説明

脱毛に関与する遺伝子の、siRNA転写後遺伝子サイレンシング

【課題】アンドロゲン関連疾患に関連して、脱毛防止、又は発毛誘発を含む、脱毛治療用組成物、および治療法を提供する。
【解決手段】5-αレダクターゼのアイソザイムI、及びII、該アンドロゲン受容体、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼ等の、アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質の発現を、siRNAの投与によりmRNAの翻訳を抑制し、低減し、又は阻害することにより、下方制御する方法。前記SiRNAを含有する組成物。前記組成物を投与する脱毛の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.技術背景)
本開示は、通常、発毛、又は脱毛を操作する方法、及び組成物に関するものである。特に、本開示の態様は、発毛、又は脱毛に関与する、又は関連する遺伝子の遺伝子発現を干渉する方法、及び組成物に対応し、例えば、男性ホルモン性脱毛症の場合に、阻害性核酸を用いる。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術)
男性、及び女性、双方における脱毛症は、医療、及び医薬産業から注目が集まっており、この状況に悩む人に効果的であり、かつ信頼性のある治療に、高い需要がある。人間において、発毛、及びその再生は、主に、該毛嚢の活性により決定される。これらの活性は、周期性を有し、かつ基本的に、発育段階、中間段階、及び休止段階と称される、3つの段階を含む。該活性発育段階、又は成長段階は、数年間持続し、その間に該髪が、長く成長し、次の非常に短く、かつ一時的な中間、又は退行段階は、数週間で終わり、かつ次いで休止段階として知られている、休止期は、数ヶ月で終わる。該休止期の終わりに、該髪は抜け落ち、かつ他の周期が再び始まる。従って、該頭の髪は、絶え間なく再生され、かつ約150,000の毛を含む、頭の髪は、各瞬間で、その約10%が休止期であり、かつ従って、2〜3月で置き換わるであろう。
【0003】
かなりの数のケースにおいて、早期の脱毛は、遺伝学的に、該状況になりやすい対象者に起きる。脱毛は、特にヒトに影響を及ぼし、かつ、さらに、その性質上、特に、男性ホルモン性である。また、脱毛は、男性ホルモン性脱毛症、あるいはアンドロゲン-遺伝的脱毛症(androgeno-genetic alopecia)(AGA)のことを言う。
アンドロゲンと脱毛との間の関連性のために、ほとんどの脱毛治療法は、アンドロゲン作用を干渉するように、又はホルモン治療の幾つかの形態を含むように設計される。脱毛治療法は存在するが、これらの治療法は、多くの個人に効果的ではなく、かつ幾らかの場合において、悩む人の特定の性別に対してのみ利用することができる。
【0004】
例えば、米国特許第5,571,817号;第5,670,643号、及び第6,124,362号は、フィネステライド(finesteride)として一般的に知られている、17β-N-tブチルカルバモイル-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オンの組成物、並びに製造、及び使用方法を開示している。フィネステライドのような化合物の有効性は、アンドロゲン媒介脱毛に関与する様々なタンパク質の作用を阻害する、これらの能力に依存する。フィネステライドは、商品名プロペシアの下に、商業的に流通しており、かつテストステロン-5α-レダクターゼ阻害剤である。5α-レダクターゼは、テストステロンをジヒドロキシテストステロン(DHT)に変換する酵素である。従って、フィネステライドは、DHTの量を減らす。フィネステライドは、女性に対して効果が低いことが報告されており、かつ妊娠女性が使用した場合、潜在的に深刻な出生異常を引き起こすことがあり得る。
【0005】
他の周知の脱毛治療法は、ミノキシジル(minoxidil)として公知の化合物を使う。米国特許第4,596,812号は、男性型はげ頭症を治療する、ミノキシジル(6-アミノ-1,2-ジヒドロ-1-ヒドロキシ-2-イミノ-4-ピペロジノピリミジン)を使う方法を開示している。ミノキシジルは、高血圧の治療用に開発された、血管拡張剤である。ミノキシジルは、所望の領域に、血液の輸送を増やし、発毛を増進させると考えられる。すべての個人が、ミノキシジルに応答するとは限らず、かつ応答する個人は、効果を持続するため、生涯治療適用を必要とする。さらに、ミノキシジルは、かゆみ、及び頭皮の赤熱状態を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、男性、及び女性、双方に対して、脱毛を含むアンドロゲン関連疾患に対する、新しく、かつ効果的な治療法が必要である。
また、脱毛防止、又は発毛誘発を含む、新しく、かつ効果的な脱毛治療用組成物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要約)
本開示の態様は、阻害性核酸、例えば、小阻害性リボ核酸(siRNA)の組成物、及び使用方法に向けられ、宿主細胞、例えば、宿主の有毛細胞中の該アンドロゲンシグナル伝達経路を、調節、操作、抑制、阻害、干渉、又はブロックすることに向けられている。本開示の他の態様は、該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質の発現を、下方制御することにより、該アンドロゲンシグナル伝達経路を干渉する、組成物、及び方法を提供する。該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質をコードしている、典型的な遺伝子標的には、制限はないが、下記のものがある:5-αレダクターゼのアイソザイムI、及びII、該アンドロゲン受容体、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼである。幾つかの態様において、該阻害性核酸、例えばsiRNAは、該標的遺伝子から転写されるmRNAの翻訳を防止し、低減し、又は阻害することにより、標的遺伝子の発現に干渉する。
【0008】
本開示の他の態様において、宿主、又は宿主細胞内のアンドロゲンの感受性を下げることにより、アンドロゲン関連疾患を治療する組成物、及び方法を提供する。該アンドロゲンに対する細胞の感受性を、該アンドロゲンシグナル伝達経路を干渉、又は遮断するsiRNAを用いて、例えば、該アンドロゲンシグナル伝達カスケードの全タンパク質の発現、又は機能を干渉、又はブロックすることにより、低下、又は制御することができる。典型的な態様は、例えば、該アンドロゲンシグナル伝達経路を操作し、有毛細胞の細胞周期を調節するsiRNAを用いた、脱毛の治療方法、及び組成物を提供する。
【0009】
また、本開示の他の態様は、有毛細胞の該アンドロゲンシグナル伝達経路を干渉、又は阻害することにより、哺乳動物、例えばヒトの脱毛を治療する組成物、及び方法を提供する。例えば、siRNAを用いて、DHT産生に関与する酵素、例えば5-αレダクターゼを標的とするsiRNAによって、宿主、又は宿主細胞内のDHT産生を阻害し、又は低下させることができる。5α-レダクターゼをコードしているmRNAを、対応するsiRNAと接触させることにより、該mRNAの翻訳に干渉し、かつそれによって、該5α-レダクターゼの発現を干渉する。幾つかの態様は、該標的mRNAの分解、通常、酵素分解を誘発するsiRNAを提供する。該少ない5α-レダクターゼ、該少ないDHT、又はDHTを製造する能力。DHTの製造を低減させ、又は阻害することにより、発毛周期、及び再生を、脱毛の減少、又は発毛促進となるように、操作することができる。従って、本開示の他の態様は、男性ホルモン性脱毛において、アンドロゲン作用を媒介するタンパク質の製造を阻害する組成物、及び方法に向けられている。典型的なタンパク質には、下記に対する該遺伝子によりコードされている、これらのタンパク質を含む:5-αレダクターゼのアイソザイムI、及びIIの双方、該アンドロゲン受容体、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼである。
【0010】
さらに、本開示の他の態様は、宿主細胞の該アンドロゲン受容体シグナル伝達経路を操作する組成物、及び方法を提供し、脱毛を減らし、阻害し、又は防止し、又は発毛を誘発する。一態様において、阻害性核酸、一般的に、リボ核酸、及びさらに一般的には、二本鎖リボ核酸を提供し、これらは、該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質の発現を干渉し、阻害し、又は遮断する。特に、阻害性リボ核酸(iRNA)、又は小阻害性リボ核酸(siRNA)は、アンドロゲンシグナル伝達経路に関与する、又は関連するタンパク質をコードしている核酸の少なくとも一部分の配列を含み、これらのタンパク質の発現を阻害、又は干渉することが明らかにされている。該活性siRNAを、約10個〜約25個のヌクレオチド長さとすることができ、一方、長いRNAを使用し、それを処理し、通常、約10個〜約25個のヌクレオチド長さの小さいサイズのsiRNAを得ることができることが、理解されるであろう。
【0011】
従って、本開示の態様は、男性のパターン脱毛、尋常性座瘡、脂漏症、及び女性の多毛を含む、男性ホルモン性脱毛症の高アンドロゲン状態を、局所投与により処置する方法、及びすべての上述の状態、並びに前立腺肥大を、本開示の新規化合物の全身投与により処置する方法を記載する。一方法において、siRNAを、宿主に投与し、該siRNAが、該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与する遺伝子の発現を遮断し、又は干渉し、DHT産生、又はアンドロゲン受容体発現の減少、又は阻害を生じる。
さらに、他の態様は、siRNAのスクリーニング方法を提供し、例えば、有毛細胞中の該アンドロゲンシグナル伝達経路を、阻害し、干渉し、あるいは遮断するsiRNAを同定する。該スクリーニングを、インビトロにおいて、細胞株を用いて行うことができる。代わりに、該スクリーニング方法を用いて、siRNAを模倣した、又はシナジーを与えた化合物を同定することができる。
