説明

腐食性ガス充填容器用バルブ

【課題】近年、腐食性ガス充填容器に多用されているDISSバルブであって、アウトレット内部の腐食を防ぐ機構が備えられた腐食性ガス充填容器用バルブを提供する。
【解決手段】腐食性ガスを通過させる流路10a、10bを有するバルブ本体部2と、バルブ本体部2から突出されたアウトレット25と、アウトレット25に嵌合されるアウトレットキャップ5と、アウトレットキャップ5内に配置される仕切りプラグ9と、仕切りプラグ9に配置されるガスケット7とを有し、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際に、側面突出部32が切欠部92に嵌合されて仕切りプラグ9が配置されることにより仕切りプラグ9の供回りを防ぐ機構を備えた腐食性ガス充填容器用バルブ1であって、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70が配置されている腐食性ガス充填容器用バルブ1を用いることによって、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の製造に使用される腐食性ガス充填容器用バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、液晶用TFT(Thin Film Transistor)パネルおよび太陽電池パネル等の製造工程では、基板のエッチングプロセス用のガス、CVD装置等の薄膜形成装置のクリーニングプロセス用のガス、または、成膜プロセス用のガスとして、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン元素を含む腐食性ガスが広く使用されている。
【0003】
上述の腐食性ガスは、一般に、ガスメーカーにて充填容器用バルブを介して充填容器に充填された後に出荷され、半導体等のデバイスメーカーにて消費される。その後、空の充填容器がガスメーカーに返却される。
この流通過程において、充填容器用バルブの内部で腐食性ガスが大気中の水分と接触すると、前記充填容器用バルブの内部を腐食させることが知られている。そのため、このような充填容器用バルブの内部の腐食を防ぐために、充填容器用バルブの内部に残留した腐食性ガスが大気中の水分と接触することを回避させる方法がいくつか挙げられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、腐食性ガス充填容器用バルブのガス流出側に別のバルブを連結した状態で腐食性ガスの充填及び消費を行うことにより、充填容器用バルブの内部を大気に開放しない方法が開示されている。
この方法は、充填容器用バルブの内部への大気の浸入を防ぐという目的においては非常に優れた方法ではあるものの、ガスメーカーとデバイスメーカーとの間の輸送やハンドリングを考慮すると実用性の高い方法とは言えず、また、充填容器用バルブに連結した別のバルブへの大気の浸入は解決されない。
【0005】
また、特許文献2には、腐食性ガス充填容器用バルブのガス流出口付近に腐食性ガス吸収剤を設置する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、充填容器用バルブの内部を有機溶剤により洗浄する方法が開示されている。
しかし、これらの方法は、デバイスメーカーにて腐食性ガスを消費後、ガスメーカーに返却される前の段階で確実に処置されるのは困難である場合が多く、十分な効果が得られにくい。さらに、実際の作業はかなり煩雑となるため、人為的なミスや設備トラブルに起因して腐食性ガスに不純物が混入するリスクを伴うため、いずれも実用的な方法ではなかった。
【0006】
近年では、腐食性ガス充填容器用バルブとして、米国のCGA(Compressed Gas Association)規格で定められたDISS(Diameter Index Safety System)構造を有するバルブ(以下、「DISSバルブ」という。)が広く普及している。
【0007】
図6および図7は、上述したDISSバルブの従来構造の一例を示す側面図であって、図6は部分断面図であり、図7はそのアウトレット部の展開図である。
図6に示す構造のDISSバルブ101は、縦型のバルブ本体102の側部にアウトレット部112が横向きに形成されてなり、バルブ本体102の下部側と、アウトレット部112に流路110a、110bがL型に配置され、バルブ本体102の上部側に流路110a、110bの接合部分に接続する弁体収納孔119が形成されている。弁体収納孔119の底部の流路110aと流路110bの接合部分には弁座127Aが形成され、この弁座127Aの上に、弁体127が設けられている。
また、弁体収納孔119には、スピンドル141とバルブステム142とが挿入されるとともに、これらがグランドナット144によりネジ結合して抜け止めされ、スピンドル141の上端には、ハンドル103が設けられている。
また、バルブステム142の下端にダイヤフラム143が設けられ、このダイヤフラム143の下に弁体127が設置されている。なお、弁体127の上端は、ダイヤフラム143を貫通して、バルブステム142に螺合されている。従って、ハンドル103を回転操作して、スピンドル141をグランドナット144に沿って上下することで、弁体127を介して、流路110a、110bを遮断するか、連通できるように構成されている。
【0008】
図6に示すように、流通過程においては、通常、DISSバルブ(腐食性ガス充填容器用バルブ)101のバルブ本体102のアウトレット125に、アウトレットキャップ105が取り付けられている。このアウトレットキャップ105は、仕切りプラグ109を介してガスケット107がガスケットシール面190cと密着するように取り付けられる。この時、もし、ガスケット107がアウトレットキャップ105の回転に伴い供廻りすると、ガスケット107がガスケットシール面190cに押圧されつつ回転するため、ガスケットシール面190cに擦過傷が生じることになる。万一、ガスケットシール面190cに擦過傷が生じてしまうと、気密性が損なわれ、結果として腐食性ガスの漏洩につながってしまう。
【0009】
