説明

脱水ケーキ圧送装置

【課題】 従来は一軸偏心ねじポンプでは移送が困難であるとされてきた含水率70%以下の超高粘性脱水ケーキをも高い容積効率で移送可能な、一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置を提供する。
【解決手段】 一軸偏心ねじポンプ部を備えた脱水ケーキ圧送装置において、フィーダケーシング内の長手方向に沿って中心軸線上に回転駆動軸24を配置しその両端を軸受け25により回転可能に支持し、回転駆動軸24に2組の撹拌羽根27を長手方向に間隔をあけ且つ位相をずらして取り付けるとともに、各組の撹拌羽根27を、半径方向先端部に長手方向両側方に突出する3つ以上の撹拌部28を円周方向に等間隔に備え、各撹拌部28と回転駆動軸24との間を開口29bを有する支持部材29で連結した構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、公共の上下水の水処理、屎尿処理あるいは一般の工場の排水処理過程で生成される脱水ケーキのほか、同程度の粘性を有する流体(以下、脱水ケーキという)を、
フィーダ(フィーダケーシング)内で撹拌しながら、一軸偏心ねじポンプにより配管移送するための、一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧送装置は、一般的には図5に示すように、フィーダケーシング101とポンプケーシング102とが別々に形成されており、フィーダケーシング101の底部の長手方向の中央部分とポンプケーシング102の頂部の長手方向の中央部分とが接続口部103で接続されている。また、フィーダケーシング101内にはトンボ形撹拌羽根(パドル
タイプともいう)104が回転自在に設けられているが、フィーダケーシング101内を長手方向に横切って回転軸105が支持されており、回転軸105には一対の板状羽根106が回転軸105の軸方向に間隔をあけかつ直交するように上下に張り出して固定され、いわゆる一対のトンボ羽根からなっている。一方、ポンプケーシング102の前壁面には、一軸偏心ねじポンプの本体107が前方へ向けて連設されている。
【0003】
他の先行技術として、フィーダケーシングと下部のポンプケーシングとを一体化して共通のケーシングに形成するとともに、フィーダケーシング内に配置する撹拌羽根を、側方から見て一方の板状羽根が他方の板状羽根に比べて長くし且つフィーダケーシング内の寸法に近く、両板状羽根を連結板にて連結して略「コ」の字形に形成し、前記撹拌羽根の連結板の長さ方向の中間部を、駆動軸の端部に一体回転可能に装着した構造の一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003-128261号公報(段落0007・0008・0017〜0023および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の脱水ケーキ圧送装置および特許文献1の圧送装置では、以下のような不都合がある。すなわち、
1) 前者の場合は:フィーダケーシング101とポンプケーシング102の接続口部103で開口面積が急に狭くなっており、脱水ケーキの通過抵抗が大きく押し込み作用が小さいため吐出量が大きくなるほどフィーダ羽根の直径を大きくする必要があり装置が大型化するとともに、ブリッジが発生するおそれがある。また、撹拌羽根が一対のトンボ羽根からなり、板状羽根と板状羽根との間にスペースがあることから脱水ケーキが滞留し易く、またフィーダによる脱水ケーキのポンプケーシング内への押し込み作用が弱く、ポンプの容積効率が低かった。また、フィーダケーシング101とポンプケーシング102とにケーシングが分かれていたので、構造が複雑で、部品点数が多く、装置全体が大型化して広い設置場所をとっていた。
【0005】
加えて、図5のフィーダケーシングとポンプケーシングの分離タイプでは、a)バルブプレートの移動が軸方向のため、開閉のストロークが長く開閉に時間が掛かる。b)バルブプレートの移動が軸方向でしかも開放時に外部へ突出するので、設置占有スペースが大きい。c)バルブプレートを外部へ突出させるため、フィーダ内部と外部との間をシールするシール機構が大である。d)バルブプレートを収納するケースとシール機構との取付スペースにより、フィーダとポンプとの距離が離れ、脱水ケーキの通過抵抗が大きくなり、フィーダの押し込み力が低下する。さらに、ポンプスクリュー部について、a)ジョイント部にス
