説明

脱臭システム

【課題】 処理水の浄化能力に優れ、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等に好適な脱臭システムを提供する。
【解決手段】 被処理ガスに洗浄水を散水して臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出し、臭気成分を吸着して汚染された洗浄水をポンプ28によって送水する脱臭装置20と、汚染された洗浄水を光触媒フィルタ33により分解して洗浄水を浄化し、ポンプ35によって脱臭装置20に循環させるとともに、吸着効率が劣化した洗浄水をポンプ36によって送水する光触媒分解装置30と、劣化した洗浄水を濾過ユニット42で濃縮水と透過水とに分離させ、透過水をポンプ48によって脱臭装置20や光触媒分解装置30に循環させるとともに、ポンプ47によって濃縮水を再び濾過装置タンク41に循環させる濾過装置40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水処理装置を用いた脱臭システムに関し、特に洗浄水処理装置における洗浄能力を高めた脱臭システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場では、鋳造工程等で発生する臭気成分を含むガスを無臭化するための脱臭システムが使用されている。従来の脱臭システムとしては、臭気成分を含んだガスと薬液とを接触させることによりガス中の悪臭成分を除去する、薬液脱臭処理システムが知られている。
しかし、薬液脱臭処理システムによれば、硫酸、苛性ソーダなどの劇物を薬液として使用するため、システム管理に労力を要し、処理後の廃液や廃棄物も有害であるため特別な廃液処理等を講じる必要があるといった問題があった。また、システムを構成する装置が大型化して、エネルギーロスが大きく、工場内の設備環境を悪化させるといった問題もあった。
このような問題に加えて地球環境保全への配慮が重要視されるようになった昨今においては、環境にやさしい光触媒を利用した光触媒脱臭システムが注目されている。
この光触媒脱臭システムは、脱臭の他にも有機化合物等の分解や種々の殺菌処理が可能であるため、鋳造工場だけでなく廃棄物処理場や下水処理場等、広い範囲で使用されており、様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1では、吸気口からガスを捕集し、ガスに含まれる臭気成分を反応室内に充填された水に溶解させ、溶解した臭気成分を反応室内に浸水して設置された光触媒担持多孔体によって分解する脱臭装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−313435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の脱臭装置では、連続的に稼動しており、大量に臭気ガスが発生する鋳造工場においては、臭気成分を溶解するための処理水も大量に必要となって、脱臭装置が大掛かりなものになってしまうという問題がある。一方、脱臭装置を小型化するとすれば、大量に発生する臭気ガスを処理するためには処理水を交換して、脱臭能力の低下を抑える必要があるところ、臭気成分が溶解されている処理水(汚染水)を大量に排水するのは環境保全の観点からみて好ましくない。特に、臭気成分が多く溶解されている汚染水にあっては、COD値(化学的酸素要求量)などの排出基準を満たさない可能性が高いといえる。
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑みなされたものであり、処理水の浄化能力に優れ、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等に好適な脱臭システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る脱臭システムは、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置を備える脱臭システムであって、さらに、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を光触媒により浄化する光触媒分解装置と、臭気成分及び固形成分の吸着効率が劣化した洗浄水を濾過する濾過装置とを備え、脱臭装置は、汚染された洗浄水を光触媒分解装置に送水する汚染水送水手段を備え、光触媒分解装置は、汚染された洗浄水を貯留する汚染水貯留手段と、光触媒を担持して汚染された洗浄水に吸着されている臭気成分を分解して洗浄水を浄化する光触媒分解手段と、光触媒分解手段に