それを防ぐために、図6に示すDISSバルブ101では、アウトレットキャップ105とアウトレット125の間に仕切りプラグ109を配置する。
DISSバルブ101のアウトレットキャップ105の内底面122cの中心には貫通孔120が設けられており、この貫通孔120に仕切りプラグ109の突起部130が嵌め合う構造になっている。また、仕切りプラグ109は、側面に突起部132を有しており、突起部132がアウトレット125に設けられた溝192に入るように仕切りプラグ109が設置される。
これらの構造により、アウトレットキャップ105が回転しても、仕切りプラグ109およびガスケット107が供廻りしないで、ガスケット107がガスケットシール面190cと密着できる仕組みになっている。
しかし、このようなDISSバルブ101を使用した場合でも、アウトレット125の凹部190のガスケットシール面190cおよび内壁面190aに腐食が生じることがあった。
【特許文献1】特開平7−310897号公報
【特許文献2】特開平7−256097号公報
【特許文献3】特開2007−162787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、近年、腐食性ガス充填容器に多用されているDISSバルブであって、アウトレット内部の腐食を防ぐ機構が備えられた腐食性ガス充填容器用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、DISSバルブにおいて、アウトレットキャップとアウトレットとの間、たとえば、アウトレットキャップの凹部の内底面と仕切りプラグとの隙間にシール材を取り付けることにより、アウトレット内部への大気の浸入が遮断され、アウトレット内部の腐食が格段に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の項目からなる。
(1) 腐食性ガスを通過させる流路を有するバルブ本体部と、前記バルブ本体部から突出されたアウトレットと、前記アウトレットに嵌合されるアウトレットキャップと、前記アウトレットキャップ内に配置される仕切りプラグと、前記仕切りプラグに設けられたガスケット用凹部に配置されるガスケットと、を有し、前記アウトレットに前記アウトレットキャップを取り付ける際に、前記仕切りプラグに設けられた側面突出部を前記アウトレットに設けられた切欠部に嵌合して前記仕切りプラグが配置されることにより前記仕切りプラグの供回りを防ぐ機構を備えた腐食性ガス充填容器用バルブであって、前記アウトレットキャップと前記アウトレットとの間にシール材が配置されていることを特徴とする腐食性ガス充填容器用バルブ。
(2) 前記シール材が、前記仕切りプラグのガスケット用凹部の反対側の面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする(1)に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(3) 前記シール材が、前記アウトレットキャップの内底面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする(1)に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(4) 前記シール材が、前記アウトレットの側面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(5) 前記アウトレットキャップに、第2のバルブが取り付けられていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(6) 前記アウトレットキャップの表面に、表面処理が施されたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(7) 前記表面処理がNiメッキであることを特徴とする(6)に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(8) 前記アウトレットキャップの表面にネジ溝部があり、前記表面処理が銀メッキであることを特徴とする(6)に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
(9) 前記腐食性ガスが、フッ素、塩素、臭素、弗化水素、塩化水素、臭化水素、三弗化塩素、三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、二弗化カルボニル、四弗化ケイ素、六弗化タングステン、または、アンモニアのいずれかを含むガスであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成によれば、近年、腐食性ガス充填容器に多用されているDISSバルブであって、アウトレット内部の腐食を防ぐ機構が備えられた腐食性ガス充填容器用バルブを提供することができる
【0013】
本発明の腐食性ガス充填容器用バルブは、アウトレットキャップとアウトレットとの間にシール材が配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップの貫通孔からアウトレット部の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部の内部の気密性を向上させて、アウトレット部の内部、たとえば、アウトレットの凹部の内壁面やガスケットシール面に残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面やガスケットシール面の腐食を防止することができる。
【0014】
本発明の腐食性ガス充填容器用バルブは、シール材が、仕切りプラグのガスケット用凹部の反対側の面に設けられたシール材用凹部に配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップの貫通孔からアウトレット部の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部の内部、たとえば、アウトレットの凹部の内壁面やガスケットシール面に残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面やガスケットシール面の腐食を防止することができる。
