説明

膣のpHを低下させるための組成物および方法

【課題】本発明は、膣のpHを低下させ、かつ、自己感知される膣の臭気を減少させるための無水組成物と方法とに関する。そのような組成物は、膣領域に施用して、膣のpHを低下させ、そのようなpHを一定期間に渡って維持するのに役立たせることができる。
【解決手段】酸−酸緩衝系を含有する水性組成物において、前記組成物が無水物である、組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本出願は、出願日2002年3月28日の米国特許出願シリアル番号10/109,097号、出願日2002年4月23日の同シリアル番号10/128,611号、ならびに出願日2005年9月12日の同シリアル番号11/224,189号(代理人整理番号PPC833CIP2)の一部継続出願である。それらの米国特許出願明細書は、参照されることによって、それら明細書に開示される全ての内容が本明細書に組み入れられる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、膣の臭気を制御するために健全な膣のpHを維持する組成物と方法とに関する。
【0003】
〔発明の背景〕
細菌性膣症は、微生物叢(flora)の変化であり、その原因は、非常に多くの場合、依然として知られていない。細菌性膣症は一般に、ラクトバチルス菌(lactobacilli)が減損したと推定される結果、膣の微生物叢のいずれかの変化を表わすものとして取り扱われてきた。しかし、そのような微生物叢が、全ての女性の膣の遺伝学的に健全な状態を表わすか否かについては、十分には規定されていない。非妊婦の細菌性膣症のために推奨される大抵の療法は、短期的には、しばしば効を奏しているが、長期的な経過観察が行われると、通常、効を奏していない。細菌性膣症は一般に、内因性容態であると思われているが、多数の行動因子(behavioral factors)、例えば、避妊用製品の使用、肌にじかに着ける衛生用製品の使用、および生活様式の習慣、が関連しているかもしれない。細菌性膣症は、実際の性感染症であるとは考えられていないものの、細菌性膣症は、複数の性交渉相手と関連することがある。したがって、細菌性膣症および他の膣炎に効く生成物を開発する必要性が増大している。
【0004】
正常な膣のpHは、3.8から4.5に及ぶ。このpHでは、ラクトバチルス菌(lactobacilli)を包含する、健康な膣に生息する微生物叢(microbial flora)が繁殖する。さらに、このpHでは、日和見細菌の成長(opportunistic bacterial growth)と膣壁への付着とが抑制される。ラクトバチルス菌が果たす一つの重要な作用は、膣の正常な微生物叢を調節することである。それらの微生物叢は、酸のpHを維持する乳酸を産生することと、カタラーゼ陰性菌(catalase-negative bacteria)を抑制する過酸化水素を産生することとの両方によって、この調節を成し遂げる。
【0005】
月経と、性交と、月経閉止で生じるようなエストロゲンの欠乏とを包含するある種の活性および容態は、膣のpHを上昇させることがある。上昇したpHは、細菌性膣症(bacterial vaginosis)の鑑別診断(differential diagnosis)の一部でもある。
【0006】
細菌性膣症を患っている女性では、通性ラクトバチルス菌(facultative lactobacilli)の罹患率が7倍減少し、また、それに対応して、他の諸細菌であってそれらの一部が病原となることがある該細菌の個体数は増加する。細菌性膣症の徴候のある女性では、ガーデネレラ・バギナリス(Gardenerella vaginalis)、モビルンカス(Mobiluncus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)およびバクテロイデス(Bacteroides)が100〜1000倍増加する。膣症の最も一般的な症状は、かゆみ、黄色の下物(yellow discharge)、および過敏状態(irritation)の他に、臭気、とりわけ、アミン臭気である。細菌性膣症における特徴的なアミン臭気は、細菌性膣症を患っている女性の膣液における、好気性細菌の代謝による生成物によって作り出される。pHの上昇によって、アミンがタンパク質付着から揮発し、臭気が産生される。
【0007】
したがって、人は、膣のpHの増大が観察される場合はいつも、膣の「健全な(healthy)」pHを回復させることが望ましいことがある。このpH回復は、微生物叢の健全な淘汰(healthy selection)の維持を助けるか、または促進するように思えるだけでなく、該pH回復は、病原となる細菌の成長によって生じることのある臭気を制御するのに役立つことがある。
【0008】
米国特許第6,017,521号明細書[ロビンソン(Robinson)等]には、膣に投与して膣のpHを低下させることのできる水性組成物の中に水膨潤性の水不溶性カルボン酸ポリマーを用いることが記述されている。カルボポル(carbopols)およびカルボマー(carbomers)のようなカルボン酸ポリマーは、高分子の架橋されたアクリル酸ベースポリマーである。カルボポルは、医薬品用途および化粧品用途におけるゲル化剤および増粘剤として広く用いられてきた。これらのカルボポルポリマーの1%水性分散系のpHは一般に、約2.5〜約3の間である。これらのアクリル酸ポリマーの分子は、構造が高度にぐるぐる巻きとなっており(coiled)、そのため、それらポリマーの溶解度と増粘可能性(thickening capability)とが制限されている。カルボポルは、水不溶性および水膨潤性となる傾向がある。その分子が、水に分散する時、水和して真っ直ぐにほどけ、粘度が増大する。該ポリマーのできるだけ高い性能を達成するためには、その分子を完全にほどくことが望ましい。該分子がほどけるにつれて、それの溶解度は増大する。一般に、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような適切な塩基で、該ポリマーを中和することは、これらポリマーの分子をほどくために用いられる一つの方法であり、該ポリマーが存在する前記組成物を瞬時的に濃厚化する高速反応である。カルボポルポリマーは、中和することなく使用することができるものの、中和によって溶解性は促進される。
【0009】
しかし、ロビンソンは、ポリマーが相対的に塩基性の環境にさらされたとき、ポリマーが中和されるのを可能にする無水組成物を提供していない。
【0010】
膣に単独で使用され施用される、酢酸、ソルビン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、等の有機酸は、そのpHを低下させるが、低pHを維持しない。なぜなら、それら有機酸は、低い緩衝容量(low buffering capacity)を有するからである。
【0011】
〔発明の概要〕
本発明の組成物および方法は、抗真菌化合物および活性緩衝化合物(active buffering compound)だけでなく、医薬品として容認可能なキャリヤ(carrier)をも含有する生成物に関する。本発明の緩衝性組成物は、真菌性感染症と細菌性膣症との両方を処置するのに驚くべき有効性を有するものと期待される。本発明の組成物のpHは、約2.5〜約5.5の間に維持されるのが好ましい。そのpHは、約3〜約5の間に維持されるのがさらに好ましく、約3〜約4.5の間に維持されるのが最も好ましい。このpH範囲において、抗真菌化合物と膣環境との両方は、真菌性および細菌性の膣感染症の処置と予防とに役立つ。
【0012】
本発明による緩衝剤は、膣内を抗真菌薬で処置する前、処置している間、または処置した後、膣の中に施用することができる。該緩衝剤は、同一組成物中に入れた抗真菌アゾール(antifungal azole)と一緒に併用投与することができる。それら緩衝剤は、2つの異なる組成物または2つの別個の組成物として、ただし実質的に同時に、投与することもできる。代替的に、各々の抗真菌アゾールと緩衝性組成物とは、ある時間によって逐次的にかつ別々に投与することができる。
【0013】
このように、本発明の組成物および方法は、
a)抗真菌薬と、
b)緩衝系と、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するための組成物に関する。さらに好ましくは、本発明は、
a)アゾール抗真菌薬と、
b)グルコノデルタラクトン(gluconodeltalactone)を含有する緩衝系と、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するための組成物に関する。本発明はまた、
a)アゾール抗真菌薬と、
b)緩衝系と、
c)医薬品として容認可能なキャリヤと、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するための組成物に関する。本発明の組成物は、
a)アゾール抗真菌薬と、
b)グルコノデルタラクトンを含有する緩衝系と、
c)カルボマー(carbomer)と、
d)医薬品として容認可能なキャリヤと、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するためのエマルション組成物、ならびに、
a)アゾール抗真菌薬と、
b)緩衝系と、
c)ポリエチレングリコールと、
d)医薬品として容認可能なキャリヤと、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するためのゲル組成物に関する。本発明の組成物および方法はさらに、
a)アゾール抗真菌薬と医薬品として容認可能な親油性キャリヤとを含有する親油性相または油相と、
b)緩衝系と医薬品として容認可能な親水性キャリヤとを含有する親水性相または水相と、
を含有する、外陰膣炎および膣症を処置するための二重相組成物(dual-phase composition)に関する。本発明の方法は、アゾール抗真菌薬と緩衝系とを含有する組成物を膣粘膜に投与することを含む、外陰膣炎および膣症を処置するための方法に関する。本発明の組成物および方法はまた、上記に開示される組成物および方法にしたがって、膣感染症を防ぐのに、即ち、予防するのに有用である。本発明の組成物はさらに、本発明による組成物だけでなく、皮膚を和らげて保護し皮膚が回復するのに有効であるように、外陰皮膚に施用することのできる無刺激性物質(anti-irritant)、抗炎症薬、皮膚軟化薬、抗真菌剤、防腐剤および類似成分を含有する無痛化組成物をも含有するキット(kit)として包装することができる。
【0014】
本発明の組成物および方法は、
a)緩衝系と、
b)医薬品として容認可能なキャリヤと、
を含有する組成物であって、膣のpHを調整して維持し、感知される膣の臭気を減少させるのに使用される該組成物に関する。
【0015】
硝酸ミコナゾールは通常、細菌性感染症に対して有効ではないが、我々は意外にも、硝酸ミコナゾールの抗菌活性が緩衝手法(buffering)によって著しく向上することを見出だした。
【0016】
〔好ましい態様の詳細な記述〕
