説明

脳腫瘍を治療する方法

細胞毒性薬剤として効果的な(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を開示する。(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、異常細胞の抑制されない増殖と拡散が起こるいろいろな臨床状況の治療において役立ち、特に脳腫瘍を治療することにおける使用の役に立つ。本発明の別の態様は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、パラプラチン(登録商標)(カルボプラチン)またはエロキサチン(登録商標)(オキサリプラチン)などの白金化合物を含む、その他の公知の化学治療薬剤と併用して投与することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連米国出願に対する相互参照
本出願は、2007年4月10日に出願された、米国仮特許出願第60/910,975号の恩典を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み入み込む。
【0002】
本発明は医薬化学の分野に属する。特に、本発明は、細胞毒性薬剤としての(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩および治療的に有効な抗癌薬剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は世界における死亡の一般的な原因である;約1,000万件の新たな症例が毎年発生しており、癌は世界中の死亡の12%の原因であり、死亡の3番目の主な原因となっている。世界保健機構、全国癌制御プログラム:政策および管理指針(2002年第2版)。
【0004】
癌治療の分野における進歩にも関わらず、今日の主な治療としては、外科手術、放射線、および化学治療が含まれる。化学治療的なアプローチは、転移性の癌または特に侵襲性の強い癌と戦うと言われる。現在臨床的に使用されている癌化学治療薬剤の多くは細胞毒素である。細胞毒性薬剤は、急速な増殖を示す細胞を損傷または殺傷することによって作用する。理想的な細胞毒性薬剤は、癌および腫瘍細胞に対する特異性を有する一方で、正常細胞に影響を及ぼさないものである。残念なことに、理想的な細胞毒性薬剤は1つも見つけられておらず、代わりに著しく急速に分裂する細胞(腫瘍細胞と正常細胞の両方)を標的とする薬剤が用いられている。
【0005】
したがって、癌細胞には細胞毒性であるが、正常細胞に対しては軽度の効果しか発揮しない物質が極めて望ましい。実際、多くの最近の研究は、腫瘍細胞の増殖を特異的に抑制することができる代替の抗癌物質を開発することに焦点を合わせている。そのような抗癌化合物の例を、特許文献1に見出すことができる。しかしながら、そのような化合物の安全性およびそのような化合物を個体に安全に投与し得る量は知られていない。それゆえ、新しく有効な化学治療薬剤および安全に投与することができる投薬範囲の発見に対する明確な必要性が当技術分野に依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/003100号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の強力なチューブリン阻害剤および細胞毒性薬剤としての活性に関する。(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、脳腫瘍および脊髄腫瘍などの、脳およびCNSの疾患および障害に対する治療および/または予防として有効であるように脳およびCNSにおける適切な濃度を達成することも知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、ヒト患者において様々な濃度および投薬レベルで許容されることが分かっている。したがって、本発明のある態様は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、脳およびCNSの疾患および障害に対する治療または予防として約4.5 mg/m2以下の用量で使用することに関する。例えば、本発明は、脳およびCNSの癌を約0.3〜約3.3 mg/m2、例えば約2.1 mg/m2〜約3.3 mg/m2などの用量で治療するための方法を提供する。特定の例において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、脳およびCNSの癌の治療のために約0.5 mg〜約15 mg、例えば約2 mg〜約10 mg、または約4 mg〜約8 mgなどの用量で投与してもよい。
【0009】
本発明のある態様において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与によって治療する癌は、退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍である。さらに、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与によって治療する該癌は、再発性であってもよいし、または1つもしくは複数の残存する原発性病変を以前の治療の後に有してもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、パラプラチン(登録商標)(カルボプラチン)またはエロキサチン(登録商標)(オキサリプラチン)などの白金化合物を含む、その他の公知の化学治療薬剤と併用して投与することに関する。
【0011】
