたらす。インプラントを前方又は後方から挿入するのがよい。インプラントを生まれつき備わっている輪及び(又は)人工輪内に設けるのがよい。
多孔質コンポーネントは、袋又は他の形態の容器であるのがよい。多孔質コンポーネントは、1つ又は2つ以上の充填要素の挿入を可能にする開口部を備えるのがよい。好ましくは、開口部は、例えば、折り畳み、縫い付け、縫合、膠着、ステープル止め等のうち1つ又は2つ以上により閉鎖可能である。
【0007】
多孔質容器は、布、特に織布で作られたものであるのがよい。布は、平らな織成体又は円形織成体、編成体、編組体、刺繍体又はこれらの組み合わせのうち1つ又は2つ以上であるのがよい。
【0008】
布は、1つ又は2つ以上の繊維材料を有すると共に(或いは)かかる繊維材料で作られたものであるのがよい。布は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維、ガラス、ポリアラミド、金属、コポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、生分解性材料、絹、セルロース又はポリカプロラクトンのうち1つ又は2つ以上を含むと共に(或いは)これらで形成されるのがよい。
【0009】
好ましくは、多孔質コンポーネントの細孔は、充填要素の最も小さな断面寸法よりも小さい少なくとも1つの断面寸法を有する。好ましくは、細孔の断面積は、充填要素の最小断面積よりも小さい。好ましくは、充填要素は、多孔質コンポーネントの細孔を通過することができない。
【0010】
内側コンポーネントは、コアを完全に包囲すると共に(或いは)コアを包封するのがよい。好ましくは、理想的には内側コンポーネントを通る流体連通を可能にする1つ又は2つ以上の孔又は隙間が、内側コンポーネントに設けられる。好ましくは、多数の孔又は隙間は、内側コンポーネントの構成材料、例えば、織布に設けられる。内側コンポーネントの構成材料の製造の仕方に起因して内側コンポーネントに生じる孔又は隙間に別の孔又は隙間を補充することができる。この補充は、内側コンポーネントを形成する1つ又は2つ以上の材料の劣化及び(又は)吸収により得られる。孔又は隙間が設けられる場合、好ましくは、これら孔又は隙間は、充填要素の最小断面寸法よりも小さな少なくとも1つの断面寸法を有する。好ましくは、隙間又は孔の断面積は、充填要素の最小断面積よりも小さい。好ましくは、充填要素は、多孔質コンポーネントの隙間又は孔を通過することができない。
【0011】
多孔質コンポーネントは、組織成長、特に、多孔質コンポーネントを通ると共に(或いは)多孔質コンポーネントと充填要素のうち1つ又は2つ以上との間及び(又は)充填要素のうち2つ又は3つ以上相互間の組織内方成長を促進するようになった1つ又は2つ以上の材料で構成されると共に(或いは)形成されると共に(或いは)1つ又は2つ以上の材料を備えるのがよい。組織成長を、或る種類の材料、例えばポリエステルにより促進することができる。組織成長は、多孔質コンポーネントの細孔及び(又は)隙間及び(又は)孔の形態、特に寸法及び(又は)個数により促進できる。組織成長は、多孔質コンポーネントの一部として設けられ又はこれと関連した化学物質、例えば医薬品により促進できる。
【0012】
多孔質コンポーネントに用いられる1つ又は2つ以上の材料は、生体吸収性であるのがよい。生体吸収性材料は、多孔質コンポーネントの存在量及び(又は)多孔質コンポーネントの存在位置及び(又は)多孔質コンポーネントが経時的に存在する密度を減少させるために用いられるのがよい。生体吸収性材料は、多孔質コンポーネントを第1の状態で制限し、材料の生体吸収性は、多孔質コンポーネントが第2の状態をとることができるようにする。第2の状態は、1つ又は2つ以上の充填要素の内容積を増大させると共に(或いは)1つ又は2つ以上の充填要素の多孔度を増大させると共に(或いは)1つ又は2つ以上の充填要素の質量を減少させると共に(或いは)組織内方成長のためのスペースを広くする。
【0013】
生体吸収性材料を生体吸収性材料の領域及び(又は)生体吸収性材料から成る1本又は2本以上のファイバを設けることにより多孔質コンポーネントに組み込むのがよい。多孔質コンポーネントは、全体が生体吸収性であってもよく、或いは部分的にしか生体吸収性でなくてもよい。互いに異なる生体吸収速度を有する互いに異なる材料を多孔質コンポーネント内の互いに異なる領域及び(又は)互いに異なるファイバに用いるのがよい。遅い生体吸収性、中程度の生体吸収性及び迅速な生体吸収性の材料を使用できる。
【0014】
1つ又は2つ以上の充填要素は、ファイバ又は繊維状であると共に(或いは)単一のフィラメントで作られたものであるのがよい。
【0015】
1つ又は2つ以上の充填要素のうち1つ又は2つ以上は、1つ又は2つ以上のファイバ材料を含むと共に(或いは)これらから形成されるのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素のうち1つ又は2つ以上は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ガラス繊維、ガラス、ポリアラミド、金属、コポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、生分解性材料、絹、セルロース又はポリカプロラクトンのうち1つ又は2つ以上を含むと共に(或いは)これらで形成されるのがよい。
【0016】
好ましくは、多孔質であると共に(或いは)それ自体の中にかつ(或いは)充填要素の部分相互間にボイドを形成する1つ又は2つ以上の充填要素が設けられる。充填要素内に設けられ又は充填要素により設けられる細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間は、理想的には、充填要素を通ると共に(或いは)これら相互間の流体連通を可能にする。好ましくは、多数個の細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間が、充填要素の構成材料に設けられる。好ましくは、多数個の細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間が、充填要素のうち1つ又は2つ以上により設けられる。好ましくは、多数個の細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間が、充填要素のうち1つ又は2つ以上の中にこれらの構造によって設けられる。
【0017】
