説明

膜状体形成装置および膜状体形成方法

【課題】微細であっても、かつ、ピッチが小さくても、ハンダペーストを基板上に設けることが出来る技術を提供することである。
【解決手段】基板上に膜状体を形成する装置であって、
膜状体の構成材料が充填される孔が所定パターンで形成された第1の板体と、前記第1の板体の一面に対向して設けられた気体透過性を有する第2の板体とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜状体形成装置および膜状体形成方法に関する。例えば、プリント基板などの電気・電子機器の所望箇所にハンダを設ける為の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の小型化は進む一方であり、これに使用されるプリント基板や電子デバイスの端子ピッチは、益々、微細になって来ている。そして、端子サイズの微細化と多ピン化とが相俟って、微細ピッチに対応したハンダを設ける技術として、これまでにも、様々な技術が提案されている。例えば、インクジェットを用いた方法、ナノインプリントを用いた方法など注目すべき技術が提案されている。しかしながら、これ等の新しい技術の採用は、新たな投資の必要や基盤整備の技術が未開発であることから、現実的には未だである。又、ワイヤボンディングでのパッドサイズやピッチの狭小化では、〜20μmのような細線の採用のみならず、ウエッジボンディングのような細線で確実な接合を行う方法が提案されているもの、狭ピッチ化には限度がある。フリップチップ接続もその一つであり、ハンダボール搭載法やAuめっきバンプ法などの一括処理による端子形成が行われている。これらの方法では、微細端子に対して、端子の断面形状に対する高さの比(アスペクト比)は1前後であり、断面形状に対して余り高くは取れなかった。尚、端子の高さは、実装する相手基板の膨張係数とのミスマッチによる応力を緩和する効果が有る。すなわち、アスペクト比を大きくすることは接続寿命を延ばすことになる。
【0003】
さて、接続技術の中で、スクリーン印刷法を用いてハンダペーストを設ける技術は、広く実施されており、その実施基盤も整っており、しかも一括処理が可能で、コスト的にも有用である。
【0004】
しかしながら、従来の技術のみでは、端子サイズの微細化や多ピン化が進むにつれて、微細なマスク開口部に充填されたペーストをスキージで被加工物たる回路基板やパッケージとしてのインターポーザに転写することが難しくなって来ている。何故なら、微細バンプ用のマスクでは開口部の表面積がペースト体積に対して相対的に減少していてペーストがマスクから離脱する抵抗力が増しているにも拘らず、単位面積当たりで与えられるスキージによる加圧力で発生する基板への付着力では十分では無くなって来ているからである。そして、転写(抜け)が上手く行かず、残留したペーストが次第に固着して不良を増やすことになる。
【0005】
又、オフコンタクト印刷にあっては、マスクが印刷時に撓んで(変形して)被印刷物に接触しないと、ペーストは転写されない。従って、マスクは変形する必要がある。ところが、高アスペクト比のものを得る為に転写される材料の量が多くなると言うことは、マスクの厚みが増すことになる。そして、マスクが厚くなると、マスクは印刷時に上手く撓み(変形し)難いものとなる。
【0006】
又、微細バンプの形成では、スキージでハンダペーストを微細なマスク開口部に充填するに際して、開口部の被加工物側はペーストで塞がれるようになる為、マスク開口部に空気が封じ込められるようになる。この為、終には、スキージで圧入してもペーストが入って行かなくなる。そして、本来なら、一定量のハンダペーストが開口部に充填され、この一定量のハンダペーストが端子上に転写される筈であるが、空気が残留した空孔の分だけ量が少ないハンダペーストが転写されることになる。従って、後でウエットバックしてボールにしてみると、そのサイズが小さいと言う問題が起きていた。こうした問題が有ると、多数のバンプを一括して作成する利点も小さくなってしまう。尚、微細パターンに対する印刷法の限界は、例えば線幅では30μm〜と謂れており、それよりも幅の狭い領域においては、フォトリソグラフィを使ったコーティング法やインクジェット法、めっき法が有利と謂われている。
【0007】
従って、高い費用対効果が得られるスクリーン印刷法を、狭ピッチにおいても、再現性良く実現できる技術の開発が求められている。
【0008】
ところで、例えば特開平4−344242号公報や特開2000−233489号公報では、メタルマスクの孔に充填したクリームハンダに、直接、空気圧を掛けて基板上に転写する技術が開示されている。
【0009】
又、特開平5−229096号公報では、クリームハンダが充填されたメタルマスクに対してフィルムを配設し、このフィルムに空気圧を掛けて転写する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−344242号公報
【特許文献2】特開2000−233489号公報