カンジダ症に関連する感染症のような膣感染症には、該感染症を処置するための投薬形態の、活性な抗真菌化合物が必要である。アゾール型抗真菌剤は、膣の微生物叢を崩壊させることなく、膣の真菌性感染症を処置するのに有効であることが知られている。真菌感染症に対する効き目が判明した幾種類かのアゾール化合物であって、硝酸ミコナゾール、チオコナゾールまたはクロトリマゾールを含有する膣用生成物が包含される該アゾール化合物は、店頭販売(OTC)用途として承認されている。したがって、これらのアゾール生成物の安全性は、確立されている。
【0017】
VVC(外陰膣カンジダ症)に有効なこれらのアゾール生成物の、細菌性膣症関連の感染症を処置するための有効性は証明されていないものの、本発明の組成物を用いて、カンジダ症、細菌性膣症および混合感染症のような膣感染症のための、安全で抗真菌効果のあるこれらの化合物の有効薬量を明らかにする機会が存在する。
【0018】
抗真菌成分の抗真菌有効性を緩衝キャリヤ組成物(buffered carrier composition)と組合せている、本発明の新規な組成物は、膣のpHを健全なレベルに維持しまたは調節し、しかも、外陰膣炎と細菌性膣症との両方の処置と、潜在的に予防とを可能にする。
【0019】
外陰膣炎および細菌性膣症を処置するための抗真菌剤の投与量は、使用されている抗真菌活性成分とそれの効能(potency)とによって変わる。感染症を処置するのに有効な、抗真菌成分の量は、「治療有効量(therapeutically effective amount)」と称される。本発明の組成物の中の抗真菌剤は好ましくは、治療有効量で存在するのが望ましい。それら抗真菌剤は好ましくは、該組成物の約0.01重量%〜約90重量%の量で存在するのが望ましい。それら抗真菌剤はさらに好ましくは、約0.1重量%〜約50重量%の量で、さらに好ましくは約0.4重量%〜約10重量%の量で存在するのが望ましい。該組成物中の緩衝剤は、約0.01重量%〜約50重量%の量で存在するのが望ましい。該緩衝剤は、さらに好ましくは、約0.1重量%〜約20重量%の量で、最も好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在するのが望ましい。
【0020】
本発明の組成物の中には、他の成分、例えば、水、酸化防止剤、キレート化剤、防腐剤、オイル、ワックス、界面活性剤、乳化剤、増粘剤(viscosity building agents)、溶媒、保湿剤、可溶化剤、および生体付着剤(bioadhesives)/粘膜付着剤(muco-adhesives)、等が存在してもよい。そのような成分の相対量は、クリーム、軟膏、ろう質坐剤、ゼラチンカプセル(gelatin capsules)、無水ポリマー坐剤、等を包含する該組成物の所望の性質および粘度によって変わることがある。
【0021】
本発明の組成物の好ましい緩衝形態(buffered forms)は、エマルション、ゲルとして、または、二相もしくは二重の投薬形態として作ることができる。本発明の組成物の中には、緩衝されうる、該組成物の領域(sector)を提供するために、一つの親水性相が存在するのが好ましい。活性な抗真菌化合物を含有する、3種類の好ましい投薬形態の設計(designs)は、次の通りである:即ち、上述の膣感染症を処置するための、i)親水性クリーム、ii)親水性ゲル、および、iii)二相投薬形態の設計である。これらによって、膣感染症の迅速かつ効果的な処置を求める消費者の要望が容易に叶えられるであろう。各々の製剤の緩衝容量は、約3〜約5.5、より好ましくは約3〜約4.5のレベルのpHを維持することができるように計画される。
【0022】
本発明による緩衝剤は、膣内を抗真菌剤で処理する前、処理している間、または処理した後、膣の中に施用することができる。該緩衝剤は、同一組成物中の抗真菌アゾールと併用投与することができるか、または、2つの異なる組成物もしくは別個の組成物として、ただし、一緒にもしくは実質的に同時に投与することができる。例えば、それら緩衝剤は、抗真菌アゾール化合物(antifungal azole compound)を含有する組成物に直接組み入れることができる。この場合、該緩衝剤と該アゾール化合物とは、施用の間、患者に同時に投与されるのが好ましい。それら緩衝剤は、膣坐剤(例えば、ろう質ベースもしくは脂肪酸ベースの抗真菌性膣坐剤)の外面、または、抗真菌薬を含有するゼラチンカプセル坐剤の外面に被覆することができる。それら緩衝剤は、抗真菌性のゼラチンカプセルのゼラチン壁の中に組み入れることもできる。
【0023】
我々は意外にも、抗真菌アゾールを含有しない本発明の組成物を使用すれば、非常に高い緩衝容量が得られ、しかも、膣環境中のpHを低下させて、膣環境中のそのようなより低いpHを維持することができることが期待されるということを見出だした。そのような緩衝剤を含有する組成物(以下、緩衝性組成物(buffering composition))は、少なくとも1種の有機酸と1種の水溶性ポリアクリル酸ポリマーとを含有するのが好ましい。とは言え、そのような組成物は、少なくとも1種の有機酸または1種の水溶性ポリアクリル酸ポリマーを含有することができる。好ましくは、この水溶性ポリアクリル酸ポリマーは、中和されていない状態である。
【0024】
代替的に、前記の各々の抗真菌アゾール組成物と緩衝性組成物とは、逐次的に、ある時間で別々にして投与することができる。例えば、膣内用途のための組成物は、いかなる抗真菌アゾールをも含有せず、前記緩衝剤のみを含有することができる。そのような緩衝性組成物は、膣内に抗真菌アゾールが存在する時、膣の中に投与することができる。膣内へのまたは経口による先の抗真菌処置に由来する、膣内に既に存在する該アゾールと、前記の1種以上の緩衝剤とが、意図された治療効果を高めるように作用して、細菌性膣症の発生を処置するかまたは防止する。膣の組織および流体の中の該抗真菌アゾールは、膣内投与または経口投与を行った後、通常、数日間持続するので、該緩衝性組成物は、抗真菌剤を投与した後、好ましくは1時間未満〜約10日目で、より好ましくは約8時間〜約7日目で、最も好ましくは約12時間〜約5日目で投与することができる。
【0025】
投薬計画(dosing regimen)は、本発明の生成物の中に用いられている特定の抗真菌剤によって変わる。治療効果または予防効果のある投与量を用いることが望ましい。
【0026】
代替的に、前記緩衝剤は、膣内の抗真菌処置を行う前、および/または、行った後、投与することができる。緩衝剤は、ある種のポリマーまたは生体高分子の粘膜付着材料、例えば、ゼラチン、キトサンおよびそれの誘導体、親水性セルロース(好ましくはヒドロキシアルキルセルロース、より好ましくはヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、等、またはそれらの混合物)、ならびに、ポリアクリレート−ポリアクリル酸ポリマー(例えば、カルボマー(Carbomers)、等)、の中に組み入れるのが好ましい。緩衝剤を含有する親水性ポリマーは、ゲル型組成物におけるゲル化剤として、または、エマルション型組成物(例えば、水中油型クリーム)における増粘剤として役立つことがある。
【0027】
代替的に、前記の、緩衝剤が組み入れられた親水性ポリマーは、抗真菌剤を含有する親油性組成物(例えば、軟膏、ろう質/脂肪酸の坐剤、または油中水型エマルション)に懸濁させることができる。該親水性ポリマーは、膣の中に施用された時、膣の粘膜に付着し、したがって、膣のpHは、長期間の間、該抗真菌剤が膣から除去または排出された後もずっと、前記の好ましいpH範囲に維持される。そのように、膣の酸性度が長期間に渡って維持されることによって、健全な微生物叢(例えば、ラクトバチルス菌種(Lactobacillus species))が確実に回復し、膣内の日和見病原性酵母菌(opportunistic pathogenic yeast)(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans))が抑制される。
【0028】
本発明の抗真菌組成物は、少なくとも1種の活性な抗真菌成分、好ましくはアゾール抗真菌成分を含有するのが望ましい。そのような化合物は、硝酸ミコナゾール(miconazole nitrate)、テルコナゾール(terconazole)、ブタコナゾール(butaconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、ボリコナゾール(voriconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、エコナゾール(econazole)、チオコナゾール(tioconazole)、フルコナゾール(fluconazole)、ポスコナゾール(posconazole)、ラブコナゾール(ravuconazole)、クロトリマゾール(clotrimazole)、等であるのがさらに好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、少なくとも1種の緩衝系または緩衝剤を含有するのがさらに望ましい。そのような緩衝剤は、グルコノデルタラクトン(gluconodeltalactone)(「GDL」)であるのが好ましい。GDLは、グルコン酸の中性環状エステルである。GDLが水溶液に添加されると、GDLは、迅速に溶解し、その後、徐々に加水分解してグルコン酸になる。他の緩衝系または緩衝剤もまた、本発明の組成物および方法において用いることができる。
【0030】
本明細書で用いる用語「緩衝系(buffer system)」または「緩衝剤(buffer)」とは、水溶液に入れたとき、酸または塩基がそれに添加された時、pH(即ち、水素イオン濃度)の大きな変化に対して、そのような溶液を安定化させる1種以上の溶質物質(solute agent or agents)をいう。1種以上の溶質物質は、本発明の組成物および方法において好ましく利用されるように、pHがpH4程度の出発緩衝pH値から変化しないように用いられる。本発明の組成物のための緩衝剤は一般に、生理学的に容認できるいずれかの有機酸およびそれの対応する塩であって、用途の所望の形態によって決まるが、液体または固体であるものを含有する。そのような緩衝剤は、pH3程度からpH5程度までのpKaを有するのが好ましい。本発明の組成物および方法において好ましく有用である緩衝剤は、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸、酒石酸、等を包含するが、それらに限定されない。(例えば、カルボン酸またはアミノ基を包含する)イオン官能基と緩衝容量とを有するポリマーもまた、本発明によるポリマー緩衝剤として用いることができる。本発明の組成物および方法において好ましく用いられるポリマー緩衝剤の例には、オハイオ州アクロン(Akron, Ohio)のB.F.グッドリッチ社(B.F. Goodrich Co.)から市販されているカルボマー(Carbomer)(登録商標)またはカルボポル(Carbopol)(登録商標)と、カルボキシメチルセルロースとが包含される。本発明の緩衝性組成物中の水溶性ポリアクリル酸ポリマーはより好ましくは、中和されていない状態で利用するのが望ましい。水溶性ポリアクリル酸ポリマーは最も好ましくは、カルボポル(CARBOPOL)(登録商標)なる商品名で販売されているものである。カルボポルには、オハイオ州クリーブランド(Cleveland, Ohio)のノベオン社(NOVEON)、B.F.グッドリッチ・ケミカル社(B.F. Goodrich Chemical Corp.)から入手可能なカルボポル(CARBOPOL)(登録商標)974、カルボポル(CARBOPOL)(登録商標)934およびカルボポル(CARBOPOL)(登録商標)980が包含される。本発明の組成物および方法では、実質的に医薬品として容認可能な緩衝系であって、局所施用のために好ましい範囲のpHを達成する該緩衝系を使用することができる。