1つ又は2つ以上の充填要素を非拘束状態のファイバで形成するのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素を非編組状態のファイバで形成するのがよい。フェルト又はフェルト状材料の1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。絡み合った状態のファイバを含む1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素は、整列状態のファイバを備えるのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素は、整列状態のファイバの1つ又は2つ以上の群及び(又は)非整列状態のファイバの1つ又は2つ以上の群及び(又は)第1の整列状態とは異なる整列状態の繊維の1つ又は2つ以上の群を備えるのがよい。非直線ファイバを備えた1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素は、波形且つ(或いは)湾曲した且つ(或いは)ジグザグのファイバを備えるのがよい。互いにそれぞれを間隔保持させるよう働くファイバを含む1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。第1の整列状態を有する1次ファイバ及び1次ファイバを互いに間隔保持するのに役立つ第1の整列状態とは異なる整列状態の2次ファイバを備えた1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。綿毛又はこれに類似した材料の1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。
【0018】
2つ又は3つ以上の互いに異なる断面のファイバを有する1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。互いに異なる断面のファイバは、直線状であると共に(或いは)非直線状であるのがよい。
【0019】
第1の方向に設けられたファイバを有する1種類又は2種類の充填要素を1つ又は2つ以上の拘束ファイバ又は材料を備えた状態で設けるのがよい。第1の方向に設けられたファイバ及び(又は)材料は、複数本のファイバを包囲すると共に(或いは)封入すると共に(或いは)複数本のファイバに巻き付けられると共に(或いは)複数本のファイバに接触するのがよい。拘束ファイバ又は材料をバンドして設けるのがよい。拘束ファイバ又は材料を充填要素の端部のところ及び(又は)充填要素上の中間の場所に設けるのがよい。
【0020】
1つ又は2つ以上の充填要素は、充填要素の周りに設けられた周辺ファイバ又は材料を備えるのがよい。周辺ファイバ又は材料を螺旋状態で且つ(或いは)十字形に充填要素に巻き付けるのがよい。ファイバ又は材料を反時計回りに且つ(或いは)時計回りに設けるのがよい。ファイバで作った漁網を1つ又は2つ以上の充填要素の周りに設けるのがよい。
【0021】
1つ又は2つ以上の充填要素は、これらの中に設けられた小片を備えるのがよい。小片を1本又は2本以上のファイバと混在させるのがよい。小片は、球、ビーズ、ブロック等であるのがよい。これら小片は、ファイバと一体であると共に(或いは)ファイバに連結されると共に(或いは)ファイバに対して自由に動くことができるのがよい。好ましくは、ファイバは、理想的には種々の方向でビーズに巻き付けられると共に(或いは)ビーズの周囲の少なくとも一部の周りに延びる。小片を特に一連の球体の場合、ファイバ又はフィラメントで互いに連接するのがよい。球体は、編組ファイバの塊によって包囲するのがよい。編組ファイバの塊を1本又は2本以上のファイバ又はフィラメントによって連接するのがよい。好ましくは、ファイバの塊は、球体を包囲する。
【0022】
充填要素の単一層を多孔質コンポーネント内に設けるのがよい。1つ又は2つ以上の混在させた充填要素を多孔質コンポーネント内に設けるのがよい。充填要素は、直線形態及び(又は)湾曲形態及び(又は)波形形態のものであるのがよい。1つ又は2つ以上の螺旋充填要素を設けるのがよい。断面は実質的に円形の1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。1つ又は2つ以上の平らな表面を備えた1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。全体として正方形であると共に(或いは)五角形であると共に(或いは)六角形であると共に(或いは)八角形の断面の1つ又は2つ以上の充填要素を設けるのがよい。
【0023】
充填要素中及び(又は)充填要素相互間に存在する細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間は、充填材料の構成材料の製造の仕方に起因しているのがよく、或いは、別の細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間が補充されるのがよい。補充は、充填要素を形成する1つ又は2つ以上の材料の劣化及び(又は)吸収によって提供できる。
【0024】
1つ又は2つ以上の充填要素は、組織成長、特に、1つ又は2つ以上の充填要素を通ると共に(或いは)多孔質コンポーネントと1つ又は2つ以上の充填要素との間及び(又は)充填要素のうち2つ又は3つ以上相互間の組織内方成長を促進するようになった1つ又は2つ以上の材料で構成されると共に(或いは)形成されているのがよい。組織成長を、1つ又は2つ以上の充填要素中に設けられる種類の材料、例えばポリエステルにより促進することができる。組織成長は、1つ又は2つ以上の充填要素の細孔及び(又は)隙間及び(又は)孔の形態、特に寸法及び(又は)個数により促進できる。
【0025】
充填要素のうち1つ又は2つ以上に用いられる1つ又は2つ以上の材料は、生体吸収性であるのがよい。かかる生体吸収性材料は、1つ又は2つ以上の充填要素の存在量及び(又は)1つ又は2つ以上の充填要素の存在位置及び(又は)1つ又は2つ以上の充填要素が経時的に存在する密度を減少させるために用いられるのがよい。生体吸収性材料は、充填要素のうち1つ又は2つ以上或いはその一部を第1の状態に拘束し、材料の生体吸収性は、1つ又は2つ以上の充填要素或いはその一部が第2の状態をとることができるようにするのがよい。第2の状態は、1つ又は2つ以上の充填要素の内容積を増大させると共に(或いは)1つ又は2つ以上の充填要素の多孔度を増大させると共に(或いは)1つ又は2つ以上の充填要素の質量を減少させると共に(或いは)組織内方成長のためのスペースを広くすることができる。
【0026】
生体吸収性材料を生体吸収性材料の領域及び(又は)生体吸収性材料から成る数本のファイバを設けることにより1つ又は2つ以上の充填要素に組み込むのがよい。1つ又は2つ以上の充填要素のうちの1つ又は2つは、全体が生体吸収性であってもよく、或いは部分的にしか生体吸収性でなくてもよい。互いに異なる生体吸収速度を有する互いに異なる材料を1つ又は2つ以上の充填要素内の互いに異なる領域及び(又は)互いに異なるファイバに用いるのがよい。遅い生体吸収性、中程度の生体吸収性及び迅速な生体吸収性の材料を使用できる。