【特許文献3】特開平5−229096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
さて、本願発明者は、特許文献1,2の技術を用いてハンダペーストの転写を試みた。すなわち、メタルマスクの孔にハンダペーストを充填した後、空気圧を印加した。ところが、ハンダペーストの転写が理屈上は出来る筈であったが、良好な転写は出来なかった。すなわち、転写されたハンダペーストに欠けや崩れが出来ていたのである。又、ハンダペーストが転写されている端子ばかりでは無く、中にはハンダペーストが転写されて無い端子も認められた。
【0011】
又、特許文献3の技術を用いてハンダペーストの転写を試みた。すなわち、メタルマスクの孔にハンダペーストを充填した後、その上をフィルムで覆い、そしてフィルムに対して空気圧を印加した。ところが、この場合も、やはり、良好な転写は出来て無かった。尚、特許文献3にあっては、空気圧を印加しているとは言うものの、フィルムによって空気は遮断されており、単に、空気圧によって撓んだフィルムがハンダペーストを押し出すように作用したに過ぎないものである。
【0012】
更に、特許文献1,2,3の技術では、何れも、高アスペクト比のハンダペーストの転写は得られなかった。
【0013】
従って、本発明が解決しようとする課題は、微細であっても、かつ、ピッチが小さくても、更には高アスペクト比であっても、ハンダペーストを基板上に簡単に設けることが出来る技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決する為の研究が、鋭意、推し進められて行った。そして、実験が試行錯誤で繰り返されている中に、フィルムを用いる点においては、形式上、特許文献3の技術と似通っているものの、奏される特長が全く異なる技術に遭遇したのである。すなわち、所定パターンの開口部(孔)が形成されたマスクの該開口部(孔)にハンダペーストを充填し、その上にフィルムを配置して空気圧を印加した点では、特許文献3と似通ったものであるが、前記フィルムとして通気性フィルムを用いた処、ハンダペーストの転写が実に綺麗に行われていたのである。この好成績が偶然であったのか否かの点を検討する為、同様なテストを繰り返し繰り返して行なった。この結果、好成績は、偶然では無く、再現性良く繰り返し得られることが判った。
【0015】
上記知見を基にして本発明が達成されたものである。
【0016】
すなわち、前記の課題は、
基板上に膜状体を形成する装置であって、
膜状体の構成材料が充填される孔が所定パターンで形成された第1の板体と、
前記第1の板体の一面に対向して設けられた気体透過性を有する第2の板体
とを具備することを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。
【0017】
又、基板上に膜状体を形成する装置であって、
膜状体の構成材料が充填される孔が所定パターンで形成された第1の板体と、
前記第1の板体の一面に対向して設けられた気体透過性を有する第2の板体と、
前記第2の板体に対して配設された気体供給手段
とを具備してなり、
前記気体供給手段で供給された気体が前記第2の板体を透過して前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出するよう構成されてなることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。
【0018】
又、上記の膜状体形成装置であって、第1の板体との間に該第1の板体の厚さを越える寸法の隙間を持つように基板を保持する保持手段を更に具備してなり、
前記第2の板体を透過した気体によって、前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料が、前記保持手段で保持された基板上に吐出されるよう構成されてなることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。
【0019】
又、上記の膜状体形成装置であって、第2の板体が、特に、通気性素材で構成されてなることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。又、上記の膜状体形成装置であって、第2の板体が、例えば多孔質素材で構成されてなることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。又、上記の膜状体形成装置であって、第2の板体は孔が形成されたものであることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。第2の板体は、中でも、バブルポイントが0.0005〜1MPa(より好ましくは、0.001MPa以上、0.1MPa以下。)のものであることを特徴とする膜状体形成装置によって解決される。
【0020】