【0031】
本発明による、膣に施用するのに適したアゾール含有緩衝配合物であって所望の治療作用と約4の膣の生理学的pHとを達成するのに適した該緩衝配合物は、好都合ないずれかの非流動形態で配合することができる。その非流動形態は、軟膏、ペースト、水中油型(o/w)クリーム、固体内相(solid internal phases)を有する半固体エマルション、流体内相(fluid internal phases)を有する半固体エマルション、膣坐剤、挿入可能な錠剤、軟質または硬質のゼラチンカプセル、等を包含する、懸濁液、エマルション、透明ゲル、不透明ゲル、半固体系を包含するが、それらに限定されない。
【0032】
本発明の緩衝性組成物は、意図された投薬形態または施用の所望の性質および粘度によって変わる相対量に従って、ポリオールをさらに含有することができる。本発明の組成物は、少なくとも1種のポリオールを含有するのが好ましい。該ポリオールは、好ましくは1種の多価アルコールであり、さらに好ましくは少なくとも2種の多価アルコールである。ポリエチレングリコール(以下、PEG)エーテルも使用することができる。それらプロピレングリコールエーテルには、プロピレングリコールのポリエチレングリコールエーテル、ステアリン酸プロピレングリコール、オレイン酸プロピレングリコールおよびヤシ油脂肪酸プロピレングリコール(propylene glycol cocoate)、等が包含される。そのようなポリエチレングリコールエーテルの特定的な例には、PEG−25ステアリン酸プロピレングリコール、PEG−55オレイン酸プロピレングリコール、等が包含される。本発明の組成物の多価アルコールの少なくとも1種は、ポリアルキレングリコール、または、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサレングリコール(hexalene glycol)、もしくは、様々な分子量のポリエチレングリコール、等、および/または、それらの組合せからなる群から選ばれる他のアルコールであることが好ましい。本発明の組成物は、ポリエチレングリコールを含有するのがより好ましく、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール400またはポリエチレングリコール300の群から選ばれるのが最も好ましい。様々な分子量のポリプロピレングリコールも使用することができる。ペグ化(PEGylation)反応によって得られるペプチド誘導体またはタンパク質誘導体のようなペグ化化合物(PEGylated compounds)も使用することができる。加えて、(エチレングリコール)−block−poly(プロピレングリコール)−block−(ポリエチレングリコール)((ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol)-block-(polyethylene glycol))、poly(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)(poly(ethylene glycol-ran-propylene glycol))、等の、ポリエチレングリコールのブロック共重合体を使用することができる。これらのポリオールは、本発明の組成物において、溶媒、湿潤剤またはキャリヤとして有用である場合がある。
【0033】
本発明の緩衝性組成物は、(当分野では、マイベロール18−04(Myverol 18-04)の商品名で知られている)硬化パームグリセリド(hydrogenated palm glyceride)のような硬化植物油、鉱油、等をさらに含有することができる。本発明の緩衝性組成物は、粘度上昇剤および増粘剤として、セルロースポリマーをさらに含有することができ、また、アルキルセルロースポリマーを包含することがあるが、それらに限定されない。該アルキルセルロースポリマーは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxypropycellulose)およびヒドロプロピルメチルセルロースを包含するが、それらに限定されない。本発明の組成物は、生体付着剤(bioadhesive agents)(例えば、スタビリーゼ06(Stabileze 06)の商品名で販売されているMVE/MA共重合体等のMVE/MA共重合体、および、ガントレッツMS−955(Gantrez MS-955)の商品名で販売されているPVM/MA共重合体)を含有するのが好ましい。本発明の組成物は、dl−α酢酸トコフェロール(dl-alpha tocopherol acetate)またはビタミンCをさらに含有することができる。
【0034】
本発明の組成物は、脂肪アルコールを(さらに好ましくは、ステアリルアルコールまたはセチルアルコール、等を)さらに含有することができる。これらの脂肪アルコールは、皮膚軟化薬または増強剤(enhancing agents)として有用である場合がある。
【0035】
アゾール抗真菌剤、硝酸ミコナゾールを含有する緩衝ゲルは、硝酸ミコナゾールを含有しない緩衝ゲルより優れた緩衝容量を有し、約3〜約5.5の間のpHを有することが、意外にも見出だされた。
【0036】
当業者に知られている伝統的な標準緩衝剤は一般に、組成物内においてあるpHを維持するための塩基と組み合さった酸を含有する。このようにして開発された緩衝剤は一般に、pHの変化に影響されず、かつ、該緩衝剤の当初のpHを維持する。これらの緩衝剤がpHの変化に影響されない程度は、それら緩衝剤の「緩衝容量(buffering capacity)」と称される。本発明に係る無水酸−酸緩衝剤(anhydrous acid-acid buffers)は、それら緩衝剤が、既知の伝統的緩衝系に比べて実質的に大きい緩衝容量を有するという点において、意外にも、当業者に知られている標準緩衝剤(classical buffer systems)と異なる。
【0037】
緩衝剤の緩衝容量を決定する伝統的方法は、1規定の水酸化ナトリウム溶液を用いて該緩衝剤を滴定することであり、試験試料5g当りのNaOHのmgが計算される。本発明の酸性組成物は、通常のヒト用途において、水酸化ナトリウムとの相互作用を受けないので、我々は、前記方法を部分修正し、模擬化されたヒト容態に基づいて緩衝容量を決定した。1N水酸化ナトリウム溶液に代えて、標準pH7緩衝液を滴定に使用した。被検物質の試料10gのpHを測定し、次いで、この試料に、pH7緩衝液を5mLの増加量で、連続的に混合しながら添加し、同時に、結果として生じたpHの変化を監視した。pHが約7に到達した時、滴定を中断した。
【0038】
本発明に係る典型的な緩衝系は、例として表1にまとめる。これらの緩衝系におけるポリアクリル酸ポリマーおよび有機酸の濃度は、所望のpHと緩衝容量とを送達するために、注文で特製することができる。所望のpHと緩衝容量とは、本明細書に開示される前記組成物における他の成分と、成分の組合せとによって決まる。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明に係る緩衝系は、それら自体の重量の何倍もの緩衝液(pH7)を受け入れることができ、しかも、その重量の24倍の緩衝液(pH7)を添加した後でさえ、好ましくは5未満であるように測定されることがある。図8に示されるように、対応する量の緩衝液(pH7)を添加した後の、レフレッシュ(RepHresh)(登録商標)バギナル・ゲルのpHは、6.32であり、これは、1.70pH単位の差異である(図1、緩衝液C)。
【0041】
本発明の組成物は、乳化されたゲル系または二相系(two-phase systems)で用いるための他の諸成分をさらに含有することができる。エマルションは例えば、当業者に知られている、界面活性剤、オイル、湿潤剤、pH調整剤、ろう、ポリマーキャリヤ、生体付着剤および水を含有することができる。ゲル配合物は、活性成分および緩衝系の他に、オイル、湿潤剤、カルボマー、セルロース、ポリアルキレングリコールおよび水を含有することができる。該組成物は、クリーム、坐剤、ゲルまたは二重相(dual-phase)の組合せの形態である場合がある。
【0042】
本発明に係る二相投薬形態は、医薬品として容認可能なキャリヤとしての材料の性質にも物理的状態にも制限されない。前記抗真菌アゾールを含有する相は例えば、固体(例えば、ろう質ベース、脂肪ベース、ポリマーベースで構成された坐剤、または凍結乾燥の坐剤)または半固体(例えば、エマルション、水中油型クリーム、油中水型クリーム、軟膏、または水性ゲル)であってもよい。1種以上の緩衝剤を含有する相もまた、医薬品の様々な投薬形態の固体または半固体であってもよい。そのような二相投薬形態の一つの例は、送達系(delivery systems)の中に緩衝ゲルと親水性抗真菌成分とを含有するのが好ましい。該組合せの親水性相は、該送達系の内部で安定であり、体温で溶けるように設計される。そのような投薬形態は、膣腔の中に挿入することのできるアプリケータ(applicator)によって、両方の相と一緒に送達することができる。二相投薬形態は、抗真菌薬剤と緩衝性ゲルとを膣に同時に送達することが好都合であり、このようにして、真菌性感染症と細菌性感染症との両方の処置能力が提供される。抗真菌薬剤は真菌性感染症と対抗し、同時に、緩衝性ゲルは、膣のpHを健全な範囲に低下させて維持する。
【0043】
本発明の組成物を使用する方法は、真菌性外陰膣炎および細菌性膣症の処置法を提供する。該組成物は、膣腔の中に挿入することによって膣腔に投与する。本発明の組成物の内部の生体付着性成分は、膣の粘膜と関連して、前記活性成分と前記緩衝系とを保持する。該組成物は、真菌および/または細菌を包含するあらゆる異常な微生物叢が抹消され、かつ、該感染症が治癒されるまで、毎日、再施用することができる。
【0044】
次の諸実施例は、本発明の実行可能な組成物の幾種類かを単に例示するのみのものである。次の諸実施例における組成物の幾種類かは、膣の中に併用投与するための抗真菌アゾールと1種以上の緩衝剤との両方を含有するものの、これらの組成物の中の抗真菌アゾールを精製水と取り替えて、前述の逐次投与のための緩衝組成物を形成することができる。
【0045】
それら実施例は、本発明の組成物および方法を単に例示するのに役立つものであり、それらに限定されない。
【0046】
【表2】

