膜ろ過方法および膜ろ過装置
【課題】良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制することができる膜ろ過方法および膜ろ過装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、膜による被処理水のろ過工程前に被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって、所望の凝集特性を得ることができるため、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制して効率的に膜ろ過処理を行なうことができる。
【解決手段】本発明は、膜による被処理水のろ過工程前に被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって、所望の凝集特性を得ることができるため、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制して効率的に膜ろ過処理を行なうことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜による被処理水のろ過前に被処理水に凝集剤を注入して凝集させる膜ろ過方法および膜ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川水、湖水、地下水、上水道、下水道、工業用水または廃水などの除濁処理技術として、微細孔が形成された膜を用いた膜ろ過方法の導入が進められている。この膜を用いた膜ろ過方法は、地下水を原水とする浄水場において主に採用されていたが、河川水を原水とする処理場においても採用が進められている。ここで、河川水のように夾雑物が多く混入する原水を処理する場合、膜ろ過の前処理として被処理水に凝集剤を注入し凝集処理を行ない、膜ろ過処理の安定化と適用原水範囲の拡張化を図っている。
【0003】
凝集処理においては、原水中の濁度成分、および、そのままでは膜によって除去できない膜の細孔径以下の溶解性物質である色度成分を、凝集剤によって凝集フロック内に取り込ませて不溶化させている。この凝集剤の注入量が不足した場合、凝集フロックへの色度成分等の取り込みが十分に行なわれないため、膜の目詰まりが発生し、ろ過水質の低下および膜差圧の上昇が発生してしまう場合がある。また、凝集剤の注入量が過剰である場合、凝集フロックが過剰に生成されて膜の閉塞が進行し、短時間に膜差圧が上昇してろ過処理が行なえなくなる場合がある。このため、従来においては、原水の色度、濁度の測定結果をもとに凝集剤の注入量を制御する膜ろ過方法や、凝集剤注入後のフロック粒径の計測結果と膜の細孔径とをもとに凝集剤の注入量を制御する膜ろ過方法などによって凝集処理を制御し、膜面からの剥離性が高い凝集フロックの形成を図っている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−336871号公報
【特許文献2】特開平11−57739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原水中の濁度成分および色度成分は、粒子表面に荷電を帯びており、反発しあうことによって原水中において安定した分散状態を保持している。このため、凝集剤は、まず粒子表面の荷電を中和することによって、分散していた濁度成分および色度成分を凝集させている。しかしながら、色度成分は、一般的に濁度成分よりも粒子径が小さいため、濁度成分よりも凝集剤によって中和すべき荷電総量が多く、色度成分を凝集させるには凝集剤の注入量を高める必要がある。したがって、従来においては、色度成分を十分に取り込んだ凝集フロックを生成するには凝集剤を多く注入しなければならず、凝集剤の消費量を抑制することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明によれば、上記に鑑みてなされたものであって、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制することができるろ過方法および膜ろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる膜ろ過方法は、膜による被処理水のろ過工程前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、前記ろ過処理後のろ過水の水質を計測する水質計測手段と、前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、前記凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、前記凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、前記被処理水における原水の水質を計測する水質計測手段と、前記膜における膜差圧を計測する圧力計測手段と、前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、凝集処理において、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって所望の凝集特性を得ることができるため、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制して効率的に膜ろ過処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0024】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1において説明する。実施の形態1においては、ろ過工程後のろ過水の水質の値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって、凝集液体の凝集特定を制御して凝集剤の消費量の抑制とともにろ過処理の安定化を図っている。
【0025】
図1は、実施の形態1にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる膜ろ過装置1は、原水槽2、混和槽3、凝集剤容器4、凝集剤注入ポンプ5、攪拌機構6、pH計7、pH調整剤容器81,82、調整剤注入ポンプ91,92、原水ポンプ10、膜11、ろ過水槽12、逆洗ポンプ13、色度計14、制御部20、入力部22および出力部23を有する。この膜ろ過装置1は、夾雑物が混入する原水に対してろ過処理を行なう。
【0026】
原水槽2は、河川水や湖沼水などの原水が流入され、流入された原水を貯留できる。原水槽2に貯留された原水は、混和槽3に送水される。混和槽3においては、原水槽2から送水された原水に凝集剤が注入され、原水中の濁度成分、色度成分を取り込んだ凝集フロックを形成する凝集反応が行なわれる。混和槽3は、混合攪拌された凝集剤と原水とを少なくとも凝集反応時間滞留させる。凝集剤容器4は、混和槽3に注入される凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を収容する。凝集剤注入ポンプ5は、制御部20の制御のもと、凝集剤容器4内の所定量の凝集剤を混和槽3内に注入する。攪拌機構6は、混和槽3内に送水された原水と混和槽3内に注入された凝集剤とを混合し、凝集反応による凝集フロックを形成する。
【0027】
pH計7は、混和槽3内の液体のpHを計測し、計測したpHを制御部20に出力する。なお、pHの計測は、混和槽3に限らず、ろ過水などに対し行なってもよく、制御部20は、入力されたpHの計測値を用いてpH制御処理を行なう。
【0028】
pH調整剤容器81は、混和槽3内に注入されて混和槽3内の液体のpHを調整するpH調整剤として、硫酸を収容する。pH調整剤容器82は、混和槽3内に注入されて混和槽3内の液体のpHを調整するpH調整剤として、炭酸水素ナトリウムを収容する。なお、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ剤は、原水の水質に応じて設置すればよい。
【0029】
調整剤注入ポンプ91は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器81内の硫酸を混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ92は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器82内の炭酸水素ナトリウムを混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ91,92は、特許請求の範囲における凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段として機能する。調整剤注入ポンプ91は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器81内の所定量の硫酸を混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ92は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器82内の所定量の炭酸水素ナトリウムを混和槽3内に注入する。また、原水ポンプ10は、混和槽3内のフロック含有水を膜11に加圧送水する。
【0030】
膜11は、微細孔が形成されており、原水ポンプ10によって送水されたフロック含有水から凝集フロックを分離し、ろ過水をろ過水槽12に送出する。この膜の孔径は、集塊化していない凝集フロックを除去するため、0.5μm以下である。ろ過水槽12は、膜11によってろ過されたろ過水を貯留する。逆洗ポンプ13は、膜11における所定時間のろ過処理後、空気またはろ過水を逆流させて膜11の細孔内および膜11の表面の抑留物を除去する逆洗処理を行なう。色度計14は、ろ過水槽12に貯留されたろ過水の色度を計測し、計測したろ過水の色度を制御部20に出力する。
【0031】
制御部20は、膜ろ過装置1を構成する各構成部位を制御する。制御部20は、pH制御部21を有する。入力部22は、膜ろ過装置1の処理動作に関する情報を制御部20に入力する。出力部23は、膜ろ過装置1の処理動作に関する情報を出力する。
【0032】
pH制御部21は、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には、調整剤注入ポンプ91,92による硫酸または炭酸水素ナトリウムの投入量を制御して、凝集液体のpHを第1のpH範囲である中性から弱アルカリ性の範囲内となるように制御する。そして、pH制御部21は、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には、調整剤注入ポンプ91,92による硫酸または炭酸水素ナトリウムの投入量を制御して、中性から弱アルカリ性の範囲内に制御されていた凝集液体のpHを、第2のpH範囲である弱酸性域内に変化させる。
【0033】
ここで、混和槽3内の液体である凝集液体のpH制御に対する第1のpH範囲および第2のpH範囲は、原水に対する凝集剤の凝集特性に応じて設定される。凝集剤がPACの場合には、第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲に設定されており、第2のpH範囲は、pHが5.0〜6.8の弱酸性域である弱酸性域に設定されている。この各pH範囲を説明するため、図2を参照して、PACにおける凝集特性について説明する。
【0034】
図2は、凝集剤であるPACのpHによる形態変化を示す図である。図2に示すように、PACは、pHが1〜3の強酸性域S1である液体内に注入された場合、溶解性であるAl3+となる。そして、PACは、pHが2.5〜5.5の酸性域S2である液体内に注入された場合、主なものは溶解性であるAl8(OH)204+となる。このAl8(OH)204+は、PACが有する形態のうち最も正電荷が高い形態であるため、原水中の粒子の荷電状態を中和できる荷電中和力が他の形態よりも大きく最大となる。また、PACは、pHが4.5〜9.5の中性近傍域S3である液体内に注入された場合、主なものは不溶性であるAl(OH)3となる。このAl(OH)3は、架橋作用が強いため、強度の強い凝集フロックを形成できる。そして、PACは、pHが7.5以上であるアルカリ域S4である液体内に注入された場合、溶解性であるAl(OH)4-となる。
【0035】
原水中の濁度成分および色度成分は、粒子表面が負に荷電しているため、相互に反発しあい沈殿しにくく、原水中において分散状態を保持している。この原水中の濁度成分および色度成分は、荷電中和力を有する形態を取ったPACの作用によって、粒子表面が中和され、粒子間の反発力が減じる。この結果、分散していた濁度成分および色度成分が凝集し、架橋作用の強い形態を取ったPACの作用によって、濁度成分および色度成分の凝集が大きくなり凝集フロックが形成される。
【0036】
従来の膜ろ過装置は、混和槽内の液体のpHを、常時、中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御することによって、PACの強い架橋作用を利用して強度の強い大きな凝集フロックを形成していた。一般に、凝集剤を加えるとアルカリ度が消費されて混和槽内の液体のpHは低下していく。このため、従来は、混和槽内の液体のpHが常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように、混和槽内の液体のpHに対応させて、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ剤を注入していた。特に、夾雑物をろ過する膜と比べて膜の孔径が大きい砂ろ過装置においては、凝集後の沈殿不良および膜によるろ過不良がないように、強度の強い大きな凝集フロックを確実に成長させる必要があったため、混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように厳密に制御していた。
【0037】