【0015】
本発明の腐食性ガス充填容器用バルブは、シール材が、アウトレットキャップの凹部の内底面に設けられたシール材用凹部に配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップの貫通孔からアウトレット部の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部の内部、たとえば、アウトレットの凹部の内壁面やガスケットシール面に残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面やガスケットシール面の腐食を防止することができる。
【0016】
本発明の腐食性ガス充填容器用バルブは、アウトレット内部への大気の浸入を遮断してアウトレット内部の腐食を抑制することができ、半導体デバイス等の製造に使用される腐食性ガスを安全かつ安定に供給することが可能になる。
また、本発明の腐食性ガス充填容器用バルブは、安価かつ容易な方法で作製することができ、製造コストを低減させるとともに製造プロセスを簡略化することができるので、その実用上の価値が極めて大きいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブについて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブの一例を示す側面図であって、図1は腐食性ガス充填容器用バルブの部分断面図であり、図2はそのアウトレット部の展開図であって、図2(a)は図1と同じ方向から見た図であり、図2(b)は図2(a)に示すA−A’線における図である。
図1および図2に示すように、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、腐食性ガスを通過させる流路10a、10bを有するバルブ本体部2と、バルブ本体部2から突出されたDISS構造のアウトレット25と、アウトレット25に取り付けられるアウトレットキャップ5と、アウトレットキャップ5の凹部22に配置される仕切りプラグ9と、仕切りプラグ9に設けられたガスケット用凹部94に配置されるガスケット7と、を有している。ここで、アウトレット25とアウトレットキャップ5と仕切りプラグ9とガスケット7は、中心線lの同軸上に配置され、アウトレット部12とされている。
【0018】
<バルブ本体部>
図1に示すように、バルブ本体部2は、側断面が略T字形状とされている。その一端側は取付部28とされており、取付部28に形成されたネジ溝部29によって、腐食性ガス容器(不図示)に容易に取り付けることができる構成とされている。また、バルブ本体部2の内部には、腐食性ガスを通過させる流路10aが設けられている。腐食性ガス容器に腐食性ガス充填容器用バルブ1を取り付けた際には、流路10aを腐食性ガスが通過する。さらにまた、バルブ本体部2の他端側には、ハンドル3が取り付けられている。バルブ本体部2の側面には、突出されたDISS構造のためのアウトレット25が形成されている。
なお、バルブ本体部2の基本構造自体は、図6の構造と同等であり、スピンドル141、バルブステム142、ダイヤフラム143、グランドナット144、弁体127、弁座127Aが設けられている。
【0019】
<アウトレット>
アウトレット25の内部には、腐食性ガスを通過させる別の流路10bが設けられている。流路10bは、流路10aと弁体127を介して連通されている。弁体127をハンドル3で操作することにより、流路10a、10bを通過する腐食性ガスの流量を制御することができる構成とされている。
【0020】
図2に示すように、アウトレット25の外周面にはネジ溝部26が設けられている。このネジ溝部26は、アウトレットキャップ5の内壁面に形成されたネジ溝部24と嵌合される構成とされている。これにより、アウトレット25にアウトレットキャップ5を締め付け固定することができる。
【0021】
図2に示すように、アウトレット25の先端側には、2つの切欠部92が設けられている。
切欠部92の幅は、仕切りプラグ9の側面突出部32を嵌合できる長さとされている。これにより、図1に示すように、切欠部92には、仕切りプラグ9の側面突出部32が嵌合して、仕切りプラグ9の中心線lを軸とする回転を抑制することができる。そのため、アウトレットキャップ5をアウトレット25に取り付ける際に、ネジ溝部24とネジ溝部26とを嵌合させてきつく締め付けても、仕切りプラグ9が供回りすることはない。ガスケット7をガスケットシール面90cに押圧させて回転させないので、ガスケットシール面90cに擦過傷を生じさせず、ガスケットシール面90cを保護することができる。
【0022】
また、切欠部92の長さは、仕切りプラグ9をアウトレット25に収容したときに、仕切りプラグ9の側面突出部32が切欠部92に嵌合され、側面突出部32が切欠部92の一面92cに当接されたときに、仕切りプラグ9のガスケット用凹部94に収容されたガスケット7がガスケットシール面と密着することができる長さとされている。これにより、ガスケット7とガスケットシール面90cとの間の気密性を保持することができる。
【0023】
<アウトレットキャップ>
図2に示すように、アウトレットキャップ5は、アウトレット25に被着するための凹部22を備えている。
凹部22の内壁面22aには、ネジ溝部24が形成されている。これにより、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際には、ネジ溝部24はアウトレット5の側面に設けられたネジ溝部26と嵌合される。
凹部22の内底面22cには、中心に貫通孔20が設けられている。貫通孔20の内径は、仕切りプラグ9の上面突出部30を嵌合できる長さとされている。これにより、貫通孔20に仕切りプラグ9の上面突出部30を嵌合して、仕切りプラグ9を中心軸lの同軸上に配置することができる。
【0024】
アウトレットキャップ5の表面には、耐食性向上、滑り性向上あるいは焼き付け防止などを目的として、メッキまたはコーティングで代表される表面処理を施すのが好ましい。アウトレットキャップ5の表面とは、大気に露出される部分であり、たとえば、凹部22の内底面22c、内壁面22a、ネジ溝部24あるいは外周面などである。
