説明

膜の形成および評価

評価のために液体サンプルからの膜を形成するための方法および装置が開示される。液体サンプルが、ダイおよび基材をお互いに対して動かしつつ、ダイおよび基材によって形成されるチャネルへと送出され、基材上に膜が生成される。次いで、ひとたび形成された液体の膜を、後の評価のための固体薄膜を生成するために、例えば硬化または重合によってさらに処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面への膜の形成およびそのような膜の特性の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングが、工業および家庭の両方の環境において、バルク材料および物品の機能および付加価値を高めるため、ならびに構造体の外観を向上させるために幅広く使用されている。他の用途として、インクなどの不連続なコーティングが挙げられる。有機コーティングが、例えば下地、下塗り、および上塗りの塗料システムなど、自動車の上塗り透明コーティング、自動車用および装飾用の塗料およびラッカー、着色および非着色のコーティングなどの多数の産業の保護/装飾の用途、ならびにインクにおいて、きわめて広く使用されている。他の種類の有機コーティングとして、例えば、保護および耐食コーティング、接着および剥離コーティング、環境遮断コーティング、導電/透明コーティング、および耐引っかき硬質コーティングが挙げられる。そのようなコーティングを、有機成分のみで構成することができるが、他のコーティングは、金属酸化物顔料、導電性金属粒子、無機粒子充てん材、蛭石などの粘土、および同様の周知の無機粒子など、無機成分を含んでもよい。
【0003】
また、有機バインダを含むことができ、あるいは水分散液から形成することができる多数の種類の無機コーティングも存在する。他の種類の無機コーティングを、スパッタ法ならびに化学または物理蒸着などといった技法を使用し、コーティング材料を基材へと直接的に適用することによって形成することができる。
【0004】
食品その他の用途においては、食材または他の材料を、検査または比較の目的のために膜へと形成することも、有用であると考えられる。検査または比較を行うことができるそのような食材および他の材料は、例えば、生地、でんぷん膜、ソース、マスタード、などであり、パーソナルケア用の材料、歯磨き粉、ひげ剃り用ジェル、などである。
【0005】
新世代の材料または新規な費用対効果に優れた製造方法を発見するために、コーティング材料の原料の新規な組み合わせまたは新規な処理条件を、特には迅速に多数のサンプルについて試験することができる能力が、多くの製造者にとって、競合者に対する商業上の有利を得ることができるために、行動計画の上位に位置している。また、既存の調合物を、特には代替の原料または供給元の異なる原料での置き換え時の性能の変化について試験する能力も、大いに重要である。
【0006】
そのような要望は、さらに広くには、構造材料などといった他の材料についても、特にはそのような材料の興味ある特性の少なくともいくつかをそのような材料の膜状のサンプルから割り出すことができる場合に当てはまる。
【0007】
さらに、試験または製造のために複数の層を有する材料を生成することも、関心の対象である。そのような多層材料の例として、例えば異なる表面エネルギーを有し、したがって異なる接着性を有している基材間に接着を生じさせるために種々の接着剤からなる複数の層を使用することが挙げられ、下地、下塗り、および上塗りの塗装システムが挙げられ、さらには複数層の半導体装置であって、全体としての特性が各層の構成材料の固有の特性のみならず、層の特定の積層順序ならびに当該装置の製作に使用されている界面および表面構造にも大いに依存する半導体装置が挙げられる。
【0008】
例えば、米国特許第6482264号B1明細書、米国特許出願公開第2003/0224105号A1明細書、米国特許出願公開第2004/0071888号A1明細書、および独国特許出願公開第10136448号A1明細書に開示されているように、材料のサンプルを多数生成して試験することが試みられている。これらの刊行物は、膜を形成すべく基材上にサンプルを配置して広げるさまざまな方法を開示しており、一部は、例えば基材の回転または振動などといった非接触な方法を使用して液体サンプルを広げており、あるいはエアナイフを使用して液体サンプルを広げており、あるいは液体サンプルを基材へと噴き付けている。粘着テープおよびシートの製造において、裏打ちテープへと接着剤を配置することも知られており、英国特許第916406号に記載されている。
【0009】
そのような方法は、基材上に配置される液体の量が少ないため、形成される膜の一様性が大きく変動する可能性があり、結果として、測定されるパラメータが正確に割り出されない可能性があるという欠点を抱えている。これは、一部の材料あるいは合格/不合格だけに基づく材料の選別においては重大でないかもしれないが、他の用途においては、より問題となりうる。例えば、塗料、ラッカー、インク、などの色の仕様を定める際に、膜の厚さおよび一様性が、色測定のプロセスに大いに影響しうる。さらに、塗り広げの際にサンプルに加わるせん断の大きさが、顔料粒子の分散、したがって得られる膜状のサンプルの色の一様性に影響する可能性がある。
【0010】
特には電気抵抗率の測定に供することができる膜や、動的機械熱分析(DMTA)などの機械的な試験に使用される膜など、試験用の膜を形成するための他の技法が知られている。そのような技法は、例えばガラス製の顕微鏡用スライドまたは膜の剥離が容易な基材などといった基材に、既知の厚さの粘着テープを所定の離間にて互いに平行に基材へと貼り付けることによって、所定の幅および深さの溝を形成し、この溝に液体サンプルを配置し、テープの上面を横切ってドクターブレードを引きずって、余分な液体を基材上に形成された溝から取り除くことからなる。しかしながら、これらの技法は、特には同一または類似の組成の複数のサンプルが必要とされる場合や、複数の材料層を有するサンプルを製作しようとする場合に、時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、上述の欠点の少なくとも1つを軽減または除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、基材の表面に膜を形成する方法が、膜へと形成される液体サンプルを収容しているリザーバであって、当該リザーバからの前記液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのチャネルを前記基材と協働して定めるべく前記基材に接触することができる平坦面を有しているダイを出口に備えているリザーバを、基材表面のサンプル配置位置にもたらす工程、前記ダイを前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させる工程、および前記液体サンプルを前記ダイを通して前記チャネルへと押し出すとともに、実質的に同時に、前記ダイおよび前記基材を接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜する工程を含んでいる。
