腫瘍間質抗原FAPに対するDNA組成物及びその使用方法
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含む、腫瘍細胞及び腫瘍転移に対する免疫応答を惹起するのに有効なDNA組成物。該組成物は、FAPの単一のエピトープ、FAPの2つ若しくはそれ以上のエピトープを含むポリペプチド、完全なFAPタンパク質又は所望の免疫応答を惹起するこれらのあらゆる一部をコードし得る。好ましい一実施形態において、組成物は、サイトカインなどの免疫エフェクタータンパク質をコードするDNA構築物も含む。本発明のDNA組成物は、このような腫瘍及び腫瘍転移などの疾病を治療するために、単独で、又は化学療法剤と組み合わせて使用することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年6月21日に出願された米国仮特許出願第60/815,316号(参照により、本明細書に組み込まれる。)の利益を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所からのグラント番号CA83856及び国防総省からのグラント番号BC031079の下で、合衆国政府の支援を受けて為された。合衆国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、腫瘍中の間質性繊維芽細胞に対して免疫応答を惹起するのに有効な適切な分子をコードするデオキシリボ核酸(DNA)組成物に関する。より具体的には、本発明は、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)として知られる間質抗原をコードするDNA組成物に関する。本発明は、腫瘍増殖及び腫瘍転移を阻害するために、並びに化学療法剤の細胞性取り込みを増強するためにDNA組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍抗原は癌治療のための理解しにくい標的であることが益々明白になっている。これは、腫瘍細胞の抗原の変異及びMHC−抗原発現の下方制御を原因とする不十分な抗原提示を含み、腫瘍細胞に特有の様々な特徴によって説明することができる。さらに、アポトーシスシグナル伝達経路の異常及びサバイビン、XIAP又はbcl−2ファミリーの抗アポトーシス要素などのアポトーシス阻害剤の上方制御はT細胞媒介性の死滅に対する耐性を付与するのみならず、化学療法剤のアポトーシス誘導効果に対する耐性も付与する。
【0005】
間質性の区画が腫瘍形成及び腫瘍浸潤において重大な役割を果たしているという認識が高まっている。間質細胞は、正常な上皮細胞の形質転換を刺激すること、並びに隣接する細胞外マトリックスを活性化するために及び新生物細胞の選択と増殖を誘導するために成長因子、サイトカイン及び化学誘引物質をやり取りすることが示されている。ある研究において、懸濁液としてマウス中に注射された腫瘍細胞は腫瘍原性でないことが報告されたのに対して、間質を含有する固形腫瘍の断片の注入は腫瘍の増殖をもたらすことが報告された(Singh et al.J.Exp.Med.1992;175:139−146参照)。活性化された細胞外マトリックスは、おそらくβ1インテグリンによって媒介される化学療法耐性を付与し、β1インテグリンはフィブロネクチンに接着して、β1インテグリンによって刺激されるチロシンキナーゼの活性化をもたらし、次いで、β1インテグリンによって刺激されたチロシンキナーゼは、化学療法によって誘導されるアポトーシスを抑制する。この現象は、ドキソルビシン感受性の骨髄腫細胞中で報告されており、ドキソルビシン感受性の骨髄腫細胞はフィブロネクチンへの接着後に耐性を生じた。最近の報告は、腫瘍間質性繊維芽細胞を調節することによって、又は腫瘍間質ネットワークを分配することによって、腫瘍拒絶を達成できることを示している。さらに、報告によれば、腫瘍関連マクロファージ及び繊維芽細胞は、VEGF、TGF−β1及びIL−10などのタンパク質を合成する能力の故に、局所的な免疫抑制環境に寄与している。VEGFは樹状細胞の成熟の阻害剤として機能し、従って、耐性T細胞をもたらす。VEGFは、腫瘍血管新生に関与する主要な因子でもある。VEGFの活性化は、腫瘍−上皮細胞中で、サバイビン及び他の多くのアポトーシス阻害タンパク質の上方制御をもたらし、それらを化学療法のアポトーシス効果から遮蔽する。これに対して、TGF−β1の阻害は、腫瘍の根絶及び転移に対する保護をもたらすことができる。IL−10は樹状細胞の成熟を阻害することにより、Th1細胞によって媒介される細胞媒介性抗腫瘍応答を抑制する。この効果は、ほとんど無効な液性免疫応答の方向に樹状細胞をシフトさせる。
【0006】
繊維芽細胞は、コラーゲン及び他の高分子に富む細胞外マトリックスを分泌する結合組織細胞である。腫瘍間質(すなわち、腫瘍支持組織)中の繊維芽細胞は、セリンプロテアーゼとして機能するII型膜貫通タンパク質である繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を合成する。FAPは、大腸癌、乳癌及び肺癌を伴う間質性繊維芽細胞の90%超において、選択的に過剰発現する。FAPの一過性過剰発現は、創傷治癒の間に及び幾つかの胎児間葉組織中にも観察することができる。さらに、この酵素は、報告によれば、ゼラチン及びI型コラーゲンを切断し、細胞外マトリックスの再構築が示唆されている。報告によれば、FAPの過剰発現は腫瘍増殖の促進及び転移能の増加をもたらすのに対して、抗FAP抗体での処理は腫瘍増殖を阻害する。さらに、繊維芽細胞によって主に産生されるI型コラーゲンの腫瘍間質性発現は、化学療法剤を含む様々な化合物の腫瘍内取り込みと逆相関しており、これにより、化学療法耐性における間質性区画の関与を維持する。
【0007】
疾病病原体が増殖し、病的効果を引き起こせるようになる前に疾病病原体を破壊するために生物の免疫系を刺激する予防剤を極めて限定的に投与することによって、多数の病状に対する長期の保護を与えるためにワクチンが使用されてきた。ワクチン及びワクチン接種のための様々なアプローチが、「Bernard R.Glick and Jack J.Pasternak,Molecular Biotechnology,Principles and Applications of Recombinant DNA,Second Edition,ASM Press pp.253−276(1998)」に記載されている。
【0008】
ワクチン接種は、感染因子が病的な応答を引き起こす前に、感染因子を捜し出して、破壊するために自分の体の免疫系を誘導する手段である。典型的には、ワクチンは、生の、但し弱毒化された感染性因子(ウイルス又は細菌)か、又は感染性因子の死滅された形態かである。生の細菌又はウイルスからなるワクチンは非病原性でなければならない。典型的には、物理的又は化学的処理によって、細菌又はウイルスの培養物が弱毒化(弱化)される。因子は非病原性であるが、ワクチンで処置された対象において免疫応答をなお惹起することができる。
【0009】
免疫応答は、特異的な高分子又は感染性因子の何れかであり得る抗原によって惹起される。これらの抗原は、一般に、タンパク質、多糖、脂質又は糖脂質の何れかであり、これらは、B細胞及びT細胞として知られるリンパ球によって、「外来」として認識される。リンパ球の両タイプが抗原に曝露されることによって、急速な細胞分裂と分化応答が惹起され、曝露されたリンパ球のクローンの形成をもたらす。B細胞は形質細胞を産生し、次いで、感染性因子の上に存在する抗原へ選択的に結合して、病原体を中和又は不活化する抗体(Ab)と呼ばれるタンパク質を産生する(液性免疫)。幾つかの事例において、B細胞応答は、CD4ヘルパーT細胞の補助を必要とする。
【0010】
抗原曝露に応答して形成する特殊化されたT細胞クローンは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、これは、抗原を提示する病原体及び組織に結合し、これらを排除することができる(細胞媒介性免疫又は細胞性免疫)。幾つかの事例では、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は、病原体又はその他の外来細胞をエンドサイトーシスによって包み込む。次いで、APCは、細胞由来の抗原を加工し、組織適合性分子:ペプチド複合体の形態で、これらの抗原をCTL上のT細胞受容体(TCR)に提示して、免疫応答を刺激する。
【0011】
特異的な抗体の形成を特徴とする液性免疫は、一般に、急性の細菌感染及びウイルスからの反復感染に対して最も効果的であるのに対して、細胞媒介性免疫はウイルス感染、慢性細胞内細菌感染及び真菌感染に対して最も効果的である。細胞免疫は、ある種の癌に対して保護することが知られており、、及び臓器移植の拒絶の原因である。
【0012】
以前の感染に由来する抗原に対する抗体は、極めて長期間にわたって血中で検出可能な状態を保ち、従って、病原体への以前の曝露を決定する手段を与える。同じ病原体へ再度曝露されると、病原因子が増殖し、病原性応答を引き起こすことができるようになる前に、病原性因子を排除することによって、免疫系は再感染を効果的に抑制する。
【0013】
病原体によって惹起される同じ免疫応答は、時には、病原体と同じ抗原を提示する非病原性因子によっても産生され得る。このようにして、対象は、感染を以前に撃退していなくても、病原体に対するその後の曝露に対して保護され得る。
【0014】
しかしながら、ワクチン形成のために必要とされるように、全ての感染性因子を容易に培養し、不活化できるわけではない。現代の組み換えDNA技術によって、この限界の克服を目指して、新しいワクチンを設計することが可能となった。病原性遺伝子を欠如する感染性因子を作製することが可能であり、従って、生物の生きた非病原性形態をワクチンとして使用することが可能となる。病原性担体の細胞表面抗原を提示するために、イー・コリ(E.coli)などの相対的に非病原性の生物を操作することも可能である。このような形質転換された担体をワクチン接種された対象の免疫系は、「だまされて」病原体に対する抗体を形成する。病原性因子の抗原性タンパク質を操作し、非病原性の種内で発現させることが可能であり、「サブユニットワクチン」を作製するために、抗原性タンパク質を単離及び精製することができる。サブユニットワクチンは、安定であり、安全で、化学的に十分に確定されているという利点を有するが、サブユニットワクチンの製造は非常に費用がかかり得る。
【0015】
近年、ワクチンに対する新たなアプローチが出現し、広く遺伝的免疫法と称されている。このアプローチでは、病原性因子の抗原をコードする核酸(ポリヌクレオチド)が、免疫化されるべき対象中の細胞内へ作用可能に挿入される。処理された細胞、好ましくは、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC5)は形質転換され、病原体の抗原性タンパク質を産生する。インビボで産生されたこれらの抗原は、次いで、所望の免疫応答を宿主内に引き起こす。このような遺伝子ワクチン中で使用される遺伝物質はDNA又はRNA構築物の何れかであり得る。しばしば、抗原をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子の挿入、複製又は発現を強化するために、他のプロモーターポリヌクレオチド配列と組み合わせて導入される。
【0016】
抗原遺伝子をコードするDNAワクチンは、様々な送達系によって、対象の宿主細胞中に導入することができる。これらの送達系には、原核生物性送達系とウイルス性送達系が含まれる。例えば、1つのアプローチは、宿主細胞を接種するために、新しい遺伝物質を取り込んだワクシニアウイルスなどのウイルスベクターを使用することである。あるいは、遺伝物質はプラスミドベクター中に取り込ませることが可能であり、又は「裸の」ポリヌクレオチドとして、すなわち、単に精製されたDNAとして、宿主細胞へ直接送達することが可能である。さらに、DNAは、サルモネラ・チフィムリウムなどの弱毒化された細菌中へ安定に形質移入することができる。形質転換されたサルモネラで患者を経口的にワクチン接種すると、細菌は腸内のパイエル板(すなわち、二次リンパ組織)へ輸送され、次いで、免疫応答を刺激する。
【0017】
DNAワクチンは、遺伝病及び癌など、伝統的な病原体によって引き起こされない病状に対して免疫化するための機会を提供する。典型的には、遺伝子癌ワクチンは、抗原をコードする遺伝子をAPC中に導入し、このようにして形質転換されたAPCは腫瘍細胞の特異的な種類に対する抗原を産生する。従って、多数の癌の種類に対する効果的な一般的ワクチンは、それに対して免疫化されるべき癌細胞の各種類に対する多数の個別のワクチンを必要とし得る。
【0018】
癌の様々な形態に対して免疫化するための一般的に有効なDNA組成物(ワクチンなど)に対する継続的な要望が存在する。本発明はこの要望を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、マウスFAPDNA構築物及び化学療法耐性腫瘍細胞株の性質決定である。パネルAは、pcDNA3.1/V5−His−TOPOベクター(pFAP)のEcoRI部位中に挿入された完全なマウスFAPをコードするプラスミドcDNAを図示している。パネルBは、CT26細胞の一過性形質移入後に、ウェスタンブロッティングによってFAPタンパク質発現が示されたことを示している。パネルCは、表記濃度の様々な化学療法剤で処理されたCT26大腸癌細胞及びD2F2乳癌細胞を示している。温置の48時間後、ヘキスト−33342色素染色によって、核のアポトーシスを評価した。バーは、3つのアッセイの平均+標準偏差を示している。
【図2】図2Aから図2Cは、FAPをベースとするDNA組成物の腫瘍増殖に対する効果を示している。予防的設定:材料と方法に記載されているとおりに実施された1週間隔での3回のワクチン接種の最後の接種から10日後に、3×104のCT26細胞の致死用量を皮下(s.c.)注射によって(図2A)、又は3×105のD2F2細胞の致死用量を正所性に(o.t.)(図2B)、BALB/cマウス(n=8)を攻撃誘発した。8匹のマウスの平均腫瘍増殖が図示されている。平均±SE、p<0.01。治療的設定:BALB/cマウス(n=8)にまず、105のCT26細胞を静脈内(i.v.)注射し、次いで、一旦肺転移が確立されたら、3日後及び10日後に処理を施した。18日後に、肺を切り出し、秤量し(正常な肺重量は約0.2gであった。)、転移に関して検査し、視覚的評価によってスコア付けを行った。融合された転移によって覆われた肺表面のパーセントを以下のように評価した。0=0%、1=<20%、2=20−50%、3=>50%、p<0.01。(図2C)。
【図3】図3は、CD8+T細胞によって誘導された細胞毒性を示している。(A)被処理マウスでのエフェクター相の間の抗体介在性欠失の寿命に対する効果が図示されている(*は対照群と比較した統計的有意性を表す。p<0.01)。(B)処理されたマウスの脾臓からCD8+T細胞を精製し、γ線照射された腫瘍標的細胞で刺激し、次いで、pGFP又はpGFP/pFap形質移入されたCT26細胞とともに48時間温置した。ヘキスト−33342色素での染色により、核のアポトーシスを以下のように評価した。核のアポトーシス段階0:アポトーシスなし;段階1:大規模なクロマチン凝集;段階2a:クロマチンの断片化;段階2b:アポトーシス体。(C、D)pFap及び空のベクターによって免疫化されたマウス(n=3)由来の脾細胞を、pFapで形質移入されたA31繊維芽細胞で5日間刺激し、次いで、51Cr放出アッセイに供した。(D)抗MHCクラスI抗体とともに、エフェクター及び標的細胞を共温置した(平均+SD、*は空のベクターと比べて統計的に有意であることを示す。p<0.05)。(E)抗CD3+PerCP−Cy5.5及び抗CD8+FITC抗体で染色された、被処理マウス(n=2)のCT26腫瘍の単一細胞懸濁液のFACS分析。2つの実験のうちの1つが図示されている。(F)抗CD8FITC抗体及びDAPI核染色で染色された、pFap及び空のベクターで処理されたマウスのCT26腫瘍の代表的な切片。
【図4】図4は、FAP/I型コラーゲンの発現及びフルオレセイン/アルブミン/5−FUの腫瘍内取り込みを示している。(A)FAPの免疫組織化学的分析(上のパネル)及び被処理マウスの皮下CT26腫瘍中でのI型コラーゲン(下のパネル)発現。(B)被処理マウスの皮下CT26腫瘍中でのFAP及びI型コラーゲンのイムノブロット。(C、D、E)棒グラフは、フルオレセインの腹腔内注射、エバンスブルーアルブミンの静脈内注射又は14C−5−フルオロウラシルの静脈内注射後における、処理されたBALB/cマウス(n=4)から得た皮下CT26腫瘍のホモジネートの光学密度又はシンチレーション測定の平均+SEを示している。それぞれ、P<0.05、P<0.01及びP<0.05。
【図5】図5は、組み合わされた生物及び化学療法の抗転移効果及び副作用を示している。(A)予防的設定。対照ワクチン、PBS又は本発明のワクチンを用いた、1週間隔での3回のワクチン接種の最後の接種から10日後に、3×105のD2F2細胞で正所性に、BALB/cマウス(n=8;平均±SE)を攻撃誘発した。5、10及び15日後に、表記マウスをドキソルビシンで処理した。(B)治療的設定。105のD2F2腫瘍細胞の静脈内注射から5日後に、BALB/cマウス(n=8)をpFapワクチン又は対照ワクチンで毎週処理した。各免疫化から1日後に、表記のとおり、マウスをドキソルビシンで静脈内に処理した(*は、対照群と比較した有意性を示しており、p<0.0001、**は、対照、対照/Dox、pFap及びpFap/Dox群と比較した有意性を示している、p<0.0001)。
【図6】(A)腫瘍内のドキソルビシン濃度:処理されたBALB/cマウス(n=4)に、5×105のD2F2細胞を皮下に攻撃誘発し、プールされた腫瘍可溶化液中のドキソルビシン濃度を、LC−MSによって、16日後に測定した(2つの実験の代表、平均+標準偏差、P<0.001)。(B)処理されたマウス(n=4)の背中上方に、3mmの直径の円形の創傷を与え、完全な創傷封鎖までの平均時間を測定した(平均+標準偏差)。
【図7】図7は、ヒトFAPをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号1)を示している。
【図8】図8は、ヒトFAPのアミノ酸残基配列(配列番号2)を示している。
【図9】図9は、マウスFAPをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号3)を示している。
【図10】図10は、マウスFAPのアミノ酸残基配列(配列番号4)を示している。
【図11】図11は、ヒトIL−2をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号5)を示している。
【図12】図12は、ヒトIL−2のアミノ酸残基配列(配列番号6)を示している。
【図13】図13は、マウスIL−2をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号7)を示している。
【図14】図14は、マウスIL−2のアミノ酸残基配列(配列番号8)を示している。
【図15】図15は、ヒトCCL21をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号9)を示している。
【図16】図16は、ヒトCCL21のアミノ酸残基配列(配列番号10)を示している。
【図17】図17は、マウスCCL21bをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号11)を示している。
【図18】図18は、マウスCCL21bのアミノ酸残基配列(配列番号12)を示している。
【図19】図19は、ヒトCCL21及びマウスCCL21b間でのアミノ酸配列の類似性を示している。
【図20】図20は、マウスCCL21aをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号13)を示している。
【図21】図21は、マウスCCL21aのアミノ酸残基配列(配列番号14)を示している。
【図22】図22は、ヒトCD40Lをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号15)を示している。