【0012】
さらに、他の態様は、該アンドロゲンシグナル伝達経路を干渉し、又は阻害するsiRNAをコードしているベクター、通常、ウイルスベクターを提供する。該ベクターを、直接的に、又は間接的に、二本鎖siRNAを発現するように設計することができ、該siRNAは、該標的mRNA核酸配列、通常、該アンドロゲンシグナル伝達経路中のタンパク質をコードしているmRNAの少なくとも一部分を含む。あるいは、該ベクターは、特異的切断部位を含む核酸配列をコードし得る。該ベクターは、少なくとも約30個未満のヌクレオチド長さの阻害性核酸を製造するように切断することができる核酸を発現する。該発現した阻害性核酸は、一般的に、RNAであり、かつ、さらに一般的には、二本鎖RNAである。典型的なベクターは、ヒトRNAポリメラーゼIIIに対するプロモーターを含み、5つのT残基で構成された終結シグナルの近くの、該3'末端の側面に位置する。開始、及び終止シグナルの間は、21-ヌクレオチドDNA鋳型であり、かつその挿入された繰返しは、短い非相同的ヌクレオチドスペーサーにより分離した。
【0013】
また、本開示は、該アンドロゲンシグナル伝達経路中のタンパク質、例えば、下記タンパク質をコードしているmRNAを標的としたsiRNAを含む細胞を含む: 5-αレダクターゼのアイソザイムI、及びII、該アンドロゲン受容体、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼである。あるいは、該細胞は、ベクターを含み、該ベクターは、発現した場合に該アンドロゲンシグナル伝達経路中のタンパク質発現を干渉し、又は阻害するsiRNAを産生する。プロモーターのような機能要素、及び他の調節要素を含む、適切なベクターは、当業者にとって公知である。代表的なsiRNAの配列を、表1において提供する。
本開示の該阻害性核酸を、局所、経口、静脈内投与を含む、従来の方法で投与するために、配剤することができる。本開示の該化合物を含む、これらの局所用医薬組成物は、通常、約0.1%〜15%、好ましくは、約0.1〜5%、及びさらに好ましくは、約0.1%〜2%の、活性のある化合物含み、医薬として許容し得るキャリアと混合する。
本開示の該組成物を、すべての形態において、髪、及び頭皮への投与に適切な形態にすることができ、特に、水、アルコール、又は水-アルコール製剤の形態、例えば、溶液、ゲル、クリーム、エマルジョン、又は分散液の形態がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
(定義)
他に示さない限り、本明細書、及び請求項で使用した下記用語は、下記で論じた意味を有する。
該用語"生物"は、少なくとも一つの細胞から構成された、すべての生存する実体のことを言う。生存する生物は、例えば、単純な単一真核細胞、又はヒトを含む、複雑な哺乳動物であり得る。
ここで使用した、該用語"治療的有効量"は、治療される障害の幾らか程度の一以上の症状を取り除くであろう、投与される該化合物の量のことを言う。脱毛を参照すると、治療的有効量とは、(1)脱毛の量を減らす、(2)アンドロゲン感受性を阻害する(幾らか程度を遅くする、好ましくは止める)、(3)発毛を誘発する、及び/又は(4)制限はないが、脱毛を含む該アンドロゲン関連疾患に関連した、幾らかの程度の一以上の症状を軽減する(好ましくは、排除される。)効果のある量のことを言う。
"医薬として許容し得る塩"は、遊離塩基の生物学的な有効性、及び特性を保持し、かつ下記のような無機、又は有機酸と反応することにより得られる、これらの塩のことを言う:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、及びクエン酸などである。
【0015】
"医薬組成物"は、ここに記載した、一以上の該化合物、又はその医薬として許容し得る塩と、生理的に許容し得るキャリア、又は賦形剤のような他の化学的成分との混合物のことを言う。医薬組成物の目的は、生物に対して、化合物の投与を容易にすることである。
ここで使用した、"医薬として許容し得るキャリア"は、生物に対して、有効な刺激を生じず、かつ該投与化合物の生物学的活性、及び特性がなくならない、キャリア、又は希釈剤のことを言う。
"賦形剤"は、化合物の投与を、さらに容易にするために、医薬組成物に加える不活性物質のことを言う。制限はないが、賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、及びデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールがある。
疾患の"治療(Treating)"、又は"治療(treatment)"は、該疾患にかかり得る動物において生じる疾患(まだ、該疾患の症状を経験せず、又は示していない)を抑制し(予防的治療)、該疾患を阻害し(その発達を遅くする、又は止める)、該疾患症状、又は副作用の苦痛を抑制し(緩和治療)、かつ該疾患を軽減することを含む。癌に関して、これらの用語は、単に癌に罹患した個人の予想寿命を、延ばし、又は該疾患の一以上の症状を、軽減することを意味する。
【0016】
該用語"プロドラッグ"は、核酸、及びタンパク質を含む薬剤のことを言い、インビボにおいて、生物学的活性形態に変換される。多くの場合、プロドラッグは、有用であり、その理由は、幾つかの状況において、該親化合物よりも投与を容易にすることができるためである。例えば、これらは、経口投与において、生物的に利用できるが、一方、該親化合物はできない。また、該プロドラッグは、該親ドラッグよりも、医薬組成物において、改善された溶解性を有し得る。プロドラッグを、酵素処理、及び代謝的加水分解を含む、様々な機序により、該親ドラッグに変換することができる。Harper, N.J.らの論文、「Jucker, ed.における、ドラッグラテンティエイション(Drug Latentiation in Jucker, ed.)」、Progress in Drug Research, 4: 221-294 (1962); Morozowichらの論文、「E. B. Roche ed.における、プロドラッグ設計に対する、物理的有機成分の応用(Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design in E. B. Roche ed.)」、Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and AnalogsAphA; Acad. Pharm. Sci. (1977); E. B. Roche, ed.の論文、「薬剤設計、理論、及び応用における、薬剤における生物転換性キャリア(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application)」、AphA (1977); H. Bundgaard, ed.の論文、「プロドラッグの設計(Design of prodrugs)」、Elsevier (1985); Wangらの論文、「ペプチドドラッグの改良された輸送に対するプロドラッグアプローチ(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug)」、Curr. Pharm. Design. 5(4): 265-287 (1999); Paulettiらの論文、「ペプチド生物学的利用能の改良:ペプチド模倣、及びプロドラッグ戦略(Improvement in peptide bioavailability: Peptidomimetics and prodrug Strategies)」、Adv. Drug. Delivery Rev. 27: 235-256 (1997); Mizenらの論文、「β-ラクタム抗生物質の経口輸送用プロドラッグとしてのエステルの使用(The Use of Esters as prodrugs for Oral Delivery ofβ-Lactam antibiotics)」、Pharm. Biotech. 11, 345-365 (1998); Gaignaultらの論文、「プロドラッグ、及び生物前駆体の設計I キャリアプロドラッグ(Designing prodrugs and Bioprecursors I. Carrier prodrugs)」、Pract. Med. Chem. 671-696 (1996);M. Asgharnejadの論文、「G. L. Amidon, P. I. Lee、及びE. M. Topp, Eds.における、プロドラッグを介した、経口ドラッグ輸送の改良(Improving Oral Drug Transport Via prodrugs, in G. L. Amidon, P. I. Lee, and E. M. Topp, Eds., Transport Processes in Pharmaceutical Systems)」、Marcell Dekker, p. 185-218 (2000); Balantらの論文、「異なる経路の投与を介した、ドラッグ吸収改良用プロドラッグ(Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration)」、Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet., 15(2): 143-53 (1990); Balimane、及びSinkoの論文、「ヌクレオシド類似体の経口吸収における、複数のトランスポータの改良(Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues)」、Adv. Drug Delivery Rev., 39(1-3): 183-209 (1999); Browneの論文、「フォスフェニトイン(セレビックス)(Fosphenytoin (Cerebyx))」、Clin. Neuropharmacol. 20(1): 1-12 (1997); Bundgaardの論文、「ドラックの治療効果を改良する、ドラック成分の生物可逆誘導体化、及び適用(Bioreversible derivatization of drugs--principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs)」、Arch. Pharm. Chemi. 