【0013】
本発明の全体的な範囲において、リザーバは、内部の液体サンプルへと圧力を加えることができる限りにおいて、任意の適切な形状であってよいが、好ましい実施形態においては、リザーバは、内部でピストンを動かすことができるおおむね円筒形の形状である。特に好ましい実施形態においては、リザーバが、EFD社から入手できるプラスチック製シリンジなど、市販のカートリッジである。典型的には、カートリッジまたはシリンジは、5ml〜100ml、より好ましくは5ml〜50mlの範囲の体積を有しており、典型的には10mlの体積を有している。
【0014】
好ましくは、シリンジの出口が、前記ダイの取り付けを可能にするために取り外すことができるキャップで封じられる。好ましくは、前記ダイが、前記平坦面と反対の面に、キャップの代わりにシリンジの出口部分へと押し込まれる環状の突起を有している。環状の突起が、このダイを貫く通路の一部を定め、この通路を通って液体サンプルをリザーバから押し出すことができる。
【0015】
本発明の方法においては、前記液体サンプルが、前記サンプル配置位置において前記基材に接触する該液体サンプルの毛管作用のもとで、ダイを通って流れることができる。毛管作用に代え、あるいはおそらくは毛管作用との組み合わせにおいて、前記液体サンプルを、該液体サンプルへと圧力を加えることによってダイを通って流すことができる。
【0016】
好ましくは、前記方法が、前記リザーバの前記液体サンプルへと圧力を加えて、該液体サンプルを前記ダイのプライム体積を満たすために十分に流す工程を含んでいる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態においては、前記方法が、前記通路が通じるリベートを前記ダイの平坦面に設けることによって前記チャネルを形成することを含んでいる。
【0018】
一実施形態においては、前記リベートを、前記ダイの平坦面を長手方向に完全に横切って該ダイの両端まで延ばし、該ダイの両端に開口を形成することができる。
【0019】
別の実施形態においては、前記リベートが、少なくとも前記通路から前記ダイの一端まで該ダイの平坦面を長手方向に途中まで横切って延び、該ダイの前記一端に開口を形成している。この場合には、本方法が、前記ダイおよび前記基材のお互いに対する移動を、該ダイの前記開口が位置している方の端部が該ダイの相対移動の方向の後方となるように行うことを含んでいる。好ましくは、前記リベートは、前記ダイの他端に向かって前記通路を少しの距離だけ過ぎて延び、行き止まりの空間を形成している。
【0020】
さらに別の実施形態においては、本方法が、前記サンプル位置において前記基材に溝を設けることによって前記チャネルを形成することを含んでおり、前記ダイが前記サンプル配置位置の前記一端において前記基材に接触させられたとき、前記チャネルが形成される。好ましくは、前記溝は、所定の長さである。
【0021】
またさらに別の実施形態においては、本方法が、前記ダイの平坦面に上述のとおりのリベートを設けること、および前記サンプル位置において前記基材に上述のとおりの溝を設けることによって、前記チャネルを形成することを含んでおり、前記ダイが前記サンプル配置位置の前記一端において前記基材に接触させられたとき、前記リベートおよび前記溝が協働して前記チャネルが形成される。
【0022】
上述の実施形態において、好ましくはリベートおよび/または溝は、所定の断面である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態においては、前記ダイの平坦面が、平面である。しかしながら、長さにおいて湾曲している膜を形成することも本発明の技術的範囲に含まれると考えられ、その場合には、基材および前記ダイの平坦面が、相対移動の方向においてアーチ形かつ互いに相補的であってよい。
【0024】
ひとたびダイおよび基材の前記相対移動によって膜が成膜されると、リザーバ内の前記液体サンプルへの圧力の印加が止められ、ダイが基材から取り除かれる。
【0025】
理解されるとおり、本発明の方法は、リベートを有するダイを利用する場合には、膜の形状または断面を維持するために、成膜される液体サンプルの動的粘度に依存する。結果として、そのようなダイを利用する場合には、液体が、膜の形状または断面を維持するような動的粘度を必要とする。典型的には、膜が、約0.05Pa.sから約100Pa.sまでの範囲の動的粘度を有する液体サンプルを使用して形成される。
【0026】
しかしながら、サンプル配置位置を囲んでいる基材の表面エネルギーを、約0.05Pa.sよりも低い動的粘度を有する液体サンプルを使用して膜を形成することが可能であるように調節することができる。
【0027】
さらに、本発明の方法は、溝が形成された基材を利用する場合には、例えば約0.05Pa.sよりも低い動的粘度を有する液体サンプルなど、より低い動的粘度を有する液体サンプルから膜を形成することも可能であろう。
【0028】
アーチ形の膜を形成すべき場合には、成膜後の形状の保持を可能にするために、液体サンプルの動的粘度が比較的高くなければならないことは明らかである。
【0029】
ダイを基材に接触させるために使用される力は、典型的には、約10N〜約100N、より典型的には約15N〜約35Nの範囲にある。
【0030】
液体サンプルをリザーバから押し出すために使用される力は、液体サンプルの動的粘度に依存し、粘度が高いほど、より大きな力が必要になる。しかしながら、典型的には、加えられる力は、毛管作用のみに頼るのか、あるいは正の圧力を加えるのかに応じて、約0N〜約200Nの範囲にある。より好ましくは、加えられる力は、約0.1N〜約200Nの範囲にある。
【0031】
多くの用途において、本発明の方法が、このようにして形成された液体サンプルの膜を固化させるべく処理することを含むと好ましい。これは、単に室温において溶媒および/または担体流体を気化させることを意味してもよい。しかしながら、溶媒および/または担体流体の除去を助けるために、液膜を凍結乾燥および/または加熱および/または減圧環境に曝すことを含んでもよい。膜における考慮中の化学系に応じて、液体サンプルを、周囲の温度および/または圧力、周囲の温度および/または圧力よりも低い温度および/または圧力、あるいは周囲の温度および/または圧力よりも高い温度および/または圧力で、さらには/あるいは例えばUV照射などの入射光を使用して、もしくはこの技術分野においてよく知られているとおりの他の任意の技法を使用して、硬化および/または重合させることができる。
【0032】
