説明

脱臭装置

【課題】臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく速やかにミストに吸収して効率よく脱臭する。
【解決手段】脱臭装置は、臭気ガスが供給される脱臭タンク1と、この脱臭タンク1に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給する霧化装置2と、脱臭タンク1から排出される排出ガスからミストを分離する回収装置3とを備えている。脱臭装置は、脱臭タンク1に供給される臭気ガスをミストに吸着させて臭気成分の濃度を低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、印刷工場や塗装工場から排出される臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して脱臭する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷工場や塗装工場から排気されるガスは、トルエンなどの臭気成分を含んでいる。臭気成分は周囲の環境を悪くして種々の弊害を与えることから、脱臭して排出することが要求される。臭気ガスは、活性炭等の吸着剤に臭気成分を吸着して分離することができる。臭気成分を吸着剤に吸着させる装置は、臭気ガスの流量と濃度でタンクの容量が特定される。タンクは、臭気ガスの流量に比例して臭気ガスの通過方向に直交する面積、たとえば臭気ガスを垂直方向に通過させるタンクにあっては、水平断面積を大きくする必要がある。また、臭気成分を分離する程度、いいかえると、タンクから排出される臭気ガスに含まれる臭気成分を低濃度にするほど、タンクを高くする必要がある。たとえば、印刷工場から排出される臭気ガスの流量は、毎分数百立方メートルと極めて大きくなるので、吸着剤を充填するタンクが極めて大きくなって、設備コストが高騰し、経済的な面からもこの方式で臭気ガスを脱臭することができない。
【0003】
さらに、臭気ガスをガスバーナーで高温に加熱して臭気成分を燃焼させる方式も開発されているが、この方式は燃料消費が多く、ランニングコストが高くなって不経済な欠点がある。このような欠点を解消する装置として、臭気ガスを微細なミストに接触させて臭気成分を分離する装置が開発されている。(特許文献1及び2参照)
【0004】
特許文献1の空気清浄機は、超音波振動子などで水蒸気を発生させる水蒸気発生部を備えている。この水蒸気発生部で発生される水蒸気は、空気と接触されて空気との混合気体とする。混合気体は静電回収部に送られて帯電され、空気に含まれる汚染物質を液滴状として負電極で集塵して回収する。また、特許文献2は、気液接触方法と装置を記載している。この装置は、気流中に液滴を噴霧する超音波液滴噴霧ノズルを備えている。この超音波液滴噴霧ノズルに対して高電圧に帯電した電極を、イオン化ダクトに設けている。イオン化ダクトの電極でもって、気体と液滴とを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−90262号公報
【特許文献2】特開昭51−104476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の特許文献に記載される装置は、水などの液体を超音波振動で霧化し、霧化されたミストに気体を接触させて、気体に含まれる成分を高電圧の電極でもって分離する。この装置は、空気に含まれる臭気成分をミストに吸収して分離できる。ただ、この構造の装置は、全ての臭気成分を効率よくミストに吸収して回収するのが難しい欠点がある。
【0007】
本発明は、さらに従来の装置の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく速やかにミストに吸収して効率よく脱臭できる脱臭装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の脱臭装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
脱臭装置は、臭気ガスが供給される脱臭タンク1、21、31、41と、この脱臭タンク1、21、31、41に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給する霧化装置2、22、32、42と、脱臭タンク1、21、31、41から排出される排出ガスからミストを分離する回収装置3、43とを備えている。脱臭装置は、脱臭タンク1、21、31、41に供給される臭気ガスをミストに吸着させて臭気成分の濃度を低下する。
【0009】
以上の脱臭装置は、臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく速やかにミストに吸収して効率よく脱臭できる特徴がある。とくに、本発明の脱臭装置は、水に界面活性剤を添加しているので、トルエンなどの非親水性の溶媒からなる臭気成分を効率よく分離して脱臭できる特徴がある。