【0027】
本発明の第1の特徴は、本明細書のどこか別の場所に記載された構造的特徴部、オプション又は可能性のうちの任意のものを有してよい。
【0028】
本発明の第2の特徴によれば、脊椎円板の少なくとも一部を除去し、多孔質コンポーネント及び多孔質コンポーネント内に設けられた1つ又は2つ以上の充填要素を有するインプラントを用意する手術方法が提供される。
【0029】
髄核の一部又は全体を交換することができる。インプラントを前方及び(又は)後方から挿入することができる。
【0030】
好ましくは、多孔質コンポーネントを髄核物質を除去するために用いたのと同一の切開部に挿入する。好ましくは、切開部は、髄核物質除去段階に必要なほど大きいものであるに過ぎない。多孔質コンポーネントを椎間腔内への挿入のために折り畳むと共に(或いは)圧縮するのがよい。好ましくは、椎間腔内への挿入中、多孔質コンポーネントには1つ又は2つ以上の充填要素は無い。
【0031】
好ましくは、1つ又は2つ以上の充填要素を椎間板腔内の多孔質コンポーネント内に導入する。1つ又は2つ以上の充填要素を例えばアプリケータから押し出すことによりアプリケータから配備するのがよい。
【0032】
好ましくは、1つ又は2つ以上の充填要素は、髄核物質を除去するために用いられる切開部を通して設けられる。好ましくは、1つ又は2つ以上の充填要素を導入するために用いられる切開部は、髄核物質の除去に必要な切開部よりも大きくはない。
【0033】
好ましくは、この方法は、インプラントが非生物学的機構によって生まれつき存在する椎間板の1つ又は2つ以上の特性をもたらす第1の時点と、インプラントが、非生物学的機構と生物学的機構の組み合わせによって生まれつき存在する椎間板の1つ又は2つ以上の特性をもたらす第2の時点とを含む。理想的には、生物学的機構は、組織の内方成長である。この方法は、生まれつき存在する椎間板の1つ又は2つ以上の特性の実質的に全てが生物学的機構により提供される第3の時点を含むのがよい。好ましくは、第1の時点における機構から第2の時点及び(又は)第3の時点における機構への移行は、インプラントを形成する材料、特に、インプラントの1種類又は2種類の充填要素を形成する材料のうちの1つ又は2つ以上の生体吸収性に起因している。
【0034】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴を含む本明細書のどこか別の場所に記載された構造的特徴部、オプション又は可能性のうちの任意のものを有してよい。
【0035】
本発明の第3の特徴によれば、1つ又は2つ以上の充填要素を有する脊椎インプラントが提供される。
【0036】
本発明の第3の特徴は、他の特徴を含む本明細書のどこか別の場所に記載された構造的特徴部、オプション又は可能性のうちの任意のものを有してよい。
【0037】
本発明の第4の特徴によれば、脊椎円板の少なくとも一部を除去し、1つ又は2つ以上の充填要素を有するインプラントを用意する手術方法が提供される。
【0038】
充填要素は、除去されなかった脊椎円板の一部、例えば、輪及び(又は)髄核物質及び(又は)特に2004年3月26日に出願された本出願人の英国特許出願第0406835.9号明細書に開示されている形式の裂(fissure)閉鎖器具によって拘束するのがよく、かかる英国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【0039】
本発明の第4の特徴は、他の特徴を含む本明細書のどこか別の場所に記載された構造的特徴部、オプション又は可能性のうちの任意のものを有してよい。
【0040】
次に添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を説明するが、これは例示に過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
脊椎内の椎間板の各々は、スペーサとして、ショックアブソーバとして機能すると共に隣り合う椎骨相互間の動きを可能にするよう機能する。椎間板の高さは、椎体相互間の離隔距離を維持する。椎間板が行う機能は次のように3つある。
【0042】
・正しい離隔−椎間孔がその高さを維持することができ、分節神経根が圧迫無く各脊椎レベルを出ることができるようにする。
・衝撃吸収−脊椎が脊椎に軸方向に加重したとき(ジャンプや走りのような活動中)圧縮したりリバウンドできるだけでなく、長時間座っていたり立ったりしている間、頭や胴に加える重力の下向きの引っ張りに抵抗できる。
・弾性(椎間板の弾性)−動作の結合を可能にし、セグメントが特定の活動中、同時に撓み、回転し、そして側方に曲がることができるようにする。これは、各脊椎セグメントが単一の運動軸線にロックされている場合には不可能である。
【0043】
椎間板は、4つの別々の部分から成っている。これらは、髄核、線維輪及び2つの終板である。これら4つの部分はそれら自体非常に明確に区別されているが、これらの境界は、明確ではないということに注目されるべきである。多くの研究者は、終板を無視し、これらを椎骨と脊椎の運動を可能にする椎間板の部分との間のバリヤとして簡単に片付ける傾向がある。しかしながら、終板は、椎間板の構造を完全にし、椎間板の挙動を定める境界条件のうちの幾つかを作る上で重要である。
【0044】
人の寿命のうちで約20年目から、椎間板は、完全に無血管状態になる。ただし、椎間板は、高い代謝回転を示す。椎間板の含水量は、人が年を経るにつれて減少する。
【0045】
終板
終板は、ヒアリン軟骨で形成されている。これは、基本的に、「膠原原線維により補強された水和プロテオグリカンゲル」であり、これについては、ゴーシュ(Ghosh)著,「ザ・バイオロジー・オブ・ザ・インターバーブラル・ディスク(The Biology of the Interverbral Disc)」,ISBN 084936711523,CRC・プレス( Press)を参照されたい。上述したように、輪と終板との間の境界は、明確なものではなく、顕微鏡下では、2つの部分は、一方の組織でもなく他方の組織でもない領域との境目が無い。
【0046】

輪は、椎間板の外側リング、即ち、膠原原線維の互いに反対側の層で作られた強固な積層構造体である。輪は、代表的には、約12個の単層から成り、6個は、各線維移動方向に位置する。これら層は、1つ置きの層について約30°の角度状態にあり、残りの層について逆方向に30°の角度状態にある。輪が行う機能は、この種の構造の必要性を定める。たとえ椎骨がどの方向に動いても、常に、引っ張りの際に幾つかの線維があり、圧縮において幾つかの線維がある。かくして、輪は、常時、何本かの線維を用いて引っ張り(これらは弾性バンドのような引っ張りに抵抗する)、脊柱を正しい姿勢に引っ張る作用を行っている。
