説明

自動プログラミング装置、およびその動作プログラム

【課題】 旋回軸を有する動作の自由度の高いNC工作機械のNCプログラムを簡単な操作で生成できる自動プログラミング装置を提供すること。
【解決手段】 自動プログラミング装置101は、加工領域形状に対する工具姿勢を定義する工具姿勢定義部140を備え、さらにこの工具姿勢定義部140は、加工領域形状を構成する形状要素の情報から工具姿勢を決定する点を所定の方法により抽出する工具姿勢決定点抽出部と、工具姿勢を決定する点における工具姿勢を所定の方法により求める工具姿勢演算部を含んで構成されているので、旋回軸を有するNC工作機械の工具経路向けの工具姿勢を定義でき、CAMを用いなくても、簡単な操作でNCプログラムを生成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1軸以上の旋回軸を有するNC工作機械に適用されるNCプログラムを生成するにあたり、簡単な操作によって、加工対象部位に応じた工具姿勢を定義できる自動プログラミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋回軸を有するNC工作機械は、その動作の自由度の大きさにより最適な方向から工具のアプローチができるので、段取り替えが必要、深物の場合の突き出し量が長くなる、工具先端点での加工が避けられない、アンダーカット形状が加工できない、などといった旋回軸を持たない工作機械の限界に対して対処できるが、その動作の自由度の大きさに伴いNCプログラムが複雑となってしまう。そのため、従来はCAM(computer aided manufacturing)装置を用いてNCプログラムを作成するのが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−63921号公報
【特許文献2】特開平8−229770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旋回軸を有するNC工作機械による加工では工具姿勢が重要であるが、自由度が大きいことに伴い工具姿勢の設定作業や設定された工具姿勢の確認および修正作業が煩雑になる傾向がある。上記特許文献1や特許文献2に開示されている方法は、3軸加工データに工具姿勢情報を付加して5軸の加工データを生成する方法であるが、この方法には以下のような問題があった。すなわち、
(1)特許文献1に開示されている方法によれば、操作は比較的簡易だが加工面に対して工具が垂直に限られてしまう。
(2)特許文献2に開示されている方法によれば、工具姿勢に対応するよう作成した格子点と形状座標とを突き合せながら工具姿勢情報を与えなければならない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、旋回軸を有する動作の自由度の高いNC工作機械のNCプログラムを簡単な操作で生成できる自動プログラミング装置を提供すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために創案されたものであり、旋回軸を有するNC工作機械のNCプログラムを生成するにあたり、加工領域形状に対する工具姿勢を定義可能とするものであり、加工領域形状を構成する形状要素の情報から工具姿勢を決定する点を所定の方法により抽出する工具姿勢決定点抽出部と、工具姿勢を決定する点における工具姿勢を所定の方法により求める工具姿勢演算部とを含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、旋回軸を有するNC工作機械に適用するNCプログラムを作成する際に、CAD装置や特別な機能を持つNC装置を用いることなく、簡単な操作で旋回軸を考慮した動作の自由度が高いNCプログラムを生成でき、また煩雑な作業が省けて加工能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る自動プログラミング装置の概略構成を示したブロック図。
【図2】図2は、工具姿勢定義部の詳細図。
【図3】図3は、工具姿勢修正部の詳細図。
【図4】図4は、加工領域定義方法の説明図。
【図5】図5は、工具姿勢決定点の説明図。
【図6】図6は、工具姿勢の定義方法の説明図。
【図7】図7は、各工具姿勢決定点における旋回角度ベクトルの説明図。
【図8】図8は、旋回角度の説明図。
【図9】図9は、傾斜角平面の説明図。
【図10】図10は、傾斜角が0°の状態の説明図。
【図11】図11は、加工深さが工具の突出し長を越えない状態の説明図。
【図12】図12は、加工深さが工具の突出し長を越える状態の説明図。
【図13】図13は、工具ホルダが非加工領域と干渉していない状態の説明図。
【図14】図14は、工具ホルダが非加工領域と干渉するか否かの境界状態の説明図。
【図15】図15は、工具ホルダの簡易モデルの説明図。
【図16】図16は、加工深さが工具突き出し長を越えていない状態での工具姿勢決定点における工具の旋回角度ベクトルの説明図。
【図17】図17は、各位置での工具の角速度と傾斜角を可視化したグラフの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態.
