説明

脱臭装置

【課題】 厨房などの食品を扱う場所において、空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解とゴキブリの忌避作用とを兼ね備えた脱臭装置を提供する。
【解決手段】 高電圧放電によってオゾンおよび紫外線を発生させる手段8、9と、発生させた紫外線によって活性化され光触媒作用により空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解作用をおこなう光触媒モジュール5とを送風経路3内に配置した脱臭装置1において、発生手段から排出されるオゾン濃度を0.7ppm以上としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の臭気成分や有害物質などを分解する脱臭装置に関し、特に臭気除去とともにゴキブリ忌避作用を有する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外空気や騒音など環境汚染の定常化にともない、住宅の高気密化が進むとともに居住空間内における空気質改善の要望が高まっている。空気質の中でも、タバコの煙の臭いや介護環境などにおける代謝臭気の低減、または住宅建材から発生するVOC(揮発性有機物)に代表される有害ガス成分の除去に対するニーズは特に大きくなっている。
【0003】
これらに要望に対しては、従来より、活性炭に代表される吸着剤による脱臭、あるいは臭気成分を他の薬剤成分と反応させて臭気の質を変えて臭気低減する方法が採用されてきた。
【0004】
従来技術のうち、吸着剤による脱臭や有害ガス成分の除去については吸着量に限界があるため、長期に亙る使用に際しては脱臭フィルタの交換は不可欠となっていた。また、臭気成分を他の薬剤成分と反応させることで臭気の質を変え、臭気を低減する方法についても、薬剤成分が消耗するため吸収薬剤を交換する必要があり、煩雑であるとともに、薬剤成分の臭気環境中に放出させる場合の放出量の制御に難点があった。
【0005】
そしてまた、ホルムアルデヒトのような有害ガス成分の分解除去をおこなうには、酸化還元電位の高い触媒反応が必要になるが、オゾンによる酸化分解では完全分解にまで至らず完全に無害化することは困難であった。
【0006】
これらに対して、酸化チタンに代表される光触媒に紫外線を照射することにより、上記有害ガス成分を完全に分解することは可能であり、高電圧放電によってオゾンや紫外線を発生させ、この紫外線により活性化された光触媒作用で空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解をおこなう光触媒モジュールと、高電圧放電手段により発生させたオゾンをオゾン分解手段で分解するようにした脱臭装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−339839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この脱臭装置における光触媒は非常に高い酸化力を保有しているために、ほとんどの有機物質を分解することが可能であり、脱臭性能の制御や有害ガスの完全分解、装置を廃棄する際の環境負荷などの面で優れているものである。
【0008】
一方、飲食店などの厨房向けとして、オゾンを放出することで脱臭とゴキブリ忌避をはかった技術が存在するが、単にオゾンを放出するだけでは充分な脱臭性能を得ることはできず、臭気の種類によっては分解できないこともあった。また、オゾンは光触媒に比べて酸化力が弱いために、臭気物質を分解するのに時間がかかるという欠点があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、厨房などの食品を扱う場所において、空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解とゴキブリの忌避作用とを兼ね備えた脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の脱臭装置は、高電圧放電によってオゾンおよび紫外線を発生させる手段と、発生させた紫外線によって活性化され光触媒作用により空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解作用をおこなう光触媒モジュールとを送風経路内に配置した脱臭装置において、発生手段から排出されるオゾン濃度を0.7ppm以上としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、高電圧放電によって発生される紫外線で光触媒を励起して、空気中に含まれている臭気成分や有害物質などを分解して脱臭するとともに、同時に発生するオゾンによって臭気除去とゴキブリ忌避作用を得ることができるものであり、飲食店の厨房などの食品を扱う場所における脱臭装置として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に沿って本発明の1実施形態について説明する。図1は本発明に係る脱臭装置(1)の概略構成図であり、飲食店などの厨房に設置した送風部材(2)によって形成した風路(3)中に送風ファン(4)を配置し、風路の風下側に光触媒モジュール(5)を設けている。
【0013】
光触媒モジュール(5)は、アルミナやシリカなどの多孔質セラミックからなる基体の表面に、酸化チタンに代表される光触媒材料を塗布して乾燥あるいは焼結することで固着した光触媒フィルタ(6)(7)を2枚隣設し、この光触媒フィルタ間には、ステンレスなどの薄板をエッチングして、網目状に形成した放電電極(8)を立設するとともに、前記2枚の光触媒フィルタ(6)(7)の風路(3)における風上と風下側には前記放電電極(8)と同様に形成した対極(9)をそれぞれ配置して構成している。