本発明の方法は、少なくとも2つの膜層を有している複合膜を含む膜を形成することを含んでおり、該複合膜が、本明細書において上述した実施形態のいずれかによって基材上に第1の膜層を成膜し、次いで第1の膜層へと第2の膜層を成膜し、さらに所望であれば後続の膜層を第2の膜層および後続の膜層へと順に成膜することによって形成される。基材上に第1の膜層を成膜するために使用される実施形態に応じ、すなわちチャネルが溝とリベートなしのダイとによって定められるのか、リベート(ダイの平坦面を長手方向に延びており、あるいは延びていない)を有するダイによって定められるのか、あるいはこれらの組み合わせによって定められるのかに応じて、第2の膜層を、リベート(ダイの平坦面を長手方向に完全に延びており、あるいは完全には延びていない)を有するダイを使用して第1の膜層上に成膜することができる。後続の膜層を、リベート(ダイの平坦面を長手方向に完全に延びている)を有するダイを使用して最も上の膜層の上へと成膜することができる。ダイの平坦面を長手方向に完全に延びているリベートを有する少なくとも1つのダイを、少なくとも1つの最上の膜層を形成するために使用することができ、リベートの深さは、成膜されて基材の表面上に突き出している膜層の厚さよりも大きい。
【0033】
第1および後続の膜層を、その上への第2および後続の膜層の成膜に耐えることができるようにするために、さらなる膜層を受け取る膜層を、成膜プロセスにおいて自身の形状を保持するように十分に安定にしなければならない。そのような安定性は、少なくとも部分的には、成膜プロセスの際に膜層を支持するダイによってもたらすことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、液体サンプルのさらなる成膜を受ける膜層が、さらなる膜層の成膜の際に自身の形状を保持するための十分に高い動的粘度を有してもよく、あるいは上述のように固化されていてもよい。液体サンプルのさらなる成膜を受ける膜層の動的粘度は、固有に高くてもよく、あるいは膜を固化させるべく上述のとおりの技法を使用することによって十分な水準へと高められてもよい。
【0034】
本発明の方法は、基材表面の互いに離間した関係にあるそれぞれのサンプル配置位置に膜を成膜することによって、該表面に複数の膜を形成することを含む。好都合には、前記表面へと送出されるサンプルの数は、100以下であるが、典型的には2以上、例えば4、8、16、32、または64であってよい。
【0035】
好ましくは、基材表面に形成される膜は、互いに不連続である。
【0036】
典型的には、形成される(それぞれの)膜は、約1mm〜約150mmの範囲の幅、約5mm〜約50mmの長さ、および20μm〜1000μm、より典型的には25μm〜800μmの深さを有している。しかしながら、膜のサイズが用途に応じて決まり、上記提示の範囲より大きくても、あるいは小さくてもよいことを、理解できるであろう。
【0037】
膜のアレイが、ただ1つの基材の表面に存在できるが、別の実施形態においては、基材のアレイの表面に1つまたは複数の膜を形成することができる。例えば、基材が顕微鏡用ガラス製スライドであってよく、基材上に1つの膜を成膜できる。あるいは、基材が大きな面積を有していて、基材上に2つ以上の膜を成膜してもよい。基材の材料は、任意の好都合な材料であってよく、典型的には、ガラス、金属、プラスチックであってよい。基材の材料は、例えばPTFEの基材など、剥離の性質を有してもよく、単独で存在することができる膜を、後の試験のために基材から取り外すことができる。
【0038】
ひとたび膜が形成されると、膜の少なくとも1つの性質を測定することができる。以下の例に限られるわけではないが、性質は、例えば色、透明度、耐引っかき性、または摩耗などといった物理的性質、例えば環境安定性/耐環境性などといった化学的性質、例えば強度または弾性係数などといった機械的性質、あるいは例えば抵抗または導電率などといった電気的性質であってよい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態においては、複数の膜を基材の表面のそれぞれのサンプル配置位置に形成する方法が、(a)複数の液体サンプルを、出口端がそれぞれのキャップによって閉じられているそれぞれのシリンジに用意する工程、(b)各シリンジからキャップを取り除き、液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのそれぞれのチャネルを前記基材と協働して定めるべく該基材と接触することができるダイを、シリンジの出口端へと取り付けることを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程、(c)前記それぞれのダイを、それぞれの前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させることを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程、および(d)個々のそれぞれのシリンジの液体サンプルを前記それぞれのダイを通して前記それぞれのチャネルへと押し出すと同時に、前記ダイおよび前記基材を接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜することを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程を含んでいる。
【0040】
上述した本発明の特徴は、背景状況が許す限りにおいて、本発明のこの特定の好ましい実施形態にも、必要な変更を加えて当てはまる。
【0041】
好ましくは、本発明の方法は、シリンジからダイを取り除き、シリンジに再びキャップをする工程を含んでいる。
【0042】
さらに本発明は、本発明の方法を実行することができる装置を含む。
【0043】
より具体的には、本発明の第2の態様によれば、基材の表面に膜を形成するための装置が、基材支持手段と、当該装置の動作時に前記基材支持手段によって支持された基材の表面のサンプル配置位置に少なくとも1つの液体サンプルを送出するための送出システムと、を備えており、前記送出システムは、使用時に液体サンプルを収容するリザーバを保持するための把持手段を備えており、前記リザーバは、該リザーバからの前記液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのチャネルを前記基材と協働して定めるべく前記基材に接触することができる平坦面を有するダイを備える出口を有しており、前記送出システムが、前記ダイを前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させるべく動作できる一方で、実質的に同時に、前記ダイおよび前記基材を互いに接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜すべく動作することができる。
【0044】
本発明の方法に関して上述した装置の特徴は、背景状況が許す限りにおいて、本発明による装置にも、必要な変更を加えて当てはまる。
【0045】
好ましくは、前記送出システムが、前記リザーバの液体サンプルへと圧力を加えるための手段を備えている。
【0046】
