説明

腫瘍治療用のスルホキシド誘導体

本発明は、記載される式IaからImのスルホキシド誘導体に関し、腫瘍を治療するための、医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有用な特性を有する新規化合物、特に薬剤の調製に使用することができる新規化合物を発見するという目的に基づいたものである。
【0002】
本発明は、リゾホスファチジン酸レベルの増加を伴う疾患を治療するための化合物および化合物の使用に関し、さらにこれらの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0003】
詳細には、本発明は、リゾホスファチジン酸(LPA)レベルを調節および/または調整する1つまたは複数の酵素を好ましくは阻害する化合物に関し、これらの化合物を含む組成物に関し、血管新生、癌、腫瘍形成、成長および増殖、動脈硬化症、視覚疾患、脈絡膜血管新生および糖尿病性網膜症、炎症性疾患、関節炎、神経変性、再狭窄、創傷治癒、または移植拒絶反応などの疾患および愁訴を治療するための、それらの使用方法に関する。特に、本発明による化合物は癌疾患の治療または予防に適している。
【背景技術】
【0004】
オートタキシン(autotoxin)(ATX)は、腹水および血漿中のリゾホスファチジン酸レベルの増加の原因となる酵素である(Xuら 1995,Clinical Cancer Research 1巻、1223頁、およびXuら 1995、Biochem.J.309巻、933頁)。ATXは、リゾファチジルコリン(LPC)をリゾホスファチジン酸に変換する(Tokumuraら 2002、J.Biol.Chem.、277巻、39436頁、およびUmezu−Gozoら 2002、J.Biol.Chem.、158巻、227頁)。LPAは、例えば平滑筋収縮、血小板凝集、およびアポトーシスなど、多くの生物学的および生化学的過程に影響を及ぼす細胞間の脂質メディエーターである(Tigyiら 2003 Prog.Lipid Res.42巻、498頁、およびMillsら 2003 Nat.Rev.Cancer 3巻、582頁、およびLynchら 2001 Prost.Lipid Med.64巻、33頁)。さらに、LPAは、初期および後期の卵巣癌患者の血漿および腹水の中に高濃度で見出すことができる。そこではLPAは、腫瘍細胞の増殖および隣接組織中への浸潤の一因となっており、その結果転移の広がり(metastasisation)が起こり得る(Xuら 1995、Clinical Cancer Research 1巻、1223頁、およびXuら 1995、Biochem.J.309巻、933頁)。これらの過程は、Gタンパク質共役受容体のLPAによる活性化によってスイッチが入れられる(Contosら 2000、Mol.Pharm.58巻、1188頁)。
【0005】
この理由で、腫瘍患者を治療するためにLPAレベルを低下させることが望ましい。これは、例えばオートタキシンなど、LPA生合成に関与する酵素の阻害によって達成することができる(ATX、Sanoら 2002、J.Biol.Chem.277巻、21197頁、およびAokiら 2003、J.Biol.Chem.277巻、48737頁)。オートタキシンは、ヌクレオチドピロホスファターゼおよびホスホジエステラーゼの酵素ファミリーに属し(Godingら 1998、Immunol.Rev.161巻、11頁)、腫瘍中に高度に発現し、転移の広がりをもたらし得る、腫瘍細胞の増殖および隣接組織への浸潤を引き起こすので(Namら 2000、Oncogene、19巻、241頁)、抗腫瘍治療における重要な出発点になる(Millsら 2003、Nat.Rev. Cancer 3巻、582頁、およびGotoら 2004、J.Cell.Biochem.92巻、1115頁)。さらに、オートタキシンは、他の血管新生因子と一緒に、血管新生の過程で血管形成を引き起こす(Namら 2001、Cancer Res.61巻、6938頁)。血管新生は腫瘍成長の重要な過程であり、栄養素の腫瘍への供給を確実にする。このため、血管新生の阻害は、腫瘍を飢餓状態にすることを目的とする、癌および腫瘍治療の重要な出発点になる(Folkman、2007、Nature Reviews Drug Discovery 6巻、273〜286頁)。
【0006】
さらに、オートタキシンは、LPCのLPAへの変換によって二次リンパ器官へのT細胞の遊走を制御する。健常な生物では、ナイーブT細胞は血液と二次リンパ器官、リンパ節との間を定常的に遊走する。血流からリンパ節の中へ遊走するために、T細胞は特殊な血管、いわゆる高内皮性小静脈(HEV)を乗り越えなければならない。オートタキシンはこの過程に関与している。HEV細胞は血流へオートタキシンを分泌する。オートタキシンはT細胞に結合し、その表面上でLPCをLPAに変換する。次いで、LPAは、T細胞の表面上の特定の受容体に結合し、リンパ節へ遊走するT細胞の能力を高める。酵素的に不活性であるオートタキシン変異体によるT細胞の処理は、リンパ節へ遊走するT細胞の能力を低下させる(Kanda,H.ら Autotaxin,an ectoenzyme that produces lysophosphatidic acid,promotes the entry of lymphocytes into secondary lymphoid organs.Nat Immunol、2008、9(4):415〜23頁)。我々が開発した阻害剤によるT細胞の処理は、T細胞のリンパ節への遊走を同様に阻止することができる。
【0007】
炎症中に、T細胞は、他の体組織へ遊走し、そこで器官損傷を引き起こし得る炎症反応を誘起することもある。炎症を起こした組織中の血管がオートタキシンを発現し始めることが動物モデルで示されてきた(Nakasaki,T.ら Involvement of the lysophosphatidic acid−generating enzyme autotaxin in lymphocyte−endothelial cell interactions.Am J Pathol.2008、173(5):1566〜76頁)。したがって、オートタキシンは炎症中にT細胞が体組織へ遊走することも制御できると考えることができる。さらに、オートタキシン産生の増加は、慢性炎症性腸疾患の場合における炎症腸組織(Wu,F.らGenome−wide gene expression differences in Crohn’s disease and ulcerative colitis from endoscopic pinch biopsies: insights into distinctive pathogenesis. Inflamm Bowel Dis.2007、13(7):807−21頁)ならびにまた、病変関節(Nochi,H.ら Stimulatory role of lysophosphatidic acid in cyclooxygenase−2 induction by synovial fluid of patients with rheumatoid arthritis in fibroblast−like synovial cells.J Immunol.2008、181(7):5111〜9頁)および関節炎患者の滑膜繊維芽細胞(Kehlen,A.ら IL−1 beta− and IL−4−induced down−regulation of autotaxin mRNA and PC−1 in fibroblast−like synoviocytes of patients with rheumatoid arthritis (RA). Clin Exp Immunol.2001、123(1):147〜54頁)の両方において、人間でも実際明らかである。T細胞の組織中への遊走が両方の炎症性疾患において一役果たしているので、オートタキシンの阻害はこの過程を抑制し、したがって、その疾患の進行にプラスの影響を及ぼし得る。
【0008】
驚くべきことに、本発明による化合物は、ヌクレオチドピロホスファターゼおよびホスホジエステラーゼの酵素ファミリー、特にオートタキシンの特異的阻害を引き起こすことが見出された。本発明による化合物は、例えば本明細書に記載のアッセイで容易に検出できる有利な生物活性を示すことが好ましい。この種のアッセイでは、本発明による化合物は阻害効果を示しかつ引き起こすことが好ましく、この阻害効果は、適切な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、より好ましくはナノモル範囲のIC50値によって通常は記録される。
【0009】
一般に、例えば単球性白血病、脳癌、泌尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、喉頭癌、ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺癌など、すべての固形腫瘍および非固形腫瘍は、式IaからImの化合物で治療することができる。さらなる例としては、前立腺癌、膵臓癌および乳癌が挙げられる。
【0010】
本明細書において議論されるように、本発明による化合物の効果は様々な疾患に関連する。これに応じて、本発明による化合物は、1つまたは複数のヌクレオチドピロホスファターゼおよび/またはホスホジエステラーゼ、特にオートタキシンの阻害によって影響を受ける疾患の予防および/または治療に有用である。
【0011】
したがって、本発明は、前記疾患の治療および/または予防における薬剤および/または薬剤活性化合物としての本発明による化合物に関し、前記疾患の治療および/または予防のための医薬品を調製するための、本発明による化合物の使用に関し、さらに、本発明による1つまたは複数の化合物をその投与を必要とする患者に投与することを含む前記疾患の治療のための方法に関する。
【0012】
本発明による化合物が異種移植腫瘍モデルで有利な作用を有することを示すことができる。
【0013】
宿主または患者は、任意の哺乳類種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラット、およびハムスターを含むげっ歯類;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属することができる。動物モデルは、実験研究にとって興味深く、ヒト疾患の治療のためのモデルを提供する。
【0014】
本発明による化合物による処理に対する特定の細胞の感受性は、インビトロでの試験により測定することができる。典型的には、活性作用物質が細胞死を誘導するかまたは遊走を阻害できるようになるのに十分な時間、通常約1時間から1週間の間、様々な濃度で本発明による化合物を細胞の培養物と混合する。インビトロでの試験については、生検サンプルの培養細胞を使用することができる。その後、処理後に残っている生細胞を数える。
【0015】
用量は、使用する特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などに応じて変動させる。典型的には、治療用量は標的組織中の望ましくない細胞集団を減少させるのにかなり十分である一方、患者の生存率は維持される。この処理は、かなりの減少、例えば細胞量の少なくとも約50%の減少が起こるまで通常継続され、望ましくない細胞が体内に基本的に検出できなくなるまで継続され得る。
【0016】
従来技術
オートタキシンを阻害できる他のスルホキシドがWO2009046841に記載されている。他の複素環誘導体が、WO2002085352、WO2002030422、EP1002535、WO9818793、EP385848、FR2637286、WO2005097782、EP709384、EP396282、EP49203に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2009/046841号パンフレット
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】ATX、Sanoら 2002、J.Biol.Chem.277巻、21197頁
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の概要
本発明は、式IaからImまでの化合物に関する。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
本発明はまた、光学活性体(立体異性体)、下記の鏡像異性体および互変異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、ならびにこれらの化合物の塩、水和物、および溶媒和物に関する。これらの化合物の溶媒和物は、相互引力のために形成される、化合物上への不活性溶媒分子の付加体(adduction(s))を意味すると解釈される。溶媒和物は、例えば一水和物もしくは二水和物、またはアルコラートである。
【0025】
スルホキシドはまた、双極性共鳴式として表現することができる。イオウはキラリティーの中心としてその式から出現し、それ故鏡像異性体が存在する。
【0026】
【化5】