汚染された洗浄水を散水する散水手段と、光触媒分解手段によって浄化された洗浄水を脱臭装置に循環させる洗浄水循環手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過装置に送水する劣化水送水手段とを備え、濾過装置は、吸着効率が劣化した洗浄水を貯留する劣化水貯留手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過手段と、濾過手段が分離した透過水を脱臭装置又は/及び光触媒分解装置に循環させる透過水循環手段と、濾過手段が分離した濃縮水を再び劣化水貯留手段に循環させる濃縮水循環手段とを備えることを特徴とする。
これによって、光触媒により汚染された水を分解して脱臭装置に循環させるだけでなく、吸着効率が劣化した水を濾過して脱臭装置などに循環させるので、洗浄水を効率的に浄化して再利用することができる脱臭システムが実現されるとともに、排水される廃液量を減少させることが可能となる。また、光触媒分解手段が、処理される水に含まれるフェノールやホルムアルデヒドなどの目詰まり成分を分解するので、濾過手段における濾過膜の寿命を向上させることも可能となる。
ここで、前記濾過手段は、RO膜フィルタとするのが好ましい。
これによって、例えばイオン物質等の極小粒子を分離することができ、着色成分も除去可能となるので、濾過後には透明な洗浄水が得られ、より優れた浄化能力を有する脱臭システムとなる。なお、ここで用いられるRO膜フィルタは、単段であっても複数段であってもよいが、複数段とすれば濾過効率をさらに向上させることができるので、より好ましいといえる。
また、前記脱臭装置は、さらに、脱臭装置の運転時間を計測する計時手段及び/又は洗浄水の液色を検出する液色検出手段と、計時手段が所定時間の経過を計測した場合又は液色検出手段が所定の基準以上の液色を検出した場合に汚染水送水手段を稼動させる制御手段とを備え、前記光触媒分解装置は、光触媒分解装置の運転時間を計測する計時手段及び/又は汚染された洗浄水の液色を検出する液色検出手段と、計時手段が所定時間の経過を計測した場合又は液色検出手段が所定の基準以上の液色を検出した場合に劣化水送水手段を稼動させる制御手段とを備えるとしてもよい。このような構成とすることで、脱臭システムの自動化を図ることが可能となる。
本発明は、1つの脱臭装置として実現することも可能である。すなわち、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を光触媒により浄化する光触媒分解ユニットと、臭気成分及び固形成分の吸着効率が劣化した洗浄水を濾過する濾過ユニットとを備え、脱臭ユニットは、汚染された洗浄水を送水する汚染水送水手段を備え、光触媒分解ユニットは、汚染された洗浄水を貯留する汚染水貯留手段と、光触媒を担持して汚染された洗浄水に吸着されている臭気成分を分解して洗浄水を浄化する光触媒分解手段と、光触媒分解手段に汚染された洗浄水を散水する散水手段と、光触媒分解手段によって浄化された洗浄水を脱臭ユニットに循環させる洗浄水循環手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過ユニットに送水する劣化水送水手段とを備え、濾過ユニットは、吸着効率が劣化した洗浄水を貯留する劣化水貯留手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過手段と、濾過手段が分離した透過水を脱臭ユニット又は/及び光触媒分解ユニットに循環させる透過水循環手段と、濾過手段が分離した濃縮水を再び劣化水貯留手段に循環させる濃縮水循環手段とを備える脱臭装置としてもよい。
さらに、本発明は、臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、被処理ガスに洗浄水を散水して、臭気成分と固形成分とを除去する洗浄水散水ステップと、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を送水する汚染水送水ステップと、汚染された洗浄水を散水する汚染水散水ステップと、汚染水散水ステップにおいて散水された洗浄水に吸着されている臭気成分を光触媒によって分解して洗浄水を浄化する光触媒分解ステップと、光触媒分解ステップにおいて浄化された洗浄水を洗浄水散水ステップにおいて散水される洗浄水として循環させる洗浄水循環ステップと、光触媒分解ステップにおいて浄化されないで吸着効率が劣化した洗浄水を送水する劣化水送水ステップと、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過ステップと、濾過ステップにおいて分離した透過水を、洗浄水散水ステップにおいて散水される洗浄水として、又は/及び、光触媒分解ステップにおいて散水される洗浄水として、循環させる透過水循環ステップと、濾過ステップにおいて分離した濃縮水を、再び濾過ステップにおいて濾過される吸着効率が劣化した洗浄水として循環させる濃縮水循環ステップとを含む脱臭方法として実現することもできる。