【0010】
本発明の脱臭装置は、霧化装置22が、界面活性剤を含む水を超音波振動でミストに霧化する超音波振動子26と、この超音波振動子26に高周波電力を供給する交流電源27とを備えることができる。また、本発明の脱臭装置は、霧化装置2、42を、界面活性剤を含む水を静電噴霧する装置とすることができる。
【0011】
以上の脱臭装置は、ミストを微細な粒子とすることで、ミストと臭気成分との気液界面を理想的な状態として、臭気成分をミストに極めて効率よく、しかも速やかに吸着できる特長がある。それは、ミストを微細な粒子とすることで、排出ガスと界面活性剤を含む水との接触面積を著しく大きくできるからである。したがって、脱臭装置は、臭気ガスに含まれる臭気成分を速やかに分離して、効率よく脱臭できる特徴がある。
【0012】
本発明の脱臭装置は、霧化装置42が、界面活性剤を含む水を静電噴霧するノズル47を備えると共に、回収装置43がサイクロン70を備え、さらに、ノズル47とサイクロン70とに電位差を設ける電源49とを備えて、ノズル47から静電噴霧されたミストをサイクロン70の内面に静電気の作用で付着して回収することができる。
以上の脱臭装置は、ミストを微細な粒子として界面活性剤を含む水と臭気ガスとの接触面積を極めて大きくして、臭気成分を速やかに効率よくミストに吸着しながら、臭気成分を吸収したミストを効率よく回収できる特徴も実現する。この脱臭装置は、ミストが速やかに臭気成分を吸収し、さらに、臭気成分を吸収したミストを効率よく回収することで、臭気ガスを効果的に脱臭して臭気ガスに含まれる臭気成分の濃度を著しく低減できる特徴がある。
【0013】
本発明の脱臭装置は、霧化装置32が、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを噴射する2流体ノズル35を備え、2流体ノズル35でもって、界面活性剤を含む水をミストに霧化することができる。
この脱臭装置は、界面活性剤を含む水と臭気ガスとの気液界面を理想的な状態として、界面活性剤を含む水ででもって臭気ガスの臭気成分を極めて効率よく、しかも速やかに脱臭できる特長がある。それは、界面活性剤を含む水と臭気ガスとが2流体ノズルで噴霧されるので2流体ノズルの内部において、高速流動される臭気ガスと界面活性剤を含む水とを強制的に接触させて、界面活性剤を含む水をミストに粉砕して噴射して、臭気成分を界面活性剤を含む水に吸着させるからである。2流体ノズルは、その内部で高速流動する臭気ガスを、界面活性剤を含む水と激しく接触させながらミストに霧化する。したがって、この脱臭装置は、界面活性剤を含む水と臭気ガスとの気液界面において、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを理想的な状態で接触させて、臭気ガスに含まれる臭気成分を速やかに効率よく界面活性剤を含む水に吸着できる。
【0014】
本発明の脱臭装置は、臭気ガスを有機溶媒とすることができる。
【0015】
本発明の脱臭装置は、回収装置3、43が、排出ガスを冷却する冷却ダクト60を備えており、この冷却ダクト60で冷却して臭気ガスからミストを回収することができる。
以上の脱臭装置は、排出ガスを冷却してミストを回収するので、臭気成分を吸着して気化した微細なミストを液化して効率よく回収できる特徴がある。
【0016】
本発明の脱臭装置は、回収装置3、43がサイクロン50、70を備え、サイクロン50、70でもって排出ガスからミストを分離することができる。
この脱臭装置は、サイクロンでもって、臭気成分を吸収しているミストを効率よく回収できる。
【0017】
本発明の脱臭装置は、脱臭タンク1、21、31、41と回収装置3、43とを多段に連結して、各々の脱臭タンク1、21、31、41に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給して、臭気ガスをミストに吸着して回収することができる。
この脱臭装置は、多段に連結して臭気成分を分離するので、臭気ガスに含まれる臭気成分の濃度を著しく低くできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例にかかる脱臭装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す脱臭装置の静電噴霧装置を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施例にかかる脱臭装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第3の実施例にかかる脱臭装置の概略構成図である。
【図5】図4に示す脱臭装置の2流体ノズルの拡大断面図である。
【図6】本発明の第4の実施例にかかる脱臭装置の概略構成図である。
【図7】図6に示す脱臭装置の脱臭タンクの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための脱臭装置を例示するものであって、本発明は脱臭装置を以下のものに特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