【0027】
互変異性体。
【0028】
【化6】

【0029】
医薬として使用可能な誘導体は、例えば本発明による化合物の塩およびまたいわゆるプロドラッグ化合物を意味するものと解釈される。
【0030】
プロドラッグ誘導体は、例えばアルキル基またはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されており、生物体内で迅速に切断されて本発明による有効化合物を形成する式Iの化合物を意味するものと解釈される。
【0031】
これらの誘導体には、例えばInt.J.Pharm.115、61〜67(1995)に記載のような、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体も含まれる。
【0032】
「有効量」という表現は、例えば研究者もしくは医師が求めるまたは所望する生物学的あるいは医学的応答を組織、器官、動物、もしくは人間に生じさせる薬剤量または医薬活性化合物量を意味する。
【0033】
さらに、「治療有効量」という表現は、この量を受け取らなかった対応する被験対象と比較して、次の結果:疾患、症候群、症状、愁訴、障害、もしくは副作用の改善された治療、治癒、予防、もしくは除去、またはさらに疾患、愁訴、または障害の進行の軽減を有する量を意味する。
【0034】
「治療有効量」という表現はまた、正常な生理機能を高めることに有効な量を包含する。
【0035】
本発明はまた、本発明による化合物の混合物、例として、例えば比率1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100、または1:1000での2つのジアステレオマーの混合物の使用に関する。
【0036】
これは、立体異性化合物の混合物であることが特に好ましい。
【0037】
さらに、式IaからImの化合物およびまたその調製のための出発物質は、文献(例えばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的学術書)に記載のように、それ自体公知の方法によって、前記反応に対して公知で適切な反応条件下で正確に調製される。ここではより詳細に記述しない、それ自体公知の変法もここで使用することができる。
【0038】
所望により、出発物質をその場で形成することもでき、その結果出発物質を反応混合物から単離せずに、その代わり本発明による化合物IaからImに直ちにさらに変換する。
【0039】
適切な不活性溶媒の例としては、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの炭化水素;トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルム、またはジクロロメタンなどの塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、またはtert−ブタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、またはジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)などのグリコールエーテル;アセトンまたはブタノンなどのケトン;アセトアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド類;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;二硫化炭素;ギ酸または酢酸などのカルボン酸;ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物;酢酸エチルなどのエステル、あるいは前記溶媒の混合物がある。
特に好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、および/またはDMFである。
【0040】
本発明による前記化合物は、最終的に非塩形態で使用することができる。一方、本発明は、当技術分野で公知の手順により、様々な有機および無機の酸および塩基から誘導し得る、医薬として許容される塩の形態でのこれらの化合物の使用も包含する。化合物IaからImの医薬として許容される塩の形態は、大部分が従来の方法によって調製される。式IaからImの化合物がカルボキシル基を含有する場合、その適切な塩の1つは、対応する塩基付加塩を与えるように該化合物を適切な塩基と反応させることにより形成することができる。そのような塩基には、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;ピペリジン、ジエタノールアミン、およびN−メチルグルタミンなどの様々な有機塩基がある。また、化合物IaからImのアルミニウム塩も含まれる。式IaからImの特定の化合物の場合には、これらの化合物を医薬として許容される有機酸および無機酸、例えば、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素などのハロゲン化水素、硫酸塩、硝酸塩、またはリン酸塩などの他の鉱酸およびその対応する塩、ならびにエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、およびベンゼンスルホン酸塩などのアルキルスルホン酸塩およびモノアリールスルホン酸塩、ならびに酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などの他の有機酸およびその対応する塩によって処理することにより、酸付加塩を形成することができる。したがって、式Iの化合物の医薬として許容される酸付加塩としては、下記のものが挙げられる。酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン塩(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、硫酸水素塩、亜硫酸水素塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクテル酸塩(galacterate)(粘液酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、酢酸フェニル、3−フェニルプロピオン酸、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩であるが、これには、限定を表す意図はない。
【0041】
さらに、本発明による化合物の塩基塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、および亜鉛の塩が挙げられるが、これには限定を表す意図はない。上述した塩のうち、アンモニウム、アルカリ金属ナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにアルカリ土類金属カルシウム塩およびマグネシウム塩が好ましい。医薬として許容される有機無毒性塩基から誘導される化合物IaからImの塩としては、一級、二級および三級アミン、天然置換アミンも含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が挙げられるが、これには限定を表す意図はない。
【0042】
塩基性窒素含有基を含有する本発明の化合物は、ハロゲン化(C〜C)アルキル、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、イソプロピル、およびtert−ブチル;ジ(C〜C)アルキル硫酸、例えばジメチル、ジエチル、およびジアミル硫酸;ハロゲン化(C10〜C18)アルキル、例えば塩化、臭化、およびヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ならびにハロゲン化アリール(C〜C)アルキル、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルなどの試剤を用いて四級化することができる。本発明による水溶性および油溶性化合物の両方は、このような塩を用いて調製することができる。
【0043】
好ましい上述した医薬塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバル酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩、およびトロメタミンが挙げられるが、これには限定を表す意図はない。
【0044】
式IaからImの塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基形態を、十分な量の所望の酸と接触させ、従来の方式で塩の形成を生じさせることによって調製される。遊離塩基は、従来通りに、その塩形態をある塩基と接触させ、その遊離塩基を単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、極性溶媒中での溶解度などの特定の物理的特性に関して、その対応する塩形態とは特定の点について異なるが、本発明の目的に対しては、その塩は他の点ではそれぞれのその遊離塩基形態と一致している。
【0045】
上述したように、式IaからImの化合物の医薬として許容される塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンを用いて形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミン、およびプロカインである。
【0046】
本発明による酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を、従来通りに、十分な量の所望の塩基と接触させ、塩の形成を生じさせることによって調製される。遊離酸は、従来通りに、その塩形態をある酸と接触させ、その遊離酸を単離することによって再生することができる。遊離酸形態は、極性溶媒中での溶解度などの特定の物理的特性に関して、その対応する塩形態とは特定の点について異なるが、本発明の目的に対しては、その塩は他の点ではそれぞれのその遊離酸形態と一致している。
【0047】
本発明による化合物が、この種の医薬として許容される塩を形成することができる2つ以上の基を含有する場合、本発明は複数の塩も包含する。典型的な複数の塩の形態としては、例えば、酒石酸水素塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウム、および三塩酸塩が挙げられるが、これには限定を表す意図はない。
【0048】
上述したことに関して、本発明に関連した「医薬として許容される塩」という表現は、特に、式IaからImの化合物の塩形態が、活性化合物の遊離形態または以前に用いられた活性化合物の任意の他の塩形態と比較して、活性化合物に改善された薬物動態学的特性を付与する場合に、式IaからImの化合物をその塩の1つの形態で含む活性化合物を意味すると解釈されることが理解できる。活性化合物の医薬として許容される塩形態はまた、この活性化合物に、それが以前にはなかった所望の薬物動態特性を初めて与えることができ、体内における治療効果に関してこの活性化合物の薬力学にプラスの影響さえ及ぶすことができる。
【0049】
さらに、本発明は、式IaからImの少なくとも1つの化合物、ならびに/または医薬として使用可能な[脱落部分]([lacuna])およびその立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)と、場合によっては賦形剤および/または補助剤とを含む薬剤に関する。
【0050】
