説明

膜反応装置

【課題】熱交換効率が高く、その結果淡水の製造効率が高い膜蒸留装置を提供する。
【解決手段】第1枠体3には、第1流通室3aの上端から下端まで平行に延びる第1隔壁部3bを形成する。これにより、第1流通室3aの内部を上下方向へ互いに平行に延びる複数の第1通路3cに区分する。第2枠体5には、第2流通室5aの上端から下端まで延びる第2隔壁部5bを形成する。これにより、第2流通室5aの内部を上下方向へ互いに平行に延びる複数の第2通路5cに区分する。第1通路3cには、その下端部から上端部に向かって高温海水を流す。第2通路5cには、その上端部から下端部に向かって低温の淡水を流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器、電気透析装置及び膜蒸留装置等の膜反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、膜蒸留装置は、特許文献1に記載されているように、第1枠体、第2枠体及び蒸留膜(膜体)を備えている。図21は、そのような膜蒸留装置の概略構成を示す。膜蒸留装置の第1枠体Aは、平面視長方形の枠状をなしており、その内部が第1流通室A1になっている。第1流通室A1を構成する内面には、第1流入口A2及び第1流出口A3が形成されている。第1流入孔A2及び第1流出口A3は、第1流通室A1の二つの角部を結ぶ対角線L1上の一端部と他端部とにそれぞれ配置されている。第1流入口A2には、原料水たる高温海水が供給される。そして、そこから第1流通室A1に流入する。第1流通室A1内に流入した海水は、図13において実線で示すように、扇状に広がりながら対角線L1の他端側に向かって流れた後、狭まりながら対角線L1に沿って流れる。その後、第1流出口A3から外部に流出する。
【0003】
第1枠体Aの一方の面には、蒸留膜(図示せず)が第1流通室A1に臨んで設けられている。この蒸留膜は、気体の透過は許容するが、液体及び固体の透過を阻止する。したがって、高温の海水が第1流通室A1内を流れるときには、高温の海水から発生する水蒸気が蒸留膜を透過して第1流通室A1から外部に出る。
【0004】
第2枠体Bは、第1枠体Aと同一形状及び同一寸法を有しており、第1枠体Aと同一姿勢で配置されている。しかも、第2枠体Bは、第1枠体Aと蒸留膜を介して対向するよう、図13において第1枠体Aの裏側に配置されている。第2枠体Bには、第1枠体Aの第1流通室A1、第1流入口A2及び第1流出口A3に対応する第2流通室B1、第2流入口B2及び第2流出口B3が形成されている。ただし、第2流入口B2及び第2流出口B3は、第1流入口A2及び第1流出口A3が配置された対角線L1と交差する他の対角線L2上の一端部と他端部とにそれぞれ配置されている。
【0005】
第2流通室B1には、冷却水たる低温の海水が第2流入口B2から流入する。第2流通室B1内に流入した海水は、図13において破線で示すように、扇状に広がりながら対角線L2に沿って流れ、その後狭まりながら対角線L2に沿って流れる。そして、第2流出口B3から流出する。低温の海水は、第2流通室B1内を流れるときに、蒸留膜を透過した水蒸気を冷却して凝縮させる。これによって、淡水が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−197205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の膜蒸留装置においては、高温海水が対角線L1に沿って流れ、低温海水が対角線L2に沿って流れるので、第1流通室A1及び第2流通室B1のうち、両対角線L1,L2が交差する交差部及びその近傍を含む部分(円Cで囲まれる部分)では、熱交換が行われるが、円Cの外側に位置する部分では、熱交換がほとんど行われない。しかも、円C内の部分においても、高温海水と低温海水とが、交差する方向に流れており、互いに逆方向に流れていない。つまり、対向流になっていない。このため、熱効率が悪く、淡水の製造効率が低いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、この発明に係る膜反応装置は、内部に第1流通室を有する第1枠体と、上記第1枠体の一方の面に設けられて上記第1流通室を覆う膜体と、内部に第2流通室を有する第2枠体とを備え、上記第1流通室と上記第1流通室とが上記膜体を間にして互いに対向するよう、上記第1枠体と上記第2枠体とが上記膜体を間にして互いに対向して配置され、上記第1枠体には、上記第1流通室の内面にそれぞれ開口する第1流入口及び第1流出口が形成され、上記第2枠体には、上記第2流通室の内面にそれぞれ開口する第2流入口及び第2流出口が形成され、高温流体が、上記第1流入口から上記第1流通室に流入し、上記第1流通室内を通って上記第1流出口から流出し、上記高温流体より低温である低温流体が、上記第2流入口から上記第2流通室に流入し、上記第2流通室内を通って上記第2流出口から流出する膜反応装置において、上記第1枠体に上記第1流通室の一端部から他端部まで延びる第1隔壁部が形成されることにより、上記第1流通室が、互いに独立し、かつ互いに平行に延びる複数の第1通路に区分され、各第1通路の一端部及び他端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、上記第2枠体に上記第2流通室の一端部から他端部まで上記第1隔壁部と平行に延びる第2隔壁部が形成されることにより、上記第2流通室が、互いに独立し、かつ互いに平行に延びる複数の第2通路に区分され、上記第1流出口が形成された上記第1通路の端部と同一側に位置する各第2通路の一端部に上記第2流入口が開口させられ、上記第1流入口が形成された上記第1通路の端部と同一側に位置する各第2通路の他端部に上記第2流出口が開口させられていることを特徴としている。