本発明の脱臭装置は、臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して、臭気ガス中の臭気成分の濃度を低下させる。この脱臭装置は、臭気ガスとして、たとえば、揮発性有機化合物(VOC[Volatile Organic Compounds])である臭気成分を含むガスを分解する。脱臭装置は、たとえば、揮発性有機化合物(VOC)として、トルエン、キシレン、酢酸エチル等の非親水性の溶媒からなる臭気成分を分離して、臭気ガス中の臭気成分の濃度を低下できる。ただ、脱臭装置は、揮発性有機化合物(VOC)以外の臭気成分を分離して、臭気成分濃度を低下させることもできる。
【0022】
図1ないし図5に示す脱臭装置は、臭気ガスが供給される脱臭タンク1、21、31と、この脱臭タンク1、21、31に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給する霧化装置2、22、32と、脱臭タンク1、21、31から排出される排出ガスからミストを分離する回収装置3とを備える。これらの脱臭装置は、脱臭タンク1、21、31に供給される臭気ガスを、界面活性剤を含む水を霧化させたミストに吸着し、このミストを回収して臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して、臭気成分の濃度を低下する。
【0023】
図1に示す脱臭装置の霧化装置2は、脱臭タンク1の内部に界面活性剤を含む水を微細な粒子のミストに噴霧する静電噴霧装置15である。静電噴霧装置15は、図2に示すように、界面活性剤を含む水を加圧してノズル17に供給する加圧ポンプ16と、この加圧ポンプ16から供給される加圧された界面活性剤を含む水を静電気の作用で微細な粒子に噴霧してミストに霧化するノズル17と、このノズル17に対して高電圧を印加している静電噴霧用の電極18と、この電極18とノズル17との間に高電圧を印加する高圧電源19とを備えている。加圧ポンプ16は、界面活性剤を含む水を蓄えている貯溜タンク4に連結されており、界面活性剤を含む水を連続的にノズル17に供給している。図の静電霧化装置2は、複数のノズル17を備えており、これらのノズル17を脱臭タンク1の天板に、下向きに固定している。各々のノズル17は、加圧ポンプ16から加圧して供給される界面活性剤を含む水を、脱臭タンク1の内部に噴霧する。静電噴霧装置15は、高圧電源19の静電電圧でもって、ノズル17から噴射されるミストを微細な粒子として脱臭タンク1に噴霧する。脱臭タンク1に噴霧されたミストは、臭気ガスに接触して臭気成分を吸着する。
【0024】
図3に示す脱臭装置の霧化装置22は、脱臭タンク21の内部に界面活性剤を含む水を微細な粒子のミストとして脱臭タンク21に噴霧する超音波霧化装置25である。超音波霧化装置25は、界面活性剤を含む水を超音波振動で微細なミストに霧化する超音波振動子26と、この超音波振動子26に高周波電力を供給する交流電源27とを備える。図3の超音波霧化装置25は、脱臭タンク21に界面活性剤を含む水を蓄えており、脱臭タンク21の底面に複数の超音波振動子26を固定している。脱臭タンク21は、供給ポンプ29を介して、界面活性剤を含む水を蓄えている貯溜タンク4に連結されており、界面活性剤を含む水が供給されている。脱臭タンク21の底面に固定された超音波振動子26は、上向きに超音波振動を放射して、界面活性剤を含む水を超音波振動させて液面からミストに霧化する。霧化されたミストは、脱臭タンク21に供給される臭気ガスに接触し、臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着して分離する。
【0025】
図4に示す脱臭装置の霧化装置32は、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを噴射する2流体ノズル35を備えており、この2流体ノズル35でもって界面活性剤を含む水をミストに霧化する。2流体ノズル35は、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを一緒に脱臭タンク31に噴霧して、臭気ガスをミストに接触させる。図の霧化装置32は、界面活性剤を含む水をミストに噴霧する2流体ノズル35と、この2流体ノズル35に加圧された臭気ガスを供給する加圧供給部36とを備える。この2流体ノズル35は、界面活性剤を含む水を加圧された臭気ガスで破砕して微細なミストとして噴霧する。
【0026】