本発明の前述およびその他の利点および特色、ならびに同様のことを達成する様式は、以下の本発明の詳細な説明を、好ましいかつ例示的な実施形態を例証する、付随する実施例と併せて考慮すればより容易に明らかになると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、強力なチューブリン阻害剤および細胞毒性薬剤として活性があることが知られている。(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、脳およびCNSの疾患および障害に対する治療および/または予防として有効であるように脳およびCNSにおける適切な濃度を達成することができることも知られている。特に、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、治療に反応する、脳およびCNSの疾患を、アポトーシスを誘導し、カスパーゼを活性化し、脳内のチューブリンおよび/またはトポイソメラーゼを阻害することによって治療することができる。そのような疾患には、例えば、脳腫瘍および脊髄腫瘍が含まれる。
【0013】
(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は、ヒト患者では様々な濃度および投薬レベルで安全に許容されることが見出されている。特に、2つのフェーズ1研究が、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の週1回の静脈内投与の安全性、忍容性、および薬物動態を明確にするための非盲検、用量漸増、複数回投与研究として行なわれた。そのようなフェーズ1研究の結果は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩がヒト被験者において様々な投薬量で安全でかつ忍容性が良好であるということを示している。
【0014】
したがって、本発明のある態様は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を脳およびCNSの疾患および障害に対する治療または予防として約4.5 mg/m2以下の用量で使用することに関する。ある態様において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約3.3 mg/m2以下の用量で投与する。幾つかの実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約2.7 mg/m2以下の用量で投与する。さらなる実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約2.1 mg/m2以下の用量で投与する。特定の実施形態において、本発明は、脳およびCNSの癌を約0.3〜3.3 mg/m2、例えば約2.1 mg/m2〜約3.3 mg/m2などの用量で治療するための方法を提供する。
【0015】
例えば、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、脳およびCNSの癌の治療のために約0.5 mg〜約15 mg、例えば約2 mg〜約10 mg、または約4 mg〜約8 mgなどの用量で投与してもよい。ある実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約10 mg以下、例えば約8 mg以下または約6 mg以下などの用量で投与する。追加の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約2、約3、約4、約5、約6、約7、または約8 mgの用量で投与する。
【0016】
脳およびCNSに見られる本発明の方法によって治療し得る様々な種類の癌がある。脳腫瘍は通常、原発性脳腫瘍かまたは転移性脳腫瘍のいずれかに分類することができる。脳腫瘍は多くの場合、細胞型、形態、細胞遺伝学、分子遺伝学、免疫学的マーカー、および/またはその組み合わせによってさらに分類される。例えば、脳腫瘍は、神経上皮腫瘍(例えば、グリア腫瘍、神経細胞腫瘍および混合型神経細胞-グリア腫瘍、ならびに非グリア腫瘍)、髄膜腫瘍、胚細胞腫瘍、トルコ鞍部の腫瘍、原発性CNSリンパ腫、CNSに影響を及ぼす末梢神経の腫瘍、組織発生不明の腫瘍、ならびに転移性腫瘍に分類できる。世界保健機構による脳腫瘍の分類は、CNS腫瘍を腫瘍の組織学的特徴に基づく悪性度の等級によって種類分けしている(Kleihues et al., Brain Pathol 3:255-268 (1993)を参照されたい)。
【0017】
最も一般的な種類の原発性脳腫瘍は、原発性脳腫瘍のおよそ38%を占める、退形成性星細胞腫および膠芽腫;ならびに原発性脳腫瘍のおよそ27%を占める、髄膜腫およびその他の間葉系腫瘍である(Levin et al., Neoplasms of the central nervous system. DeVita, et al.,編、Cancer: Principles and Practice of Oncology、第6版、 Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia (2001)、2100-2160頁を参照されたい)。その他の一般的な原発性脳腫瘍には、下垂体腫瘍、シュワン腫、CNSリンパ腫、乏突起膠腫、上衣腫、低悪性度星細胞腫、および髄芽腫が含まれる。さらなる具体的な原発性脳腫瘍には、星細胞系腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、び漫性星細胞腫、多形黄色細胞腫、上衣下巨細胞性星細胞腫、乏突起膠腫系腫瘍、乏突起膠腫、退形成性乏突起膠腫、乏突起星細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、粘液乳頭型上衣腫、上衣下腫、上衣腫、退形成性上衣腫、星芽腫、第3脳室の脊索腫様膠腫、大脳膠腫症、神経節膠細胞腫、線維形成性乳児星細胞腫、線維形成性乳児神経節膠腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、中枢性神経細胞腫、小脳脂肪神経細胞腫、傍神経節腫、上衣芽腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、脈絡叢乳頭腫、松果体細胞腫、松果体芽腫、中間型松果体実質腫瘍、血管周囲細胞腫、色素細胞性病変、胚細胞腫瘍、トルコ鞍部の腫瘍、頭蓋咽頭腫、毛細血管芽腫、および原発性CNSリンパ腫が含まれる。