耐食性向上のためには、銀メッキ、金メッキまたはニッケル(以下、Niと表すこともある。)メッキを挙げることができるが、耐食性とコストのバランスの点で、Niメッキが好ましい。滑り性向上と焼き付け防止のためには、ネジ溝部24において、銀メッキ、金メッキもしくはNiメッキ、またはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂のコーティングを挙げることができるが、性能と施工のし易さの点で銀メッキが好ましい。
【0025】
<仕切りプラグ>
図1および図2に示すように、仕切りプラグ9は、アウトレット25とアウトレットキャップ5の間に配置されている。図2に示すように、仕切りプラグ9は略円柱状の部材であり、その一端側にはガスケット7を嵌合するガスケット用凹部94が設けられている。また、他端側には、アウトレットキャップ5に設けられた貫通孔20に嵌合する上面突出部30が形成されている。さらにまた、側面には2つの円柱状の側面突出部32が形成されている。
【0026】
ガスケット用凹部94は、ガスケット7を嵌合する大きさで形成されており、ガスケット用凹部94とガスケット7は、中心軸lと同軸上に配置されている。これにより、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付けたときに、ガスケット7をガスケットシール面90cに中心軸を合わせて密着させることができ、気密性を保持することができる。
【0027】
仕切りプラグ9の一端側はアウトレット25の凹部90に嵌合される。このとき、側面突出部32はアウトレット25の切欠部92に嵌合され、側面突出部32が切欠部92の一面92cに当接される。これにより、中心軸l回りの回転を抑制するとともに、アウトレット25に対する中心軸l方向の仕切りプラグ9の位置を一定に保つことができ、ガスケット用凹部94に収容したガスケット7をガスケットシール面90cに無理に押し付けることはない。
【0028】
仕切りプラグ9の他端側には上面突出部30が設けられ、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際には、上面突出部30がアウトレットキャップ5の貫通孔20と嵌合される。上面突出部30は中心軸l上に形成され、アウトレットキャップ5と仕切りプラグ9が中心軸lの同軸上に配置できる構成とされている。
【0029】
仕切りプラグ9の他面側(アウトレットキャップ5の内底面と接する面)には、シール材用溝部96が設けられている。シール材用溝部96は、断面形状が半円状、長方形状または正方形状に刳り貫かれ、平面視したときにリング状となるように形成された溝部であり、リング状のシール材70を嵌合できる構成とされている。
シール材用溝部96にシール材70を嵌合した状態で、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付けた場合には、シール材70が仕切りプラグ9の他面とアウトレットキャップ5の内底面22cとの間で、アウトレット部12の外部から貫通孔20を介してアウトレット部12の内部へ浸入する大気を遮断することができ、アウトレット部12の内部の大気の浸入による腐食を抑制することができる。
シール材用溝部96の溝深さ、径及び形状は、シール材70を保持する深さや長さであればよく、特に限定されない。図1および図2に示す例では、シール材70の径に合わせた大きさとし、シール材70が半分程度埋まる溝深さとしている。
【0030】
<シール材>
シール材70は、Oリング(リング状のエラストマー材料)からなり、仕切りプラグ9の他面側に設けられたシール材用溝部96に嵌合されている。これにより、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付けた場合に、アウトレット部12の外部から貫通孔20を介してアウトレット部12の内部へ浸入する大気を遮断して、アウトレット部12の内部の大気の浸入による腐食を抑制する。
このように、シール材70は、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間に配置されることが好ましい。これにより、アウトレット部12の外部からアウトレット部12の内部へ浸入する大気を遮断することができ、アウトレット部12の内部の大気の浸入による腐食を抑制することができる。
【0031】
シール材は、仕切りプラグ9の他面側に設けられたシール材用溝部96に配置したが、これに限定されるものではなく、外部から内部への大気の浸入を防ぐのに効果的な位置に配置することができる。たとえば、アウトレットキャップ5の内底面22cにシール材用溝部を形成して配置しても良い。
シール材70の材料としては、腐食性ガスに対して耐食性を有し、腐食性ガスを密封できる材料が好ましく、例えば、フッ素ゴム、フッ素樹脂、塩素樹脂、シリコーンゴム、エラストマー、アルミニウムなどを好適に用いることができる。シール材70の形状は特に限定されず、リング状やシート状のものを使用することができるが、特にリング状のOリングなどが好ましい。
【0032】
<ガスケット>
ガスケット7は、ドーナツ状または円板状の樹脂製の部材であり、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際には、仕切りプラグ9のガスケット用凹部94に嵌合され、その一面がアウトレットシール面90cと密着される構成とされている。これにより、アウトレット25の流路10bとアウトレット部12の内部との間の気密性を保持することができる。
【0033】
<腐食性ガス>
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1に充填する腐食性ガスとしては、特に限定されるものではなく、任意の腐食性ガスを用いることができる。
たとえば、フッ素、塩素、臭素、弗化水素、塩化水素、臭化水素、三弗化塩素、三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、二弗化カルボニル、四弗化珪素、六弗化タングステン、及び、アンモニアのいずれかを含む腐食性ガスを用いることができる。