2流体ノズル35の断面図を図5に示している。図の2流体ノズル35は、加圧された臭気ガスを噴射する噴射路37と、この噴射路37に界面活性剤を含む水を供給する水路38とを備える。噴射路37は、供給される臭気ガスの流速を速くするために、界面活性剤を含む水の供給部を細く絞ってベンチュリー部37Aとしている。この2流体ノズル35は、加圧供給部36から供給される加圧された臭気ガスを内部で高速流動させる。とくに、ベンチュリー部37Aで流速が速くなる。高速流動する臭気ガスは、ベルヌーイの定理によりベンチュリー部37Aで圧力が低くなって、界面活性剤を含む水を吸入する。水路38から吸入された界面活性剤を含む水は、高速流動する臭気ガスで破砕され、微細なミストとなって噴射路37から噴射される。水路38は、界面活性剤を含む水を蓄えている貯溜タンク4に供給ポンプ39を介して連結されており、貯溜タンク4から連続的に界面活性剤を含む水が供給されている。
【0027】
この2流体ノズル35は、高速流動する臭気ガスで界面活性剤を含む水をミストに霧化して噴射する。このとき、臭気ガスは界面活性剤を含む水と激しく接触して界面活性剤を含む水を破砕し、さらに、界面活性剤を含む水を微細なミストに破砕する。したがって、界面活性剤を含む水は、気液界面において臭気ガスに激しく撹拌され、しかも微細なミストに破砕される。このため、界面活性剤を含む水と臭気ガスは、気液界面において理想的な状態で接触し、臭気ガスに含まれる臭気成分は速やかに界面活性剤を含む水に吸収される。加圧供給部36は、臭気ガスを2流体ノズル35に強制送風するコンプレッサー36Aや有圧ファンが使用できる。
【0028】
脱臭タンク1、21、31に噴霧されて、臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着したミストは、臭気ガスと共に脱臭タンク1、21、31から排出される。脱臭タンク1、21、31から排出される排出ガスは、回収装置3に供給されて、臭気成分を吸着したミストが回収される。
【0029】
回収装置3は、脱臭タンク1、21、31から排出される排出ガスからミストを分離して回収する。図1、図3、及び図4に示す脱臭装置は、第1の回収装置3Aと第2の回収装置3Bとからなる2段の回収装置3を備えている。第1の回収装置3Aと第2の回収装置3Bは直列に連結されて、脱臭タンク1、21、31の排出側に連結されている。
【0030】
図の脱臭装置は、第1の回収装置3Aをサイクロン50としている。回収装置3であるサイクロン50は、脱臭タンク1、21、31の排出側に連結しており、脱臭タンク1、21、31から排出される排出ガスから、臭気成分を吸着したミストを分離する。サイクロン50は円筒状で、天板52の中心に、排出ガスを排出する排気口53を開口している。円筒51の下部は、下方に向かって細くなるテーパー部54としている。このテーパー部54の下端は、排出ガスから分離されたミストを排出する排出口55を開口している。このサイクロン50は、脱臭タンク1、21、31から排出される排出ガスを水平面内に回転させながら臭気成分を吸着したミストを凝集して分離する。排出ガスから分離されたミストは、下端の中心に集められて排出口55から排出される。ミストが分離された排出ガスは、天板52の排気口53から排気される。この構造のサイクロン50は、排出ガスから能率よくミストを分離できる。
【0031】
さらに、図の脱臭装置は、第2の回収装置3Bを冷却ダクト60としている。回収装置3である冷却ダクト60は、第1の回収装置3Aであるサイクロン50の排出側に連結しており、サイクロン50から排出される排出ガスから、残存するミストを分離して回収する。冷却ダクト60は、ミストを冷却して凝集させる冷却用熱交換器61を内蔵している。この冷却用熱交換器61は、熱交換パイプ62にフィン(図示せず)を固定している。熱交換パイプ62に冷却用の冷媒や冷却水を循環させて、冷却用熱交換器61は冷却される。排出ガスに残存するミストは、一部が気化して排出ガスに含まれる。排出ガスが冷却用熱交換器61で冷却されると、気化した微細なミストは、結露、凝集されて効率よく回収される。排出ガスと共に冷却ダクト60に流入されるミストは、冷却用熱交換器61に衝突し、あるいは互いに衝突して大きく凝集し、あるいはまた冷却用熱交換器61のフィン等に衝突して大きく凝集して溶液として回収される。冷却用熱交換器61でミストが分離された排出ガスは、臭気成分の濃度が低下されて排出される。
【0032】
以上の脱臭装置は、サイクロン50と冷却ダクト60からなる2段の回収装置3を備え、サイクロン50でミストが回収された排出ガスを、冷却ダクト60で冷却してミストを凝集させて回収している。このように、2段の回収装置3で排出ガス中のミストを回収する構造は、各々の回収装置3で排出ガス中の臭気成分を分離できるので、2段の回収装置3を通過させることによって、排出ガスに含まれる臭気成分の濃度をより効果的に低下できる特長がある。ただ、脱臭装置は、必ずしも回収装置を2段に連結する必要はなく、単一の回収装置で排出ガスに含まれるミストを凝集して回収することも、3段以上に回収装置を連結して排出ガスに含まれるミストを凝集して回収することもできる。
【0033】