クリューがないので、高粘度の脱水ケーキは自力で吸込口まで移動できず、ジョイント部付近に滞留する。b)従来のスクリューロッドは吸込口まで搬送する機能しかもたず、つまり混練機能をもたないので粘度が下がらない。
【0006】
2) 後者の場合は:撹拌羽根が片持ち構造であるため、粘性が極めて高い脱水ケーキや同程度の流体を撹拌するにはやや強度不足である。また、2枚羽根構成のため、脱水ケーキなどの被撹拌物に対し衝撃荷重として作用する。さらに、フィーダケーシングとポンプケーシングの一体型では、プレートバルブを取り付けようとすると、フィーダとポンプとの距離が離れ、フィーダの押し込み力が低下する。ステータの真上にバルブケースがあり、点検・分解の作業の邪魔になる。さらにまた、スクリューロッドの吸込口側の一部上方に、フィーダケーシングとポンプケーシングとを仕切る仕切り板が設けられているため、仕切り板の上方に脱水ケーキが滞留しやすい。また、ポンプスクリュー部についても、前者の場合と同様な課題がある。
【0007】
この発明は上述の点に鑑みなされたもので、撹拌羽根の形態を改良し軸方向長さを長くして撹拌力を高めることにより脱水ケーキの粘度を低減し、また撹拌羽根を両持ち構造にして強度を向上し、これまで一軸偏心ねじポンプでは移送が困難であるとされてきた含水率70%以下の一般下水用の超高粘性脱水ケーキをも移送可能な、一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために本発明にかかる一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置は、(上端を開放した)フィーダケーシング内に投入された脱水ケーキを撹拌羽根を介して撹拌しながら下部のポンプケーシング内に押し込み、このポンプケーシング内のスクリューロッドにより前方の一軸偏心ねじポンプの吸込口内へ移送しながら押し込み、同一軸偏心ねじポンプにより所定場所へ搬送する、一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置において、
前記フィーダケーシング内の(長手方向に沿って)中心軸線上に回転駆動軸を配置しその両端を軸受けにより回転可能に支持し、同回転駆動軸に2組以上の撹拌羽根を長手方向に間隔をあけ且つ回転方向の位相をずらせて取り付けるとともに、各組の撹拌羽根を、半径方向先端部に長手方向両側方に突出し2組以上の合計長さが前記フィーダケーシング長さの1/2以上を有する3つ以上の撹拌部を円周方向に等間隔に備え、各撹拌部と前記回転駆動軸との間を開口を有する支持部で連結して構成したことを特徴とする。
【0009】
上記の構成を有する請求項1記載の一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置によれば、撹拌羽根を支持してこれを回転させる回転駆動軸を両端支持構造にしたので、含水率70%以下の高粘性脱水ケーキや同程度の粘性をもつ流体の搬送に対し強度不足にならず、耐久性に富み、また、少なくとも6枚以上の撹拌部を備えた撹拌羽根が間欠的に脱水ケーキに当たってこれを均一に撹拌するので、脱水ケーキの粘度が低減し、脱水ケーキに対する荷重がほぼ均等に作用し、いわゆる衝撃荷重として作用することが防止でき、さらに、撹拌羽根先端の撹拌部とスクリューロッドとを接近させられるので、ブリッジが起こりにくいうえに、撹拌部がポンプケーシングの長手方向に長く延び(2組以上の撹拌部
の合計長さをポンプケーシングの長手方向全長よりは短いがその半分よりは長くし)、しかも各組の撹拌羽根の枚数を3枚以上にしたうえ、撹拌部の支持部に開口を設けているので、撹拌力が強力で搬送量が従来の装置に比べて大幅に増大し、軸トルクを最適化でき、最小のトルクで押し込み作用を最大限発揮させられ、フィーダケーシングをコンパクトにできる。
【0010】
請求項2に記載の脱水ケーキ圧送装置は、前記フィーダケーシングと前記ポンプケーシングとの境界位置において、プレートバルブを長手方向に対し直交する方向で前記フィー
ダケーシングの底面上に沿って出入りし開閉するように設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の脱水ケーキ圧送装置によれば、一軸偏心ねじポンプやポンプケーシングの点検、分解および組立時などにポンプケーシングとフィーダケーシングとの境界位置をプレートバルブで遮断(閉塞)することにより、フィーダケーシング内の汚泥の掻き出し