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレット部12の内部の気密性を保持できる構成なので、これらの腐食性ガスを充填する場合でも、通常の使用ではアウトレット部12の内部を腐食させることがないので、腐食性ガス充填容器用バルブとして好適に用いることができる。
【0034】
<使用形態>
腐食性ガス充填容器バルブ1の通常の使用形態について説明する。なお、ここでは、腐食性ガス充填容器バルブ1が腐食性ガス充填容器に取り付けられており、腐食性ガス充填容器に充填されている腐食性ガスを半導体製造装置に移す例を説明する。
【0035】
まず、通常の使用においては、腐食性ガス充填容器バルブ1のアウトレット部のアウトレットキャップ5を外して、アウトレット25を、半導体製造装置のガス供給ラインに接続する。次に、ハンドル3を操作して、腐食性ガス充填容器から腐食性ガスを必要量だけガス供給ラインに流出させた後に、ハンドル3を操作して、その流出を止める。最後に、半導体製造装置のガス供給ラインからアウトレット25を外し、腐食性ガス充填容器バルブ1のアウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける。
【0036】
アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入する場合がある。この状態で、アウトレットキャップ5を取り付けてしまった場合には、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とが反応するおそれが発生する。残留した腐食性ガスと外部から浸入した大気とが反応した場合には、内壁面90aやガスケットシール面90cを腐食させるおそれがある。
【0037】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器バルブ1では、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70を配置した構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入するおそれが少ない。
そのため、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とが反応することはなく、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0038】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブの別の一例を示す図であって、充填容器用バルブのアウトレット部の部分断面展開図である。
アウトレットキャップ5の内底面22cにシール材用溝部88が設けられ、シール材70が配置され、仕切りプラグ9の他面にはシール材用溝部96が設けられていないほかは、実施形態1と同様の構成とされている。なお、実施形態1と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0039】
この構成でも、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70が配置される構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入することはない。
そのため、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とが反応させることはなく、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0040】
(実施形態3)
図4は、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブの別の一例を示す図であって、充填容器用バルブのアウトレット部の部分断面展開図である。
アウトレットキャップ5の外周面にシール材用溝部82が設けられ、シール材用溝部82にシール材72が配置されたほかは、実施形態1と同様の構成とされている。なお、実施形態1と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0041】
この構成でも、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70が配置される構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入することはない。
【0042】
さらに、アウトレットキャップ5のバルブ本体部側の面5cが、アウトレット25の外周面に設けられたシール材用溝部82に配置されたシール材72に密着される構成なので、アウトレットキャップ5と凹部22の内壁面22aとアウトレット25の外周面との隙間を通過して外部の大気がアウトレット部12の内部に浸入するおそれをなくすことができる。
【0043】
これにより、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを更に低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0044】
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブの別の一例を示す図であって、充填容器用バルブのアウトレット部の部分断面展開図である。
第2のバルブがアウトレットキャップ5に接合されているほかは、実施形態3と同様の構成とされている。この第2のバルブとしては、一般的な開閉バルブや逆流防止バルブ等を使用することができるが、ここでは代表例として逆流防止バルブ40を使用した例を説明する。なお、実施形態3と同じ部材については同じ符号を付して示している。
【0045】