しかしながら、従来のように混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、PACのほとんどは、架橋作用の強いAl(OH)3となり、荷電中和力の強いAl8(OH)204+が少ない状態となる。このため、混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、混和槽内の液体のpHが酸性域である場合と比較して、混和槽に送出された原水中の濁度成分および色度成分の荷電中和の進行が遅くなる。さらに、色度成分は、一般的に濁度成分よりも粒子径が小さく、濁度成分よりも凝集剤によって中和すべき荷電総量が多い。このため、従来のように混和槽内の液体のpHが常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、濁度成分および色度成分の荷電中和を進行させるために、凝集剤を過剰に注入する必要があった。したがって、凝集剤の消費量を抑制することが困難であった。
【0038】
これに対し、膜ろ過装置1における膜11は、集塊化していない凝集フロックを除去するため、0.5μm以下の孔径を有する。すなわち、膜11は、濁度成分以上の粒径を有するものであれば、除去することができる。このため、膜ろ過装置1は、常に大きなサイズの凝集フロックを形成しなくとも、被処理水を適切にろ過することができる。言い換えると、膜ろ過装置1においては、常時、大きなサイズの凝集フロックを形成する必要がない。そこで、膜ろ過装置1は、混和槽3内の液体のpHを必要な場合にのみ酸性域に変化させて、色度成分の荷電中和を効率的に促進させている。
【0039】
つぎに、混和槽3内の液体である凝集液体のpH制御に対する第2のpH範囲を弱酸性域に設定する理由について説明する。図2に示す酸性域S2においては、濁度成分および色度成分の粒子表面の荷電をAl8(OH)204+によって最も強く中和できる。このため、原水の状態が酸性域S2であるときにPACを注入した場合、原水の状態が中性近傍域S3であるときに凝集剤を注入する場合と比較して少ない量の凝集剤によって、濁度成分および色度成分の荷電中和が可能となり凝集を開始することができる。特に、濁度成分よりも粒子径が小さく凝集剤によって中和すべき荷電総量が多い色度成分が原水中を多く占めている場合であっても、原水の状態を酸性域S2とした状態でPACを注入することによって、PACの注入量を増加させることなく色度成分における荷電中和を可能とする。
【0040】
しかしながら、酸性域S2のうち比較的酸性が強い状態の原水にPACを注入した場合、PACはAl8(OH)204+の形態を主に有するため、Al(OH)3による架橋作用が発揮されず、強度の弱い凝集フロックが形成され膜11へ導入されてしまう。強度の弱い凝集フロックは、原水ポンプ10の加圧送水によって破壊しやすく、凝集フロックの破壊による膜11の目詰まりなどを誘発し、許容範囲を超えた過度の負担を膜11に与えてしまうおそれがある。
【0041】
このため、本実施の形態1における膜ろ過装置1においては、pH制御部21は、Al8(OH)204+による荷電中和力およびAl(OH)3による架橋作用の双方を発揮できる弱酸性域Sp(pHが5.0〜6.8である。)を、第2のpH範囲として設定する。pH制御処理におけるpHの制御範囲は、原水に対するPACのpH依存凝集特性に応じて設定される。pH制御部21は、色度成分が十分に凝集されていない場合などにおいて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内に制御する。この結果、膜ろ過装置1においては、凝集フロックにおける強度の急激な低下を抑制しながら濁度成分および色度成分の表面の荷電中和を促進できるため、混和槽3内の液体が中性から弱アルカリ性である場合よりも凝集剤の注入量を低減することができるとともに凝集フロックの生成も行なうことが可能になる。
【0042】
この弱酸性域Spにおいては、PACの一部は、溶解性のAl8(OH)204+の形態を有する。このため、弱酸性域Spの状態である原水にPACを注入した場合、溶解性のAl8(OH)204+を含むフロック含有水が混和槽3から膜11に圧送される可能性がある。しかしながら、膜11は溶解性のAl8(OH)204+を除去することができない。この結果、Al8(OH)204+がろ過水槽12内のろ過水内に残存したままとなるおそれがある。
【0043】
そこで、pH制御部21は、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域Sp内となるpH制御処理を常時行なわず、必要となった場合にのみ、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域Sp内となるpH制御処理を行なうことによって、ろ過水へのPAC成分の残存を防止している。
【0044】
具体的には、pH制御部21は、通常は、混和槽3内の液体のpHが中性から弱アルカリ性の第1のpH範囲になるようにpH調整剤の投入を制御する。そして、pH制御部21は、ろ過水に色度成分が許容量以上残存し、ろ過水の水質が低下した場合に、混和槽3内の液体のpHを第2のpH範囲である弱酸性域Sp内とするpH制御処理を行なう。言い換えると、pH制御部21は、ろ過水の色度が、ろ過水に要求される水質に基づく所定の設定値を超えた場合にのみ、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とするpH制御処理を開始する。このpH制御処理によって原水のpHが弱酸性域Sp内に制御された結果、濁度成分および色度成分のうち、特に色度成分の表面の荷電中和および凝集フロック形成が促進されるため、凝集剤の注入量を低減させた状態であっても凝集フロック形成を進行させることができる。そして、膜11による濁度成分および色度成分の分離が促進され、ろ過水の水質が回復し、ろ過水の色度が低下する。pH制御部21は、ろ過水に要求される水質を示す所定の設定値以下にろ過水の色度が低下した場合、ろ過水の水質が回復し安定した水質を保持できるものとして、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とするpH制御処理を停止して、混和槽3内の液体のpHを中性から弱アルカリ性となるように炭酸水素ナトリウムおよび硫酸の注入量を制御する。
【0045】
図3を参照して、膜ろ過装置1におけるpH制御処理の処理手順について詳細に説明する。図3は、図1に示す膜ろ過装置1におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0046】
図3に示すように、まず、pH制御部21は、混和槽3内の液体を中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲内とする第1pH制御処理を開始する(ステップS1)。次いで、pH制御部21は、色度計14によって計測された色度を含む色度情報を受信したか否かを判断する(ステップS2)。色度計14は、定期的にろ過水槽12のろ過水の色度を計測してpH制御部21に色度情報を送信するほか、pH制御部21から指示された場合にろ過水槽12のろ過水の色度を計測してpH制御部21に色度情報を送信してもよい。pH制御部21は、色度情報を受信したと判断するまでステップS2の判断処理を繰り返す。
【0047】
そして、pH制御部21は、色度情報を受信したと判断した場合(ステップS2:Yes)、受信した色度情報を処理し、ろ過水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS4)。この設定値は、ろ過水に要求される水質をもとに設定され、たとえば1度である。色度計14によって計測されたろ過水の色度が1度を超えた場合、ろ過水の水質が低下したものと判断できるためである。
【0048】
pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS4:Yes)、ろ過水の水質は要求される水質を満たすものと判断し、このまま第1pH制御処理を継続し、ステップS2に戻り再度色度情報を受信したか否かを判断する。一方、pH制御部21は、ろ過水の色度が設定値内でないと判断した場合(ステップS4:No)、ろ過水の水質は低下しているものと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11に対する逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS6)。pH制御部21は、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS6:Yes)、膜11におけるろ過処理が停止するため、第1pH制御処理を停止して、再度ステップS6に戻る。そして、逆洗処理が終了するまでステップS6の判断処理を繰り返す。
【0049】
これに対し、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合または逆洗処理が終了したと判断した場合(ステップS6:No)、第1pH制御処理が継続していた場合には第1pH制御処理を停止し(ステップS7)、調整剤注入ポンプ91,92のpH調整剤の投入を制御することによって、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する(ステップS8)。そして、pH制御部21は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、pH制御処理を行なう。
【0050】
つぎに、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれる否かを判断し(ステップS10)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS10:Yes)、第2pH制御処理を停止する(ステップS16)。これに対し、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合(ステップS10:No)、色度計14から送信された色度情報を受信したか否かを判断する(ステップS12)。pH制御部21は、色度情報を受信していないと判断した場合(ステップS12:No)、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部21は、ステップS10に進み、ステップS10の判断処理を行なう。
【0051】
これに対し、pH制御部21は、色度情報を受信したと判断した場合(ステップS12:Yes)、受信した色度情報を処理し、ろ過水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS14)。第2pH制御処理開始後における設定値は、ろ過水に要求される水質をもとに設定され、たとえば0.5度である。色度計14によって計測されたろ過水の色度が0.5度を下回った場合、ろ過水の水質が十分回復して安定した水質を保持できると判断できるためである。pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS14:No)、ろ過水の水質が回復していないと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部21は、ステップS10に進み、ステップS10の判断処理を行なう。
【0052】
一方、pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS14:Yes)、ろ過水の水質が回復したと判断できるため、第2pH制御処理を停止し(ステップS16)、強度が強く大きな凝集フロックを安定して生成するために、第1pH制御処理を開始する(ステップS17)。なお、逆洗処理が行なわれる場合には、この逆洗処理が終了した後に第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、入力部22から入力された指示情報をもとに、膜ろ過装置1におけるろ過処理が終了するか否かを判断する(ステップS18)。pH制御部21は、ろ過処理が終了すると判断した場合(ステップS18:Yes)、そのまま制御処理を終了する。一方、pH制御部21は、ろ過処理が終了しないと判断した場合(ステップS18:No)、ステップS2に戻り、色度計14による色度情報を受信したか否かを判断する。
【0053】
具体的には、pH制御部21は、まず、第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、図4のろ過水の色度の時間変化を示す曲線l1にあるように、時間t1において、ろ過水の色度が、第2pH制御開始の判断基準である設定値T1(たとえば1度)を超えたと判断した場合、ろ過水の水質が低下したものと判断する。そして、pH制御部21は、第1pH処理をOFF状態として停止した後、図4の第2pH制御処理に対するタイミングチャートを示す曲線l2にあるように、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。ここで、逆洗ポンプ13の駆動によって、逆洗処理が行なわれる場合には、膜11によるろ過処理が停止するため、pH制御処理も停止する。このため、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれる時間t2から時間t3までの間、第2pH制御処理をOFF状態とする。そして、pH制御部21は、ろ過水の色度が、設定値T1を超えたままである場合には、逆洗処理が終了した時間t3から、再度、第2pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。そして、時間t4において、ろ過水の色度が、第2pH制御処理停止の判断基準である設定値T2(たとえば0.5度)を下回ったと判断した場合、ろ過水の水質が安定して回復したものと判断し、第2pH制御処理をOFF状態として、第2pH制御処理を停止し、第1pH制御処理を開始する。なお、チャタリング防止のため第2pH制御処理条件に関する設定値をT1,T2の異なる値としたが、もちろん一つの設定値を設け該設定値外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0054】