【図23】図23は、ヒトCD40Lのアミノ酸残基配列(配列番号16)を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)として知られる腫瘍間質抗原を標的とする、腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害するのに有効なDNA組成物を提供する。このDNA組成物は、FAPの少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物を含み、該DNA構築物は免疫細胞中において発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。DNA構築物は、FAPの単一のエピトープ、FAPの2つ若しくはそれ以上のエピトープを含むポリペプチド、完全なFAPタンパク質又は腫瘍間質細胞などのFAPを発現する細胞に対して所望の免疫応答を惹起するこれらのあらゆる一部をコードし得る。本発明の組成物によって惹起された免疫応答は、腫瘍増殖及び腫瘍転移の阻害をもたらす。
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される「DNA構築物」という用語は、FAPエピトープ、FAPタンパク質、IL−2、CCL21などの目的のタンパク質又はポリペプチドをコードするDNA構造を表す。DNA構築物には、直鎖DNA及びプラスミドDNA並びに細胞又はウイルスの遺伝物質中に取り込まれたDNAなど、標的細胞中で転写されることができるいずれかのDNAが含まれる。好ましくは、DNA構築物は、ウイルス又は細菌送達ベクター、例えば、非病原性である弱毒化されたウイルスベクター又は細菌ベクター中に取り込まれたDNAである。対象が本発明の組成物で処理されると、
FAPをコードするDNAが免疫細胞(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)に送達され、次いで、免疫細胞がFAPタンパク質を発現する。FAPDNAのウイルス及び細菌担体は、それ自体、FAPを発現しない。
【0038】
本発明のDNA組成物は、腫瘍間質細胞(例えば、間質性繊維芽細胞)など、FAP抗原を提示する細胞に対して活性を有するCTLの形成を刺激する。このような腫瘍間質細胞は、本発明のDNA組成物による免疫化に応答して産生されるCTLによって選択的に標的とされる。本発明の組成物は、I型コラーゲンの腫瘍間質性発現も低減することができ、続いて、これは化学療法剤の取り込みを増強することができる。
【0039】
本明細書において使用される「免疫」という用語は、抗原を発現している細胞に対する長期の免疫学的保護を表す。「免疫化」という用語は、処理された対象中の抗原を発現している細胞に対して免疫をもたらす、抗原への曝露を表す。
【0040】
「FAPタンパク質」という用語は、ヒトFAP、又はヒトFAPに対して少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを表す。「FAPDNA」という用語は、ヒトFAPをコードするDNA又はヒトFAPに対して少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドをコードするDNAを表す。
【0041】
本発明のDNA組成物において有用なDNA構築物は、FAPの1つ又はそれ以上のエピトープを含むポリペプチドをコードし、及び免疫細胞中での遺伝子発現のために必要とされる制御要素に作用可能に連結されている核酸を好ましくは含む。好ましくは、DNA構築物は、完全長FAPタンパク質をコードし、又は完全長FAPタンパク質と少なくとも80%の配列類似性の高い程度を有し、及びFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドをコードする。有用なDNA構築物は、好ましくは、免疫細胞中でのヌクレオチドの発現に必要な制御要素を含む。このような要素には、例えば、プロモーター、開始コドン、停止コドン及びポリアデニル化シグナルが含まれる。さらに、免疫原性標的タンパク質をコードする配列の発現のために、エンハンサーがしばしば必要とされる。本分野において公知であるように、これらの要素は、好ましくは、所望のタンパク質をコードする配列に作用可能に連結される。制御要素が投与されるべき種内において作用可能である制御要素が好ましく選択される。好ましくは、DNA構築物はプラスミドの形態であり、又はウイルス若しくは細菌ベクター中に取り込まれる。FAPタンパク質をコードするDNA構築物は、本分野において周知の方法を用いて、形質移入によって、まず、細菌ベクター中に取り込まれ得る。続いて、形質転換された細菌は、細菌の遺伝物質内にFAPDNAを含む細菌のそのまま使用できる株を提供するために培養することができる。このような形質転換された細菌の培養物は、本発明のDNA組成物に対してそのまま使用できる源を与える。
【0042】
本発明のDNA組成物中に、FAPをコードするヌクレオチド配列の一部として開始コドン及び停止コドンが好ましく含められる。開始及び停止コドンは、コード配列のフレーム領域内に存在しなければならない。
【0043】
本発明の組成物中に含められるプロモーター及びポリアデニル化シグナルは、免疫されるべき対象の細胞内で機能的であるように好ましく選択される。
【0044】
本発明の組成物において、特に、ヒト用の遺伝子ワクチンDNA組成物の作製において有用なプロモーターの例には、サルウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIV末端反復配列(LTR)プロモーターなどのヒト免疫不全ウイルス(HIV)、モロニーウイルス、CMV最初期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV),ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来のプロモーター並びにヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン及びヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来のプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明のDNA組成物において、特に、ヒト用のDNA組成物の作製において有用なポリアデニル化シグナルの例には、SV40ポリアデニル化シグナル及びLTRポリアデニル化シグナルが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
DNA発現のために必要とされる制御要素に加えて、DNA分子中に他の要素を含めることも可能である。このような追加要素には、エンハンサーが含まれる。エンハンサーは、例えば、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン及びCMV、RSV及びEBV由来のものなどのウイルス性エンハンサーであり得る。
【0047】
制御配列及びコドンは、一般に、種依存性であり、従って、タンパク質産生を最大化するために、制御配列及びコドンは免疫化されるべき種内で効果的であるように、好ましく選択される。当業者は、所定の対象種内で機能的であるDNA構築物を作製することができる。
【0048】
本組成物において有用なDNA構築物は、「Restifo et al.Gene Therapy 2000;7:89−92」(その関連する開示内容は、参照により組み込まれる。)に定義されているように「裸の」DNAとすることができる。好ましくは、DNA構築物はプラスミドの形態であり、又は弱毒化されたウイルス若しくは弱毒化された細菌の遺伝物質中に取り込まれたDNAの形態である。有用な送達ビヒクル又は担体には、生物分解性微小カプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)及び裸のDNA構築物用のリポソーム並びに遺伝的に操作された、弱毒化された生のウイルス又は細菌用の生理的に許容される様々な緩衝液が含まれる。
【0049】
FAPDNA構築物を取り込むように形質転換され得る弱毒化された適切な生の細菌ベクターの例には、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、シゲラ(Shigella)種、バチルス(Bacillus)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、カンピロバクター(Campylobacter)種、リステリア(Listeria)種又は本分野において公知であるあらゆる他の適切な細菌ベクターが含まれる。特に、組成物が経口投与用である場合には、ベクターは、好ましくは、弱毒化された生のサルモネラ・チフィムリウムベクターである。好ましい弱毒化された生のサルモネラ・チフィムリウムには、SL7207などのAroA−株又はRE88などの二重に弱毒化されたAroA−、dam−株が含まれる。二重に弱毒化されたAroA−、dam−サルモネラ・チフィムリウムは、特に好ましいベクターである。
【0050】
外来DNA構築物で生の細菌ベクターを形質転換する方法は、本分野において十分に記載されている。例えば、「Joseph Sambrook and David W. Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2001)(Sambrook and Russell)」を参照されたい。形質転換後、細菌が複製するにつれて、生物の固有のDNAとともに外来DNAが複製されるように、外来性遺伝物質は細菌の遺伝物質中に取り込まれる。従って、一旦細菌が形質転換されたら、生物の正常な複製プロセスが外来DNAの即座の供給を提供する。
【0051】
好ましいウイルスベクターには、バクテリオファージ、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、シンドビスウイルス、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス及びトリポックスが含まれる。外来DNA構築物でウイルスベクターを形質転換する方法も、本分野において十分に記載されている。上記Sambrook及びRussellを参照されたい。
【0052】
有用なリポソーム担体ビヒクルは、親油性物質及び内部水性部分から形成される膜部分を有する単層又は多層小胞である。標的細胞に送達されるべきポリヌクレオチド物質を含有するために、本発明では、水性部分が使用される。リポソーム形成物質は、四級アンモニウム基などの陽イオン性基と及び約6から約30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和アルキル基などの1つ又はそれ以上の親油性基とを有することが一般に好ましい。適切な物質の一つの群が欧州特許公開0187702に記載されており、Wolffらに付与された米国特許第6,228,844号にさらに論述されている(これらの関連する開示内容は、参照により組み込まれる。)。他の多くの適切なリポソーム形成陽イオン性脂質化合物が文献中に記載されている。例えば、「L.Stamatatos et al.,Biochemistry1988;27:3917−3925」及び「H.Eibl et al.,Biophysical Chemistry 1979;10:261−271」を参照されたい。あるいは、ポリラクチド−コグリコリド生物分解性小球体などの小球体を使用することができる。本分野において公知であるように、核酸を組織に送達するために、核酸構築物はリポソーム若しくは小球体で封入され又はその他複合体化される。
【0053】
他の有用な担体ビヒクルには、「Wang et al.,Nat.Mater.,2004;3(3):190−6,Epub 2004 Feb.15」(その関連する開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。)によって記載されているように、生分解性ポリ(オルトエステル)材料を含むポリマー性小球体が含まれる。
【0054】
好ましくは、本発明のための組成物は、ヒトFAP又はその機能的相同体をコードするDNA構築物を含む。FAPの機能的相同体は、好ましくは、ヒトFAPに対して少なくとも約80%のアミノ酸残基配列類似性を有し、より好ましくは、少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列類似性を有する。
【0055】
GenBankは、国立衛生研究所(NIH)の遺伝子配列データベースであり、これは、公的に入手可能な全てのDNA配列に注釈を付けて収集したものである。GenBankは、DNA DataBank of Japan(DDBJ)、European Molecular Biology Laboratory(EMBL)及びNational Center for Biotechnology InformationのGenBankの協力によるInternational Nucleotide Sequence Database Collaborationの一部である。
【0056】
ヒトFAPをコードするcDNAの核酸配列、配列番号1(図7)は、GenBank受付番号BC026250で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ヒトFAPの対応するアミノ酸残基配列は、配列番号2である(図8)。
【0057】
マウスFAPをコードするDNAの核酸配列、配列番号3(図9)は、GenBank受付番号BC019190で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。マウスFAPの対応するアミノ酸残基配列は配列番号4である(図10)。
【0058】
遺伝子コードの固有の縮重のために、本発明の実施において、ヒトFAPに対するアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を使用することができる。このようなDNA配列には、ヒトFAPにもハイブリッド形成することができるDNA配列が含まれる。
【0059】
本発明において使用することができる、ヒトFAPをコードするDNA配列は、配列番号1中のヌクレオチド残基に対して異なるヌクレオチド残基の欠失、付加又は置換を有する核酸を含み、該核酸は同じFAP遺伝子産物をコードする配列をもたらす。ヒトFAPの機能的に等価な相同体をコードするDNA分子も、本発明のDNA組成物中に使用することができる。
【0060】
核酸によってコードされる遺伝子産物は、サイレントな変化をもたらし、従って、機能的に等価なFAPを産生するアミノ酸残基の欠失、付加又は置換も、FAPアミノ酸残基配列内に含有し得る。このようなアミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性に基づいて為され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に帯電したアミノ酸には、リジン及びアルギニンが含まれ、類似の疎水性値を有する非帯電極性頭部基を有するアミノ酸には、以下のもの、すなわち、ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、チロシンが含まれる。本明細書において使用される、機能的に等価なFAPは、T細胞によって認識された際に、これらの同じT細胞がFAP発現細胞上に提示されたFAPエピトープを認識できるようにする1つ又はそれ以上のエピトープを含むタンパク質を表す。好ましい実施形態において、機能的に等価なFAPは、ヒトFAPのアミノ酸残基配列(配列番号2)と少なくとも約80%の配列類似性、例えば、ヒトFAPに対して少なくとも90%の配列類似性又は少なくとも約95%の配列類似性を有するアミノ酸残基配列を有する。
【0061】
FAP遺伝子産物のプロセッシング及び発現を修飾する変化などの(但し、これに限定されない)様々な目的のために、(元来のFAPcDNA、配列番号1と比べて)FAPコード配列を変化させるために、FAPをコードするDNA構築物を操作することができる。例えば、新たな認識部位を挿入するために、グリコシル化パターン、リン酸化などを変化させるために、本分野において周知の技術、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて、DNA中に変異を導入し得る。
【0062】
好ましい一実施形態において、本発明のDNA組成物は、FAPをコードするDNA構築物及び少なくとも1つの免疫エフェクタータンパク質を操作可能にコードするDNA構築物を含み、両構築物は免疫細胞中において発現可能である。本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される「免疫エフェクタータンパク質」という用語は、免疫系経路の制御に関与するタンパク質を意味する。好ましくは、免疫エフェクタータンパク質はサイトカインである。
【0063】
サイトカインは、細胞増殖、細胞分化、免疫応答の制御、造血及び炎症応答など、他の細胞の挙動に影響を与えることができる、細胞によって産生されるタンパク質及びポリペプチドである。サイトカインは、ケモカイン、ヘマトポエチン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子及び割り当てられていない様々な分子を含む多数のファミリーに分類されてきた。一般に、「Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised Edition,Oxford University Press,2000」及び「C.A.Janeway,P.Travers,M.Walport and M.Schlomchik,Immunobiology,Fifth Edition,Garland Publishing,2001」(以下、「Janeway and Travers」)を参照されたい。サイトカインの正確な分類は、「Janeway and Travers,Appendix III,ページ677−679」(その関連する開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0064】
ヘマトポエチンには、例えば、エリスロポエチン、インターロイキン−2(IL−2、T細胞によって産生され、T細胞増殖に関与する133アミノ酸タンパク質)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、IL−15(腸の上皮、T細胞及びNK細胞の増殖を刺激する114アミノ酸のIL−2様タンパク質)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、オンコスタチンM(OSM)及び白血病抑制因子(LIF)が含まれる。
【0065】
インターフェロンには、例えば、IFN−α、IFN−β及びIFN−γ(T細胞及びNK細胞によって産生される143アミノ酸のホモ二量体タンパク質であり、マクロファージの活性化、MHC分子の増加した発現及び抗原プロセッシング成分、IGクラスのスイッチング並びにTH2の抑制)に関与している。)が含まれる。
【0066】
免疫グロブリンには、例えば、B7.1(CD80)及びB7.2(CD86)が含まれ、何れもT細胞応答を共同刺激する。
【0067】
腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーには、例えば、TNF−α、TNF−β(リンホトキシン)、リンホトキシン−β(LT−β)、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4−1BBリガンド、Trail及びOPGリガンドが含まれる。
【0068】
CD40リガンド(CD40L)の生物学的な役割、特に、T細胞活性化の共同刺激の間における、抗原提示細胞上に発現されたCD40とのその相互作用は、本分野において周知である。CD40は、全ての成熟したB細胞、殆どの成熟したB細胞悪性腫瘍及び幾つかの初期のB細胞急性リンパ球性白血病の表面上に発現される48kDaの糖タンパク質であるが、形質細胞上には発現されない(Clark, Tissue Antigens 1990,35:33−36)。約35kDaのII型膜タンパク質であるCD40Lは、抗原認識の際に、T細胞の表面上に発現される。TNFファミリーのメンバーは、ホモ三量体として発現される場合に、最も生物学的に活性が高い。CD40Lは、この点に関して例外がなく、このリガンドの完全な細胞外ドメインのN末端に融合された33アミノ酸のロイシンジッパーモチーフの修飾により、ホモ三量体(CD40LT)として発現され得る。高度に免疫原性のモデル抗原β−ガラクトシダーゼをコードするDNAでマウスを処理した場合に、CD40LTDNAは、IFN−γ及び細胞溶解性T細胞活性の誘導などの細胞性免疫応答を増強することが、「Gurunathan et al.J.Immunol.1998,161:4563」によって報告されている。
【0069】