好ましくは、送出システムが、前記リザーバのピストンに係合できるピストン棒を備えることで、該ピストンを、前記リザーバの前記液体サンプルの押し出しまたは引き戻しを達成すべく動かすことができる。好ましくは、前記ピストン棒が、動力手段によって前記把持手段に対して可動であり、好ましくは、動力手段は、前記ピストン棒へと接続されて例えばステッピングモータによって駆動される送りねじを備えている。好ましくは、モータは、1μmの直線分解能を提供するIMS社(米国)から入手することができるMDriveステッピングモータである。
【0047】
好ましくは、前記ピストン棒が、第2の把持手段によって前記ピストンに係合できる。第2の把持手段は、好ましくは、無効位置と前記ピストンに係合する有効位置との間で可動な少なくとも1つ、より好ましくは2つのばね鋼製把持具を備えている。好ましくは、(それぞれの)把持具がばね鋼からなり、前記ピストンと係合する半径方向外側を向いた返しを有している。
【0048】
好ましくは、前記ピストン棒が中空であり、ピストン棒の下端からピストン棒の長さの一部分にわたって延びる直径方向のスロットを有している。(それぞれの)把持具が、この下端の付近に取り付けられ、このピストン棒の下端の向かい合う片割れが自身の自然の弾性に逆らって半径方向外側へと動かされることで、(それぞれの)把持具が前記有効位置へと半径方向外側に移動可能であり、ピストン棒の向かい合う片割れが自身の自然の弾性のもとで半径方向内側へと動くことで、(それぞれの)把持具が前記無効位置へと復帰する。前記ピストン棒の向かい合う片割れの半径方向の移動は、好ましくは、広げられた端部を有する中心部材を前記ピストン棒の中に相対移動可能に取り付けて、例えば空気式のアクチュエータによって軸方向に変位させることによって達成される。
【0049】
本発明の装置は、前記基材支持部および前記送出システムをお互いに対して位置決めするための自動化されたハンドリング設備を含んでおり、使用時に、少なくとも2つの膜を、基材表面の互いに離間した関係にあるサンプル配置位置において、該表面に成膜できる。
【0050】
さらに、本発明の方法および装置は、添付の図面に関連して後述されるような特徴を含んでいる。
【0051】
さらに、本発明は、本明細書に記載されるとおりのダイを含む。ダイを、任意の好都合な材料で製作することができる。例えば、ダイを、プラスチック材料または金属で製作することができる。いずれの場合も、ダイは、液体サンプルおよびダイの材料の性質に応じて、使い捨てであっても、あるいは好ましくは後の再使用のために溶媒または他の洗浄方法を使用して洗浄されてもよい。
【0052】
好ましくは、ダイを貫く前記通路が、ダイをおおむね横方向に延びているスロットで終わっている。好ましくは、スロットは、前記ダイと該ダイとともに使用される対応する基材との間に定めることができる前記チャネルの実質的に全幅を横切って延びている。
【0053】
すでに述べたように、コーティングを幅広く様々な材料で形成でき、本発明の文脈において、膜を、材料が液体の形態であり、溶液であり、あるいは液体担体中に分散している限りにおいて、有機および無機の両方の材料から形成することができる。典型的な用途として、接着剤、ポリマー、樹脂、塗料、インク、金属溶液、でんぷん、ナノ粒子分散液をふくむ分散液、多層半導体材料、などが挙げられる。多数のそのような用途において、材料は導電性または非導電性であってよい。
【0054】
さらに本発明は、膜の少なくとも1つのアレイ、より好ましくは膜の少なくとも2つのアレイをそれぞれの基材上に備えている膜のライブラリであって、それぞれ膜が、アレイのサンプル配置位置に関して一様に配置されている膜のアレイまたは膜のライブラリを含む。
【0055】
次に、本発明を添付の図面および以下の実施例を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による装置の概略の平面図である。
【図2】図1に示した装置の送出システムの部分断面の概略の側面図である。
【図3A】本発明の方法および装置において使用されるダイについて、図3Cの線A−Aにおける断面図である。
【図3B】本発明の方法および装置において使用されるダイについて、図3Aの線B−Bにおける断面図である。
【図3C】本発明の方法および装置において使用されるダイについて、図3Aの矢印Cにおける正面図である。
【図4】図2に示したピストン棒86の下端の概略の縦断面である。
【図5】図1のシリンジキャップシリンジキャップ/ダイ除去ステーション32の部分断面の概略の側面図である。
【図6A】本発明の方法および装置において使用されるダイの別の実施形態について、図6Cの線A−Aにおける断面図である。
【図6B】本発明の方法および装置において使用されるダイの別の実施形態について、図6Aの線B−Bにおける断面図である。
【図6C】本発明の方法および装置において使用されるダイの別の実施形態について、図6Aの矢印Cにおける正面図である。
【図7】後述の実施例3および4に記載のとおりの複合膜の断面の顕微鏡画像である。
【図8】後述の実施例3および4に記載のとおりの複合膜の断面の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明による装置10が、図1に示されている。装置10は、自動XYZハンドリングシステム14が取り付けられたフレーム12を有している。さらに、フレーム12のベース板16上に、
シリンジ20(例えば、EFD社から入手できる10mlシリンジ)を収容しているラック18、
装置10の使用時にそれぞれに液体の膜を載せることができる32個のガラス製スライド(図示せず)をそれぞれ固定することができる2つのラック22であって、それぞれのガラス製スライドのサンプル配置位置に一致するが、該サンプル配置位置よりもわずかに大きい細長いスロット24を有している上部プレート(図示のとおり)をそれぞれが有しているラック22、
ダイ30を収容するためのラック26(さらに詳しくは、後述)、
新しいシリンジキャップ36を収容するためのラック28、
シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32、
溶媒または他の液体を収容することができ、除去されたシリンジキャップ36およびダイ30を受け取るべくベース板16の開口の下方に配置される収容容器(図示せず)、
使用済みのシリンジ20を受け取るべくベース板16の開口の下方に配置される収容容器(図示せず)、および
フレーム12に対して垂直移動(Z軸)すべくハンドリングシステム14に取り付けられた送出システム34(図2参照)
が配置されている。
【0058】
ガラス製スライドが、液体サンプルの膜を受け取るための基材として例示されているが、本発明の装置10において、他の材料および他のサイズの基材も容易に使用できることを、これまでの説明から理解できるであろう。
【0059】