医薬製剤は、投与量単位当たり所定量の活性化合物を含む、投与量単位の形態で投与することができる。そのような単位は、治療条件、投与方法、ならびに患者の年齢、体重、および症状に応じて、例えば0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mgの本発明による化合物を含むことができるか、または医薬製剤は、投与量単位当たり所定量の活性化合物を含む、投与量単位の形態で投与することができる。好ましい投与量単位製剤は、上述したように、1日用量もしくは分割用量、または活性化合物のその対応する分画を含む製剤である。さらに、この種の医薬製剤は、医薬技術分野で一般に知られている方法を用いて調製することができる。
【0051】
医薬製剤は、任意の所望の適切な方法、例えば、経口(頬側または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(頬側、舌下または経皮を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)の方法を介した投与に適合させることができる。そのような製剤は、医薬技術分野で知られているあらゆる方法を用いて、例えば活性化合物を賦形剤(複数可)または補助剤(複数可)と組み合わせることによって調製することができる。
【0052】
経口投与に適合した医薬製剤は、例えばカプセル剤または錠剤;粉末剤または顆粒剤;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液、食用泡(edible foam)または泡状食品(foam food);あるいは、水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンなどの個別の単位として投与することができる。
【0053】
したがって、例えば、錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与する場合には、活性成分の構成要素は、例えばエタノール、グリセロール、水などの、経口用の無毒性で医薬として許容される不活性賦形剤と組み合わせることができる。粉末剤は、該化合物を適切な微細サイズに粉砕し、それを、同様な方法で粉砕した、例えばデンプンまたはマンニトールなどの例えば食用炭水化物などの医薬賦形剤と混合することによって調製される。香料、保存料、分散剤、および色素は同様に存在してもよい。
【0054】
カプセル剤は、上述の粉末混合物を調製し、それを成形されたゼラチン殻に充填することによって製造される。例えば、高分散性ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固形のポリエチレングリコールなどの流動促進剤および潤滑剤を、充填操作の前に粉末混合物に加えることができる。例えば、寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を、カプセル剤が摂取された後の薬剤の有効性を改善するために、同様に加えることができる。
【0055】
さらに、所望の場合または必要な場合、適切な結合剤、潤滑剤、および崩壊剤、ならびに色素を、混合物中に同様に組み入れることができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、例えばグルコースまたはβ−ラクトースなどの天然糖、トウモロコシから作られた甘味料、例えばアラビアゴム、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成のゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形で使用する潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、これには限定を表す意図はないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、この混合物を顆粒化または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を加え、錠剤を得るために全混合物を圧縮することによって製剤化される。粉末混合物は、上述したように、適切に粉砕した化合物を、希釈剤または基剤(base)、場合によっては、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、もしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、例えば四級塩などの吸収促進剤、および/または例えばベントナイト、カオリン、もしくはリン酸二カルシウムなどの吸収剤と混合することによって調製される。この粉末混合物は、例えばシロップ、デンプンペースト、アカディア(acadia)粘液、またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿潤させ、圧縮してふるいを通すことによって顆粒化することができる。顆粒化の代わりに、この粉末混合物を、錠剤成形機にかけて、不均一形状の塊にすることができ、この塊は分解されて顆粒を形成する。この顆粒は、錠剤成形型に固着するのを防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を加えることによって潤滑化することができる。次いで、潤滑にした混合物を圧縮して錠剤を得る。本発明による化合物はまた、自由流動性の不活性賦形剤と組み合わせた後、顆粒化または乾燥圧縮ステップを実行することなく直接圧縮して、錠剤を得ることができる。セラック密封層、糖もしくは高分子材料の層、およびワックスの光沢層からなる透明または不透明の保護層を存在させることができる。異なる投与量単位を識別できるようにするために、これらのコーティングに色素を加えることができる。
【0056】
例えば溶液、シロップ、およびエリキシル剤などの経口液体は、所与の量が、予め指定された量の化合物を含むように、投与量単位の形態で調製することができる。シロップは、適切な香料を含む水溶液中に化合物を溶解させることによって調製することができ、一方エリキシル剤は、無毒性アルコール媒体を用いて調製される。懸濁液は、無毒性媒体中に化合物を分散させることによって製剤化することができる。例えばエトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳化剤、保存剤、例えばペパーミント油などの香料添加剤、または天然甘味料もしくはサッカリン、または他の人工甘味料なども、同様に加えることができる。
【0057】
経口投与用の投与量単位製剤は、所望によりマイクロカプセル中に封入することができる。この製剤はまた、例えばポリマーおよびワックスなどの中への粒子材料のコーティングまたは包埋などによって、放出を延長または遅延させるように調製することができる。
【0058】
式IaからImの化合物ならびにその塩および生理学的機能性誘導体はまた、例えば小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、および多重層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与することができる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0059】
式IaからImの化合物ならびにその塩および生理学的機能性誘導体はまた、化合物分子を結合させる個々の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。該化合物はまた、標的薬剤担体として可溶性ポリマーに結合させることができる。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンを包含することができる。該化合物はさらに、薬剤の制御放出を実現するのに適した生分解性ポリマーのクラス、例えばポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーに結合することができる。
【0060】
経皮投与に適合した医薬製剤は、レシピエントの表皮と長期間密着させるために、独立した硬膏剤として投与することができる。したがって例えば、活性化合物は、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)の一般用語に記載されているように、イオン泳動によって硬膏剤から送達することができる。
【0061】
局所投与に適合した医薬化合物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油剤として製剤化することができる。
【0062】
眼または他の外部組織、例えば口および皮膚の治療のためには、製剤は、局所用軟膏またはクリームとして適用されることが好ましい。軟膏を得るための製剤化の場合、活性化合物は、パラフィン系または水混和性いずれかのクリーム基剤とともに使用することができる。あるいは、活性化合物は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を含むクリームを得るように製剤化することができる。
【0063】
眼への局所適用に適合した医薬製剤は、点眼剤を含み、点眼剤では、活性化合物は、適切な担体、特に水性溶媒中に溶解または懸濁される。
【0064】
口内の局所適用に適合した医薬製剤は、ロゼンジ剤、トローチ剤、および口内洗浄剤を包含する。
【0065】
直腸投与に適合した医薬製剤は、坐剤または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0066】
担体物質が固体である、経鼻投与に適合した医薬製剤は、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末を含み、これは嗅剤が取り込まれる様式で、すなわち鼻の近くに保持された、粉末を含有する容器からの鼻腔を介した急速な吸入によって投与される。担体物質として液体を含む経鼻スプレーまたは点鼻剤として投与するのに適した製剤は、活性成分の水溶液または油溶液を包含する。
【0067】
吸入による投与に適合した医薬製剤は、微細粒子状粉塵またはミストを包含し、これは、エアロゾル、噴霧器、または吸入器を有する様々な種類の加圧ディスペンサーによって生成することができる。
【0068】
膣投与に適合した医薬製剤は、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト剤、泡剤、またはスプレー製剤として投与することができる。
【0069】
非経口投与に適合した医薬製剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および治療されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含む水性および非水性無菌注射液、ならびに懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性および非水性無菌懸濁液を含む。製剤は、単回用量または複数回用量の容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで投与でき、使用直前に、無菌担体液体、例えば注射目的用の水を加えるだけで済むように、凍結乾燥状態で保管することができる。処方に従って調製される注射液および懸濁液は、無菌の粉末剤、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0070】
言うまでもなく、特に上述した成分に加えて、製剤は、特定の種類の製剤に関して、当技術分野で一般的である他の試剤を含むこともでき、したがって、例えば経口投与に適した製剤は香料を含んでもよい。
【0071】