CD40LTは、腫瘍自己抗原に対する効果的な防御免疫を誘導するのに必要なT細胞の活性化における重要な因子である。抗原が搭載されたMHCクラスI複合体が、一旦、樹状細胞(DC)によって取り込まれ、ナイーブT細胞に提示されると、最初の抗原シグナルがT細胞受容体(TCR)を介して送達され、続いて、CD40LTが上方制御される。T細胞表面上で、CD40LTは、次いで、CD40−CD40LT相互作用を介して、DCに対して共同刺激活性を誘導する。このようにして抗原刺激されて、これらのAPCは、共同刺激分子B7.1(CD80)及びB7.2(CD86)を発現することができ、これらはCD28との相互作用を介して、第二の共同刺激シグナルをT細胞に送信する(炎症促進性のサイトカインINF−γ及びIL12を同時に産生するために、及びエフェクター機能を実施するために、T細胞の完全な活性化をもたらす現象)。
【0070】
特定のファミリーに割り当てられない様々なサイトカインには、例えば、腫瘍増殖因子−β(TGF−β)、IL−1α、IL−1β、IL−1RA、IL−10、IL−12(ナチュラルキラー細胞刺激因子;NK細胞の活性化及びTH1様細胞へのT細胞の分化の誘導に関与する197アミノ酸鎖及び306アミノ酸鎖を有するヘテロ二量体)、マクロファージ阻止因子(MIF)、IL−16、IL−17(上皮、内皮及び繊維芽細胞中でのサイトカイン産生を誘導するサイトカイン産生誘導因子)及びIL−18が含まれる。
【0071】
ケモカインは、白血球(例えば、貪食細胞及びリンパ球)の遊走など、様々な細胞の遊走及び活性化を刺激する、比較的小さな化学誘引性タンパク質及びポリペプチドであるサイトカインのファミリーである。ケモカインは、炎症及び他の免疫応答において役割を果たしている。ケモカインは、Cケモカイン、CCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインを含む多数のファミリーに分類されてきた。名前は、分子中のシステイン(C)残基の数及び間隔を表す。Cケモカインは1つのシステインを有し、CCケモカインは2つの隣接するシステインを有し、CXCケモカインは単一のアミノ酸残基によって隔てられた2つのシステインを有し、CX3Cケモカインは3つのアミノ酸残基によって隔てられた2つのシステインを有する。ケモカインは、細胞表面上に存在する多数のケモカイン受容体と相互作用する。「Janeway and Travers, Appendix IV,ページ680」(参照により、本明細書中に組み込まれる。)を参照されたい。
【0072】
さらに、ケモカインは免疫調節活性を有することができ、癌に対する免疫応答に関与していると推測されている。例えば、ヒト二次リンパ組織ケモカイン(SLC)のマウス類縁体であるマウス6Ckine/SLC(現在、一般にCCL21と称されている。)は、C26大腸癌腫瘍細胞株中で抗腫瘍応答を誘導することが報告されている。「Vicari et al.J.Immunol.2000;165(4):1992−2000」を参照されたい。ヒトCCL21及びそのマウス対応物である6Ckine/SLCは、CCR7ケモカイン受容体と相互作用するCCケモカインとして分類されている。マウス6Ckine/SLC(muCCL21)は、Vicariらによって、CXCR3ケモカイン受容体に対するリガンドであることも報告されている。ヒトCCL21、マウスmuCCL21及び様々な他のケモカインは、樹状細胞、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などの様々な免疫系細胞の制御に関与していると推定されている。
【0073】
Mig及びIP−10は、活性化されたT細胞と関連するCXCR3受容体と相互作用するCXCケモカインである。リンホタクチンは、T細胞及びNK細胞と関連するXCR1受容体と相互作用するCケモカインである。フラクタルキンは、T細胞、単球及び好中球と関連するCX3CR1受容体と相互作用するCX3Cケモカインである。
【0074】
本発明のDNA組成物によってコードされるべき特に好ましい免疫エフェクタータンパク質には、サイトカインIL−2(ヘマトポエチン)、CCL21(ケモカイン)及びCD40リガンド三量体(CD40LT)などのCD40リガンド、TNFファミリーサイトカインが含まれる。
【0075】
ヒトIL−2に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号BC070338に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。マウスIL−2に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM 008366に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0076】
ヒトIL−2をコードする核酸配列は図11に示されており(配列番号5)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号6)は図12に与えられている。マウスIL−2をコードする核酸配列は図13に示されており(配列番号7)、その対応するアミノ酸配列(配列番号8)は図14に与えられている。
【0077】
ヒトCCL21に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号AB002409に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれている。マウスCCL2Ia変異体のDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM011335に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。マウスCCL21b変異体のDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM011124に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0078】
ヒトCCL21をコードする核酸配列は図15に示されており(配列番号9)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号10)は図16に与えられている。マウスCCL21(CCL21b変異体)をコードする核酸配列は図17に与えられており(配列番号11)、その対応するアミノ酸配列(配列番号12)は図18に与えられている。
【0079】
ヒトCCL21とそのマウス対応物(マウスCCL21b)間のタンパク質配列類似性は、図19に示されている。ヒトCCL21(配列番号10)及びマウスCCL21b(配列番号12)間には、約73%のアミノ酸残基配列同一性が存在する。
【0080】
マウスCCL21のCCL21a変異体をコードする核酸配列は図20に示されており(配列番号13)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号14)は図21に与えられている。
【0081】
ヒトCD40リガンド(CD40L)は261アミノ酸のタンパク質であり、その最も活性が高い形態において三量体(CD40LT)として存在する。ヒトCD40L(CD154としても知られる。)をコードするDNA配列は、GenBank受付番号NM000074で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる(図22、配列番号15)。CD40Lの対応するタンパク質配列は図23に示されている(配列番号16)。
【0082】
本発明の方法の態様は、FAPをコードし、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であるDNA構築物を含むDNA組成物を哺乳動物に投与することを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。組成物は、組成物が調製される具体的な剤形に応じて、経口、筋肉内、鼻内、腹腔内、皮下、皮内又は局所投与することができる。好ましくは、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、カプセル、錠剤などの経口投与可能な剤形で調製される。
【0083】
本発明のDNA組成物は、組成物で処理された患者中での腫瘍増殖及び/又は腫瘍転移の長期阻害を与えるために使用することができる。好ましい実施形態において、DNA組成物は、抗腫瘍化学療法剤と組み合わせて投与される。DNA組成物は、組み合わされた剤形中で化学療法剤と一緒に投与することが可能であり、又は組成物及び化学療法剤は、別個の剤形で、及び投与されている化学療法剤の薬理学に適合された隔てられた投薬間隔で投与することが可能である。
【0084】
本発明のDNA組成物と組み合わせるのに有用な化学療法剤には、ドキソルビシン、パクリタキセル、シクロホスファミド、エトポシド、5−フルオロウラシル、メトトレキサートなどの抗腫瘍剤が含まれる。
【0085】
本発明のDNA組成物は、組成物の調合及び投与を補助するために、水、生理的食塩水、デキストロース、グリセロールなど及びこれらの組み合わせなどの医薬として許容される担体又は賦形剤とともに好ましく調合される。組成物は、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤及び医薬分野において周知である他の補助物質などの補助物質も含有することが可能である。
【0086】
本発明の組成物は、医薬として許容される担体中の溶液又は懸濁液として、FAPをコードするDNAの重量を基礎として約1から約10μg/mLの範囲のDNA濃度で、ヒトなどの哺乳動物に好ましく経口投与される。本発明のDNA組成物に対する特に好ましい剤形は、適切な緩衝溶液中の弱毒化されたFAP形質移入された細菌の懸濁液であり、これは経口投与のために調合することができる。組成物の適切な投薬量は、処理されるべき対象、組成物の活性、及び1つには、組成物を投与し、又は組成物の投与を要請する医療従事者の判断に依存する。
【0087】
哺乳動物に投与されるべき投薬量及び2回以上の投与が使用される場合には、投与のスケジュールは、哺乳類ごとに及び剤形に応じて変動する。有効な投薬量及び投与スケジュールは、本分野において周知であるように、臨床的な用量応答研究を通じて経験的に決定することができる。FAP抗原を提示する細胞に対する哺乳動物中の免疫応答を惹起するために、免疫細胞中にFAP発現の十分な量を与えるように、投薬量及び投薬スケジュールが選択される。好ましくは、対象哺乳動物に投与される組成物の投薬量は、少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも6ヶ月又は少なくとも約1年の期間にわたって継続するFAP提示細胞に対する免疫応答を持続するために、哺乳動物の免疫細胞中でFAP抗原の十分な量の発現を惹起する。
【0088】
本発明の組成物は、アンプル、瓶又はバイアルなどの適切に滅菌された溶液中に、複数投薬形態又は単位投薬形態の何れかで梱包することができる。容器は、本発明のDNA組成物が充填された後に好ましくは密閉される。好ましくは、組成物は、ラベルが貼付された容器中に梱包され、該ラベルは組成物を特定し、適切な法律に基づく組成物の承認を反映する米国食品医薬品局などの政府関連機関によって規定された形態の通知、投薬情報などを有する。ラベルは、好ましくは、患者に組成物を投与する医療専門家に対して有用である組成物についての情報を含有する。パッケージは、組成物の投与、指示、適応症及び必要とされる何らかの必要な警告に関連する印刷された情報資料も好ましくは含有する。
【0089】
以下の実施例は、本発明の特徴及び実施形態をさらに例示するために提供されており、限定を意図するものではない。
【0090】
材料、方法及び実施例
動物、細菌株及び細胞株。6から8週齢の雌のBALB/cマウスは、Scripps Research Institute(TSRI)Rodent Breeding Facilityから入手した。全ての動物実験は、国立衛生研究所の動物実験の世話及び使用に関する指針に従って行われ、TSRI動物実験委員会によって承認された。二重弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム株RE88(AroA−dam−)は、Remedyne Corporation(Santa Barbara,California)によって提供された。マウスD2F2乳癌細胞は、Dr.Wei−ZenWei,Karmanos Cancer Center,Detroit,MIから入手し、CT26大腸癌細胞はATCC(Manassas,Virginia)から入手した後、化学耐性サブクローンを得るために数ヶ月にわたって培養した。
【0091】
マウスCT26及びD2F2癌細胞は、1%DMSO、エトポシド、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、ビンブラスチン又はパクリタキセル(Sigma,St.Louis,Missouri)の存在下で、表記濃度で培養した。48時間後、DNA特異的なヘキスト33342色素(2μM;Molecular Probes,Eugene,Oregon)との温置後に、アポトーシスを生じた核を計数した。
【0092】
CT26大腸癌及びD2F2乳癌細胞の2つのクローンは、それぞれ、化学療法耐性を獲得した(図1、パネルC参照)。5つの異なるアポトーシス誘導性化学療法剤をCT26大腸癌クローンに添加すると(図1、パネルC)、ビンブラスチンのみが僅かなアポトーシス効果を誘導することができたが、5μMの極めて高い濃度においてのみ誘導することができた。元の親CT26細胞株(ATCC#CLR−2326)は5−フルオロウラシル(5−FU)に対して約1.85μMのIC50を有していたのに対して、耐性CT26クローンにおいては、5-FUは、100μMの高濃度でさえ、核アポトーシスを誘導することができない。耐性D2F2乳癌細胞では、ヘキスト−33342色素染色によって測定されたところによれば、1μMの最高濃度のドキソルビシンのみが核アポトーシスを誘導することができた。これらの結果は、これらの腫瘍細胞株の何れもが多剤耐性であることを示している。
【0093】
統計解析。実験群と対照間の異なる所見の統計的な有意性は、Studentのt検定によって決定した。転移スコアの有意性は、MannWhitneyU検定によって決定した。生存データの有意性は、ログランク検定によって決定した。P値が0.05未満であれば、所見を有意とみなした。
【実施例1】
【0094】
マウスFAPをコードするDNA組成物1の調製
真核発現ベクターpcDNA3.1−FAP(pFAP)(図1、パネルA参照)を与えるために、マウスFAP(配列番号4、図10)をコードするcDNA(配列番号3、図9、Dr.J.D.Chengから入手)をpcDNA3.1/V5−His−TOPOベクター(Invitrogen,SanDigeo,California)のEcoRI制限部位中にサブクローニングした。独力でFAPを発現しない一過性に形質移入されたCT26大腸癌細胞から得た細胞可溶化液のウェスタンブロッティングによって、ベクターからの95kDaFAPタンパク質の正しい発現が示された(図1、パネルB)。これは、一過性に形質移入されたD2F2乳癌細胞に対しても当てはまった。一過性の形質移入のために、以前に記載されているように、CT26及びD2F2細胞に電気穿孔を行った(Loeffer et al.,FASEB,J.2001,15:758−767参照、参照により本明細書に組み込まれる。)。ポリクローナルウサギ抗マウスFAP抗体(Dr.J.D.Chengから入手)でのウェスタンブロッティングによって、FAPのタンパク質発現が示された。
【0095】
DNA組成物1は、以下のように調製した。製造業者の推奨される手順に従って、2kV、960μF及び200オームでBio−RadPulserを用いて、調製直後の二重に弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(株RE88)中に、pcDNA3.1−FAPベクター(pDNA約2μg)を電気穿孔した。アンピシリン含有プレート上で、ベクターを含有する弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムを選択した。翌日、コロニーを拾い上げ、アンピシリンを添加したLuria−Bertani(LB)ブロス(脱イオン水1L中のトリプトン10g、酵母抽出物5g及び塩化ナトリウム10g;EMScience,Gibbstown,NJ)中で一晩培養した。細菌を単離し、リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)中で洗浄した。次いで、弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(AroA−dam−)ベクター中に取り込まれた、マウスFAPを作用可能にコードするDNA構築物を含有するDNA組成物1の溶液を形成するために、PBS1mL当たり約109の組み換えサルモネラの濃度で、洗浄された細菌をPBS溶媒中に懸濁した。使用するまで、組成物は、密閉されたアンプル中に保存した。pcDNA3.1ベクターのみ(FAPDNAなし)で形質転換されたサルモネラからなる「対照ワクチン」も、同じ手順に従って調製した。サルモネラを形質転換する前に、約−80℃で、プラスミドDNAを保存した。
【0096】
真核生物発現ベクターpcDNA3.1/V5−His−TOPO−Fap(pFap)を上記のように構築した後(図1、パネルA)、それ自体FAPを発現しない一過性に形質移入されたCT26大腸癌及びD2F2乳癌細胞の両方から得られた細胞可溶化液のウェスタンブロッティングによって、88kDaのFAPタンパク質の正しい発現が示された(図1、パネルB)。
【実施例2】
【0097】
マウスFAP、マウスIL−2及びマウスCCL21をコードするDNA組成物2の調製
ATCC受託番号39892、Manassas、Virginiaから得たマウスIL−2をコードするcDNA(DNA配列番号5)、及びInvitrogen、San Diego、Californiaから得たマウスCCL21aをコードするcDNA(DNA配列番号7)を、実施例1に記載されている同じ一般的手順によって、実施例1のマウスpFAPベクター中にサブクローニングした。弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムベクター中に取り込まれた、マウスFAP、マウスIL−2及びマウスCCL21aを作用可能にコードするDNA構築物を含有するDNA組成物2の溶液を与えるために、実施例1に記載された手順によって、得られたベクター(pFAP/IL−2/CCL21)でRE88サルモネラ・チフィムリウムを形質転換した。
【実施例3】
【0098】
大腸癌及び乳癌のマウスモデルでの本発明のDNA組成物の評価。
【0099】
経口免疫化、腫瘍細胞攻撃誘発及びドキソルビシンでの処理。予防的設定での実験のために、「Niethammer et al.,Nat.Med.,2002,8:1369−1375」に記載されている方法によって、マウスFAP(実施例1のDNA組成物1)、マウスFAP、IL−2及びCCL21(実施例2のDNA組成物2)又は実施例1の対照ワクチンをコードするプラスミドベクターで形質転換された約109のS.チフィムリウム(AroA−dam−)を含有するPBS約100μLで、強制経口投与により、約1週の間隔を置いて、BALB/cマウス(n=8)を3回処理した。左前脇腹中への約3×104のCT26大腸癌細胞の皮下(s.c.)注射によって、又は下から2番目の左の乳房脂肪体中への約3×105のD2F2乳癌細胞の同所性(o.t.)注射によって、約10日後に、動物に攻撃誘発を行った。
【0100】
二次元(すなわち、長さと幅、mmで)腫瘍を測定し、長さの半分×幅の2乗として容積を計算することによって、腫瘍容積(mm3で)を計算した。治療的設定では、約1×105のCT26大腸癌細胞の静脈内(i.v.)注射によって最初の腫瘍細胞接種を行い、続いて、約3日後及び10日後に、対照ワクチン又は活性なDNA組成物での経口ワクチン接種を行った。約18日後に、肺を秤量し(正常な肺重量は約0.2gであった。)、肺の腫瘍転移を調べ、融合された転移によって覆われた肺表面のパーセントを評価する視覚的評価によって、以下のようにスコア付けした。0%の被覆に対しては0のスコア、約20%未満の被覆に対しては1のスコア、約20から50%の被覆に対しては2のスコア、肺表面の約50%超の被覆に対しては3のスコア。腫瘍攻撃誘発から5、10及び15日後に、約10mg/kgドキソルビシン(Sigma)を静脈内投与したマウスの群において、ドキソルビシンでの処理を行った。
【0101】