【0047】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.水およびプロピレングリコールを容器に入れ、次いで、櫂形撹拌器(paddle stirrer)を用いて低速でかき混ぜながら、約70〜約75℃に加熱する。該混合物が所望の温度に到達した時、かき混ぜ続けながら、安息香酸を添加する。安息香酸が溶解した時、水酸化カリウムを添加し、次いで、溶解するまでかき混ぜる。
2.前記水酸化カリウムが溶解した時、ポリソルベート(Polysorbate)60を添加し、次いで、バッチの温度を70〜75℃に維持しながら、約1分間かき混ぜる。次いで、混合機を停止し、ミリスチン酸イソプロピル(isopropyl myristate)、セチルアルコールおよびステアリルアルコールを添加する。前記容器中の全ての成分が完全に分散するまで、該バッチを再び約70〜約75℃でかき混ぜる。
3.前記容器を熱源から取り出し、次いで、ホモジナイザー(homogenizer)を用いて約2分間かき混ぜ続ける。均質化した後、前記バッチを約40℃まで冷却しながら、該バッチを櫂形撹拌器でかき混ぜる。
4.温度が約40℃に到達した時、かき混ぜながら、前記容器に硝酸ミコナゾールを添加する。硝酸ミコナゾールを添加した後、該容器にグルコノデルタラクトンを添加し、次いで、約4分間、または、硝酸ミコナゾールが完全に分散するまで該混合物を均質化する。均質化した後、約5分間、櫂形撹拌器でかき混ぜ続ける。
【0048】
【表3】