86(1): 1-39 (1979); H. Bundgaard, ed.の論文、「プロドラッグの設計(Design of prodrugs)」、New York: Elsevier (1985); Fleisherらの論文、「経口ドラッグ輸送の改良:プロドラッグの使用により克服された、溶解性の制限(Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs)」、Drug Delivery Rev. 19(2): 115-130 (1996); Fleisherらの論文、「腸内酵素標的による、改良された胃腸内吸収用プロドラッグの設計(Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting)」、Methods Enzymol., 112: 360-81 (1985); Farquhar Dらの論文、「生物学的にか逆なホスフェート-保護基(Biologically Reversible Phosphate-Protective Groups)」、J. Pharm. Sci., 72(3): 324-325 (1983); Han, H.K.らの論文、「ドラッグ輸送に最適な、標的プロドラッグ設計(Targeted prodrug design to optimize drug delivery)」、AAPS PharmSci., 2(1): E6 (2000); Sadzuka Y.の論文、「有効なプロドラッグリポソーム、及び活性代謝産物への変換(Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite)」、Cur.r Drug Metab., 1(1): 31-48 (2000); D.M. Lambertの論文、「プロドラッグキャリアとしての脂質の原理、及び応用(Rationale and applications of lipids as prodrug carriers)」、Eur. J. Pharm. Sci., 11 Suppl 2: S15-27 (2000); Wang, W.らの論文、「ペプチドドラッグの輸送を改良するためのプロドラッグアプローチ(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs)」、Curr. Pharm. Des., 5(4): 265-87 (1999)。
【0017】
ここで使用した該用語"局所的に活性な薬剤"は、宿主の適用(接触)部位で、薬理学的応答を誘発する、本開示の組成物のことを言う。
ここで使用した該用語"局所的"は、皮膚、及び粘膜細胞及び組織の表面に対して、本開示の組成物を適用することを言う。
ここで使用した該用語"表面"は、広い意味で使用される。一つの意味において、該用語は、生物、又は無生物(例えば、ビヒクル、構築物、及び食品加工設備など)の最も外側の境界のことを言い、本開示の組成物で接触され得る(例えば、動物に対して:皮膚、髪、及び毛皮など、及び植物に対して:葉、茎、花の部分、及び子実体など)。他の意味において、また、該用語は、動物、及び植物の内膜、及び表面のことを言い(例えば、動物に対して:消化官、及び脈管組織など、及び植物に対して:維管束組織など)、多くの経皮輸送経路すべてに、組成物を接触させることができる(例えば、注入、摂取、経皮輸送、及び吸入など)。
アンドロゲンシグナル伝達経路は、生理学的、及び/又は生物学的な系列の事象、及びそこに(該結合を介して、該アンドロゲンの産生から、該アンドロゲン受容体に、及び該アンドロゲン受容体の次の結合、及び活性化に、及び遺伝子転写の誘発を生じる補因子に)関与するタンパク質、及び遺伝子を意味する。
【0018】
該用語"核酸"は、一連の少なくとも2つの塩基-糖-ホスフェートの組合せのを示す技術用語である。裸のDNA輸送にとって、ポリヌクレオチドは、120個を超えるモノマー単位を含み、オリゴヌクレオチドと区別する必要がある。しかし、一本、又は二本鎖、どちらかのRNA、RNAi、及びsiRNAを輸送する目的にとって、ポリヌクレオチドは、2以上のモノマー単位を含む。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。該用語は、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部分、又はウイルスから誘導される遺伝物質の形態における、デオキシリボ核酸(DNA)、及びリボ核酸(RNA)を含む。アンチセンスは、DNA、及び/又はRNAの機能を干渉するポリヌクレオチドである。該用語核酸は、一連の少なくとも2つの塩基-糖-ホスフェートの組合せをいう。天然の核酸は、リン酸骨格を有し、人工的な核酸は、該同一の塩基を含む、他の種類の骨格を含むことができる。ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。該用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、及びリボ核酸(RNA)を含む。RNAは、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、RNAi、siRNA、及びリボザイムの形態であり得る。また、該用語は、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオネート、及び天然核酸の該リン酸骨格の他の変種を含む。
【0019】
該用語"siRNA"は、小阻害性リボ核酸を意味する。該siRNAは、通常、30個未満のヌクレオチド長さであり、かつ一本、又は二本鎖とすることができる。該リボヌクレオチドを、天然、又は人工的とすることができ、かつ化学的に修飾することができる。長いsiRNAは、切断部位を含むことができ、酵素的に、又は化学的に切断し、30個未満、通常21〜23個のヌクレオチド長さを有するsiRNAを製造することができる。siRNAは、対応する標的mRNAと配列相同性を共有する。該配列相同性を、100パーセント以下とすることができる。しかし、効果に対して十分な量は、該siRNAと該標的mRNAとの間に配列特異的な関連性がある。典型的なsiRNAは、該インターフェロンシグナル伝達経路に活性がない。
該用語"阻害性核酸"とは、mRNAの翻訳を干渉、又は遮断する、RNA、DNA、又はそれらの組合せのことを言う。阻害性核酸は、一本、又は二本鎖とすることができる。該阻害性核酸のヌクレオチドを、化学的に修飾したもの、天然のもの、又は人工的なものとすることができる。
【0020】
(実施態様)
本開示の実施態様は、部分的に、宿主、例えば哺乳動物の脱毛を、siRNAのような阻害性核酸、又はその塩又はプロドラッグを含む組成物を用いて、防止し、低減し、又は阻害することに対応する。本開示のsiRNAは、該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質をコードしているmRNAの翻訳を、阻害し、又は干渉するように設計される。幾つかの態様において、該siRNAは、標的mRNAの酵素的切断を誘発する。該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質は、制限はないが、下記タンパク質がある:5-αレダクターゼ、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼである。あるいは、また、本開示の態様は、例えば、siRNAのような阻害性核酸を含む組成物を用いて、発毛を誘発し、又は増加することに関連する。典型的なsiRNAの配列、及びこれらの標的を、表1に提供する。
【0021】
一実施態様において、宿主細胞、通常、有毛細胞内のアンドロゲン受容体の発現を、該有毛細胞とsiRNAとを接触させることにより、減少し、又は阻害する。本開示のsiRNAは、該標的mRNA、例えば、該アンドロゲン受容体をコードしているmRNAの少なくとも一部分の配列を含む。siRNAと標的mRNAとの間の配列相同性は、100パーセント以下であり、約50パーセントよりも大きく、かつ通常90パーセント以上である。siRNAと標的mRNAとの間の配列相同性の該パーセンテージは、細胞質内条件下で、該siRNAと該標的mRNAとの間の配列特異的な関連性を生じるのに十分な量である。
【0022】
(アンドロゲン関連脱毛の生理機能)
本開示の一つの典型的な実施態様は、生物のアンドロゲン関連脱毛を治療、又は抑制することに向けられている。例えば、阻害性核酸を用いて、脱毛を治療、又は防止し、該アンドロゲン受容体シグナル伝達経路を干渉し、又は遮断する。脱毛は、本質的に、上質な毛、及びその量の損失で、該周期の頻度において、先に促進される毛の再生の妨害が原因である。該頭髪が進行的に薄くなることは、いわゆる、"硬"毛が柔らかい段階に退行することにより生じる。領域は、特に、男性、及び女性のこめかみ、又は前頭部の膨らみに選択的に影響し、該頂上の広汎性脱毛が観察される。該用語脱毛は、一群の毛嚢の病気全体を含み、その最終的な意義は、該髪の部分的、又は全面的な永久損失である。
【0023】
従って、本開示は、脱毛、パターンはげ、又はアンドロゲン関連脱毛を含む、関連した男性、及び女性の脱毛の治療を含む。一実施態様において、阻害性核酸は、宿主細胞、例えば、有毛細胞内の該アンドロゲン受容体の発現を、下方制御し、阻害し、又は遮断することにより、脱毛を防止する。有毛細胞内の該アンドロゲン受容体を下方制御することにより、該有毛細胞は、アンドロゲンの対する感度を低下し、かつ該有毛細胞の細胞周期は、アンドロゲンに影響されなくなる。従って、本開示の他の実施態様は、阻害性核酸、例えば宿主有毛細胞内のアンドロゲン受容体の発現を阻害し、又は低減する、該アンドロゲン受容体に相同的なsiRNAにより、アンドロゲンに対する感度を低下した有毛細胞を提供する。当業者は、本開示が、直接的、又は間接的な、該アンドロゲンシグナル伝達経路中のすべてのタンパク質の発現、又は機能を遮断し、又は干渉するように設計したsiRNAを含み、生物の脱毛を治療、抑制、又は減少することを認識するであろう。
【0024】
(阻害性核酸)