この構成でも、アウトレット25にアウトレットキャップ5を取り付ける際、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70が配置される構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入することはない。さらに、アウトレットキャップ5のバルブ本体部側の面5cが、アウトレット25の外周面に設けられたシール材用溝部82に配置されたシール材72に密着される構成なので、アウトレットキャップ5と凹部22の内壁面22aとアウトレット25の外周面との隙間を通過して外部の大気がアウトレット部12の内部に浸入するおそれをなくすことができる。これにより、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを更に低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0046】
本実施形態では、図5に示すように、アウトレットキャップ5の側面に、凹部22に連通された流路10cを備えた加圧保持用の逆流防止バルブ40が取り付けられている。
加圧保持用の逆流防止バルブ40を用いた場合には、腐食性ガスを充填後あるいは消費後にアウトレットキャップ5を取り付けた後、逆流防止バルブ40を窒素ガス充填装置またはヘリウムガス充填装置(不図示)に接続することにより、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスにより、アウトレット部12の内部にわずかに残留した腐食性ガスや外部から浸入した大気を排出するとともに、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを充填して加圧保持させることができる。アウトレット部12の内部の空間に、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを充填して加圧保持することにより、その後の外部からの大気の混入をほぼ完全に防止させることができる。
【0047】
なお、逆流防止バルブ40としては、一般に用いられる逆流防止バルブを用いることができ加圧保持用または減圧保持用のいずれのタイプのバルブを用いてもよい。
減圧保持用の逆流防止バルブ40を用いた場合には、腐食性ガスを充填後あるいは消費後にアウトレットキャップ5を取り付けた後、逆流防止バルブ40を真空装置(不図示)に接続することにより、アウトレット部12の内部に残留した腐食性ガスや外部から浸入した大気を排出させることができる。アウトレット部12の内部の空間に存在するガスを排気し減圧保持することにより、アウトレット部12の内部の空間に微少量混入した大気をほぼ完全に除去することができる。
【0048】
すなわち、本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブは逆流防止バルブ40を備える構成なので、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを充填して加圧保持することにより、その後の外部からの大気の混入をほぼ完全に防止させたり、アウトレット12の内部の空間に存在するガスを排気し減圧保持することにより、アウトレット12の内部の空間に微少量混入した大気をほぼ完全に除去することができ、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを更に低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0049】
逆流防止バルブ40としては、ストップバルブ(開閉弁)を備えたものを用いてもよい。これにより、アウトレット25の内部の空間の加圧保持および減圧保持を繰り返すこと(サイクルパージ)を容易に行うことができ、アウトレット25の内部の空間への大気の浸入や腐食性ガスの残留をより確実に排除することが可能になる。
【0050】
逆流防止バルブ40の設置位置は、特に限定されない。図5に示した例では、アウトレットキャップ5の側面に逆流防止バルブ40を設置しているが、アウトレット25の内部の空間に連通する流路を有していれば設置箇所は自由に選択でき、例えばアウトレットキャップ5の底面に設置しても良い。
【0051】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレットキャップ5とアウトレット25との間にシール材70が配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0052】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、シール材70が、仕切りプラグ9のガスケット用凹部94の反対側の面に設けられたシール材用凹部96に配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0053】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、シール材70が、アウトレットキャップ5の凹部22の内底面22cに設けられたシール材用凹部88に配置されている構成なので、外部の大気がアウトレットキャップ5の貫通孔20からアウトレット部12の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部12の内部の気密性を更に向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0054】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、シール材72が、アウトレット25の外周面に設けられたシール材用凹部82に配置されている構成なので、アウトレットキャップ5と凹部22の内壁面22aとアウトレット25の外周面との隙間を通過して外部の大気がアウトレット部12の内部に浸入するおそれを低減することができる。これにより、アウトレット部12の内部の気密性を向上させて、アウトレット部12の内部、たとえば、アウトレット25の凹部90の内壁面90aやガスケットシール面90cに残留した腐食性ガスと大気とを反応させるおそれを低減して、内壁面90aやガスケットシール面90cの腐食を防止することができる。