前記第1の板体と前記第2の板体とは、別体であっても、一体的に設けられていても良い。但し、別体である場合、膜状体構成材料を第1の板体の孔に充填する場合とか第2の板体に気体を供給する場合には、前記第1の板体の主面に対して前記第2の板体の主面が重なっている如くに配設されていることが好ましい。なぜならば、膜状体構成材料を第1の板体の孔に充填するに際して、充填口側とは反対側が第2の板体によって覆われていると、膜状体構成材料が孔から漏れ出る恐れが無いからである。そして、膜状体構成材料の漏出が避けられるばかりか、膜状体構成材料を充填して行った際に、空気は第2の板体から押し出されて行くから、孔の奥(隅々まで)まで膜状体構成材料を充填できる。そして、第2の板体に気体を供給した場合に、第1の板体の主面と第2の板体の主面とが直接に接していると、第2の板体を透過した気体は常に第1の板体に作用するようになり、膜状体構成材料が効率良く綺麗に吐出されるようになったからである。
【0021】
本発明は、各種の分野における膜状体の作製に用いられるが、膜状体は導電性材料で構成されてなるものを代表例として挙げることが出来る。すなわち、プリント基板や電気・電子機器の接続用の端子上に導電性接着剤(ハンダ等)を設けるに際して特に用いられる。
【0022】
又、前記の課題は、
所定パターンで孔が形成された第1の板体の該孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップと、
第1の板体に対して重合配設された気体透過性を有する第2の板体に気体を供給する気体供給ステップと、
前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップ
とを具備することを特徴とする膜状体形成方法によって解決される。
【0023】
特に、上記の膜状体形成装置を用いての膜状体形成方法であって、
第1の板体の孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップと、
第2の板体に気体を供給する気体供給ステップと、
前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップ
とを具備することを特徴とする膜状体形成方法によって解決される。
【0024】
尚、上記の膜状体形成方法において用いられる膜状体構成材料は、好ましくは粘性を有するものである。例えば、ハンダペーストと言った類のものである。
【発明の効果】
【0025】
例えば、ハンダペーストの如きの粘性物を、微小であっても、かつ、狭ピッチであっても、更には高アスペクト比であっても、効率良く綺麗に転写できる。
【0026】
すなわち、第2の板体を透過した気体によって、第1の板体の孔に充填されている、粘性を有する膜状体構成材料が勢い良く吐出されるようになる。この結果、微小であっても、かつ、狭ピッチであっても、更には高アスペクト比であっても、効率良く綺麗に転写できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は膜状体(ドット状体あるいは点状体)の形成装置である。例えば、膜状体を斑点状に形成する装置である。例えば、プリント基板や電気・電子機器における端子上にハンダペーストを設ける(印刷する)に際して用いられる装置である。本発明は、膜状体構成材料(例えば、ハンダペースト)の充填される孔が所定パターンで形成された第1の板体を有する。尚、この第1の板体の厚さは、形成しようとする膜状体の厚さ、即ち、例えば印刷しようとする導電性接着剤(例えば、Agペースト、その他のハンダ等)の厚さに相当するものである。従って、第1の板体の厚さに特別な限定は無いものの、ハンダ等の類の場合について言うと、一般的には、約10〜2000μm(より好ましくは、20μm以上。1000μm以下。)である。前記孔の形状も特別な限定は無い。例えば、円形、楕円形、矩形と言った各種の形状が、目的に応じて、適宜、選択される。尚、ハンダ等の場合、大きさは、X−Y座標系におけるX軸方向の長さが5μm〜2000μm(より好ましくは、10μm以上。500μm以下。)、Y軸方向の長さが5μm〜2000μm(より好ましくは、10μm以上。500μm以下。)程度のものである。孔のパターンも目的に応じて、適宜、選択される。例えば、プリント基板や電気・電子機器における端子のパターンに応じたものである。本発明は、前記第1の板体の一面に対向して設けられた気体透過性を有する第2の板体を有する。この第2の板体は、前記第1の板体と略同様な大きさのものである。尚、第2の板体の厚さは、その素材によっても異なるが、10〜2000μm(より好ましくは、20μm以上。500μm以下。)程度のものである。従って、第2の板体と言っているものの、本発明における板体は、フィルム状の厚さのものから板状の厚さのものまで含まれている。さて、第1の板体に対して、直接、重なり合うように配設された第2の板体が気体透過性を有している要件が、本発明の大きな特徴である。すなわち、第2の板体が気体透過性を持たない場合には、本発明が奏する特長を奏することが出来ない。又、第2の板体が設けられて無い場合も、本発明が奏する特長を奏することが出来ない。