さらに、以上の脱臭装置は、回収装置3として、サイクロン50と冷却ダクト60を備えているが、回収装置には、パンチング板、デミスター、シェブロン、バグフィルター、キャピラリーないしハニカム、スクラバー、スプレー塔、静電回収機等の、排出ガス中からミストを分離して回収できる他の全ての構造のものが使用できる。さらに、本発明の脱臭装置は、以上の回収装置を、単独で使用し、あるいは複数を多段に連結することもできる。とくに、タイプの異なる回収装置を組み合わせてミストを分離する構造は、回収する臭気成分の濃度や特性に応じて、最適な回収装置を選択することによって、臭気成分をより効率よく分離して回収できる。また、多段に連結する回収装置には、必ずしも異なるタイプのものを使用する必要はなく、同タイプの回収装置を多段に連結することもできる。
【0034】
さらに、図6に示す脱臭装置は、霧化装置42が、界面活性剤を含む水を静電噴霧するノズル47を備えると共に、回収装置43がサイクロン70を備えおり、さらに、ノズル47とサイクロン70とに電位差を設ける電源49とを備えている。この脱臭装置は、霧化装置42を静電噴霧装置45として、界面活性剤を含む水を静電噴霧して微細な粒子に霧化させると共に、界面活性剤を含む水が噴霧される脱臭タンク41をサイクロン70として回収装置43に併用している。さらに、この脱臭装置は、静電噴霧装置45のノズル47から静電噴霧されたミストを、回収装置43であるサイクロン70の内面に静電気の作用で付着して回収する。
【0035】
霧化装置42である静電噴霧装置45は、界面活性剤を含む水を加圧ポンプ46で加圧してノズル47に供給すると共に、噴霧用の電極48とノズル47とに電源49で高電圧を印加して、ノズル47から界面活性剤を含む水を静電気の作用で微細な粒子として噴霧している。さらに、界面活性剤を含む水が噴霧される脱臭タンク41であるサイクロン70は、内面をミストの吸着部76とするために、電源49に接続している。サイクロン70は、噴霧用の電極48と同じ極性に印可されている。この回収装置43は、静電霧化装置45のノズル47で帯電されて噴霧されるミストを、静電気の力でサイクロン70の内面に吸着させて効率よく回収する。図のサイクロン70は、外側を絶縁材77で絶縁している。
【0036】
図に示すサイクロン70は、円筒71の下部を下方に向かって細くなるテーパー部74として、このテーパー部74の下端は、臭気成分を吸着したミストを排出する排出口73とすると共に、天板72の中心には、排出ガスを排出する排気口73を開口している。このサイクロン70は、円筒71の下部を、ミストの吸着部76として電源49に接続して、噴霧用の電極48と同じ極性に印可している。この脱臭タンクサイクロン70は、図7に示すように、供給パイプ78から供給される臭気ガスを水平面内に回転させながら、この臭気ガスに向かって静電噴霧装置45のノズル47から界面活性剤を含む水をミストに霧化して噴霧している。図7の霧化装置42は、円筒71の内面に沿って、複数基のノズル47を所定の間隔で固定している。この構造は、複数のノズル47から界面活性剤を含む水をミストに噴霧するので、より効率よく臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着させることができる。さらに、界面活性剤を含む水を噴霧するノズル47は、図7の鎖線で示すように、脱臭タンク41であるサイクロン70に臭気ガスを供給する供給パイプ78の内部に配設することもできる。以上のサイクロン70は、臭気成分を吸着したミストを下端の中心に集めて排出口75から排出し、ミストが分離された排出ガスを、天板72を貫通してサイクロン70の内部に設けた排気口73から排気する。このサイクロン70は、ノズル47から噴霧されるミストに臭気ガスの臭気成分を吸着させながら、臭気成分を吸着したミストを静電気の作用でサイクロン70の内面に付着させて、効率よく分離して回収できる。
【0037】
さらに、図6の脱臭装置も、回収装置43を、第1の回収装置43Aと第2の回収装置43Bで構成しており、脱臭タンク41に併用されるサイクロン70を第1の回収装置43Aとして、このサイクロン70の排出側に、第2の回収装置43Bとして冷却ダクト60を連結している。第2の回収装置43Bである冷却ダクト60は、サイクロン70から排出される排出ガスに残存するミストを分離して回収する。
【0038】
水に添加する界面活性剤には、ポリエチレングリコールを使用する。ただ、界面活性剤には、ポリビニルアルコールやアルキルグリコシド等を使用することもできる。界面活性剤は、所定の濃度となるように水に添加されて、貯溜タンク4に一時蓄えられる。貯溜タンク4に蓄えられる界面活性剤を含む水は、加圧ポンプ16、46や供給ポンプ29、39によって、脱臭タンク1、21、31、41に供給される。
【0039】