作業が不要になる。また、プレートバルブを長手方向に対し直交する方向に出入りさせて開閉可能に設けるので、開閉に要する時間を短縮できる。バルブプレートをフィーダケーシング内に収め、外部へ突出しない構造になっているので、シール部分が従来に比べて削減され、短くなるから、シール性が向上し、コストダウンも図れる。さらに、フィーダケーシング内の脱水ケーキ等を、ポンプケーシングとの押し込み口において撹拌羽根の回転方向側を一部遮蔽した状態でポンプケーシング内に押し込めるようになるので、スクリューで受け取った脱水ケーキの飛散や逃げを防止し、確実にポンプケーシング内に圧送でき、ポンプスクリュー部へ押し込まれる脱水ケーキの容量が増大し押し込み力も向上する。また、上記撹拌羽根を分割したことにより、プレートバルブを出し入れする操作部(たと
えば送りネジ部)との干渉を避けられるので、撹拌羽根の撹拌部とポンプスクリュー部の
スクリュー羽根との距離を短縮でき、押し込み力を高く維持できる。したがって、スクリューロッドの回転により、脱水ケーキが前方の一軸偏心ねじポンプの吸込口内に押し込まれる容量が増え、ポンプの容積効率がアップし、スクリューロッドによる搬送効率が従来の装置に比べて大幅に向上する。
【0012】
請求項3に記載の脱水ケーキ圧送装置は、前記ポンプケーシングの前面に一軸偏心ねじポンプのステータを連設し、このステータ内のロータの後端をポンプケーシングの後壁面に配置した駆動装置の駆動軸又は減速軸の一端に、前記ポンプケーシング内の前記スクリューロッドを介し且つ前記ロータとスクリューロッドとの間に自在継手を介在させて接続し、その自在継手および隣接するロータ端部の少なくとも一方の周囲を、スクリューを外周面に一体に且つ混練機能を発揮するように取り付けたスリーブ状カバーで覆うとともに、前記自在継手の位置でポンプケーシングを前後に分離し、ワンタッチジョイントにて分離可能に連結したことを特徴とする。ここで、「スクリューを混練機能を発揮するように取り付けた」とは、スクリューを備えたスリーブ状カバーで覆われた自在継手が圧力室51A(図1参照)内に収められていることを意味する。圧力室はスクリューロッドの回転で圧力が上がり、この状況の下に自在継手のスクリューが回転すると脱水ケーキが混練され、粘度が低減する。
【0013】
請求項3に記載の脱水ケーキ圧送装置によれば、ポンプケーシングの連結にワンタッチジョイントであるヴィクトリジョイント(登録商標)を用いているので、ボルトを2本を
外すだけで分解が可能になり、分離後にステータをロータに対し回転させながら抜き出すことにより簡単にポンプケーシングを分離して点検したり、ステータとロータとを分解したり、ロータを交換したりできる。また、スクリューロッドとロータを接続する自在継手の周囲あるいは自在継手に隣接するロータの端部の周囲の少なくとも一方にスクリュー付きスリーブを装着し、スクリューロッドの回転で脱水ケーキ等に作用する押し込み力が前方の一軸偏心ポンプの吸込口よりステータ内へ向けて働くので、ポンプケーシングからの押し出し力が増大し、ステータ内に円滑に押し込まれるから、ポンプの容積効率は大幅(
従来比で1.5倍ほど)にアップし、圧密状態で脱水ケーキが搬送され、搬送能力も向上する。押し込み力が増大するので、圧力室内の圧力が従来に比べて向上し、この状況の下でスクリューが脱水ケーキを撹拌するので、粘度が低下し、容積効率が増大する。また、送り出し配管内の搬送抵抗が低下する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る脱水ケーキ圧送装置には、以下のような優れた効果がある。すなわち、
・従来は搬送困難であった超高粘性の脱水ケーキや流体に対して粘度を下げながら搬送
できるため安定した搬送が可能になる。
【0015】
・一軸偏心ねじポンプの吐出能力が向上(高粘度の場合、従来比1.5倍ほど増大)す
る。
【0016】
・同一容量の脱水ケーキを搬送する場合、フィーダおよびポンプの回転速度を低く抑えられるので、ステータなど消耗部品の長寿命化が図れる。
【0017】
・超高粘性の脱水ケーキにおいて、容積効率が低下することによって生じていたステータの蓄熱現象を抑制できる。
【0018】
・長手方向に長く延びる撹拌羽根の採用で、フィーダの搬送量が増え、フィーダ部分がコンパクトになるため、同一サイズの従来の圧送装置に比べて省スペース化と低床化および駆動装置の容量の削減による省エネ化を図れる。
【0019】
・装置全体の分解および組立作業が容易になる。
【0020】