【0049】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.水およびプロピレングリコールを容器に入れ、次いで、櫂形撹拌器を用いて低速でかき混ぜながら、約70〜約75℃に加熱する。該混合物が所望の温度に到達した時、かき混ぜ続けながら、安息香酸を添加する。安息香酸が溶解した時、水酸化カリウムを添加し、次いで、溶解するまでかき混ぜる。
2.前記水酸化カリウムが溶解した時、ポリソルベート60を添加し、次いで、バッチの温度を70〜75℃に維持しながら、約1分間かき混ぜる。次いで、混合機を停止し、ミリスチン酸イソプロピル、セチルアルコールおよびステアリルアルコールを添加する。前記容器中の全ての成分が完全に分散するまで、該バッチを再び約70〜約75℃でかき混ぜる。
3.前記容器を熱源から取り出し、次いで、ホモジナイザーを用いて約2分間かき混ぜ続ける。均質化した後、前記バッチを約40℃まで冷却しながら、該バッチを櫂形撹拌器でかき混ぜる。
4.温度が約40℃に到達した時、必要に応じて、前記容器にグルコノデルタラクトンを添加し、次いで、約4分間、または、硝酸ミコナゾールが完全に分散するまで該混合物を均質化する。均質化した後、約5分間、櫂形撹拌器でかき混ぜ続ける。
【0050】
【表4】

【0051】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.水の中にカルボマー974Pを添加し、次いで、室温で、ホモジナイザー等の高速混合機を用いてかき混ぜる。
2.次いで、塩化カリウム、EDTAおよび水酸化ナトリウムを添加し、次いで、櫂形撹拌器等の低速混合機を用いてかき混ぜる。
3.アゾール化合物を含有する配合物を得るために、前記混合物の中に硝酸ミコナゾールを添加し、次いで、ホモジナイザーと櫂形撹拌器との両方を用いてかき混ぜて、該配合物中に硝酸ミコナゾールを均一に分散させる。
【0052】
【表5】

【0053】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.適切な容器の中に、グリセリン、鉱油(または、ポリエチレングリコール400)、蒸留モノグリセリド(例えば、マイベロール(Myverol))、およびソルビン酸を入れ、次いで、65〜70℃に加熱する。次いで、該容器の中に、カルボマー971およびカルボマー974を入れてかき混ぜる。
2.水を別個、55〜60℃に加熱し、次いで、(1)からの混合物に添加する。前記容器の中に硝酸ミコナゾールを添加する前、約3分間かき混ぜる。
3.バッチを、約45℃まで冷却しながら、櫂形撹拌器でかき混ぜる。温度が約45℃になった時、ホモジナイザーを用いて、該バッチを約2分間かき混ぜる。
4.前記バッチを室温まで冷却しながら、かき混ぜ方法を櫂形撹拌器に切り替える。
【0054】
【表6】

【0055】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.水の中にヒドロキシエチルセルロースを添加し、次いで、室温で、ホモジナイザー等の高速混合機を用いてかき混ぜる。
2.次いで、グリセリン、メチルパラベン、水酸化ナトリウムおよびグルコノデルタラクトンを添加し、次いで、櫂形撹拌器等の低速混合機を用いてかき混ぜる。
3.前記混合物の中に硝酸ミコナゾールを添加し、次いで、ホモジナイザーと櫂形撹拌器との両方を用いてかき混ぜて、配合物中に硝酸ミコナゾールを均一に分散させる。
【0056】
【表7】