この場合、上記第1枠体には、第1網体が埋設され、この第1網体が上記第1隔壁部の全体及び上記第1通路の内部全体にわたって配置され、上記第2枠体には、第2網体が埋設され、この第2網体が上記第2隔壁部の全体及び上記第2通路の内部全体にわたって配置されていることが望ましい。
上記第1枠体及び上記第1隔壁部がゴムによって互いに一体に形成され、上記第2枠体及び上記第2隔壁部がゴムによって互いに一体に形成されていることが望ましい。
第1及び第2制御手段をさらに備え、上記第1制御手段は、各第1流入口に他の第1流入口に対し独立した形態で高温流体をそれぞれ供給可能であるとともに、各第1流入口への高温流体の供給量をそれぞれ調節可能であり、上記第2制御手段は、各第2流入口に他の第2流入口に対し独立した形態で低温流体をそれぞれ供給可能であるとともに、各第2流入口への低温流体の供給量をそれぞれ調節可能であることが望ましい。
また、この発明に係る膜蒸留装置は、請求項1〜3のいずれかの一つに記載の膜反応装置において、上記高温流体が水を溶媒とする高温溶液であり、上記膜体が、上記高温溶液の水蒸気の透過を許容し、かつ上記高温溶液の他の構成物質の透過を阻止する蒸留膜であり、上記蒸留膜を透過した水蒸気が上記冷却流体によって冷却されて液体の水とされることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、第1流通室を第1隔壁部で区分することによって形成された複数の第1通路と、第2流通室を第2隔壁部で区分することによって形成された複数の第2通路とが互いに平行になっている。しかも、高温流体は、第1通路内をその長手方向の一端側から他端側へ向かって流れる。一方、低温流体は、第2通路内をその長手方向の他端側から一端側へ向かって流れる。したがって、高温流体と低温流体とは、ほぼ対向流となって流れる。よって、熱交換効率を向上させることができる。しかも、第1流通室及び第2流通室を複数に区分することによって第1及び第2通路が形成されているので、第1及び第2通路の幅が第1流通室及び第2流通室の幅より大幅に狭くなっている。したがって、高温流体及び低温流体は、それぞれ第1及び第2通路の内部をほぼ全体にわたって流れる。よって、熱交換効率をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態を示す平面図である。
【図2】図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図3は、図1のY−Y線に沿う断面図である。
【図4】図4は、図2のX−X線に沿う断面図である。
【図5】図5は、図2のY−Y線に沿う断面図である。
【図6】図6は、この発明の第2実施の形態を示す平面図である。
【図7】図7は、同実施の形態の図4と同様の断面図である。
【図8】図8は、同実施の形態の図5と同様の断面図である。
【図9】図9は、この発明の第3実施の形態の図4と同様の断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態の図5と同様の断面図である。
【図11】図11は、この発明の第4実施の形態を示す平面図である。
【図12】図12は、同実施の形態の図4と同様の断面図である。
【図13】図13は、同実施の形態の図5と同様の断面図である。
【図14】図14は、この発明の第5実施の形態を示す平面図である。
【図15】図15は、図14のX−X線に沿う断面図である。
【図16】図16は、図14のY−Y線に沿う断面図である。
【図17】図17は、図14のZ−Z線に沿う断面図である。
【図18】図18は、図15のX−X線に沿う断面図である。
【図19】図19は、図15のY−Y線に沿う断面図である。
【図20】図20は、図15のZ−Z線に沿う断面図である。
【図21】図21は、従来の膜蒸留装置の一例の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図5は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明を膜反応装置の一例としての膜蒸留装置1に適用したものである。勿論、この発明は、膜蒸留装置1以外の膜反応装置、例えば熱交換器や電気透析装置にも適用可能である。
【0012】
まず、膜蒸留装置1の構成及び作用を概略的に説明すると、図2及び図3に示すように、膜蒸留装置1は、上板2、上第1枠体(第1枠体)3、上蒸留膜(膜体)4、第2枠体5、下蒸留膜(膜体)4′下第1枠体(第1枠体)3′及び下板6を有している。これらの部材2〜6は、図2及び図3において上から下(以下、この実施の形態において上下は、特に断わらない限り、図2及び図3における上下を意味するものとする。)に向かって順次重ねられている。
【0013】
上第1枠体3は、その内部に第1流通室3aを有している。この第1流通室3aには、上板2に設けられた第1ポートP1から60°C程度に加熱された高温海水(溶液)が流入する。第1流通室3aに流入した高温海水は、第1流通室3aを通過した後、上板2に設けられた第2ポートP2から外部に排出される。第1流通室3aには、水を溶媒とする溶液であれば、海水以外のものを流入させてもよい。
【0014】
第2部材5は、その内部に第2流通室5aを有している。この第2流通室5aには、上板2に設けられた第3ポートP3から低温の淡水が流入する。第2流通室5aに流入した淡水は、第2流通室5aを通過した後、上板2に設けられた第4ポートP4から外部に流出する。
【0015】
下第1枠体3′は、第1枠体3と同様に構成されており、その内部に第1流通室3aを有している。第1流通室3a内には、第1ポートP1から高温海水が流入し、その内部を通過した後、第2ポートP2から外部に流出する。
【0016】