【0018】
転移性脳腫瘍の数は少なくとも10対1で原発性脳腫瘍を上回り、典型的には、脳に転移する原発性の肺癌、乳癌、メラノーマ、または大腸癌の結果として発生する(Patchell RA, Cancer Treat. Rev. 29:533-540 (2003))。脳に転移する癌は、結果的に70%を超える症例で多発性脳転移をもたらす(Patchell RA, Cancer Treat. Rev. 29:533-540 (2003))。したがって、典型的には外科手術で治療しない。しかしながら、化学治療は、化学治療感受性腫瘍由来の脳転移がある患者の治療で役割を果たすことが示されている(Patchell RA, Cancer Treat. Rev. 29:533-540 (2003))。したがって、脳の癌を治療するための本発明の治療方法は、動物に有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを投与することによって、原発性脳腫瘍および脳転移を治療する工程を含む。
【0019】
1つの実施形態において、本発明は、脳腫瘍の大きさを縮小するかまたは脳腫瘍の成長を遅延させる方法を提供する。腫瘍の大きさおよび/または成長の縮小は、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)指針によって測定できる(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Therasse et al. J. Nat. Cancer Institute 92:205-216 (2000)を参照されたい)。例えば、本方法は、1臓器につき5病変、合計10病変までを同定し、最長径の病変における長さの縮小を決定することによって治療後4週間で測定した場合、患者における病変の平均の大きさを約30%以上まで縮小し得る。さらに別の実施形態において、本発明は、脳腫瘍があるかまたは脳腫瘍を形成する危険性がある患者の生存率を改善するための方法を提供する。
【0020】
本発明のある態様において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与によって治療する癌は、退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍である。具体的な実施形態において、治療する癌は膠芽腫である。幾つかの実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与によって治療する癌は、再発性であってもよいしまたは再発性膠芽腫などの、1つもしくは複数の残存する原発性病変を以前の治療の後に有してもよい。
【0021】
具体的な実施形態において、退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量で投与することによって治療する。ある実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、(再発性膠芽腫などの)膠芽腫を治療するために約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量で投与する。幾つかの実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約3.3 mg/m2以下、例えば約0.3〜3.3 mg/m2または約2.1 mg/m2〜約3.3 mg/m2などの用量で退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍に対する治療として投与する。さらなる実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約3.3 mg/m2以下、例えば約0.3〜3.3 mg/m2または約2.1 mg/m2〜約3.3 mg/m2などの用量で(再発性膠芽腫などの)膠芽腫に対する治療として投与する。
【0022】
幾つかの実施形態において、退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約0.5 mg〜約15 mg、例えば約2 mg〜約10 mg、または約4 mg〜約8 mgなどの用量で投与することによって治療する。特定の実施形態において、(再発性膠芽腫などの)膠芽腫を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を約0.5 mg〜約15 mg、例えば約2 mg〜約10 mg、または約4 mg〜約8 mgなどの用量で投与することによって治療する。
【0023】
