説明

腹水処理回路及び腹水処理回路と腹水処理器の接続方法

【課題】接続の誤りがなく、接続操作が簡便に行える腹水処理回路を提供する。
【解決手段】軟質チューブから成る腹水処理回路100であって、吊下部材71と、鉛直方向最上部の第一接続口41に接続される第一回路21と、吊下部材71及び第一回路21を連結する第一連結部材11と、第一接続口41の下方に隣接する第二接続口42に対して接続される第二回路22と、第一回路21及び前記第二回路22を連結する第二連結部材12と、第二接続口42の下方に隣接する第三接続口43に対して接続される第三回路23と、第二回路22及び第三回路23を連結する第三連結部材13と、第三接続口43の下方に隣接する第四接続口44に対して接続される第四回路24と、第三回路23及び第四回路24を連結する第四連結部材14とを有し、吊り下げ時に、鉛直上方から第一回路21、第二回路22、第三回路23、第四回路24の順序で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹水を濾過濃縮するための腹水処理回路、及び腹水処理回路と腹水処理モジュールの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝硬変などの腹水の溜まり易い患者に対する治療として、腹部に針を刺し体外に排出した腹水を濃縮処理し、腹水内に含まれる蛋白成分を点滴して患者に戻し有効活用する腹水濃縮還流が行われている。
【0003】
腹水濃縮環流に使用する装置として、腹水の取り出しポンプに接続された腹水濾過器と、腹水濾過器で濾過された腹水を濃縮する腹水濃縮器からなる腹水処理装置が知られている。従来の装置は、ポンプの他に、ポンプの制御機構、腹水濾過器及び腹水濃縮器の保持部、回路の圧力モニター、警報機構などを備えているので、重量が大きく持ち運びが容易でない、操作が複雑なので操作を誤る恐れがある、という欠点があった。
【0004】
このような欠点を解消する装置として、特許文献1では、ポンプを使用せずに腹水濃縮還流を行う装置が開示されている。患者から採取された腹水の入った腹水貯留バッグ、腹水濾過器、腹水濃縮器、腹水回収用バッグをこの順で連結し、かつこの順で高低差があるように設置することにより、ポンプを使用することなく、落差による重力差の作用だけで腹水を処理することができる。この方法はポンプを使用する必要がなく、どのような場所でも腹水濃縮処理を行うことができるという点で優れた方法であるが、複数の回路と複数のバッグを腹水濾過器と腹水濃縮器に正しく接続しなければならず、接続を誤る恐れがある、装置の組み立てに時間がかかる、などの難点を有していた。
【0005】
【特許文献1】特許第3066151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、腹水処理回路の接続口と腹水処理モジュールの接続口との対応関係が容易に把握でき、したがって接続の誤りがなく、接続操作が簡便に行える腹水処理回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、軟質チューブからなる濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路を連結部材によって相互に接続し、吊下部材を設けて回路全体を固定台に吊り下げられようにし、更に吊下部材によって吊り下げられた時に、腹水処理回路の接続口が鉛直上方から一定の順序で並ぶように回路を構成すれば、腹水処理回路の接続口と腹水処理モジュールの接続口との対応関係が容易に把握できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
(1)
4つの接続口を有する腹水処理器に接続され、軟質チューブから成る腹水処理回路であって、該腹水処理回路を吊り下げるための吊下部材と、前記腹水処理器の長軸方向を鉛直方向とした時、最上部に位置する第一接続口に対して接続される第一回路と、前記吊下部材及び前記第一回路を連結する第一連結部材と、前記第一接続口の下方に隣接する第二接続口に対して接続される第二回路と、前記第一回路及び前記第二回路を連結する第二連結部材と、前記第二接続口の下方に隣接する第三接続口に対して接続される第三回路と、前記第二回路及び前記第三回路を連結する第三連結部材と、前記第三接続口の下方に隣接する第四接続口に対して接続される第四回路と、前記第三回路及び前記第四回路を連結する第四連結部材とを有し、前記吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から第一回路、第二回路、第三回路、第四回路の順序で配置されるように構成されていることを特徴とする腹水処理回路。
【0009】
(2)