本開示の特定の実施態様の阻害性核酸は、該アンドロゲンシグナル伝達経路に関与するタンパク質の発現を、阻害し、又は干渉することに関連する。ここで開示した該阻害性核酸は、小阻害性リボ核酸(siRNA)を含み、一般的に、30個未満のヌクレオチド長さであり、さらに一般的に、21〜23個のヌクレオチド長さであり、かつ一本鎖、又は二本鎖であり得る。二本鎖siRNAの一本鎖は、標的mRNAに相補的な、少なくとも一部分の配列を含む。該siRNAのリボ核酸は、天然、又は人工的とすることができ、かつ化学的に修飾することができる。長いsiRNAは、切断部位を含むことができ、酵素的に、又は化学的に切断し、30個未満のヌクレオチド長さを有するsiRNAを製造することができる。siRNAは、対応する標的mRNAと配列相同性を共有する。該siRNAのリン酸骨格を、酵素的分解に耐性を有するように、化学的に修飾することができる。該配列相同性を、約100パーセント以下とすることができる。しかし、効果に対して十分な量は、該siRNAと該標的mRNAとの間に配列特異的な関連性がある。
【0025】
核酸、特にRNAは、"RNA干渉"、又はRNAiと称される、転写後遺伝子サイレンシングの形態に関与することが知られている。最初に植物で観察され、特定のmRNA配列の発現の減少が、キイロショウジョウバエ、及び線虫において、該mRNAの配列を模造した二本鎖RNA(dsRNA)分子の導入により誘発されることが発見された。該効果は、これらの実験モデル生物において、強く、かつ極めて長寿命であり、通常、処置した成熟検体のF1子孫にまで及ぶことが発見された。さらに、該効果は、精巧に、配列特異的であることが発見された;該dsRNAと該標的mRNAとの間の一様な少数の塩基対の不一致は、該サイレンシングを実質的に撤廃した。RNAiは、これらの非哺乳動物系において、実験的に使用されており、対象の特定遺伝子の一時的なサイレンシングを生じる。特に、これらは、さらに従来の遺伝子ノックアウト方法に影響されない(例えば、これらは、胎児致死性があり、かつ従って該成熟動物において研究することができない。)。
【0026】
dsRNAが遺伝子サイレンシングを誘導し得る、最初の証拠は、線虫シノラブディスエレガンスにおける研究によってもたらされた。研究者Guo、及びKemphuesは、アンチセンスRNAを用いて、その機能を評価するために、該par-1遺伝子の発現を停止させた。予想通り、該アンチセンスRNAの注入は、par-1の発現を遮断した。しかし、奇妙なことに、該センス鎖を注入したコントロールも、遮断された。この結果は、三年後まで、難問であった。次に、初めて、Fire、及びMelloが、dsRNA−センス、及びアンチセンス鎖、双方の混合物を、C.エレガンスに注入した。この注入は、該センス、又は該アンチセンス鎖のみの注入よりも、さらに効果的なサイレンシングを生じた。1細胞につき、ごくわずかのdsRNA分子の注入で、該相同的遺伝子の発現を完全にサイレンシングする。さらに、該虫の腸内へのdsRNAの注入により、該虫だけでなく、その第一世代子孫にまで、遺伝子サイレンシングが生じた。RNAiの有効性は、Fire、及びTimmonsを奮起し、該C.エレガンスunc-22遺伝子に相同的なdsRNAを発現するように操作した、摂食線虫バクテリアで試された。意外にも、これらの虫は、unc-22ヌル-様表現型(null-like phenotype)を発現した。さらに、研究は、dsRNA中の浸漬した虫が、サイレンシングを誘発し得ることを示した。dsRNAに曝すことによる、これらの戦略は、多くの線虫を、大規模スクリーニングし、RNAi-欠損C.エレガンス変異体を選択することができ、かつこの生物の多くの遺伝子ノックアウト研究を可能にする。従って、本開示の一実施態様は、センス鎖、及びアンチセンス鎖を含むsiRNAを提供し、該センス鎖は、標的mRNAの少なくとも一部分の配列を含む。
【0027】
また、RNAiは、キイロショウジョウバエにおいても観察されている。酵母をdsRNAを生じるように操作し、かつ次いでショウジョウバエに供給した戦略は、失敗に終ったが、ショウジョウバエの胚に、dsRNAを微量注入することにより、サイレンシングを誘発した。また、サイレンシングは、dsRNAを、ショウジョウバエの胚に"注入"する、微粒子銃技術により、又はサイレンシングされるべき該遺伝子の逆方向反復を含むDNAを運ぶように操作したハエにより、誘発され得る。過去数年に渡って、これらのRNAi戦略は、様々な機能損失表現型の特性を示すように、ショウジョウバエ生物、胚のライセート、及び細胞の逆遺伝子手段として使用されている。Zamore、及び同僚は、ショウジョウバエの胚のライセートに加えられたdsRNAは、21〜23個のヌクレオチド種に処理されることを発見した。また、彼らは、相同的内在性mRNAが、該導入したdsRNAに対応する領域でのみ切断され、かつ該切断が、21〜23個のヌクレオチド間隔で生じることを発見した。
【0028】
RNAiの現在のモデルは、広範囲の“開始”、及び“エフェクター”段階内に阻害処理を分割する。該開始段階において、投入dsRNAを、21〜23個のヌクレオチドの小阻害性RNA(siRNA)に消化される(これは、"ガイドRNA(guide RNA)"とも称されている)。RNアーゼIII群のdsRNA-特異的リボヌクレアーゼのメンバーである酵素ディザー(Dicer)が、前進的な方法のATP-依存において、dsRNAを前進的に切断した場合、siRNAが製造されることを、証拠が示している。連続的な切断は、該RNAを、それぞれ、2-ヌクレオチド3’突出部を有する、19〜21bp二本鎖(siRNA)に分解する。本開示の阻害性核酸を、例えばインビボにおいて、酵素的に切断し、10〜約30ヌクレオチド、通常19〜約23ヌクレオチドのsiRNAを製造することができる。
【0029】
該エフェクター段階において、該siRNA二本鎖は、ヌクレアーゼ複合体に結合し、該RNA-誘導サイレンシング複合体、又はRISCとして知られている形態になる。該siRNA二本鎖のATP-依存性巻き戻しは、該RISCの活性に必須である。次いで、該活性RISCは、塩基対相互作用相同的転写物を標的とし、かつ該siRNAの該3’末端から、mRNAの〜12ヌクレオチドを切断する。切断機序は、このデータでは明らかではないが、研究は、各RISCが、ディザー(Dicer)とは異なるようである、単一siRNA、及びRNアーゼを含むことを示す。幾つかの生物において、RNAiの顕著な有効性のため、また、該RNAi経路の増幅段階が提案されている。増幅は、さらにsiRNAを生じるであろう該投入dsRNAのコピーにより、又は該siRNA自身の複製により生じ得る。代わりに、又は加えて、増幅は、該RISCの複数のターンオーバーにより、影響され得る。一実施態様は、ここで記載した該siRNAのインビボにおける増幅を含む。さらに、ここに記載した該siRNAは、付加的なタンパク質、及び/又は補因子とともに複合体を形成し、標的mRNAを酵素的に切断することができる。
【0030】
(アンドロゲン、及びアンドロゲン受容体)
アンドロゲン、特に、テストステロン(T)、及びジヒドロキシテストステロン(DHT)は、AGAを含む脱毛に介在する。本開示は、アンドロゲン受容体、又は5αレダクターゼの発現を阻害するsiRNAを提供し、それによって、脱毛を抑制し、又は減少し、又は発毛を刺激する。該頭皮内の有毛細胞により取り上げられるテストステロンは、該酵素5-αレダクターゼにより、DHTに変換される。本開示のsiRNAを用いて、5-αレダクターゼの発現を阻害することにより、DHTの水準を低下させる。一実施態様において、DHTを、ここに記載した該阻害性核酸を用いて、局所的に、又は全身的に低下させることができる。
【0031】
DHTは、その受容体である該アンドロゲン受容体(AR)に結合し、核遺伝子発現の変更を行う。該ARは、該核、又は細胞質に存在する、細胞内受容体であり、かつ該ステロイドホルモン受容体群のメンバーである。アンドロゲンに応答する、アンドロゲン応答性遺伝子の核遺伝子発現の変化は、該有毛細胞の連続的な毛周期の発育持続時間を、進行的に短くし、毛の再生の減少、及び脱毛を引き起こす。
通常、該ARは、熱ショックタンパク質90に結合し、該ARの不活性状態、及び該ARホルモン結合親和性を維持する(Fang, Y.らの論文、J Biol Chem., 271 (45), 28697-28702 (1996))。しかし、結合時に、阻害性熱ショックタンパク質を、該アンドロゲン受容体から放出し、直接のアンドロゲン作用が開始される。次いで、該ARは、リン酸化され、かつトランスロケーション、及び二量体化に必要な、構造変化を生じる(Grino, P.B.らの論文、Endocrinol., 120, 1914-1920 (1987))。野生型の受容体において、このリガンド結合は、転写活性に必須であるが、リガンド結合性ドメインを除去した、インビボにおいて、それは、転写活性を有している。これは、該非リガンド結合性ドメインが、該リガンド結合性ドメインを有する該未結合受容体の構造上の制約のために、事実上、受容体作用のリプレッサーであることを示し得る(Jenster, G.らの論文、Mol Endocrinol., 5, 1396-1404 (1991))。
【0032】