なお、第1〜第4ポートP1〜P4は、上板2の異なる箇所にそれぞれ配置されている。特に、この実施の形態では、上板2の4つの隅部にそれぞれ配置されている。すなわち、図1に示すように、第1ポートP1は左下に位置する隅部に配置され、第2ポートP2は右上に位置する隅部に配置され、第3ポートP3は左上に位置する隅部に配置され、第4ポートP4は右下に位置する隅部に配置されている。
【0017】
第1流通室3a,3a内を高温海水が流れるときには、高温海水から発生する水蒸気が上下の蒸留膜4,4′をそれぞれ透過して第2流通室5a内に入り込む。第2流通室5a内に入り込んだ水蒸気は、第2流通室5a内を流れる淡水によって直ちに冷却されて凝縮し、淡水と一緒に流れる。したがって、第4ポートP4から流出する淡水の量は、第3ポートP3から第2流通室5a内に流入する淡水の量より多くなっており、その増量分が膜製造装置1によって製造された淡水として取り出される。
【0018】
増量分以外の淡水は、冷却手段(図示せず)によって再度冷却された後、第3ポートP3に戻される。一方、第2ポートP2から流出した高温海水は、取り出された淡水の分だけ第1ポートP1から第1流通室3a内に流入した高温海水の量より少なくなっており、その減少分だけ新たな海水が追加され、その後加熱手段(図示せず)によって再度加熱されて第1ポートP1に戻される。第2ポートP2から流出した高温海水については、再度利用することなく廃棄してもよい。ただし、その場合には、高温海水を廃棄する前にその熱を利用して他の新たな海水を加熱することが望ましい。そして、廃棄すべき高温海水によって加熱された新たな海水は、加熱手段(図示せず)によって所定の温度までさらに加熱された後、第1ポートP1に送られる。
【0019】
次に、上記概略構成及び作用を有する膜蒸留装置1をさらに詳細に説明する。
上板2は、下板6と共に膜蒸留装置1全体の形状を一定の形状に維持するためのものであり、剛性の高い樹脂その他の材料によって平板状に形成されている。特に、この実施の形態では、上板2を上下方向(第1、第2枠体3,5の対向方向)から見たときの形状、つまり平面視形状が長方形に形成されている。上板2の平面視形状は、他の形状にしてもよい。また、上板2は、第1流通室3a内を流れる高温海水その他の高温の溶液に接触する。そこで、上板2は、それらの溶液に対して耐食性を有する材料で構成したり、あるいは第1流通室3aに臨む上板2の下面に溶液に対する耐食性が高く、かつシール性に優れた材料からなる被覆層を設けたりすることが望ましい。
【0020】
上第1枠体3は、その内部に上下に開口する第1流通室3aが形成されることによって枠状をなしており、平面視において上板2と同一の外形状を有している。しかも、第1枠体3は、上板2と同一の姿勢で配置されている。したがって、第1枠体3の上面全体が上板2の下面に接触している。これにより、第1流通室3aの上端開口部が閉じられている。第1枠体3は、その第1流通室3a内を高温海水等の溶液が流れることから、溶液に対する耐食性に優れている材料によって構成することが望ましく、樹脂その他の材料によって構成されている。特に、この実施の形態では、シール材としてのパッキンを製造する際に用いられるゴムによって第1枠体3が構成されている。なお、上第1枠体3の厚さは、例えば1.5mm程度であり、図面上は、第1部材3の厚さが、その長さ及び幅に対して誇張されている。第1枠体3は、必ずしもその平面視形状を上板2と同一にする必要がなく、第1流通室3aが上板2によって遮蔽される限り、上板2と異なる形状にしてもよい。また、第1流通室3aは、その上端部を第1枠体3の上面に開口させることなく、閉じた状態で形成してもよい。
【0021】
図1及び図4に示すように、第1枠体3には、複数の第1隔壁部3bが形成されている。第1隔壁部3bは、1つだけ形成してもよい。第1隔壁部3bは、第1流通室3aをその左右方向の一端から他端まで横断しており、その両端部が第1枠体3に一体に連なっている。つまり、第1隔壁部3bは、第1枠体3に一体に形成されている。第1隔壁部3bは、第1枠体3と別体に形成してもよい。第1隔壁部3bの厚さ(上下方向の寸法)は、第1枠体3の厚さと同一になっている。したがって、第1隔壁部3bの上下の両面は、第1枠体3の上下の面とそれぞれ同一平面上に位置している。
【0022】
第1隔壁部3bが形成されることにより、第1流通室3aの内部が複数の第1通路3cに区分されている。各第1通路3cは、第1流通室3aの左右方向の一端から他端まで互いに平行に延びている。しかも、各第1通路3cは、他の第1通路3cに対し第1隔壁部3bによって隔てられることにより、互いに独立した状態になっている。第1通路3cの長手方向と直交する方向(図4において上下方向)の両端に配置された二つの第1通路3cの幅は、その二つ第1通路3cの間に配置された他の第1通路3cの幅より広くなっている。ただし、各第1通路3cの幅は、必ずしもこのような関係にする必要がなく、逆の関係にしてもよく、全ての第1通路3cの幅を同一にしてもよく、あるいは全ての第1通路3cの幅を互いに異なる幅にしてもよい。いずれの場合においても、第1通路3cの幅は、それと長さとの比(幅/長さ)が1/2〜1/5又はそれ以下になるようにすることが望ましい。
【0023】
図4に示すように、第1通路3cの左内面には、第1流入口3dが開口している。第1流入口3dは、第1通路3cの左内面の図4における上端部に配置されているが、逆側の端部(下側の端部)に配置してもよく、中央部に配置してもよい。第1流入口3dは、第1枠体3に形成された第1流入通路3eに連通している。第1流入通路3eは、第1流入孔7に連通している。第1流入孔7は、図2に示すように、上板2の上面から上第1部材3、上蒸留膜4、第2部材5、下上流膜4′及び下第1部材3′まで貫通しており、その上端開口部が第1ポートP1に連通している。したがって、各第1通路3cには、高温海水が第1ポートP1、第1流入孔7、第1流入通路3e及び第1流入口3dを介して流入する。なお、第1流入孔7の下端開口部は、下板6によって閉じられている。