本発明の別の実施形態は、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩をその他の公知の化学治療薬剤と併用して投与することに関する。本発明において有用な化学治療薬剤には、テモダール(登録商標)(テモゾロミド)、ダカルバジン、BCNU、およびCCNUなどの、ニトロソウレア;パクリタキセルおよびドセタキセルなどの、タキサン;ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンなどの、ビンカアルカロイド;エトポシド、テニポシド、ハイカムチン(登録商標)(トポテカン)、およびカンプトサール(登録商標)(イリノテカン)などの、トポイソメラーゼ阻害剤;ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、およびイダルビシンなどの、アントラサイクリン;メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、ジェムザール(登録商標)(ゲムシチビン)、およびカペシチビンなどの、代謝拮抗薬;ならびに、シスプラチン、パラプラチン(登録商標)(カルボプラチン)、およびエロキサチン(登録商標)(オキサリプラチン)などの、白金薬剤が含まれる。ある実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、テモゾロミド、ダカルバジン、BCNU、CCNU、ビノレルビン、テニポシド、イリノテカン、ダウノマイシン、イダルビシン、シタラビン、ゲムシチビン、カペシチビン、およびオキサリプラチンから選択する1つまたは複数の薬剤と併用する治療として用いてもよい。ある種の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、カルボプラチンなどの、1つまたは複数の白金化合物と共に投与してもよい。特定の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、オキサリプラチンなどの、1つまたは複数の白金化合物と共に投与してもよい。
【0024】
具体的な実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量で、テモダール(登録商標)(テモゾロミド)、ダカルバジン、BCNU、およびCCNU;パクリタキセルおよびドセタキセルなどの、タキサン;ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンなどの、ビンカアルカロイド;エトポシド、テニポシド、ハイカムチン(登録商標)(トポテカン)、およびカンプトサール(登録商標)(イリノテカン)などの、トポイソメラーゼ阻害剤;ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、およびイダルビシンなどの、アントラサイクリン;メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、ジェムザール(登録商標)(ゲムシチビン)、およびカペシチビンなどの、代謝拮抗薬;ならびに、シスプラチン、カルボプラチン、およびエロキサチン(登録商標)(オキサリプラチン)などの白金薬剤などのその他の公知の化学治療薬剤と併用して投与する。
【0025】
ある実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量で、テモゾロミド、ダカルバジン、BCNU、CCNU、ビノレルビン、テニポシド、イリノテカン、ダウノマイシン、イダルビシン、シタラビン、ゲムシチビン、カペシチビン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択する1つまたは複数の化学治療薬剤と併用して投与する。ある種の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量でカルボプラチンと併用して投与する。特定の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量でオキサリプラチンと併用して投与する。
【0026】
例えば、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約0.5 mg〜約15 mg、例えば約2 mg〜約10 mg、または約4 mg〜約8 mgなどの用量で、テモゾロミド、ダカルバジン、BCNU、CCNU、ビノレルビン、テニポシド、イリノテカン、ダウノマイシン、イダルビシン、シタラビン、ゲムシチビン、カペシチビン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択する1つまたは複数の化学治療薬剤と併用して投与してもよい。ある種の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約10 mg以下、例えば約8 mg以下または約6 mg以下などの用量でカルボプラチンと併用して投与する。特定の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、約10 mg以下、例えば約8 mg以下または約6 mg以下などの用量でオキサリプラチンと併用して投与する。
【0027】
幾つかの実施形態において、退形成性星細胞腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍(例えば、膠芽腫または再発性膠芽腫)を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を用いて、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量で、テモゾロミド、ダカルバジン、BCNU、CCNU、ビノレルビン、テニポシド、イリノテカン、ダウノマイシン、イダルビシン、シタラビン、ゲムシチビン、カペシチビン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択する1つまたは複数の化学治療薬剤と併用して治療する。