CD4+及びCD8+T細胞又はNK細胞亜集団を枯渇するために、腫瘍細胞攻撃誘発の1日前から開始し、7日ごとに、CD4(クローンGK1.5)又はCD8(クローン2.43)に対する抗体(500μg)(何れも、National Cell Culture Center(Minneapolis,Minnesota)から入手)又は抗アシアロGM1抗体(Wako BioProducts,Richmont,Virginia)を腹腔内注射した。
【0102】
CD8+T細胞の細胞毒性。1週間隔での3回の処理の最終処理から約10日後に、BALB/cマウス(n=4)の様々な被処理群から得た脾細胞を集めた。CD8a−マイクロビーズ(Miltenyi Biotech,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってCD8+細胞を精製した。次いで、5日の共培養中で、これらの細胞を刺激し、γ線照射された(1000Gy、45分)CT26細胞をpcDNA3.1/Zeo(実施例1の空のベクター)又はpcDNA3.1/Zeo−FAP(実施例1のpFAPベクター)の何れかで一過性に形質移入した。その後、対照としての緑色蛍光タンパク質(GFP)(PEGFP;Clontech,PaloAlto,California)又はGFP+マウスFAPをコードするpFAPプラスミドの何れかで一過性に形質移入されたCT26癌細胞とともに、CD8+T細胞を共培養した(E:T=100:1)。約48時間後、DNA特異的なヘキスト33342色素(2μM)を用いて、核アポトーシスを上記のように評価した。
【0103】
51Cr放出アッセイのために、Balb/cマウス(n=3)を、1週間間隔で4回処理した。最後の処理から13日後に、脾細胞を採取し、レトロウイルスによってpFapを感染させた、γ線照射された(約1000Gy、45分)A31繊維芽細胞(ATCC,Manassas,Virginia)とともに、5日間温置した。次いで、刺激された脾細胞を、標識されたA31−pFapとともに約4時間温置し、溶解のパーセントを計算した。約10μg/mLの濃度の抗MHCクラスI抗体(BDBiosciences,Rockville,Maryland)とも、細胞を共温置した。
【0104】
免疫組織化学。凍結切片(約8μm厚)をアセトン中に固定し、染色した。一次抗体(ポリクローナルウサギ抗マウスFAP抗体(Dr.J.D.Chengから入手)又はポリクローナルウサギ抗マウスI型コラーゲン抗体(Chemicon,Temecula,California)の何れか)との温置後、製造業者のプロトコール(DAKO LSAB+Kit,Peroxidase,DAKO,Carpinteria,California)に従って、切片を免疫染色した。
【0105】
焦点顕微鏡のために、固定された凍結切片を抗マウスCD8抗体、ビオチン化された抗ラットIg二次抗体、FITC標識されたストレプトアビジン(BDBioscience,Rockville,Maryland)で染色し、DAPI(Sigma,St.Louis,Missouri)で共染色した。画像を得るためにレーザー走査型共焦点顕微鏡(LSCM)を使用し、ZeissImageExaminerソフトウェア(CarlZeiss)を用いて画像を処理した。T細胞浸潤のFACS分析のために、pFap又は空のベクターの何れかを用いて、1週間隔で、Balb/cマウス(n=6)を3回処理した。最後の処理から1週後、約3×105個のCT26腫瘍細胞を用いて、動物の皮下に攻撃誘発を行った。3週後に腫瘍を採取し、コラーゲナーゼI型(125U/mI;GIBCO,Gaithersburg,Maryland)が補充された溶媒中で45分間、スライスされた腫瘍組織を温置することによって、単一細胞懸濁液を調製した。ろ過後、2匹のマウスの細胞をプールし、抗CD3+PerCp−Cy5.5及び抗CD8+FITC(BDBiosciences,Rockville,Maryland)で染色し、FACSによって分析した。
【0106】
フルオレセイン、エバンスブルーアルブミン及び14C−5−フルオロウラシルの腫瘍内取り込み。対照ワクチン(実施例1)、DNA組成物1(実施例1)又はDNA組成物2(実施例2)の何れかによる1週間隔での3回の処理の最終処理後、左前脇腹中に約3×104個のCT26細胞を皮下注射することによって、10日後にマウスを攻撃誘発した。その約19日後に、約12μL/g体重の1%フルオレセインナトリウム(Sigma)の腹腔内(ip.)注射、エバンスブルーアルブミン(Sigma)約100μLの静脈内注射又は14C−5−フルオロウラシル(Sigma)約2.5μCiの静脈内注射の何れかをマウスに施した。それぞれ、490nm、612nmで又はγカウンター中で腫瘍ホモジネートの上清の吸収又はシンチレーションを測定するために、それぞれ、約5分、30分又は1時間後に、マウスを屠殺した。
【0107】
腫瘍内ドキソルビシンの取り込みを測定するために、右脇腹中に、約5×105のD2F2細胞で、Balb/cマウス(n=4)の皮下に攻撃誘発を行った。16日後に、ドキソルビシンを静脈内注射し(10mg/kg)、注射から45分後に腫瘍を採取した。1100シリーズLC−MS上のEclipseXCB−C8カラム(Agilent,Foster City,California)を用いて、内部標準ダウノルビシンに対して試料を測定した。
【0108】
可能性がある副作用の評価。創傷治癒に対するあらゆる有害な効果を測定するために、マウスを外科的に負傷させた。1週間隔での3回の処理の最終処理から約10日後に、BALB/cマウス(n=4)の背中上部に、皮膚穴開けばさみ(Miltex Inc.,Bethpage,New York)を用いて、直径約3mmの円形の傷をつけた。創縫合に必要とされる時間を測定した。創傷治癒の間にFAPが過剰発現されるという事実にかかわらず、本発明の組成物は創傷治癒プロセスを妨害しない。処理されたBALB/cマウス(n=4)の背中に直径約3mmの円形の傷を与えた後、処理されたマウスと処理されていないマウスの間で、創傷治癒には有意差は観察されなかった。組織学的分析のために、検査の7日、14日、21日前に、処理されたマウスに対して創傷を与えた。マウス病理学者によって、皮膚生検並びに26の臓器及び組織が検査された。
【0109】
FAPをベースとするDNA組成物での予防的処置は、原発性腫瘍増殖を阻害する。対照ワクチン(実施例1)、DNA組成物1(実施例1)又はDNA組成物2(実施例2)の何れかによる1週間隔での3回の処理の最終処理から10日後に、上述のように、CT26大腸癌細胞を用いて皮下に、又はD2F2乳癌細胞を用いて正所性に、BALB/cマウスの異なる群(n=8)に攻撃誘発を行った。本発明のDNA組成物は、多剤耐性CT26細胞(図2a)及び耐性D2F2細胞(図2b)の原発性腫瘍増殖を抑制した。FAP、CCL21及びIL−2の組み合わせをコードするDNA組成物2は、原発性腫瘍増殖を阻害する上で概ね等しく効果的であった(図2a)。
【0110】
本発明のDNA組成物は、治療的設定において、確立された転移の増殖を低下させる。約1×105のCT26大腸癌細胞での最初の静脈内接種から3日後及び10日後に、実施例1のDNA組成物1で処理されたBALB/cマウスは、実施例1の対照ワクチンで処理されたマウスと比べて、実験的な肺転移の著しい低下をもたらした。これに対して、対照群中のマウスは大規模な転移を呈し、腫瘍細胞接種から18日後に死亡し始めた(図2c)。同様に、pCCL21のみとpFAPの組み合わせも、概ね等しく効果的であった(図2b)。
【0111】
CD8+T細胞は、効果的な抗腫瘍免疫応答を与える。DNA組成物1(実施例1)で、1週間隔で3回、マウスを静脈内処理し、約1×105のCT26細胞で攻撃誘発した。次いで、CD4+又はCD8+T細胞及びNK細胞(図3、パネルA)に対する抗体を用いて、エフェクター相の間に、マウスからそれらの各エフェクター細胞を枯渇させた。CD4+細胞及びNK細胞の枯渇はpFAP処理の有効性を減少させず、免疫応答におけるCD8+T細胞に対する重要な役割を示唆している。
【0112】
本発明のFAPDNA組成物での処理がFAP自己抗原に対する末梢T細胞耐性を破壊することができる程度を評価するために、pFAPで形質移入された細菌又は空のベクターで処理された動物から得られたCD8+T細胞を精製した。次いで、γ照射された腫瘍標的細胞でこれらの細胞を刺激し、対照としてのGFP又はGFP/pFapの何れかで一過性に形質移入された生の腫瘍標的細胞とともに温置した。図3、パネルBに示されているように、ヘキスト33342色素でのpFap形質移入された標的細胞の染色によって評価されたところによれば、pFapで処理されたマウスから精製されたCD8+T細胞のみが核のアポトーシスを誘導することができた。
【0113】
慣用の51Cr放出アッセイでは、処理されたマウスの脾細胞も使用した。この目的のために、組成物1及び対照ワクチンで処理されたマウスから得られた脾細胞を、レトロウイルスによってpFapに感染させた、γ照射されたA31繊維芽細胞とともに5日間温置した。次いで、刺激された脾細胞を、標識されたA31−pFap細胞とともに4時間温置し、溶解のパーセントを計算した。組成物1で処理されたマウスから得た脾細胞は、1:100と1:25の標的対エフェクター比で、空のベクター対照から得られたものより、有意により多くの繊維芽細胞を溶解することができた(図3、パネルC)。抗MHCクラスI抗体との共温置は、この効果を消滅させた(図3、パネルD)。
【0114】
さらなる評価において、組成物1又は対照ワクチンの何れかで、マウスを3回処理し、次いで、pFap処理されたマウスの腫瘍内でのCD8+T細胞浸潤を調べるために、約3×104のCT26腫瘍細胞で攻撃誘発した。3週後に、腫瘍を採取し、CD3+及びCD8+細胞に関して、単一細胞懸濁液を染色し、FACSによって分析した。組成物1で処理されたマウスは、空のベクター対照と比べた場合、腫瘍組織中のCD3+CD8+細胞の顕著な増加を示した(図3、パネルE)。
【0115】
腫瘍切片は、抗CD8FITC及びDAPI核染色でも染色した。共焦点顕微鏡を用いて、組成物1で処理されたマウスの腫瘍は、実施例1の対照ワクチンで処理されたマウスより多くの、CD8+細胞による顕著な浸潤を示した(図3、パネルF)。総合すると、これらの知見は、FAPを標的とする本発明のDNA組成物は、FAP自己抗原に対する末梢T細胞耐性を克服できることを示している。
【0116】
I型コラーゲン発現の抑制は腫瘍内色素取り込みを増加させる。繊維芽細胞はI型コラーゲンの主要な源であり、この分子の発現は様々な分子量の化合物の腫瘍内取り込みと逆相関することが報告されている。この同じ機序が本発明のDNA組成物に対しても当てはまるかどうかを評価するために、処理されたマウスの腫瘍切片を、FAPに対する抗体(図4、パネルA、上の写真)又はI型コラーゲンに対する抗体(図4、パネルA、下の写真)で染色した。対照ワクチン(実施例1)のみで処理されたマウスと比べて、組成物1で処理されたマウスの群において、FAP及びI型コラーゲンの発現の減少が検出された。これらの腫瘍抽出物の対応するウェスタンブロットは同じ抗体で染色され、FAP発現の約82.63+/−2.54%の減少(図4、パネルB、上の写真)及びI型コラーゲンの約76.36+/−2.01%の減少(図4、パネルB、下の写真)を明らかにした。
【0117】
次いで、サイズ及び構造が異なる3つの化合物、すなわち、上記のように、フルオレセイン(376Da)(図4、パネルC)、エバンスブルーアルブミン(68,500Da)(図4、パネルD)又は化学療法剤5−フルオロウラシル(130Da)(図4、パネルE)をマウスに注射した。pFapDNA組成物1で処理されたマウスの腫瘍は、対照ワクチンを投与されたマウスの腫瘍より、これらの各分子を有意に多く(p<0.05)取り込んだ。
【0118】
DNA組成物と化学療法の組み合わせは、腫瘍拒絶をもたらす。本発明のDNA組成物での処理を、D2F2細胞が部分的に感受性である化学療法剤ドキソルビシンと組み合わせる治療用プロトコールを開発した(図1、パネルC)。実施例1の対照ワクチン又は実施例1の組成物で、BALB/cマウス(n=8)を処理した。次いで、処理されたマウスを、D2F2乳癌細胞で正所性に攻撃誘発した。次いで、腫瘍攻撃誘発から5日、10日及び15日後に、ドキソルビシン又は対照としてのPBSの何れかで、マウスのこれらの2つの群を処理した。図5、パネルAに示されているように、免疫療法(組成物1)又は化学療法何れかでの単一の処理は腫瘍増殖を抑制できるにすぎず、腫瘍増殖を根絶することはできなかった。これに対して、組成物1及びドキソルビシンの組み合わせで処理されたマウスの群は腫瘍増殖の顕著な阻害を呈したのみならず、8匹のマウスのうち4匹で、完全な腫瘍拒絶を呈した(図5、パネルA)。
【0119】
治療的設定での別の組み合わせ療法アプローチでは、D2F2腫瘍細胞で、BALB/cマウス(n=8)の静脈内に攻撃誘発を行った。5日後に、一旦、転移が確立されたら、組成物1でマウスを毎週処理した。各処理から1日後に、ドキソルビシンをマウスに静脈内注射した。この組み合わせ処理の結果、これらのマウスの寿命は、ドキソルビシン又は組成物1のみで処理され、約35から45日後に既に死亡した対照マウスの寿命の3倍を超えた(図5、パネルB)。
【0120】
本発明のFAPDNA組成物は、ドキソルビシンの腫瘍内取り込みを増加させる。腫瘍組織中のドキソルビシン濃度を測定するために、1週間隔で、組成物1でマウス(n=4)を3回処理し、7日後に、5×105のD2F2腫瘍細胞で攻撃誘発し、16日以後に、ドキソルビシンを静脈内注射した。腫瘍内薬物濃度は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)によって測定した。組成物1で処理されたマウスの組織は、対照と比べて、腫瘍中のドキソルビシンの取り込みの有意な増加を示した(図6、パネルA)。これらの結果は、フルオレセイン、アルブミン及び5−フルオロウラシルで処理されたマウス中の腫瘍で観察された化学的浸潤と合致する(図4、パネルCからD)。
【0121】
FAPに対するDNAワクチンは、創傷治癒を損なわず又は正常組織を損傷しない。FAPは創傷治癒の間に過剰発現されるので、創傷治癒に対する本発明のDNA組成物の効果を調べた。処理されたBALB/cマウス(n=4)マウスの背中に、直径約3mmの円形創傷を与えた。驚くべきことに、処理されたマウスと処理されていないマウスの間で、創傷治癒に有意差は観察されなかった(図6、パネルB)。異なる時点後における、マウス病理学者によるこれらの創傷の組織学的評価によって、創傷治癒プロセスに定性的な異常が存在しないことが明らかとなった。本発明のDNA組成物によって誘導された一切の自己免疫反応を除去するために、以下の組織及び臓器:皮膚、脳、脊髄、筋肉、骨、滑膜、心臓、大動脈、肺動脈、胸腺、脾臓、リンパ節、骨髄、副甲状腺、副腎、腎臓、子宮、膣、陰核腺、舌、肝臓、肺、膵臓、胃、小腸及び大腸の総合的な組織学的検査を実施した。対照マウスと比べて、識別可能な差は観察されなかった。
【0122】
本発明の新規特徴の精神及び範囲から逸脱することなく、上記実施形態の多数の変形及び改変を実施することができる。本明細書に例示されている具体的な実施形態に関する限定は意図されておらず、又は推測すべきでない。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年6月21日に出願された米国仮特許出願第60/815,316号(参照により、本明細書に組み込まれる。)の利益を主張する。
【0002】
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所からのグラント番号CA83856及び国防総省からのグラント番号BC031079の下で、合衆国政府の支援を受けて為された。合衆国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、腫瘍中の間質性繊維芽細胞に対して免疫応答を惹起するのに有効な適切な分子をコードするデオキシリボ核酸(DNA)組成物に関する。より具体的には、本発明は、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)として知られる間質抗原をコードするDNA組成物に関する。本発明は、腫瘍増殖及び腫瘍転移を阻害するために、並びに化学療法剤の細胞性取り込みを増強するためにDNA組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍抗原は癌治療のための理解しにくい標的であることが益々明白になっている。これは、腫瘍細胞の抗原の変異及びMHC−抗原発現の下方制御を原因とする不十分な抗原提示を含み、腫瘍細胞に特有の様々な特徴によって説明することができる。さらに、アポトーシスシグナル伝達経路の異常及びサバイビン、XIAP又はbcl−2ファミリーの抗アポトーシス要素などのアポトーシス阻害剤の上方制御はT細胞媒介性の死滅に対する耐性を付与するのみならず、化学療法剤のアポトーシス誘導効果に対する耐性も付与する。
【0005】
間質性の区画が腫瘍形成及び腫瘍浸潤において重大な役割を果たしているという認識が高まっている。間質細胞は、正常な上皮細胞の形質転換を刺激すること、並びに隣接する細胞外マトリックスを活性化するために及び新生物細胞の選択と増殖を誘導するために成長因子、サイトカイン及び化学誘引物質をやり取りすることが示されている。ある研究において、懸濁液としてマウス中に注射された腫瘍細胞は腫瘍原性でないことが報告されたのに対して、間質を含有する固形腫瘍の断片の注入は腫瘍の増殖をもたらすことが報告された(Singh et al.J.Exp.Med.1992;175:139−146参照)。活性化された細胞外マトリックスは、おそらくβ1インテグリンによって媒介される化学療法耐性を付与し、β1インテグリンはフィブロネクチンに接着して、β1インテグリンによって刺激されるチロシンキナーゼの活性化をもたらし、次いで、β1インテグリンによって刺激されたチロシンキナーゼは、化学療法によって誘導されるアポトーシスを抑制する。この現象は、ドキソルビシン感受性の骨髄腫細胞中で報告されており、ドキソルビシン感受性の骨髄腫細胞はフィブロネクチンへの接着後に耐性を生じた。最近の報告は、腫瘍間質性繊維芽細胞を調節することによって、又は腫瘍間質ネットワークを分配することによって、腫瘍拒絶を達成できることを示している。さらに、報告によれば、腫瘍関連マクロファージ及び繊維芽細胞は、VEGF、TGF−β1及びIL−10などのタンパク質を合成する能力の故に、局所的な免疫抑制環境に寄与している。VEGFは樹状細胞の成熟の阻害剤として機能し、従って、耐性T細胞をもたらす。VEGFは、腫瘍血管新生に関与する主要な因子でもある。VEGFの活性化は、腫瘍−上皮細胞中で、サバイビン及び他の多くのアポトーシス阻害タンパク質の上方制御をもたらし、それらを化学療法のアポトーシス効果から遮蔽する。これに対して、TGF−β1の阻害は、腫瘍の根絶及び転移に対する保護をもたらすことができる。IL−10は樹状細胞の成熟を阻害することにより、Th1細胞によって媒介される細胞媒介性抗腫瘍応答を抑制する。この効果は、ほとんど無効な液性免疫応答の方向に樹状細胞をシフトさせる。
【0006】
繊維芽細胞は、コラーゲン及び他の高分子に富む細胞外マトリックスを分泌する結合組織細胞である。腫瘍間質(すなわち、腫瘍支持組織)中の繊維芽細胞は、セリンプロテアーゼとして機能するII型膜貫通タンパク質である繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を合成する。FAPは、大腸癌、乳癌及び肺癌を伴う間質性繊維芽細胞の90%超において、選択的に過剰発現する。FAPの一過性過剰発現は、創傷治癒の間に及び幾つかの胎児間葉組織中にも観察することができる。さらに、この酵素は、報告によれば、ゼラチン及びI型コラーゲンを切断し、細胞外マトリックスの再構築が示唆されている。報告によれば、FAPの過剰発現は腫瘍増殖の促進及び転移能の増加をもたらすのに対して、抗FAP抗体での処理は腫瘍増殖を阻害する。さらに、繊維芽細胞によって主に産生されるI型コラーゲンの腫瘍間質性発現は、化学療法剤を含む様々な化合物の腫瘍内取り込みと逆相関しており、これにより、化学療法耐性における間質性区画の関与を維持する。
【0007】
疾病病原体が増殖し、病的効果を引き起こせるようになる前に疾病病原体を破壊するために生物の免疫系を刺激する予防剤を極めて限定的に投与することによって、多数の病状に対する長期の保護を与えるためにワクチンが使用されてきた。ワクチン及びワクチン接種のための様々なアプローチが、「Bernard R.Glick and Jack J.Pasternak,Molecular Biotechnology,Principles and Applications of Recombinant DNA,Second Edition,ASM Press pp.253−276(1998)」に記載されている。
【0008】