【0057】
この実施例の組成物は、次の手順を用いて調製することができる。
1.適切な容器の中に、(主として、高級飽和脂肪酸の複数のトリグリセリドエステルと、割合が異なるモノグリセリドおよびジグリセリドとの混合物から成る硬質脂肪ベースである)ウェコビーM(Wecobee M)およびウェコビーFS(Wecobee FS)を、50〜60℃で溶融する。該容器の中に、キサンタンガム(xanthan gum)、コロイド状二酸化ケイ素、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム7HFを、適切にかき混ぜながら添加する。ホモジナイザーを用いて、約2分間またはそれら添加物が十分に分散するまでかき混ぜ続ける。
2.ホモジナイザーを用いてかき混ぜながら、前記バッチの中に硝酸ミコナゾールを入れる。該バッチを、低速混合機でかき混ぜながら、室温まで冷却する。該バッチを35℃未満で凝固させる。
【0058】
実施例7:緩衝容量
本発明の組成物の緩衝容量を決定するため、次の手順を用いた。
【0059】
実施例1〜実施例5に記述した諸試料のpHを変えるために、0.1N水酸化ナトリウムの量を、滴定法によって決定した。モル当量基準でそれら試料に添加された水酸化ナトリウムの量を、次の諸グラフに示す。
【0060】
緩衝容量を全く有さない、pHが3.0〜5.5の間である実施例6から生成された試料は、アプリケータで、偽薬の緩衝性ゲル(実施例5)と一緒に送達されるように設計する。これは、記述された二相送達系(two-phase delivery system)の例である。細菌性膣症を処置するために、(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis, Minnesota)のスリーエム社(3M Corporation)から入手可能な)緩衝処理済メトロゲル・バギナル(Buffered Metrogel-Vaginal)(登録商標)について得られたデータを、図中のコンパレータ(comparator)として示される対照のために提供する。
【0061】
実施例8:膣症微生物の抗菌活性に関する生体外評価
選択された膣症嫌気性菌(vaginosis anaerobes)が、開示した諸配合物と補足されたブルセラ菌(brucella)の培養液との混合物の中で生き残る能力についても調べた。ビタミンKおよびヘミン(hemin)が補足された該ブルセラ菌培養液は、本発明の配合物で希釈することができるように、2倍の濃度で調製した。調べる微生物を、冷蔵庫から取り出し、少なくとも2回、継代培養を行って、純度と良好な成長とを確保した。次の手順を用いて、生体外評価を行った。
方法:スティアのレプリケーターアッセイ(Steer's Replicator Assay)(時間単位の生存期間)
1.試験試料1gとジメチルスルホキシド(DMSO)9mLとを混合する。該配合物の一方は、40〜46℃で溶融し、次いで、DMSOで溶解する前、完全にかき混ぜる。18mLを調製する。少量を取り出して、そのpHを記録する。室に入れて、少なくとも2時間の間、嫌気性になるようにする。
2.前記室の中で作用させながら、2倍の濃度の、補足されたブルセラ菌培養液(約3×108cfu/mL)に入れた各々の嫌気性微生物のために、マックファーランドNo.1標準比濁液(#1 McFarland equivalence turbidity standard)と同等の懸濁液を調製する。スティアのレプリケーターウェル(steers replicator wells)に0.5mLを入れる。前成長(pre-growth)の対照として、一つのBBA(ブルセラ菌用血液寒天培地)プレートにスタンプを押す。
3.マルチチャネルピペッターを用いて、前記ウェルの各々の培養液にクリーム溶液(cream solution)0.5mLを添加する。ピペットで上下に移動させることによって完全にかき混ぜる。完了したとき、レプリケーターヘッド(replicator head)全体に接種するのに要した時間を記録する(最初のウェルは、最後のウェルよりも接触時間がより長い)。BBAプレートに「0」時間とスタンプを押す。各々のクリームに対して一つのスティアのレプリケーターヘッドを使用する。試験開始から毎日、微生物の懸濁液とブルセラ菌の培養液とDMSO(1+9)とを含有しクリームを含有しない対照レプリケーターを調製する。
4.突起物を用いて、前記ウェルに接種する。
5.毎時、もう一つのBBAプレートにスタンプを押し、該プレートに時間単位の時間を表示する。36℃で培養する。
6.24時間の間、続ける。
7.培養して72時間の後、スタンプが押されたプレートを検査し、成長しているか成長していないかを記録するか、または、損傷した細胞を示唆するかもしれない、成長の型(即ち、僅かなコロニー(few colonies)、かすかな成長(hazy growth)、等)を記述する。
8.最終報告書は、微生物が、以下の表Iにおける諸試料の各々の存在下で生き残った、時間単位(in hours)の時間で示す。
【0062】
調べた前記アゾール化合物に関し、ミコナゾール、テルコナゾールおよびフルコナゾールは、外陰膣カンジダ症を処置するために容認されるアゾールである。メトロニダゾール(metronidazole)およびチニダゾール(tinidazole)は、細菌性膣症を処置するのに有用であることが知られている化合物である。しかし、アゾール化合物に関するこの生体外評価から得られた意外な発見は、実際にはミコナゾールが、テルコナゾールおよびフルコナゾールと比べて、細菌性膣症に対するより優れた活性を有するということである。
【0063】
【表8】

【0064】
表IIに、細菌性膣症の諸微生物に対する、開示した諸配合物の活性を示す。調べた配合物のうち、実施例2A、実施例2B、実施例4Bおよび実施例4Dは、硝酸ミコナゾールを含有しなかった配合物である。最も低い緩衝容量を有する実施例2Aは、調べた諸微生物に対して最小の有効性を示す。実施例2Bは、実施例1Cの偽薬の緩衝配合物であり、実施例4Dは、実施例4Cの偽薬の緩衝配合物である。調べた諸微生物に対する活性は、実施例1Cの中に硝酸ミコナゾールを組み入れることによって著しく改善される。同様な結果は、実施例4Dの中に硝酸ミコナゾールを組み入れることによって得られる。
【0065】
【表9】