すなわち、本発明が目的とした特長を奏する為には、第2の板体が気体透過性を有することが必須の条件である。この気体透過性は、バブルポイント(水に完全に濡らした状態で連続して気泡が出始める圧力値)で以って好ましい範囲を規定できる。すなわち、バブルポイントが0.0005MPa以上であることが好ましい。又、1.0MPa以下であることが好ましい。すなわち、上記範囲を外れた場合、本発明が奏する特長が小さくなる傾向が確かめられたからである。例えば、1MPaより大きい場合には、気体供給ステップによって気体が供給されても第1の板体の孔に充填されているハンダペースト等の膜状体構成材料が瞬時に勢い良く吐出され難く、少しずつがダラダラ押出されるようになり、これではハンダペーストを端子上に綺麗に転写・印刷され難かったからである。逆に、0.0005MPaより小さい場合には、気体が非常に透過しやすい為、気体供給ステップによって気体が供給されても第1の板体の孔に充填されているハンダペースト等の膜状体構成材料が均一に吐出され難くなったからである。尚、より好ましくは0.001MPa以上である。そして、0.1MPa以下である。更に好ましい範囲は、0.005〜0.05MPaであった。上記特徴の第2の板体は、素材そのものが通気性を有するもので構成することが出来る。例えば、多孔質材料を用いて構成できる。或いは、微細な径(例えば、φが0.5μm〜50μm(より好ましくは、1μm以上。20μm以下。))の孔を設けることによって、気体透過性を持たせることも出来る。両者を併用しても良いことは当然である。微細な径の孔を設けることによって気体透過性を持たせる場合、この孔から充填された膜状体構成材料が食み出ることは無い程度の大きさのものとしておくことが好ましい。尚、バブルポイントが上記のような好ましい範囲内のものであれば、充填された膜状体構成材料が孔から食み出ることは無かった。尚、第2の板体は気体透過性を有しているが、第1の板体は気体透過性を持っていない。すなわち、第2の板体を透過した気体は、第1の板体に形成された孔に充填されている膜状体構成材料を勢い良く吐出させる為に作用するものである。ところが、第2の板体を透過した気体が、膜状体構成材料を勢い良く吐出させるに先立って、第1の板体中を透過してしまったのでは、本発明の特長が奏され無い。従って、この意味合いで、第1の板体は第2の板体が有するような気体透過性を持っていない。
【0028】
本発明の実施には、気体供給手段を要する。すなわち、第2の板体に対して配設された気体供給手段を有する。そして、気体供給手段で供給された気体が第2の板体を透過して第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料が基板上に勢い良く吐出されるよう構成される。
【0029】
基板、第1の板体、第2の板体、気体供給手段との関係を具体的に説明すると、一方の側から他方に向かって、順に、基板、第1の板体、第2の板体、気体供給手段が配置されている。更に具体的に説明すると、一番下側に第2の板体が配置されており、その上に第1の板体が配設されており、そして第1の板体の上に、第1の板体の厚さを越える隙間を設けて基板が配設されている。勿論、基板が一番下側に配置されていても良い。しかしながら、この場合、基板に対向させられる第1の板体に膜状体構成材料を充填する作業が厄介になる。又、充填された膜状体構成材料の粘度次第では垂れ落ちる恐れも有る。そこで、斯かる問題点が解決されるよう、第2の板体上に載った第1の板体に対して、上側から膜状体構成材料を簡単に充填でき、そして膜状体構成材料が充填された第1の板体上に基板を簡単に配置でき、第2の板体中を下側から気体を透過させ、上側に向けて膜状体構成材料を吐出させることで転写が行われる形態のものが好ましい。
【0030】
第1の板体と第2の板体とは密接(或いは、密着)していることが好ましいものの、第1の板体と基板とは離れていることが好ましい。特に好ましくは、離れていると言うのみでは無く、第1の板体との間に該第1の板体の厚さを越える寸法の隙間を持つように基板が保持されていることが好ましい。すなわち、そのように保持する保持手段を持っていることが好ましい。その理由は、本発明では、第2の板体を透過(通過)して来た気体(例えば、空気)によって、第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料(例えば、ハンダペースト)を基板に吐出するからである。すなわち、吐出後(基板堆積後)にあっては、膜状体構成材料(例えば、ハンダペースト)全てが第1の板体の孔から完全に抜け出ていることが好ましいからである。そして、第1の板体と基板とは離間して設けられていることから、基板表面に凹凸が有っても、問題が無い。更には、例えばハンダペーストで第1の板体表面が汚れていても、第1の板体表面に基板を接合させるものでは無いから、基板が汚れる心配も起きない。例えば、ハンダ間が接続されると言ったブリッジ等が起きる恐れは無い。
【0031】