一度、該核において(そこに直接結合することにより、又はトランスロケーションにより)、該リン酸化受容体を、二量化し、かつDNAアンドロゲン応答物質(ARE)に結合させる。該ホルモン応答物質は、この群の他のホルモン受容体により結合しており、転写開始に応答する15塩基対配列である。結合するとすぐに、また、他の転写制御タンパク質、又は活性化補助因子が、該AR-ARE複合体を結合し、該調節遺伝子のプロモーターを安定化し得る(Shibata, H.らの論文、Recent Progress Horm Research., 52, 141-164 (1997); Kang, H.Y.らの論文、J. Biol. Chem., 274 (13), 8570-8576 (1999))。このような活性化補助因子は、ARA 54、ARA 55、ARA 70、ARA 160のようなタンパク質を含む(Yeh, S.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 93 (11), 5517-5521 (1996); Hsiao, P.W.らの論文、J. Biol. Chem., 32, 22373-22379 (1999))。このような補因子の結合は、最終的に、転写速度の調節を行う。従って、一実施態様は、該アンドロゲン受容体、例えば該AR-AREと関連したタンパク質をコードしている標的mRNAの少なくとも一部分の配列を含む、阻害性核酸、例えばsiRNAを提供する。これらのsiRNAは、該AR関連タンパク質の発現を阻害し、又は干渉することができ、かつそれによって、該ARの転写活性を阻害し、又は干渉する。典型的なAR関連タンパク質は、制限はないが、ARA 54、ARA 55、ARA 70、ARA 160がある。次いで、アンドロゲン依存性転写から得られたmRNAは、処理され、かつリボソームに移動し、そこで、タンパク質を翻訳し、細胞機能を変更することができる。従って、本開示の典型的な実施態様は、アンドロゲン依存性転写由来のmRNAの翻訳を阻害し、又は干渉するsiRNAを含む。
【0033】
幾つかの組織において、該ARを介した転写活性のリガンド-非依存性依存性活性の証拠がある。該リガンド結合ドメインを除去した非リガンド受容体は、活性を有し得る。これは、リガンド結合の非存在下に、活性を示す。さらに、増殖因子(インスリン様-増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、及び上皮増殖因子)、並びにタンパク質キナーゼA活性化因子は、リガンド結合の非存在下で、転写活性ARを誘発することができる。これらのリガンド非依存性転写活性化因子の幾つかは、該ARリン酸化状態に影響を与えるように作用し得る。従って、一実施態様は、脱毛のようなアンドロゲン関連疾患を治療するために、ARのリガンド非依存性転写活性化因子、例えば増殖因子、及びタンパク質キナーゼA活性化因子を標的としたsiRNAを開示する。
【0034】
リガンド結合、例えばDHTは、該ARのタンパク質構造を変更し、該ホルモンシグナルを増幅し、かつアンドロゲン応答性遺伝子の転写開始を媒介することができる、活性化補助因子分子の結合を可能にする。また、該ARは、分子内相互作用を生じ、補因子とともに、その活性、及び不活性化に影響を与える。該ARタンパク質は、他のステロイドホルモン受容体のモジュラー構造に類似した、幾つかのドメイン、又はモチーフを有する。該アンドロゲン受容体の2つの特性がある。第一、及び支配的な形態は、910〜919個のアミノ酸長さの110〜114kDaのタンパク質である。第二は、約720〜729個のアミノ酸長さのより小さい87kDaのタンパク質であり、これは、変化する組織中にある、該検出できるアンドロゲン受容体の約4〜26%のみで構成されている。
【0035】
(5-αレダクターゼ)
また、本開示の典型的なsiRNAは、アンドロゲンの製造、又は修飾を媒介する酵素、例えば、5-αレダクターゼを標的とし得る。該酵素5-αレダクターゼは、テストステロンをDHTに変換し、かつDHTは、AGAを促進する、最も強力なものである。少なくとも2つの5-αレダクターゼアイソザイム、I型、及びII型がある。これらは、該体の異なる領域で活性がある。しかし、これら、双方ともDHTを製造し、該体中を循環し、かつDHT産生組織以外の組織に効果を示す。II型5-αレダクターゼは、最も活性のある酵素形態である。人間の全DHTの60%〜70%を製造する。I型は、DHTの残りの30%〜40%を製造する。AGAの治療を促進する、5-αレダクターゼ阻害剤は、理想的に、最大効果を有するように、両方の種類のアイソザイムをブロックする。フィナステリドは、II型5-αレダクターゼ阻害剤であり、DHT水準を最大70%低下させる。しかし、フィネステライドの使用は、特定の個人において、リビドー低下、テラタゲニック効果(teratagenic effect)、及び他の副作用に関連しており、従って、AGAを治療する、さらに特異的で、安全なアプローチが促される。
【0036】
(現存する治療法)
全アンドロゲン-応答性遺伝子は、T、又はDHTに結合したアンドロゲン受容体(AR)により活性化され、かつARは、TよりもDHTに結合した場合に、さらに転写活性があると考えられている。従って、脱毛を含む、アンドロゲン関連疾患を治療する方法は、抗アンドロゲンを含む。本開示は、ここに開示した該阻害性核酸を、単独で、又は現在の脱毛治療と組合せて用いることにより、脱毛、特にアンドロゲン関連脱毛の治療方法を含む。例えば、現在利用できる2種類の抗アンドロゲンは、ステロイドの誘導体であり、そのすべては、混合したアゴニスト、及びアンタゴニスト活性、及びフルタミド種の該純粋非-ステロイド性抗-アンドロゲン、及びその誘導体を有する。フルタミドは、男性ホルモンテストステロンに類似した構造を有する。それは、細胞表面上の該受容体に対して、テストステロンの結合をブロックし、かつ抑制する。該非-ステロイド性フルタミド、及びその誘導体は、アゴニスト、又はすべての他のホルモン活性を与えることなしに、純粋抗-アンドロゲン活性を示す。フルタミド、及びその誘導体、カソデックス(Casodex)、及びアナンドロン(Anandron)は、前立腺癌の治療において、高度に効果的である。
【0037】
ステロイド構造を有する、典型的な抗-アンドロゲンは、制限はないが、(17 アルファ-アセトキシ-6-クロロ-2-オキサ-4,6-プレグナジエン-3,20-ジオン)がある。この化合物は、アンドロゲン受容体をブロックし、かつこの方法において、該核アンドロゲン受容体断片を減少することにより、5-αジヒドロテストステロン(5-α-DHT)、及びテストステロン受容体活性を阻害する。ステロイド性ブロック剤の代表例は、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、トリメチルトリエノロン(trimethyltrienolone) (Roussel Uclaf (RU2956と命名)から利用可能)、カンレノン、及びカンレイ酸がある。適切な非-ステロイド性ブロック剤の例は、Schering Corpから入手可能な、フルタミド(α,α,α.-トリフルオロ-2-メチル-4'-ニトロ-m-プロピオノトルイジド)、及びヒドロキシ-フルタミド(α,α,α.-トリフルオロ-2-メチル-4'-ニトロ-m-ラクトルイジド)、及びRoussel Uclafから利用可能な、RU 23908 (5,5-ジメチル-3-[4-ニトロ-3(トリフルオロメチル)フェニル]-2,4-イミダゾリジンジオン)、及びRU 22930 (5,6-ジヒドロ-2-メチル-4-[4-ニトロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-2H-1,2,4-オキサジオジン-3-(4H)-オン)がある。
【0038】
RU 56187、及びRU 58841は、非-ステロイド性抗-アンドロゲンの付加的な例である。これらは、N-置換アリールチオヒダントインであり、かつアンドロゲン受容体をブロックすることにより、5α-ジヒドロテストステロン(5-α-DHT)、及びテストステロン受容体活性を阻害する。RU 58841、及びRU 56187は、比較的素早く血流から排除される。しかし、これらは、共通した代謝産物、該N-デスアルキル誘導体、RU 56279(また、抗-アンドロゲン)を形成し、さらにゆっくりと排除され、かつ一般的に有害な抗-アンドロゲン効果に応答する。
【0039】
脱毛を治療する他の化合物は、米国特許第6,451,777号に開示されており、その全体を引用により取り込んでおり、かつ制限はないが、ルパントリテルペン(lupane triterpenes)、ルパントリテルペンの誘導体、オレアナントリテルペン(oleanane triterpenes)の誘導体、ウレサントリテルペン(ursane triterpenes)の誘導体、及びそれらの塩、及び混合物がある。
脱毛の治療の付加的な治療薬剤を、本開示と組合わせて使用することができ、通常、約5%のミノキシジルを含む、ミノキシジル溶液を、通常、約5%のアゼライン酸と組合わせた配合物がある。アゼライン酸は、5-αレダクターゼの局所的に有効な阻害剤である。この配合物の他の部分は、該抗-催炎物質吉草酸ベタメタゾンである。さらに、レチノイン酸を、通常、約0.025%加えることができる。
【0040】
スピロノラクトンは、本開示で使用する、他の適切な第二治療薬剤である。スピロノラクトンは、高血圧症、及び体液貯留の治療に、長年使用されている薬剤である。その効果は、部分的にDHTをブロックし、かつ該頭皮上のその使用から全身的作用はない。スピロノラクトンは、強力な抗-アンドロゲンである。それは、毛嚢上の受容体部位に対して、DHTと競合する。
本開示の他の態様において、患者(すなわち、アンドロゲン-依存性状態に苦しむ患者)のホルモン治療の方法を提供し、患者の5-αレダクターゼをコードしている核酸を、阻害性核酸と接触させることを含み、5-αレダクターゼをコードしている該核酸に対して、阻害性RNA化合物を結合し、かつ脱毛のようなアンドロゲン-依存性状態に変化を生じるのに効果的な条件下で行う。本開示に従って治療され得るアンドロゲン-依存性状態は、高アンドロゲン状態に関連した、これらの状態を含む。
【0041】
(医薬組成物)
本開示の典型的な実施態様は、当業者に周知の処理により製造され得る医薬組成物を含み、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣化、粉化、乳化、カプセル化、包括、乾燥処理、又は噴霧乾燥の方法がある。さらに、特定の実施態様において、本開示の組成物を、園芸、又は農業の用途のために配合することができる。そのような配合物は、浸漬、噴霧、シードドレッシング(seed dressings)、茎注入、及び霧を含む。
【0042】