前記腹水処理器が腹水濾過器または腹水濃縮器のいずれかであることを特徴とする(1)記載の腹水処理回路。
【0010】
(3)
腹水濾過器及び腹水濃縮器に接続され、軟質チューブから成る腹水処理回路であって、
一端が腹水貯留バッグに接続され他端が腹水濾過器の腹水入口に接続される腹水導入回路と、一端がエアベントフィルタに接続され他端が前記腹水濾過器の第一濾過腹水出口に接続される通気回路と、前記腹水濾過器の廃液出口に接続される廃液回路と、前記腹水濾過器の第二濾過腹水出口と前記腹水濃縮器の濾過腹水入口を連結する濾過腹水導入回路と、前記腹水濃縮器の2つの除水出口に接続される除水回路及び閉塞用回路と、一端が前記腹水濃縮器の濃縮腹水出口に接続され他端が回収バッグに接続される濃縮腹水回収回路とからなり、前記廃液回路と前記濃縮腹水回収回路の各々には、回路を吊り下げるための濾過側吊下部材と濃縮側吊下部材が接続され、前記廃液回路と前記通気回路、前記通気回路と前記濾過腹水導入回路、前記濾過腹水導入回路と前記腹水導入回路、前記濃縮腹水回収回路と前記除水回路、前記除水回路と前記閉塞用回路、前記閉塞用回路と前記濾過腹水導入回路は、各々連結部材によって連結されて一体化されており、前記濾過側吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から前記廃液回路、前記通気回路、前記濾過腹水導入回路、前記腹水導入回路の順序で配置されるように構成され、前記濃縮側吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から前記濃縮腹水回収回路、前記除水回路、前記閉塞用回路、前記濾過腹水導入回路の順序で配置されるように構成されていることを特徴とする腹水処理回路。
【0011】
(4)
前記回路と前記連結部材とは互いに直交するように固定されることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の腹水処理回路。
【0012】
(5)
前記回路及び前記連結部材は、結束バンドによって束ねられていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の腹水処理回路。
【0013】
(6)
前記吊下部材及び前記連結部材は、中実の軟質チューブであることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の腹水処理回路。
【0014】
(7)
前記吊下部材の構造は輪であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の腹水処理回路。
【0015】
(8)
軟質チューブから成る腹水処理回路と腹水処理器の接続方法であって、前記腹水処理回路は、吊下部材を有し、連結部材によって一体化され、且つ結束バンドによって束ねられており、前記腹水処理回路を固定台に吊り下げて結束バンドを外して束ねを解き、前記腹水処理回路の第一回路、第二回路、第三回路、第四回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水処理器を接続することを特徴とする腹水処理回路と腹水処理器の接続方法。
【0016】
(9)
軟質チューブから成る腹水処理回路と腹水処理器の接続方法であって、前記腹水処理回路は濾過腹水導入回路によって連結された濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路とから成り、前記腹水処理器は腹水濾過器と腹水濃縮器とから成り、前記濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路の各々は、吊下部材を有し、連結部材によって一体化され、且つ結束バンドによって束ねられており、前記濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路とを固定台に吊り下げて結束バンドを外して束ねを解き、前記濾過側腹水処理回路の廃液回路、通気回路、濾過腹水導入回路、腹水導入回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水濾過器を接続し、前記濃縮側腹水処理回路の濃縮腹水回収回路、除水回路、閉塞用回路、前記濾過腹水導入回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水濃縮器を接続することを特徴とする腹水処理回路と腹水処理器の接続方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の腹水処理回路は、腹水処理回路の接続口と腹水処理器の接続口との対応関係が容易に把握でき、したがって接続の誤りがなく、接続操作が簡便である。加えて、回路が一体化され、かつ各部分が巻き取られているので取扱いが容易になった。また、腹水処理回路を吊り下げ式にしたので、腹水処理器を保持するモジュールホルダーを用いなくても腹水処理が可能である。更に、プライミング用回路を付け替え式にしたので、クランプ操作が少なくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る腹水処理回路が固定台に吊り下げられた状態で自重により垂下した様子を示す模式図であり、腹水処理回路の各端部と腹水処理器の接続口との対応関係を示す図である。