本発明になる方法は膜状体形成方法である。そして、所定パターンで孔が形成された第1の板体の該孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップを有する。又、第1の板体に重合配設された気体透過性を有する第2の板体に対して気体を供給する気体供給ステップを有する。又、前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップを有する。上記装置を用いた場合で説明すると、前記第1の板体の孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップを有する。又、前記第2の板体に気体を供給する気体供給ステップを有する。又、前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップを有する。
【0032】
以下、更に詳しく説明する。
【0033】
本発明では、硬化した膜状体を構成する材料は、硬化前にあっては、粘性を有するものであれば良い。すなわち、粘性が全く無い場合でも、第1の板体の孔に充填することは出来るものの、吐出後において形崩れが起きてしまうようでは困るからである。更に詳しく言うならば、吐出後において形崩れが起き無い程度の粘性を有するものである。例えば、エポキシ樹脂溶液などを一例に挙げることが出来る。勿論、エポキシ樹脂溶液中に各種のフィラー(例えば、導電性フィラー等)が添加されていても良い。或いは、Agペーストの如く、銀粉末とガラス粉末とを溶剤ブチルカルビトール(BCA)に混ぜてペースト状にしたものであっても良い。本発明によれば、この溶剤の量を少なくして高粘度のペーストであっても使える。勿論、これに限られないことは言うまでも無い。
【0034】
図1は本発明によるバンプ形成の原理を示す概念図である。
【0035】
使用したステンシルは、例えば二つの部分から構成される。
【0036】
一つの部分(構成要素)は、吐出される粘性剤の量を規定する所望サイズの開口部(孔)1aを有するマスク(第1の板体)1である。このマスク1は、金属、有機材料、無機材料の何れの材料でも製作できる。但し、後述の通気性膜2とは異なり、通気性を持たないものである。尚、開口部(孔)1aを形成する方法は、エッチング法、レーザ法、電鋳法などを利用できる。或いは、マスク1をシリコンで作製した場合、開口部(孔)1aはプラズマエッチングによっても形成できる。
【0037】
ところで、従来のスクリーン印刷法で用いるメタルマスクは、マスクの剛性が高いと、オフコンタクト性に欠ける。従って、剛性の高いものが用いられて無い。しかしながら、本発明においては、オフコンタクト性がマスクに求められないので、マスクの素材や厚みに大きな制約が無くなった。例えば、10μm程度から数mm程度の厚いものでも用いられる。
【0038】
他の部分(構成要素)は、バブルポイントが0.0005〜1MPaの通気性膜(気体透過性を有する第2の板体)2である。
【0039】
そして、図1に示される通り、開口部1aを有するマスク1の主面と通気性膜2の主面とが接合する如く重ね合わされている。尚、両者は、例えば螺子などの締着手段で一体化されている。すなわち、通気性膜2を透過した気体による圧力がマスク1に作用しても、マスク1が通気性膜2から離間することの無いように一体化の手段が講じられている。一体化の手段は、両者が後からでは分離不可能なものと、分離可能なものとが挙げられる。ネジなどの締着手段による一体化では分離可能であるが、例えば周縁部を接着剤などで接着一体化した場合には、分離不可能である。尚、マスク1と通気性膜2とが分離可能な場合には、どちらかの部材が損傷による交換あるいは目詰まりによる洗浄を要する場合、対処が容易である。
【0040】
上記図1においては、ステンシルがマスク1と通気性膜2との別体構造のもので説明された。しかしながら、これは、両者が一体化されたものであっても良い。例えば、周縁部が接着剤などを用いて接着一体化されたものでも良いが、元々から、一体構造のものであっても良い。すなわち、開口部を有するマスク(マスク層)と通気性膜(通気性層)とを一つの素材で構成することも出来る。ところで、マスク層と通気性層とを同一材料で構成した場合、マスク層自体も通気性を有することになる。そうすると、通気性層に空気を供給して、通気性層を通過(透過)した空気によってマスク層の孔に充填されているペーストを吐出させようとしても、マスク層自体から空気が抜け出るので、ペーストは吐出され難い。従って、マスク層自体は通気性が無い材料で構成させる必要が有る。そして、マスク層と通気性層とが同一素材で一体的に構成される場合には、マスク層自体に通気性が有っては困るから、通気性層は、孔を開けることによって通気性を確保する必要が有る。すなわち、微細な孔を開けることで通気性を確保する。例えば、オリフィス構造の如きの微細な孔を開けることで通気性を確保する。更には、オリフィス構造の如きの微細な孔を多数開けることで通気性を確保する。
【0041】
図2は、本発明の装置を用いての斑点状に膜状体(例えば、ハンダ)を形成する方法を示すフローチャートである。
【0042】