本開示の組成物を、液体、又は凍結乾燥、又は他の乾燥化製剤とすることができ、かつ様々な緩衝剤含量(例えば、トリス-HCl、アセテート(酢酸塩、又はエステル)、ホスフェート(リン酸塩、又はエステル))、pH、及びイオン強度の希釈剤、表面への吸収を抑制するアルブミン、又はゼラチンのような添加剤、ポリソルベート界面活性剤(例えば、TWEEN 20、TWEEN 40、TWEEN 60、及びTWEEN 80)、フェオキシポリエトキシエタノール界面活性剤(例えば、TRITON X-100、X-301、X-165、X-102、及びX-200、及びTYLOXAPOL) Pluronic F68、又はドデシル硫酸ナトリウムのような界面活性剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質、又は強壮改質剤(tonicity modifiers)(例えば、ラクトース、マンニトール)、該タンパク質に対する、ポリエチレングリコールのようなポリマーの共有結合、金属イオンを用いた錯体形成、又はポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル等のようなポリマー化合物の粒子製剤内、又は上、又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層、又は多相ベシクル、血球影、又はスフェロプラスト上への該金属イオンの組込みを含む。そのような組成物は、物理的状態、溶解性、安定性、インビボにおける放出速度、及びインビボにおけるクリアランス速度に影響を与えるであろう。放出制御、又は徐放性組成物は、親油性持続性薬剤(例えば、脂肪酸、ワックス、油)の配合を含む。
【0043】
本開示は、脱毛に関するアンドロゲン作用の阻害に適切な、医薬、及び治療組成物、及び適用において使用することができる配合物を意図する。このような組成物を、発毛、又は脱毛に関するタンパク質の発現を阻害し、該アンドロゲン受容体のシグナル伝達機序を干渉し、アンドロゲンの転位となる該形成を干渉し、又は発毛が増加するように使用することができる。
インビボ適用にとって、該組成物を、すべての効果的な医薬として許容し得る形態で、ヒト、及び動物対象を含む、毛を有する温血動物に投与することができる。通常、これは、基本的に、発熱物質、並びにヒト、又は動物に有害となり得る他の不純物を含まない組成物の調製を伴う。
本開示の他の実施態様は、ポリマー(例えば、ポロクサマー、又はポロキサミン)で被覆した、粒子状組成物を提供する。さらに、本開示の組成物の他の実施態様は、非経口、肺、経鼻、及び経口を含む、様々な投与経路のために、粒子状形態保護性被覆、プロテアーゼ阻害剤、又は浸透賦活薬を組込む。一実施態様において、該医薬組成物を、頬側に、直腸に、経膣的に、局所的に、経鼻的に、非経口的に、側癌性的に、粘膜的に(transmucosally)、経皮的に、筋肉内に、静脈内に、内皮に、皮下に、腹腔内に、脳室内に、脳内に、腫瘍内に、噴霧、又は活性組成物の輸送に有効な、すべての他の形態で投与することができる。
【0044】
局所投与にとって、該医薬として許容し得るキャリアは、液体、クリーム、泡、ローション、又はゲルの形態とすることができ、かつ、さらに、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、保湿剤、安定剤、界面活性剤、潤滑剤、防腐剤、徐放剤、及び微量の湿潤剤、金属イオン封鎖剤、染料、香料、及び局所投与用の医薬組成物に共通して使用される他の成分を含むことができる。
さらに、ここで使用した"医薬として許容し得るキャリア"は、当業者にとって、周知であり、かつ制限はないが、0.01〜0.1 M、及び好ましくは、0.05 Mリン酸緩衝液、又は0.8%生理食塩水を含む。非水溶性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射用有機エステルがある。水溶性キャリアには、水、アルコール/水溶液、エマルジョン、又は懸濁液があり、生理食塩水、及び緩衝化媒体を含む。
非経口的なビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンガーズデキストロース(Ringer's dextrose)、デキストロース、及び塩化ナトリウム、乳酸リンガーズ、又は不揮発性油がある。静脈内のビヒクルは、流動性、及び栄養素補充液、及びリンガーズデキストロースを基盤にしたもののような電解質補充液などがある。また、防腐剤、及び他の添加剤を、現在の、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、照合剤(collating agents)、及び不活性ガスなどとすることができる。
【0045】
放出制御、又は徐放性組成物は、親油性持続性薬剤(例えば、脂肪酸、ワックス、油)の配合を含む。また、本開示により理解されるものは、ポリマー(例えば、ポロクサマー、又はポロキサミン)で被覆された粒子状組成物、及び組織特異的受容体、リガンド、又は抗原に対応する抗体に結合し、又は組織特異的な受容体のリガンドに結合した化合物である。
経口、又は局所投与のために該エマルジョンを配合した、該組成物の錠剤、及び投与形態は、液体カプセル、及び坐剤を含む。経口投与用の固体投与形態において、該組成物を、一以上の実質的に不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトース、又はデンプンなど)と混合することができ、かつ、さらに、平滑剤、緩衝剤、腸溶コーティング、及び当業者にとって周知である他の成分を、含むことができる。
ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーのような水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、又はポリプロリンの共有結合により改質された化合物は、静脈内注射後の血液中において、該対応する未改質化合物よりも、実質的に長い半減期を示すことが知られている。また、このような改質により、該化合物の水溶液中の溶解性を増加し、凝集を排除し、該化合物の物理的、及び化学的安定性を向上させ、かつ該化合物の免疫原性、及び反応性を著しく低下させることができる。結果として、インビボにおける、所望の生物活性は、このようなポリマー-化合物外転の該投与により、該未改質化合物よりも小さい頻度、又は少ない投与量で達成され得る。
【0046】
また、他の実施態様において、該医薬組成物を、放出制御系に輸送することができる。例えば、該薬剤を、静脈内注射、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮貼布、リポソーム、又は他の投与様式で投与することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Seftonの論文、CRC Crit. Ref. Biomed., Eng., 14: 201 (1987); Buchwaldらの論文、Surgery, 88: 507 (1980); Saudekらの論文、N. Engl. J. Med., 321: 574 (1989))。他の実施態様において、高分子材料を使用することができる。また、他の実施態様において、放出制御系を、治療標的の近く、すなわち、該脳に配置することができ、従って、全身の一部分にのみを要求することができる。好ましくは、放出制御装置を、対象内の不適切な免疫活性化、又は腫瘍の部位の近くに導入することができる。他の放出制御系は、Langerらの論文、Science, 249:1527-1533 (1990)の概説で議論されている。
他の実施態様において、該組成物を、縫合糸、包帯、及びガーゼのような、吸収性物質に浸透させ、又は外科用の止め具、ジッパー、及び微生物感染を抑制する部位に該組成物を輸送するカテーテルのような、固相物質の表面上に被覆することができる。この種類の他の輸送系は、当業者にとって、既に明らかであろう。
【0047】
本開示に使用する、適切な油性ビヒクル、又は溶媒の例には、ひまわり油、又は魚肝油のような、植物、又は動物油がある。製剤は、乾燥、及び湿顆粒、双方として与えられ得る。非経口投与(皮下、静脈内、動脈内、又は筋肉内注射)にとって、該組成物、又は塩、エステル、及びN-オキシドなどのような、生理的に許容される誘導体を、必要に応じて、この目的に適した一般的な物質(例えば、可溶化剤、又は他の助剤)とともに、溶液、懸濁液、又はエマルジョンに変換することができる。例えば、界面活性剤、及び他の医薬として許容し得るアジュバントの添加、又は無添加の水、及び油のような無菌液体がある。油の例には、石油、動物、植物、又は合成物起源のものがあり、例えば、ピーナッツ油、大豆油、又は鉱物油がある。通常、水、生理食塩水、水溶性デキストロース、及び関連した糖液、及びプロピレングリコール、又はポリエチレングリコールのようなグリコール類は、特に注射剤用に好ましい液体キャリアである。
【0048】
さらに、所望ならば、該組成物は、湿潤剤、又は乳化剤、pH緩衝剤のような、微量の補助剤を含むことができ、該活性成分の有効性を向上させる。
活性成分を、中和した医薬として許容し得る塩の形態として、該組成物に配合することができる。医薬として許容し得る塩は、酸付加塩(ポリペプチド、又は抗体分子の遊離アミノ酸基で形成される)を含み、かつ例えば、塩酸、又はリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、及びマンデル酸などのような有機酸で形成される。また、遊離のカルボキシル基から形成される塩を、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄のような無機塩、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、及びプロカインのような有機塩基から誘導することができる。
【0049】
例えば、クリーム、ゲル、ドロップを用いる、体表面への局所投与にとって、該阻害性核酸、及びそこのプロドラッグ、又は塩、エステル、及びN-オキシドなどのような、これらの生理的に許容される誘導体を調製し、かつ医薬キャリア含有、又は未含有の生理的に許容され得る希釈剤中、溶液、懸濁液、又はエマルジョンとして塗布される。
他の実施態様において、該活性化合物を、ベシクル、特にリポソーム内に輸送することができる(Langerの論文、Science, 249: 1527-1533 (1990); Treatらの論文、「感染性疾患及びガンの治療におけるリポソーム(in Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」、Liss, N.Y., pp. 353-365 (1989)を参照。)。