・両端支持構造の、開口を設けた支持部を備えた撹拌羽根の採用により、機械的強度が向上し、超高粘性の脱水ケーキや流体でも十分に撹拌でき、低粘度化することができ、装置自体の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一軸偏心ポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は脱水ケーキ圧送装置の実施例を示す全体の正面より見た中央縦断面図、図2は図1の側方視断面図でプレートバルブの開放状態を表し、図3はプレートバルブの閉鎖状態を表す図2と同様の側方視断面図である。
【0023】
図1に示すように、脱水ケーキ圧送装置1は、フィーダ部2、スクリューポン
部5および一軸偏心ねじポンプ部8から構成され、スクリューポンプ部5上にフィーダ部2が、またスクリューポンプ部5の前面に一軸偏心ねじポンプ部8がそれぞれ一体に連設されている。
【0024】
フィーダ部2はフィーダケーシング21を備えており、このフィーダケーシング21は上端を開放した箱形で、上端から下端まで長さが同一で、図2のように幅は長さに比べてやや狭く、底部22の一方22bが幅が下端中心位置へ向け漸次狭くなるように傾斜し、全体的に正面より見て逆向きの略五角形に形成されている。
【0025】
フィーダケーシング21内の長手方向に沿って両側壁23の中心位置を貫通して回転駆動軸24を配置し、その両端を軸受け25によりそれぞれ回転可能に支持し、回転駆動軸24の一端に減速機(図示せず)を介して電動モータ26を接続している。回転駆動軸2
4上には、本例では3枚羽根式の2組の撹拌羽根27を長手方向に間隔をあけ且つ位相を本例では60°ずらして取り付けている。各組の撹拌羽根27は、半径方向先端(外端)
部に長手方向両側方に突出する3つ以上の両端を閉鎖した断面円形のパイプ(円管)状撹
拌部28を円周方向に等間隔に備えている。なお、2組の撹拌部28の長さsを合計した長さ2sは、フィーダケーシング21の長手方向長さL>2S≧L/2である。パイプ(
円管)状撹拌部28に代えて板状撹拌部にすることもできる。また、各撹拌部28と回転駆動軸24との間は、正面視断面「ロ」の字形の開口29bを有し、円周方向に120°間隔で半径方向外方に延設され、且つ先端から基端(回転駆動軸24)側に向けて幅が徐々
に拡がり側方より見て隣接する基端部同士を湾曲状に接続した支持部29により連結支持している。なお、図1中の符号29aはリブである。各支持部29の両辺を一定幅で直線状に形成せず基端へ向けて円弧状に拡がるように湾曲させたのは、攪拌(回転)時の抵抗
を低減するためである。
【0026】
フィーダケーシング21内において、前後の撹拌羽根27間の特に支持部29間にはスペースがあるので、上部にレベルセンサー11が配設されている。これにより、フィーダケーシング21内に投入された脱水ケーキの容量が適量あるか否かが検出される。
【0027】
スクリューポンプ部5は、図2のように断面略六角形のポンプケーシング51を備えており、このポンプケーシング51はフィーダケーシング21の底部22に連設され、両ケーシング51・21の連設部(境界部)は開口され押し込み口30に形成されている。ポ
ンプケーシング51の前部52はフィーダケーシング21の前端(側壁23)から前方へ
突出しており、この突出した前端部53が後方の本体部分51aと分割されている。そして、前端部53は本体部分51aに対して、ワンタッチジョイントであるヴィクトリックジョイント(登録商標)54により分離可能に連結している。
【0028】
ポンプケーシング51内には、その中心軸部に長手方向に沿ってスクリューロッド55が配置されている。このスクリューロッド55は、中空の円筒状ロッド55aの周囲にスクリュー55bが一体回転可能に装着され、一方が駆動軸61に、他方が一軸偏心ねじポンプ部8のロータ82に、それぞれ自在継手62・63を介して接続されている。駆動軸61はポンプケーシング51の後面に連設された軸受けケーシング64内に回転可能に支持され、駆動軸61の一端には図示を省略した電動モータが減速機を介して接続される。駆動軸61の他端は、上記したとおり自在継手63を介してスクリューロッド55に接続されるが、自在継手63の周囲のセフティースリーブ(スリーブ状カバー)63aの外周
面には、スクリュー63bが一体回転可能に装着されている。また、スクリューロッド55の他端とロータ82との間に介在する自在継手62についても、周囲のセフティースリーブ(スリーブ状カバー)62aの外周面には、スクリュー62bが一体回転可能に装着