ある種の実施形態において、退形成性星細胞腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍(例えば、膠芽腫または再発性膠芽腫)を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を用いて、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量でカルボプラチンと併用して治療する。さらなる実施形態において、退形成性星細胞腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍(例えば、膠芽腫または再発性膠芽腫)を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を用いて、約4.5 mg/m2以下、例えば約3.3 mg/m2以下または約2.1 mg/m2以下などの用量でオキサリプラチンと併用して治療する。
【0028】
本発明の方法を実施する際に、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、少なくとも1つの公知の化学治療薬剤と一緒に単一の薬学的組成物の一部として投与してもよい。あるいは、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、少なくとも1つの公知の癌化学治療薬剤と併用せずに投与してもよい。1つの実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩および少なくとも1つの公知の癌化学治療薬剤を、実質的に同時に投与する、すなわち、化合物が血液中で同時に治療レベルに達する限り、化合物を同時にまたは順々に投与する。別の実施形態では、化合物が血液中で治療レベルに達する限り、本発明の化合物および少なくとも1つの公知の癌化学治療薬剤をそれらの個々の用量スケジュールに従って投与する。
【0029】
特定の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩をカルボプラチンと共に投与する。カルボプラチンを約700 mg以下、例えば約100 mg〜約700 mg、約200 mg〜約600 mg、または約300 mg〜約500 mgなどの用量などの、様々な用量で、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与の前か、後か、または(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与と同時に投与してもよい。例えば、カルボプラチンを被験者に約100、約200、約300、約400、約500、約600、または約700 mgの用量で投与してもよい。カルボプラチンを、被験者に約6 mg/mL(分)以下、例えば約3 mg/mL(分)〜約6 mg/mL(分)、または約4 mg/mL(分)〜約6 mg/mL(分)などのAUC(曲線下面積)を提供する用量で、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与の前か、後か、または(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与と同時に投与してもよい。
【0030】
特定の実施形態において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩をオキサリプラチンと共に投与する。オキサリプラチンを、約150 mg/m2以下、例えば約25 mg/m2〜約100 mg/m2などの用量などの、様々な用量で、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与の前か、後か、または(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与と同時に投与してもよい。また、オキサリプラチンを、約85 mg/m2以下、例えば約55 mg/m2〜約85 mg/m2などの用量で、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与の前か、後か、または(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与と同時に投与してもよい。
【0031】
投与する活性化合物の投薬量は、体重、年齢、個々の条件、および投与の形態に依存する。活性化合物を被験者に様々な時間枠にわたって、 および変動する長さで、投与してもよい。例えば、注入する活性化合物を、0.5、1、2、3、4、または8時間持続する注入過程を通して投与してもよい。その上、該活性化合物を、1日1回、週1回、月1回投与してもよく、または週に1度3週間投与し、その後、1週間投与しないというサイクルなどの様々なスケジュールに従って投与してもよい。例えば、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩およびカルボプラチンなどの、活性化合物を、2週間毎に1度、6週間サイクルで投与してもよい。別の例において、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩などの、活性化合物を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を1週間毎に1度、6週間投与した後、2週間投与しないという8週間のスケジュールで投与してもよい。
【0032】