【0047】
輪は、ラジアルタイヤのプライのようにではなく、互いにオーバーラップしたラジアルバンドを有し、これにより、捩じり応力を破損無く通常の加重下で輪全体に分布させることができる。一研究の示唆するところによれば、輪の後方部分は、弱い側部であり、したがって、損傷を受けやすい。これについては、ツジ(Tsuji)著,「ストラクチュアル・バリエーション・オブ・ジ・アニュラス・フィブロシス(Structural variation of the
annulus fibrosis)」,スパイン(Spine )18,1993年,pp204−210を参照されたい。輪は、椎間板の最も強固な部分である。
【0048】
髄核
椎間板の中央に位置する髄核は、プロテオグリカンの高水和化のゲルである。子供及び10代後半の青少年では、含水量は、その体重の最高80%を占める場合がある(ゴーシュ参照)。このゲル物質は、引き裂くことができるほど密度の高い非常に濃厚な流体である。これは、直接的な荷重支持と性質が流体であることにより、加重下で形状を変化させて荷重を輪に分散させる二重の目的を果たしている。髄核は、FSU(functional spinal unit:機能脊椎ユニット)の荷重の半分を支えることができるに過ぎず、輪は、残りを支持する−フィネソン(Finneson)著,「ロー・バック・ペイン(Low back pain)」,ISBN0−397−50493−4,1992年を参照されたい。椎間板が髄核の損傷後であっても引き続き働くことができるのはこの加重の共有である。椎間板の変性及び(又は)ヘルニア及び(又は)損傷は、患者の寿命の間に生じる場合がある。
【0049】
椎間板変性症(DDD)は、変性プロセスによりその機能の幾分かを失った椎間板の課程であり、非常によく見られて且つ自然に生じる疾患である。誕生時に、椎間板は、約80%の水で構成されている。老化が生じるにつれ、含水量が減少し、椎間板は、ショックアブソーバとしての機能が小さくなり、椎間腔内の蛋白質も又、これらの組成が変化する。変性と疼痛の関係は、明らかではない。幾つかの変性椎間板がなぜ痛いかを説明する理論としては、次のことが挙げられる。
【0050】
外傷:輪内の引き裂き部が、髄核物質を放出する場合があり、これは、炎症と呼ばれている。
【0051】
椎間板への神経内方成長:外側輪内へ他よりも深く侵入する神経終末部を有すると思われる人がおり、これは、椎間板が痛みの発生源になりやすいようにすると考えられる。
【0052】
高さの減少:変性椎間板は、含水量が少なくなるにつれて高さが小さくなる場合がある。これにより、椎間板は、外方へ膨らみ、神経根を圧迫し、かくして痛みを生じさせる。加うるに、この高さの減少は、これまた痛みを発生させる場合のある他の効果を持つ。椎間板の生体力学が変わることになる。通常、髄核は、輪に圧力を及ぼし、線維を引っ張り状態にする。しかしながら、これらの場合、髄核は、この能力を失い、輪それ自体が、脊椎中のその高さ位置で圧縮荷重を支持するようになる。これは、輪中の応力を増大させることになる。
【0053】
椎間板全体の荷重分布は、これによって悪影響を受ける。一様な分布が偶然である場合、荷重は、椎間板全体にわたって一様には支持されないことになる。
【0054】
椎間板の生体力学の変更は、患者の運動範囲と通常の動作における瞬間回転軸線の位置の両方に悪影響を及ぼすことになる。
【0055】
これら要因の結果は、椎間関節への加重を増大させることを意味し、椎間関節は、変性し始めて兆候が出る状態になる。
【0056】
痛みを引き起こす変性の背後にある理由が何であれ、位置及び患者の寿命を向上させる治療が重要である。この治療オプションについて以下に詳細に説明する。
【0057】
椎間板ヘルニアは、椎間板それ自体の内部に膨らみがある点で脱出椎間板に類似している。しかしながら、椎間板は、同じようには虚脱していないであろう。外傷は、変性プロセスと機械的加重の組み合わせによるものであると考えられる。椎間板ヘルニアの種々の段階−「ザ・ステージズ・オブ・ディスク・ヘルニエーション(The stages of disc herniation)」,イブラヒム(Ibrahim),コロラド・スパイン・インスティトュート(Colorado spine institute),http://www.coloradospineinstitute.com,2004年は、恐らくは老化と関連した化学的変化による椎間板変性が、椎間板を弱くする、輪のこの局所破損に起因して膨らみが生成し、状態の進行は、髄核をヘルニア形成として突き出す場合があり、膨らみが、脊椎腔内の神経を圧迫し、身体が脚から来るものとして見える痛みを生じさせ、それ以上の進行の結果として、ゲル状の髄核としての突出部が線維輪を破るが、椎間板内に留まり、それ以上の進行の結果として、髄核が線維輪を破り、脊椎腔内の椎間板の外部に位置し、隔離椎間板となることである。
【0058】
ヘルニアの有る大抵の患者は、手術を行わないでも改善するが、幾つかの場合においては、手術が必要である。手術が必要な場合、通常、治療は、椎間板ヘルニアの一部又は全てを除去し、その結果神経根にもはや当たらないようにする。
【0059】
椎間板変性及び椎間板ヘルニアの外科的治療
変性又はヘルニア或いは疾患又は損傷の兆候を示している椎間板が有痛性になった場合、外科医は、手術を行う場合が多い。行われる場合のある治療は次の通りである。
1.部分椎間板切除術−ヘルニア形成部位への局所輪状物質の除去
2.部分髄核摘出術−ヘルニア形成部位に近い局所髄核物質の除去
3.椎間板切除術及び固定術−椎間板全体を除去し、椎間腔の固定、重篤なケースの場合に利用される。
4.他の治療、例えば椎間板置換又は髄核置換−これらは、固定の代替手段として用いられる新たな新しい治療である。
【0060】
本発明は、以下の治療の一部として特に有用である。
・インプラントを挿入することにより失われた又は除去した髄核物質を置き換えて残存している髄核物質のそばに均等な髄核物質を設けるための髄核摘出術。
・インプラントを輪代用品と関連して挿入することにより機能的な髄核を再建する人工椎間板置換術。
・インプラントを挿入することにより機能的な髄核を再建する人工髄核置換術。
【0061】