【0066】
実施例9:2種類の膣用緩衝ミコナゾール配合物に関するパイロット臨床研究の結果
膣内に投与されたとき細菌性膣症(BV)を処置するためのメトロゲル・バギナル(MetroGel-Vaginal)(登録商標)と比べた、2種類の好ましい硝酸ミコナゾール(4%)緩衝配合物(プロトタイプ第1号および第2号)の治療効果を評価するために、相IIの生体内でのパイロット研究を行った。生成物は全て、5日間、毎日投与した。このパイロット研究のための治療効果パラメータは、治療による治癒率(組み合わされた臨床的治癒および微生物学的治癒)、臨床的治癒(徴候および症状の除去)および微生物学的治癒(microbiological cure)(3以下のヌージェント・スコア(Nugent score))であった。初回投与量による処置の後、21〜30日目に予定された再来院での治療による治癒率、臨床的治癒率および微生物学的治癒率は、硝酸ミコナゾール緩衝クリームとメトロゲル・バギナル(登録商標)とでは類似した。したがって、5日間投与した該ミコナゾール緩衝クリーム生成物は、細菌性膣症を処置するのに有効であると思われる。外陰膣の有害事象(adverse events)は、ミコナゾールで処置された被検者の50〜60%だけ、メトロゲルで処置された被検者の21%だけ報告された。大抵の有害事象は、激しさが軽度(mild)または中程度(moderate)であった。
【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
実施例10:酸−酸緩衝組成物
次の諸組成物は、上記に開示した方法と同様の方法で調製するが、抗真菌化合物は含有させない。それら組成物は好ましくは、有機酸をポリアクリル酸ポリマーに添加し、次いで、該配合物をかき混ぜながら、約35℃〜約50℃まで加熱することによって調製することが望ましい。次いで、この混合物に他の諸成分を添加し、配合物全体は、それが均質になるまで撹拌する。次いで、該混合物を冷却する。それら組成物は好ましくは、有機酸をポリアクリル酸ポリマーに添加し、次いで、該配合物をかき混ぜながら、約35℃〜約50℃まで加熱することによって調製することが望ましい。次いで、この混合物に他の諸成分を添加し、配合物全体は、それが均質になるまで撹拌する。次いで、該混合物を冷却する。
【0070】
実施例10A
成分 重量%
鉱油 1.50
安息香酸 0.20
MVE/MA共重合体 1.50
(スタビリーゼ06(Stablileze 06))
カルシウム・ナトリウムPVM/MA共重合体 0.50
(ガントレッツMS−955(Gantrez MS-955))
硬化パームグリセリド 1.00
(マイベロール18−04(Myverol 18-04))
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 3.50
グルコノデルタラクトン 3.00
水 Q.S.100.00
【0071】
実施例10B
成分 重量%
鉱油 1.50
安息香酸 0.20
カルシウム・ナトリウムPVM/MA共重合体 0.50
(ガントレッツMS−955)
硬化パームグリセリド 1.00
(マイベロール18−04)
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 3.00
乳酸 1.00
水 Q.S.100.00
【0072】
実施例10C
成分 重量%
MVE/MA共重合体 1.50
(スタビリーゼ06)
安息香酸 0.20
硬化パームグリセリド 1.00
(マイベロール18−04)
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
水 Q.S.100.00
【0073】
実施例10D
成分 重量%
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
ヒドロキシエチルセルロース 2.50
水 Q.S.100.00
【0074】
実施例10E
成分 重量%
カルボキシメチルセルロース 2.00
安息香酸 0.20
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
水 Q.S.100.00
【0075】
実施例10F
成分 重量%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.00
安息香酸 0.20
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
水 Q.S.100.00
【0076】
実施例10G
成分 重量%
プロピレングリコール 50.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
水 Q.S.100.00
【0077】
実施例10H
成分 重量%
鉱油 1.50
安息香酸 0.20
MVE/MA共重合体 1.50
(スタビリーゼ06)
カルシウム・ナトリウムPVM/MA共重合体 0.50
(ガントレッツMS−955)
硬化パームグリセリド 1.00
(マイベロール18−04)
dl−αトコフェロール(ビタミンE) 0.10
プロピレングリコール 20.00
カルボポル974P 4.00
乳酸 3.00
水 Q.S.100.00
【0078】
実施例11:組成物のpHおよび緩衝容量
本発明に係る緩衝剤10564−83CのpHおよび緩衝容量と、レフレッシュ(RepHresh)(登録商標)バギナル・ゲル(Vaginal Gel)のpHおよび緩衝容量とを、下記の表11Aにまとめ、図1にグラフで例示する。このデータから、pH7の緩衝液130mLを添加した後、本発明に係る緩衝剤のpHは約5、精確には5.02であるのに対して、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルのpHは、pH6より高く、精確には6.32であることは非常に明らかである。
【0079】
本発明の組成物のpHおよび緩衝容量を、表11Bに例示する。これらは、本発明の2種類のゲル、実施例10A(水性ゲル)および実施例10B(水性ゲル)、に関する典型的な緩衝容量のプロットである。それらデータは、表11Bにも例示する。pH7緩衝液は、該生成物の試料10gに対して5mLの増量(increments)で添加し、次いで、pHを測定した。そのpHのデータは、本発明の組成物によると、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルと比べて、pH7緩衝液を連続的に添加している間中、一貫して遥かに低いpHが維持されたことを明瞭に示している。このことは、本発明の組成物が、より低いpHプロフィルとより高い緩衝容量とを有することを意味する。実際のヒト用途において、本発明の組成物は、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルと比べて、膣のさらに低い健全なpHを維持することができるものと期待される。
【0080】
【表12】

【0081】
【表13】

【0082】
実施例12:細菌性膣症および時間−殺菌試験
抗菌活性に関する生体外試験
生体外での時間−殺菌の研究を使用して、細菌性膣症を引き起こす微生物、即ち、ガーデネレラ(Gardenerella)、モビルンカス (Mobilincus)およびペプトストレプトコッカス(Peptostrep.)、に対する本発明の組成物の抗菌活性について試験した。細菌性膣感染症(BV)を引き起こすものとして知られている一連の膣症嫌気性菌と、ラクトバチルス菌の菌株とを用いて、これらの試験微生物を抑制し殺菌するのに必要な接触時間の長さを測定した。この試験の結果は、表12Aにまとめる。それらの結果によって、本発明の組成物の実施例10Aは、細菌性膣症を引き起こす細菌をほとんど即時に殺菌することが分かる。
【0083】
これらの結果は、本発明のゲルおよび坐剤が、細菌性膣感染症または細菌性膣症を処置するのに有効であるものと予想されることを示す。それらのゲルおよび坐剤は、膣症を処置することによって、膣の臭気を最小限に抑えうるか、または除去しうるものと予想される。
【0084】
【表14】

【0085】
実施例13: 膣のpHと感知される膣臭気との制御を確認するための臨床研究
本発明の組成物が、ヒト被検者における膣のpHと感知される膣の臭気とを制御することができるか否か、または膣のpHと感知される膣の臭気とに影響を及ぼすか否かを確認するために、臨床研究を行った。該研究を完成させた125人の女性に、次の諸生成物の1種を提供し、膣に施用した:即ち、組成物Aは、実施例10Aに開示される水性ゲルであり;組成物Bは、同時係属特許出願シリアル番号11/224,870号明細書(本明細書と同時に出願された、代理人整理番号PPC5209)に開示される無水ゲルであり;組成物Cは、同時係属特許出願シリアル番号11/224,870号明細書(本明細書と同時に出願された、代理人整理番号PPC5209)に開示される無水坐剤であり;組成物Dは、米国特許第6,017,521号明細書に記述され、ニュージャージー州リビングストン(Livingston, NJ)のコロンビア・ラボラトリーズ社(Columbia Laboratories, Inc.)から市販されているレフレッシュ・バギナル・ゲルの試料である。
【0086】
被検者の膣のpHについて、ベースラインで(at baseline)、被検物質を施用した後、約1時間、6時間、24時間、48時間、72時間および96時間で、pH表示棒(pH indicator stick)とpH電極プローブとを用いた膣の検査を行うことによって、試験を行った。前記女性等にはさらに、彼女等自身により感知される膣臭気のレベルを評価するように依頼した。以下の表13Aおよび表13Bに、この試験の結果を示す。表13Aは、本発明の組成物10Aが、膣のpHの評点(score)に関し、ベースラインと比べて有意な減少を達成したことを示している。表13Bは、本発明の組成物10Aを使用することによって、自己感知による臭気が、ベースラインと比べて有意に減少したことを示している。
【0087】
上記に開示される臨床研究より先に、同一製剤を使用し、かなり小さいグループで、もう一つの予備臨床研究を行った。それら製剤を使用することによって、膣のpHは瞬時に低下し、かつ、被検者の自己感知による膣臭気は減少した。図9に、経時的に測定されたpHのプロットを示す。
【0088】
【表15】