されている。
【0029】
図1〜図3に示すように、フィーダ部2内の撹拌羽根27の先端撹拌部28は、スクリューポンプ部5のスクリューロッド55のスクリュー55bの外周縁とかなり接近して配置されている。また、左右(前後)の撹拌部28は長く延び、両者でフィーダケーシング
21内の長手方向のほぼ全長に至っている。そして、両回転体28・55の境界位置には、図2・図3のように長手方向に直交する方向に、ポンプケーシング51の水平な底面22a上に沿ってプレートバルブ7を配設している。プレートバルブ7は、バルブ本体71が水平な底面22a上に沿って出入り可能に配設され、ハンドル73を介してネジ杆74を回転させることによりネジ杆74と螺合するナット部75を備えたバルブ本体71が水平な底面22aに沿って出入りし開閉される。ナット部75はパイプ状カバー76内の基端部に固定され、パイプ状カバー76がバルブ本体71上に一体に固着されている。図2のように、バルブ本体71が開放された状態で、バルブ本体71の先端部71aが押し込み口30内へわずかに突出し、押し込み口30の一部を覆う。バルブ本体71の先端突出部分71aが撹拌羽根27の回転方向側に位置しているから、フィーダ部2内で撹拌される脱水ケーキがポンプケーシング51に押し込まれたのち、フィーダケーシング21側へ漏れ出すのを防止している。プレートバルブ7のバルブ本体71の開閉は、電動モータ26の下方に配置される手動式ハンドル73を回転させて行われる。プレートバルブ7はスクリューポンプ部5の点検や分解・組立時以外は、開放しておく。
【0030】
一軸偏心ねじポンプ部8は、弾性体からなる雌ねじ形ステータ81内に回転可能に雄ねじ形ロータ82を嵌挿して偏心回転させることにより、ステータ81の長円形孔内で断面
円形のロータ82が軸直角方向に往復移動して搬送する構造からなり、ステータ81の外周に金属製外筒83が被装され、前端の吐出口81aにエンドスタッド84が複数本の連結ロッド85を介して連設されている。連結ロッド85は、一軸偏心ねじポンプ部8をステータ81などとともにポンプケーシング51に連結する役目もしている。
【0031】
以上のようにして本例の脱水ケーキ圧送装置1が構成されるが、次にその動作について説明する。
【0032】
図1において、エンドスタット84には図示を省略した送給管が接続され、フィーダケーシング21の上端開放部より脱水ケーキが投入される。このとき、電動モータ26により減速機を介して撹拌羽根27を回転させると同時に、電動モータ(図示せず)により減
速機を介してスクリューロッド55およびロータ82を回転させている。投入された脱水ケーキは、フィーダケーシング21内で前後2組の撹拌羽根27が位相が円周方向に60°ずれた状態で回転駆動軸24の回転により、回転駆動軸24を中心にして一方向に回転し、合計6枚の撹拌部28が等間隔で順に脱水ケーキに当たるので、脱水ケーキは十分に且つ均等に撹拌される。ケーシング21内の上部に投入された脱水ケーキは、撹拌羽根27の回転に伴ってケーシング21の内壁に沿うように移動し、脱水ケーキの一部は押し込み口30からポンプケーシング51のスクリューロッド55の位置へ押し込まれる。
【0033】
一方、スクリューポンプ部5内に押し込まれた脱水ケーキは、スクリューロッド55の回転により前方へ移送され、ポンプケーシング51の前端部53の圧力室51A内で圧密される。そして、ステータ81内でロータ82が回転することによって、脱水ケーキは吸込口81bからステータ81内に吸い込まれ、ステータ81内で回転するロータ82のポンプ作用によって前方へ送り出され、送給管を通って所定場所まで送られる。
【0034】
撹拌羽根27の前後の撹拌部28および「ロ」の字形開口29bを有する支持部29が交互に押し込み口30のすぐ上側を回転し、また前後の各撹拌部28はフィーダケーシング21の長さの半分近い寸法をもち、下方のポンプケーシング51内のスクリューロッド55のスクリューの外縁部に接近しているので、ブリッジが生じるおそれがなく、撹拌力が強力で超高粘性の脱水ケーキを充分に撹拌して粘性を低下させる。しかも、6つの撹拌部28が順に且つ間欠的に脱水ケーキ一に対して作用するので、衝撃荷重とならず、振動がほとんどなく、均一に撹拌される。しかも、押し込み口30が広く、撹拌部28でポンプケーシング51内に押し込まれた脱水ケーキは押し込み口30側へ一部が突出するプレートバルブ7でフィーダケーシング21へ漏れ出すのが阻止されるために、ポンプケーシング51内へ脱水ケーキがスムーズに押し込まれる。さらに、フィーダケーシング21内の上部には、レベルセンサー11が設けられているので、脱水ケーキの容量が適正量を割ると検出でき、常に適正量が保たれる。