式IaからImの化合物の治療有効量は、例えば動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な症状およびその重症度、製剤の性質および投与法を含む幾つかの要因に依存し、最終的には治療する医師または獣医師が決定する。しかし、新生物、例えば大腸癌または乳癌の治療に対する、本発明による化合物の有効量は、一般に、1日当たり、レシピエント(哺乳動物)の体重1kg当たり0.1から100mgの範囲であり、特に典型的には、1日当たり、体重1kg当たり1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgの成体哺乳動物に対する1日当たりの実際量は、通常70と700mgの間であり、この量は、1日当たりの単一用量として、またはより一般的には、1日の全用量が同じとなるように、1日当たりの一連の分割用量(例えば、2、3、4、5または6回など)として投与することができる。塩もしくは溶媒和物またはその生理機能性誘導体の有効量は、本発明による化合物自体の有効量の分率として決定することができる。上述した他の状態の治療に対しても同様の用量が適していると想定することができる。
【0072】
本発明はさらに、式IaからImの少なくとも1つの化合物、ならびに/または医薬として使用可能なその誘導体、塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)と、少なくとも1つのさらなる薬剤活性化合物とを含む薬剤に関する。
【0073】
本発明はまた、
(a)式IaからImの化合物、ならびに/または医薬として使用可能なその[脱落部分]および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)の有効量と、
(b)さらなる薬剤活性化合物の有効量
の別々のパックからなるセット(キット)に関する。
【0074】
このセットは、箱、個別のビン、袋、またはアンプルなどの適切な容器を含む。このセットは例えば、各アンプルが、式IaからImの化合物、ならびに/または医薬として使用可能なその[脱落部分]および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)の有効量と、溶解形態または凍結乾燥形態でのさらなる薬剤活性化合物の有効量とを含有する、別々のアンプルを含むことができる。
【0075】
化合物IaからImは、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑肉腫(leiosarcoma)、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、骨髄癌腫、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストローム−マクログロブリン血症、およびH鎖病などの腫瘍疾患の治療に使用することが好ましい。
【0076】
式IaからImの化合物は、公知の抗癌剤と併用されるのが好ましい。これら公知の抗癌剤としては次のものが挙げられる。エストロゲン受容体調整剤、アンドロゲン受容体調整剤、レチノイド受容体調整剤、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、および他の血管新生阻害剤。本化合物は、放射線療法と同時の投与に特に適している。放射線療法との併用における、VEGF阻害の相乗効果は、当技術分野で記載されている(WO00/61186を参照されたい)。
【0077】
「エストロゲン受容体調整剤」とは、機序に関わらず、エストロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体調整剤の例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]フェニル2,2−ジメチルプロパノエート、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン、およびSH646が挙げられる。
【0078】
「アンドロゲン受容体調整剤」とは、機序に関わらず、アンドロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体調整剤の例としては、フィナステリド、および他の5α−還元酵素阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロンが挙げられるが、これには、限定を表す意図はない。
【0079】
「レチノイド受容体調整剤」とは、機序に関わらず、レチノイドの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。そのようなレチノイド受容体調整剤の例としては、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4'−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが挙げられる。
【0080】
「細胞毒性剤」とは、主として細胞機能に直接作用することによって細胞死を引き起こすか、あるいは細胞の縮瞳(myosis)を阻害または妨害する化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、マイクロチューブリン阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。
【0081】
細胞毒性剤の例としては、チラパジミン、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロホスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン、シスプラチン、イロフルベン、デキシホスファミド、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3'−デアミノ−3'−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO00/50032を参照されたい)が挙げられるが、これには、限定を表す意図はない。
【0082】
マイクロチューブリン阻害剤の例としては、パクリタキセル、ビンデシン硫酸塩、3',4'−ジデヒドロ−4'−デオキシ−8'−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、およびBMS188797が挙げられる。
【0083】
トポイソメラーゼ阻害剤の幾つかの例は、トポテカン、ヒカプタミン、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3',4'−O−エキソベンジリデンカルトロイシン、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3',4':b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルートテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2'−ジメチルアミノ−2'−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3',4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナである。
【0084】
「抗増殖剤」としては、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、INX3001などのRNAおよびDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、ホステアビンナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2'−デオキシ−2'−メチリデンシチジン、2'−フルオロメチレン−2'−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾフリル)スルホニル]−N'−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクチナサイジン、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2'−シアノ−2'−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾンなどの代謝拮抗剤が挙げられる。「抗増殖剤」としてまた、トラスツズマブなどの、「血管新生阻害剤」としてすでに列挙したもの以外の増殖因子に対するモノクローナル抗体、および組換えウイルス媒介性遺伝子導入を介して送達され得るp53などの腫瘍抑制遺伝子が挙げられる(例えば、US6,069,134を参照されたい)。
【0085】
腫瘍疾患の治療および予防のための、本発明による化合物の使用が特に好ましい。
【0086】
腫瘍は、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭部および頸部、食道、頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、泌尿生殖器路、リンパ系、胃、喉頭、および/または肺の腫瘍群から選択されることが好ましい。
【0087】
腫瘍はさらに、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、大腸癌、および乳癌の群から選択されることが好ましい。
【0088】
血液および免疫系の腫瘍の治療、好ましくは急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍の治療のための使用がさらに好ましい。
【0089】
別の態様では、本発明は、抗増殖剤と併用して式IaからImの化合物を投与することによって、癌などの新生物を有する患者を治療するための[脱落部分]を包含する。適切な抗増殖剤は、表1に示すものを包含する。
【0090】
全体を通して、温度はすべて℃で示される。以下の例では、「従来の後処理」とは次のことを意味する。最終生成物の構成に応じて、必要ならば水を加え、必要ならばpHを2から10の間の値に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、各相を分離し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥して蒸発させ、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーおよび/または結晶化によって精製する。
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)
APCI−MS(大気圧化学イオン化質量分析)(M+H)
【0091】
LC/MS法:
溶媒A:水+0.1%TFA
溶媒B:アセトニトリル+0.1%TFA
流速:2.4ml/分
勾配:0.0分、4%B
2.6分、100%B
カラム:Chromolith Speed ROD RP−18e 50−4、6mm
【実施例】
【0092】
以下の物質を合成し、特性決定を行った。しかし、これらの物質の調製および特性決定は、当業者によって別の方法でも実施され得る。
【0093】
例1
3,5−ジフルオロメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5−(R)スルフィニル)−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート10aの合成
【0094】
【化7】