【0024】
図4に示すように、第1通路3cの右内面には、第1流出口3fが開口している。第1流出口3fは、第1流入口3dと逆側の端部(図4の下端部)に配置されているが、第1流入口3fと同一の端部に配置してもよく、中央部に配置してもよい。第1流出口3fは、第1枠体3に形成された第1流出通路3gに連通している。第1流出通路3gは、第1流出孔8に連通している。第1流出孔8は、図3に示すように、上板2の上面から上第1部材3、上蒸留膜4、第2部材5、下上流膜4′及び下第1部材3′まで貫通しており、その上端開口部が第2ポートP2に連通している。したがって、第1通路3c内をその左端部から右端部まで流れて第1流出口3fに入り込んだ高温海水は、第1流出通路3g、第1流出孔8を介して第2ポートP2に達し、第2ポートP2から外部に流出する。
【0025】
図2〜図4に示すように、第1枠体3の内部には、第1網体9が埋設されている。第1網体9は、第1部材3と同一か若干薄い厚さを有している。第1網体9の平面視形状は、第1部材3の平面視形状とほぼ同一に設定されている。しかも、第1網体9は、第1部材3と同一の姿勢で配置されている。したがって、第1網体9は、第1部材3全体にわたって埋設されており、その一部が第1隔壁部3b内に埋設され、他の一部が第1通路3cの内部全体に露出している。よって、第1網体9は、高温海水に接する。そこで、第1網体9は、高温海水に対する耐食性に優れた材料で構成するのが望ましく、特にPETやポリエチレンで構成することが望ましい。
【0026】
第1網体9は、第1部材3に対し例えば次のようにして埋設することができる。すなわち、第1枠体3をその厚さ方向に二等分してなる半体と同一寸法を有するゴム製の二つの素材(図示せず)を用意する。二つの素材を構成するゴムは、加硫前の状態にしておく。二つの素材は、互いに離間して対向させる。そして、二つの素材間に第1網体9を配置する。その後、二つの素材を互いに接近させ、第1網体9を介して互いに接触させて一体化する。このとき、第1網体9を構成する線材が二つの素材の内部に入り込むとともに、各素材が第1網体9の網目内に入り込む。その後、一体化した素材を加硫する。これによって、第1網体9が埋設された第1枠体3を製造することができる。勿論、このときには、第1隔壁部3b及び第1通路3cも同時に形成され、第1隔壁部3b内に第1網体9の一部が埋設され、他の一部が第1通路3c内に露出する。
【0027】
上蒸留膜4及び下蒸留膜4′は、気体の透過を許容し、液体及び固体の透過を阻止するという性質を有する透過膜、例えば多孔質の膜で構成されている。蒸留膜4,4′の材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の剛性樹脂が用いられる。蒸留膜4,4′は、互いに同一形状、同一寸法を有しており、第1枠体3と同一の平面視形状に形成されている。したがって、上蒸留膜4は、第1枠体3の下面全体及び第2枠体5の上面全体に接触させられている。一方、下蒸留膜4′は、第2枠体5の下面全体及び下第1枠体3′の上面全体に接触させられている。蒸留膜4,4′の厚さは、通常、10μm〜500μm程度であり、図面上では蒸留膜4,4′の厚さが、その長さ及び幅に対して誇張されている。
【0028】
第2枠体5は、その内部に上下に開口する第2流通室5aが形成されることによって枠状をなしており、平面視において上板2と同一の外形状を有している。しかも、第2枠体5は、第1枠体3と同一の姿勢で配置されている。したがって、第2枠体5は、その上面全体が第1枠体3の下面全体と上蒸留膜4を介して上下に対向しており、第2枠体5の上面全体が、第1枠体3の下面全体に上蒸留膜4を介して接触している。第1枠体5の下面には、下蒸留膜4′が設けられている。第2枠体5の上下の面に上蒸留膜4及び下蒸留膜4′がそれぞれ設けられているので、第2枠体5は、高温海水等の溶液に接触することがなく、淡水が接触するだけである。したがって、第2枠体5は、海水等の溶液に対する耐食性に優れた材料で構成する必要がないが、この実施の形態では第1枠体3を構成する材料と同一の材料によって構成されている。つまり、ゴムによって構成されている。第2枠体5の厚さは、例えば1.5mm程度であるが、図面上は、その長さ及び幅に対して誇張されている。
【0029】
第2枠体5の第2流通室5の上下の開口部は、上蒸留膜4及び下蒸留膜4′によって閉じられている。第2流通室5aは、第1流通室3aと同一の平面視形状に形成されている。しかも、第2流通室5aは、平面視したとき、第1流通室3aと同一位置に同一姿勢で配置されている。したがって、第2流通室5a全体が、第1流通室3a全体と上蒸留膜4(下蒸留膜4′)を介して上下に対向している。第2流通室5a全体と第1流通室3a全体とが対向する限り、第1枠体3(3′)と第2枠対5とは、互いに異なる外形状に形成してもよい。
【0030】
図5に示すように、第2枠体5には、複数(この実施の形態では第1隔壁部3cと同数)の第2隔壁部5bが形成されている。第2隔壁部3bは、1つだけ形成してもよい。第2隔壁部3bは、第2流通室5aをその左右方向の一端から他端まで横断しており、その両端部が第2枠体5に一体に連なっている。つまり、第2隔壁部5bは、第2枠体5に一体に形成されている。第2隔壁部5bは、第2枠体5と別体に形成してもよい。第2隔壁部5bの厚さ(上下方向の寸法)は、第2枠体5の厚さと同一になっている。したがって、第2隔壁部5bの上下の両面は、第2枠体5の上下の面とそれぞれ同一平面上に位置している。
【0031】
第2隔壁部5bが形成されることにより、第2流通室5aの内部が複数の第2通路5cに区分されている。勿論、第2通路5cの数は、第1通路3cの数と同数である。各第2通路5cは、第2流通室5aの左右方向の一端から他端まで互いに平行に延びている。しかも、各第2通路5cは、他の第2通路5cに対し第2隔壁部5bによって隔てられることにより、互いに独立した状態になっている。