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動プログラミング装置の概略構成を示したブロック図である。なお、図中矢印は主たる動作の流れを示している。本実施の形態の自動プログラミング装置101においては、1軸以上の旋回軸を有するNC工作機械に適用される制御指令情報(NCプログラム)を生成する自動プログラミング装置を想定しており、一例としてC軸に旋回軸を備えたNC工作機械に適用するものであり、少なくとも、加工領域形状に関する情報である加工領域情報、工具に関する情報である工具情報、加工条件に関する情報である加工条件情報を含む加工情報が入力される加工情報入力部110、加工情報入力部110から入力された加工情報を記憶する加工情報記憶部120、加工情報記憶部120で記憶された加工情報から加工領域形状を定義する加工領域形状定義部130、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と前記加工領域形状定義部130で定義された加工領域形状の形状要素情報から工具姿勢を決定する点を抽出し、さらに各工具姿勢決定点における工具姿勢情報を定義する工具姿勢定義部140、加工情報記憶部120で記憶された加工情報に基づいて、工具姿勢定義部140で定義された工具姿勢情報を修正する工具姿勢修正部150、加工情報と、加工領域形状と、工具姿勢情報とに基づいてNCプログラム(加工データ)を生成するNCプログラム生成部160と、を備えており、例えばマシニングセンタによる加工動作を制御するものである。
【0010】
図2は、工具姿勢定義部140の詳細図である。工具姿勢定義部140は、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と加工領域形状定義部130で定義された加工領域形状の形状要素情報から、工具姿勢決定点抽出部141において工具姿勢を決定する点を抽出し、工具姿勢演算部142において各工具姿勢決定点における工具姿勢情報を定義する。
【0011】
図3は、工具姿勢修正部150の詳細図である。工具姿勢修正部150は、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と工具姿勢定義部140で定義された工具姿勢情報から、工具姿勢干渉検出部151において非加工領域形状と加工工具とが干渉するか否かを判断し干渉する場合には干渉部位を検出し、工具姿勢情報表示部152において例えば前記工具姿勢情報と干渉部位をディスプレイ画面に表示する。そして、工具姿勢情報修正部153において操作者が表示された工具姿勢情報を変更した場合には、適宜、加工情報入力部110により修正情報を入力し、入力された情報は加工情報記憶部120に記憶され、工具姿勢再演算部154において修正された情報に基づいて工具姿勢情報の再演算が行われる。
【0012】
図4は、本実施の形態の説明に用いる加工対象となる形状の例である。加工領域形状400はテーパーポケット形状と呼ばれる形状であり、側面部分を構成する面に角度403の同一テーパがついており、上面部の輪郭形状401と底面部の輪郭形状402とは異なる形状となっている。
【0013】
一般的にボールエンドミルを用いて加工を行う場合には、加工面に対して工具が垂直に当たると基本的に周速0となる工具の先端点で加工することになり加工が不安定になりやすい。そのため、工具はある程度の傾きを持たせるのがよいとされている。以下、本実施の形態では、おもに加工対象形状400を加工する際の工具姿勢定義処理について説明する。具体的には、例えば、以下のような処理を実行する。
【0014】
[加工領域形状の定義]
まず、加工領域形状を定義する処理について説明する。加工情報入力部110から、少なくとも、加工領域情報、工具情報、加工条件情報を含む加工情報が入力され、加工情報記憶部120に記憶される。入力される具体的な加工情報としては、例えば加工領域情報として加工領域形状400、加工条件情報として等高線加工による側面仕上げ加工、及び送り速度が一定といった情報が入力される。そして、加工情報に含まれる加工方向に垂直な平面を基準平面とする。本実施の形態の加工では加工方向はZ軸方向となるので、基準平面はXY平面となる。加工領域形状400の上面部の輪郭形状を401、底面部の輪郭形状を402としたとき、加工領域形状400を基準平面に投影して生成される投影形状を、形状410とする。
【0015】