ダイ30を、本発明によれば(図3A〜図3Cを参照)、プラスチックまたは例えば真ちゅうなどの金属で製作することができ、それぞれのダイ30は、この実施形態においては、丸められた端部42、44を有する細長い本体40を有しており、本体40の上面の中央に、本体40の円筒孔48と同軸な環状の突起46を有している。環状の突起46の上端には、シリンジ20の出口端の位置決めを容易にするために、皿取り47が施されている。
【0060】
円筒孔48は、ダイ30の本体40の内部を終端としており、内側の端部において、本体40を横断して延びているスロット50と交わっている。
【0061】
ダイ30の本体40の平坦な下面52には、リベート54が機械加工または成型されており、リベート54は、一端42において開いており、一端42から他端44へと向かって本体40の長手方向に本体40の全長の半分を超える長さにわたって延びており、したがってスロット50を過ぎた位置を終端とし、液体行き止まり空間56をもたらしている。このような行き止まり空間56を設けることは、そのような行き止まり空間が、小さな圧力の変動に対応するための小さな液体リザーバとして機能し、おそらくは表面の濡れを容易にすると考えられるため好ましい。リベート54を、上述のとおり必要な寸法の膜を生成するような寸法とすることができる。
【0062】
シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32は、第1の上側くさび60を有している。くさび60は、送出システム34によって保持されたシリンジ20(キャップ36を備えて図示されている)の下端を受け入れるためのU字形の開口62を有しており、くさび60において開口62のリムを形成している部位が、除去しようとするキャップ36またはダイ30に係合するよう、お互いに対して十分に近い。第1のくさび60は、開口62の開放端に向かって先細りであって、水平向きの上面および斜めの下面を有しており、矢印によって示されているとおりの往復の垂直運動のためにベアリング(図示せず)に取り付けられている。さらに、ステーション32は、U字形の開口66を有する第2のくさび64を有している。第2のくさび64は、実質的に第1のくさび60と同じであるが、第1のくさび60の向きと比べて反対の向きを有している。第2のくさび64は、第1のくさび60のXY位置に対して矢印によって示されているとおりの往復の水平運動のために、空気圧アクチュエータ(図示せず)に取り付けられている。第2のくさび64が第1のくさび60に向かって動くことで、第2のくさび64の水平な下面がキャップ36(または、ダイ30)に係合し、第1のくさび60が送出システム34と一緒に垂直方向に動かされ、シリンジ20がキャップ36(または、ダイ30)から分離される。
【0063】
送出システム34は、直線ベアリング72を介してハンドリングシステム14のZ軸支持部材70に取り付けられている。送出システム34は、ブラケット76によって支持部材70に取り付けられた圧縮ばね74によって、支持部材70に対して保持されている。
【0064】
送出システム34は、U字形の断面であるフレーム78を、直線ベアリング72に取り付けて有している。シリンジ20を保持するための空気動作の把持部材80が、フレーム78の下側リムに取り付けられている。電動ステッピングモータ82が、フレーム78の上側リムに取り付けられている。モータ82は、フレーム78のリムのねじ穴に支持された送りねじ84を駆動するために使用される。
【0065】
送りねじ84に、中空ピストン棒86が、垂直移動のために取り付けられている。中空ピストン棒86の下端の内部に、スプレッダ部材88が、ピストン86の軸方向に可動に取り付けられている。さらに、ピストン棒86の下端には、下端にわずかな返し92を有するばね鋼製の2つの把持具90が、半径方向において対向して取り付けられている。部材88が軸方向に上方へと移動することで、把持具90の下端が半径方向外側へと動いて、シリンジ20のピストンヘッド部材(図示せず)と係合する一方で、この反対の動きは、把持具90が自身の固有の弾性によって半径方向内側へと復帰し、上述のピストン部材から離れることを可能にする。
【0066】
ハンドリングシステム14および装置10の一部を形成する他のアクチュエータは、必要な装置10の動作のシーケンスによってプログラムすることができるコンピュータ(図示せず)を使用して制御される。
【0067】
動作時、送出システム34が、ハンドリングシステム14によってラック18へと動かされ、第1のシリンジ20を取り上げる。シリンジ20内の材料の量が未知であるため、把持具80がシリンジ20を把持する前に、ピストン棒86がモータ82および送りねじ84を使用してシリンジ20へと、シリンジ20内のピストンヘッド部材との接触による送出システム34の上方移動が検出されるまで下げられる。そのような移動が検出された後、ピストン棒86の動きが止められ、さらにピストン棒86が、ダイをシリンジ20からの液体で満たすべくユーザによって定められる量だけ下方に動かされる。次いで、把持具80が、シリンジ20を把持すべく閉じられる。
【0068】
次いで、送出システム34が、シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32へと動かされ、シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32において、シリンジ20が第1のくさび60に対して配置される。次に、第2のくさび64が、キャップ36および第1のくさび60に係合するように水平方向に動かされ、第1のくさび60を垂直方向に移動させてシリンジ20からキャップ36を取り除き、収容容器へと落下させる。次いで、送出システム34が、ラック26へと第1のダイ30の上方の位置まで動かされ、シリンジ20の出口端をダイ30の環状の突起46に係合させるべく下げられる。シリンジ20とダイ30との正確な係合を保証するために、最初の接触の後に把持具80がシリンジ20を解放し、その後に送出システムによってシリンジ20へと下向きの力を加えた状態でシリンジ20を再び把持する。
【0069】
次いで、送出システム34が、第1のラック22上の第1の送出位置へと動かされ、この送出位置に位置するガラス製スライドにダイ30の下面52を接触させるべく下げられる。ダイ30は、ガラス製スライド上のサンプル配置位置の一端に配置され、端部44が後のダイ30の移動の方向に面するように向けられる。ダイ30は、送出システム34の重量とばね74によって加えられる圧力との組み合わせである圧力にて、ガラス製スライドに接触する。生じる接触圧の大きさは、送出システム34の重量、ばね74のばね定数、およびばね74へと加えられる圧縮の大きさの関数である。典型的には、約10N〜35Nの範囲にあってよい。
【0070】
ピストン棒86が、シリンジ20から液体を送出すべく下げられると同時に、送出システム34、したがってダイ30を依然としてガラス製スライドに接触させた状態で、サンプル配置位置の遠方端に向かって動かされる。この組み合わせの動作のもとで、液体が、ダイ30の平坦な表面52およびリベート54とガラス製スライドとによって定められるチャネルへと流れ、ダイ30がガラス製スライドに沿って移動するときにガラス製スライド上に配置される。