【0032】
第2隔壁部5bは、平面視において第1隔壁部3bと同一形状を有しており、第1隔壁部3bと同一位置に配置されている。この結果、各第2通路5cも、平面視において各第1通路3cと同一形状になっており、同一位置に配置されている。したがって、各第2通路5cは、各第1通路3cとそれぞれ上下方向に対向している。
【0033】
図5に示すように、第2通路5cの右内面には、第2流入口5dが開口している。第2流入口5dは、第2通路5cの右内面の図5における上端部に配置されているが、逆側の端部(下側の端部)に配置してもよく、中央部に配置してもよい。第2流入口5dは、第2部材5に形成された第2流入通路5eに連通している。第2流入通路5eは、第2流入孔10に連通している。第2流入孔10は、図2に示すように、上板2の上面から上第1枠体3、上蒸留膜4及び第2枠体5まで貫通しており、その上端開口部が第3ポートP3に連通している。したがって、第2通路5cの左端部には、低温の淡水が第3ポートP3から第2流入孔10、第2流入通路5e及び第2流入口5dを介して流入する。なお、第2流入孔10の下端開口部は、下蒸留膜4′によって閉じられている。
【0034】
第2通路5cの左内面には、第2流出口5fが開口している。第2流出口5fは、図5の上下方向において第2流入口5dと逆側の端部に配置されているが、同一側の端部に配置してもよく、中央部に配置してもよい。第2流出口5fは、第2枠体5に形成された第2流出通路5gに連通している。第2流出通路5gは、第2流出孔11に連通している。第2流出孔11は、図3に示すように、上板2の上面から上第1枠体3、上蒸留膜4及び第2枠体5まで貫通しており、その上端部が第4ポートP4に連通している。したがって、第2通路5c内をその右端部から左端部まで流れて第2流出口5fに入り込んだ淡水は、第2流出通路5g、第2流出孔11を介して第4ポートP4に達し、第4ポートP4から外部に流出する。なお、第2流出孔11の下端開口部は、下蒸留膜4′によって閉じられている。
【0035】
図2、図3及び図5に示すように、第2枠体5の内部には、第2網体12が埋設されている。第2網体12は、第2部枠体5の厚さと同一か若干薄い厚さを有している。第2網体12の平面視形状は、第2部材5の平面視形状とほぼ同一に設定されている。しかも、第2網体12は、第2枠体5と同一の姿勢で配置されている。したがって、第2網体12は、第2部材5全体にわたって埋設されており、その一部が第2隔壁部5b内に埋設され、他の一部が各第2通路5cの内部全体に露出している。第2網体12は、淡水に接するだけであり、高温海水に接することがない。そこで、第2網体12は、高温海水等の溶液に対する耐食性に優れた材料で構成する必要がないが、この実施の形態では第1網体9と同一の材料で構成されている。なお、第2網体12は、第1網体9を第1枠体3に埋設する場合と同様の方法によって第2枠体5に埋設することができる。
【0036】
下第1枠体3′は、第2流入孔10及び第2流出孔11が形成されていない点を除き第1枠体3と同一に構成されている。したがって、第1枠体3′も、第1流通室3a、第1隔壁部3b、第1通路3c、第1流入口3d、第1流入通路3e、第1流出口3f及び第1流出通路3gを有している。そして、各第1通路3cの左端部が、第1流入口3d及び第1流入通路3eを介して第1流入孔7に連通し、さらに第1流入孔7を介して第1ポートP1に連通している。各第1通路3cの右端部が、第1流出口3f及び第1流出通路3gを介して第1流出孔8に連通し、さらに第1流出孔8を介して第2ポートP2に連通している。なお、下第1枠体3′の第1流通室3aの上端開口部は、下第1蒸留膜4′によって遮蔽され、下端開口部は下板6によって遮蔽されている。
【0037】
下板6は、上記のように、上板2と共に、膜蒸留装置1全体の形状を一定の形状に維持するものであり、上板2と同様の材料によって構成されている。しかも、下板5は、平面視形状が上板2と同一形状に形成されている。この結果、この実施の形態の膜蒸留装置1においては、上板2、上第1枠体(第1枠体)3、上蒸留膜(膜体)4、第2枠体5、下蒸留膜(膜体)4′、下第1枠体(第1枠体)3′及び下板6の平面視における外形状が互いに同一形状とされている。ただし、必ずしもそのように構成する必要がなく、互いに異なる形状にしてもよい。
【0038】
上記上板2、上第1枠体3、上蒸留膜4、第2枠体5、下蒸留膜4′、下第1枠体3′及び下板6は、互いに隣接する部材どうしが接着固定されている。これによって、膜蒸留装置1全体が一定の形状に形成されている。上記上板2、上第1枠体3、上蒸留膜4、第2枠体5、下蒸留膜4′、下第1枠体3′及び下板6は、隣接するものどうしを接着固定することに代えて、上板2から下板6まで貫通するボルト挿通孔(図示せず)を複数形成し、各ボルト挿通孔にボルト(図示せず)を挿通するともに、このボルトにナット(図示せず)を螺合させて締め付けることにより、各部材を相互に固定してもよい。
【0039】
上記構成の膜蒸留装置において、第1ポートP1に高温海水を供給すると、その高温海水は、第1流入孔7及び第1流入通路3eを通って第1流入口3dに入り込み、そこから第1通路3cの左端部に流入する。第1通路3cの左端部に流入した高温海水は、図1及び図4に示すように、第1通路3cの長手方向にほぼ沿って右端部まで流れる。そして、第1流出口3fに入り込む。第1流出口3fに入り込んだ高温海水は、第1流出通路3g及び第1流出孔8を通って第2ポートP2へ至り、そこから外部に排出される。
【0040】
一方、第3ポートP3に低温の淡水を供給すると、その淡水は、第2流入孔10、第2流入通路5e及び第2流入口5dを通って第2通路5cの右端部に流入する。第2通路5cの右端部に流入した淡水は、図1及び図5に示すように、第2通路5cの長手方向に沿って左端部にまで流れる。そして、第2流出口5fに入り込む。第2流出口5fに入り込んだ淡水は、第2流出通路5g及び第2流出孔11を通って第4ポートP4へ至り、そこから外部に排出される。