このように、実施の形態1においては、ろ過水の色度上昇時にのみ混和槽3内の液体のpHを、中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲から変化させて、弱酸性域である第2のpH範囲内になるように制御する第2pH制御処理を行なうことによって、凝集剤による荷電中和力と架橋作用とを適切に利用して凝集操作を行なっている。このため、実施の形態1によれば、凝集剤の注入量を抑制するとともに、膜11の目詰まり原因となる色度成分などを凝集フロック内に捕捉した凝集フロックを効率的に形成することができる。したがって、実施の形態1によれば、良好なろ過水質の維持および膜差圧上昇速度の低減を実現できるため、効率的で安定した長時間の膜ろ過装置の運転を実現でき、ろ過水の回収率向上を図ることが可能になる。また、実施の形態1によれば、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を適時行なうため、常時アルカリ剤を注入する必要がなく、凝集剤とともにpH調整剤であるアルカリ剤の注入量も低減でき、凝集剤を注入する凝集剤注入ポンプおよびpH調整剤を注入する調整剤注入ポンプの動力費も低減可能である。
【0055】
なお、本実施の形態1においては、ろ過水の色度を計測してろ過水の水質を取得していたが、これに限らず、図5の膜ろ過装置1aに示すように、色度計14に代えて、ろ過水槽12のろ過水の吸光度を計測する吸光度計14aを設け、ろ過水槽14のろ過水の吸光度を計測してろ過水の水質を取得してもよい。この場合、pH制御部21は、吸光度計14aによって計測されたろ過水の吸光度が所定の設定範囲外である場合に、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理を実行する。
【0056】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、原水の色度、膜における膜差圧上昇速度の値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御する。図6は、実施の形態2にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。図6に示すように、実施の形態2にかかる膜ろ過装置201は、図1に示す膜ろ過装置1における色度計14に代えて、色度計214および圧力計215を備える。また、膜ろ過装置201は、膜ろ過装置1における制御部20に代えて、pH制御部221を有する制御部220を備える。
【0057】
色度計214は、原水槽2に貯留された原水の色度を計測し、計測した原水の色度を制御部220に出力する。言い換えると、色度計214は、混和槽3における凝集処理前の原水の色度を計測する。圧力計215は、膜11における膜差圧を計測し、計測した膜差圧を制御部220に出力する。制御部220は、図1に示す制御部20と同様の機能を有する。
【0058】
pH制御部221は、図1に示すpH制御部21と同様に、第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なう。pH制御部221は、原水槽2内の原水の色度上昇時、膜11における膜差圧上昇時のみに、第2pH制御処理を行ない、それ以外は、第1pH制御処理を行なう。原水の色度が膜11によるろ過処理性能を超えて高くなった場合、膜11による色度成分の目詰まり、色度成分の残存によるろ過水質の劣化が発生するおそれがある。このため、pH制御部221は、原水槽2内の原水の色度上昇時に第2pH制御処理を行なうことによって原水中の色度成分を十分に凝集フロック内に取り込ませ、膜11の負担軽減およびろ過水の水質維持を図る。また、膜11における細孔の閉塞の進行によって膜差圧上が急激に上昇した場合、ろ過処理不能となるおそれがある。このため、pH制御部221は、膜11における膜差圧上昇時に第2pH制御処理を行なうことによって、色度成分の分散が十分抑制されたフロック含有水を膜11に送出させて、膜11における膜差圧の低下を図る。pH制御部221は、色度計214によって計測された原水槽2内の原水の色度が所定の設定範囲内である場合、および、圧力計215によって計測された膜11の膜差圧をもとに求めた膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、調整剤注入ポンプ91による硫酸の注入量および調整剤注入ポンプ92による炭酸水素ナトリウムの注入量を制御して混和槽3内の液体のpHを中性から弱アルカリ性の範囲である第1のpH範囲内となるように制御する。pH制御部221は、色度計214によって計測された原水槽2内の原水の色度が所定の設定範囲外である場合、または、圧力計215によって計測された膜11の膜差圧をもとに求めた膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域である所定範囲内となるように調整剤注入ポンプ91による硫酸の注入量および調整剤注入ポンプ92による炭酸水素ナトリウムの注入量を制御して、第1のpH範囲内に制御されていた混和槽3内の液体のpHを第2のpH範囲内に変化させる。
【0059】
つぎに、図7を参照して、膜ろ過装置201におけるpH制御処理の処理手順について説明する。図7は、図6に示す膜ろ過装置201におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
図7に示すように、pH制御部221は、混和槽3内の液体を中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲内とする第1pH制御処理を開始する(ステップS21)。次いで、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したか否かを判断する(ステップS22)。色度計214は、定期的に原水槽2の原水の色度を計測してpH制御部221に色度情報を送信するほか、pH制御部221から指示された場合に原水槽2の原水の色度を計測してpH制御部221に色度情報を送信してもよい。また、圧力計215は、定期的に膜11の膜差圧を計測してpH制御部221に膜差圧情報を送信するほか、pH制御部221から指示された場合に膜11の膜差圧を計測してpH制御部221に膜差圧情報を送信してもよい。pH制御部221は、色度情報および膜差圧情報を受信したと判断するまでステップS22の判断処理を繰り返す。
【0061】
そして、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したと判断した場合(ステップS22:Yes)、受信した情報を処理し、原水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS24)。この設定値は、ろ過水に要求される水質および膜11のろ過性能をもとに設定され、色度計214によって計測された原水の色度が設定値を超えた場合、ろ過水に要求される水質を保持できないおそれがあると判断できる。
【0062】
pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS24:No)、ろ過水に要求される水質を保持することが難しいと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11において逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS26)。
【0063】
一方、pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS24:Yes)、ろ過水の水質は要求される水質を保持できるものと判断する。そして、pH制御部221は、圧力計215から出力された膜差圧をもとに膜11における膜差圧上昇速度を演算し、膜差圧上昇速度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS25)。この設定値は、膜11がろ過処理不能となる膜差圧とろ過処理継続時間とをもとに設定され、演算した膜差圧上昇速度が設定値を超えた場合、膜11がろ過処理を安定して行なうことができないおそれがあると判断できる。
【0064】
このため、pH制御部221は、膜差圧上昇速度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS25:Yes)、膜11がろ過処理を安定して行なうことができると判断する。そして、ステップS22に戻り、pH制御部221は、再度情報を受信したか否かを判断する。
【0065】
これに対し、pH制御部221は、膜差圧上昇速度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS25:No)、膜11が安定したろ過処理を行なうことが難しいと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11において逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS26)。
【0066】
pH制御部221は、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS26:Yes)、膜11におけるろ過処理が停止するため、第1pH制御処理を停止して、再度ステップS26に戻る。そして、逆洗処理が終了するまでステップS26の判断処理を繰り返す。
【0067】
これに対し、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合または逆洗処理が終了したと判断した場合(ステップS26:No)、第1pH制御処理が継続していた場合には、第1pH制御処理を停止し(ステップS27)、調整剤注入ポンプ91,92に対してpH調整剤の注入を開始させることによって混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する(ステップS28)。そして、pH制御部221は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。
【0068】
つぎに、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれる否かを判断し(ステップS30)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS30:Yes)、第2pH制御処理を停止する(ステップS36)。これに対し、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合(ステップS30:No)、色度計214および圧力計215から送信された情報を受信したか否かを判断する(ステップS32)。pH制御部221は、情報を受信していないと判断した場合(ステップS32:No)、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0069】
一方、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から送信された情報を受信したと判断した場合(ステップS32:Yes)、受信した情報を処理し、原水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS34)。pH制御処理開始後における設定値は、膜11の性能とろ過水に要求される水質をもとに設定され、色度計14によって計測された原水の色度が設定値を下回った場合には、膜11においてろ過処理を安定して行なうことができ、かつ、ろ過水の水質が回復し安定した水質を保持できるものと判断できる。pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS34:No)、ろ過水の水質を保持できないと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0070】
一方、pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS34:Yes)、つぎに、圧力計215から出力された膜差圧をもとに膜11における膜差圧上昇速度を演算し、この膜差圧上昇速度が所定の設定内であるか否かを判断する(ステップS35)。この設定値は、膜11がろ過処理不能となる膜差圧とろ過処理継続時間とをもとに設定され、演算した膜差圧上昇速度が設定値を下回った場合、安定したろ過処理を継続することができるものと判断できる。
【0071】
pH制御部221は、膜差圧上昇速度が設定値内でないと判断した場合(ステップS35:No)、安定したろ過処理を行なうことが難しいと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0072】
一方、pH制御部221が、膜差圧上昇速度が設定値内であると判断した場合(ステップS35:Yes)、原水の色度および膜11の膜差圧上昇速度は、安定したろ過処理が継続可能である値まで下回ったものと考えられる。このため、pH制御部221は、第2pH制御処理を停止して(ステップS36)、第1pH制御処理を開始する(ステップS37)。なお、逆洗処理が行なわれる場合には、この逆洗処理が終了した後に第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部221は、入力部22から入力された指示情報をもとに、膜ろ過装置201におけるろ過処理が終了するか否かを判断し(ステップS38)、ろ過処理が終了すると判断した場合(ステップS38:Yes)、そのまま制御処理を終了する。一方、pH制御部221は、ろ過処理が終了しないと判断した場合(ステップS38:No)、ステップS22に戻り、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したか否かを判断する。
【0073】
つぎに、図8を参照して、pH制御部221における第2pH制御処理を具体的に説明する。図8は、pH制御部221における第2pH制御処理の開始および停止を説明する図である。図8の曲線l21は、原水の色度の時間変化を示し、図8の曲線l31は、膜11の膜差圧上昇速度の時間変化を示し、図8下方の曲線l41は、第2pH制御処理のON状態およびOFF状態を示すタイミングチャートである。
【0074】