【0014】
なお、前記光触媒モジュール(5)における光触媒フィルタは、必ずしも2枚隣設せずとも、臭気成分や有害物質が比較的少ない場合には、1枚の光触媒フィルタの前後に対極(9)と放電電極(8)を設ける構成でもよい。
【0015】
(10)は電源回路であり、風路(3)から隔離した箇所に密閉構造で配置された高電圧発生トランス(11)により前記放電電極(8)と各対極(9)との間に正のパルス状の高電圧を印加する。
【0016】
前記放電電極(8)の網目の大きさは、対極(9)の網目の大きさよりも大きく形成されている。この構成により、放電電極(8)と対極(9)は紫外線発生用の放電手段として機能し、双方の電極間に放電が起きて波長が380nm以下である紫外線が発生する。
【0017】
前記脱臭装置(1)を動作させる場合には、電源回路(10)に通電して送風ファン(4)を駆動することによって臭気成分や有機物質を風路(3)内に吸入し、同時に、放電電極(8)と対極(9)との間に電圧を与えることで、電極間に放電が起き紫外線を発生させる。紫外線が光触媒フィルタ(6)(7)に照射されることにより、光触媒を活性化させて発生した活性酸素が風路(3)を流下し、水酸化ラジカル(遊離基)の強い酸化作用で、光触媒フィルタ(6)(7)の表面に付着した臭気ガス成分や有機化合物の結合を分解し、無臭化若しくは低臭気化することで脱臭するものである。
【0018】
さらに、前記脱臭装置においては、放電電極(8)と対極(9)が放電すると、紫外線とともにオゾンが発生する。したがって、前記光触媒モジュール(5)は紫外線による活性酸素の発生で有害ガス成分を完全に分解させる機能とともに、オゾン発生手段としても機能するものであり、この発生するオゾンで、脱臭とともにゴキブリ忌避の作用効果を得るものである。
【0019】
ゴキブリの忌避にオゾンが有効である理由を以下に述べる。ゴキブリは常に集合フェロモンを出すことにより集団で行動しているが、この集合フェロモンはオゾンによって容易に分解されるものであることから、集合フェロモンが分解されると、ゴキブリは集団での行動ができなくなって繁殖活動がおこなわれなくなり、それまでの生活場所を忌避して他の集合フェロモンがある場所に移動してしまう習性があるからである。
【0020】
以下、実施例により具体的に説明する。
【0021】
(実施例1)
図1の構成により、放電によるオゾン発生量を0.8cc/分とし、送風ファン(4)による風量を1m/分に設定して排出オゾン濃度を0.7ppmとした。この脱臭装置(1)を1mの密閉容器に入れ、臭気物質を初期濃度30ppmのアンモニアとして脱臭性能とゴキブリ忌避性の試験をおこなった。時間経過によるアンモニア残存率を測定した脱臭性能の結果は、図4の(a)に示すとおりであり、30分経過後のデータとして、従来のオゾン放出方式(d)、および無対応(e)に対して30%強の脱臭効果の改善が認められた。
【0022】
また、該密閉空間中に生後6ヶ月のオスのゴキブリ5匹とメス5匹を入れ、脱臭装置()を運転したところ、ゴキブリは脱臭装置から離れた場所にまとまって生息していたがあまり行動せず、弱っていることが観察された。
【0023】
比較試験として、同条件でオゾン排出濃度を0.4ppmとした試験を行ったが、ゴキブリは密閉空間内を自由に動き回っており、ゴキブリ忌避効果は認められなかった。
【0024】
以上により、脱臭装置(1)から送風ファン(4)によって室内に排出されるオゾン濃度を0.7ppm以上とすれば、充分なゴキブリ忌避性能を得ることができるものであり、脱臭性能としては、発生オゾンによる効果と光触媒による効果の双方が有効に働くことで、従来のオゾン放出方式に比較して格段の脱臭性能を得られることが理解される。
【0025】
このとき、自然界におけるオゾン濃度は0.1ppmであるが、人体に対しては、作業環境基準である0.5ppm以上の濃度雰囲気中に長時間、例えば8時間いると有害となるものであることから、オゾンの放出は厨房などが無人となる夜間に駆動させることが好ましく、タイマーによって運転開始および運転終了時間を設定すればよい。
【0026】
具体的には、脱臭装置(1)の電源回路(11)にタイマーを取り付け、厨房から人がいなくなる時間に脱臭装置(1)をONさせ、朝の出勤時の2時間前にOFFさせるようにした結果、朝の出勤時までには厨房内の臭気が低下するとともに、オゾン臭も感じることがなかった。
【0027】
なお、タイマーで運転のON、OFFを制御するだけでなく、センサーで臭気の有無を検出して運転を制御したり、これと放電周波数や電圧の低減、および間欠運転と個々に組み合わせ、あるいは複合させて制御できることはいうまでもない。
【0028】
また、脱臭装置(1)における放電手段の高電圧発生トランス(11)は、電子機器であり周囲温度が上昇する可能性があることを考慮すると風路(3)内に設置する方が信頼性を確保しやすいが、トランス(11)はオゾン雰囲気に曝されると寿命が極端に短くなるため、本発明では、風路(3)から離間させるとともに密閉構造にして、寿命の長期化をはかっている。
【0029】
(実施例2)
次に、図1と同一部分に同一符号を附した図2により実施例2を説明する。本実施例の脱臭装置(21)は、光触媒モジュール(5)の風下側に所定距離を空けてオゾンを吸収するオゾン分解触媒(12)を設置したものである。このオゾン分解触媒(12)は二酸化マンガンを主成分としたハニカム形状の焼結体から形成されており、この性能を調整することで排出するオゾン濃度をコントロールすることができる。
【0030】