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明に係る脱臭システムによれば、洗浄水を光触媒による分解処理に加えて、RO膜による濾過処理によって浄化してシステム内を循環させるので、洗浄水を効率的に浄化して再利用することが可能となり、廃水の発生量の少ない、優れた洗浄水の浄化能力を発揮する脱臭システムが実現可能となる。特に、大量に臭気ガスの発生するために、排水量が多量となって排水処理場の負荷が大きくなったり、洗浄水の吸着効率が経時的に低下したりする鋳造工場等においては、廃水の発生量を著しく減ずることができる本発明に係る脱臭システムは、好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る光触媒脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
光触媒脱臭システム1は、シェルマシンや低圧鋳造機から発生するガス中に含まれるヤニ成分や粉塵、砂を除去するとともに、ガス中に含まれる臭気成分(例えば、アンモニア、ホルムアルデヒド、フェノールなど)を除去して無臭化し、大気中へ排出するシステムである。そして、この光触媒脱臭システム1は、吸入部10、脱臭部11、排出部12、光触媒分解部13及び濾過部14を備えている。
吸入部10は、シェルマシン等で発生しブロア等によって送風されてくる被処理ガスを吸引し、システム内に取り入れる機能を有する。
脱臭部11は、吸入部10が取り込んだ被処理ガスに洗浄水を散水し、被処理ガスに含まれる臭気成分や粉塵や砂などの固形成分を吸着除去して無臭化する機能を有する。
排出部12は、脱臭部11で無臭化された被処理ガス(清浄ガス)を外気に排出する機能を有する。
光触媒分解部13は、脱臭部11における散水により臭気成分や固形成分が吸着されて汚染された洗浄水(汚染水)を光触媒の作用によって分解して浄化し、浄化された水(浄化水)を脱臭部11に循環させる機能を有する。
濾過部14は、光触媒分解部13で臭気成分等が十分に分解されず劣化した汚染水(劣化水)を濾過し、濾過した水(透過水)を脱臭部11や光触媒分解部13に循環させる機能を有する。
図2は、上記のような機能を有する光触媒脱臭システム1の構成例の概略を示す図である。
図2に示すように、この光触媒脱臭システム1は大別して、脱臭装置20と光触媒分解装置30と濾過装置40とから構成されている。
脱臭装置20は、図1の吸入部10、脱臭部11及び排出部12に相当する装置であり、吸入口21、第1散水ノズル22、脱臭装置タンク23、気液接触材24、第2散水ノズル25、ミスト回収材26及び排気口27を備えている。
吸入口21は、被処理ガスの取り込み口であり、例えばファンの吸引力によって被処理ガスを脱臭装置20の内部に取り入れる。
第1散水ノズル22は、吸入口21から取り込まれた被処理ガスに洗浄水を散水するためのノズルである。この第1散水ノズルからの散水は、取り込まれた被処理ガスに混入する砂や粉塵などの固形成分を除去するとともに、後述する第2散水ノズル22の臭気成分の除去を補助する。
脱臭装置タンク23は、洗浄水を貯めるための槽であり、ここに貯留されている洗浄水が、連続的に稼働するポンプによって第1散水ノズル22及び第2散水ノズル25に給水される。
第2散水ノズル25は、気液接触材24を通過する被処理ガスに洗浄水を散水するためのノズルである。この第2散水ノズル25からの散水により、被処理ガスに含まれる臭気成分は除去されることになる。
気液接触材24は、第2散水ノズル25から散水される洗浄水と被処理ガスとを効率よく接触させるための充填材であり、例えば、テラレットなどのプラスチック充填材である。
ミスト回収材26は、第2散水ノズル25及び気液接触材24によって無臭化された被処理ガス(清浄ガス)に含まれるミスト状の水の粒径を大きくさせて水分を吸収する部材であり、例えば、網状フィルタなどである。
排気口27は、清浄ガスの排出口であり、例えばファンの送風によってミスト回収材26で水分が分離された清浄ガスを外気へ排出する。