まず、pH制御部221は、第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部221は、図8の曲線l21に示すように、時間t11において、原水の色度がpH制御開始の判断基準である設定値T21を超えたと判断した場合、第1pH処理をOFF状態として停止した後、曲線l41に示すように、第2pH制御処理をON状態としてpH制御処理を開始する。pH制御部221は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。そして、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれる時間t12から時間t13までの間、第2pH制御処理をOFF状態とする。そして、pH制御部221は、原水の色度または膜差圧上昇速度が所定の設定値を超えたままである場合には、逆洗処理が終了した時間t13から、再度第2pH制御処理をON状態として、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する。そして、原水の色度がpH制御処理停止の判断基準である設定値T22を下回り、さらに、膜差圧上昇速度がpH制御処理停止の判断基準である設定値T32を下回った時間t14において、pH制御部221は、第2pH制御処理をOFF状態とし、第1pH制御処理を開始する。なお、チャタリング防止のため第2pH制御処理条件に関する設定値をT21,T22およびT31,T32のそれぞれ異なる値としたが、もちろん一つの設定値をそれぞれ設けて、原水色度、膜差圧上昇速度が設定値外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0075】
このように、実施の形態2においては、原水槽2内の原水の色度上昇時、膜11における膜差圧上昇時のみにおいて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域内に制御する第2pH制御処理を行なうため、実施の形態1と同様に、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制することができる。
【0076】
なお、実施の形態2においては、原水の色度または膜11の膜差圧上昇速度のいずれか一方が所定の設定値外である場合に第2pH制御処理を開始して確実にろ過処理の安定化を図った場合について説明した。実施の形態2においては、これに限らず、pH制御部221は、原水の色度および膜差圧上昇速度の双方が所定の設定値外である場合に第2pH制御処理を開始して、ろ過水中の溶解性物質の残存をさらに抑制してもよい。
【0077】
具体的には、pH制御部221は、図9の曲線l21に示すように原水の色度が設定値T21を超え、さらに、曲線l31に示すように膜差圧上昇速度が設定値T31を超えた時間t21において、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理のタイミングチャートを示す曲線l42にあるように、pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。この場合、pH制御部221は、図10に示す処理手順を行なうことによって、第2pH制御処理を行なう。pH制御部221は、図10に示すように、図7に示すステップS22と同様に、第1pH制御開始処理(ステップS41)、情報受信判断処理(ステップS42)を行なった後、原水の色度が設定値内であるか否かを判断し(ステップS44)、原水の色度が設定値内であると判断した場合(ステップS44:Yes)、ステップS42に戻る。また、pH制御部221は、原水の色度が設定値内でないと判断した場合(ステップS44:No)、膜差圧上昇速度は設定値内であるか否かを判断し(ステップS45)、膜差圧上昇速度は設定値内であると判断した場合(ステップS45:Yes)、ステップS42に戻る。そして、pH制御部221は、膜差圧上昇速度は設定値内でないと判断した場合(ステップS45:No)、pH制御部221は、第2pH制御処理を行なうために、逆洗処理が行なわれるか否かを判断し(ステップS46)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS46:Yes)、ステップS46の判断処理を繰り返し、逆洗処理が行なわないと判断した場合(ステップS46:No)、第1pH制御を停止して(ステップS47)、第2pH制御処理を開始する(ステップS48)。
【0078】
そして、pH制御部221は、図7におけるステップS30〜ステップS38と同様に、逆洗処理判断処理(ステップS50)、情報受信判断処理(ステップS52)、原水の色度に対する判断処理(ステップS54)、膜差圧上昇速度に対する判断処理(ステップS55)、第2pH制御の停止処理(ステップS56)、第1pH制御開始処理(ステップS57)、ろ過処理終了判断処理(ステップS58)を行い、原水の色度および膜差圧上昇速度の双方が所定の設定値内であると判断した場合、第2pH制御処理を停止する。
【0079】
なお、本実施の形態2においては、ろ過水の色度を計測してろ過水の水質を取得していたが、これに限らず、図11の膜ろ過装置201aに示すように、色度計214に代えて、原水槽2の原水の吸光度を計測する吸光度計214aを設け、原水槽2内の原水の吸光度を計測して原水の水質を取得してもよい。この場合、pH制御部221は、色度計214によって計測された原水の吸光度が所定の設定範囲外である場合に、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理を実行する。
【0080】
また、図12の膜ろ過装置301に示すように、実施の形態1および実施の形態2を組み合わせて、ろ過水の色度、原水槽の色度および膜差圧上昇速度をもとに、第2pH制御処理を行なってもよい。図12に示すように、膜ろ過装置301は、ろ過水槽12内のろ過水の色度を計測する色度計14、原水槽2内の原水の色度を計測する色度計214および膜11の膜差圧を計測する圧力計215を備える。そして、制御部320が有するpH制御部321は、ろ過水の色度、原水槽の色度および膜差圧上昇速度をもとに、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御を適時行なう。この場合、pH制御部321は、ろ過水の色度、原水の色度または膜差圧上昇速度のいずれか一つが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を実行してもよく、ろ過水の色度、原水の色度および膜差圧上昇速度のすべてが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。また、図12に示す膜ろ過装置301は、色度計14および色度計214に代えて、図5に示す吸光度計14aおよび図11に示す吸光度計214aを有してもよい。この場合、pH制御部321は、ろ過水の吸光度、原水の吸光度または膜差圧上昇速度のいずれか一つが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよく、ろ過水の吸光度、原水の吸光度および膜差圧上昇速度のすべてが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0081】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、凝集対象である混和槽3内の液体に対して第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なった場合について説明したが、もちろん混和槽を設けず凝集剤をライン注入する場合にも第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なって凝集剤の消費量抑制を図ってもよい。
【0082】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、混和槽3内のpHを計測して、この計測結果をもとに第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なう場合について説明したが、もちろんこれに限らず、膜11によってろ過処理が行なわれたろ過水のpHを計測するpH計を設け、このpH計による計測結果をもとに第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態1にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。
【図2】凝集剤であるPACのpHによる形態変化を示す図である。
【図3】図1に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すpH制御部におけるpH制御処理を説明する図である。
【図5】実施の形態1にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。
【図7】図6に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図6に示すpH制御部におけるpH制御処理を説明する図である。
【図9】図6に示すpH制御部におけるpH制御処理の他の例を説明する図である。
【図10】図6に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【図12】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,201,201a,301 膜ろ過装置
2 原水槽
3 混和槽
4 凝集剤容器
5 凝集剤注入ポンプ
6 攪拌機構
7 pH計
81,82 pH調整剤容器
91,92 調整剤注入ポンプ
10 原水ポンプ
11 膜
12 ろ過水槽
13 逆洗ポンプ
14,214 色度計
14a,214a 吸光度計
20,220,320 制御部
21,221,321 pH制御部
22 入力部
23 出力部
215 圧力計
【技術分野】
【0001】
この発明は、膜による被処理水のろ過前に被処理水に凝集剤を注入して凝集させる膜ろ過方法および膜ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川水、湖水、地下水、上水道、下水道、工業用水または廃水などの除濁処理技術として、微細孔が形成された膜を用いた膜ろ過方法の導入が進められている。この膜を用いた膜ろ過方法は、地下水を原水とする浄水場において主に採用されていたが、河川水を原水とする処理場においても採用が進められている。ここで、河川水のように夾雑物が多く混入する原水を処理する場合、膜ろ過の前処理として被処理水に凝集剤を注入し凝集処理を行ない、膜ろ過処理の安定化と適用原水範囲の拡張化を図っている。
【0003】
凝集処理においては、原水中の濁度成分、および、そのままでは膜によって除去できない膜の細孔径以下の溶解性物質である色度成分を、凝集剤によって凝集フロック内に取り込ませて不溶化させている。この凝集剤の注入量が不足した場合、凝集フロックへの色度成分等の取り込みが十分に行なわれないため、膜の目詰まりが発生し、ろ過水質の低下および膜差圧の上昇が発生してしまう場合がある。また、凝集剤の注入量が過剰である場合、凝集フロックが過剰に生成されて膜の閉塞が進行し、短時間に膜差圧が上昇してろ過処理が行なえなくなる場合がある。このため、従来においては、原水の色度、濁度の測定結果をもとに凝集剤の注入量を制御する膜ろ過方法や、凝集剤注入後のフロック粒径の計測結果と膜の細孔径とをもとに凝集剤の注入量を制御する膜ろ過方法などによって凝集処理を制御し、膜面からの剥離性が高い凝集フロックの形成を図っている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−336871号公報
【特許文献2】特開平11−57739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原水中の濁度成分および色度成分は、粒子表面に荷電を帯びており、反発しあうことによって原水中において安定した分散状態を保持している。このため、凝集剤は、まず粒子表面の荷電を中和することによって、分散していた濁度成分および色度成分を凝集させている。しかしながら、色度成分は、一般的に濁度成分よりも粒子径が小さいため、濁度成分よりも凝集剤によって中和すべき荷電総量が多く、色度成分を凝集させるには凝集剤の注入量を高める必要がある。したがって、従来においては、色度成分を十分に取り込んだ凝集フロックを生成するには凝集剤を多く注入しなければならず、凝集剤の消費量を抑制することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明によれば、上記に鑑みてなされたものであって、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制することができるろ過方法および膜ろ過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる膜ろ過方法は、膜による被処理水のろ過工程前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる膜ろ過方法は、前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、前記ろ過処理後のろ過水の水質を計測する水質計測手段と、前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、前記凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、前記凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、前記被処理水における原水の水質を計測する水質計測手段と、前記膜における膜差圧を計測する圧力計測手段と、前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる膜ろ過装置は、前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、凝集処理において、被処理水における原水の水質、ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって所望の凝集特性を得ることができるため、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制して効率的に膜ろ過処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0024】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1において説明する。実施の形態1においては、ろ過工程後のろ過水の水質の値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することによって、凝集液体の凝集特定を制御して凝集剤の消費量の抑制とともにろ過処理の安定化を図っている。