【0035】
そして、スクリューポンプ部5や一軸偏心ねじポンプ部8の点検や部品の交換などを行う場合には、プレートバルブ7によってフィーダケーシング21との連通口である押し込み口30を遮断できるので、フィーダケーシング21内の脱水ケーキなどを掻き出す必要がない。しかも、ポンプケーシング51はボルトを2本外すだけで、前端部分を簡単に分離できるので、スクリューロッド55の点検や分解・組立、また連結ロッド85をエンドスタッド84のフランジ84aから取り外すことにより一軸偏心ねじポンプ部8のステータ81の引き抜き、ロータ82の交換などが短時間で容易に行い得る。
【0036】
次に、図4は本発明の他の実施例に係る脱水ケーキ圧送装置を拡大して示す正面より見た中央縦断面図で、図1に対応する図面である。
【0037】
本実施例の圧送装置1’は、同図に示すように、フィーダケーシング21の背面壁21
aの中央部に長方形の点検口21bを設け、フィーダケーシング21の内部を点検できるようにしてある。また、スクリューロッド55とロータ82との接続部においてロータ82の端部82bを自在継手62の部分82aに比べて外径をやや小さく形成し、それぞれの周囲にスクリュー62b・62d付きのセフティースリーブ62a・62cを被装している。このように、ロータ82側の端部82bの外径を小さくしたのは、ポンプケーシング51の前端部に圧密される脱水ケーキがよりスムーズにステータ81内に吸込口から押し込まれ、搬送量を増大させ、容積効率もアップさせられるからである。さらに、プレートバルブ7のバルブ本体71をフィーダケーシング21の水平な底面22a上に沿って押し込み口30側へ出入り自在に配設し、ハンドル73を介してネジ杆74を回転させることによりネジ杆74との螺合部75を備えたバルブ本体71が開閉されるようにしている。
【0038】
その他の構成および動作については上記実施例と共通するので、説明を省略し共通の部材は同一の符号を用いて図4中に示す。
【0039】
ところで、以上説明したことから明らかなように、本発明に係る一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置1・1’には、上記のような優れた効果があるが、その効果を実験により確認したので、下記に実験データを示し詳しく説明する。
・フィーダの撹拌トルクの比較テスト
本発明の圧送装置1におけるフィーダトルクの比較テストは特許文献1のコの字形フィーダと比較したもので、従来のコの字形フィーダが±40%程度のトルク変動があるのに対し、本発明の撹拌羽根27(撹拌翼)を備えたフィーダでは±15%程度のトルク変動しかなかった。
・フィーダの混練効果の比較テスト
含水率80%前後で重量100kgの脱水ケーキを投入し、15分混練した時の混練前後のずり応力{Pa}およびずり応力の低減率{%}を算出した結果を表1に示す。
【0040】
結果は表1に示すように、本発明に係る撹拌羽根27を備えたフィーダ2では、比較的低粘度の脱水ケーキに対して低減率30.4%を、高粘度の脱水ケーキに対しては低減率53.2%をそれぞれ確保した。一方、「コ」の字形撹拌羽根では低減率22.4%であったが、従来のトンボ形(パドルタイプ)ではずり応力は、19.6%の比較的小さい低減率であった。
【0041】
【表1】

【0042】
・スクリューロッドのセフティースリーブにスクリューを付けた場合と付けない場合のポンプ容積効率の比較
結果は表2に示すように、スクリュー付きがスクリューなしに比べてポンプ容積効率がいずれのロータ回転速度についても1.5倍前後アップした。
【0043】
【表2】

【0044】
以上に、本発明に係る脱水ケーキ圧送装置について2つの実施例を挙げて説明したが、下記のように実施することもできる。
【0045】
1) 上記実施例では各撹拌羽根27につき撹拌部28を120°間隔で3枚設けたが、90°間隔で4枚にすることもできる。
【0046】
2) 回転駆動軸24上に撹拌羽根27を3組以上設けることができる。
【0047】
3) 上記したように、撹拌羽根27の撹拌部28はパイプ状に代えて板状(プレート状)
に代えても同様の効果が得られる。
【0048】