図1、図3、及び図4に示す脱臭装置は、脱臭タンク1と回収装置3とを2段に連結しており、各々の脱臭タンク1に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給して、臭気ガスをミストに吸着させて回収している。このように、脱臭タンク1と回収装置3とを多段に連結する構造は、各段の脱臭タンク1に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給すると共に、各段の回収装置3で臭気成分を吸着したミストを回収して分離するので、多段に連結された脱臭タンク1と回収装置3とを通過する臭気ガスに含まれる臭気成分の濃度を著しく低くできる特徴がある。ただ、本発明の脱臭装置は、脱臭タンクと回収装置とを1段に連結することも、3段以上に連結することもできる。さらに、図1、図3、及び図4に示す脱臭装置は、同じ構造の脱臭タンク1、21、31と回収装置3とを2段に連結しているが、脱臭装置は、異なる構造の脱臭タンクと回収装置とを多段に連結することもできる。
【0040】
図1に示す脱臭装置は、以下のようにして臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して脱臭する。
脱臭タンク1に臭気ガスを供給するすると共に、脱臭タンク1の内部に、霧化装置2である静電噴霧装置15でもって、界面活性剤を含む水を微細な粒子のミストに噴霧する。静電噴霧装置15は、高圧電源19の静電電圧でもって、ノズル17から噴射されるミストを微細な粒子として脱臭タンク1に噴霧する。脱臭タンク1に噴霧されたミストは、臭気ガスに接触し、臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着する。臭気成分を吸着したミストは、排出ガスと共に脱臭タンク1から排出される。脱臭タンク1から排出される排出ガス中のミストは、回収装置3によって回収される。臭気成分がミストに吸着されて分離された臭気ガスは、臭気成分の濃度が低下されて排出される。
【0041】
図3に示す脱臭装置は、以下のようにして臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して脱臭する。
界面活性剤を含む水を蓄えている脱臭タンク21に臭気ガスを供給すると共に、霧化装置22である超音波霧化装置25でもって、脱臭タンク21の底面に固定された超音波振動子26から超音波振動を放射して、界面活性剤を含む水を微細な粒子のミストに噴霧する。霧化されたミストは、脱臭タンク21に供給される臭気ガスに接触し、臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着する。臭気成分を吸着したミストは、排出ガスと共に脱臭タンク21から排出される。脱臭タンク21から排出される排出ガス中のミストは、回収装置3によって回収される。臭気成分がミストに吸着されて分離された臭気ガスは、臭気成分の濃度が低下されて排出される。
【0042】
図4に示す脱臭装置は、以下のようにして臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して脱臭する。
霧化装置32である2流体ノズル35に、加圧された臭気ガスと界面活性剤を含む水とを供給し、この2流体ノズル35から、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを一緒に脱臭タンク31に噴霧する。2流体ノズル35は、高速流動する臭気ガスで界面活性剤を含む水をミストに霧化して噴射する。このとき、臭気ガスは、界面活性剤を含む水と激しく接触して界面活性剤を含む水を微細なミストに破砕すると共に、界面活性剤を含む水は、気液界面において臭気ガスに激しく撹拌されて、臭気ガスに含まれる臭気成分を速やかに吸収する。臭気成分を吸着したミストは、排出ガスと共に脱臭タンク31から排出される。脱臭タンク31から排出される排出ガス中のミストは、回収装置3によって回収される。臭気成分がミストに吸着されて分離された臭気ガスは、臭気成分の濃度が低下されて排出される。
【0043】
図6に示す脱臭装置は、以下のようにして臭気ガスに含まれる臭気成分を分離して脱臭する。
脱臭タンク41であるサイクロン70に臭気ガスを供給するすると共に、脱臭タンク41の内部に、霧化装置42である静電噴霧装置45のノズル47から、界面活性剤を含む水を静電噴霧する。静電噴霧装置45は、電源49の静電電圧でもって、ノズル47から噴射されるミストを微細な粒子として脱臭タンク41に噴霧する。脱臭タンク41に噴霧されたミストは、臭気ガスに接触し、臭気ガスに含まれる臭気成分を吸着する。さらに、この脱臭タンク41であるサイクロン70は、ミストの吸着部76として電源49に接続されているので、ノズル47から帯電されて噴霧されるミストを、静電気の力でサイクロン70の内面に吸着させて効率よく回収する。第1の回収装置43Aであるサイクロン70において、臭気成分を吸着したミストが回収された排出ガスが、第2の回収装置43Bである冷却ダクト60に供給されて、この排出ガスに残存するミストが回収される。臭気成分がミストに吸着されて分離された臭気ガスは、臭気成分の濃度が低下されて排出される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の脱臭装置は、印刷工場や塗装工場等の工場から排出される臭気ガスに含まれる臭気成分を効率よく分離して脱臭できる。