先ず、図1に示された如きのマスク1と通気性膜2とが重合されてなるステンシルを用意する。
【0043】
そして、図2(a)に示される如く、スクレーバ3を用いて、マスク1の孔1aに粘性剤(例えば、ハンダペースト)6を充填する。尚、充填作業後にあっては、図2(a)におけるマスク1の上面側は面一な状態である。
【0044】
次に、図2(b)に示される如く、マスク1の厚さを越える間隔を置いてマスク1の孔1a開口側に対向させて、即ち、マスク1の上側に基板(例えば、プリント基板)4を配置する。
【0045】
基板4を配置後、図2(c)に示される如く、空気供給装置のカバー5を通気性膜2に被せ、そして空気供給装置を作動させて、通気性膜2に空気を供給した。
【0046】
空気供給を開始して暫くしてから、図2(d)に示される如く、マスク1の孔1aに充填されている粘性剤(例えば、ハンダペースト)が、上側の基板4に向けて勢い良く吐出された。そして、この吐出された粘性剤(例えば、ハンダペースト)6は、同図に示される通り、微小であっても、かつ、狭ピッチであっても、更には高アスペクト比であっても、孔1aの内形に相当した綺麗な形のものであった。そして、転写後にベークして硬化させた。
【0047】
以下、具体的な実施例を挙げて説明する。
【0048】
[実施例1]
プリント基板へのハンダペーストの転写の場合である。すなわち、半導体装置用ファインピッチBGAの有機基板製インターポーザを用い、これに配置される端子(サイズ100μmφ、ピッチ150μmの208ピン)として導電バンプを形成する例である。
【0049】
転写される材料(粘性剤)として、ハンダペースト「ニホンハンダ株式会社製 品番PF305−92MVO(S)」を使用した。PF305−92MVO(S)は、平均粒径6μmのハンダ粉末88.5重量%と、ペースト状フラックス11.5重量%との混合物である。その粘度は230Pa・s(スパイラルポンプ型粘度計10rpm、25℃)である。
【0050】
マスク(第1の板体)1の厚さは200μmで、孔1aは100μmφである。そして、アデティブ法により製作されたものである。
【0051】
通気性膜(第2の板体)2としては多孔性PTFE製メンブレンを用いた。この通気性膜2のバブルポイントは1.3×10−2(0.013)MPaであった。
【0052】
そして、マスク1と通気性膜2とを粘着性樹脂で周縁部を仮固定し、図1,2に示される如く、一体化されたステンシルを構成した。
【0053】
次に、図1,2に示される如くに構成されたステンシルのマスク1の上面側においてスクレーパのような工具を左右に移動させ、マスク1の孔1aに上記ハンダペーストを充填した。尚、この充填に際して、孔1aの下側には通気性膜2が有ることから、ハンダペーストが孔1aから垂れ落ちることは無い。かつ、下側に有るのは通気性膜2であるから、ハンダペーストの充填に際して、孔1aの奥から空気は押し出される。従って、孔1aの奥の隅々までハンダペーストは完璧に充填される。すなわち、空気溜りが出来てしまうと言った問題は起きない。
【0054】
次に、図2(b)に示される如く、ハンダペーストを充填したステンシルのマスク1に対応させてインターポーザを非接触で配置した。尚、インターポーザに設ける端子位置に合わせて孔1aの座標は定められた。又、この際の両者間の距離は、マスク1の厚さの1.5倍の寸法とした。
【0055】
この後、図2(c)に示される如く、ステンシルの通気性膜2に対してに0.3MPaの空気圧を加えた。
【0056】
この結果、ハンダペーストは、孔1aから勢い良く上側に向かって吐出され、インターポーザの表面に固着(転写)した。この段階では、吐出されたハンダペーストは孔1a形状に倣った形状が維持されている。そして、転写されたハンダペーストのアスペクト比は約2であった。その後、ウエットバックを行った結果、ブリッジが生じること無く、120μmφの大きなバンプが実現できた。
【0057】
[実施例2]
バブルポイントが0.031MPaの通気性膜を用いた以外は実施例1に準じて行った。その結果の転写は実施例1と同様に優れたものであった。
【0058】
[実施例3]
バブルポイントが0.039MPaの通気性膜を用いた以外は実施例1に準じて行った。その結果の転写は実施例1と同様に優れたものであった。
【0059】
[実施例4]
バブルポイントが0.091MPaの通気性膜を用いた以外は実施例1に準じて行った。その結果の転写は実施例1に比べたならば劣っていたものの、通気性膜を用いなかった場合や通気性が無い膜を用いた場合に比べたならば、遥かに優れたものであった。
【0060】
[実施例5]
多孔性PTFE製メンブレンの代わりに、バブルポイントが0.002MPaのフィルム(20μmφの微細孔を多数形成することによって、バブルポイントが0.002MPaの通気性が確保されたフィルム)を用い、そして印加する空気圧を0.1MPaとした以外は実施例1に準じて行った。その結果の転写は実施例1と同様に優れたものであった。
【0061】
[比較例1]