ワクチン接種は、感染因子が病的な応答を引き起こす前に、感染因子を捜し出して、破壊するために自分の体の免疫系を誘導する手段である。典型的には、ワクチンは、生の、但し弱毒化された感染性因子(ウイルス又は細菌)か、又は感染性因子の死滅された形態かである。生の細菌又はウイルスからなるワクチンは非病原性でなければならない。典型的には、物理的又は化学的処理によって、細菌又はウイルスの培養物が弱毒化(弱化)される。因子は非病原性であるが、ワクチンで処置された対象において免疫応答をなお惹起することができる。
【0009】
免疫応答は、特異的な高分子又は感染性因子の何れかであり得る抗原によって惹起される。これらの抗原は、一般に、タンパク質、多糖、脂質又は糖脂質の何れかであり、これらは、B細胞及びT細胞として知られるリンパ球によって、「外来」として認識される。リンパ球の両タイプが抗原に曝露されることによって、急速な細胞分裂と分化応答が惹起され、曝露されたリンパ球のクローンの形成をもたらす。B細胞は形質細胞を産生し、次いで、感染性因子の上に存在する抗原へ選択的に結合して、病原体を中和又は不活化する抗体(Ab)と呼ばれるタンパク質を産生する(液性免疫)。幾つかの事例において、B細胞応答は、CD4ヘルパーT細胞の補助を必要とする。
【0010】
抗原曝露に応答して形成する特殊化されたT細胞クローンは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり、これは、抗原を提示する病原体及び組織に結合し、これらを排除することができる(細胞媒介性免疫又は細胞性免疫)。幾つかの事例では、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)は、病原体又はその他の外来細胞をエンドサイトーシスによって包み込む。次いで、APCは、細胞由来の抗原を加工し、組織適合性分子:ペプチド複合体の形態で、これらの抗原をCTL上のT細胞受容体(TCR)に提示して、免疫応答を刺激する。
【0011】
特異的な抗体の形成を特徴とする液性免疫は、一般に、急性の細菌感染及びウイルスからの反復感染に対して最も効果的であるのに対して、細胞媒介性免疫はウイルス感染、慢性細胞内細菌感染及び真菌感染に対して最も効果的である。細胞免疫は、ある種の癌に対して保護することが知られており、、及び臓器移植の拒絶の原因である。
【0012】
以前の感染に由来する抗原に対する抗体は、極めて長期間にわたって血中で検出可能な状態を保ち、従って、病原体への以前の曝露を決定する手段を与える。同じ病原体へ再度曝露されると、病原因子が増殖し、病原性応答を引き起こすことができるようになる前に、病原性因子を排除することによって、免疫系は再感染を効果的に抑制する。
【0013】
病原体によって惹起される同じ免疫応答は、時には、病原体と同じ抗原を提示する非病原性因子によっても産生され得る。このようにして、対象は、感染を以前に撃退していなくても、病原体に対するその後の曝露に対して保護され得る。
【0014】
しかしながら、ワクチン形成のために必要とされるように、全ての感染性因子を容易に培養し、不活化できるわけではない。現代の組み換えDNA技術によって、この限界の克服を目指して、新しいワクチンを設計することが可能となった。病原性遺伝子を欠如する感染性因子を作製することが可能であり、従って、生物の生きた非病原性形態をワクチンとして使用することが可能となる。病原性担体の細胞表面抗原を提示するために、イー・コリ(E.coli)などの相対的に非病原性の生物を操作することも可能である。このような形質転換された担体をワクチン接種された対象の免疫系は、「だまされて」病原体に対する抗体を形成する。病原性因子の抗原性タンパク質を操作し、非病原性の種内で発現させることが可能であり、「サブユニットワクチン」を作製するために、抗原性タンパク質を単離及び精製することができる。サブユニットワクチンは、安定であり、安全で、化学的に十分に確定されているという利点を有するが、サブユニットワクチンの製造は非常に費用がかかり得る。
【0015】
近年、ワクチンに対する新たなアプローチが出現し、広く遺伝的免疫法と称されている。このアプローチでは、病原性因子の抗原をコードする核酸(ポリヌクレオチド)が、免疫化されるべき対象中の細胞内へ作用可能に挿入される。処理された細胞、好ましくは、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC5)は形質転換され、病原体の抗原性タンパク質を産生する。インビボで産生されたこれらの抗原は、次いで、所望の免疫応答を宿主内に引き起こす。このような遺伝子ワクチン中で使用される遺伝物質はDNA又はRNA構築物の何れかであり得る。しばしば、抗原をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子の挿入、複製又は発現を強化するために、他のプロモーターポリヌクレオチド配列と組み合わせて導入される。
【0016】
抗原遺伝子をコードするDNAワクチンは、様々な送達系によって、対象の宿主細胞中に導入することができる。これらの送達系には、原核生物性送達系とウイルス性送達系が含まれる。例えば、1つのアプローチは、宿主細胞を接種するために、新しい遺伝物質を取り込んだワクシニアウイルスなどのウイルスベクターを使用することである。あるいは、遺伝物質はプラスミドベクター中に取り込ませることが可能であり、又は「裸の」ポリヌクレオチドとして、すなわち、単に精製されたDNAとして、宿主細胞へ直接送達することが可能である。さらに、DNAは、サルモネラ・チフィムリウムなどの弱毒化された細菌中へ安定に形質移入することができる。形質転換されたサルモネラで患者を経口的にワクチン接種すると、細菌は腸内のパイエル板(すなわち、二次リンパ組織)へ輸送され、次いで、免疫応答を刺激する。
【0017】
DNAワクチンは、遺伝病及び癌など、伝統的な病原体によって引き起こされない病状に対して免疫化するための機会を提供する。典型的には、遺伝子癌ワクチンは、抗原をコードする遺伝子をAPC中に導入し、このようにして形質転換されたAPCは腫瘍細胞の特異的な種類に対する抗原を産生する。従って、多数の癌の種類に対する効果的な一般的ワクチンは、それに対して免疫化されるべき癌細胞の各種類に対する多数の個別のワクチンを必要とし得る。
【0018】
癌の様々な形態に対して免疫化するための一般的に有効なDNA組成物(ワクチンなど)に対する継続的な要望が存在する。本発明はこの要望を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、マウスFAPDNA構築物及び化学療法耐性腫瘍細胞株の性質決定である。パネルAは、pcDNA3.1/V5−His−TOPOベクター(pFAP)のEcoRI部位中に挿入された完全なマウスFAPをコードするプラスミドcDNAを図示している。パネルBは、CT26細胞の一過性形質移入後に、ウェスタンブロッティングによってFAPタンパク質発現が示されたことを示している。パネルCは、表記濃度の様々な化学療法剤で処理されたCT26大腸癌細胞及びD2F2乳癌細胞を示している。温置の48時間後、ヘキスト−33342色素染色によって、核のアポトーシスを評価した。バーは、3つのアッセイの平均+標準偏差を示している。
【図2】図2Aから図2Cは、FAPをベースとするDNA組成物の腫瘍増殖に対する効果を示している。予防的設定:材料と方法に記載されているとおりに実施された1週間隔での3回のワクチン接種の最後の接種から10日後に、3×104のCT26細胞の致死用量を皮下(s.c.)注射によって(図2A)、又は3×105のD2F2細胞の致死用量を正所性に(o.t.)(図2B)、BALB/cマウス(n=8)を攻撃誘発した。8匹のマウスの平均腫瘍増殖が図示されている。平均±SE、p<0.01。治療的設定:BALB/cマウス(n=8)にまず、105のCT26細胞を静脈内(i.v.)注射し、次いで、一旦肺転移が確立されたら、3日後及び10日後に処理を施した。18日後に、肺を切り出し、秤量し(正常な肺重量は約0.2gであった。)、転移に関して検査し、視覚的評価によってスコア付けを行った。融合された転移によって覆われた肺表面のパーセントを以下のように評価した。0=0%、1=<20%、2=20−50%、3=>50%、p<0.01。(図2C)。
【図3】図3は、CD8+T細胞によって誘導された細胞毒性を示している。(A)被処理マウスでのエフェクター相の間の抗体介在性欠失の寿命に対する効果が図示されている(*は対照群と比較した統計的有意性を表す。p<0.01)。(B)処理されたマウスの脾臓からCD8+T細胞を精製し、γ線照射された腫瘍標的細胞で刺激し、次いで、pGFP又はpGFP/pFap形質移入されたCT26細胞とともに48時間温置した。ヘキスト−33342色素での染色により、核のアポトーシスを以下のように評価した。核のアポトーシス段階0:アポトーシスなし;段階1:大規模なクロマチン凝集;段階2a:クロマチンの断片化;段階2b:アポトーシス体。(C、D)pFap及び空のベクターによって免疫化されたマウス(n=3)由来の脾細胞を、pFapで形質移入されたA31繊維芽細胞で5日間刺激し、次いで、51Cr放出アッセイに供した。(D)抗MHCクラスI抗体とともに、エフェクター及び標的細胞を共温置した(平均+SD、*は空のベクターと比べて統計的に有意であることを示す。p<0.05)。(E)抗CD3+PerCP−Cy5.5及び抗CD8+FITC抗体で染色された、被処理マウス(n=2)のCT26腫瘍の単一細胞懸濁液のFACS分析。2つの実験のうちの1つが図示されている。(F)抗CD8FITC抗体及びDAPI核染色で染色された、pFap及び空のベクターで処理されたマウスのCT26腫瘍の代表的な切片。
【図4】図4は、FAP/I型コラーゲンの発現及びフルオレセイン/アルブミン/5−FUの腫瘍内取り込みを示している。(A)FAPの免疫組織化学的分析(上のパネル)及び被処理マウスの皮下CT26腫瘍中でのI型コラーゲン(下のパネル)発現。(B)被処理マウスの皮下CT26腫瘍中でのFAP及びI型コラーゲンのイムノブロット。(C、D、E)棒グラフは、フルオレセインの腹腔内注射、エバンスブルーアルブミンの静脈内注射又は14C−5−フルオロウラシルの静脈内注射後における、処理されたBALB/cマウス(n=4)から得た皮下CT26腫瘍のホモジネートの光学密度又はシンチレーション測定の平均+SEを示している。それぞれ、P<0.05、P<0.01及びP<0.05。
【図5】図5は、組み合わされた生物及び化学療法の抗転移効果及び副作用を示している。(A)予防的設定。対照ワクチン、PBS又は本発明のワクチンを用いた、1週間隔での3回のワクチン接種の最後の接種から10日後に、3×105のD2F2細胞で正所性に、BALB/cマウス(n=8;平均±SE)を攻撃誘発した。5、10及び15日後に、表記マウスをドキソルビシンで処理した。(B)治療的設定。105のD2F2腫瘍細胞の静脈内注射から5日後に、BALB/cマウス(n=8)をpFapワクチン又は対照ワクチンで毎週処理した。各免疫化から1日後に、表記のとおり、マウスをドキソルビシンで静脈内に処理した(*は、対照群と比較した有意性を示しており、p<0.0001、**は、対照、対照/Dox、pFap及びpFap/Dox群と比較した有意性を示している、p<0.0001)。
【図6】(A)腫瘍内のドキソルビシン濃度:処理されたBALB/cマウス(n=4)に、5×105のD2F2細胞を皮下に攻撃誘発し、プールされた腫瘍可溶化液中のドキソルビシン濃度を、LC−MSによって、16日後に測定した(2つの実験の代表、平均+標準偏差、P<0.001)。(B)処理されたマウス(n=4)の背中上方に、3mmの直径の円形の創傷を与え、完全な創傷封鎖までの平均時間を測定した(平均+標準偏差)。
【図7】図7は、ヒトFAPをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号1)を示している。
【図8】図8は、ヒトFAPのアミノ酸残基配列(配列番号2)を示している。
【図9】図9は、マウスFAPをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号3)を示している。
【図10】図10は、マウスFAPのアミノ酸残基配列(配列番号4)を示している。
【図11】図11は、ヒトIL−2をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号5)を示している。
【図12】図12は、ヒトIL−2のアミノ酸残基配列(配列番号6)を示している。
【図13】図13は、マウスIL−2をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号7)を示している。
【図14】図14は、マウスIL−2のアミノ酸残基配列(配列番号8)を示している。
【図15】図15は、ヒトCCL21をコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号9)を示している。
【図16】図16は、ヒトCCL21のアミノ酸残基配列(配列番号10)を示している。
【図17】図17は、マウスCCL21bをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号11)を示している。
【図18】図18は、マウスCCL21bのアミノ酸残基配列(配列番号12)を示している。
【図19】図19は、ヒトCCL21及びマウスCCL21b間でのアミノ酸配列の類似性を示している。
【図20】図20は、マウスCCL21aをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号13)を示している。
【図21】図21は、マウスCCL21aのアミノ酸残基配列(配列番号14)を示している。
【図22】図22は、ヒトCD40Lをコードする核酸のヌクレオチド配列(配列番号15)を示している。
【図23】図23は、ヒトCD40Lのアミノ酸残基配列(配列番号16)を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)として知られる腫瘍間質抗原を標的とする、腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害するのに有効なDNA組成物を提供する。このDNA組成物は、FAPの少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物を含み、該DNA構築物は免疫細胞中において発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。DNA構築物は、FAPの単一のエピトープ、FAPの2つ若しくはそれ以上のエピトープを含むポリペプチド、完全なFAPタンパク質又は腫瘍間質細胞などのFAPを発現する細胞に対して所望の免疫応答を惹起するこれらのあらゆる一部をコードし得る。本発明の組成物によって惹起された免疫応答は、腫瘍増殖及び腫瘍転移の阻害をもたらす。
【0037】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される「DNA構築物」という用語は、FAPエピトープ、FAPタンパク質、IL−2、CCL21などの目的のタンパク質又はポリペプチドをコードするDNA構造を表す。DNA構築物には、直鎖DNA及びプラスミドDNA並びに細胞又はウイルスの遺伝物質中に取り込まれたDNAなど、標的細胞中で転写されることができるいずれかのDNAが含まれる。好ましくは、DNA構築物は、ウイルス又は細菌送達ベクター、例えば、非病原性である弱毒化されたウイルスベクター又は細菌ベクター中に取り込まれたDNAである。対象が本発明の組成物で処理されると、
FAPをコードするDNAが免疫細胞(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)に送達され、次いで、免疫細胞がFAPタンパク質を発現する。FAPDNAのウイルス及び細菌担体は、それ自体、FAPを発現しない。
【0038】
本発明のDNA組成物は、腫瘍間質細胞(例えば、間質性繊維芽細胞)など、FAP抗原を提示する細胞に対して活性を有するCTLの形成を刺激する。このような腫瘍間質細胞は、本発明のDNA組成物による免疫化に応答して産生されるCTLによって選択的に標的とされる。本発明の組成物は、I型コラーゲンの腫瘍間質性発現も低減することができ、続いて、これは化学療法剤の取り込みを増強することができる。
【0039】
本明細書において使用される「免疫」という用語は、抗原を発現している細胞に対する長期の免疫学的保護を表す。「免疫化」という用語は、処理された対象中の抗原を発現している細胞に対して免疫をもたらす、抗原への曝露を表す。
【0040】
「FAPタンパク質」という用語は、ヒトFAP、又はヒトFAPに対して少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを表す。「FAPDNA」という用語は、ヒトFAPをコードするDNA又はヒトFAPに対して少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドをコードするDNAを表す。
【0041】
本発明のDNA組成物において有用なDNA構築物は、FAPの1つ又はそれ以上のエピトープを含むポリペプチドをコードし、及び免疫細胞中での遺伝子発現のために必要とされる制御要素に作用可能に連結されている核酸を好ましくは含む。好ましくは、DNA構築物は、完全長FAPタンパク質をコードし、又は完全長FAPタンパク質と少なくとも80%の配列類似性の高い程度を有し、及びFAPの少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドをコードする。有用なDNA構築物は、好ましくは、免疫細胞中でのヌクレオチドの発現に必要な制御要素を含む。このような要素には、例えば、プロモーター、開始コドン、停止コドン及びポリアデニル化シグナルが含まれる。さらに、免疫原性標的タンパク質をコードする配列の発現のために、エンハンサーがしばしば必要とされる。本分野において公知であるように、これらの要素は、好ましくは、所望のタンパク質をコードする配列に作用可能に連結される。制御要素が投与されるべき種内において作用可能である制御要素が好ましく選択される。好ましくは、DNA構築物はプラスミドの形態であり、又はウイルス若しくは細菌ベクター中に取り込まれる。FAPタンパク質をコードするDNA構築物は、本分野において周知の方法を用いて、形質移入によって、まず、細菌ベクター中に取り込まれ得る。続いて、形質転換された細菌は、細菌の遺伝物質内にFAPDNAを含む細菌のそのまま使用できる株を提供するために培養することができる。このような形質転換された細菌の培養物は、本発明のDNA組成物に対してそのまま使用できる源を与える。
【0042】
本発明のDNA組成物中に、FAPをコードするヌクレオチド配列の一部として開始コドン及び停止コドンが好ましく含められる。開始及び停止コドンは、コード配列のフレーム領域内に存在しなければならない。
【0043】
本発明の組成物中に含められるプロモーター及びポリアデニル化シグナルは、免疫されるべき対象の細胞内で機能的であるように好ましく選択される。
【0044】
本発明の組成物において、特に、ヒト用の遺伝子ワクチンDNA組成物の作製において有用なプロモーターの例には、サルウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIV末端反復配列(LTR)プロモーターなどのヒト免疫不全ウイルス(HIV)、モロニーウイルス、CMV最初期プロモーターなどのサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV),ラウス肉腫ウイルス(RSV)由来のプロモーター並びにヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン及びヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来のプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本発明のDNA組成物において、特に、ヒト用のDNA組成物の作製において有用なポリアデニル化シグナルの例には、SV40ポリアデニル化シグナル及びLTRポリアデニル化シグナルが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
DNA発現のために必要とされる制御要素に加えて、DNA分子中に他の要素を含めることも可能である。このような追加要素には、エンハンサーが含まれる。エンハンサーは、例えば、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン及びCMV、RSV及びEBV由来のものなどのウイルス性エンハンサーであり得る。
【0047】