【0020】
腹水処理回路100においては、腹水処理器1の4つの接続口41〜44に接続する4つの回路21〜24と吊下部材71が、4つの連結部材11〜14(後述の11a〜14a又は11b〜14bに対応)によって相互に連結されている。
【0021】
第一〜第四回路21〜24は軟質チューブであり、第一回路21の端部は腹水処理器1の長軸方向を鉛直方向にした時に最上部に位置する第一接続口41と、第二回路22の端部は第二接続口42と、第三回路23の端部は第三接続口43と、第四回路24の端部は第四接続口44と、それぞれ接続可能なように構成されている。軟質チューブの材質はポリ塩化ビニルが好ましい。尚、各接続口41〜44の位置関係は、腹水処理器1の長軸方向を鉛直方向にした時に第一接続口41の下方には第二接続口42が隣接し、第二接続口42の下方には第三接続口43が隣接し、第三接続口43の下方には第四接続口44が隣接している。
【0022】
また、第一〜第四回路21〜24の端部は、腹水処理回路100が吊下部材71によって吊り下げられた時に、鉛直上方からこの順序で配列するから、腹水処理器1の第一〜第四接続口41〜44との対応関係が明確になる。このため、腹水処理回路100に対して腹水処理器1を接続するとき、接続操作を誤ることがない。また接続操作が簡便になる。
【0023】
第一〜第四連結部材11〜14は腹水処理器1と腹水処理回路100の自重を支えられる強度と可塑性を有するものであればどのような材質であっても良いが、好ましくは中実の軟質チューブであり、材質としてはポリ塩化ビニルが好ましい。第一〜第四連結部材11〜14の長さは、腹水処理器1の長軸方向を鉛直方向とした時の第一〜第四接続口41〜44の位置に合わせて適宜調節すれば良い。
【0024】
連結部材と回路の接続部分の形状はどのような形状であっても良いが、第二連結部材12と第二回路22、第三連結部材13と第二回路22及び第三回路23は直交していると、腹水処理回路100を吊り下げた時に、第二回路22及び第三回路23が略水平となる。このように第二回路22や第三回路23が略水平になると、腹水処理器1の第二接続口42や第三接続口43と接続しやすくなるので好ましい。
【0025】
吊下部材71は固定台7に吊り下げるための構造を有している。吊り下げるための構造は、腹水処理器1と腹水処理回路100の自重を支えられ、且つ外れ難いものであればどのようなものであっても良いが、例えば、固定台7がイルリガートルスタンドであれば、スタンドに引っ掛ける輪であっても良いし、フックのようなものであっても良い。
【0026】
吊下部材71の材質は腹水処理器1と腹水処理回路100の自重を支えられる強度があればどのようなものであっても良いが、例えば、連結部材と同じ材質で中空であっても良く、また中実の軟質チューブであっても良い。
【0027】
腹水処理回路100は結束バンドによって束ねられていても良い。固定台7に吊り下げるまで、腹水処理回路100を結束バンドによって束ねておけば、腹水処理回路100の取扱いが容易になり、しかも不用意に回路が垂れ下がって床などに接触し不潔になる恐れがないので好ましい。
【0028】
腹水処理器1には、腹水濾過器2や腹水濃縮器3がある。腹水濾過器2としては、腹水中の有用物質、例えばアルブミン、グロブリン等の蛋白質は通過させるが、細菌や癌細胞のような有害物質を通過させず、しかも目づまりを起こしにくい中空糸が使用される。腹水濃縮器3は、内蔵されている濃縮膜の透過性能が、分子量6.7万のアルブミンはほとんど透過しないが、水およびそれに溶解した電解質を透過するものであれば、その素材、形状に特に制限はないが、通常、中空糸が好ましく使用できる。
【0029】
本発明に係る腹水処理回路100に接続される腹水処理器1は、腹水濾過器2あるいは腹水濃縮器3であっても良いし、腹水濾過濃縮を連続して行えるように、腹水濾過器2と腹水濃縮器3の2つであっても良い。腹水濾過器2と腹水濃縮器3の2つに接続される腹水処理回路100は、例えば図2、図3のように構成される。
【0030】
図2は、腹水処理回路100が固定台7に吊り下げられた状態で自重により垂下した様子を示す模式図であり、図3は、腹水処理回路100が固定台7に吊り下げられて自重により垂下した状態で、腹水濾過器2と、腹水濃縮器3と、腹水貯留バッグ4と、回収バッグ5に接続された様子を示す模式図である。