通気性膜を用いなかった以外は実施例1に準じて行った。その結果、転写されたハンダペーストは、その形状が孔1a形状から遠く外れて崩れたものであった。又、転写されない箇所も認められた。更には、ハンダペーストの充填作業自体も大変であった。
【0062】
[比較例2]
通気性膜の代わりに通気性が無いポリエチレン製の膜を用いた以外は実施例1に準じて行った。その結果、空気圧が印加されても、ハンダペーストは、中々、押出されず、転写が上手く行われなかった。更には、ハンダペーストの充填作業自体も大変であった。すなわち、孔1aの隅々までハンダペーストを充填するのが大変であり、空気溜りが出来ているものが多かった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明になる装置の概略図
【図2】本発明になる方法の工程図
【符号の説明】
【0064】
1 マスク(第1の板体)
1a 開口部(孔)
2 通気性膜(気体透過性を有する第2の板体)
3 スクレーバ
4 基板(プリント基板)
5 空気供給装置のカバー
6 粘性剤(ハンダペースト)

代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に膜状体を形成する装置であって、
膜状体の構成材料が充填される孔が所定パターンで形成された第1の板体と、
前記第1の板体の一面に対向して設けられた気体透過性を有する第2の板体
とを具備することを特徴とする膜状体形成装置。
【請求項2】
第2の板体に対して配設された気体供給手段を更に具備してなり、
前記気体供給手段で供給された気体が第2の板体を透過して第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出するよう構成されてなることを特徴とする請求項1の膜状体形成装置。
【請求項3】
第1の板体との間に該第1の板体の厚さを越える寸法の隙間を持つように基板を保持する保持手段を更に具備してなり、
前記第2の板体を透過した気体によって、前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料が、前記保持手段で保持された基板上に吐出されるよう構成されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2の膜状体形成装置。
【請求項4】
第2の板体が通気性素材で構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの膜状体形成装置。
【請求項5】
第2の板体が多孔質素材で構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの膜状体形成装置。
【請求項6】
第2の板体は孔が形成されたものである
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの膜状体形成装置。
【請求項7】
第2の板体は、そのバブルポイントが0.0005〜1MPaのものである
ことを特徴とする請求項1〜請求項6いずれかの膜状体形成装置。
【請求項8】
第1の板体と第2の板体とが重合配設されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項7いずれかの膜状体形成装置。
【請求項9】
膜状体が導電性材料で構成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜請求項8いずれかの膜状体形成装置。
【請求項10】
所定パターンで孔が形成された第1の板体の該孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップと、
第1の板体に対して重合配設された気体透過性を有する第2の板体に気体を供給する気体供給ステップと、
前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップ
とを具備することを特徴とする膜状体形成方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項9いずれかの膜状体形成装置を用いての膜状体形成方法であって、
第1の板体の孔に膜状体構成材料を充填する充填ステップと、
第2の板体に気体を供給する気体供給ステップと、
前記気体供給ステップによって供給されて前記第2の板体を透過した気体が前記第1の板体の孔に充填されている膜状体構成材料を基板上に吐出する吐出ステップ
とを具備することを特徴とする膜状体形成方法。
【請求項12】
第1の板体の孔に充填される膜状体構成材料が粘性を有するものである
ことを特徴とする請求項10又は請求項11の膜状体形成方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−52234(P2010−52234A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218674(P2008−218674)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】