このように構成される脱臭装置20は、吸入口21から被処理ガスを順次取り込んで、洗浄水の散水によって臭気成分や固形成分を除去し、清浄ガスとして排出するというように連続的に運転される。このとき、被処理ガスは、第1散水ノズル22の散水によって下方に向けて移動し、脱臭装置タンク23の水面上で向きを変えて上方へ、すなわち、気液接触材24の方向へ移動し、第2散水ノズル25の散水を受けた後、ミスト回収材26を経て清浄ガスとして排気口27から排出される。
また、脱臭装置タンク23に貯留されている洗浄水は、ポンプによって第1散水ノズル22及び第2散水ノズル25に送り込まれて、被処理ガスに散水された後に脱臭装置タンク23に戻され、装置内を循環する。このように、脱臭装置20を連続的に運転し、洗浄水が装置内を循環すると、洗浄水は被処理ガス中の臭気成分や固形成分を吸着して汚染され、吸着効率が悪化することとなる。
そのため、第1散水ノズル22及び第2散水ノズル25の被処理ガスへの散水によって被処理ガスに含まれる臭気成分や固形成分が吸着された洗浄水、すなわち汚染水は、間欠的に稼働するポンプ28によって光触媒分解装置30へ送られる。なお、ポンプ28を稼動させるタイミングは、脱臭装置20の運転が所定の時間を経過した時点としてもよいし、例えば、脱臭装置20内に液色を検出するカラーセンサを設けて、洗浄水の変色が所定の基準以上となった時点としてもよい。また、ポンプ28の稼動は、手動によるとしてもよいし、脱臭装置20にポンプ28の制御手段を備えさせて、タイマーが所定時間を計測した後やカラーセンサが所定基準以上の液色を検出した後に、ポンプ28を稼動させるようにしてもよい。
光触媒分解装置30は、図1の光触媒分解部13に相当する装置であり、脱臭装置20の脱臭処理を経て汚染された洗浄水を浄化する洗浄水処理装置であり、分解装置タンク31、散水ノズル32、光触媒フィルタ33及び光源34を備えている。
分解装置タンク31は、ポンプ28によって脱臭装置20から送り込まれる汚染水を貯めるための槽であり、ここに貯留されている汚染水がポンプによって散水ノズル32に給水される。
散水ノズル32は、汚染水を光触媒フィルタ33に散水するためのノズルである。
光触媒フィルタ33は、酸化チタンや酸化亜鉛等の光触媒を担持するフィルタである。この光触媒フィルタ33に担持されている光触媒は、ブラックライト等の光源34が照射する光によって活性化されており、散水ノズル32から散水される汚染水に吸着されている臭気成分を分解して汚染水を浄化する。また、この光触媒フィルタ33は、処理される水に含まれるフェノールやホルムアルデヒドなどの目詰まり成分を分解するので、後述する濾過装置40における濾過膜(RO膜)の寿命を向上させることにもなる。なお、ここで用いられる光触媒は、環境への負荷が少なく、入手容易性の観点から酸化チタンとするのが好ましい。
このように構成される光触媒分解装置30は、分解装置タンク31に貯留されている汚染水を散水ノズル32で光触媒フィルタ33に散水することによって、汚染水に含まれている臭気成分を光触媒の作用によって分解して汚染水を浄化する。そして、分解装置タンク31に貯留されている汚染水は、ポンプによって散水ノズル32に送り込まれて、光触媒フィルタ33に散水された後に分解装置タンク31に戻され、装置内を循環する。このようにして、分解されて浄化された水(浄化水)は、ポンプ35によって脱臭装置20へ再び送られて、脱臭装置20と光触媒分解装置30とを循環することになる。一方、脱臭装置20から送り込まれる汚染水の汚染の度合いが大きい場合のように、光触媒分解装置30における循環によっても汚染水を十分に浄化させることができず、汚染水の吸着効率がさらに劣化してしまう場合もある。
そのため、分解装置タンク31内において吸着効率が劣化した汚染水、すなわち劣化水は、間欠的に稼働するポンプ36によって濾過装置40へ送られる。なお、ポンプ36を稼動させるタイミングは、光触媒分解装置30の運転が所定の時間を経過した時点としてもよいし、例えば、光触媒分解装置30内に液色を検出するカラーセンサを設けて、汚染水の変色が所定の基準以上となった時点としてもよい。また、ポンプ36の稼動は、手動によるとしてもよいし、光触媒分解装置30にポンプ36の制御手段を備えさせて、タイマーが所定時間を計測した後やカラーセンサが所定基準以上の液色を検出した後に、ポンプ36を稼動させるようにしてもよい。
濾過装置40は、図1の濾過部14に相当する装置であり、濾過装置タンク41と濾過ユニット42とを備えている。
濾過装置タンク41は、ポンプ36によって光触媒分解装置30から送り込まれる劣化水を貯めるための槽である。ここに貯留されている劣化水は、間欠的に稼働するポンプ43によって濾過ユニット42に送られる。
濾過ユニット42は、劣化水を濾過する機構であり、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis)を利用した濾過によって劣化水を、不純物が濃縮された濃縮水と不純物を含まない透過水とに分離する。