【0071】
ダイ30がサンプル配置位置の端部に近付くにつれ、ピストン棒86のシリンジ20に対する動きが停止され、サンプル配置位置に達すると、送出システム34が、ダイ30をガラス製スライドとの接触から離すべく上方へと動かされると同時に、ピストン棒86が、シリンジ20に対してわずかに引き込まれる。
【0072】
シリンジ20内の液体サンプルを、2つ以上の膜を形成するために使用すべき場合、送出システム34が、ラック22上の第2の(必要であれば、その後の)ガラス製スライドへと動かされ、送出の手順が繰り返される。典型的な実験の状況においては、それぞれのシリンジ20から最大4つの膜を形成することが可能である。
【0073】
ひとたび膜が形成されると、次に送出システム34は、シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32へと動かされ、シリンジキャップ/ダイ除去ステーション32においてダイ30が、上述したキャップ36の除去と同様にしてシリンジ20から取り除かれる。
【0074】
次いで、送出システム34は、ラック28へと動かされて、第1のキャップ位置の上方に配置され、シリンジ20の端部に新たなキャップ36を係合させるべく下げられる。次に、送出システム34は、使用済みシリンジ20の収容容器の位置へと動かされ、シリンジ20が解放されて容器へと落とされる。使用済みのシリンジ20を、廃棄することができ、あるいは依然として利益のある液体調合物を含んでいる場合には、再使用のために集めることができる。後者の場合には、収容容器の環境を、例えば冷却によって制御することができる。
【0075】
この手順が、別のシリンジ20について繰り返される。
【0076】
ひとたびラック22のガラス製スライドのすべてに膜が形成されると、コンピュータは、このラック22をフレーム12から取り出し、さらに任意によりシリンジ・ラック18ならびにダイおよびキャップ・ラック26および28の補充を行い、新品で満たされたラック22をフレーム12へと挿入することができるように、小休止することができる。次いで、ガラス製スライドを、固体薄膜を形成すべく上述のとおりに処理することができる。
【0077】
別の実施形態においては、それぞれのダイ30Aが、本発明によれば(図6A〜6Cを参照)、本実施形態においては、丸められた端部42A、44Aを有する細長い本体40Aを有しており、本体40Aの上面の中央に、本体40Aの円筒孔48Aと同軸な環状の突起46Aを有している。環状の突起46Aの上端には、シリンジ20の出口端の位置決めを容易にするために、皿取り47Aが施されている。
【0078】
円筒孔48Aは、ダイ30Aの本体40Aの内部を終端としており、内側の端部において、本体40Aを横断して延びているスロット50Aと交わっている。
【0079】
ダイ30Aの本体40Aの平坦な下面52Aには、リベート54Aが機械加工または成型されている。リベート54Aは、行き止まりでなく、本体40Aの長手方向の一端42Aから他端44Aまで、ダイ30Aの全長にわたって延びている。リベート54を、上述のとおり必要な寸法の膜を生成するような寸法とすることができる。
【0080】
次に、本発明を、以下の実施例を参照してさらに説明する。
実施例1
10mlのシリンジを、約5Pa.sの粘度を有する塗料サンプル、および約10Pa.sの動的粘度を有する接着剤サンプル(Ablebond 8200c、Ablestik社から入手できる銀充てんエポキシ樹脂接着剤)で準備した。これらのシリンジを、図3A〜3Cに関して上述したダイ30を使用して本発明に従ってガラス製顕微鏡スライド上に膜を生成するために使用した。ダイ30のリベートは、長さ17mm、幅10mmとし、それぞれ75μmおよび450μmの深さとした。リベートへと開いているダイ30のスロット50は、ダイ30の前端から10mmであり、1mmの幅である。塗料の膜を、室温で乾燥させた。接着剤の膜については、約175℃の箱形オーブンで硬化させた。
【0081】
次いで、膜を、膜の長手軸上に位置する3点(表の位置1、2、および3)において、マイクロメータを使用して測定した。位置2が、膜の長さにおけるほぼ真ん中であり、位置1および3は、位置2の両側である。
【0082】
測定の結果が表1に提示されており、75μmの深さを有するダイを使用して製作した塗料サンプル膜に、番号1〜8が付されており、450μmの深さを有するダイを使用して製作した塗料サンプル膜に、番号9〜16が付されている。膜の長さに沿った測定の各組のパーセントによる相対標準偏差(%RSD)、および各測定点における測定の各組の%RSDが、提示されている。同様に、接着剤サンプル膜の結果が、表2に提示されており、それぞれ番号17〜24および25〜32が付されている。
実施例2(比較用)
実施例1において使用した液体サンプルを、約130μmのテープを使用して溝を形成したガラス製顕微鏡スライド上に2組の膜を生成するために使用した。第1組のスライドには、その各側に沿ってテープを1層のみ設け、第2組のスライドには、その各側に沿ってテープの3層を設けた。スライド上に配置した液体サンプルを、ドクターブレードを使用して均した。膜を、実施例1に記載のとおりに乾燥または硬化させ、膜の厚さを、実施例1に記載のとおりに測定した。
【0083】
結果が表3に提示されており、1枚のテープの厚さを使用して形成され、すなわち約130μmの公称深さを有する溝にて形成された塗料サンプル膜に、番号1C〜8Cが付されており、3枚のテープの厚さを使用して形成され、すなわち約390μmの公称深さを有する溝にて形成された塗料サンプル膜に、番号9C〜16Cが付されている。同様に、接着剤サンプル膜の結果が、表4に提示されており、それぞれ番号17C〜24Cおよび25C〜32Cが付されている。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
それぞれの膜についての%RSDの数字および膜上の各測定点についての%RSDの数字の比較から見て取ることができるとおり、本発明に従って形成された膜は、公知の技法を使用して形成された膜に少なくとも比肩できる。さらに、特には薄い膜および低い粘度の材料について、膜形成の再現性(測定点の%RSDの数字)が、本発明の方法に従って形成された膜において、公知の技法を使用して形成された膜に比べて向上している。
実施例3
接着剤の多層複合膜100を、本発明の方法を使用して、ガラス製スライド102上に作成した。第1の導電接着剤からなる第1の膜層104を、長さ20mm(丸められた端部42A、44Aの頂点にて測定)のリベートを有し、10mmの幅および220μmの深さを有している図6A〜6Cを参照して上述したダイ30Aを使用して、ガラス製スライド102上に成膜した。次いで、この第1の膜層104をオーブンで硬化させた。
【0089】