本発明を実施する際に用いる化合物は、様々な当技術分野で公知の手順によって調製することができる。例えば、本発明を実施する際に、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、当業者に公知の方法を用いて調製してもよい。具体的には、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を、国際特許公開公報第2005/003100号に従って、反応式1の例示的反応によって例証されるように調製してもよい。
【0033】
【化1】

【0034】
さらに、化合物の多くは様々な供給源から市販されている。例えば、カルボプラチンは、ブリストル・マイヤーズ スクイブ カンパニー(ニューヨーク、ニューヨーク)から市販されており、オキサリプラチンはサノフィ・アベンティス(パリ、フランス)から市販されており、テモゾロミドはシェリング・プラウ(ケニルワース、NJ)から市販されている。
【0035】
本発明の治療方法は、動物に有効量の化合物、または (4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の薬学的に許容される塩、酸、もしくは塩基を投与する工程を含む方法も含む。1つの実施形態において、薬学的に許容されるビヒクルと併用する、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、または該化合物の薬学的に許容される塩、酸、もしくは塩基を含む薬学的組成物を投与する。(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、(またはその塩基)のための薬学的に許容される付加塩の例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、およびシュウ酸塩などの、無機および有機の酸付加塩;ならびにナトリウムヒドロキシ、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、トロメタン)およびN-メチル-グルカミンなどの、塩基を持つ無機および有機の塩基付加塩が含まれる。本発明は、動物に有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ、および1つまたは複数の液体希釈剤を投与する工程を含む方法も含む。そのような組成物は、PCT国際公開公報第2006/138608号に開示された組成物を含み、かつその中で開示された方法に従って製造されてもよく、その関連部分は参照により本明細書に組み入れられる。
【0036】
本発明の化合物の無毒で薬学的に許容される塩も本発明の範囲内に含まれる。酸付加塩は、本発明の化合物の溶液を、塩酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、シュウ酸などのような、薬学的に許容される無毒な酸の溶液と混合することによって形成する。塩基性塩は、本発明の化合物の溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化コリン、炭酸ナトリウム、トリス、N-メチル-グルカミンなどのような、薬学的に許容される無毒な塩基の溶液と混合することによって形成する。
【0037】
本発明の薬学的組成物を、本発明の化合物の有益な効果を経験し得る、任意の動物に投与してもよい。そのような動物で真っ先に挙げられるのは、哺乳動物、例えば、ヒトおよび獣医学的動物であるが、本発明はそのように限定することを意図しない。
【0038】
本発明の薬学的組成物を、それらの意図した目的を達成する任意の手段によって投与してもよい。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔内、髄腔内、頭蓋内、鼻腔内、または局所の経路によるものであってもよい。代わりに、または同時に、投与は経口経路によるものであってもよい。投与する投薬量は、レシピエントの年齢、健康、体重、もしあれば、併用治療の種類、治療の頻度、および所望される効果の性質によると考えられる。
【0039】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を例証するものであって、限定するものではない。臨床治療で普通に直面しかつ当業者に明白である条件およびパラメータの種類のその他の好適な修正および適応は、本発明の精神および範囲の範囲内にある。
【実施例】
【0040】
実施例1
(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の調製
【0041】
【化2】

【0042】
a) 4-クロロ-2-メチル-キナゾリン:POCl3(100 mL)中の2-メチル-4(3H)-キナゾリノン(5 g、31.2 mmol)の撹拌懸濁物を120℃で3時間加熱した。過剰なPOCl3を真空下で除去し、その後砕いた氷および200 mLの飽和NaHCO3を残留物に添加し、混合物を酢酸エチル(200 mL × 2)で抽出した。合わせた抽出物を水、飽和NaClで洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(5〜8%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、表題化合物(2.5 g、14.0 mmol、45%)を生成した。1H NMR(CDCl3):8.21〜8.25(m、1H)、7.89〜 7.99(m、2H)、7.66(ddd、1H、J = 1.8、6.6、8.7)、2.87(s、3H)。
【0043】