この濾過ユニット42は、RO膜44、45、46の濾過フィルタが三段構造に設けられており、RO膜44で濾過されて不純物が濃縮された濃縮水は、RO膜45、RO膜46を経てさらに濃縮されることになる。そして、濾過ユニット42の濾過によって濃縮された濃縮水は、ポンプ47によって濾過装置タンク41に戻されて再度濾過ユニット42の濾過を受ける。
一方、濾過ユニット42で分離された透過水は、ポンプ48によって光触媒分解装置30に送られて、光触媒分解装置30と濾過装置40とを循環することになる。なお、ここでは、透過水を光触媒分解装置30に戻す例を示しているが、脱臭装置20に戻す構成としてもよい。
このように構成される濾過装置40は、濾過装置タンク41に貯留されている劣化水を、RO膜を利用した濾過ユニット42で濾すことによって透過水と濃縮水とに分離し、透過水を光触媒分解装置30や脱臭装置20に循環させ、濃縮水を再び濾過装置タンク41に戻して装置内を循環させる。また、濃縮水の濃度が高くなり濾過効率が低下した場合には、濾過装置タンク41に貯留されている濃縮水を取り出して廃棄することにより、濾過効率を元に戻すことができる。このとき、固形成分などの濃度の高い濃縮水の量を著しく少なくすることができるので、従来の脱臭装置に比して廃液コストは有利となる。
次に、以上のような装置で構成される光触媒脱臭システム1において、被処理ガスの無臭化処理で使用される洗浄水の処理手順を、図を用いて説明する
図3は、光触媒脱臭システム1における洗浄水の処理手順を示すフロー図である。
まず、脱臭装置タンク23に貯留されている洗浄水がポンプによって第1散水ノズル22に送られ、吸入口21から取り入れられた被処理ガスに散水される(ステップS10)。同様に、脱臭装置タンク23に貯留されている洗浄水は、ポンプによって第2散水ノズル25にも送られ、気液接触材24を通過してきた被処理ガスに散水される。
脱臭装置タンク23に貯留されている洗浄水は、被処理ガス中の臭気成分や固形成分を吸着し、汚染の度合いが所定の基準に至るまで脱臭装置20内を循環する(ステップS11のNo)。
脱臭装置タンク23に貯留されている洗浄水の汚染の度合いが所定の基準に至ると(ステップS12のYes)、汚染された洗浄水、すなわち、汚染水は、ポンプ28によって光触媒分解装置30の分解装置タンク31に送られ、光触媒による分解処理を受ける(ステップS12)。
光触媒による分解がされるまで汚染水は散水ノズル32によって光触媒フィルタ33に散水されて分解装置タンク31に戻されて光触媒分解装置30内を循環する。
そして、光触媒により分解されて浄化されると(ステップS13のYes)、浄化された水、すなわち浄化水は、ポンプ35によって脱臭装置20へ再び送られて、洗浄水として再利用される(ステップS10)。
一方、光触媒によって分解されず(ステップS13のNo)、分解装置タンク31内において吸着効率が劣化した汚染水、すなわち劣化水は、ポンプ36によって濾過装置40の濾過装置タンク41に送られ、濾過ユニット42のRO膜44、45、46による濾過処理を受ける(ステップS14)。
濾過ユニット42における濾過によって不純物が濃縮された濃縮水は、再度濾過装置タンク41に戻されて濾過装置40内を循環する(ステップS15のNo)。
一方、濾過ユニット42における濾過によって不純物が除去された透過水は(ステップS15のYes)、脱臭装置タンク23や分解装置タンク31に循環される(ステップS16)。
そして、光触媒脱臭システム1は、このような洗浄水の処理手順を運転を停止するまで繰り返す(ループA)。
以上のように、本実施の形態に係る光触媒脱臭システム1は、脱臭装置20において、洗浄水を被処理ガスに散水することにより洗浄水に臭気成分等を吸着させて被処理ガスを無臭化し、汚染水を光触媒分解装置30に送る。また、光触媒分解装置30においては、汚染水を装置内に循環させて光触媒により臭気成分を分解し、浄化水を脱臭装置20に循環させる。この光触媒による分解処理の間に脱臭装置20における脱臭処理で発生した汚染水は、浄化水と入れ替わって光触媒分解装置30に送られて、同様の分解処理を受けることとなる。さらに、分解処理を経ても汚染水の吸着効率が劣化した場合には、劣化水を濾過装置40に送る。濾過装置40においては、劣化水をRO膜により濾過して濃縮水と透過水とに分離し、透過水を脱臭装置20や光触媒分解装置30に循環させるとともに、濃縮水の濾過を繰り返す。