加工方向であるZ軸に平行な平面を考える場合に、平行な平面をZY平面とすると、加工領域形状400をZY平面に投影して生成される輪郭形状は、形状420となる。同様に、平行な平面をXZ平面とする場合には、加工領域形状400をXZ平面に投影して生成される輪郭形状は、形状430となる。上記のように、加工領域形状400は、垂直な平面上と平行な平面上とで定義される形状410、420、430により定義される。
【0016】
[工具姿勢の定義]
次に、工具姿勢を定義する処理について述べる。上記のように、工具姿勢定義部140において、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と加工領域形状定義部130で定義された加工領域形状の形状要素情報に基づき、工具姿勢決定点抽出部141が工具姿勢を決定する点を抽出し、さらに工具姿勢演算部142が各工具姿勢決定点における工具姿勢情報を定義する。まず、加工領域形状に対して工具姿勢を定義する位置である工具姿勢決定点を決める。工具姿勢の定義位置が多数あればそれだけ操作者の意図がよく反映されるが、そのぶん定義操作が煩雑になってくる。そのため、例えば、要となるような形状特徴を表す位置や形状特徴に変化が生じる位置などでの工具姿勢情報を定義し、その他の位置では定義済みの工具姿勢情報に基づいた工具姿勢を求めるようにしてもよい。なお、本実施の形態は、等高線加工による側面仕上げ加工であるので、図4の加工領域形状400の上面部の輪郭形状401を対象として以降の処理を行う。
【0017】
[工具姿勢決定点]
本実施の形態では、輪郭形状401に対して、要となるような形状特徴を表す工具姿勢決定点は、各形状要素の端点と中点が妥当であると判断される。具体的には図5に示すように、端点511、512、513、514、515、516、517、518と、中点521、522、523、524、525、526、527、528である。工具姿勢決定点抽出部141は、これらの工具姿勢を決定する点を、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と加工領域形状定義部130で定義された加工領域形状の形状要素情報とから、所定の方法により自動的に抽出する。なお、その他の位置での工具姿勢は、後述する工具姿勢定義方法により上記の工具姿勢決定点における工具姿勢情報が定義された後、例えば補間処理などを用いて求めることができる。
【0018】
次に、抽出された工具姿勢決定点に対して、工具姿勢演算部142により、工具姿勢が定義される。本明細書では、工具姿勢を工具中心軸で表す。すなわち、各工具姿勢決定点における工具姿勢を、前記基準平面上での基準とする回転軸に対する工具の回転角度(以下、旋回角度とする)と、工具が前記旋回角度を取るときの工具中心軸を通り、かつ基準平面に垂直な平面(以下、傾斜角平面とする)上での基準とする方向に対して工具を傾ける角度(以下、傾斜角度とする)により定義する。
【0019】
[旋回角度]
具体的には図6に示すように、旋回角度の基準軸をZ軸610周りの回転軸であるC軸、傾斜角度の基準方向をZ軸610とした場合に、輪郭形状401上の工具姿勢決定点601における工具姿勢600は、基準平面602上での工具の旋回角度603と、工具が旋回角度603を取るときの工具中心軸を通り、かつ基準平面602に垂直な傾斜角平面604上で基準とするZ軸正方向からの工具の傾斜角度605により定義される。なお、図中の輪郭形状は直線であるが曲線の場合でも同様な考えにより行われる。また、基準平面602上のベクトル606は工具の旋回角度を示すものであり、以下、旋回角度ベクトルとする。
【0020】
旋回角度の決定方法としては、基準とする回転軸周りに工具を回転させながら加工する際に、角速度が一定あるいは角速度の変化量が小さければ比較的安定した加工が行えることから、本実施の形態では角速度が一定あるいは角速度変化量を小さく抑えられるように旋回角度を設定する。なお、本実施の形態では角速度を単位距離当たりの角度変化に近似的に置き換えて考える。例えば、図7の701〜716は、入力された加工情報から基準平面上の輪郭形状401に沿って等高線加工を1周ぶん行う際に、工具も回転軸周りに360°回転させた場合の旋回角度ベクトルであり、それぞれの旋回角度は輪郭形状401上で各工具姿勢決定点までの距離に応じて変化させる。よって、各工具姿勢決定点における旋回角度は以下のような計算により決まる。
【0021】
L[mm]:輪郭形状401の全周距離
d[mm]:基点から所望の工具姿勢決定点までの輪郭形状401上の距離
θ[rad]:基点における旋回角度ベクトルと所望の工具姿勢決定点における
旋回角度ベクトルがなす角度
とする場合に、
θ=2πd/L
となる。
【0022】