【0055】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレットキャップ5に、第2のバルブが取り付けられている構成なので、アウトレット12の内部の空間に、窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを充填して加圧保持することにより、その後の外部からの大気の混入をほぼ完全に防止させたり、アウトレット12の内部の空間に存在するガスを排気し減圧保持することにより、アウトレット12の内部の空間に微少量混入した大気をほぼ完全に除去することができる。
【0056】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレットキャップ5の表面に、表面処理を施した構成なので、アウトレットキャップ5の耐食性を向上させることが可能となる。
【0057】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、前記表面処理がNiメッキである構成なので、アウトレットキャップ5の耐食性を向上させることが可能となる。
【0058】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレットキャップ5の表面にネジ溝部24があり、前記表面処理が銀メッキである構成なので、アウトレット25とアウトレットキャップ5との間の滑り性を向上させることが可能となる。
【0059】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレット部12の内部の気密性を保持できる構成なので、腐食性ガスが、フッ素、塩素、臭素、弗化水素、塩化水素、臭化水素、三弗化塩素、三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、二弗化カルボニル、四弗化ケイ素、六弗化タングステン、または、アンモニアのいずれかを含むガスを充填する場合でも、通常の使用ではアウトレット部12の内部を腐食させることがないので、腐食性ガス充填容器用バルブとして好適に用いることができる。
【0060】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、アウトレット部12の内部の気密性を保持できる構成なので、アウトレット25への大気の浸入が遮断され、アウトレット25の腐食が抑制され、半導体デバイス等の製造に使用される腐食性ガスを安全かつ安定に供給することが可能になる。
【0061】
本発明の実施形態である腐食性ガス充填容器用バルブ1は、安価かつ容易な方法で作製することができ、製造コストを低減させるとともに製造プロセスを簡略化することができるので、その実用上の価値が極めて大きいものとなる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
<実施例1>
腐食性ガス充填容器(内容積10リットル)に、図1及び図2に示した腐食性ガス充填容器用バルブを装着した。次に、腐食性ガス充填容器用バルブのアウトレットキャップを取り外し、腐食性ガス貯蔵タンクに接続された充填管を、腐食性ガス充填容器用バルブのアウトレットに取り付けた後、腐食性ガス充填容器用バルブを開放して、腐食性ガス貯蔵タンクに貯蔵された三塩化ホウ素ガスを1kg腐食性ガス充填容器内に充填した。
次に、腐食性ガス充填容器用バルブを閉止した後、充填管を取り外し、直ちにアウトレットキャップを取り付けた。
その後、腐食性ガス充填容器用バルブを装着した腐食性ガス充填容器を、室温約20℃、湿度約30〜40%の条件下で、大気中に2週間放置した。
【0063】
<腐食目視確認>
室温約20℃、湿度約30〜40%の条件下で、大気中に2週間放置した後に、アウトレットキャップを取り外して、目視により腐食の有無を観察した。目視では、アウトレットの内部(アウトレットの凹部の内壁面およびガスケットシール面)に腐食は確認できなかった。
【0064】
<金属濃度測定>
まず、アウトレットの凹部の内壁面およびガスケットシール面をエタノール(20ml)で洗浄した。次に、この洗浄廃液を純水(180ml)で希釈した後、ICP−AES(結合誘導プラズマ−原子発光スペクトル法)により金属元素を分析し、洗浄廃液中に溶出した金属(Fe及びNi)の濃度を測定した。
アウトレットの材質はSUS316L、アウトレットキャップの材質はSUS304であり、腐食が進むほど、洗浄廃液中に溶出する金属濃度は上昇するため、この方法によって、相対的な腐食抑制効果を評価することが可能である。
得られた結果を表1に示した。洗浄廃液中に溶出したFe及びNiの濃度は、ほぼ定量下限値に近く、いずれも、0.1質量ppmであった。
【0065】
【表1】

【0066】
<実施例2>
図4に示した腐食性ガス充填容器用バルブを装着した以外は、実施例1と同様にして、腐食抑制効果を評価した。
この場合も、目視では腐食が確認されなかった。また、金属濃度測定の結果は表1に示すように、洗浄廃液中に溶出したFe及びNiの濃度は、それぞれ、0.1質量ppm及び0.1質量ppm未満であった。
【0067】
<実施例3>
図5に示した腐食性ガス充填容器用バルブを装着した以外は、実施例1と同様にして、腐食抑制効果を評価した。このとき、逆流防止バルブのゲージ圧で0.3MPaとなるよう窒素ガスを封入した。
この場合も、目視では腐食が確認されなかった。また、金属濃度測定の結果は表1に示すように、洗浄廃液中に溶出したFe及びNiの濃度は、いずれも0.1質量ppm未満であった。
【0068】
<実施例4>
図4に示した腐食性ガス充填容器用バルブを装着し、アウトレットキャップの表面にNiコーティングを施工した以外は、実施例1と同様にして、腐食抑制効果を評価した。
この場合も、目視では腐食が確認されなかった。また、金属濃度測定の結果は表1に示すように、洗浄廃液中に溶出したFe及びNiの濃度は、いずれも0.1質量ppm未満であった。
【0069】
<比較例1>
図6および図7に示した従来型容器用バルブを装着した以外は、実施例1と同様にして、腐食抑制効果を評価した。