このような構成を備える光触媒脱臭システム1は、吸着効率が低下した洗浄水を光触媒による分解処理に加えて、RO膜による濾過処理によって浄化するので、洗浄水の浄化能力に優れたものとなり、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等においても、廃水の発生量を著しく減少させることが可能となる。
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明について説明する。
図2の構成を備える光触媒脱臭システムにおける濾過装置の能力テストを行った。この能力テストでは、上述した3段のRO膜による濾過処理を行い、最初の段のRO膜で濾過された透過水をそのまま次の段で濾過する方式によることとした。また、従来の鋳造機脱臭装置から排出される廃液(COD値:785ppm)を濾過装置によって濃縮液と透過水とに分離した。廃液は濾過によって90%が透過水として分離され(濃縮率90%)、廃液の10%が濃縮液として分離された。
能力テストの結果、第1段目のRO膜による濾過後に、透過水のCOD値は92ppmとなり、COD除去率は88.3%となった。また、第2段目のRO膜による濾過後には、透過水のCOD値は16ppmとなり、COD除去率は82.6%となった。さらに、第3段目のRO膜による濾過後には、透過水のCOD値は7ppmとなり、COD除去率は56.2%となった。濾過装置全体のCOD除去率は約99.1%となった。
以上、本発明に係る脱臭システムについて、実施の形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
例えば、上記実施の形態では、濾過ユニット42にRO膜を利用するとしたが、MF膜(マイクロフィルター)やUF膜(ウルトラフィルター)を利用することも差し支えない。なお、RO膜が1Å程度までの粒子、例えばイオン物質等の極小粒子を分離することができ、着色成分まで除去可能であるのに対し、MF膜では0.1μm程度、UF膜では0.01μm程度までの粒子が分離可能に留まることから、RO膜を利用するのが最適といえる。
また、RO膜の段数も3段としているが、段数の増減は自由に設計変更が可能であり、単段としてもよい。なお、RO膜を複数段とすれば、濾過効率が向上するので、より好ましいといえる。
さらに、本実施の形態では、脱臭装置、光触媒分解装置及び濾過装置を分離した構成を示したが、これらを一体化した装置として構成してもよいし、例えば、脱臭装置と光触媒分解装置とを一体化して、濾過装置のみを分離する構成とするなどしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明に係る脱臭システムは、塗装装置やメッキ装置などの臭気ガスを発生させる工業関連装置の脱臭システムとして有用であり、特に、大量に臭気ガスの発生する鋳造工場等の低圧鋳造機の脱臭システムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】光触媒脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【図2】光触媒脱臭システムの構成例の概略を示す図である。
【図3】洗浄水の処理手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0009】
1 光触媒脱臭システム
10 吸入部
11 脱臭部
12 排出部
13 光触媒分解部
14 濾過部
20 脱臭装置
21 吸入口
22 第1散水ノズル
23 脱臭装置タンク
24 気液接触材
25 第2散水ノズル
26 ミスト回収材
27 排気口
28、35、36、43、47、48 ポンプ
30 光触媒分解装置
31 分解装置タンク
32 散水ノズル
33 光触媒フィルタ
34 光源
40 濾過装置
41 濾過装置タンク
42 濾過ユニット
44、45、46 RO膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置を備える脱臭システムであって、さらに、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を光触媒により浄化する光触媒分解装置と、臭気成分及び固形成分の吸着効率が劣化した洗浄水を濾過する濾過装置とを備え、脱臭装置は、汚染された洗浄水を光触媒分解装置に送水する汚染水送水手段を備え、光触媒分解装置は、汚染された洗浄水を貯留する汚染水貯留手段と、光触媒を担持して汚染された洗浄水に吸着されている臭気成分を分解して洗浄水を浄化する光触媒分解手段と、光触媒分解手段に汚染された洗浄水を散水する散水手段と、光触媒分解手段によって浄化された洗浄水を脱臭装置に循環させる洗浄水循環手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過装置に送水する劣化水送水手段とを備え、濾過装置は、吸着効率が劣化した洗浄水を貯留する劣化水貯留手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過手段と、濾過手段が分離した透過水を脱臭装置又は/及び光触媒分解装置に循環させる透過水循環手段と、濾過手段が分離した濃縮水を再び劣化水貯留手段に循環させる濃縮水循環手段とを備えることを特徴とする脱臭システム。