すなわち、ゴキブリ忌避のためのオゾンは、空間の広さに応じてある一定量の発生が得られればよいものであり、それ以上のオゾン量が放出できるときは脱臭作用に有効に使用する。そして、オゾンによる脱臭は、空間にオゾンを放出するよりもオゾン分解触媒のような分解手段を用いて、オゾン分解触媒の表面でオゾン分子と臭気物質の両方を吸着し、オゾンによる酸化分解の反応場とする方が分解性能がよいものである。
【0031】
オゾン分解手段の性能は、オゾン発生量と放出量との関係から分解手段の大きさなどを調整し、発生したオゾンの一部を分解するように設定することで、オゾン臭の発生を防いだり、人体への害を防ぐようにする必要がある。
【0032】
上記により、本実施例では、オゾン分解手段として、二酸化マンガンを主成分とするオゾン分解触媒(12)を設置し、放電によるオゾン発生量を1.2cc/分とした。前記発生オゾンを全て処理するためには10mm厚のオゾン分解触媒が必要であるが、本実施例では3mm厚とすることで、排出オゾン濃度を0.7ppmにした。
【0033】
脱臭性能の結果は、図4の(b)に示すとおりであり、オゾン発生量を増加させたことで実施例1の場合よりもさらに性能向上した。
【0034】
なお、前述したように、オゾンの発生を無人の夜間に設定したような場合は、オゾンの放出後数10分も経過すれば、オゾンは酸素に戻って全く無害な存在となるため、オゾン分解触媒(12)の分解作用は不要となる。
【0035】
(実施例3)
本実施例は、光触媒モジュール(5)の後段に設けたオゾン分解手段(32)の下流側に、さらにオゾン発生装置(13)を設けることで、排出オゾン濃度を制御するようにしたものである。
【0036】
オゾンの発生量は放電条件によって一定となるが、臭気物質の量が非常に多い場合などは空間に排出される前にオゾンが消費されてしまい、ゴキブリ忌避のための放出オゾン量が不足する可能性がある。本実施例3はこれを防いで放出オゾン量を一定に保つため、風路(3)の最終段に電極(14)と対極(15)からなる第2のオゾン発生手段(13)を設けたものであり、図3に示すように、オゾン分解手段として、二酸化マンガンを主成分とする10mm厚のオゾン分解触媒(32)を設置し、放電によるオゾン発生量を1.2cc/分とした。さらに、最後段にオゾン発生装置(13)を設けて排出オゾン濃度を0.7ppmに調整した。
【0037】
脱臭性能の結果は、図4の(c)に示すとおりであり、オゾン分解触媒(32)と最後段のオゾン発生装置(13)により、オゾンによる酸化分解効果が大きくなり、さらに脱臭性能を向上させることができ、同時に、オゾン発生量を調整することで、より安定したゴキブリ忌避性能を確保することができた。
【0038】
なお、本発明による脱臭装置は、前記実施例の飲食店の厨房への設置に限られるものではなく、一般家庭や製造工場などにおけるエアコンやエアクリーナの送風経路に適用してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、高電圧放電による光触媒作用を用いた脱臭装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1実施形態を示す脱臭装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す脱臭装置の概略構成図である。
【図3】図2に対し、さらに他の実施例を示す脱臭装置の概略構成図である。
【図4】各実施例の脱臭性能を示す比較グラフである。
【符号の説明】
【0041】
1、21、31 脱臭装置 2 送風部材 3 風路
4 送風ファン 5 光触媒モジュール 6、7 光触媒フィルタ
8、14 放電電極 9、15 対極 10 電源回路
11 トランス 12 オゾン分解触媒 13 第2のオゾン発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧放電によってオゾンおよび紫外線を発生させる手段と、発生させた紫外線によって活性化され光触媒作用により空気中に含まれている臭気成分や有害物質などの分解作用をおこなう光触媒モジュールとを送風経路内に配置した脱臭装置において、発生手段から排出されるオゾン濃度を0.7ppm以上としたことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
運転タイマーによりオゾン排出時間を制御するようにしたことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
高電圧を発生する高電圧トランスを送風経路から隔離した密閉空間内に設置したことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項4】
送風経路における光触媒モジュールの下流側にオゾン分解手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の脱臭装置。
【請求項5】
オゾン分解手段の性能を調整することで排出オゾン濃度をコントロールするようにしたことを特徴とする請求項4記載の脱臭装置。
【請求項6】
オゾン分解手段の下流側に、第2のオゾン発生手段を設けて排出オゾン濃度をコントロールするようにしたことを特徴とする請求項4記載の脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−212216(P2006−212216A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28107(P2005−28107)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】