具体的には、例えば基準回転軸周りの回転角度の基点が工具姿勢決定点528に一致するときの工具姿勢決定点512における旋回角度は、図8に示すように、基準平面上で工具姿勢決定点528と512が一致するように旋回角度ベクトル701または704を平行移動させた場合の2つのベクトルがなす角720となる。
【0023】
また、傾斜角度の決定方法としては、まず傾斜角平面を求め、傾斜角平面上で工具を傾斜させる角度を決める。例えば、工具姿勢決定点512における工具姿勢のための傾斜角度を求めるために、図9に示すように工具姿勢決定点512における旋回角度ベクトル704を通り、基準平面であるXY平面に垂直な平面を傾斜角平面901とする。次に、傾斜角平面901上で非加工領域と工具ホルダとが干渉しないような角度(傾斜角903)だけ傾斜角ベクトル904で示すように工具を傾ける。
【0024】
[干渉の回避]
そのために傾斜角平面上で干渉回避可能な傾斜角903を簡易的に求める。図10は傾斜角平面901上で工具姿勢決定点512において工具と工具ホルダ1001の中心軸1002の傾斜角が0°の状態の模式図である。図中の斜線部分1010は非加工領域であり、加工が進み加工深さが深くなるとこの非加工領域に工具ホルダが侵入した状態が発生することがあり、この場合を干渉と呼ぶ。本実施の形態では、工具ホルダの幾何形状と非加工領域の幾何形状とをモデル化して干渉を考える。
【0025】
例えば、図11に示すように加工深さが工具の突出し長さ1020を越えない状態では、理論上、工具の傾斜角が0°でも干渉が生じないことになるが、図12に示すように加工深さが工具の突出し長さ1020を越えた状態では干渉が発生するので、図13に示すように工具ホルダが非加工領域と干渉しない境界角度1030よりも大きな角度の傾斜角903をとり、工具および工具ホルダを傾けて干渉を回避するようにしなければならない。
【0026】
そのため、本実施の形態では、加工深さが工具の突出し長さを越えた状態で起こりうる干渉を回避する傾斜角度範囲を求め、その範囲内で加工中の工具姿勢が一定あるいは変化する場合には変化量を小さく抑え、滑らかに工具が移動するような傾斜角度を決める。
【0027】
例えば、図14は、テーパ角403の面を加工する場合の干渉するか否かの境界状態の模式図である。このとき、公知技術を応用して図15に示すように工具および工具ホルダを含み、かつ領域が最小となる円錐形状を工具および工具ホルダの簡易モデル1140と考える。このときの中心軸と母線のなす角は1110となる。
【0028】
図14の工具と工具ホルダの簡易モデル1140と非加工領域1010の模式図により、工具中心軸の傾斜角が傾斜角度1120以下であれば干渉が発生し、傾斜角度1120以上であれば干渉が発生しないことがわかる。よって、傾斜角度は以下のような計算により求まる。
【0029】
θ[rad」:加工面のテーパ角度
α[rad]:工具および工具ホルダの簡易モデルにおいて、中心軸と母線がなす角
γ[rad]:所望の工具姿勢決定点における傾斜角度
とする場合に、
加工対象面と工具の干渉が発生しないための傾斜角度γは、
γ>α−θ
を満たす必要がある。
【0030】
よって、加工深さが工具突出し長さを越える場合の工具姿勢は上記のようにして工具傾斜角を求め、加工深さが工具突出し長さを越えない場合の工具姿勢は工具突出し長さを越えたときの工具姿勢との姿勢変化量が小さくなるように設定すればよい。
【0031】
その際の指標となる数値は過去の実験結果や文献などを参照すればよく、例えば、平面を加工する場合には工具を14°〜30°に傾けると良好な加工結果が得られるという実験結果などもあり、本実施の形態においては上記の計算結果やこれらの実験結果などを参考として操作者の所望の傾斜角度を設定すればよいと考える。
【0032】
以上の方法により、各工具姿勢決定点における工具の旋回角度と傾斜角度が求められ、これにより工具姿勢情報が定義され、工具姿勢決定点以外の位置での工具姿勢情報については、定義済みの工具姿勢決定点における工具姿勢情報から、例えば補間処理などを用いて求めればよい。
【0033】
また、例えば図5の工具姿勢決定点521、523、525、527のように、基になる形状要素の特徴が同じであるような工具姿勢決定点の場合には、その工具姿勢情報を共有することもできる。例えば、上記の例では4点のうちいずれか1点の工具姿勢情報を定義すれば残りの3点における工具姿勢情報の傾斜角度も同じ値が設定されるようにする。ただし、本実施の形態の場合の旋回角度は基点からの距離に応じて設定されるので、上記4点の旋回角度の共有化はできない。なお、実現に向けては例えば形状要素の特徴が同じである場合の工具姿勢情報の共有化のON/OFF設定ができるようなパラメータを設け、工具姿勢情報の共有のするしないを操作者が選択できるようにしてもよい。