図1を参照すると、髄核3の一部が切開部7を介して除去された椎間板1が示されている。物質の除去に続き、インプラントの第1の部分が挿入してある。第1の部分は、開口部9を備えた布袋7である。袋7は、空であり、それ故に、この段階では、切開部7を介する容易な挿入を可能にするよう小さなサイズに容易に減容されている。切開部5は、髄核物質を除去するのに必要な最も小さなサイズのものである。これは、髄核の除去に必要な切開部7が、インプラントを配備するのに十分なスペースを得ることができるよう拡大する必要のある先行技術のシステムに付属している。袋への開口部9は、切開部7に近接して保たれている。
【0062】
袋7は、これが受け入れるべき充填物を拘束するのに必要な強度及び構造的性質を提供するように形成されているが、袋を通ってその内部の中に出入りする流体の通路に開口した状態でそのようにする。この意義について以下に詳細に説明する。
【0063】
図2は、次のインプラント形成段階が示されている。アプリケータ20を用いて、インプラントの第2の部分である充填材22を開口部9から袋7内に押し込む。充填材22は、断面が比較的小さなものであり、したがって、切開部5の拡大を必要としない。十分な充填材22を袋7の中に導入して袋に以下に詳細に説明する所望の性質を与える。しかしながら、理解できるように、充填材22により、袋7は、髄核3内の腔のプロフィールを全体としてとるようになる。
【0064】
充填材22は、組織成長を促進する1つ又は2つ以上の材料、例えばポリエステルファイバで作られている。
【0065】
かかる袋は、2004年3月26日に出願された英国特許出願第040683.9号明細書に開示された形式の器具と一緒に(これに並置されているがこれとは別個独立のものとして)又はこれにリンクされた状態で、或いはこの一体部分として設けられるのがよく、かかる英国特許出願を参照により引用し、かかる器具に関してその記載内容を本明細書の一部とする。
【0066】
本発明のインプラントは、椎間板が髄核から物質が失われているので、例えば髄核摘出術のような手技を行う場合に適している。これにより、髄核機能が失われると共に(或いは)椎間板の高さが減少する場合がある。かくして、このインプラントは、部分人工品であり、したがって、これらの場合に治療を可能にする。
【0067】
本発明の重要な部分は、用いられる充填材22及び袋7の構造である。
【0068】
椎間板/髄核置換術では、先行技術の方式では、器具の寿命全体を通じて、椎間板の自然な機能をまねる非生物学的機構を提供することであった。実用上可能な限り、この器具は、その生物学的周囲環境から隔離されている。本発明は、非生物学的機構を利用する解決策から、生物学的機構と非生物学的機構の組み合わせ、更に潜在的には主として生物学的機構、それどころか生物学的機構だけの段階的移行をもたらすことを目的としている。
【0069】
この目的は、組織内方成長に抵抗するのではなく、これを容易にする充填材22及び袋7の注意深い設計により達成できる。
【0070】
追い出すことができる又は分解することができない異物にさらされると、身体反応は、この異物を隔離しようとする。かくして、組織は、異物の周りで成長する。
【0071】
従来、異物が連続した性質のものであることは、組織がインプラントの外部周りにのみ成長することを意味していた。インフレート可能なバルーンの場合、これは、インフレーションを束縛するアウタ(外側)がそのまさに本来的に内部への組織の成長をも阻止するからである。これと同様に、金属器具は、これら金属器具の構成材料に鑑みて組織内方成長を阻止する。他のインプラントは、性状が連続したアウタを用いており、したがって、まさに外部周りの組織の表面層だけが成長する場合があった。インプラントの性状によるか採られたアクティブなステップによるかのいずれかで、インプラント内での組織内方成長は生じない。幾つかの場合において、例えば組織が器具の非生物学的機構の動作を邪魔するのを阻止するために、組織内方成長を積極的に回避するステップが、採られた。本発明は、基本的にこれとは異なる方式を採用し、インプラントのための組織内方成長を積極的に得ようとしている。
【0072】
第1に、袋7は、袋を形成するファイバ相互間に相当な数の開口部/隙間が存在するような仕方で提供される。かくして、流体は、いずれの方向にも袋7を容易に通過することができる。その結果、インプラントのアウタは、それ自体を通る組織内方成長を容易にする。
【0073】
第2に、図2の実施形態を参照すると、充填材22は、非拘束状態で非編組状態の塊に互いに集められたファイバの群から成っている。ファイバの細長い性状により、ファイバは、アプリケータ20内での整列に適している。或る程度の整列が袋7内で保持されるが、一般に、その結果として、開放状態のファイバの塊で形成された充填材22が生じる。
【0074】
非拘束且つ非編組状態のポリエステルフィラメント又はファイバのかかる充填材22は当初、髄核中で僅かな容積を占めている。しかしながら、植え込みに続き、充填材22内への組織内方成長が生じる。ファイバの塊が開放した性質であり且つファイバの構成材料は、これを促進する。時間の経過につれて、組織内方成長は、各ファイバを個々に包囲する傾向がある。というのは、組織が各ファイバに個々に達することができるからである。かくして、個々のファイバは各々、周囲により隔離されるべき異物である。密集したファイバが設けられる場合、組織成長はこの場合も又、外部に制限される。というのは、ファイバは、組織により一体の塊として見られるからである。本発明の開放状態の線は事実、支承構造体としての役目を果たす。この成長が進展すると、これにより、充填材22、それ故に袋7の容積が増大して髄核中の利用可能な腔を満たす。
【0075】
組織内方成長に関する制約が無いこと及び袋7及び充填材22に出入りする流体の自由な接近は、成長する組織が、組成及びそれ故に性質において、これを包囲する妨害されていない状態の髄核物質に類似していることを意味するはずである。
【0076】
袋7の膨潤は、椎間板が破損したときに失われた椎間板高さのうちの幾分かを取り戻すはずである。
【0077】
理論的には、椎間板の変性疾患の初期段階の間、髄核を支承作用をもたらすポリエステルファイバで再び充填するという技術的思想は、永続的な治療としての役目を果たすことができる。いずれにせよ、より深刻な手技を遅延させる中期的な観点で患者の状態を向上させることが期待される。他方、全ての通常の治療オプションは依然として、患者に対して利用できる。
【0078】
アプリケータ20は、図2の実施形態で用いられた充填材22とは異なる形態の充填材30と関連して図3に詳細に示されている。この場合、非拘束形態のファイバの塊ではなく、充填材30は、フェルト状材料34の多くの別々のパッド32の形態で設けられている。フェルト及びこれに類似した材料は、連続気泡構造体を形成するようこれらのファイバの自然な絡み合いを用いている。これは、所望ならばこの構造体の絡み合い及び(又は)開放の度合を増大させるニードリング(needling)により補充されるのがよい。