第2の別の導電接着剤からなる第2の膜層106を、長さ20mm(丸められた端部42A、44Aの頂点にて測定)のリベートを有し、10mmの幅および500μmの深さを有している図6A〜6Cを参照して上述した第2のダイ30Aを使用して、第1の膜層104上へと成膜した。次いで、この第2の膜層106をオーブンで硬化させた。
【0090】
この複合膜100を調べることができるよう、ガラス製スライド102上の複合膜100をエポキシ樹脂108で包んだ。次いで、エポキシ樹脂を硬化させ、包まれている複合膜100およびガラス製スライド102を断面に切断し、研磨した。この多層複合膜100の断面の顕微鏡画像が、図7に示されている。接着剤の2つの膜層104、106の間の界面を、画像においてはっきりと見て取ることができる。第1の膜層104の厚さは、約145μmであり、第2の膜層106の厚さは、約85μmであった。全体として、多層複合膜100の厚さは、約230μmであった。複合膜100の形状を、レーザ表面形状測定装置を使用して調べたところ、得られた三次元画像は、複合膜100の厚さが複合膜の長さおよび幅において極めて一様であることを示しており、顕微鏡画像から得られた厚さに一致していた。
実施例4
塗料多層複合膜110を実証するために、水性エマルジョン塗料からなる第1の膜層114を、長さ20mm(丸められた端部42A、44Aの頂点にて測定)のリベートを有し、10mmの幅および220μmの深さを有している図6A〜6Cを参照して上述したダイ30Aを使用して、ガラス製スライド112上に成膜した。次いで、この第1の膜層114を、周囲条件で乾燥させた。
【0091】
水性塗料からなるが別の色である第2の膜層116を、長さ20mm(丸められた端部42A、44Aの頂点にて測定)のリベートを有し、10mmの幅および500μmの深さを有している図6A〜6Cを参照して上述した第2のダイ30Aを使用して、第1の膜層114の上に成膜した。次いで、この第2の膜層116を、周囲条件で乾燥させた。
【0092】
この複合膜110を調べることができるよう、ガラス製スライド112上の複合膜110をエポキシ樹脂118で包んだ。次いで、エポキシ樹脂を硬化させ、包まれている複合膜110およびガラス製スライド112を断面に切断し、研磨した。この多層複合膜110の断面の顕微鏡画像が、図8に示されている。塗料の2つの膜層114、116の間の界面を、画像においてはっきりと見て取ることができる。第1の膜層114の厚さは、約47μmであり、第2の膜層116の厚さは、約74μmであった。全体として、多層複合膜110の厚さは、約121μmであった。複合膜110の形状を、レーザ表面形状測定装置を使用して調べたところ、得られた三次元画像は、複合膜110の厚さが複合膜の長さおよび幅において極めて一様であることを示しており、顕微鏡画像から得られた厚さに一致していた。
【0093】
理解されるとおり、この実施例における異なる色の塗料の使用は、あくまで多層複合膜の形成を実証するために好都合であるからであり、例えば下地、下塗り、および上塗りの塗料などといった着色および非着色のコーティングなど、他の塗装システムも本発明の方法および装置を使用して調査することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に膜を形成する方法であって、
膜へと形成される液体サンプルを収容しているリザーバであって、当該リザーバからの前記液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのチャネルを前記基材と協働して定めるべく前記基材に接触することができる平坦面を有しているダイを出口に備えているリザーバを、基材表面のサンプル配置位置にもたらす工程と、
前記ダイを前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させる工程と、
前記液体サンプルを前記ダイを通して前記チャネルへと押し出すとともに、実質的に同時に、前記ダイおよび前記基材を接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜する工程と
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記リザーバがカートリッジである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リザーバと前記ダイとの間に相対移動を生じさせて、前記リザーバと前記ダイの間に押し込みを生成することによって、前記二者を係合させる工程
を含んでいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記リザーバの前記液体サンプルへと圧力を作用させて、前記液体サンプルを前記ダイを通って流す工程
を含んでいる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記リザーバの前記液体サンプルへと圧力を作用させて、前記液体サンプルを前記ダイのプライム体積を満たすために十分に流す工程
を含んでいる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記液体サンプルが流入するリベートを前記ダイの平坦面に設けることによって前記チャネルを形成する工程
を含んでいる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記リベートが、前記ダイの平坦面を長手方向に完全に横切って前記ダイの両端まで延び、前記ダイの両端に開口を形成している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リベートが、少なくとも該リベートへの前記液体サンプルの入り口点から前記ダイの一端まで前記ダイの平坦面を長手方向に途中まで横切って延び、前記ダイの前記一端に開口を形成している、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記液体サンプルが、約0.05Pa.sから約100Pa.sまでの範囲の動的粘度を有している、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記膜が、少なくとも2つの膜層を有する複合膜を含んでおり、
前記複合膜が、前記表面に第1の膜層を成膜し、次いで第1の膜層へと第2の膜層を成膜し、さらに所望であれば後続の膜層を第2の膜層および後続の膜層へと順に成膜することによって形成される、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの液体サンプルが、前記表面のサンプル配置位置において送出される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
膜のアレイが、単一の基材上に形成される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
膜のアレイのそれぞれの膜が、単一の基材上に形成される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ダイにて少なくとも1つの膜を形成した後で、前記ダイを廃棄する工程