【0031】
図2の腹水処理回路100は、腹水濾過器2に接続される濾過側腹水処理回路101と腹水濃縮器3に接続される濃縮側腹水処理回路102とから成る。そして濾過側腹水処理回路101は濾過側吊下部材72によって吊り下げられ、濃縮側腹水処理回路102は濃縮側吊下部材73によって吊り下げられる。
【0032】
濾過側腹水処理回路101は、濾過側吊下部材72によって吊り下げられると、鉛直上方から廃液回路31、通気回路32、濾過腹水導入回路33、腹水導入回路34の順に配置されるように構成され、濾過側吊下部材72と廃液回路31、廃液回路31と通気回路32、通気回路32と濾過腹水導入回路33、濾過腹水導入回路33と腹水導入回路34は、それぞれ連結部材11a〜14aによって連結されている(図2)。
【0033】
濃縮側腹水処理回路102は、濃縮側吊下部材73によって吊り下げられると、鉛直上方から濃縮腹水回収回路35、除水回路36、閉塞用回路37、濾過腹水導入回路33の順に配置されるように構成されており、濾過側腹水処理回路101と濃縮側腹水処理回路102は同一の濾過腹水導入回路33を有する。そして、濃縮側吊下部材73と濃縮腹水回収回路35、濃縮腹水回収回路35と除水回路36、除水回路36と閉塞用回路37、閉塞用回路37と濾過腹水導入回路33は、それぞれ連結部材11b〜14bによって連結されている(図2)。
【0034】
濾過側腹水処理回路101と濃縮側腹水処理回路102とは、各々結束バンドによって束ねられていても良い。固定台7に吊り下げるまで、濾過側腹水処理回路101と濃縮側腹水処理回路102とを結束バンドによって束ねておけば、回路の取扱いが容易になり、しかも不用意に回路が垂れ下がって床などに接触し不潔になる恐れがないので好ましい。
【0035】
次に、図2のような状態に腹水処理回路100を吊り下げてから、腹水濾過器2、腹水濃縮器3、生食バッグ6を接続し、プライミングを行う手順を説明する。まず、濾過側腹水処理回路101のクランプ81〜84を全て閉じて回路を閉塞する。
【0036】
腹水濾過器2の長軸方向を鉛直方向に合わせて、腹水濾過器2を濾過側腹水処理回路101の近傍に持ってくると、図3に示す腹水濾過器2の廃液出口51と廃液回路31の端部が近接し、第一濾過腹水出口52と通気回路32の端部が近接し、第二濾過腹水出口53と濾過腹水導入回路33の端部が近接し、腹水入口54と腹水導入回路34の端部が近接するので、腹水濾過器2の各接続口と濾過側腹水処理回路101の各端部を、鉛直上方から順に接続する。腹水導入回路34の他の端部は、生食バッグ6に接続する。
【0037】
次に、腹水濃縮器3の長軸方向を鉛直方向に合わせて、腹水濃縮器3を濃縮側腹水処理回路102の近傍に持ってくると、腹水濃縮器3の濃縮腹水出口55と濃縮腹水回収回路35の端部が近接し、除水出口56と除水回路36の端部が近接し、除水出口57と閉塞用回路37の端部が近接し、濾過腹水入口58と濾過腹水導入回路33の端部が近接するので、腹水濃縮器3の各接続口と濃縮側腹水処理回路102の各端部を、鉛直上方から順に接続する。この時、クランプ85とクランプ86は開いたままで良い。
【0038】
プライミングは次のようにして行う。まず、クランプ81とクランプ84を開けて、生食バッグ6から生食を、腹水導入回路34、腹水濾過器2、廃液回路31に流して、廃液回路31の端部から排液し、腹水濾過器2の中空糸内部の空気を除去する。次に、クランプ81とクランプ86を閉じて、クランプ83を開けて、生食を、濾過腹水導入回路33、腹水濃縮器3、濃縮腹水回収回路35に流して、濃縮腹水回収回路35の端部から排液し、腹水濃縮器3の中空糸内部の空気を除去する。次に、クランプ85を閉じて、クランプ86を開けて、生食を除水回路36から排液する。最後に、クランプ84とクランプ86を閉じれば、プライミングは完了する。
【0039】
プライミングが終了したら、腹水処理回路100に腹水貯留バッグ4と回収バッグ5とを接続する。腹水導入回路34の他の端部に接続されている生食バッグ6を外して、腹水貯留バッグ4に接続し、濃縮腹水回収回路35の端部に回収バッグ5を接続すれば良い。
【0040】
図3は、腹水処理回路100が固定台7に吊り下げられて自重により垂下した状態で、腹水濾過器2と、腹水濃縮器3と、腹水貯留バッグ4と、回収バッグ5に接続された様子を示す模式図である。
【0041】
図3に示すように、腹水濾過器2と腹水濃縮器3は腹水処理回路100によって固定台に吊り下げられる状態になるから、腹水濾過器2と腹水濃縮器3を固定するモジュールホルダーを使用しなくても良い。腹水濾過器2と腹水濃縮器3を固定する必要がある時には、モジュールホルダーを使用すれば良い。
【0042】