【0079】
アプリケータ20は、パッド32を保持する筒体36からなっている。外科医の制御下で、プランジャ38を筒体36内で前進させてパッド32を椎間板内で袋7から押し出す。経時的に、パッド32は、組織がこれらの内部で且つこれらの周りで成長するにつれて大きくなる。互いに異なる充填材を配備するのに互いに異なる断面のアプリケータを用いるのがよい。
【0080】
図4a、図4b及び図4cは、非拘束非編組形態の充填材22の多くの別の形態を示している。図4cは、性質において非直線状の一連の全体として整列したファイバ40を示している。ファイバ40に作られる波形部は、個々のファイバを互いに間隔保持するのに役立つ。その結果、相当大きなボイド又は空所42のあるファイバ40の塊が得られる。図4bは、変形例を示しており、この変形例では、一連の2次ファイバ44が1次ファイバ40とは異なる向きを備えている。向きの差は、ファイバ相互間のボイド42の減少させる圧力に耐える。
【0081】
図4cは、フェルト又は綿毛材料の形態に酷似した形態のファイバ46の塊を示している。非常に多種多様な向きが、与えられており、かくして、これら向きは、間隔保持状態を多様な向きの圧縮に抗して維持するのに役立つ。
【0082】
ファイバは、ステープルファイバから得られ、次に潜在的に、短い長さに細断される場合がある。ファイバを供給されたままの状態で用いてもよく、或いは、潜在的に編組又は他の拘束包囲体となるよう細断前後に改質してもよい。単一のフィラメント及び(又は)互いに撚り合わせると共に(或いは)互いに編組したフィラメントのファイバ形態を用いることが可能である。
【0083】
図5は、断面の大きな1次ファイバ50が断面の小さな2次ファイバ52と混ぜ合わされた別の形態の充填材を示している。断面の差はこの場合も、ボイド54を充填材中に維持するのを助ける。
【0084】
図6a及び図6bは、構造化を一層進めた充填材60の例を示している。図6aの第1の場合、ファイバ62の大部分は、第1の整列方向に沿って設けられている。配備中及び配備後にファイバ62の整列状態を維持するのを助けるために、制限された数のファイバ64が、ファイバ62に巻き付けられてこれらファイバを束として維持している。しかしながら、これらの束は、依然として開いており、相当大きなボイドを有している。図6bの形態では、ファイバの束は、ホットブレードによって細断されており、このホットブレードは端部の一部を溶かして塊66による冷却の際にこれらを互いに接合する。
【0085】
図7の実施形態は、構造化を一段と進めた実施形態としての充填材70である。十字形ファイバ72の外側層が、内側ファイバ74を所望の位置に維持するよう設けられている。内側ファイバ74は、大径ファイバ76と小径ファイバ78の混合物である。ファイバ76,78を多数の僅かに異なる整列状態で潜在的に設けることにより、大きなボイドを有するより開放度の高い構造体が得られる。十字形ファイバ72の外側層に存在する大きな隙間は、組織内方成長に対する妨害が無いが、これらのファイバが、袋の周りの袋中の空間内への充填材70の配備及び位置決めを助ける程度の剛性を備えるのがよいことを意味している。一連の様々な長さのかかる充填材70を所望の構造体全体を与えるよう単一の袋内に用いるのがよい。
【0086】
図8では、束内のファイバ85は、多数個の球形ビーズ87を設けることにより種々の整列状態で互いに間隔を置いて設けられている。
【0087】
最後に、図9では、一連のビーズ90が、ファイバ92により互いに連接された状態で設けられている。ビーズは各々、塊を形成するよう編組されたファイバ94の塊によって包囲されている。編組状態の塊94は、スリーブのようにビーズ90の各々を包囲する。この場合も又、充填材それ自体は、開いていて、組織成長を促進する。
【0088】
上述の例の多くにおいて、所望の開放構造体は、個々の群をなすファイバだけでなく、個々のファイバ群とかかるファイバ群が構成するこれらファイバ群相互間のボイドとの相互作用によっても得られる。
【0089】
上述の実施形態の全てにおいて、本発明では一般に、開放構造体を設けることは、充填材の互いに異なる部分について互いに異なる材料を注意深く設けることによっても助長できる。
【0090】
図10aに示す配備時点において、袋100を互いに織成された多数のファイバ102で形成して充填材104を収容する必要な構造体を形成する。充填材104それ自体は、間隔保持ファイバ110と一緒に、第1のサイズ106及び第2のサイズ108の一連の波形ファイバの形態で提供され、かかる間隔保持ファイバは、第1のサイズ106及び第2のサイズ108の開放位置を圧縮下に維持するのを助ける。その結果、袋100を通る流体連通を可能にする袋100中の相当大きな隙間及びファイバ106,108,110相互間の相当大きなボイド114を備えた開放構造体が得られる。
【0091】
配備後6ヶ月そこら経つと図10bに示すように、位置が変化している。相当な量の組織内方成長が生じている。組織内方成長は、実際に、髄核及び充填材104の圧縮に抵抗する髄核物質をもたらすのに役立つ。したがって、インプラントの初期の数日間の間にファイバ106,108の圧縮に抵抗する機能を果たす間隔保持ファイバ110は、もはや不要である。
【0092】
間隔保持ファイバ110を6ヶ月そこら以内に比較的迅速に吸収される生体吸収性物質で構成することにより、間隔保持ファイバ110は、考慮の対象から除かれる。これら間隔保持ファイバが、支承構造体として働く組織は、有用なものとして残存するが、ファイバ110それ自体は、ほとんどの場所で無くなる。かかるファイバ110のうちで僅かな残り118が、残存する場合がある。これらファイバ110が無くなった結果として、ファイバ106,108相互間の間隔が増大するのでボイド114の拡張に対する制約が無くなる。組織成長はそれ自体、これが起こるための膨張圧力を提供する。
【0093】
袋100の非生体吸収性ファイバ102は、構造体全体に対する補助手段となるようファイバ106,108と同様に残る。
【0094】
図10cは、配備後約2年そこら後の位置を示している。さらに別の組織成長が生じており、今や再生した組織が、髄核機能の大部分をもたらしている。必要な構造体のこの主として生物学的な提供により、ファイバ106,108の必要性が少なくなる。ファイバ106も又、生体吸収性材料から作られるので、これらも又見えなくなる。生体吸収が生じるための種々の期間が、用いられる材料の選択により可能である。ファイバ106が無くなることにより、残りのファイバ108が、更に膨張することができる。
【0095】
必要な袋のサイズ及び必要な充填材の量を正確に計測するために、除去された髄核物質により空いたスペース内に挿入されるインフレート可能な袋のインフレート後の容積を測定することが可能である。