ここで開示した該組成物の適切な塩は、医薬として許容し得る塩を含む。しかし、他の塩が、本開示の該化合物の、又はこれらの医薬として許容し得る塩の調製に有用であってもよい。本開示の該化合物の適切な医薬として許容し得る塩は、酸付加塩であり、例えば、本開示の化合物の溶液と、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸のような、医薬として許容し得る酸の溶液とを混合することにより形成される。
【0050】
(治療法の組合せ)
また、本開示の態様は、ここに記載した組成物、又はそのプロドラッグ、塩、又は誘導体を、上述の疾患、及び障害を治療する、他の治療薬剤と組合わせることができる。典型的な第二薬剤は、制限はないが、カルボン酸の亜鉛塩、サポニン、トリタペン、クラタエゴリック酸(crataegolic acid)、クラストロール(celastrol)、アシアチン酸、5-α-レダクターゼ阻害剤、1,4-メチル-4-アザステロイド、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、ミノキシジル、アゼライン酸、及びその誘導体、シクロスポリン、トリヨードチロニン、ジアゾキシド、及びカリウムチャネルオープナー、及びこれらの組合せがある。
【0051】
(投与量)
ここに開示した組成物を、治療的に許容し得る量で投与することができる。通常、治療的有効量とは、発毛を誘発し、又は脱毛を抑制するような、疾患の症状を、抑制、緩和、又は改善するのに有効な化合物量を意味する。ここに記載した組成物の治療的有効量を、約10 mg/m2〜400 mg/m2、好ましくは、50 mg/m2〜300 mg/m2、さらに好ましくは、100 mg/m2〜220 mg/m2、さらに好ましくは、195 mg/m2とすることができる。本開示の方法に使用される、すべての化合物に対して、該治療的有効量、又は投与量を、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。次いで、該投与量を、該細胞培養液中で測定した該IC50を含む、循環する濃度範囲となるように、動物モデルに使用するために配合することができる(すなわち、該試験化合物の濃度は、該アンドロゲンシグナル伝達経路の最大半減阻害となる濃度である。)。次いで、このような情報は、ヒトに有用な投与量をさらに正確に決めるために、使用され得る。
【0052】
ここに記載した該化合物の毒性、及び治療効力を、細胞培養液、又は実験動物において、標準的な製薬学の手順により測定することができ、例えば、対象組成物のIC50、及びLD50の測定法がある。これらの細胞培養アッセイ、及び動物から得られたデータを、ヒトに使用する投与量の範囲の配合において、使用することができる。該投与量は、使用される投与形態、及び利用される投与経路に依存し得る。該的確な配合、投与経路、及び投与量は、該患者の状態を考慮して、個人の治療者により選択され得る(例えば、Hardmanらの論文、「治療の薬学的基礎(in The Pharmacological Basis of Therapeutics)」、(第10版) McGraw Hill (2001)を参照。)。
投与量、及び間隔を、該アンドロゲンシグナル伝達経路を十分に制御する該活性種の血漿水準を提供するように、個別に調節することができ、所望の効果、例えば、発毛の誘発、又は脱毛の抑制をもたらす。最小有効血漿濃度水準は、各化合物で変わるであろう。しかし、インビトロでのデータから推定することができる。例えば、アンドロゲンシグナル伝達経路を50〜90%阻害するのに必要な濃度を、ここに記載した該アッセイを用いて、確定することができる。好ましくは、最小有効血漿濃度水準を得るのに必要な該投与量は、個々の特性、及び投与経路に依存するであろう。HPLCアッセイ、又はバイオアッセイを、血漿濃度測定に使用することができる。
また、投与間隔を、最小有効血漿濃度水準を用いて決定することができる。化合物は、その時の最小有効血漿濃度水準の10〜90%、好ましくは、30〜90%、さらに好ましくは、50〜90%超えた血漿水準を維持するような療法を用いて、投与されるべきである。局所投与、又は選択的摂取の場合、該組成物の有効な局所濃度は、血漿濃度に関連し得ず、かつ公知技術の他の手順を、的確な投与量、及び間隔を決めるように使用することができる。
当然、投与される量は、治療される患者、苦しみの重大度、投与方法、指定治療者の判断に依存するであろう。
【0053】
(包装)
必要に応じて、該組成物は、FDA認可キットのような、包装、又はディスペンサー装置内に存在することができ、ここに記載した該組成物を含む、一以上の単位投与量形態を含み得る。該包装は、例えば、ブリスターパックのような金属、又はプラスチックオイルを含み得る。該包装、又はディスペンサー装置は、投与の指示を伴い得る。また、該包装、又はディスペンサー装置は、該装置、医薬品の使用、又は販売を管理する政府機関に定められた形態の容器に関連した情報を伴い得る。該情報は、該組成物、又はヒト、又は獣医当局の形態の機関による、認可の反映である。このような情報は、例えば、処方箋に対する米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)、又は認可製品情報にある。また、適合性医薬キャリアに配合した本開示の化合物を含む組成物を調製し、適切な容器内に置き、かつ指示された条件の治療のために標識することができる。該標識の指示された適切な条件は、腫瘍の治療、血管新生の阻害、線維症、及び糖尿病などの治療を含む。
【0054】
(インビボアッセイ)
発毛が同期化した場合、阻害性核酸の効果を、日齢約40日〜約75日のC3Hマウス(Harlan Sprague Dawley社, Indianapolis, Ind.)の休止期を評価することにより試験した。日齢75日後、発毛は、同期化しなくなったと考えられる。暗色毛皮(茶、又は黒)を有する約40日齢マウスを、発毛実験に使用し、メラニン形成が、毛(毛皮)成長とともに生じ、ここで、発毛促進剤の該局所塗布を評価した。下記の該休止期変換アッセイ(Telogen Conversion Assay)を使用し、メラニン形成を測定することにより、潜在的発毛のための化合物をスクリーニングした。
【0055】
例えば、44日齢のC3Hマウスの3つのグループを利用することができる、すなわち、ビヒクルコントロール、正のコントロールグループ、及び試験化合物グループであり、ここで、該試験化合物グループに、本開示の化合物を投与した。該アッセイの期間を、15日の処置日数を含め、少なくとも19日とした(該処置日は、月曜から金曜までであった。)。1日目は、処置の最初の日である。ほとんどの研究は、19日目で終了であろう。しかし、該メラニン形成応答が、正であるように見え、ゆっくりと生じた場合の幾らかの研究は、24日間行った。
【0056】
通常、該マウスを、月曜から金曜まで、下背上(尾の付け根から下位肋骨)に局所的に処置した。ピペッター、及びチップは、各マウスの背に100〜400μLを運ぶために使用した。皮膚に届き、塗布できるように、該マウス上の毛を移動し、該400μLをゆっくりと塗布した。
各処置を、該マウスに局所的に適用する間に、0〜4の視覚的な等級を、各動物の適用範囲内の該皮膚の色に与えることができる。該マウスが、休止期から発育期に変わるにつれて、これらの皮膚の色は、さらに青黒になるであろう。該等級0〜4は、該皮膚が、白から青黒に進む、視覚的観察後の皮膚の色を表す。白っぽい皮膚色(Whitish Skin Color) - 0; 皮膚が、ライトグレーである(発育の初期を示す。) - 1; 青スポットの出現 - 2; 青スポットが凝集し、一つの大きい青い領域を形成する - 3; 色が変わった主要な処置範囲を有し、皮膚が、ダークブルー(ほとんど黒色) (完全な発育期のマウスを示す。) - 4である。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
(siRNAの合成)
一本鎖、任意に3’デオキシヌクレオチド突出部を有する、遺伝子-特異的センス、及びアンチセンスRNAオリゴマーを調製し、かつ下記表1〜9に示した配列を用いるPAGEにより精製した。各40μMの該2つのオリゴマーを、50 mMのTris-HCl、pH 8.0、及び100 mMのNaClを含む緩衝液250μL中で、2分間、94℃に加熱し、1分間90℃に冷やし、次いで、1分につき1℃の割合で、20℃まで冷やすことによりアニールした。該得られたsiRNAを、使用前に、-20℃で保存した。
ステロイド5-アルファレダクターゼ(SRD5a Locus Link id: 6715)を、全長cDNAクローン(クローンMGC:12396 IMAGE:3683274)から、PCR増幅した。プライマーを、pcDNA 3.1 CT-GFP中に、TA-クローニング用の該全長クローンを生じるように設計した。そのものとして、該リバースプライマーは、終止コドンを結合した(フォワードプライマー: atgcaggttcagtgccagca (配列番号: 1402); リバースプライマー: ttaaaaagatgaatggaataag (配列番号: 1403))。該800塩基対の産物を図3に示す。
【0058】
(実施例2)
(インビボアッセイ)
先に調製したsiRNAを用いた、アンドロゲンシグナル伝達タンパク質の阻害性を測定するために、該siRNAを、該アンドロゲン受容体、又は5-αレダクターゼのようなアンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質を発現する細胞培養細胞に投与した。アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質を発現する、典型的な細胞株を、American Tissue Type Cultureのカタログから見つけ、その全体を、ここに取り込む。簡潔に、細胞株を、10%BCSを含む、RPMI 1640培地(GibcoBRL, Gaithersburg, Md.)中で維持した。siRNAの変化量(150〜350μg/ml)を、該培地に加えた。細胞を、同じ条件下、5% CO2中、1〜4日間、37℃でインキュベートした。該インキュベート終了後、該細胞をPBS(リン酸緩衝性生理食塩水)で洗浄し、かつヴェルセン(versene)を用いて、該培養容器から分離した。次いで、該細胞の、アンドロゲン受容体、及び/又は5-αレダクターゼのような、アンドロゲンシグナル伝達タンパク質の発現を評価した。