【0089】
【表16】

【0090】
〔実施の態様〕
(1)酸−酸緩衝系を含有する水性組成物において、
前記組成物が無水物である、組成物。
(2)実施態様1記載の組成物において、
前記酸−酸緩衝系が、水溶性の酸性ポリマーと、有機酸とを含有する、組成物。
(3)実施態様2記載の組成物において、
前記酸性ポリマーがポリアクリル酸ポリマーである、組成物。
(4)実施態様3記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーが、アリルショ糖(allyl sucrose)またはアリルペンタエリスリトール(allylpentaerythritol)と架橋されている、組成物。
(5)実施態様4記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーがカルボマー(carbomer)である、組成物。
(6)実施態様2記載の組成物において、
前記有機酸がαヒドロキシ酸である、組成物。
(7)実施態様2記載の組成物において、
前記有機酸が、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エデト酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸および酒石酸からなる群から選ばれている、組成物。
(8)実施態様1記載の組成物において、
プロピレングリコールをさらに含有する、組成物。
(9)実施態様1記載の組成物において、
ポリエチレングリコールをさらに含有する、組成物。
(10)実施態様2記載の組成物において、
ポリエチレングリコールをさらに含有する、組成物。
(11)実施態様2記載の組成物において、
プロピレングリコールをさらに含有する、組成物。
(12)実施態様1記載の組成物において、
前記組成物が、膣坐剤の形態である、組成物。
(13)実施態様12記載の組成物において、
硬化植物油をさらに含有する、組成物。
(14)膣のpHを低下させる方法において、
実施態様1記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
(15)膣のpHを低下させる方法において、
実施態様2記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
(16)自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
実施態様1記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
(17)自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
実施態様2記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1の、前述のクリーム配合物の緩衝容量を例示する。図示されるように、実施例1A、実施例1B、実施例1Cおよび実施例1Dは、相対的に優れた緩衝容量を有している。クリームベースの緩衝容量は、グルコノデルタラクトン1.8%以上を添加した後、または、グルコノデルタラクトンとカルボマーとの組合せを添加した後、著しく改善される。硝酸ミコナゾールを含有する配合物については、偽薬と比べて、より優れた緩衝容量が観察される(実施例2Bと比べた実施例1C)。このことは意外にも、硝酸ミコナゾールが、記述されるクリーム配合物の緩衝容量を増大させることができたことを示している。
【図2】実施例2の、前述のクリーム配合物の緩衝容量を例示する。対照として、モニスタット3(Monistat 3)(登録商標)膣用クリームが使用されている。図示されるように、実施例2Bは、相対的に優れた緩衝容量を有しているのに対して、比較例2Aおよびモニスタット3(Monistat 3)(登録商標)膣用クリームはそうではない。実施例2Aは、緩衝剤もカルボマーも含有していない。クリームベースの緩衝容量は、グルコノデルタラクトン1.8%以上を添加した後、または、グルコノデルタラクトンとカルボマーとの組合せを添加した後、著しく改善される。硝酸ミコナゾールを含有する配合物については、偽薬と比べて、より優れた緩衝容量が観察される(実施例2Bと比べた実施例1C)。このことは意外にも、硝酸ミコナゾールが、記述されるクリーム配合物の緩衝容量を増大させることができたことを示している。
【図3】細菌性膣症を処置するための商業的配合物である、メトロゲル・バギナル(MetroGel-Vaginal)(登録商標)と比較して、実施例3の緩衝ゲル配合物を実証する。配合物3Aは、硝酸ミコナゾールを含有せず、硝酸ミコナゾールを含有する他の配合物(3B、4Aおよび4C)と比べて、相対的に低い緩衝容量を有する。
【図4】細菌性膣症を処置するための商業的配合物である、メトロゲル・バギナル(登録商標)と比較して、実施例4の緩衝ゲル配合物を実証する。配合物4Bおよび4Dは、硝酸ミコナゾールを含有せず、硝酸ミコナゾールを含有する他の配合物(3B、4Aおよび4C)と比べて、相対的に低い緩衝容量を有する。
【図5】実施例5の緩衝ゲル配合物を例示する。配合物5Bは、硝酸ミコナゾールを含有せず、かつ、他の実施例と比べて、相対的に低い緩衝容量を有する。
【図6】細菌性膣症を局所処置するための、メトロニダゾールを含有する商業的配合物である、メトロゲル・バギナル(登録商標)、ならびに、外陰膣カンジダ症を局所処置するための、硝酸ミコナゾールを含有する商業的配合物である、モニスタット3(登録商標)膣用クリームと比べた、本発明の好ましい緩衝組成物である配合物1Cおよび配合物4Cの間の比較を例示する。例示されるように、本発明の組成物は、前記商業的製品と比べて、緩衝容量によって健全なpHをより良好に維持することができる。
【図7】無水ベース(組成物A)に入っている4%カルボポル974Pの緩衝容量と、無水ベース(組成物B)に入っている3%乳酸溶液の緩衝容量と、無水ベースに入っている4%カルボポルおよび3%乳酸の緩衝容量とを、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルの緩衝容量と比較するグラフである。
【図8】本発明の組成物の実施例10Aおよび実施例10Bの組成物の緩衝容量を、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルの緩衝容量と比較するグラフである。
【図9】本発明の組成物と、同時係属特許出願シリアル番号11/224,870号明細書(本明細書と同時に出願された代理人整理番号PPC5209)に開示される組成物と、レフレッシュ(登録商標)バギナル・ゲルとの施用の、生体内の(in vivo)pHに及ぼす影響を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸−酸緩衝系を含有する水性組成物において、
前記組成物が無水物である、組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、
前記酸−酸緩衝系が、水溶性の酸性ポリマーと、有機酸とを含有する、組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、
前記酸性ポリマーがポリアクリル酸ポリマーである、組成物。
【請求項4】
請求項3記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーが、アリルショ糖(allyl sucrose)またはアリルペンタエリスリトール(allylpentaerythritol)と架橋されている、組成物。
【請求項5】
請求項4記載の組成物において、
前記ポリアクリル酸ポリマーがカルボマー(carbomer)である、組成物。
【請求項6】
請求項2記載の組成物において、
前記有機酸がαヒドロキシ酸である、組成物。
【請求項7】
請求項2記載の組成物において、
前記有機酸が、安息香酸、アルギン酸、ソルビン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エデト酸、グルコノデルタラクトン、酢酸、フマル酸、乳酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸および酒石酸からなる群から選ばれている、組成物。
【請求項8】
請求項1記載の組成物において、
プロピレングリコールをさらに含有する、組成物。
【請求項9】
請求項1記載の組成物において、
ポリエチレングリコールをさらに含有する、組成物。
【請求項10】
請求項2記載の組成物において、
ポリエチレングリコールをさらに含有する、組成物。
【請求項11】
請求項2記載の組成物において、
プロピレングリコールをさらに含有する、組成物。
【請求項12】
請求項1記載の組成物において、
前記組成物が、膣坐剤の形態である、組成物。
【請求項13】
請求項12記載の組成物において、
硬化植物油をさらに含有する、組成物。
【請求項14】
膣のpHを低下させる方法において、
請求項1記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
【請求項15】
膣のpHを低下させる方法において、
請求項2記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
【請求項16】
自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
請求項1記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。
【請求項17】
自己感知される膣臭気を減少させる方法において、
請求項2記載の組成物を、ヒトの膣に投与することを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−77152(P2007−77152A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−246959(P2006−246959)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(591252839)マクニール−ピーピーシー・インコーポレイテッド (69)
【氏名又は名称原語表記】MCNEIL−PPC,INCORPORATED
【Fターム(参考)】