【0095】
a.5−フルオロ−2−ニトロフェニルアミン1(33.6g、213mmol、90%)および炭酸セシウム(77.1g、237mmol)を、アセトニトリル400mlに懸濁する(赤みを帯びた懸濁液)。この懸濁液に2−メルカプトエタノール(18.5g、237mmol)を室温で加える。このとき反応混合物の色は黄色に直ちに変化する。次いで、混合物を60℃で18時間撹拌する。混合物をろ過して残渣をアセトニトリルですすぎ、ろ液を蒸発乾固して黄橙色の固体を得る。この固体は化合物2であることが判明しており、さらに精製することなく次の反応に供する。
【0096】
b.化合物2(45.5g、212mmol)をアセトニトリル250mlに懸濁する。この深赤色懸濁液にトリエチルアミン(22.6g、223mmol)を室温で加え、次いでこの混合物を室温で30分間撹拌する。ジクロロメタン20ml溶液としてメタンスルホニルクロリド(25.5g、223mmol)を室温でゆっくり滴加し(発熱反応)、次いで、室温で3時間撹拌を続ける。この間に生成物が黄色沈殿物として沈殿してくる。混合物を氷中で2時間冷却し、黄色沈殿物をろ別して十分なアセトニトリルですすぐ。ろ液および洗浄液を合わせて蒸発させる。次いで、濃縮溶液を同様に冷却し、2倍量のメチルtert−ブチルエーテルを用いて生成物をさらに沈殿させる。この沈殿を同様にろ別して、アセトニトリルですすぐ。2つのろ過残渣を合わせて真空乾燥し、黄色固体の化合物3を得る。この化合物3はさらに精製することなく次の反応に供する。
【0097】
c.化合物3(61.9g、212mmol)およびBoc−ピペラジン(47.0g、250mmol)を、THF400mlに懸濁する。この黄色懸濁液にトリエチルアミン25.7g(254mmol)のTHF20ml溶液をゆっくり滴加する。添加を完了したとき、混合物を70℃で15時間撹拌する。生じた沈殿物をろ別し、THFで洗浄して廃棄する。ろ液および洗浄液を合わせて蒸発乾固する。この残渣を酢酸エチルに溶解して水およびNaCl溶液で数回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、蒸発乾固する。黄色生成物4は、さらに精製することなく次の反応に供する。
【0098】
d.化合物4(40.1g、105mmol)をTHF540mlに溶解して、スポンジニッケル触媒(水湿潤品、10g)を加え、混合物を水素気圧下で室温で15時間振盪する。この触媒をさらに10g加え、混合物を水素気圧下でさらに17時間振盪する。触媒をろ別して、ろ液を蒸発乾固する。この黒色油状残渣を酢酸エチルに溶解して水で3回、NaCl溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。暗赤油状の化合物5は、さらに精製することなく次の処理に供する。
【0099】
e.化合物5(32.5g、92.2mmol)を氷酢酸(320ml)に溶解し、亜硝酸ナトリウム(6.4g、92.8mmol)を加える。混合物を室温で2時間撹拌する。次いで、混合物を水で希釈して、反応溶液を酢酸エチルで数回抽出する。有機相をNaHCO溶液およびNaCl溶液で洗浄して、NaSOで乾燥し、ろ過して蒸発乾固する。暗色樹脂油状の化合物6は、さらに精製することなく次の処理に供する。
【0100】
f.化合物6(27.1g、74.5mmol)を、氷酢酸320mlに溶解し、過酸化水素(水中30%)15.5mlを撹拌しながら滴加する。混合物を室温で15時間撹拌して水および酢酸エチルで希釈し、次いで、最初に固体NaHCOで、次にNaHCO溶液で撹拌しながら中和する。有機相を分離して水およびNaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、蒸発乾固する。暗色無定形結晶を化合物7であると同定し、さらに精製することなく鏡像異性体に分離する。
【0101】
g.化合物7(21.0g、44.3mmol)をメタノール250mlに溶解する。この溶液を、Chiralpak AD−H 3×20cm 5μmカラムならびにCO(80ml)およびメタノール(16ml)による分取用SFC(1注入当たり8ml)によって分離する。2分画を集め、それぞれを蒸発乾固する。分画1は無色固体6.9g(18.2mmol、41%)を含有し、この固体を絶対構造8bに無作為に割り当てる。構造8aは分画2の無色固体に割り当てる。
【0102】
h.純粋な鏡像異性体である化合物8a(7.00g、18.4mmol)をイソプロパノール80mlに溶解し、イソプロパノール中5〜6N HCl80mlを室温で撹拌しながら加え、混合物を室温でさらに15時間撹拌する。混合物を真空中で蒸発乾固して少量のジオキサンに溶解し、水と混合して混合物を凍結乾燥し、高純度の無色固体を得る。この固体は二塩酸塩として化合物9aに割り当てることができる。この物質は、さらに精製することなく次の使用に供する。
【0103】
i.化合物9a(175mg、0.50mmol)をDMF2mlに溶解し、トリエチルアミン(151μl、1.09mmol)を加える。3,5−ビストリフルオロメチルベンジルアルコール(124mg、0.50mmol、98%)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(80.6mg、0.50mmol)を、別の容器へ秤り取り、DMF3mlに溶解し、室温で1時間撹拌する。この混合物に化合物9aの予め調製した溶液を加え、溶液全体を室温で一晩撹拌する。混合物を蒸発乾固して残渣をジクロロメタンに溶解し、水およびNaCl溶液で洗浄して硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して再び蒸発乾固する。残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/MeOH)により精製し、化合物10aを無色固体として得る。
【0104】
また、鏡像異性体8bを、記載の手順hおよびiと同様にして化合物10aの対応する対掌体に変換することもできる。
【0105】
ラセミ体7を、手順hおよびiによって10aのラセミ混合物に同様に変換することができる。さらに、対掌体への分離をgと同様にしてこの段階で行うことができる。
【0106】
例2
3−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾリル−6(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート20aの合成
【0107】
【化8】