【0041】
ここで、第1通路3c内を流れる高温海水と、第2通路5c内を流れる淡水とは、第1及び第2通路3c,5cの長手方向の両端部を除く中間部において、互いにほぼ平行に、しかも逆方向へ流れる。つまり、高温海水と淡水とは、いわゆる対向流となって流れる。したがって、高温海水と淡水との間の熱交換効率が向上し、淡水の製造効率を向上させることができる。しかも、高温海水と淡水との熱交換は、第1及び第2通路3c,5cのほぼ全域において行われる。したがって、淡水の製造効率をより一層向上させることができる。
【0042】
また、第1通路3c内に第1網体9が設けられているので、高温海水は第1通路3c内を常時良好な状態で流れるようにすることができる。すなわち、第1通路3c内の圧力と第2通路5c内の圧力との差圧によって上蒸留膜4が上板2側に押された場合において、仮に第1網体9が設けられていないと、上蒸留膜4が上板2に接することがある。その状態では、上蒸留膜4と上板2との接触部及びその近傍においては、第1通路3cの流路面積が零ないしは非常に小さくなる。この結果、第1通路3cの流通抵抗が大きくなり、高温海水の良好な流通が阻害される。この点、第1通路3cに第1網体9が設けられたこの実施の形態の膜蒸留装置1においては、上蒸留膜4が差圧によって押されたとしても上板2に接触することがなく、第1網体9に接触するだけである。第1網体9は、多数の網目を有する。したがって、上蒸留膜4が第1網体9に接触したとしても、高温海水は第1網体9の網目を通って流れることができる。よって、高温海水の円滑な流通を確保することができる。これは、第1網体9が第2通路5c側に押される場合、及び第2網体11が第1通路3c側又は第2通路5c側に押される場合も同様である。
【0043】
さらに、上下の第1枠体3,3′の第1隔壁部3bが上板2及び下板6にそれぞれ接触するとともに、第2枠体5の第2隔壁部5bが上下の第1枠体3,3′の第1隔壁部3bに接触するので、第1枠体3,3′及び第2枠体5の中央部が上下方向に潰れるような事態を未然に防止することができる。
【0044】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することとし、上記実施の形態と同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図6〜図8は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態は、上記第1実施の形態を改良したものであり、図6に示すように、第1通路3c内を流れる高温海水と第2通路5c内を流れる淡水とがほほ全流域において対向流になっている。このようにするために、図7に示すように、第1枠体3は第1実施の形態と同様に構成されているが、図8に示すように、第2枠体5においては、第2流入口5d及び第2流出口5fが、上記第1実施の形態のそれらと上下逆に配置されている。すなわち、第2流入口5dが第2通路5cの図8における下端部に配置され、第2流出口5fが第2通路5cの図8における上端部に配置されている。この結果、第1、第2枠体3,5の対向方向から見たとき、第1流入口3dと第2流出口5fとが同一位置に位置し、第1流出口3fと第2流入口5dとが同一位置に位置するようになっている。
【0046】
この実施の形態の膜蒸留装置1においては、図6に示すように、高温海水と淡水とがそれらの流域全体にわたって対向流となる。したがって、高温海水と淡水との間の熱交換効率がさらに向上し、淡水の製造効率をより一層向上させることができる。
【0047】
図9及び図10は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態は、上記第1実施の形態を変形したものであり、第1流入口3d及び第1流出口3fが第1通路3cの幅の中央部に配置されている。同様に、第2流入口5d及び第2流出口5fが第2通路5cの幅方向の中央部に配置されている。
【0048】
図9に示すように、第1流入口3dから第1通路3cの内部に流入した高温海水の一部は、第1通路3cの中央部をその長手方向に沿って流れて第1流出口3fに至る。他の一部は、第1通路3cに入った後、直ちに幅方向の一端側と他端側に広がる。そして、第1通路3cに沿って流れる。その後、第1流出口3fの手前で第1通路3cの方向の中央側に向きを変え、第1流出口3fに至る。一方、第2流入口5dから第2通路5cを通って第2流出口5fに至る淡水は、図7に示すように、高温海水とは流れの方向が逆ではあるが、高温海水が第1通路3c内を流れる場合と同様にして第2通路5c内を流れる。したがって、高温海水と淡水とは、対向流となって流れる。
【0049】
図11〜図13は、この発明の第4実施の形態を示す。この実施の形態においては、膜蒸留装置1に代えて膜蒸留装置1Aが用いられ、さらに第1及び第2制御装置S1,S2が用いられている。
【0050】
図11に示すように、膜蒸留装置1Aにおいては、第1ポートP1及び第1流入孔7が第1流入口3dと同数だけ設けられている。そして、各第1流入口3dが各第1流入孔7にそれぞれ連通され、各第1流入孔7が各第1ポートP1にそれぞれ連通されている。同様に、第2ポートP2及び第1流出孔8が第1流出口3fと同数だけ設けられている。各第1流出口3fが各第1流出孔8にそれぞれ連通され、各第1流出孔8が各第2ポートP2にそれぞれ連通されている。
【0051】
また、第3ポートP3及び第2流入孔10が第2流入口5dと同数だけ設けられている。そして、各第2流入口が各第2流入孔10にそれぞれ連通され、各第2流入孔10が各第3ポートP3にそれぞれ連通されている。同様に、第4ポートP4及び第2流出孔11が第2流出口5Fと同数だけ設けられている。各第2流出口5dが各第2流出孔11にそれぞれ連通され、各第2流出孔11が各第4ポートP4にそれぞれ連通されている。