【符号の説明】
【0045】
1…脱臭タンク
2…霧化装置
3…回収装置 3A…第1の回収装置
3B…第1の回収装置
4…貯溜タンク
15…静電噴霧装置
16…加圧ポンプ
17…ノズル
18…電極
19…高圧電源
21…脱臭タンク
22…霧化装置
25…超音波霧化装置
26…超音波振動子
27…交流電源
29…供給ポンプ
31…脱臭タンク
32…霧化装置
35…2流体ノズル
36…加圧供給部 36A…コンプレッサ
37…噴射路 37A…ベンチュリー部
38…水路
39…供給ポンプ
41…脱臭タンク
42…霧化装置
43…回収装置 43A…第1の回収装置
43B…第1の回収装置
45…静電噴霧装置
46…加圧ポンプ
47…ノズル
48…電極
49…電源
50…サイクロン
51…円筒
52…天板
53…排気口
54…テーパー部
55…排出口
60…冷却ダクト
61…熱交換器
62…冷却パイプ
70…サイクロン
71…円筒
72…天板
73…排気口
74…テーパー部
75…排出口
76…吸着部
77…絶縁材
78…供給パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気ガスが供給される脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)と、この脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給する霧化装置(2)、(22)、(32)、(42)と、前記脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)から排出される排出ガスからミストを分離する回収装置(3)、(43)とを備え、
前記脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)に供給される臭気ガスをミストに吸着させて臭気成分の濃度を低下するようにしてなる脱臭装置。
【請求項2】
前記霧化装置(22)が、界面活性剤を含む水を超音波振動でミストに霧化する超音波振動子(26)と、この超音波振動子(26)に高周波電力を供給する交流電源(27)とを備える請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項3】
前記霧化装置(2)、(42)が、界面活性剤を含む水を静電噴霧する静電噴霧装置(15)、(45)である請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項4】
前記霧化装置(42)が、界面活性剤を含む水を静電噴霧するノズル(47)を備え、前記回収装置(43)がサイクロン(70)を備え、さらに、前記ノズル(47)と前記サイクロン(70)とに電位差を設ける電源(49)とを備えており、ノズル(47)から静電噴霧されたミストをサイクロン(70)の内面に静電気の作用で付着して回収する請求項3に記載される脱臭装置。
【請求項5】
前記霧化装置(32)が、界面活性剤を含む水と臭気ガスとを噴射する2流体ノズル(35)を備え、2流体ノズル(35)でもって界面活性剤を含む水をミストに霧化する請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項6】
前記臭気ガスが有機溶媒である請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項7】
前記回収装置(3)、(43)が、前記排出ガスを冷却する冷却ダクト(60)を備えており、この冷却ダクト(60)で冷却して臭気ガスからミストを回収する請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項8】
前記回収装置(3)、(43)がサイクロン(50)、(70)を備え、サイクロン(50)、(70)でもって排出ガスからミストを分離する請求項1に記載される脱臭装置。
【請求項9】
前記脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)と回収装置(3)、(43)とを多段に連結しており、各々の脱臭タンク(1)、(21)、(31)、(41)に界面活性剤を含む水をミストに霧化して供給して、臭気ガスをミストに吸着して回収するようにしてなる請求項1に記載される脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−234335(P2010−234335A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87554(P2009−87554)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(597064469)株式会社 本家松浦酒造場 (4)
【Fターム(参考)】