【0059】
図4は、pcDNA 3.1/SRD5a-GFPを生じるように、製造業者の説明書にしたがってTAクローン化した、該PCR単位複製配列を示す(インビトロジェン(Invitrogen))。このプラスミドは、哺乳動物細胞内において、該GFP(グリーン蛍光性タンパク質)受容体に結合した、該SRD5aタンパク質を生じる。該pcDNA 3.1/SRD5a-GFPを、Sy5y細胞内にトランスフェクションし、かつ共焦点画像を、24時間後に撮った。
図5Aは、豊富なレポーター遺伝子発現を示す。該SRD5a単位複製配列を、T7プライマーを有する、5’、及び3’に結合した。インビトロにおける転写反応(アンビオン(Ambion))を、該SRD5aタンパク質をコードしている全長二本鎖RNA(dsRNA)を生じるように、製造業者の説明書に従って行った。RNアーゼIII消化を、幾つかの19〜21ヌクレオチドのdsRNAを生じるように、製造業者(Ambion)の使用説明書に従って行った。これらのdsRNA種を、ローダミンで標識(分子プローブ)し、かつ該SRD5a-GFPタンパク質を発現するSy5y細胞内に、トランスフェクションした(キアゲン(Qiagen))。手順を、製造業者の説明書に従って行った。
【0060】
図5Bは、ローダミン標識化dsRNAのトランスフェクション後4時間目の該SRD5aタンパク質のノックダウンに対する、ローダミン標識化dsRNAを含む、GFPレポーター細胞の共焦点顕微鏡写真である。パネルAは、トランスフェクションした細胞中の緑蛍光性タンパク質の蛍光を示し、かつパネルBは、ローダミン標識化dsRNAの蛍光を有する、該同じ細胞を示す。
図5Cは、該dsRNAを用いたトランスフェクション後、24時間目に撮った共焦点蛍光顕微鏡写真である。該矢印は、支配的なローダミン蛍光の領域のプンテート緑蛍光(puntate green fluoresence)を示す。従って、該データは、dsRNAを用いたトランスフェクションが、該SRD5a-GFPタンパク質の発現を阻害することを示す。
本開示は、例示した実施態様の範囲に制限されるものではなく、本開示の一つの態様説明として意図され、かつ機能的に等価なすべてのクローン、核酸、又はアミノ酸配列は、本開示の範囲内である。実際、ここに記載したものに加えて、本開示の様々な改質は、前述の説明、及び添付図面から、当業者にとって明らかであろう。そのような改質は、添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。
この結果、ここで引用した、すべての参考は、その全体を引用により取り込まれている。
【0061】
【表1】




【0062】
【表2】



【0063】
【表3】












【0064】
【表4】











【0065】
【表5】







【0066】
【表6】







【0067】
【表7】







【0068】
【表8】



【0069】
【表9】


【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、発毛周期を示す図である。
【図2】図2は、典型的なアンドロゲンシグナル伝達経路に関与する遺伝子を説明する、フロー図である。
【図3】図3は、ステロイド5-アルファレダクターゼの全長クローンを示す、オートラジオグラフである。
【図4】図4は、pcDNA 3.1/SRD5a-GFPを生じる、TAクローン(インビトロジェン(Invitrogen))のPCR増幅の図である。
【図5】図5A〜Cは、GFP-タグ化ステロイド5-アルファレダクターゼ、及びレポータータンパク質に特異的な、ローダミン標識化dsRNAを発現するようにトランスフェクションした、Sy5y細胞の蛍光顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の哺乳動物有毛細胞を、二本鎖リボ核酸と接触させる工程を含む、哺乳動物の脱毛を減らす方法であって、その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達タンパク質のmRNAの翻訳を干渉する、前記方法。
【請求項2】
哺乳動物に、二本鎖リボ核酸、及び医薬として許容し得るキャリアを含む組成物を投与する工程を含む、哺乳動物の脱毛を減らす方法であって、その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達タンパク質のmRNAの翻訳を干渉する、前記方法。
【請求項3】
哺乳動物に、二本鎖リボ核酸、及び医薬として許容し得るキャリアを含む組成物を投与する工程を含む、脱毛の治療方法であって、その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達タンパク質のmRNAの翻訳を干渉する、前記方法。
【請求項4】
哺乳動物の有毛細胞を、二本鎖リボ核酸と接触させることにより、該有毛細胞の発育段階の持続を増加させる工程を含む、発毛を誘発する方法であって、その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含む、前記方法。
【請求項5】
発毛の促進、又は脱毛の減少方法であって:a)アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含む、小阻害性リボ核酸、及びその生理的に適合し得る塩からなる群から選択される、少なくとも1つの要素を含む薬剤を提供する工程;及びb)前記薬剤を、前記発毛の促進、又は前記脱毛の減少に対して十分な量で、髪、及び頭皮に塗布する工程を含む、前記方法。
【請求項6】
さらに、c)少なくとも24時間、前記髪、及び頭皮に、前記薬剤を保持する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
二本鎖リボ核酸を含む阻害性核酸であって:その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の核酸配列をコードしているmRNAの翻訳を阻害する、前記核酸。
【請求項8】
二本鎖リボ核酸を含むベクターであって:その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の核酸配列をコードしているmRNAの翻訳を阻害する、前記ベクター。
【請求項9】
二本鎖リボ核酸を含む細胞であって:その一本鎖は、アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質の少なくとも一部分の核酸配列を含み、かつ該二本鎖リボ核酸が、該アンドロゲンシグナル伝達タンパク質の核酸配列をコードしているmRNAの翻訳を阻害する、前記細胞。
【請求項10】
該アンドロゲンシグナル伝達経路タンパク質が、下記からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項:5-αレダクターゼのアイソザイムI、及びII、該アンドロゲン受容体、アロマターゼ、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、3-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-4-5-イソメラーゼ、17-β-ヒドロキシステロイドオキシドレダクターゼ、及びステロイドスルファターゼ。
【請求項11】
該一部分の核酸配列が、表1〜9の配列番号:1〜1400から選択される、請求項1〜9のいずれか1項。
【請求項12】
さらに、第二の治療薬剤を投与する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
該第二の治療薬剤が、下記の群から選択される、請求項12記載の方法:17β-N-t-ブチルカルバモイル-4-アザ-5α-アンドロスト-1-エン-3-オン、6-アミノ-1,2-ジヒドロ-1-ヒドロキシ-2-イミノ-4-ピペロジノピリミジン、それらの組合せ、及びそれらのプロドラッグ。
【請求項14】
哺乳動物を、5-α-レダクターゼに特異的な、有効量の阻害性核酸と接触させることにより、該哺乳動物のジヒドロキシテストステロンの水準を下げることを含む、哺乳動物の脱毛の治療方法であって、5-α-レダクターゼに特異的な、有効量の阻害性核酸が、5-α-レダクターゼタンパク質の発現を阻害する、前記方法。
【請求項15】
細胞内のテストステロン代謝産物を減少させる方法であって、該細胞を、該細胞内の該5-α-レダクターゼタンパク質の水準を減少させるのに十分な量の、5-α-レダクターゼに特異的な阻害性核酸と接触させることを含む、前記方法。
【請求項16】
該テストステロン代謝産物が、ジヒドロキシテストステロンである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該細胞が、有毛細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該阻害性核酸が、配列番号:1〜91から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項15記載の方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−120589(P2011−120589A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286475(P2010−286475)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2006−500788(P2006−500788)の分割
【原出願日】平成16年1月5日(2004.1.5)
【出願人】(505247281)ゲンシア コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】