制御配列及びコドンは、一般に、種依存性であり、従って、タンパク質産生を最大化するために、制御配列及びコドンは免疫化されるべき種内で効果的であるように、好ましく選択される。当業者は、所定の対象種内で機能的であるDNA構築物を作製することができる。
【0048】
本組成物において有用なDNA構築物は、「Restifo et al.Gene Therapy 2000;7:89−92」(その関連する開示内容は、参照により組み込まれる。)に定義されているように「裸の」DNAとすることができる。好ましくは、DNA構築物はプラスミドの形態であり、又は弱毒化されたウイルス若しくは弱毒化された細菌の遺伝物質中に取り込まれたDNAの形態である。有用な送達ビヒクル又は担体には、生物分解性微小カプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)及び裸のDNA構築物用のリポソーム並びに遺伝的に操作された、弱毒化された生のウイルス又は細菌用の生理的に許容される様々な緩衝液が含まれる。
【0049】
FAPDNA構築物を取り込むように形質転換され得る弱毒化された適切な生の細菌ベクターの例には、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、シゲラ(Shigella)種、バチルス(Bacillus)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、ビブリオ・コレラエ(Vibrio cholerae)、カンピロバクター(Campylobacter)種、リステリア(Listeria)種又は本分野において公知であるあらゆる他の適切な細菌ベクターが含まれる。特に、組成物が経口投与用である場合には、ベクターは、好ましくは、弱毒化された生のサルモネラ・チフィムリウムベクターである。好ましい弱毒化された生のサルモネラ・チフィムリウムには、SL7207などのAroA−株又はRE88などの二重に弱毒化されたAroA−、dam−株が含まれる。二重に弱毒化されたAroA−、dam−サルモネラ・チフィムリウムは、特に好ましいベクターである。
【0050】
外来DNA構築物で生の細菌ベクターを形質転換する方法は、本分野において十分に記載されている。例えば、「Joseph Sambrook and David W. Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2001)(Sambrook and Russell)」を参照されたい。形質転換後、細菌が複製するにつれて、生物の固有のDNAとともに外来DNAが複製されるように、外来性遺伝物質は細菌の遺伝物質中に取り込まれる。従って、一旦細菌が形質転換されたら、生物の正常な複製プロセスが外来DNAの即座の供給を提供する。
【0051】
好ましいウイルスベクターには、バクテリオファージ、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、シンドビスウイルス、ポリオウイルス、ワクシニアウイルス及びトリポックスが含まれる。外来DNA構築物でウイルスベクターを形質転換する方法も、本分野において十分に記載されている。上記Sambrook及びRussellを参照されたい。
【0052】
有用なリポソーム担体ビヒクルは、親油性物質及び内部水性部分から形成される膜部分を有する単層又は多層小胞である。標的細胞に送達されるべきポリヌクレオチド物質を含有するために、本発明では、水性部分が使用される。リポソーム形成物質は、四級アンモニウム基などの陽イオン性基と及び約6から約30個の炭素原子を有する飽和又は不飽和アルキル基などの1つ又はそれ以上の親油性基とを有することが一般に好ましい。適切な物質の一つの群が欧州特許公開0187702に記載されており、Wolffらに付与された米国特許第6,228,844号にさらに論述されている(これらの関連する開示内容は、参照により組み込まれる。)。他の多くの適切なリポソーム形成陽イオン性脂質化合物が文献中に記載されている。例えば、「L.Stamatatos et al.,Biochemistry1988;27:3917−3925」及び「H.Eibl et al.,Biophysical Chemistry 1979;10:261−271」を参照されたい。あるいは、ポリラクチド−コグリコリド生物分解性小球体などの小球体を使用することができる。本分野において公知であるように、核酸を組織に送達するために、核酸構築物はリポソーム若しくは小球体で封入され又はその他複合体化される。
【0053】
他の有用な担体ビヒクルには、「Wang et al.,Nat.Mater.,2004;3(3):190−6,Epub 2004 Feb.15」(その関連する開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。)によって記載されているように、生分解性ポリ(オルトエステル)材料を含むポリマー性小球体が含まれる。
【0054】
好ましくは、本発明のための組成物は、ヒトFAP又はその機能的相同体をコードするDNA構築物を含む。FAPの機能的相同体は、好ましくは、ヒトFAPに対して少なくとも約80%のアミノ酸残基配列類似性を有し、より好ましくは、少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%の配列類似性を有する。
【0055】
GenBankは、国立衛生研究所(NIH)の遺伝子配列データベースであり、これは、公的に入手可能な全てのDNA配列に注釈を付けて収集したものである。GenBankは、DNA DataBank of Japan(DDBJ)、European Molecular Biology Laboratory(EMBL)及びNational Center for Biotechnology InformationのGenBankの協力によるInternational Nucleotide Sequence Database Collaborationの一部である。
【0056】
ヒトFAPをコードするcDNAの核酸配列、配列番号1(図7)は、GenBank受付番号BC026250で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。ヒトFAPの対応するアミノ酸残基配列は、配列番号2である(図8)。
【0057】
マウスFAPをコードするDNAの核酸配列、配列番号3(図9)は、GenBank受付番号BC019190で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。マウスFAPの対応するアミノ酸残基配列は配列番号4である(図10)。
【0058】
遺伝子コードの固有の縮重のために、本発明の実施において、ヒトFAPに対するアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を使用することができる。このようなDNA配列には、ヒトFAPにもハイブリッド形成することができるDNA配列が含まれる。
【0059】
本発明において使用することができる、ヒトFAPをコードするDNA配列は、配列番号1中のヌクレオチド残基に対して異なるヌクレオチド残基の欠失、付加又は置換を有する核酸を含み、該核酸は同じFAP遺伝子産物をコードする配列をもたらす。ヒトFAPの機能的に等価な相同体をコードするDNA分子も、本発明のDNA組成物中に使用することができる。
【0060】
核酸によってコードされる遺伝子産物は、サイレントな変化をもたらし、従って、機能的に等価なFAPを産生するアミノ酸残基の欠失、付加又は置換も、FAPアミノ酸残基配列内に含有し得る。このようなアミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性に基づいて為され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正に帯電したアミノ酸には、リジン及びアルギニンが含まれ、類似の疎水性値を有する非帯電極性頭部基を有するアミノ酸には、以下のもの、すなわち、ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;フェニルアラニン、チロシンが含まれる。本明細書において使用される、機能的に等価なFAPは、T細胞によって認識された際に、これらの同じT細胞がFAP発現細胞上に提示されたFAPエピトープを認識できるようにする1つ又はそれ以上のエピトープを含むタンパク質を表す。好ましい実施形態において、機能的に等価なFAPは、ヒトFAPのアミノ酸残基配列(配列番号2)と少なくとも約80%の配列類似性、例えば、ヒトFAPに対して少なくとも90%の配列類似性又は少なくとも約95%の配列類似性を有するアミノ酸残基配列を有する。
【0061】
FAP遺伝子産物のプロセッシング及び発現を修飾する変化などの(但し、これに限定されない)様々な目的のために、(元来のFAPcDNA、配列番号1と比べて)FAPコード配列を変化させるために、FAPをコードするDNA構築物を操作することができる。例えば、新たな認識部位を挿入するために、グリコシル化パターン、リン酸化などを変化させるために、本分野において周知の技術、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて、DNA中に変異を導入し得る。
【0062】
好ましい一実施形態において、本発明のDNA組成物は、FAPをコードするDNA構築物及び少なくとも1つの免疫エフェクタータンパク質を操作可能にコードするDNA構築物を含み、両構築物は免疫細胞中において発現可能である。本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される「免疫エフェクタータンパク質」という用語は、免疫系経路の制御に関与するタンパク質を意味する。好ましくは、免疫エフェクタータンパク質はサイトカインである。
【0063】
サイトカインは、細胞増殖、細胞分化、免疫応答の制御、造血及び炎症応答など、他の細胞の挙動に影響を与えることができる、細胞によって産生されるタンパク質及びポリペプチドである。サイトカインは、ケモカイン、ヘマトポエチン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子及び割り当てられていない様々な分子を含む多数のファミリーに分類されてきた。一般に、「Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised Edition,Oxford University Press,2000」及び「C.A.Janeway,P.Travers,M.Walport and M.Schlomchik,Immunobiology,Fifth Edition,Garland Publishing,2001」(以下、「Janeway and Travers」)を参照されたい。サイトカインの正確な分類は、「Janeway and Travers,Appendix III,ページ677−679」(その関連する開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0064】
ヘマトポエチンには、例えば、エリスロポエチン、インターロイキン−2(IL−2、T細胞によって産生され、T細胞増殖に関与する133アミノ酸タンパク質)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、IL−15(腸の上皮、T細胞及びNK細胞の増殖を刺激する114アミノ酸のIL−2様タンパク質)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、オンコスタチンM(OSM)及び白血病抑制因子(LIF)が含まれる。
【0065】
インターフェロンには、例えば、IFN−α、IFN−β及びIFN−γ(T細胞及びNK細胞によって産生される143アミノ酸のホモ二量体タンパク質であり、マクロファージの活性化、MHC分子の増加した発現及び抗原プロセッシング成分、IGクラスのスイッチング並びにTH2の抑制)に関与している。)が含まれる。
【0066】
免疫グロブリンには、例えば、B7.1(CD80)及びB7.2(CD86)が含まれ、何れもT細胞応答を共同刺激する。
【0067】
腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーには、例えば、TNF−α、TNF−β(リンホトキシン)、リンホトキシン−β(LT−β)、CD40リガンド、Fasリガンド、CD27リガンド、CD30リガンド、4−1BBリガンド、Trail及びOPGリガンドが含まれる。
【0068】
CD40リガンド(CD40L)の生物学的な役割、特に、T細胞活性化の共同刺激の間における、抗原提示細胞上に発現されたCD40とのその相互作用は、本分野において周知である。CD40は、全ての成熟したB細胞、殆どの成熟したB細胞悪性腫瘍及び幾つかの初期のB細胞急性リンパ球性白血病の表面上に発現される48kDaの糖タンパク質であるが、形質細胞上には発現されない(Clark, Tissue Antigens 1990,35:33−36)。約35kDaのII型膜タンパク質であるCD40Lは、抗原認識の際に、T細胞の表面上に発現される。TNFファミリーのメンバーは、ホモ三量体として発現される場合に、最も生物学的に活性が高い。CD40Lは、この点に関して例外がなく、このリガンドの完全な細胞外ドメインのN末端に融合された33アミノ酸のロイシンジッパーモチーフの修飾により、ホモ三量体(CD40LT)として発現され得る。高度に免疫原性のモデル抗原β−ガラクトシダーゼをコードするDNAでマウスを処理した場合に、CD40LTDNAは、IFN−γ及び細胞溶解性T細胞活性の誘導などの細胞性免疫応答を増強することが、「Gurunathan et al.J.Immunol.1998,161:4563」によって報告されている。
【0069】
CD40LTは、腫瘍自己抗原に対する効果的な防御免疫を誘導するのに必要なT細胞の活性化における重要な因子である。抗原が搭載されたMHCクラスI複合体が、一旦、樹状細胞(DC)によって取り込まれ、ナイーブT細胞に提示されると、最初の抗原シグナルがT細胞受容体(TCR)を介して送達され、続いて、CD40LTが上方制御される。T細胞表面上で、CD40LTは、次いで、CD40−CD40LT相互作用を介して、DCに対して共同刺激活性を誘導する。このようにして抗原刺激されて、これらのAPCは、共同刺激分子B7.1(CD80)及びB7.2(CD86)を発現することができ、これらはCD28との相互作用を介して、第二の共同刺激シグナルをT細胞に送信する(炎症促進性のサイトカインINF−γ及びIL12を同時に産生するために、及びエフェクター機能を実施するために、T細胞の完全な活性化をもたらす現象)。
【0070】
特定のファミリーに割り当てられない様々なサイトカインには、例えば、腫瘍増殖因子−β(TGF−β)、IL−1α、IL−1β、IL−1RA、IL−10、IL−12(ナチュラルキラー細胞刺激因子;NK細胞の活性化及びTH1様細胞へのT細胞の分化の誘導に関与する197アミノ酸鎖及び306アミノ酸鎖を有するヘテロ二量体)、マクロファージ阻止因子(MIF)、IL−16、IL−17(上皮、内皮及び繊維芽細胞中でのサイトカイン産生を誘導するサイトカイン産生誘導因子)及びIL−18が含まれる。
【0071】
ケモカインは、白血球(例えば、貪食細胞及びリンパ球)の遊走など、様々な細胞の遊走及び活性化を刺激する、比較的小さな化学誘引性タンパク質及びポリペプチドであるサイトカインのファミリーである。ケモカインは、炎症及び他の免疫応答において役割を果たしている。ケモカインは、Cケモカイン、CCケモカイン、CXCケモカイン及びCX3Cケモカインを含む多数のファミリーに分類されてきた。名前は、分子中のシステイン(C)残基の数及び間隔を表す。Cケモカインは1つのシステインを有し、CCケモカインは2つの隣接するシステインを有し、CXCケモカインは単一のアミノ酸残基によって隔てられた2つのシステインを有し、CX3Cケモカインは3つのアミノ酸残基によって隔てられた2つのシステインを有する。ケモカインは、細胞表面上に存在する多数のケモカイン受容体と相互作用する。「Janeway and Travers, Appendix IV,ページ680」(参照により、本明細書中に組み込まれる。)を参照されたい。
【0072】
さらに、ケモカインは免疫調節活性を有することができ、癌に対する免疫応答に関与していると推測されている。例えば、ヒト二次リンパ組織ケモカイン(SLC)のマウス類縁体であるマウス6Ckine/SLC(現在、一般にCCL21と称されている。)は、C26大腸癌腫瘍細胞株中で抗腫瘍応答を誘導することが報告されている。「Vicari et al.J.Immunol.2000;165(4):1992−2000」を参照されたい。ヒトCCL21及びそのマウス対応物である6Ckine/SLCは、CCR7ケモカイン受容体と相互作用するCCケモカインとして分類されている。マウス6Ckine/SLC(muCCL21)は、Vicariらによって、CXCR3ケモカイン受容体に対するリガンドであることも報告されている。ヒトCCL21、マウスmuCCL21及び様々な他のケモカインは、樹状細胞、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などの様々な免疫系細胞の制御に関与していると推定されている。
【0073】
Mig及びIP−10は、活性化されたT細胞と関連するCXCR3受容体と相互作用するCXCケモカインである。リンホタクチンは、T細胞及びNK細胞と関連するXCR1受容体と相互作用するCケモカインである。フラクタルキンは、T細胞、単球及び好中球と関連するCX3CR1受容体と相互作用するCX3Cケモカインである。
【0074】
本発明のDNA組成物によってコードされるべき特に好ましい免疫エフェクタータンパク質には、サイトカインIL−2(ヘマトポエチン)、CCL21(ケモカイン)及びCD40リガンド三量体(CD40LT)などのCD40リガンド、TNFファミリーサイトカインが含まれる。
【0075】
ヒトIL−2に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号BC070338に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。マウスIL−2に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM 008366に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0076】
ヒトIL−2をコードする核酸配列は図11に示されており(配列番号5)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号6)は図12に与えられている。マウスIL−2をコードする核酸配列は図13に示されており(配列番号7)、その対応するアミノ酸配列(配列番号8)は図14に与えられている。
【0077】
ヒトCCL21に対するDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号AB002409に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれている。マウスCCL2Ia変異体のDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM011335に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。マウスCCL21b変異体のDNA及びタンパク質配列は、GenBank受付番号NM011124に公開されており、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0078】
ヒトCCL21をコードする核酸配列は図15に示されており(配列番号9)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号10)は図16に与えられている。マウスCCL21(CCL21b変異体)をコードする核酸配列は図17に与えられており(配列番号11)、その対応するアミノ酸配列(配列番号12)は図18に与えられている。
【0079】
ヒトCCL21とそのマウス対応物(マウスCCL21b)間のタンパク質配列類似性は、図19に示されている。ヒトCCL21(配列番号10)及びマウスCCL21b(配列番号12)間には、約73%のアミノ酸残基配列同一性が存在する。
【0080】
マウスCCL21のCCL21a変異体をコードする核酸配列は図20に示されており(配列番号13)、その対応するアミノ酸残基配列(配列番号14)は図21に与えられている。