【0108】
j.5−クロロ−2−ニトロアニソール(48.3g、0.25mol)をアセトニトリル300mlに溶解する。2−メルカプトエタノール(17.8ml、0.25mol)のアセトニトリル100ml溶液および炭酸カリウム(69.1g、0.5mol)を撹拌しながら加え、混合物を還流下で一晩撹拌する。反応混合物を冷却して氷水500mlを加え、次いで酢酸エチル400mlで2回混合物を抽出する。有機相を0.2N NaOH溶液、次いで水で洗浄して硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過してロータリーエバポレーターで蒸発させる。ジエチルエーテルを用いる結晶化により、化合物12のベージュ色結晶を得る。
【0109】
k.化合物12(48.0g、0.209mol)をジクロロメタン50mlに懸濁し、トリエチルアミン(19ml、0.209mol)を加える。メタンスルホニルクロリド(16.2ml、0.209mol)を最大内部温度15℃にて撹拌しながら滴加する。混合物を室温でさらに1時間撹拌し、次いで反応混合物に氷水300mlを加え、ジクロロメタン200mlで2回抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させ、油状残渣として化合物13を得る。
【0110】
l.化合物13(57g、0.185mol)、tert−ブチルピペラジン−1−カルボキシレート(34.5g、0.185mol)、および炭酸セシウム(60.1g、0.185mol)を、アセトニトリル300mlに溶解し、60℃で一晩撹拌する。水400mlおよびジクロロメタン400mlを加え、有機相を分離する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。残渣を溶離液として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムで精製し、無定型固体物質として化合物14を得る。
【0111】
m.5%Pd/C3.15gをテトラヒドロフラン85ml中の化合物14(6.3g、15.8mmol)に加える。室温で16時間水素添加する。触媒をろ別する。溶液を蒸発させて、固体物質として化合物15を得る。
【0112】
n.化合物15(5.5g 0.015mol)を47%臭化水素酸70mlに溶解し、150℃で8時間撹拌する。次いで、反応混合物を冷却し、析出した結晶を吸引によりろ別する。結晶を少量の水で洗浄して乾燥し、化合物16を得る。
【0113】
o.化合物16(1.18g、3.0mmol)、1,1−カルボニルジイミダゾール(0.486g、3.0mmol)、3−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジルアルコール(0.63g、3.0mmol)、およびトリエチルアミン(0.42ml、3.0mmol)を、DMF20mlに溶解し、室温で一晩撹拌する。反応混合物を蒸発させ、水50mlおよび酢酸エチル100mlに溶解する。有機相を分離して硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。残渣を溶離液として酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムで精製し、固体物質として化合物17を得る。
【0114】
p.化合物17(0.8g、1.63mmol)および1,1−カルボニルジイミダゾール(0.265g、1.63mmol)を、THF10ml中で、室温にて3時間撹拌する。次いで、水100mlをこのバッチに加えた後、酢酸エチル100mlで2回抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。エタノールを用いる結晶化により、薄茶色結晶として化合物18を得る。
【0115】
q.化合物18(0.72g、1.4mmol)を氷酢酸8mlに溶解する。次いで、過酸化水素(水中30%、0.29ml、2.8mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌する。次いで、このバッチを氷水100mlに加え、飽和NaHCO溶液を用いて中和する。混合物を酢酸エチル50mlで2回抽出する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥してろ過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。エタノールを用いる結晶化により、淡色結晶として化合物19を得る。
【0116】
r.ラセミ体19(0.35g、0.66mmol)を、メタノール/エタノール(25/75)(流量:100ml/分)を用いて、Chiralpak AD(5×40cm、20μm)の分取用HPLCにより分離し、無定型固体物質として2つの鏡像異性体20aおよび20bを得る。
【0117】
以下の化合物を例1および2に記載のものと類似の方法で調製することができる。
【0118】
3−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾール−6(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ia)
【0119】
【化9】