【0025】
図1は、実施の形態1にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる膜ろ過装置1は、原水槽2、混和槽3、凝集剤容器4、凝集剤注入ポンプ5、攪拌機構6、pH計7、pH調整剤容器81,82、調整剤注入ポンプ91,92、原水ポンプ10、膜11、ろ過水槽12、逆洗ポンプ13、色度計14、制御部20、入力部22および出力部23を有する。この膜ろ過装置1は、夾雑物が混入する原水に対してろ過処理を行なう。
【0026】
原水槽2は、河川水や湖沼水などの原水が流入され、流入された原水を貯留できる。原水槽2に貯留された原水は、混和槽3に送水される。混和槽3においては、原水槽2から送水された原水に凝集剤が注入され、原水中の濁度成分、色度成分を取り込んだ凝集フロックを形成する凝集反応が行なわれる。混和槽3は、混合攪拌された凝集剤と原水とを少なくとも凝集反応時間滞留させる。凝集剤容器4は、混和槽3に注入される凝集剤として、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を収容する。凝集剤注入ポンプ5は、制御部20の制御のもと、凝集剤容器4内の所定量の凝集剤を混和槽3内に注入する。攪拌機構6は、混和槽3内に送水された原水と混和槽3内に注入された凝集剤とを混合し、凝集反応による凝集フロックを形成する。
【0027】
pH計7は、混和槽3内の液体のpHを計測し、計測したpHを制御部20に出力する。なお、pHの計測は、混和槽3に限らず、ろ過水などに対し行なってもよく、制御部20は、入力されたpHの計測値を用いてpH制御処理を行なう。
【0028】
pH調整剤容器81は、混和槽3内に注入されて混和槽3内の液体のpHを調整するpH調整剤として、硫酸を収容する。pH調整剤容器82は、混和槽3内に注入されて混和槽3内の液体のpHを調整するpH調整剤として、炭酸水素ナトリウムを収容する。なお、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ剤は、原水の水質に応じて設置すればよい。
【0029】
調整剤注入ポンプ91は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器81内の硫酸を混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ92は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器82内の炭酸水素ナトリウムを混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ91,92は、特許請求の範囲における凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段として機能する。調整剤注入ポンプ91は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器81内の所定量の硫酸を混和槽3内に注入する。調整剤注入ポンプ92は、pH制御部21の制御のもと、pH調整剤容器82内の所定量の炭酸水素ナトリウムを混和槽3内に注入する。また、原水ポンプ10は、混和槽3内のフロック含有水を膜11に加圧送水する。
【0030】
膜11は、微細孔が形成されており、原水ポンプ10によって送水されたフロック含有水から凝集フロックを分離し、ろ過水をろ過水槽12に送出する。この膜の孔径は、集塊化していない凝集フロックを除去するため、0.5μm以下である。ろ過水槽12は、膜11によってろ過されたろ過水を貯留する。逆洗ポンプ13は、膜11における所定時間のろ過処理後、空気またはろ過水を逆流させて膜11の細孔内および膜11の表面の抑留物を除去する逆洗処理を行なう。色度計14は、ろ過水槽12に貯留されたろ過水の色度を計測し、計測したろ過水の色度を制御部20に出力する。
【0031】
制御部20は、膜ろ過装置1を構成する各構成部位を制御する。制御部20は、pH制御部21を有する。入力部22は、膜ろ過装置1の処理動作に関する情報を制御部20に入力する。出力部23は、膜ろ過装置1の処理動作に関する情報を出力する。
【0032】
pH制御部21は、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には、調整剤注入ポンプ91,92による硫酸または炭酸水素ナトリウムの投入量を制御して、凝集液体のpHを第1のpH範囲である中性から弱アルカリ性の範囲内となるように制御する。そして、pH制御部21は、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には、調整剤注入ポンプ91,92による硫酸または炭酸水素ナトリウムの投入量を制御して、中性から弱アルカリ性の範囲内に制御されていた凝集液体のpHを、第2のpH範囲である弱酸性域内に変化させる。
【0033】
ここで、混和槽3内の液体である凝集液体のpH制御に対する第1のpH範囲および第2のpH範囲は、原水に対する凝集剤の凝集特性に応じて設定される。凝集剤がPACの場合には、第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲に設定されており、第2のpH範囲は、pHが5.0〜6.8の弱酸性域である弱酸性域に設定されている。この各pH範囲を説明するため、図2を参照して、PACにおける凝集特性について説明する。
【0034】
図2は、凝集剤であるPACのpHによる形態変化を示す図である。図2に示すように、PACは、pHが1〜3の強酸性域S1である液体内に注入された場合、溶解性であるAl3+となる。そして、PACは、pHが2.5〜5.5の酸性域S2である液体内に注入された場合、主なものは溶解性であるAl8(OH)204+となる。このAl8(OH)204+は、PACが有する形態のうち最も正電荷が高い形態であるため、原水中の粒子の荷電状態を中和できる荷電中和力が他の形態よりも大きく最大となる。また、PACは、pHが4.5〜9.5の中性近傍域S3である液体内に注入された場合、主なものは不溶性であるAl(OH)3となる。このAl(OH)3は、架橋作用が強いため、強度の強い凝集フロックを形成できる。そして、PACは、pHが7.5以上であるアルカリ域S4である液体内に注入された場合、溶解性であるAl(OH)4-となる。
【0035】
原水中の濁度成分および色度成分は、粒子表面が負に荷電しているため、相互に反発しあい沈殿しにくく、原水中において分散状態を保持している。この原水中の濁度成分および色度成分は、荷電中和力を有する形態を取ったPACの作用によって、粒子表面が中和され、粒子間の反発力が減じる。この結果、分散していた濁度成分および色度成分が凝集し、架橋作用の強い形態を取ったPACの作用によって、濁度成分および色度成分の凝集が大きくなり凝集フロックが形成される。
【0036】
従来の膜ろ過装置は、混和槽内の液体のpHを、常時、中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御することによって、PACの強い架橋作用を利用して強度の強い大きな凝集フロックを形成していた。一般に、凝集剤を加えるとアルカリ度が消費されて混和槽内の液体のpHは低下していく。このため、従来は、混和槽内の液体のpHが常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように、混和槽内の液体のpHに対応させて、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ剤を注入していた。特に、夾雑物をろ過する膜と比べて膜の孔径が大きい砂ろ過装置においては、凝集後の沈殿不良および膜によるろ過不良がないように、強度の強い大きな凝集フロックを確実に成長させる必要があったため、混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように厳密に制御していた。
【0037】
しかしながら、従来のように混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、PACのほとんどは、架橋作用の強いAl(OH)3となり、荷電中和力の強いAl8(OH)204+が少ない状態となる。このため、混和槽内の液体のpHを常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、混和槽内の液体のpHが酸性域である場合と比較して、混和槽に送出された原水中の濁度成分および色度成分の荷電中和の進行が遅くなる。さらに、色度成分は、一般的に濁度成分よりも粒子径が小さく、濁度成分よりも凝集剤によって中和すべき荷電総量が多い。このため、従来のように混和槽内の液体のpHが常に中性から弱アルカリ性の一定範囲内になるように制御した場合、濁度成分および色度成分の荷電中和を進行させるために、凝集剤を過剰に注入する必要があった。したがって、凝集剤の消費量を抑制することが困難であった。
【0038】
これに対し、膜ろ過装置1における膜11は、集塊化していない凝集フロックを除去するため、0.5μm以下の孔径を有する。すなわち、膜11は、濁度成分以上の粒径を有するものであれば、除去することができる。このため、膜ろ過装置1は、常に大きなサイズの凝集フロックを形成しなくとも、被処理水を適切にろ過することができる。言い換えると、膜ろ過装置1においては、常時、大きなサイズの凝集フロックを形成する必要がない。そこで、膜ろ過装置1は、混和槽3内の液体のpHを必要な場合にのみ酸性域に変化させて、色度成分の荷電中和を効率的に促進させている。
【0039】
つぎに、混和槽3内の液体である凝集液体のpH制御に対する第2のpH範囲を弱酸性域に設定する理由について説明する。図2に示す酸性域S2においては、濁度成分および色度成分の粒子表面の荷電をAl8(OH)204+によって最も強く中和できる。このため、原水の状態が酸性域S2であるときにPACを注入した場合、原水の状態が中性近傍域S3であるときに凝集剤を注入する場合と比較して少ない量の凝集剤によって、濁度成分および色度成分の荷電中和が可能となり凝集を開始することができる。特に、濁度成分よりも粒子径が小さく凝集剤によって中和すべき荷電総量が多い色度成分が原水中を多く占めている場合であっても、原水の状態を酸性域S2とした状態でPACを注入することによって、PACの注入量を増加させることなく色度成分における荷電中和を可能とする。
【0040】
しかしながら、酸性域S2のうち比較的酸性が強い状態の原水にPACを注入した場合、PACはAl8(OH)204+の形態を主に有するため、Al(OH)3による架橋作用が発揮されず、強度の弱い凝集フロックが形成され膜11へ導入されてしまう。強度の弱い凝集フロックは、原水ポンプ10の加圧送水によって破壊しやすく、凝集フロックの破壊による膜11の目詰まりなどを誘発し、許容範囲を超えた過度の負担を膜11に与えてしまうおそれがある。
【0041】
このため、本実施の形態1における膜ろ過装置1においては、pH制御部21は、Al8(OH)204+による荷電中和力およびAl(OH)3による架橋作用の双方を発揮できる弱酸性域Sp(pHが5.0〜6.8である。)を、第2のpH範囲として設定する。pH制御処理におけるpHの制御範囲は、原水に対するPACのpH依存凝集特性に応じて設定される。pH制御部21は、色度成分が十分に凝集されていない場合などにおいて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内に制御する。この結果、膜ろ過装置1においては、凝集フロックにおける強度の急激な低下を抑制しながら濁度成分および色度成分の表面の荷電中和を促進できるため、混和槽3内の液体が中性から弱アルカリ性である場合よりも凝集剤の注入量を低減することができるとともに凝集フロックの生成も行なうことが可能になる。
【0042】
この弱酸性域Spにおいては、PACの一部は、溶解性のAl8(OH)204+の形態を有する。このため、弱酸性域Spの状態である原水にPACを注入した場合、溶解性のAl8(OH)204+を含むフロック含有水が混和槽3から膜11に圧送される可能性がある。しかしながら、膜11は溶解性のAl8(OH)204+を除去することができない。この結果、Al8(OH)204+がろ過水槽12内のろ過水内に残存したままとなるおそれがある。
【0043】
そこで、pH制御部21は、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域Sp内となるpH制御処理を常時行なわず、必要となった場合にのみ、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域Sp内となるpH制御処理を行なうことによって、ろ過水へのPAC成分の残存を防止している。
【0044】