b) (4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩:表題化合物を、4-クロロ-2-メチル-キナゾリン(2.31 g、12.9 mmol)および(4-メトキシ-フェニル)-メチル-アミン(2.0 g、14.6 mmol)から、実施例1bと同様の手順で調製し、固体(2.90 g、9.18 mmol、71%)として単離した。1H NMR(CDCl3):8.53(dd、1H、J = 0.6、8.1)、7.7(ddd、1H、J = 1.2、7.2、8.4)、7.22(m、2H)、7.13(ddd、1H、J = 1.2、7.2、8.7)、7.05(m、2H)、6.76(d、1H、J = 8.7)、3.91(s、3H)、3.78(s、3H)、2.96(s、3H)。
【0044】
実施例2
薬学的組成物
薬学的組成物を、100グラムの(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩と1グラムのBHTを合わせ、混合し、10リットルのD5Wの中に溶かし、pHを塩酸でpH=5に調整することによって調製する。この溶液を0.2 μmのテフロン(登録商標)フィルター(PTFE)を用いて滅菌濾過する。
【0045】
実施例3
薬学的組成物
薬学的組成物を、300.1グラムの(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩を13.652 kg界面活性剤(クレモフォール(登録商標) EL)および13.652 kgの減粘剤(エタノール190プルーフ)の中に溶かすことによって形成した。この溶液を0.2 μmのミリポア デュラポアフィルター(PVDF)を通して滅菌濾過し、10 mlの滅菌ガラスバイアルの中に詰めた。
【0046】
実施例4
薬学的組成物
薬学的組成物を、300.1グラムの(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩および30.12グラムの酸化防止剤(BHT)を13.652 kgの界面活性剤(クレモフォール(登録商標) EL)および13.652 kgの減粘剤(エタノール190プルーフ)の中に溶かすことによって形成した。この溶液を0.2 μmのミリポア デュラポアフィルター(PVDF)を通して滅菌濾過し、10 mlの滅菌ガラスバイアルの中に詰めた。
【0047】
実施例5
薬学的組成物
薬学的組成物を、300.1グラムの(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩および30.12グラムの酸化防止剤(BHT)を13.652 kgの界面活性剤(クレモフォール(登録商標) EL)および11.652 kgの減粘剤(エタノール190プルーフ)、ならびに2 kgのWFI(注射用水)の中に溶かすことによって形成する。この溶液を0.2 μmのミリポア デュラポアフィルター(PVDF)を通して滅菌濾過し、10 mlの滅菌ガラスバイアルの中に詰める。
【0048】
実施例6
投与の方法
約0.01 ml〜約50 mlの実施例5の薬学的組成物を正確に測定し、その後、約100 ml〜約1000 mlの滅菌5%ブドウ糖液(D5W)を含むi.v.バッグに添加した。使用する薬学的組成物およびD5Wの量は所望の治療用量および患者の大きさによって変わる。得られる混合物を、その後非経口的に患者に注入する。
【0049】
実施例7
難治性固形腫瘍を有する被験者に対する(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の投与のフェーズI臨床試験
(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の週1回の静脈内投与の安全性、忍容性、および薬物動態を明確にするための非盲検、用量漸増、複数回投与研究を行なった。投薬スケジュール(4週毎のサイクル)を、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩について、週1回を3週間、各サイクルの4週目には注入をしないで行なった。難治性固形腫瘍を有する被験者は3つのコホートに登録された。第1サイクルの間、被験者は(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の各注入の間に入院し、注入の終了後およそ24時間、観察および安全性評価のために滞在した。全ての被験者は、注入前に2時間、1〜2時間の注入の間、および注入の終了後3時間、連続的な遠隔測定を受けた。あらゆる臨床的意義のある心電図(ECG)波形の異常を記録し、治験責任医師の裁量によってモニタリング期間の延長を行なった。
【0050】
心電図は、注入を開始する前および第1サイクルの各注入については注入の終了の30分以内に得た。第1日目の心電図は、各3組で5分間隔で得た。
【0051】
神経認知アセスメントを、ミニメンタルステート検査(MMSE)、ホプキンス言語学習試験およびGrooved Pegboard試験を施すことによって、第1サイクルの各々の週1回の投与時に静脈内注入の投与前および注入のおよそ24時間後に行なった。
【0052】
各サイクルの1日目、8日目、および15日目に、バイタルサインを、最初の投薬の前、注入開始の15分、30分、および60分後、ならびに静脈内注入終了の0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、および4時間後に得た。静脈内注入の開始を過ぎた全ての時点でのバイタルサインとして、心拍、血圧、および呼吸が含まれた。体温は、注入の終了時および4時間後に測定した。
【0053】
個々の被験者には、許容できない毒性または疾患の進行がなければ、用量の増加をせずに28日毎に週1回 × 3の反復投与を継続させた。
【0054】