【0096】
先の実施形態において説明したように、インプラントは、一般に、袋及び充填材の形態をしている。しかしながら、或る特定の場合には、袋を用いないで充填材を用いることが可能な場合がある。これは特に、充填材を必要とするボイドを形成するよう椎間板物質を除去することが、例えば、生まれつき備わった輪及び(又は)健全な髄核物質によりボイドが境界付けられることに起因して明確である場合にそうである。
【0097】
かかる場合、本発明の利点は、髄核物質の置換とは異なる方式をファイバによる髄核物質の置換によりとることができるので依然として得られる。この場合も又、本発明は、非生物学的機構を利用する解決策から、生物学的機構と非生物学的機構の組み合わせ、更に潜在的には主として生物学的機構、それどころか生物学的機構だけの段階的移行をもたらすことを目的としている。
【0098】
上述した種類、材質及び形態のファイバをこの実施形態に用いることができる。この場合も又、かかる異物にさらされると、身体反応は、この異物を隔離しようとする。かくして、組織は、異物の周りで成長する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の実施形態としての器具の椎間板を特徴付ける部分の斜視図である。
【図2】器具が完全な状態に近い図1の器具を示す図である。
【図3】一実施形態としてのアプリケータを用いて充填材の一実施形態を小出しする状態を示す図である。
【図4a】充填材の他の実施形態を示す図である。
【図4b】充填材の他の実施形態を示す図である。
【図4c】充填材の他の実施形態を示す図である。
【図5】充填材の別の実施形態の斜視図である。
【図6a】充填材の更に別の実施形態の斜視図である。
【図6b】充填材の更に別の実施形態の斜視図である。
【図7】充填材の更に別の実施形態を示す図である。
【図8】ビーズを含む本発明の実施形態を示す図である。
【図9】本発明の別のビーズを含む実施形態を示す図である。
【図10a】本発明の器具の寿命において、最初の配備時点から中間時点を介して配備後の非常に後の時点までの一段階を示す図である。
【図10b】本発明の器具の寿命において、最初の配備時点から中間時点を介して配備後の非常に後の時点までの別の段階を示す図である。
【図10c】本発明の器具の寿命において、最初の配備時点から中間時点を介して配備後の非常に後の時点までの別の段階を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎インプラントであって、多孔質コンポーネント及び前記多孔質コンポーネント内に設けられた1つ又は2つ以上の充填要素を有する、インプラント。
【請求項2】
前記インプラントは、部分髄核代用物又は全髄核代用物である、請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
前記多孔質コンポーネントは、前記1つ又は2つ以上の充填要素の挿入を可能にする開口部を備えた袋又は他の形態の容器である、請求項1又は2記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔質容器は、布、特に織布で作られている、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項5】
前記多孔質コンポーネントの細孔は、前記充填要素の最も小さな断面寸法よりも小さい少なくとも1つの断面寸法を有する、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項6】
前記多孔質コンポーネントは、組織成長、特に、前記多孔質コンポーネントを通ると共に(或いは)前記多孔質コンポーネントと前記充填要素のうち1つ又は2つ以上との間及び(又は)前記充填要素のうち2つ又は3つ以上相互間の組織内方成長を促進するようになった1つ又は2つ以上の材料で構成されると共に(或いは)形成されると共に(或いは)前記1つ又は2つ以上の材料を備えている、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項7】
前記多孔質コンポーネントに用いられる前記1つ又は2つ以上の材料は、生体吸収性である、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項8】
前記生体吸収性材料は、前記多孔質コンポーネントの存在量及び(又は)前記多孔質コンポーネントの存在位置及び(又は)前記多孔質コンポーネントが経時的に存在する密度を減少させるために用いられる、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項9】
前記生体吸収性材料は、前記多孔質コンポーネントを第1の状態で制限し、前記材料の生体吸収性は、前記多孔質コンポーネントが第2の状態をとることができるようにする、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項10】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、ファイバ状である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項11】
多孔質であると共に(或いは)それ自体の中にかつ(或いは)前記充填要素の部分相互間にボイドを形成する前記1つ又は2つ以上の充填要素が設けられる、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項12】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、非拘束状態のファイバ及び(又は)非編組状態のファイバ及び(又は)絡み合った状態のファイバで形成されている、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項13】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、整列状態のファイバを備えている、請求項1〜12のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項14】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、例えば波形且つ(或いは)湾曲した且つ(或いは)ジグザグのファイバを備えている、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項15】