【0081】
ヒトCD40リガンド(CD40L)は261アミノ酸のタンパク質であり、その最も活性が高い形態において三量体(CD40LT)として存在する。ヒトCD40L(CD154としても知られる。)をコードするDNA配列は、GenBank受付番号NM000074で公開されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる(図22、配列番号15)。CD40Lの対応するタンパク質配列は図23に示されている(配列番号16)。
【0082】
本発明の方法の態様は、FAPをコードし、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であるDNA構築物を含むDNA組成物を哺乳動物に投与することを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。組成物は、組成物が調製される具体的な剤形に応じて、経口、筋肉内、鼻内、腹腔内、皮下、皮内又は局所投与することができる。好ましくは、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、カプセル、錠剤などの経口投与可能な剤形で調製される。
【0083】
本発明のDNA組成物は、組成物で処理された患者中での腫瘍増殖及び/又は腫瘍転移の長期阻害を与えるために使用することができる。好ましい実施形態において、DNA組成物は、抗腫瘍化学療法剤と組み合わせて投与される。DNA組成物は、組み合わされた剤形中で化学療法剤と一緒に投与することが可能であり、又は組成物及び化学療法剤は、別個の剤形で、及び投与されている化学療法剤の薬理学に適合された隔てられた投薬間隔で投与することが可能である。
【0084】
本発明のDNA組成物と組み合わせるのに有用な化学療法剤には、ドキソルビシン、パクリタキセル、シクロホスファミド、エトポシド、5−フルオロウラシル、メトトレキサートなどの抗腫瘍剤が含まれる。
【0085】
本発明のDNA組成物は、組成物の調合及び投与を補助するために、水、生理的食塩水、デキストロース、グリセロールなど及びこれらの組み合わせなどの医薬として許容される担体又は賦形剤とともに好ましく調合される。組成物は、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤及び医薬分野において周知である他の補助物質などの補助物質も含有することが可能である。
【0086】
本発明の組成物は、医薬として許容される担体中の溶液又は懸濁液として、FAPをコードするDNAの重量を基礎として約1から約10μg/mLの範囲のDNA濃度で、ヒトなどの哺乳動物に好ましく経口投与される。本発明のDNA組成物に対する特に好ましい剤形は、適切な緩衝溶液中の弱毒化されたFAP形質移入された細菌の懸濁液であり、これは経口投与のために調合することができる。組成物の適切な投薬量は、処理されるべき対象、組成物の活性、及び1つには、組成物を投与し、又は組成物の投与を要請する医療従事者の判断に依存する。
【0087】
哺乳動物に投与されるべき投薬量及び2回以上の投与が使用される場合には、投与のスケジュールは、哺乳類ごとに及び剤形に応じて変動する。有効な投薬量及び投与スケジュールは、本分野において周知であるように、臨床的な用量応答研究を通じて経験的に決定することができる。FAP抗原を提示する細胞に対する哺乳動物中の免疫応答を惹起するために、免疫細胞中にFAP発現の十分な量を与えるように、投薬量及び投薬スケジュールが選択される。好ましくは、対象哺乳動物に投与される組成物の投薬量は、少なくとも1ヶ月、例えば少なくとも6ヶ月又は少なくとも約1年の期間にわたって継続するFAP提示細胞に対する免疫応答を持続するために、哺乳動物の免疫細胞中でFAP抗原の十分な量の発現を惹起する。
【0088】
本発明の組成物は、アンプル、瓶又はバイアルなどの適切に滅菌された溶液中に、複数投薬形態又は単位投薬形態の何れかで梱包することができる。容器は、本発明のDNA組成物が充填された後に好ましくは密閉される。好ましくは、組成物は、ラベルが貼付された容器中に梱包され、該ラベルは組成物を特定し、適切な法律に基づく組成物の承認を反映する米国食品医薬品局などの政府関連機関によって規定された形態の通知、投薬情報などを有する。ラベルは、好ましくは、患者に組成物を投与する医療専門家に対して有用である組成物についての情報を含有する。パッケージは、組成物の投与、指示、適応症及び必要とされる何らかの必要な警告に関連する印刷された情報資料も好ましくは含有する。
【0089】
以下の実施例は、本発明の特徴及び実施形態をさらに例示するために提供されており、限定を意図するものではない。
【0090】
材料、方法及び実施例
動物、細菌株及び細胞株。6から8週齢の雌のBALB/cマウスは、Scripps Research Institute(TSRI)Rodent Breeding Facilityから入手した。全ての動物実験は、国立衛生研究所の動物実験の世話及び使用に関する指針に従って行われ、TSRI動物実験委員会によって承認された。二重弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム株RE88(AroA−dam−)は、Remedyne Corporation(Santa Barbara,California)によって提供された。マウスD2F2乳癌細胞は、Dr.Wei−ZenWei,Karmanos Cancer Center,Detroit,MIから入手し、CT26大腸癌細胞はATCC(Manassas,Virginia)から入手した後、化学耐性サブクローンを得るために数ヶ月にわたって培養した。
【0091】
マウスCT26及びD2F2癌細胞は、1%DMSO、エトポシド、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、ビンブラスチン又はパクリタキセル(Sigma,St.Louis,Missouri)の存在下で、表記濃度で培養した。48時間後、DNA特異的なヘキスト33342色素(2μM;Molecular Probes,Eugene,Oregon)との温置後に、アポトーシスを生じた核を計数した。
【0092】
CT26大腸癌及びD2F2乳癌細胞の2つのクローンは、それぞれ、化学療法耐性を獲得した(図1、パネルC参照)。5つの異なるアポトーシス誘導性化学療法剤をCT26大腸癌クローンに添加すると(図1、パネルC)、ビンブラスチンのみが僅かなアポトーシス効果を誘導することができたが、5μMの極めて高い濃度においてのみ誘導することができた。元の親CT26細胞株(ATCC#CLR−2326)は5−フルオロウラシル(5−FU)に対して約1.85μMのIC50を有していたのに対して、耐性CT26クローンにおいては、5-FUは、100μMの高濃度でさえ、核アポトーシスを誘導することができない。耐性D2F2乳癌細胞では、ヘキスト−33342色素染色によって測定されたところによれば、1μMの最高濃度のドキソルビシンのみが核アポトーシスを誘導することができた。これらの結果は、これらの腫瘍細胞株の何れもが多剤耐性であることを示している。
【0093】
統計解析。実験群と対照間の異なる所見の統計的な有意性は、Studentのt検定によって決定した。転移スコアの有意性は、MannWhitneyU検定によって決定した。生存データの有意性は、ログランク検定によって決定した。P値が0.05未満であれば、所見を有意とみなした。
【実施例1】
【0094】
マウスFAPをコードするDNA組成物1の調製
真核発現ベクターpcDNA3.1−FAP(pFAP)(図1、パネルA参照)を与えるために、マウスFAP(配列番号4、図10)をコードするcDNA(配列番号3、図9、Dr.J.D.Chengから入手)をpcDNA3.1/V5−His−TOPOベクター(Invitrogen,SanDigeo,California)のEcoRI制限部位中にサブクローニングした。独力でFAPを発現しない一過性に形質移入されたCT26大腸癌細胞から得た細胞可溶化液のウェスタンブロッティングによって、ベクターからの95kDaFAPタンパク質の正しい発現が示された(図1、パネルB)。これは、一過性に形質移入されたD2F2乳癌細胞に対しても当てはまった。一過性の形質移入のために、以前に記載されているように、CT26及びD2F2細胞に電気穿孔を行った(Loeffer et al.,FASEB,J.2001,15:758−767参照、参照により本明細書に組み込まれる。)。ポリクローナルウサギ抗マウスFAP抗体(Dr.J.D.Chengから入手)でのウェスタンブロッティングによって、FAPのタンパク質発現が示された。
【0095】
DNA組成物1は、以下のように調製した。製造業者の推奨される手順に従って、2kV、960μF及び200オームでBio−RadPulserを用いて、調製直後の二重に弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(株RE88)中に、pcDNA3.1−FAPベクター(pDNA約2μg)を電気穿孔した。アンピシリン含有プレート上で、ベクターを含有する弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムを選択した。翌日、コロニーを拾い上げ、アンピシリンを添加したLuria−Bertani(LB)ブロス(脱イオン水1L中のトリプトン10g、酵母抽出物5g及び塩化ナトリウム10g;EMScience,Gibbstown,NJ)中で一晩培養した。細菌を単離し、リン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)中で洗浄した。次いで、弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(AroA−dam−)ベクター中に取り込まれた、マウスFAPを作用可能にコードするDNA構築物を含有するDNA組成物1の溶液を形成するために、PBS1mL当たり約109の組み換えサルモネラの濃度で、洗浄された細菌をPBS溶媒中に懸濁した。使用するまで、組成物は、密閉されたアンプル中に保存した。pcDNA3.1ベクターのみ(FAPDNAなし)で形質転換されたサルモネラからなる「対照ワクチン」も、同じ手順に従って調製した。サルモネラを形質転換する前に、約−80℃で、プラスミドDNAを保存した。
【0096】
真核生物発現ベクターpcDNA3.1/V5−His−TOPO−Fap(pFap)を上記のように構築した後(図1、パネルA)、それ自体FAPを発現しない一過性に形質移入されたCT26大腸癌及びD2F2乳癌細胞の両方から得られた細胞可溶化液のウェスタンブロッティングによって、88kDaのFAPタンパク質の正しい発現が示された(図1、パネルB)。
【実施例2】
【0097】
マウスFAP、マウスIL−2及びマウスCCL21をコードするDNA組成物2の調製
ATCC受託番号39892、Manassas、Virginiaから得たマウスIL−2をコードするcDNA(DNA配列番号5)、及びInvitrogen、San Diego、Californiaから得たマウスCCL21aをコードするcDNA(DNA配列番号7)を、実施例1に記載されている同じ一般的手順によって、実施例1のマウスpFAPベクター中にサブクローニングした。弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムベクター中に取り込まれた、マウスFAP、マウスIL−2及びマウスCCL21aを作用可能にコードするDNA構築物を含有するDNA組成物2の溶液を与えるために、実施例1に記載された手順によって、得られたベクター(pFAP/IL−2/CCL21)でRE88サルモネラ・チフィムリウムを形質転換した。
【実施例3】
【0098】
大腸癌及び乳癌のマウスモデルでの本発明のDNA組成物の評価。
【0099】
経口免疫化、腫瘍細胞攻撃誘発及びドキソルビシンでの処理。予防的設定での実験のために、「Niethammer et al.,Nat.Med.,2002,8:1369−1375」に記載されている方法によって、マウスFAP(実施例1のDNA組成物1)、マウスFAP、IL−2及びCCL21(実施例2のDNA組成物2)又は実施例1の対照ワクチンをコードするプラスミドベクターで形質転換された約109のS.チフィムリウム(AroA−dam−)を含有するPBS約100μLで、強制経口投与により、約1週の間隔を置いて、BALB/cマウス(n=8)を3回処理した。左前脇腹中への約3×104のCT26大腸癌細胞の皮下(s.c.)注射によって、又は下から2番目の左の乳房脂肪体中への約3×105のD2F2乳癌細胞の同所性(o.t.)注射によって、約10日後に、動物に攻撃誘発を行った。
【0100】
二次元(すなわち、長さと幅、mmで)腫瘍を測定し、長さの半分×幅の2乗として容積を計算することによって、腫瘍容積(mm3で)を計算した。治療的設定では、約1×105のCT26大腸癌細胞の静脈内(i.v.)注射によって最初の腫瘍細胞接種を行い、続いて、約3日後及び10日後に、対照ワクチン又は活性なDNA組成物での経口ワクチン接種を行った。約18日後に、肺を秤量し(正常な肺重量は約0.2gであった。)、肺の腫瘍転移を調べ、融合された転移によって覆われた肺表面のパーセントを評価する視覚的評価によって、以下のようにスコア付けした。0%の被覆に対しては0のスコア、約20%未満の被覆に対しては1のスコア、約20から50%の被覆に対しては2のスコア、肺表面の約50%超の被覆に対しては3のスコア。腫瘍攻撃誘発から5、10及び15日後に、約10mg/kgドキソルビシン(Sigma)を静脈内投与したマウスの群において、ドキソルビシンでの処理を行った。
【0101】
CD4+及びCD8+T細胞又はNK細胞亜集団を枯渇するために、腫瘍細胞攻撃誘発の1日前から開始し、7日ごとに、CD4(クローンGK1.5)又はCD8(クローン2.43)に対する抗体(500μg)(何れも、National Cell Culture Center(Minneapolis,Minnesota)から入手)又は抗アシアロGM1抗体(Wako BioProducts,Richmont,Virginia)を腹腔内注射した。
【0102】
CD8+T細胞の細胞毒性。1週間隔での3回の処理の最終処理から約10日後に、BALB/cマウス(n=4)の様々な被処理群から得た脾細胞を集めた。CD8a−マイクロビーズ(Miltenyi Biotech,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて、製造業者のプロトコールに従ってCD8+細胞を精製した。次いで、5日の共培養中で、これらの細胞を刺激し、γ線照射された(1000Gy、45分)CT26細胞をpcDNA3.1/Zeo(実施例1の空のベクター)又はpcDNA3.1/Zeo−FAP(実施例1のpFAPベクター)の何れかで一過性に形質移入した。その後、対照としての緑色蛍光タンパク質(GFP)(PEGFP;Clontech,PaloAlto,California)又はGFP+マウスFAPをコードするpFAPプラスミドの何れかで一過性に形質移入されたCT26癌細胞とともに、CD8+T細胞を共培養した(E:T=100:1)。約48時間後、DNA特異的なヘキスト33342色素(2μM)を用いて、核アポトーシスを上記のように評価した。
【0103】
51Cr放出アッセイのために、Balb/cマウス(n=3)を、1週間間隔で4回処理した。最後の処理から13日後に、脾細胞を採取し、レトロウイルスによってpFapを感染させた、γ線照射された(約1000Gy、45分)A31繊維芽細胞(ATCC,Manassas,Virginia)とともに、5日間温置した。次いで、刺激された脾細胞を、標識されたA31−pFapとともに約4時間温置し、溶解のパーセントを計算した。約10μg/mLの濃度の抗MHCクラスI抗体(BDBiosciences,Rockville,Maryland)とも、細胞を共温置した。
【0104】
免疫組織化学。凍結切片(約8μm厚)をアセトン中に固定し、染色した。一次抗体(ポリクローナルウサギ抗マウスFAP抗体(Dr.J.D.Chengから入手)又はポリクローナルウサギ抗マウスI型コラーゲン抗体(Chemicon,Temecula,California)の何れか)との温置後、製造業者のプロトコール(DAKO LSAB+Kit,Peroxidase,DAKO,Carpinteria,California)に従って、切片を免疫染色した。
【0105】
焦点顕微鏡のために、固定された凍結切片を抗マウスCD8抗体、ビオチン化された抗ラットIg二次抗体、FITC標識されたストレプトアビジン(BDBioscience,Rockville,Maryland)で染色し、DAPI(Sigma,St.Louis,Missouri)で共染色した。画像を得るためにレーザー走査型共焦点顕微鏡(LSCM)を使用し、ZeissImageExaminerソフトウェア(CarlZeiss)を用いて画像を処理した。T細胞浸潤のFACS分析のために、pFap又は空のベクターの何れかを用いて、1週間隔で、Balb/cマウス(n=6)を3回処理した。最後の処理から1週後、約3×105個のCT26腫瘍細胞を用いて、動物の皮下に攻撃誘発を行った。3週後に腫瘍を採取し、コラーゲナーゼI型(125U/mI;GIBCO,Gaithersburg,Maryland)が補充された溶媒中で45分間、スライスされた腫瘍組織を温置することによって、単一細胞懸濁液を調製した。ろ過後、2匹のマウスの細胞をプールし、抗CD3+PerCp−Cy5.5及び抗CD8+FITC(BDBiosciences,Rockville,Maryland)で染色し、FACSによって分析した。
【0106】
フルオレセイン、エバンスブルーアルブミン及び14C−5−フルオロウラシルの腫瘍内取り込み。対照ワクチン(実施例1)、DNA組成物1(実施例1)又はDNA組成物2(実施例2)の何れかによる1週間隔での3回の処理の最終処理後、左前脇腹中に約3×104個のCT26細胞を皮下注射することによって、10日後にマウスを攻撃誘発した。その約19日後に、約12μL/g体重の1%フルオレセインナトリウム(Sigma)の腹腔内(ip.)注射、エバンスブルーアルブミン(Sigma)約100μLの静脈内注射又は14C−5−フルオロウラシル(Sigma)約2.5μCiの静脈内注射の何れかをマウスに施した。それぞれ、490nm、612nmで又はγカウンター中で腫瘍ホモジネートの上清の吸収又はシンチレーションを測定するために、それぞれ、約5分、30分又は1時間後に、マウスを屠殺した。
【0107】
腫瘍内ドキソルビシンの取り込みを測定するために、右脇腹中に、約5×105のD2F2細胞で、Balb/cマウス(n=4)の皮下に攻撃誘発を行った。16日後に、ドキソルビシンを静脈内注射し(10mg/kg)、注射から45分後に腫瘍を採取した。1100シリーズLC−MS上のEclipseXCB−C8カラム(Agilent,Foster City,California)を用いて、内部標準ダウノルビシンに対して試料を測定した。
【0108】
可能性がある副作用の評価。創傷治癒に対するあらゆる有害な効果を測定するために、マウスを外科的に負傷させた。1週間隔での3回の処理の最終処理から約10日後に、BALB/cマウス(n=4)の背中上部に、皮膚穴開けばさみ(Miltex Inc.,Bethpage,New York)を用いて、直径約3mmの円形の傷をつけた。創縫合に必要とされる時間を測定した。創傷治癒の間にFAPが過剰発現されるという事実にかかわらず、本発明の組成物は創傷治癒プロセスを妨害しない。処理されたBALB/cマウス(n=4)の背中に直径約3mmの円形の傷を与えた後、処理されたマウスと処理されていないマウスの間で、創傷治癒には有意差は観察されなかった。組織学的分析のために、検査の7日、14日、21日前に、処理されたマウスに対して創傷を与えた。マウス病理学者によって、皮膚生検並びに26の臓器及び組織が検査された。
【0109】
FAPをベースとするDNA組成物での予防的処置は、原発性腫瘍増殖を阻害する。対照ワクチン(実施例1)、DNA組成物1(実施例1)又はDNA組成物2(実施例2)の何れかによる1週間隔での3回の処理の最終処理から10日後に、上述のように、CT26大腸癌細胞を用いて皮下に、又はD2F2乳癌細胞を用いて正所性に、BALB/cマウスの異なる群(n=8)に攻撃誘発を行った。本発明のDNA組成物は、多剤耐性CT26細胞(図2a)及び耐性D2F2細胞(図2b)の原発性腫瘍増殖を抑制した。FAP、CCL21及びIL−2の組み合わせをコードするDNA組成物2は、原発性腫瘍増殖を阻害する上で概ね等しく効果的であった(図2a)。
【0110】