ポンプを使用せずに、落差のみで腹水処理を行う場合は次のようにする。例えば、腹水貯留バッグ4を床から130cmの高さに設置した場合、腹水濾過器2と腹水濃縮器3を腹水貯留バッグ4より低い位置に設置し、回収バッグ5を腹水貯留バッグ4より50cm低い位置に設置して、クランプ83〜86を全て開け、クランプ81とクランプ82は閉じたまま、腹水濃縮処理を開始する。除水回路36の端部から排液されていることを確認し、該排液が終了したら回収バッグ5の位置を腹水濃縮器3より低い位置まで下げる。
【0043】
腹水貯留バッグ4が空になったら、クランプ82を開けて、エアベントフィルタ90と通気回路32を通して空気を入れながら、腹水処理回路と腹水処理器に残った液をすべて回収バッグ5に回収する。
【0044】
図3では、腹水が腹水濾過器2の鉛直下方から上方に向かって流れ、濾過腹水が腹水濃縮器3の鉛直下方から上方に向かって流れるように構成している。このようにすると、腹水濾過器2と腹水濃縮器3の内部の空気が抜けやすいので好ましい。
【0045】
しかしながら、上述の構成に限るものではない。腹水が腹水濾過器2の鉛直上方から下方に向かって流れるようにしても良いし、濾過腹水が腹水濃縮器3の鉛直上方から下方に向かって流れるようにしても良い。そのような一例として、図4では腹水が腹水濾過器2の鉛直上方から下方に向かって流れ、濾過腹水が鉛直下方から上方に向かって流れるように構成された腹水処理回路100を示している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、腹水処理回路を腹水処理器に簡便、確実かつ安全に接続するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る腹水処理回路が固定台に吊り下げられた状態で自重により垂下した様子を示す模式図であり、腹水処理回路の各端部と腹水処理器の接続口との対応関係を示している。
【図2】本発明の別の実施形態に係る腹水処理回路が固定台に吊り下げられた状態で自重により垂下した様子を示す模式図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る腹水処理回路が固定台に吊り下げられて自重により垂下した状態で、腹水濾過器と、腹水濃縮器と、腹水貯留バッグと、回収バッグに接続された様子を示す模式図である。
【図4】本発明の更に別の実施形態に係る腹水処理回路が固定台に吊り下げられて自重により垂下した状態で、腹水濾過器と、腹水濃縮器と、腹水貯留バッグと、回収バッグに接続された様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0048】
1…腹水処理器
2…腹水濾過器
3…腹水濃縮器
4…腹水貯留バッグ
5…回収バッグ
6…生食バッグ
7…固定台
11…連結部材(11a、11b:第一連結部材)
12…連結部材(12a、12b:第二連結部材)
13…連結部材(13a、13b:第三連結部材)
14…連結部材(14a、14b:第四連結部材)
21…第一回路
22…第二回路
23…第三回路
24…第四回路
31…廃液回路
32…通気回路
33…濾過腹水導入回路
34…腹水導入回路
35…濃縮腹水回収回路
36…除水回路
37…閉塞用回路
41…第一接続口
42…第二接続口
43…第三接続口
44…第四接続口
51…廃液出口
52…第一濾過腹水出口
53…第二濾過腹水出口
54…腹水入口
55…濃縮腹水出口
56…除水出口
57…除水出口
58…濾過腹水入口
71…吊下部材
72…濾過側吊下部材
73…濃縮側吊下部材
81〜86…クランプ
90…エアベントフィルタ
100…腹水処理回路
101…濾過側腹水処理回路
102…濃縮側腹水処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの接続口を有する腹水処理器に接続され、軟質チューブから成る腹水処理回路であって、
該腹水処理回路を吊り下げるための吊下部材と、
前記腹水処理器の長軸方向を鉛直方向とした時、最上部に位置する第一接続口に対して接続される第一回路と、
前記吊下部材及び前記第一回路を連結する第一連結部材と、
前記第一接続口の下方に隣接する第二接続口に対して接続される第二回路と、
前記第一回路及び前記第二回路を連結する第二連結部材と、
前記第二接続口の下方に隣接する第三接続口に対して接続される第三回路と、
前記第二回路及び前記第三回路を連結する第三連結部材と、
前記第三接続口の下方に隣接する第四接続口に対して接続される第四回路と、
前記第三回路及び前記第四回路を連結する第四連結部材とを有し、
前記吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から第一回路、第二回路、第三回路、第四回路の順序で配置されるように構成されている
ことを特徴とする腹水処理回路。