【0052】
第1制御装置S1は、ポンプ等からなる第1供給源D1から送られてくる高温海水を各第1ポートP1に供給するためのものであり、第1ポートP1と同数の吐出ポートS1aを有している。各吐出ポートS1aは、各第1ポートP1にそれぞれ接続されている。第1制御装置S1は、開閉弁や流量制御弁等の制御手段を有しており、高温海水を吐出させる吐出ポートS1aを選択する機能、及び各吐出ポートS1aから吐出される高温海水の吐出量を制御する機能を有している。したがって、この実施の形態では、全ての第1通路3cに高温海水を流すことも可能であり、任意の一部の第1通路3cにのみ高温海水を流すことも可能である。しかも、各第1通路3c内を流れる高温海水の流量を任意に調節することができる。なお、各第1通路3cを通って各第2ポートP2に至った高温海水は、第1供給源D1に戻してもよく、廃棄してもよい。
【0053】
第2制御装置S2は、第2通路5c内を流れる淡水を制御する点を除き。第1制御装置S1と同様に構成されている。したがって、第2制御装置S2は、第3ポートP3と同数の吐出ポートS2aを有しており、各吐出ポートS1aは、各第3ポートP3にそれぞれ接続されている。第2制御装置S2は、開閉弁や流量制御弁等の制御手段を有しており、ポンプ等の第2供給源D2から送られてくる淡水を吐出させる吐出ポートS1aを選択する機能、及び各吐出ポートS1aから吐出される淡水の吐出量を制御する機能を有している。したがって、この実施の形態では、全ての第2通路5cに淡水を流すことも可能であり、任意の一部の第2通路5cにのみ高温海水を流すことも可能である。勿論、一部の第2通路5cにのみ淡水を流す場合、高温海水が流れる第1通路3cと対向する、第2通路5cが選択される。また、各第2通路5c内を流れる高温海水の流量を任意に調節することができる。この場合にも、第2通路5c内を流れる淡水の流量は、第1通路3c内を流れる高温海水の流量に応じて適宜に調節される。第なお、各第2通路5cを通って各第4ポートP4に至った淡水は、上記のように、その一部が取り出された後、第2供給源D2に戻される。
【0054】
この実施の形態においては、高温海水が流れる第1通路3c及び淡水が流れる第2通路5cを任意に選択することができるとともに、第1通路3c内を流れる高温海水の流量及び第2通路5c内を流れる淡水の流量を調節することができるので、淡水の製造量を所望の量に容易に調節することができる。
【0055】
なお、第2〜第4実施の形態における第1実施の形態の改良及び変形は、互いに組み合わせることも可能であり、次に述べる第5実施の形態にも適用可能である。
【0056】
図14〜図20は、この発明の第5実施の形態を示す。この実施の形態の膜蒸留装置(膜反応装置)1Bにおいては、図15〜図17に示すように、第2枠体5の厚さ方向(図15〜図17において左右方向;以下、この実施の形態において左右方向という。)の両面に、不透過膜13,13がそれぞれ固着されている。この二つの不透過膜13,13によって第2枠体5の全ての第2通路5cの両端開口部が閉じられている。不透過膜13は、気体、液体及び固体の透過を阻止し、かつ良好な熱伝導性を有する材質によって構成されている。不透過膜13は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムによって構成されているが、他の材料からなるフィルムによって構成してもよい。
【0057】
また、図15〜図17に示すように、上第1枠体3と第2枠体5との間、及び下第1枠体3′と第2枠体5との間には、第3枠体14がそれぞれ配置されている。第3枠体14は、図14及び図20から明らかなように、その外形状が上下の第1枠体3,3′及び第2枠体5の外形状と同一になっており、第2枠体5と同一材料によって構成されている。第3枠体14は、第2枠体5と異なる材料によって構成してもよい。第3枠体14は、第1流通室3a及び第2流通室5aと平面視形状が同一である凝縮室14aを有している。凝縮室14aには、隔壁部が設けられておらず、凝縮室14a全体が一つの室とされている。しかし、必ずしもこのように構成する必要がなく、凝縮室14aにも、第1、第2隔壁部3b、5bと同一寸法を有し、かつ第1、第2枠体3,5の対向方向から見たときに同一位置に位置する隔壁部を形成してもよい。第3枠体14には、第3網体17が設けられている。第3網体17は、第1、第2網体9,12が第1、第2枠体3,5にそれぞれ設けられた状態と同様の状態で第3枠体14に設けられている。したがって、第3網体17は、凝縮室14aの内部全体に設けられている。
【0058】
上側の第3枠体14は、上第1枠体3に上蒸留膜4を介して固定されるとともに、第2枠体5に不透過膜13を介して第2枠体5に固定されている。したがって、上側の第3枠体14の凝縮室14aは、上蒸留膜4及び不透過膜13に接触している。下側の第3枠体14は、下第1枠体3′に下蒸留膜4′を介して固定されるとともに、第2枠体5に不透過膜13を介して固定されている。したがって、下側の第3枠体14の凝縮室14aは、下蒸留膜4′及び不透過膜13に接触している。
【0059】
凝縮室14aを区画する内面には、水抜き口14b及びガス抜き口14cが形成されている。図20に示すように、水抜き口14bは、凝縮室14aの内面のうちの下側の内面の左右方向の中央部に開口するように配置されている。水抜き凹部14bは、第1排出孔15に連通しており、第1排出孔15は、上板2に設けられた第5ポートP5に連通している。一方、ガス抜き口14cは、凝縮室14aの内面のうちの上側の内面の左右方向の中央部に開口するように配置されている。ガス抜き口14cは、第2排出孔16に連通しており、第2排出孔16は、上板2に設けられた第6ポートP6に連通している。