【0120】
ラセミ体:1H NMR(500MHz,DMSO)δ=12.02(m,<1H)、7.81(s,1H)、7.75(s,1H)、7.69(s,1H)、7.62(d,J=1.5,1H)、7.47(dd,J=8.1,1.5,1H)、7.25(d,J=8.1,1H)、5.15(s,2H)、4.45〜3.30(m,4H)、3.14〜3.07(m,1H)、3.00〜2.90(m,1H)、2.75〜2.68(m,1H)、2.47〜2.27(m,5H)、Rt[分]1.80。
【0121】
3−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ib)
【0122】
【化10】

【0123】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ15.87(s,1H)、8.24(s,1H)、8.09(d,J=8.7,1H)、7.82(s,1H)、7.78〜7.67(m,3H)、5.15(s,2H)、3.55〜3.14(m,5H)、3.07〜2.91(m,1H)、2.81〜2.72(1H)、2.48〜2.28(m,5H)、Rt[分]1.79。
【0124】
3,5−ジブロモベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ic)
【0125】
【化11】

【0126】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=16.03(s,1H)、8.25(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.79(t,J=1.6,1H)、7.74(d,J=8.5,1H)、7.58(d,J=1.6,2H)、5.06(s,2H)、3.52〜3.17(m,5H)、3.06〜2.96(m,1H)、2.81〜2.74(m,1H)、2.50〜2.28(m,5H)、Rt[分]1.76。
【0127】
3,5−ビストリフルオロメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(S)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Id)
【0128】
【化12】

【0129】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ=15.98(s,1H)、8.25(s,1H)、8.15〜8.00(m,4H)、7.74(d,J=8.6,1H)、5.25(s,2H)、3.40〜3.14(m,5H)、3.10〜2.92(m,1H)、2.85〜2.68(m,1H)、2.49〜2.24(m,5H)、Rt[分]1.85。
【0130】
4−トリフルオロメチルスルファニルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ie)
【0131】
【化13】

【0132】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ=16.02(s,1H)、8.25(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.76〜7.70(m,3H)、7.50(d,J=8.3,2H)、5.14(m,2H)、3.47〜3.15(m,5H)、3.08〜2.94(m,1H)、2.81〜2.72(m,1H)、2.48〜2.27(m,5H)、Rt[分]1.85。
【0133】
3−クロロ−4−トリフルオロメトキシベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)−エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(If)
【0134】
【化14】

【0135】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=16.08(s,1H)、8.24(s,1H)、8.09(d,J=8.6,1H)、7.73(dd,J=8.6,1.1,1H)、7.67(d,J=2.0,1H)、7.57(dd,J=8.6,1.1,1H)、7.45(dd,J=8.5,2.0,1H)、5.07(s,2H)、3.35〜3.15(m,5H)、3.07〜2.95(m,1H)、2.80〜2.72(m,1H)、2.48〜2.30(m,5H)、Rt[分]1.80。
【0136】
3−ブロモ−5−フルオロメチルベンジル4−[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾール−6(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【0137】
【化15】

【0138】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=16.10(s,1H)、8.25(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.74(d,J=8.6,1H)、7.55〜7.46(m,1H)、7.42(s,1H)、7.24(d,J=9.2,1H)、5.08(s,2H)、3.32〜3.14(m,5H)、3.09〜2.94(m,1H)、2.81〜2.74(m,1H)、2.50〜2.27(m,5H)、Rt[分]1.63。
【0139】
3,5−ジメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ih)
【0140】
【化16】

【0141】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=15.91(s,1H)、8.24(s,1H)、8.09(d,J=8.6,1H)、7.73(dd,J=8.6,1.1,1H)、6.93(s,3H)、4.97(s,2H)、3.35〜3.13(m,5H)、3.07〜2.93(m,1H)、2.80〜2.71(m,1H)、2.50〜2.29(m,6H)、2.25(s,5H)、Rt[分]1.62。
【0142】
4−トリフルオロメトキシベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ii)
【0143】
【化17】

【0144】
1H NMR(400MHz,DMSO)δ=15.99(s,1H)、8.24(s,1H)、8.09(d,J=8.6,1H)、7.79〜7.69(m,1H)、7.48(d,J=8.3,2H)、7.36(d,J=8.3,2H)、5.09(s,2H)、3.29〜3.14(m,5H)、3.08〜2.94(m,1H)、2.82〜2.70(m,1H)、2.49〜2.25(m,5H)、Rt[分]1.62。
【0145】
3−クロロ−4−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート(Ij)
【0146】
【化18】

【0147】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=16.01(s,0.5H)、8.26(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.87(d,J=8.1,1H)、7.74(d,J=8.6,1H)、7.69(s,1H)、7.52(d,J=8.1,1H)、5.21(m,2H)、3.29〜3.16(m,5H)、3.07〜2.94(m,1H)、2.84−2.70(m,1H)、2.50〜2.30(m,5H)、Rt[分]1.75。
【0148】
3−フルオロ−4−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【0149】
【化19】

【0150】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=15.92(m,1H)、8.25(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.80(t,J=7.8,1H)、7.74(d,J=8.7,1H)、7.48(d,J=11.8,1H)、7.39(d,J=8.0,1H)、5.17(s,2H)、3.28〜3.15(m,5H)、3.08〜2.96(m,1H)、2.82〜2.74(m,1H)、2.49〜2.25(m,5H)、Rt[分]1.69。
【0151】
1−{4−[2−(3H−ベンゾトリアゾール−5(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−イル}−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロパン−1−オン
【0152】
【化20】