本発明のDNA組成物は、治療的設定において、確立された転移の増殖を低下させる。約1×105のCT26大腸癌細胞での最初の静脈内接種から3日後及び10日後に、実施例1のDNA組成物1で処理されたBALB/cマウスは、実施例1の対照ワクチンで処理されたマウスと比べて、実験的な肺転移の著しい低下をもたらした。これに対して、対照群中のマウスは大規模な転移を呈し、腫瘍細胞接種から18日後に死亡し始めた(図2c)。同様に、pCCL21のみとpFAPの組み合わせも、概ね等しく効果的であった(図2b)。
【0111】
CD8+T細胞は、効果的な抗腫瘍免疫応答を与える。DNA組成物1(実施例1)で、1週間隔で3回、マウスを静脈内処理し、約1×105のCT26細胞で攻撃誘発した。次いで、CD4+又はCD8+T細胞及びNK細胞(図3、パネルA)に対する抗体を用いて、エフェクター相の間に、マウスからそれらの各エフェクター細胞を枯渇させた。CD4+細胞及びNK細胞の枯渇はpFAP処理の有効性を減少させず、免疫応答におけるCD8+T細胞に対する重要な役割を示唆している。
【0112】
本発明のFAPDNA組成物での処理がFAP自己抗原に対する末梢T細胞耐性を破壊することができる程度を評価するために、pFAPで形質移入された細菌又は空のベクターで処理された動物から得られたCD8+T細胞を精製した。次いで、γ照射された腫瘍標的細胞でこれらの細胞を刺激し、対照としてのGFP又はGFP/pFapの何れかで一過性に形質移入された生の腫瘍標的細胞とともに温置した。図3、パネルBに示されているように、ヘキスト33342色素でのpFap形質移入された標的細胞の染色によって評価されたところによれば、pFapで処理されたマウスから精製されたCD8+T細胞のみが核のアポトーシスを誘導することができた。
【0113】
慣用の51Cr放出アッセイでは、処理されたマウスの脾細胞も使用した。この目的のために、組成物1及び対照ワクチンで処理されたマウスから得られた脾細胞を、レトロウイルスによってpFapに感染させた、γ照射されたA31繊維芽細胞とともに5日間温置した。次いで、刺激された脾細胞を、標識されたA31−pFap細胞とともに4時間温置し、溶解のパーセントを計算した。組成物1で処理されたマウスから得た脾細胞は、1:100と1:25の標的対エフェクター比で、空のベクター対照から得られたものより、有意により多くの繊維芽細胞を溶解することができた(図3、パネルC)。抗MHCクラスI抗体との共温置は、この効果を消滅させた(図3、パネルD)。
【0114】
さらなる評価において、組成物1又は対照ワクチンの何れかで、マウスを3回処理し、次いで、pFap処理されたマウスの腫瘍内でのCD8+T細胞浸潤を調べるために、約3×104のCT26腫瘍細胞で攻撃誘発した。3週後に、腫瘍を採取し、CD3+及びCD8+細胞に関して、単一細胞懸濁液を染色し、FACSによって分析した。組成物1で処理されたマウスは、空のベクター対照と比べた場合、腫瘍組織中のCD3+CD8+細胞の顕著な増加を示した(図3、パネルE)。
【0115】
腫瘍切片は、抗CD8FITC及びDAPI核染色でも染色した。共焦点顕微鏡を用いて、組成物1で処理されたマウスの腫瘍は、実施例1の対照ワクチンで処理されたマウスより多くの、CD8+細胞による顕著な浸潤を示した(図3、パネルF)。総合すると、これらの知見は、FAPを標的とする本発明のDNA組成物は、FAP自己抗原に対する末梢T細胞耐性を克服できることを示している。
【0116】
I型コラーゲン発現の抑制は腫瘍内色素取り込みを増加させる。繊維芽細胞はI型コラーゲンの主要な源であり、この分子の発現は様々な分子量の化合物の腫瘍内取り込みと逆相関することが報告されている。この同じ機序が本発明のDNA組成物に対しても当てはまるかどうかを評価するために、処理されたマウスの腫瘍切片を、FAPに対する抗体(図4、パネルA、上の写真)又はI型コラーゲンに対する抗体(図4、パネルA、下の写真)で染色した。対照ワクチン(実施例1)のみで処理されたマウスと比べて、組成物1で処理されたマウスの群において、FAP及びI型コラーゲンの発現の減少が検出された。これらの腫瘍抽出物の対応するウェスタンブロットは同じ抗体で染色され、FAP発現の約82.63+/−2.54%の減少(図4、パネルB、上の写真)及びI型コラーゲンの約76.36+/−2.01%の減少(図4、パネルB、下の写真)を明らかにした。
【0117】
次いで、サイズ及び構造が異なる3つの化合物、すなわち、上記のように、フルオレセイン(376Da)(図4、パネルC)、エバンスブルーアルブミン(68,500Da)(図4、パネルD)又は化学療法剤5−フルオロウラシル(130Da)(図4、パネルE)をマウスに注射した。pFapDNA組成物1で処理されたマウスの腫瘍は、対照ワクチンを投与されたマウスの腫瘍より、これらの各分子を有意に多く(p<0.05)取り込んだ。
【0118】
DNA組成物と化学療法の組み合わせは、腫瘍拒絶をもたらす。本発明のDNA組成物での処理を、D2F2細胞が部分的に感受性である化学療法剤ドキソルビシンと組み合わせる治療用プロトコールを開発した(図1、パネルC)。実施例1の対照ワクチン又は実施例1の組成物で、BALB/cマウス(n=8)を処理した。次いで、処理されたマウスを、D2F2乳癌細胞で正所性に攻撃誘発した。次いで、腫瘍攻撃誘発から5日、10日及び15日後に、ドキソルビシン又は対照としてのPBSの何れかで、マウスのこれらの2つの群を処理した。図5、パネルAに示されているように、免疫療法(組成物1)又は化学療法何れかでの単一の処理は腫瘍増殖を抑制できるにすぎず、腫瘍増殖を根絶することはできなかった。これに対して、組成物1及びドキソルビシンの組み合わせで処理されたマウスの群は腫瘍増殖の顕著な阻害を呈したのみならず、8匹のマウスのうち4匹で、完全な腫瘍拒絶を呈した(図5、パネルA)。
【0119】
治療的設定での別の組み合わせ療法アプローチでは、D2F2腫瘍細胞で、BALB/cマウス(n=8)の静脈内に攻撃誘発を行った。5日後に、一旦、転移が確立されたら、組成物1でマウスを毎週処理した。各処理から1日後に、ドキソルビシンをマウスに静脈内注射した。この組み合わせ処理の結果、これらのマウスの寿命は、ドキソルビシン又は組成物1のみで処理され、約35から45日後に既に死亡した対照マウスの寿命の3倍を超えた(図5、パネルB)。
【0120】
本発明のFAPDNA組成物は、ドキソルビシンの腫瘍内取り込みを増加させる。腫瘍組織中のドキソルビシン濃度を測定するために、1週間隔で、組成物1でマウス(n=4)を3回処理し、7日後に、5×105のD2F2腫瘍細胞で攻撃誘発し、16日以後に、ドキソルビシンを静脈内注射した。腫瘍内薬物濃度は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)によって測定した。組成物1で処理されたマウスの組織は、対照と比べて、腫瘍中のドキソルビシンの取り込みの有意な増加を示した(図6、パネルA)。これらの結果は、フルオレセイン、アルブミン及び5−フルオロウラシルで処理されたマウス中の腫瘍で観察された化学的浸潤と合致する(図4、パネルCからD)。
【0121】
FAPに対するDNAワクチンは、創傷治癒を損なわず又は正常組織を損傷しない。FAPは創傷治癒の間に過剰発現されるので、創傷治癒に対する本発明のDNA組成物の効果を調べた。処理されたBALB/cマウス(n=4)マウスの背中に、直径約3mmの円形創傷を与えた。驚くべきことに、処理されたマウスと処理されていないマウスの間で、創傷治癒に有意差は観察されなかった(図6、パネルB)。異なる時点後における、マウス病理学者によるこれらの創傷の組織学的評価によって、創傷治癒プロセスに定性的な異常が存在しないことが明らかとなった。本発明のDNA組成物によって誘導された一切の自己免疫反応を除去するために、以下の組織及び臓器:皮膚、脳、脊髄、筋肉、骨、滑膜、心臓、大動脈、肺動脈、胸腺、脾臓、リンパ節、骨髄、副甲状腺、副腎、腎臓、子宮、膣、陰核腺、舌、肝臓、肺、膵臓、胃、小腸及び大腸の総合的な組織学的検査を実施した。対照マウスと比べて、識別可能な差は観察されなかった。
【0122】
本発明の新規特徴の精神及び範囲から逸脱することなく、上記実施形態の多数の変形及び改変を実施することができる。本明細書に例示されている具体的な実施形態に関する限定は意図されておらず、又は推測すべきでない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含む、繊維芽細胞活性化タンパク質を発現する腫瘍間質細胞に対する免疫応答を惹起するのに有効なDNA組成物。
【請求項2】
DNA構築物が、ヒトFAP(配列番号2)をコードし、又はヒトFAPと少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項3】
DNA構築物がヒトFAP(配列番号2)をコードする、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項4】
DNA構築物が裸のDNA構築物である、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項5】
裸のDNA構築物がプラスミドの形態である、請求項4に記載のDNA組成物。
【請求項6】
DNA構築物が弱毒化されたウイルスベクター中に取り込まれている、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項7】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項8】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)である、請求項7に記載のDNA組成物。
【請求項9】
DNA構築物が、配列番号1からなるポリヌクレオチド配列を有する又は配列番号1からなるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列を有する実質的に精製されたDNAである、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項10】
DNA構築物が弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムベクター中に取り込まれている、請求項9に記載のDNA組成物。
【請求項11】
免疫細胞中で発現可能な免疫エフェクタータンパク質をコードするDNA構築物をさらに含む、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項12】
免疫エフェクタータンパク質がサイトカインである、請求項11に記載のDNA組成物。
【請求項13】
サイトカインがCCL21、IL−2又はCD40LTである、請求項12に記載のDNA組成物。
【請求項14】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与することを含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中の腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害する方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が経口的に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与する工程、並びに抗腫瘍化学療法剤の抗腫瘍有効量を前記哺乳動物にその後投与する工程を含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中の腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害する方法。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化学療法剤がドキソルビシンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物が経口的に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与する工程、並びに化学療法剤の有効量を前記哺乳動物にその後投与する工程を含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中での化学療法剤の取り込みを増強する方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
化学療法剤がドキソルビシンである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
組成物が経口的に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
ヒト繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物を含むプラスミドベクター。
【請求項32】
DNA構築物がヒトFAP(配列番号2)をコードし、又はヒトFAPと少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
免疫エフェクタータンパク質をコードするDNA構築物をさらに含む、請求項31に記載のベクター。
【請求項34】
免疫エフェクタータンパク質がサイトカインである、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
サイトカインがCCL21、IL−2又はCD40LTである、請求項34に記載のベクター。
【請求項1】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含む、繊維芽細胞活性化タンパク質を発現する腫瘍間質細胞に対する免疫応答を惹起するのに有効なDNA組成物。
【請求項2】
DNA構築物が、ヒトFAP(配列番号2)をコードし、又はヒトFAPと少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項3】
DNA構築物がヒトFAP(配列番号2)をコードする、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項4】
DNA構築物が裸のDNA構築物である、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項5】
裸のDNA構築物がプラスミドの形態である、請求項4に記載のDNA組成物。
【請求項6】
DNA構築物が弱毒化されたウイルスベクター中に取り込まれている、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項7】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項8】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)である、請求項7に記載のDNA組成物。
【請求項9】
DNA構築物が、配列番号1からなるポリヌクレオチド配列を有する又は配列番号1からなるポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%の配列類似性を有するポリヌクレオチド配列を有する実質的に精製されたDNAである、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項10】
DNA構築物が弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムベクター中に取り込まれている、請求項9に記載のDNA組成物。
【請求項11】
免疫細胞中で発現可能な免疫エフェクタータンパク質をコードするDNA構築物をさらに含む、請求項1に記載のDNA組成物。
【請求項12】
免疫エフェクタータンパク質がサイトカインである、請求項11に記載のDNA組成物。
【請求項13】
サイトカインがCCL21、IL−2又はCD40LTである、請求項12に記載のDNA組成物。
【請求項14】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与することを含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中の腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害する方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒトである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が経口的に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与する工程、並びに抗腫瘍化学療法剤の抗腫瘍有効量を前記哺乳動物にその後投与する工程を含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中の腫瘍増殖又は腫瘍転移を阻害する方法。
【請求項20】
哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
化学療法剤がドキソルビシンである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組成物が経口的に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物(該DNA構築物は、哺乳動物の免疫細胞中で発現可能であり、及び医薬として許容される担体中に取り込まれている。)を含むDNA組成物を哺乳動物に投与する工程、並びに化学療法剤の有効量を前記哺乳動物にその後投与する工程を含み、前記組成物がFAP抗原を発現する前記哺乳動物中の細胞に対して免疫応答を惹起するのに十分な量で投与される、哺乳動物中での化学療法剤の取り込みを増強する方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
化学療法剤がドキソルビシンである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
DNA構築物が弱毒化された細菌ベクター中に取り込まれている、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
弱毒化された細菌ベクターが弱毒化されたサルモネラ・チフィムリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
組成物が経口的に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
ヒト繊維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の少なくとも1つのエピトープをコードするDNA構築物を含むプラスミドベクター。
【請求項32】
DNA構築物がヒトFAP(配列番号2)をコードし、又はヒトFAPと少なくとも80%の配列類似性を有し及びヒトFAPの少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質をコードする、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
免疫エフェクタータンパク質をコードするDNA構築物をさらに含む、請求項31に記載のベクター。
【請求項34】
免疫エフェクタータンパク質がサイトカインである、請求項33に記載のベクター。
【請求項35】
サイトカインがCCL21、IL−2又はCD40LTである、請求項34に記載のベクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2009−541328(P2009−541328A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516568(P2009−516568)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014440
【国際公開番号】WO2007/149518
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501318914)ザ・スクリプス・リサーチ・インステイチユート (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/014440
【国際公開番号】WO2007/149518
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501318914)ザ・スクリプス・リサーチ・インステイチユート (23)
【Fターム(参考)】
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