具体的には、pH制御部21は、通常は、混和槽3内の液体のpHが中性から弱アルカリ性の第1のpH範囲になるようにpH調整剤の投入を制御する。そして、pH制御部21は、ろ過水に色度成分が許容量以上残存し、ろ過水の水質が低下した場合に、混和槽3内の液体のpHを第2のpH範囲である弱酸性域Sp内とするpH制御処理を行なう。言い換えると、pH制御部21は、ろ過水の色度が、ろ過水に要求される水質に基づく所定の設定値を超えた場合にのみ、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とするpH制御処理を開始する。このpH制御処理によって原水のpHが弱酸性域Sp内に制御された結果、濁度成分および色度成分のうち、特に色度成分の表面の荷電中和および凝集フロック形成が促進されるため、凝集剤の注入量を低減させた状態であっても凝集フロック形成を進行させることができる。そして、膜11による濁度成分および色度成分の分離が促進され、ろ過水の水質が回復し、ろ過水の色度が低下する。pH制御部21は、ろ過水に要求される水質を示す所定の設定値以下にろ過水の色度が低下した場合、ろ過水の水質が回復し安定した水質を保持できるものとして、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とするpH制御処理を停止して、混和槽3内の液体のpHを中性から弱アルカリ性となるように炭酸水素ナトリウムおよび硫酸の注入量を制御する。
【0045】
図3を参照して、膜ろ過装置1におけるpH制御処理の処理手順について詳細に説明する。図3は、図1に示す膜ろ過装置1におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0046】
図3に示すように、まず、pH制御部21は、混和槽3内の液体を中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲内とする第1pH制御処理を開始する(ステップS1)。次いで、pH制御部21は、色度計14によって計測された色度を含む色度情報を受信したか否かを判断する(ステップS2)。色度計14は、定期的にろ過水槽12のろ過水の色度を計測してpH制御部21に色度情報を送信するほか、pH制御部21から指示された場合にろ過水槽12のろ過水の色度を計測してpH制御部21に色度情報を送信してもよい。pH制御部21は、色度情報を受信したと判断するまでステップS2の判断処理を繰り返す。
【0047】
そして、pH制御部21は、色度情報を受信したと判断した場合(ステップS2:Yes)、受信した色度情報を処理し、ろ過水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS4)。この設定値は、ろ過水に要求される水質をもとに設定され、たとえば1度である。色度計14によって計測されたろ過水の色度が1度を超えた場合、ろ過水の水質が低下したものと判断できるためである。
【0048】
pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS4:Yes)、ろ過水の水質は要求される水質を満たすものと判断し、このまま第1pH制御処理を継続し、ステップS2に戻り再度色度情報を受信したか否かを判断する。一方、pH制御部21は、ろ過水の色度が設定値内でないと判断した場合(ステップS4:No)、ろ過水の水質は低下しているものと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11に対する逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS6)。pH制御部21は、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS6:Yes)、膜11におけるろ過処理が停止するため、第1pH制御処理を停止して、再度ステップS6に戻る。そして、逆洗処理が終了するまでステップS6の判断処理を繰り返す。
【0049】
これに対し、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合または逆洗処理が終了したと判断した場合(ステップS6:No)、第1pH制御処理が継続していた場合には第1pH制御処理を停止し(ステップS7)、調整剤注入ポンプ91,92のpH調整剤の投入を制御することによって、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する(ステップS8)。そして、pH制御部21は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、pH制御処理を行なう。
【0050】
つぎに、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれる否かを判断し(ステップS10)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS10:Yes)、第2pH制御処理を停止する(ステップS16)。これに対し、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合(ステップS10:No)、色度計14から送信された色度情報を受信したか否かを判断する(ステップS12)。pH制御部21は、色度情報を受信していないと判断した場合(ステップS12:No)、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部21は、ステップS10に進み、ステップS10の判断処理を行なう。
【0051】
これに対し、pH制御部21は、色度情報を受信したと判断した場合(ステップS12:Yes)、受信した色度情報を処理し、ろ過水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS14)。第2pH制御処理開始後における設定値は、ろ過水に要求される水質をもとに設定され、たとえば0.5度である。色度計14によって計測されたろ過水の色度が0.5度を下回った場合、ろ過水の水質が十分回復して安定した水質を保持できると判断できるためである。pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS14:No)、ろ過水の水質が回復していないと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部21は、ステップS10に進み、ステップS10の判断処理を行なう。
【0052】
一方、pH制御部21は、ろ過水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS14:Yes)、ろ過水の水質が回復したと判断できるため、第2pH制御処理を停止し(ステップS16)、強度が強く大きな凝集フロックを安定して生成するために、第1pH制御処理を開始する(ステップS17)。なお、逆洗処理が行なわれる場合には、この逆洗処理が終了した後に第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、入力部22から入力された指示情報をもとに、膜ろ過装置1におけるろ過処理が終了するか否かを判断する(ステップS18)。pH制御部21は、ろ過処理が終了すると判断した場合(ステップS18:Yes)、そのまま制御処理を終了する。一方、pH制御部21は、ろ過処理が終了しないと判断した場合(ステップS18:No)、ステップS2に戻り、色度計14による色度情報を受信したか否かを判断する。
【0053】
具体的には、pH制御部21は、まず、第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、図4のろ過水の色度の時間変化を示す曲線l1にあるように、時間t1において、ろ過水の色度が、第2pH制御開始の判断基準である設定値T1(たとえば1度)を超えたと判断した場合、ろ過水の水質が低下したものと判断する。そして、pH制御部21は、第1pH処理をOFF状態として停止した後、図4の第2pH制御処理に対するタイミングチャートを示す曲線l2にあるように、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。そして、pH制御部21は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。ここで、逆洗ポンプ13の駆動によって、逆洗処理が行なわれる場合には、膜11によるろ過処理が停止するため、pH制御処理も停止する。このため、pH制御部21は、逆洗処理が行なわれる時間t2から時間t3までの間、第2pH制御処理をOFF状態とする。そして、pH制御部21は、ろ過水の色度が、設定値T1を超えたままである場合には、逆洗処理が終了した時間t3から、再度、第2pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。そして、時間t4において、ろ過水の色度が、第2pH制御処理停止の判断基準である設定値T2(たとえば0.5度)を下回ったと判断した場合、ろ過水の水質が安定して回復したものと判断し、第2pH制御処理をOFF状態として、第2pH制御処理を停止し、第1pH制御処理を開始する。なお、チャタリング防止のため第2pH制御処理条件に関する設定値をT1,T2の異なる値としたが、もちろん一つの設定値を設け該設定値外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0054】
このように、実施の形態1においては、ろ過水の色度上昇時にのみ混和槽3内の液体のpHを、中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲から変化させて、弱酸性域である第2のpH範囲内になるように制御する第2pH制御処理を行なうことによって、凝集剤による荷電中和力と架橋作用とを適切に利用して凝集操作を行なっている。このため、実施の形態1によれば、凝集剤の注入量を抑制するとともに、膜11の目詰まり原因となる色度成分などを凝集フロック内に捕捉した凝集フロックを効率的に形成することができる。したがって、実施の形態1によれば、良好なろ過水質の維持および膜差圧上昇速度の低減を実現できるため、効率的で安定した長時間の膜ろ過装置の運転を実現でき、ろ過水の回収率向上を図ることが可能になる。また、実施の形態1によれば、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を適時行なうため、常時アルカリ剤を注入する必要がなく、凝集剤とともにpH調整剤であるアルカリ剤の注入量も低減でき、凝集剤を注入する凝集剤注入ポンプおよびpH調整剤を注入する調整剤注入ポンプの動力費も低減可能である。
【0055】
なお、本実施の形態1においては、ろ過水の色度を計測してろ過水の水質を取得していたが、これに限らず、図5の膜ろ過装置1aに示すように、色度計14に代えて、ろ過水槽12のろ過水の吸光度を計測する吸光度計14aを設け、ろ過水槽14のろ過水の吸光度を計測してろ過水の水質を取得してもよい。この場合、pH制御部21は、吸光度計14aによって計測されたろ過水の吸光度が所定の設定範囲外である場合に、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理を実行する。
【0056】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、原水の色度、膜における膜差圧上昇速度の値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御する。図6は、実施の形態2にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。図6に示すように、実施の形態2にかかる膜ろ過装置201は、図1に示す膜ろ過装置1における色度計14に代えて、色度計214および圧力計215を備える。また、膜ろ過装置201は、膜ろ過装置1における制御部20に代えて、pH制御部221を有する制御部220を備える。
【0057】
色度計214は、原水槽2に貯留された原水の色度を計測し、計測した原水の色度を制御部220に出力する。言い換えると、色度計214は、混和槽3における凝集処理前の原水の色度を計測する。圧力計215は、膜11における膜差圧を計測し、計測した膜差圧を制御部220に出力する。制御部220は、図1に示す制御部20と同様の機能を有する。
【0058】
pH制御部221は、図1に示すpH制御部21と同様に、第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なう。pH制御部221は、原水槽2内の原水の色度上昇時、膜11における膜差圧上昇時のみに、第2pH制御処理を行ない、それ以外は、第1pH制御処理を行なう。原水の色度が膜11によるろ過処理性能を超えて高くなった場合、膜11による色度成分の目詰まり、色度成分の残存によるろ過水質の劣化が発生するおそれがある。このため、pH制御部221は、原水槽2内の原水の色度上昇時に第2pH制御処理を行なうことによって原水中の色度成分を十分に凝集フロック内に取り込ませ、膜11の負担軽減およびろ過水の水質維持を図る。また、膜11における細孔の閉塞の進行によって膜差圧上が急激に上昇した場合、ろ過処理不能となるおそれがある。このため、pH制御部221は、膜11における膜差圧上昇時に第2pH制御処理を行なうことによって、色度成分の分散が十分抑制されたフロック含有水を膜11に送出させて、膜11における膜差圧の低下を図る。pH制御部221は、色度計214によって計測された原水槽2内の原水の色度が所定の設定範囲内である場合、および、圧力計215によって計測された膜11の膜差圧をもとに求めた膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、調整剤注入ポンプ91による硫酸の注入量および調整剤注入ポンプ92による炭酸水素ナトリウムの注入量を制御して混和槽3内の液体のpHを中性から弱アルカリ性の範囲である第1のpH範囲内となるように制御する。pH制御部221は、色度計214によって計測された原水槽2内の原水の色度が所定の設定範囲外である場合、または、圧力計215によって計測された膜11の膜差圧をもとに求めた膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合、pH計7が計測した混和槽3内の液体のpHをもとに、混和槽3内の液体のpHが弱酸性域である所定範囲内となるように調整剤注入ポンプ91による硫酸の注入量および調整剤注入ポンプ92による炭酸水素ナトリウムの注入量を制御して、第1のpH範囲内に制御されていた混和槽3内の液体のpHを第2のpH範囲内に変化させる。
【0059】
つぎに、図7を参照して、膜ろ過装置201におけるpH制御処理の処理手順について説明する。図7は、図6に示す膜ろ過装置201におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