腫瘍応答は、固形腫瘍効果判定基準(RECIST)における応答評価基準によって評価した。クレモフォール(登録商標) ELによる重篤な過敏反応を防ぐために、被験者に、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の静脈内注入のおよそ12時間および6時間前に投与する経口デキサメタゾン(20 mg)、(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の30〜60分前に静脈内投与するジフェンヒドラミン(50 mg)またはその同等物、ならびに(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩の30〜60分前に静脈内投与するシメチジン(300 mg)またはラニチジン(50 mg)を前投薬した。
【0055】
被験者の用量漸増は下記表1に示した通りに連続的に進めた。
【0056】
【表1】

【0057】
フェーズ1試験の結果により、末梢では投与された用量での細胞毒性の証拠はないということが示された。腫瘍内出血の発生があり、用量制限毒性は血管性で、急性冠症候群を呈していることが示された。心臓伝導(PR、QRS、またはQTc)への重大な影響はなかったが、用量関連性の収縮期血圧の増加および偶発的な徐脈のエピソードがあった。したがって、このように(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩は安全かつ忍容性であることが示されている。
【0058】
今や本発明を完全に説明したので、条件、製剤、およびその他のパラメータの広範かつ同等の範囲内で本発明またはその任意の実施形態の範囲に影響を及ぼすことなく同様のことを行なうことができるということが当業者により理解されると考えられる。本明細書に引用したすべての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書に完全に参考として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳または中枢神経系の癌をそのような治療を必要とする哺乳動物において治療するのに有用な医薬の製造のための化合物の使用であって、哺乳動物に約4.5 mg/m2以下の有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与する工程を含む、使用。
【請求項2】
前記癌が退形成性星細胞腫、膠芽腫、膠肉腫、髄膜腫、またはその他の間葉系腫瘍である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記癌が再発性であるかまたは1つもしくは複数の残存する原発性病変を以前の治療の後に有する、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を約3.3 mg/m2以下の用量で投与する、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩, またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を約2.7 mg/m2以下の用量で投与する、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩, またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を約2.1 mg/m2以下の用量で投与する、請求項1〜3のいずれか一項記載の使用。
【請求項7】
前記哺乳動物に有効量の1つまたは複数のその他の化学治療薬剤もまた投与する、請求項1〜6のいずれか一項記載の使用。
【請求項8】
1つまたは複数の前記その他の化学治療薬剤が、テモゾロマイド、ダカルバジン、BCNU、CCNU、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシチビン、カペシチビン、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンから選択される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
1つまたは複数の前記その他の化学治療薬剤が、カルボプラチンである、請求項7記載の使用。
【請求項10】
有効量のカルボプラチンを、被験者に約6 mg/mL(分)以下のAUCを提供する用量で投与する、請求項9記載の使用。
【請求項11】
(a) 有効量の(4-メトキシ-フェニル)-メチル-(2-メチル-キナゾリン-4-イル)-アミン塩酸塩、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を約2.1 mg/m2〜約3.3 mg/m2の用量で投与し、かつ
(b) 有効量のカルボプラチンを、前記被験者に約4 mg/mL(分)〜約6 mg/mL(分)のAUCを提供する用量で投与する、
請求項9記載の使用。
【請求項12】
前記有効量のカルボプラチンを700 mg以下の用量で投与する、請求項9記載の使用。
【請求項13】
前記有効量のカルボプラチンを約100 mg〜約700 mgの用量で投与する、請求項9記載の使用。
【請求項14】
前記有効量のカルボプラチンを約300 mg〜約500 mgの用量で投与する、請求項9記載の使用。

【公表番号】特表2010−523696(P2010−523696A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503205(P2010−503205)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/059905
【国際公開番号】WO2008/124822
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509282147)ミリアド ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】