目視により、アウトレットの内部(アウトレット内壁面およびガスケットシール面)に明らかに腐食が生じているのを確認することができた。また、金属濃度測定の結果は表1に示すように、洗浄廃液中に溶出したFe及びNiの濃度は、それぞれ、0.5質量ppm及び0.3質量ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、半導体デバイス等の製造に使用される腐食性ガス充填容器用バルブに関するものであり、半導体装置産業、ディスプレイパネル産業および太陽電池パネル産業などで利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面図である。
【図2】本発明の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面展開図である。
【図3】本発明の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面図である。
【図4】本発明の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面図である。
【図5】本発明の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面図である。
【図6】従来の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面図である。
【図7】従来の腐食性ガス充填容器用バルブを示す部分断面展開図である。
【符号の説明】
【0072】
1…腐食性ガス充填容器用バルブ、2…バルブ本体部、3…ハンドル、5…アウトレットキャップ、5c…バルブ本体部側の面、7…ガスケット、9…仕切りプラグ、10a、10b、10c…流路、12…アウトレット部、20…貫通孔、22…凹部、22a…内壁面、22c…内底面、24…ネジ溝部、25…アウトレット、25a…側面、26…ネジ溝部、28…取付部、29…ネジ溝部、30…上面突出部、32…側面突出部、40…逆流防止バルブ、70、72…シール材、82…シール材用凹部、88…シール材用凹部、90…凹部、90a…内壁面、90c…ガスケットシール面、92…切欠部、92c…側面突出部保持面、94…ガスケット用凹部、96…シール材用凹部、101…腐食性ガス充填容器用バルブ、102…バルブ本体部、103…ハンドル、105…アウトレットキャップ、107…ガスケット、109…仕切りプラグ、110a、110b…流路、119…弁体収納孔、112…アウトレット部、120…貫通孔、122…凹部、122a…内壁面、122c…内底面、124…ネジ溝部、125…アウトレット、126…ネジ溝部、127…弁体、127A…弁座、128…取付部、129…ネジ溝部、130…上面突出部、132…側面突出部、141…スピンドル、142…バルブステム、143…ダイヤフラム、144…グランドナット、190…凹部、190a…内壁面、190c…ガスケットシール面、192…切欠部、192c…側面突出部保持面、194…ガスケット用凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性ガスを通過させる流路を有するバルブ本体部と、前記バルブ本体部から突出されたアウトレットと、前記アウトレットに嵌合されるアウトレットキャップと、前記アウトレットキャップ内に配置される仕切りプラグと、前記仕切りプラグに設けられたガスケット用凹部に配置されるガスケットと、を有し、
前記アウトレットに前記アウトレットキャップを取り付ける際に、前記仕切りプラグに設けられた側面突出部を前記アウトレットに設けられた切欠部に嵌合して前記仕切りプラグが配置されることにより前記仕切りプラグの供回りを防ぐ機構を備えた腐食性ガス充填容器用バルブであって、
前記アウトレットキャップと前記アウトレットとの間にシール材が配置されていることを特徴とする腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項2】
前記シール材が、前記仕切りプラグのガスケット用凹部の反対側の面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項3】
前記シール材が、前記アウトレットキャップの内底面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項4】
前記シール材が、前記アウトレットの側面に設けられたシール材用凹部に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項5】
前記アウトレットキャップに、第2のバルブが取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項6】
前記アウトレットキャップの表面に、表面処理が施されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項7】
前記表面処理がNiメッキであることを特徴とする請求項6に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項8】
前記アウトレットキャップの表面にネジ溝部があり、前記表面処理が銀メッキであることを特徴とする請求項6に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。
【請求項9】
前記腐食性ガスが、フッ素、塩素、臭素、弗化水素、塩化水素、臭化水素、三弗化塩素、三塩化ホウ素、三弗化ホウ素、二弗化カルボニル、四弗化ケイ素、六弗化タングステン、または、アンモニアのいずれかを含むガスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の腐食性ガス充填容器用バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−287753(P2009−287753A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143721(P2008−143721)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(591038602)株式会社ネリキ (54)
【Fターム(参考)】