図7に示すように、pH制御部221は、混和槽3内の液体を中性から弱アルカリ性である第1のpH範囲内とする第1pH制御処理を開始する(ステップS21)。次いで、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したか否かを判断する(ステップS22)。色度計214は、定期的に原水槽2の原水の色度を計測してpH制御部221に色度情報を送信するほか、pH制御部221から指示された場合に原水槽2の原水の色度を計測してpH制御部221に色度情報を送信してもよい。また、圧力計215は、定期的に膜11の膜差圧を計測してpH制御部221に膜差圧情報を送信するほか、pH制御部221から指示された場合に膜11の膜差圧を計測してpH制御部221に膜差圧情報を送信してもよい。pH制御部221は、色度情報および膜差圧情報を受信したと判断するまでステップS22の判断処理を繰り返す。
【0061】
そして、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したと判断した場合(ステップS22:Yes)、受信した情報を処理し、原水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS24)。この設定値は、ろ過水に要求される水質および膜11のろ過性能をもとに設定され、色度計214によって計測された原水の色度が設定値を超えた場合、ろ過水に要求される水質を保持できないおそれがあると判断できる。
【0062】
pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS24:No)、ろ過水に要求される水質を保持することが難しいと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11において逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS26)。
【0063】
一方、pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS24:Yes)、ろ過水の水質は要求される水質を保持できるものと判断する。そして、pH制御部221は、圧力計215から出力された膜差圧をもとに膜11における膜差圧上昇速度を演算し、膜差圧上昇速度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS25)。この設定値は、膜11がろ過処理不能となる膜差圧とろ過処理継続時間とをもとに設定され、演算した膜差圧上昇速度が設定値を超えた場合、膜11がろ過処理を安定して行なうことができないおそれがあると判断できる。
【0064】
このため、pH制御部221は、膜差圧上昇速度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS25:Yes)、膜11がろ過処理を安定して行なうことができると判断する。そして、ステップS22に戻り、pH制御部221は、再度情報を受信したか否かを判断する。
【0065】
これに対し、pH制御部221は、膜差圧上昇速度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS25:No)、膜11が安定したろ過処理を行なうことが難しいと判断し、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なうために、膜11において逆洗処理が行なわれるか否かを判断する(ステップS26)。
【0066】
pH制御部221は、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS26:Yes)、膜11におけるろ過処理が停止するため、第1pH制御処理を停止して、再度ステップS26に戻る。そして、逆洗処理が終了するまでステップS26の判断処理を繰り返す。
【0067】
これに対し、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合または逆洗処理が終了したと判断した場合(ステップS26:No)、第1pH制御処理が継続していた場合には、第1pH制御処理を停止し(ステップS27)、調整剤注入ポンプ91,92に対してpH調整剤の注入を開始させることによって混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する(ステップS28)。そして、pH制御部221は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。
【0068】
つぎに、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれる否かを判断し(ステップS30)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS30:Yes)、第2pH制御処理を停止する(ステップS36)。これに対し、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれないと判断した場合(ステップS30:No)、色度計214および圧力計215から送信された情報を受信したか否かを判断する(ステップS32)。pH制御部221は、情報を受信していないと判断した場合(ステップS32:No)、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0069】
一方、pH制御部221は、色度計214および圧力計215から送信された情報を受信したと判断した場合(ステップS32:Yes)、受信した情報を処理し、原水の色度が所定の設定値内であるか否かを判断する(ステップS34)。pH制御処理開始後における設定値は、膜11の性能とろ過水に要求される水質をもとに設定され、色度計14によって計測された原水の色度が設定値を下回った場合には、膜11においてろ過処理を安定して行なうことができ、かつ、ろ過水の水質が回復し安定した水質を保持できるものと判断できる。pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内でないと判断した場合(ステップS34:No)、ろ過水の水質を保持できないと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0070】
一方、pH制御部221は、原水の色度が所定の設定値内であると判断した場合(ステップS34:Yes)、つぎに、圧力計215から出力された膜差圧をもとに膜11における膜差圧上昇速度を演算し、この膜差圧上昇速度が所定の設定内であるか否かを判断する(ステップS35)。この設定値は、膜11がろ過処理不能となる膜差圧とろ過処理継続時間とをもとに設定され、演算した膜差圧上昇速度が設定値を下回った場合、安定したろ過処理を継続することができるものと判断できる。
【0071】
pH制御部221は、膜差圧上昇速度が設定値内でないと判断した場合(ステップS35:No)、安定したろ過処理を行なうことが難しいと判断できるため、このまま第2pH制御処理を継続する。そして、pH制御部221は、ステップS30に進み、ステップS30の判断処理を行なう。
【0072】
一方、pH制御部221が、膜差圧上昇速度が設定値内であると判断した場合(ステップS35:Yes)、原水の色度および膜11の膜差圧上昇速度は、安定したろ過処理が継続可能である値まで下回ったものと考えられる。このため、pH制御部221は、第2pH制御処理を停止して(ステップS36)、第1pH制御処理を開始する(ステップS37)。なお、逆洗処理が行なわれる場合には、この逆洗処理が終了した後に第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部221は、入力部22から入力された指示情報をもとに、膜ろ過装置201におけるろ過処理が終了するか否かを判断し(ステップS38)、ろ過処理が終了すると判断した場合(ステップS38:Yes)、そのまま制御処理を終了する。一方、pH制御部221は、ろ過処理が終了しないと判断した場合(ステップS38:No)、ステップS22に戻り、色度計214および圧力計215から出力された情報を受信したか否かを判断する。
【0073】
つぎに、図8を参照して、pH制御部221における第2pH制御処理を具体的に説明する。図8は、pH制御部221における第2pH制御処理の開始および停止を説明する図である。図8の曲線l21は、原水の色度の時間変化を示し、図8の曲線l31は、膜11の膜差圧上昇速度の時間変化を示し、図8下方の曲線l41は、第2pH制御処理のON状態およびOFF状態を示すタイミングチャートである。
【0074】
まず、pH制御部221は、第1pH制御処理を開始する。そして、pH制御部221は、図8の曲線l21に示すように、時間t11において、原水の色度がpH制御開始の判断基準である設定値T21を超えたと判断した場合、第1pH処理をOFF状態として停止した後、曲線l41に示すように、第2pH制御処理をON状態としてpH制御処理を開始する。pH制御部221は、pH計7によって計測されたpHをもとに、混和槽3内のpHが5.0〜6.8の範囲内となるように、調整剤注入ポンプ91,92の注入出力を変化させて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を行なう。そして、pH制御部221は、逆洗処理が行なわれる時間t12から時間t13までの間、第2pH制御処理をOFF状態とする。そして、pH制御部221は、原水の色度または膜差圧上昇速度が所定の設定値を超えたままである場合には、逆洗処理が終了した時間t13から、再度第2pH制御処理をON状態として、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域Sp内とする第2pH制御処理を開始する。そして、原水の色度がpH制御処理停止の判断基準である設定値T22を下回り、さらに、膜差圧上昇速度がpH制御処理停止の判断基準である設定値T32を下回った時間t14において、pH制御部221は、第2pH制御処理をOFF状態とし、第1pH制御処理を開始する。なお、チャタリング防止のため第2pH制御処理条件に関する設定値をT21,T22およびT31,T32のそれぞれ異なる値としたが、もちろん一つの設定値をそれぞれ設けて、原水色度、膜差圧上昇速度が設定値外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0075】
このように、実施の形態2においては、原水槽2内の原水の色度上昇時、膜11における膜差圧上昇時のみにおいて、混和槽3内の液体のpHを弱酸性域内に制御する第2pH制御処理を行なうため、実施の形態1と同様に、良好な膜ろ過水質の維持と膜差圧上昇速度の低減とを可能にするとともに、凝集剤の消費量を抑制することができる。
【0076】
なお、実施の形態2においては、原水の色度または膜11の膜差圧上昇速度のいずれか一方が所定の設定値外である場合に第2pH制御処理を開始して確実にろ過処理の安定化を図った場合について説明した。実施の形態2においては、これに限らず、pH制御部221は、原水の色度および膜差圧上昇速度の双方が所定の設定値外である場合に第2pH制御処理を開始して、ろ過水中の溶解性物質の残存をさらに抑制してもよい。
【0077】
具体的には、pH制御部221は、図9の曲線l21に示すように原水の色度が設定値T21を超え、さらに、曲線l31に示すように膜差圧上昇速度が設定値T31を超えた時間t21において、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理のタイミングチャートを示す曲線l42にあるように、pH制御処理をON状態として第2pH制御処理を開始する。この場合、pH制御部221は、図10に示す処理手順を行なうことによって、第2pH制御処理を行なう。pH制御部221は、図10に示すように、図7に示すステップS22と同様に、第1pH制御開始処理(ステップS41)、情報受信判断処理(ステップS42)を行なった後、原水の色度が設定値内であるか否かを判断し(ステップS44)、原水の色度が設定値内であると判断した場合(ステップS44:Yes)、ステップS42に戻る。また、pH制御部221は、原水の色度が設定値内でないと判断した場合(ステップS44:No)、膜差圧上昇速度は設定値内であるか否かを判断し(ステップS45)、膜差圧上昇速度は設定値内であると判断した場合(ステップS45:Yes)、ステップS42に戻る。そして、pH制御部221は、膜差圧上昇速度は設定値内でないと判断した場合(ステップS45:No)、pH制御部221は、第2pH制御処理を行なうために、逆洗処理が行なわれるか否かを判断し(ステップS46)、逆洗処理が行なわれると判断した場合(ステップS46:Yes)、ステップS46の判断処理を繰り返し、逆洗処理が行なわないと判断した場合(ステップS46:No)、第1pH制御を停止して(ステップS47)、第2pH制御処理を開始する(ステップS48)。
【0078】
そして、pH制御部221は、図7におけるステップS30〜ステップS38と同様に、逆洗処理判断処理(ステップS50)、情報受信判断処理(ステップS52)、原水の色度に対する判断処理(ステップS54)、膜差圧上昇速度に対する判断処理(ステップS55)、第2pH制御の停止処理(ステップS56)、第1pH制御開始処理(ステップS57)、ろ過処理終了判断処理(ステップS58)を行い、原水の色度および膜差圧上昇速度の双方が所定の設定値内であると判断した場合、第2pH制御処理を停止する。
【0079】
なお、本実施の形態2においては、ろ過水の色度を計測してろ過水の水質を取得していたが、これに限らず、図11の膜ろ過装置201aに示すように、色度計214に代えて、原水槽2の原水の吸光度を計測する吸光度計214aを設け、原水槽2内の原水の吸光度を計測して原水の水質を取得してもよい。この場合、pH制御部221は、色度計214によって計測された原水の吸光度が所定の設定範囲外である場合に、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御処理を実行する。
【0080】