【請求項2】
前記腹水処理器が腹水濾過器または腹水濃縮器のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の腹水処理回路。
【請求項3】
腹水濾過器及び腹水濃縮器に接続され、軟質チューブから成る腹水処理回路であって、
一端が腹水貯留バッグに接続され他端が腹水濾過器の腹水入口に接続される腹水導入回路と、
一端がエアベントフィルタに接続され他端が前記腹水濾過器の第一濾過腹水出口に接続される通気回路と、
前記腹水濾過器の廃液出口に接続される廃液回路と、
前記腹水濾過器の第二濾過腹水出口と前記腹水濃縮器の濾過腹水入口を連結する濾過腹水導入回路と、
前記腹水濃縮器の2つの除水出口に接続される除水回路及び閉塞用回路と、
一端が前記腹水濃縮器の濃縮腹水出口に接続され他端が回収バッグに接続される濃縮腹水回収回路とからなり、
前記廃液回路と前記濃縮腹水回収回路の各々には、回路を吊り下げるための濾過側吊下部材と濃縮側吊下部材が接続され、
前記廃液回路と前記通気回路、前記通気回路と前記濾過腹水導入回路、前記濾過腹水導入回路と前記腹水導入回路、前記濃縮腹水回収回路と前記除水回路、前記除水回路と前記閉塞用回路、前記閉塞用回路と前記濾過腹水導入回路は、各々連結部材によって連結されて一体化されており、
前記濾過側吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から前記廃液回路、前記通気回路、前記濾過腹水導入回路、前記腹水導入回路の順序で配置されるように構成され、
前記濃縮側吊下部材によって吊り下げられた時に、鉛直上方から前記濃縮腹水回収回路、前記除水回路、前記閉塞用回路、前記濾過腹水導入回路の順序で配置されるように構成されていることを特徴とする腹水処理回路。
【請求項4】
前記回路と前記連結部材とは互いに直交するように固定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の腹水処理回路。
【請求項5】
前記回路及び前記連結部材は、結束バンドによって束ねられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の腹水処理回路。
【請求項6】
前記吊下部材及び前記連結部材は、中実の軟質チューブであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の腹水処理回路。
【請求項7】
前記吊下部材の構造は輪であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の腹水処理回路。
【請求項8】
軟質チューブから成る腹水処理回路と腹水処理器の接続方法であって、
前記腹水処理回路は、吊下部材を有し、連結部材によって一体化され、且つ結束バンドによって束ねられており、
前記腹水処理回路を固定台に吊り下げて結束バンドを外して束ねを解き、
前記腹水処理回路の第一回路、第二回路、第三回路、第四回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水処理器を接続する
ことを特徴とする腹水処理回路と腹水処理器の接続方法。
【請求項9】
軟質チューブから成る腹水処理回路と腹水処理器の接続方法であって、
前記腹水処理回路は濾過腹水導入回路によって連結された濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路とから成り、
前記腹水処理器は腹水濾過器と腹水濃縮器とから成り、
前記濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路の各々は、吊下部材を有し、連結部材によって一体化され、且つ結束バンドによって束ねられており、
前記濾過側腹水処理回路と濃縮側腹水処理回路とを固定台に吊り下げて結束バンドを外して束ねを解き、
前記濾過側腹水処理回路の廃液回路、通気回路、濾過腹水導入回路、腹水導入回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水濾過器を接続し、
前記濃縮側腹水処理回路の濃縮腹水回収回路、除水回路、閉塞用回路、前記濾過腹水導入回路を鉛直上方からこの順序に配置させた後に前記腹水濃縮器を接続することを特徴とする腹水処理回路と腹水処理器の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−284936(P2009−284936A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137795(P2008−137795)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【Fターム(参考)】