4) 自在継手62の周囲に被装しているスクリュー付きスリーブ状カバーは、ロータ82と自在継手62の間に介在させても同様の効果が得られる。さらに、自在継手62にもスクリュー付きスリーブ状カバーを被装すると、容積効率は一層アップする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る脱水ケーキ圧送装置の実施例を示す全体の正面より見た中央縦断面図である。
【図2】図1の側方視断面図で、プレートバルブの開放状態を表している。
【図3】図3(a)はプレートバルブの閉鎖状態を表す図2と同様の側方視断面図で、図3(b)はプレートバルブの開閉構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る脱水ケーキ圧送装置を拡大して示す正面より見た中央縦断面図で、図1に対応する図面である。
【図5】従来の脱水ケーキ用フィーダの一例を示す中央縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 脱水ケーキ圧送装置
2 フィーダ部
5 スクリューポンプ部
7 プレートバルブ
8 一軸偏心ねじポンプ部
11 レベルセンサー
21 フィーダケーシング
22 底部
23 両側壁
24 回転駆動軸
25 軸受け
26 電動モータ
27 撹拌羽根
28 撹拌部
29 支持部
29b 開口
30 押し込み口
51 ポンプケーシング
54 ワンタッチジョイント
55 スクリューロッド
61 駆動軸
62・63 自在継手
62a・63a セフティースリーブ
62b・63b スクリュー
71 バルブ本体
73 手動式ハンドル
81 ステータ
82 ロータ
83 金属製外筒
84 エンドスタッド
85 連結ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダケーシング内に投入された脱水ケーキを撹拌羽根を介して撹拌しながら下部のポンプケーシング内に押し込み、このポンプケーシング内のスクリューロッドにより前方の一軸偏心ねじポンプの吸込口内へ移送しながら押し込み、同一軸偏心ねじポンプにより所定場所へ搬送する、一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置において、
前記フィーダケーシング内の中心軸線上に回転駆動軸を配置しその両端を軸受けにより回転可能に支持し、同回転駆動軸に2組以上の撹拌羽根を長手方向に間隔をあけ且つ位相をずらせて取り付けるとともに、各組の撹拌羽根を、半径方向先端部に長手方向両側方に突出し2組以上の合計長さが前記フィーダケーシング長さの1/2以上を有する3つ以上の撹拌部を円周方向に等間隔に備え、各撹拌部と前記回転駆動軸との間を開口を有する支持部で連結して構成したことを特徴とする一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置。
【請求項2】
前記フィーダケーシングと前記ポンプケーシングとの境界位置において、プレートバルブを長手方向に対し直交する方向で前記フィーダケーシングの底面上に沿って出入りし開閉するように設けたことを特徴とする請求項1記載の一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置。
【請求項3】
前記ポンプケーシングの前面に一軸偏心ねじポンプのステータを連設し、このステータ内のロータの後端をポンプケーシングの後壁面に配置した駆動装置の駆動軸又は減速軸の一端に、前記ポンプケーシング内の前記スクリューロッドを介し且つ前記ロータとスクリューロッドとの間に自在継手を介在させて接続し、その自在継手および隣接するロータ端部の少なくとも一方の周囲を、スクリューを外周面に一体に且つ混練機能を発揮するように取り付けたスリーブ状カバーで覆うとともに、
前記自在継手の位置でポンプケーシングを前後に分離し、ワンタッチジョイントにて分離可能に連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の一軸偏心ねじポンプを備えた脱水ケーキ圧送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−126276(P2007−126276A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322271(P2005−322271)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000239758)兵神装備株式会社 (76)
【Fターム(参考)】