【0034】
[工具姿勢の修正]
次に、工具姿勢修正部150の動作について述べる。工具姿勢修正部150においては、加工情報記憶部120で記憶された加工情報と工具姿勢定義部140で定義された工具姿勢情報から、工具姿勢干渉検出部151において非加工領域形状と加工工具とが干渉するか否かが判断される。そして、干渉する場合には、工具姿勢干渉検出部151により、干渉部位が検出され、工具姿勢情報表示部152に表示される。そして、工具姿勢情報修正部153を介して操作者により、工具姿勢が変更された場合には、工具姿勢再演算部154において修正された情報に基づいて工具姿勢情報の再演算が行われる。先に述べたように、工具姿勢決定点の位置では定義された工具姿勢をとり、工具姿勢決定点以外の位置では工具姿勢決定点での工具姿勢に基づいた工具姿勢をとる。本実施の形態の工具姿勢は、加工中の工具および工具ホルダと加工対象面以外の領域との干渉を考慮していない。そのため、工具姿勢をそのまま用いて加工した場合には干渉が発生する可能性がある。これを避けるために、本実施の形態では工具姿勢干渉検出部151により、干渉する恐れのある部位を検出する。干渉を検出する方法については、従来技術を応用すればよく、例えば工具姿勢再演算部154での傾斜角算出に用いた工具と工具ホルダの簡易モデルを工具の動きに沿って動かし、その移動領域と非加工領域との干渉部位を検出するなどの手法により実現できる。
【0035】
上記のように、干渉部位が検出された場合には、工具姿勢情報表示部152においてディスプレイ画面などに表示する。例えば図16に示すように加工深さが工具突き出し長さを越えない場合での工具姿勢決定点における工具の旋回角度ベクトルが1211〜1226であるときに、工具姿勢決定点1310を基点としてZ軸正方向から見て左回りに工具が進みながら加工を行う場合に、図17に示すように基点からの距離を横軸に旋回角度の角速度を縦軸に設定したグラフ(A)と、基点からの距離を横軸に傾斜角度の角速度を縦軸に設定したグラフ(B)とを表示させる。図16の例では各工具姿勢決定点での旋回角度が基点からの距離に比例して変化しているので、素材の材質や温度変化などといった条件を度外視すれば理論上、図17(A)のように角速度はω1をほぼ一定に保つことができると考えられ、さらに図17(B)のように各工具姿勢決定点における傾斜角度もγ1をほぼ一定に保つことができると考えられる。なお、図17(B)の斜線部1320は工具および工具ホルダと非加工領域とが干渉を発生する傾斜角度であり、図17(B)の例では工具を加工対象面側にテーパ角θを超えて傾けると干渉を起こすことがわかる。なお、加工深さが工具突き出し長さを越える場合も同様に考えればよく、このようなグラフ表示は操作者にわかり易く有効な表示方法である。
【0036】
[工具姿勢の再演算]
工具姿勢情報表示部152において干渉発生が表示された場合あるいは、設定した工具姿勢を変更したい場合には、次の工具姿勢情報修正部153において工具姿勢情報を修正し、さらに工具姿勢再演算部154により修正された工具姿勢情報から工具姿勢の再演算を行う。再演算結果は、上記工具姿勢干渉検出部151からの処理を繰り返し、操作者が所望の工具姿勢が得られるまで繰り返せばよい。なお、工具姿勢定義部140で、工具姿勢の共有化を行っている工具姿勢情報が修正された場合には、共有しているその他の工具姿勢も同時に修正することもできる。
【0037】
[NCプログラムの生成]
工具姿勢情報修正部153において、操作者の所望の工具姿勢が得られたならば次のNCプログラム生成部160においてNCプログラムが生成され、NCプログラム解析処理部102を介してNC装置103に渡されたNCプログラムに則って加工を行えばよい。
【0038】
以上のように、本実施の形態の自動プログラミング装置101によれば、加工領域形状に対する工具姿勢情報を定義する工具姿勢定義部140を備え、さらにこの工具姿勢定義部140は、加工領域形状を構成する形状要素の情報から工具姿勢を決定する点を所定の方法により抽出する工具姿勢決定点抽出部141と、工具姿勢を決定する点における工具姿勢情報を所定の方法により求める工具姿勢演算部142を含んで構成されているので、旋回軸を有するNC工作機械に適用する工具経路向けの工具姿勢情報を定義でき、CAMを用いなくても、簡単な操作でNCプログラムを生成することができる。
【0039】