【0060】
上記構成の膜蒸留装置1Aにおいては、高温海水が第1通路3cを流れると、高温海水から発生した水蒸気が蒸留膜4(4′)を透過して凝縮室14a内に流入する。凝縮室15a内に流入した水蒸気は、第2通路5c内を流れる淡水によって冷却されて液体の水になる。この水は、水抜き口14b、第1排出孔15を介して第5ポートP5に至り、そこから外部に淡水として取り出される。一方、蒸留膜4(4′)を透過した気体のうち凝縮されない気体は、ガス抜き口14c、第2排出孔16を介して第6ポートP6に至り、そこから外部に排出される。
【0061】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、上板2、下板6及びそれらの間に配置された各部材を一つのブロックとし、そのブロックを膜蒸留装置1(1A,1B)としているが、そのようなブロックを前後、左右及び上下に並べてそれら全体を膜蒸留装置としてもよい。
また、上記の実施の形態においては、高温海水(溶液)から淡水を製造するために膜体として蒸留膜4,4′が用いられているが、この発明を例えば熱交換機に用いる場合には、蒸留膜4,4′に代えて不透過膜が膜体として用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明は、膜蒸留装置、熱交換器及び電気透析装置等の各種の膜反応装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
S1 第1制御装置
S2 第2制御装置
1 膜蒸留装置(膜反応装置)
1A 膜蒸留装置(膜反応装置)
1B 膜蒸留装置(膜反応装置)
3 上第1枠体(第1枠体)
3′ 下第1枠体(第1枠体)
3a 第1流通室
3b 第1隔壁部
3c 第1通路
3d 第1流入口
3f 第1流出口
4 上蒸留膜(膜体)
4′ 下蒸留膜(膜体)
5 第2枠体
5a 第2流通室
5b 第2隔壁部
5c 第2通路
5d 第2流入口
5f 第2流出口
9 第1網体
12 第2網体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1流通室を有する第1枠体と、上記第1枠体の一方の面に設けられて上記第1流通室を覆う膜体と、内部に第2流通室を有する第2枠体とを備え、上記第1流通室と上記第1流通室とが上記膜体を間にして互いに対向するよう、上記第1枠体と上記第2枠体とが上記膜体を間にして互いに対向して配置され、上記第1枠体には、上記第1流通室の内面にそれぞれ開口する第1流入口及び第1流出口が形成され、上記第2枠体には、上記第2流通室の内面にそれぞれ開口する第2流入口及び第2流出口が形成され、高温流体が、上記第1流入口から上記第1流通室に流入し、上記第1流通室内を通って上記第1流出口から流出し、上記高温流体より低温である低温流体が、上記第2流入口から上記第2流通室に流入し、上記第2流通室内を通って上記第2流出口から流出する膜反応装置において、
上記第1枠体に上記第1流通室の一端部から他端部まで延びる第1隔壁部が形成されることにより、上記第1流通室が、互いに独立し、かつ互いに平行に延びる複数の第1通路に区分され、各第1通路の一端部及び他端部に上記第1流入口及び上記第1流出口がそれぞれ開口させられ、
上記第2枠体に上記第2流通室の一端部から他端部まで上記第1隔壁部と平行に延びる第2隔壁部が形成されることにより、上記第2流通室が、互いに独立し、かつ互いに平行に延びる複数の第2通路に区分され、上記第1流出口が形成された上記第1通路の端部と同一側に位置する各第2通路の一端部に上記第2流入口が開口させられ、上記第1流入口が形成された上記第1通路の端部と同一側に位置する各第2通路の他端部に上記第2流出口が開口させられていることを特徴とする膜反応装置。
【請求項2】
上記第1枠体には、第1網体が埋設され、この第1網体が上記第1隔壁部の全体及び上記第1通路の内部全体にわたって配置され、
上記第2枠体には、第2網体が埋設され、この第2網体が上記第2隔壁部の全体及び上記第2通路の内部全体にわたって配置されていることを特徴とする請求項1に記載の膜反応装置。
【請求項3】
上記第1枠体及び上記第1隔壁部がゴムによって互いに一体に形成され、上記第2枠体及び上記第2隔壁部がゴムによって互いに一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜反応装置。
【請求項4】
第1及び第2制御手段をさらに備え、上記第1制御手段は、各第1流入口に他の第1流入口に対し独立した形態で高温流体をそれぞれ供給可能であるとともに、各第1流入口への高温流体の供給量をそれぞれ調節可能であり、上記第2制御手段は、各第2流入口に他の第2流入口に対し独立した形態で低温流体をそれぞれ供給可能であるとともに、各第2流入口への低温流体の供給量をそれぞれ調節可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の膜反応装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの一つに記載の膜反応装置において、
上記高温流体が水を溶媒とする高温溶液であり、上記膜体が、上記高温溶液の水蒸気の透過を許容し、かつ上記高温溶液の他の構成物質の透過を阻止する蒸留膜であり、上記蒸留膜を透過した水蒸気が上記冷却流体によって冷却されて液体の水とされることを特徴とする膜蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−206643(P2011−206643A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75102(P2010−75102)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】