【0153】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=約20.00(s,1H)、8.25(s,1H)、8.10(d,J=8.6,1H)、7.74(d,J=8.6,1H)、7.62(d,J=8.1,2H)、7.47(d,J=8.0,2H)、3.30〜3.10(m,5H)、3.06〜2.96(m,1H)、2.89(t,J=7.5,2H)、2.78〜2.70(m,1H)、2.65(t,J=7.6,2H)、2.48〜2.38(m,1H)、2.37〜2.18(m,4H)、Rt[分]1.64。
【0154】
3−フルオロ−5−トリフルオロメチルベンジル4−[2−(2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾール−6(R)−スルフィニル)エチル]ピペラジン−1−カルボキシレート
【0155】
【化21】

【0156】
1H NMR(500MHz,DMSO)δ=15.60(s,1H)、8.24(s,1H)、8.08(d,J=8.6,1H)、7.72(d,J=8.7,1H)、7.61(d,J=8.6,1H)、7.58〜7.48(m,2H)、5.16(s,2H)、3.36〜3.14(m,5H)、3.07〜2.93(m,1H)、2.81〜2.74(m,1H)、2.49〜2.27(m,5H)、Rt[分]1.69。
【0157】
例A:オートタキシン試験(酵素試験)
試験の説明
オートタキシン活性はAmplex Red試薬を使用して間接的に測定する。形成されるHのための蛍光発生指示薬として、Amplex Redをここでは測定する。詳細には、オートタキシンは基質リゾホスファチジルコリン(LPC)をホスホコリンおよびリゾホスファチジル酸(LPA)に変換する。この変換の後、ホスホコリンをアルカリホスファターゼと反応させて無機リン酸およびコリンを得る。次のステップで、コリンをコリンオキシダーゼにより酸化して、ベタインを得ると共にHを形成する。ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ)の存在下でHを1:1の化学量論でAmplex Red試薬と反応させて、蛍光強度の高いレゾルフィンを形成する。反応に関与しない他の可能な蛍光物質からの蛍光シグナルを補正して除外できるように、反応依存的動力学モードで蛍光を測定する。
【0158】
試験手順
標準溶液または最大7.7%のDMSOを含む20mM Hepes pH7.2中に各濃度で溶解した試験物質(名前A(n)を有する物質)1.5μlを、384穴の黒色マイクロタイタープレート中で22℃にて30分間、高度に精製した組換えオートタキシン10μl(16ng)と共にプレインキュベートする。次いで、L−α−リゾホスファチジルコリン(LPC)5μlの添加によって反応を開始する。ここで、LPCの最終濃度は75μMである。混合物を37℃で90分間インキュベートする。インキュベーション後、Amplex Red試薬、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ)、およびコリンオキシダーゼを加え、「Tecan Ultraマルチモード」リーダーにより485nmの励起を用いて612nmの蛍光を直ちに測定する。オートタキシンの活性は、形成されたHを検出して間接的に計算する。
【0159】
材料:
マイクロタイタープレート:PSマイクロプレート、384穴、小容量、黒色、Corning、カタログ番号3677
タンパク質:組換えオートタキシン(バキュロウイルスHi5発現)
基質:L−α−リゾホスファチジルコリン(鶏卵);Avanti Polar Lipids 番号830071P
標準:C14 LPA、Avanti Polar Lipids、カタログ番号857120P
検出試薬:Amplex Red試薬;Invitrogen 番号A12222;DMSO1.923mlに溶解、Sigma 番号P6782のペルオキシダーゼタイプVI−A(西洋ワサビ);試験緩衝液7.45mlに溶解、コリンオキシダーゼ;Sigma 番号C5896;試験緩衝液2.47mlに溶解
検出試薬混合物:1:100希釈の試験緩衝液中のAmplex Red試薬
試験緩衝液:200mMトリスHCl、Merck、カタログ番号1.08219、pH7.9、0.1%BSA、脂質なし、Roche カタログ番号775835
このアッセイでは、記載のすべての化合物のIC50値は1μM未満である。
【0160】
以下の例は薬剤に関する
例B:注射バイアル
式Iの活性化合物100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの再蒸留水3l溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5に調整し、無菌ろ過して注射バイアルへ移し、無菌条件下で凍結乾燥して無菌条件下で密封する。各注射バイアルは活性化合物5mgを含有する
例C:坐剤
式Iの活性化合物20gと大豆レシチン100gおよびココアバター1400gとの混合物を融解して型に注ぎ、冷却する。各坐剤は活性化合物20mgを含有する
例D:溶液
式Iの活性化合物1g、NaHPO・2HO 9.38g、NaHPO・12HO 28.48g、および塩化ベンザルコニウム0.1gから再蒸留水940ml中で溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lに合わせて照射により滅菌する。この溶液は点眼剤の形態で使用することができる
例E:軟膏
式Iの活性化合物500mgを、無菌条件下でワセリン99.5gと混合する。
【0161】
例F:錠剤
式Iの活性化合物1kg、ラクトース4kg、ジャガイモデンプン1.2kg、タルク0.2kg、およびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を従来の通りに圧縮して、各錠剤が活性化合物10mgを含有するように錠剤化する
例G:糖衣錠
錠剤を例Eと同様に圧縮し、次いで、従来の通りにスクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカント、および色素のコーティングでコートする
例H:カプセル剤
式Iの活性化合物2kgを、各カプセル剤が活性化合物20mgを含有するように、従来の通りに硬質ゼラチンカプセルに導入する
例I:アンプル
式Iの活性化合物1kgの再蒸留水60l溶液を無菌ろ過してアンプルに移し、無菌条件下で凍結乾燥して無菌条件下で密封する。各アンプルは活性化合物10mgを含有する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物IaからIm、
【化1】

【化2】

【化3】

ならびに医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物、ならびに/または医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)と、場合によっては賦形剤および/または補助剤とを含む薬剤。
【請求項3】
オートタキシンの阻害、制御および/または調節が一役果たす疾患の治療のために、薬剤を調製するための、以下の群から選択される化合物、
【化4】

【化5】

【化6】

ならびに医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)の使用。
【請求項4】
腫瘍疾患の治療または予防のために、薬剤を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびに医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)の、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記腫瘍疾患が、繊維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、骨髄癌腫、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫細胞、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、睾丸腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストローム−マクログロブリン血症、およびH鎖病である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
請求項1に記載の1つもしくは複数の化合物、ならびに/または医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)と、
少なくとも1つの別の薬剤活性化合物とを含む薬剤。
【請求項7】
(a)以下の化合物、
【化7】

【化8】

【化9】

ならびに/または医薬として使用可能なその塩、溶媒和物、鏡像異性体、互変異性体および立体異性体(あらゆる比率でのそれらの混合物を含む)の有効量と、
(b)さらなる薬剤活性化合物の有効量
の別々のパックからなるセット(キット)。

【公表番号】特表2013−507403(P2013−507403A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533501(P2012−533501)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005641
【国際公開番号】WO2011/044978
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】