を含んでいる、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
複数の膜を基材の表面のそれぞれのサンプル配置位置に形成する方法であって、
(a)複数の液体サンプルを、出口端がそれぞれのキャップによって閉じられているそれぞれのシリンジに用意する工程、
(b)各シリンジからキャップを取り除き、液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのそれぞれのチャネルを前記基材と協働して定めるべく該基材と接触することができるダイを、シリンジの出口端へと取り付けることを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程、
(c)前記それぞれのダイを、それぞれの前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させることを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程、および
(d)個々のそれぞれのシリンジの液体サンプルを前記それぞれのダイを通して前記それぞれのチャネルへと押し出すと同時に、前記ダイおよび前記基材を接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜することを、並列に実行し、好ましくは順次に実行する工程
を含んでいる方法。
【請求項16】
基材の表面に膜を形成するための装置であって、
基材支持手段と、
前記装置の動作時に前記基材支持手段によって支持された基材の表面のサンプル配置位置に少なくとも1つの液体サンプルを送出するための送出システムと、
を備えており、
前記送出システムは、使用時に液体サンプルを収容するリザーバを保持するための把持手段を備えており、
前記リザーバは、該リザーバからの前記液体サンプルの少なくとも一部を受け入れるためのチャネルを前記基材と協働して定めるべく前記基材に接触することができる平坦面を有するダイを備える出口を有しており、
前記送出システムが、前記ダイを前記サンプル配置位置の一端において前記基材に接触させるべく動作できる一方で、実質的に同時に、前記ダイおよび前記基材を互いに接触させた状態でお互いに対して動かして、前記ダイを前記サンプル配置位置の遠方端に向かって動かすことで、前記液体サンプルの膜を前記サンプル配置位置に成膜すべく動作可能な装置。
【請求項17】
前記ダイが、該ダイの平坦面にリベートを有している、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記リベートが、前記ダイの平坦面を長手方向に完全に横切って前記ダイの両端まで延び、前記ダイの両端に開口を形成している、請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
前記リベートが、少なくとも該リベートへの前記液体サンプルの入り口点から前記ダイの一端まで前記ダイの平坦面を長手方向に途中まで横切って延び、前記ダイの前記一端に開口を形成している、請求項16または17に記載の装置。
【請求項20】
前記送出システムが、前記リザーバの液体サンプルへと圧力を加えるための手段を備えている、請求項16から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記送出システムが、前記リザーバのピストンに係合できるピストン棒を備えることで、前記ピストンを、前記リザーバの前記液体サンプルの押し出しまたは引き戻しを達成すべく動かすことができる、請求項16から20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
前記ピストン棒が、該ピストン棒へと接続されてステッピングモータによって駆動される送りねじによって、前記把持手段に対して可動である、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記ピストン棒が、第2の把持手段によって前記ピストンに係合できる、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記第2の把持手段が、無効位置と前記ピストンに係合する有効位置との間で可動な少なくとも1つ、好ましくは2つのばね鋼製把持具を備えている、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記基材支持部および前記送出システムをお互いに対して位置決めするための自動化されたハンドリング設備を備えており、使用時に、少なくとも2つの膜を、基材表面の互いに離間した関係にあるサンプル配置位置において、前記表面に成膜できる、請求項16から24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
液体を受け入れるためのリベートが形成された平坦面を有する本体を備えており、液体流通路が、前記本体を貫いて延びて前記リベートにおいて終わっているダイ。
【請求項27】
前記リベートが、前記ダイの平坦面を長手方向に完全に横切って前記ダイの両端まで延び、前記ダイの両端に開口を形成している、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記リベートが、少なくとも前記通路から前記ダイの一端まで前記ダイの前記平坦面を長手方向に途中まで横切って延び、前記ダイの前記一端に開口を形成しており、前記ダイの前記端部が、使用時の前記ダイの移動の方向に関して後端である、請求項26に記載のダイ。
【請求項29】
前記リベートが、使用時の前記ダイの移動の方向に関する前記ダイの前端に向かって、前記通路を超えて長手方向に延びている、請求項23に記載のダイ。
【請求項30】
前記通路が、前記リベートの実質的に全幅を延びているスロットにて終わっている、請求項27から29のいずれかに記載のダイ。
【請求項31】
膜の少なくとも1つのアレイ、より好ましくは膜の少なくとも2つのアレイをそれぞれの基材上に備えている膜のライブラリであって、各膜が、アレイのサンプル配置位置に関して一様に配置されている膜のアレイまたは膜のライブラリ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−503523(P2010−503523A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527903(P2009−527903)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050557
【国際公開番号】WO2008/035116
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509076085)インペリアル ケミカル インダストリーズ ピーエルーシー (1)
【Fターム(参考)】