また、図12の膜ろ過装置301に示すように、実施の形態1および実施の形態2を組み合わせて、ろ過水の色度、原水槽の色度および膜差圧上昇速度をもとに、第2pH制御処理を行なってもよい。図12に示すように、膜ろ過装置301は、ろ過水槽12内のろ過水の色度を計測する色度計14、原水槽2内の原水の色度を計測する色度計214および膜11の膜差圧を計測する圧力計215を備える。そして、制御部320が有するpH制御部321は、ろ過水の色度、原水槽の色度および膜差圧上昇速度をもとに、第1pH制御処理を停止して、第2pH制御を適時行なう。この場合、pH制御部321は、ろ過水の色度、原水の色度または膜差圧上昇速度のいずれか一つが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を実行してもよく、ろ過水の色度、原水の色度および膜差圧上昇速度のすべてが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。また、図12に示す膜ろ過装置301は、色度計14および色度計214に代えて、図5に示す吸光度計14aおよび図11に示す吸光度計214aを有してもよい。この場合、pH制御部321は、ろ過水の吸光度、原水の吸光度または膜差圧上昇速度のいずれか一つが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよく、ろ過水の吸光度、原水の吸光度および膜差圧上昇速度のすべてが所定の各設定範囲外である場合に第2pH制御処理を行なってもよい。
【0081】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、凝集対象である混和槽3内の液体に対して第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なった場合について説明したが、もちろん混和槽を設けず凝集剤をライン注入する場合にも第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なって凝集剤の消費量抑制を図ってもよい。
【0082】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、混和槽3内のpHを計測して、この計測結果をもとに第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なう場合について説明したが、もちろんこれに限らず、膜11によってろ過処理が行なわれたろ過水のpHを計測するpH計を設け、このpH計による計測結果をもとに第1pH制御処理および第2pH制御処理を行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態1にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。
【図2】凝集剤であるPACのpHによる形態変化を示す図である。
【図3】図1に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示すpH制御部におけるpH制御処理を説明する図である。
【図5】実施の形態1にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【図6】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の構成を示す模式図である。
【図7】図6に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図6に示すpH制御部におけるpH制御処理を説明する図である。
【図9】図6に示すpH制御部におけるpH制御処理の他の例を説明する図である。
【図10】図6に示す膜ろ過装置におけるpH制御処理の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【図12】実施の形態2にかかる膜ろ過装置の他の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,201,201a,301 膜ろ過装置
2 原水槽
3 混和槽
4 凝集剤容器
5 凝集剤注入ポンプ
6 攪拌機構
7 pH計
81,82 pH調整剤容器
91,92 調整剤注入ポンプ
10 原水ポンプ
11 膜
12 ろ過水槽
13 逆洗ポンプ
14,214 色度計
14a,214a 吸光度計
20,220,320 制御部
21,221,321 pH制御部
22 入力部
23 出力部
215 圧力計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜による被処理水のろ過工程前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、
前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項2】
前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過方法。
【請求項3】
前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項1または2に記載の膜ろ過方法。
【請求項4】
前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過方法。
【請求項5】
前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項1または4に記載の膜ろ過方法。
【請求項6】
前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項7】
前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、
前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、
前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項8】
前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項9】
膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、
凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、
凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、
前記ろ過処理後のろ過水の水質を計測する水質計測手段と、
前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項10】
前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項9に記載の膜ろ過装置。
【請求項11】
膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、
前記凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、
前記凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、
前記被処理水における原水の水質を計測する水質計測手段と、
前記膜における膜差圧を計測する圧力計測手段と、
前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項12】
前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項11に記載の膜ろ過装置。
【請求項13】
前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【請求項14】
前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、
前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、
前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【請求項15】
前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【請求項1】
膜による被処理水のろ過工程前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集工程を行なう膜ろ過方法において、
前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質および膜差圧上昇速度の少なくとも一つをもとに、前記被処理水における原水の水質、前記ろ過工程後のろ過水の水質または膜差圧上昇速度のそれぞれの値に応じたpHとなるように凝集液体のpHを可変制御することを特徴とする膜ろ過方法。
【請求項2】
前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過方法。
【請求項3】
前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項1または2に記載の膜ろ過方法。
【請求項4】
前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させることを特徴とする請求項1に記載の膜ろ過方法。
【請求項5】
前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項1または4に記載の膜ろ過方法。
【請求項6】
前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項7】
前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、
前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、
前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項8】
前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の膜ろ過方法。
【請求項9】
膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、
凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、
凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、
前記ろ過処理後のろ過水の水質を計測する水質計測手段と、
前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記ろ過水の水質が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項10】
前記ろ過水の水質は、前記ろ過水の色度または前記ろ過水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項9に記載の膜ろ過装置。
【請求項11】
膜による被処理水のろ過処理前に前記被処理水に凝集剤を注入して凝集させる凝集処理を行なう膜ろ過装置において、
前記凝集液体のpHを計測するpH計測手段と、
前記凝集液体内へpH調整剤を投入する投入手段と、
前記被処理水における原水の水質を計測する水質計測手段と、
前記膜における膜差圧を計測する圧力計測手段と、
前記pH計測手段が計測した前記凝集液体のpHをもとに、前記原水の水質が所定の設定範囲内である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲内である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記凝集液体のpHを第1のpH範囲内となるように制御し、前記原水の水質が所定の設定範囲外である場合、および/または、前記膜における膜差圧上昇速度が所定の設定範囲外である場合には前記投入手段による前記pH調整剤の投入量を制御して前記第1のpH範囲内に制御されていた前記凝集液体のpHを第2のpH範囲内に変化させるpH制御手段と、
を備えたことを特徴とする膜ろ過装置。
【請求項12】
前記原水の水質は、前記原水の色度または前記原水の吸光度をもとに求められることを特徴とする請求項11に記載の膜ろ過装置。
【請求項13】
前記第1のpH範囲および前記第2のpH範囲は、前記被処理水に対する前記凝集剤のpH依存凝集特性に応じて設定されることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【請求項14】
前記凝集剤は、ポリ塩化アルミニウムであり、
前記第1のpH範囲は、中性から弱アルカリ性の範囲であり、
前記第2のpH範囲は、弱酸性域であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【請求項15】
前記膜の孔径は、0.5μm以下であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一つに記載の膜ろ過装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−221168(P2008−221168A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65701(P2007−65701)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(507291316)富士電機水環境システムズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(507291316)富士電機水環境システムズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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