互いにそれぞれを間隔保持させるよう働くファイバを含む前記1つ又は2つ以上の充填要素が設けられる、請求項1〜14のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項16】
2つ又は3つ以上の互いに異なる断面のファイバを含む前記1つ又は2つ以上の充填要素が設けられる、請求項1〜15のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項17】
第1の方向に設けられたファイバ及び1本又は2本以上の拘束ファイバ又は複数本のファイバを包囲すると共に(或いは)封入すると共に(或いは)前記複数本のファイバに巻き付けられると共に(或いは)前記複数本のファイバに接触する材料を含む前記1つ又は2つ以上の充填要素が設けられている、請求項1〜16のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項18】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、前記充填要素の周りに設けられた周辺ファイバ又は材料を備え、前記周辺ファイバ又は材料は、螺旋状態で且つ(或いは)十字形に前記充填要素に巻き付けられている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項19】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、これらの中に設けられた小片を備え、前記小片は、前記1本又は2本以上のファイバと混在している、請求項1〜18のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項20】
前記小片は、球、ビーズ、ブロック等である、請求項1〜19のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項21】
前記充填要素中及び(又は)前記充填要素相互間に存在する細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間は、前記充填材料の構成材料の製造の仕方に起因しており、或いは、別の細孔及び(又は)ボイド及び(又は)孔及び(又は)隙間が補充されている、請求項1〜20のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項22】
前記1つ又は2つ以上の充填要素は、組織成長、特に、前記1つ又は2つ以上の充填要素を通ると共に(或いは)前記多孔質コンポーネントと前記1つ又は2つ以上の充填要素との間及び(又は)前記充填要素のうち2つ又は3つ以上相互間の組織内方成長を促進するようになった1つ又は2つ以上の材料で構成されると共に(或いは)形成されている、請求項1〜21のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項23】
前記充填要素のうち1つ又は2つ以上に用いられる1つ又は2つ以上の材料は、生体吸収性であり、該生体吸収性材料は、前記1つ又は2つ以上の充填要素の存在量及び(又は)前記1つ又は2つ以上の充填要素の存在位置及び(又は)前記1つ又は2つ以上の充填要素が経時的に存在する密度を減少させるために用いられる、請求項1〜22のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項24】
前記生体吸収性材料は、前記充填要素のうち1つ又は2つ以上或いはその一部を第1の状態に拘束し、前記材料の生体吸収性は、前記1つ又は2つ以上の充填要素或いはその一部が第2の状態をとることができるようにし、前記第2の状態は、前記1つ又は2つ以上の充填要素の内容積を増大させると共に(或いは)前記1つ又は2つ以上の充填要素の多孔度を増大させると共に(或いは)前記1つ又は2つ以上の充填要素の質量を減少させると共に(或いは)組織内方成長のためのスペースを広くする、請求項1〜23のうちいずれか一に記載のインプラント。
【請求項25】
脊椎円板の少なくとも一部を除去し、多孔質コンポーネント及び前記多孔質コンポーネント内に設けられた1つ又は2つ以上の充填要素を有するインプラントを用意する、手術方法。
【請求項26】
前記多孔質コンポーネントを髄核物質を除去するために用いたのと同一の切開部に挿入し、前記切開部は、前記髄核物質除去段階に必要なほど大きいものであるに過ぎず、前記1つ又は2つ以上の充填要素を前記髄核物質の除去に用いられた前記切開部を通って設け、前記1つ又は2つ以上の充填要素を導入するために用いられた前記切開部は、前記髄核物質の除去に必要な前記切開部よりも大きくはない、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記1つ又は2つ以上の充填要素を前記多孔質コンポーネント内に導入し、前記多孔質コンポーネントは、椎間板腔内に既に設けられている、請求項25又は26記載の方法。
【請求項28】
前記インプラントが非生物学的機構によって生まれつき存在する椎間板の1つ又は2つ以上の特性をもたらす第1の時点と、前記インプラントが、非生物学的機構と生物学的機構の組み合わせによって生まれつき存在する椎間板の1つ又は2つ以上の特性をもたらす第2の時点とを含む、請求項25〜27のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、生まれつき存在する椎間板の前記1つ又は2つ以上の特性の実質的に全てが生物学的機構により提供される第3の時点を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記第1の時点における前記機構から前記第2の時点及び(又は)前記第3の時点における機構への移行は、前記インプラントを形成する材料、特に、前記インプラントの前記1種類又は2種類の充填要素を形成する材料のうちの1つ又は2つ以上の生体吸収性に起因している、請求項28又は29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【公表番号】特表2007−530120(P2007−530120A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504484(P2007−504484)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001179
【国際公開番号】WO2005/092248
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506042058)ヌヴァシヴ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】