【請求項2】
前記濾過手段は、RO膜フィルタであることを特徴とする請求項1記載の脱臭システム。
【請求項3】
前記脱臭装置は、さらに、脱臭装置の運転時間を計測する計時手段及び/又は洗浄水の液色を検出する液色検出手段と、計時手段が所定時間の経過を計測した場合又は液色検出手段が所定の基準以上の液色を検出した場合に汚染水送水手段を稼動させる制御手段とを備え、前記光触媒分解装置は、光触媒分解装置の運転時間を計測する計時手段及び/又は汚染された洗浄水の液色を検出する液色検出手段と、計時手段が所定時間の経過を計測した場合又は液色検出手段が所定の基準以上の液色を検出した場合に劣化水送水手段を稼動させる制御手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭システム。
【請求項4】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスに洗浄水を散水して、被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を光触媒により浄化する光触媒分解ユニットと、臭気成分及び固形成分の吸着効率が劣化した洗浄水を濾過する濾過ユニットとを備え、脱臭ユニットは、汚染された洗浄水を送水する汚染水送水手段を備え、光触媒分解ユニットは、汚染された洗浄水を貯留する汚染水貯留手段と、光触媒を担持して汚染された洗浄水に吸着されている臭気成分を分解して洗浄水を浄化する光触媒分解手段と、光触媒分解手段に汚染された洗浄水を散水する散水手段と、光触媒分解手段によって浄化された洗浄水を脱臭ユニットに循環させる洗浄水循環手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過ユニットに送水する劣化水送水手段とを備え、濾過ユニットは、吸着効率が劣化した洗浄水を貯留する劣化水貯留手段と、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過手段と、濾過手段が分離した透過水を脱臭ユニット又は/及び光触媒分解ユニットに循環させる透過水循環手段と、濾過手段が分離した濃縮水を再び劣化水貯留手段に循環させる濃縮水循環手段とを備えることを特徴とする脱臭装置。
【請求項5】
臭気成分と固形成分とを含む被処理ガスから臭気成分と固形成分とを除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、被処理ガスに洗浄水を散水して、臭気成分と固形成分とを除去する洗浄水散水ステップと、臭気成分及び固形成分を吸着して汚染された洗浄水を送水する汚染水送水ステップと、汚染された洗浄水を散水する汚染水散水ステップと、汚染水散水ステップにおいて散水された洗浄水に吸着されている臭気成分を光触媒によって分解して洗浄水を浄化する光触媒分解ステップと、光触媒分解ステップにおいて浄化された洗浄水を洗浄水散水ステップにおいて散水される洗浄水として循環させる洗浄水循環ステップと、光触媒分解ステップにおいて浄化されないで吸着効率が劣化した洗浄水を送水する劣化水送水ステップと、吸着効率が劣化した洗浄水を濾過して濃縮水と透過水とに分離する濾過ステップと、濾過ステップにおいて分離した透過水を、洗浄水散水ステップにおいて散水される洗浄水として、又は/及び、光触媒分解ステップにおいて散水される洗浄水として、循環させる透過水循環ステップと、濾過ステップにおいて分離した濃縮水を、再び濾過ステップにおいて濾過される吸着効率が劣化した洗浄水として循環させる濃縮水循環ステップとを含むことを特徴とする脱臭方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−62129(P2008−62129A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240055(P2006−240055)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(390039619)株式会社ピュアレックス (19)
【Fターム(参考)】