また、工具姿勢定義部140は、加工方向に対して垂直な平面で加工領域形状を切断した場合の切断面上に存在する点の情報と、加工方向に対して平行な平面で加工領域形状を切断した場合の切断面上に存在する点の情報とに基づいて工具姿勢決定点を定義するので、加工領域形状データと工具姿勢決定点データとの関連が明確で、操作者が直感的に把握しやすい。また、工具姿勢情報を加工深さに応じて切替えるときにも有効である。
【0040】
さらに、工具姿勢定義部140は、加工方向に対して垂直な平面上に投影された工具中心軸の形状情報と、加工方向に対して平行な平面上に投影された工具中心軸の形状情報とに基づいて工具姿勢情報を定義するので、加工領域形状データと工具姿勢データとの関連が明確で操作者も直感的に把握しやすい。
【0041】
また、工具姿勢定義部140は、入力された加工領域形状に対して、加工領域形状の構成要素が同一の形状特徴を含む場合に工具姿勢情報を共有する。工具姿勢情報を共有化することにより同様の処理を重複して行わなくてすみ、また操作者が同一の形状特徴を持つことに気づかずに異なる工具姿勢情報を設定してしまう場合が生じるのを防ぐ効果もある。
【0042】
さらにまた、工具姿勢定義部140は、工具姿勢を定義する際に、基準とする軸まわりに工具軸を回転させながら加工する際の工具軸の回転運動の角速度を指標とした工具姿勢情報を定義することができるので、工具の回転運動の角速度を一定あるいは変化量を小さく抑えることで安定した加工を行うことができる。
【0043】
さらにまた、工具姿勢定義部140おいては、角速度を指標とした工具姿勢情報を定義する際に、工具軸の回転運動の基準となる回転軸を、加工情報入力部110を介して指定可能としたので、実際の加工に即した工具回転軸の位置設定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる自動プログラミング装置は、1軸以上の旋回軸を有するNC工作機械に適用されるNCプログラムを生成する自動プログラミング装置に有用なものであり、例えばC軸を旋回軸とするマシニングセンタ用のNCプログラムを生成する自動プログラミング装置に最適なものである。
【符号の説明】
【0045】
101 自動プログラミング装置
102 NCプログラム解析処理部
103 NC装置
110 加工情報入力部
120 加工情報記憶部
130 加工領域形状定義部
140 工具姿勢定義部
150 工具姿勢修正部
160 NCプログラム生成部
141 工具姿勢決定点抽出部
142 工具姿勢演算部
151 工具姿勢干渉検出部
152 工具姿勢情報表示部
153 工具姿勢情報修正部
154 工具姿勢再演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工領域形状に関する情報、工具に関する情報、加工条件に関する情報を少なくとも含んだ加工情報が入力され、入力された前記加工情報を解析して1軸以上の旋回軸を有するNC工作機械に適用されるNCプログラムを生成する自動プログラミング装置において、
前記加工領域形状に対する工具姿勢を定義する工具姿勢定義部は、
前記加工領域形状を構成する形状要素の情報から工具姿勢決定点を所定の方法により抽出する工具姿勢決定点抽出部と、
前記工具姿勢決定点における工具姿勢を所定の方法により求める工具姿勢演算部と、から成る
ことを特徴とする自動プログラミング装置。
【請求項2】
前記工具姿勢定義部は、前記工具姿勢決定点を抽出する際に、加工方向に対して垂直な平面で前記加工領域形状を切断した場合の切断面上に存在する点の情報と、前記加工方向に対して平行な平面で前記加工領域形状を切断した場合の切断面上に存在する点の情報とに基づいて、前記工具姿勢決定点を定義する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動プログラミング装置。
【請求項3】
前記工具姿勢定義部は、加工方向に対して垂直な平面上に投影された工具中心軸の形状情報と、前記加工方向に対して平行な平面上に投影された工具中心軸の形状情報とに基づいて、工具姿勢を定義する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動プログラミング装置。
【請求項4】
前記工具姿勢定義部は、入力された加工領域形状に関する情報に対して、前記加工領域形状の構成要素が同一の形状特徴を含む場合に工具姿勢情報を共有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動プログラミング装置。
【請求項5】
前記工具姿勢定義部は、工具姿勢を定義する際に、基準とする軸まわりに工具軸を回転させながら加工する際の工具軸の回転運動の角速度を指標とした工具姿勢を定義することができる
ことを特徴とする請求項1に記載の自動プログラミング装置。
【請求項6】
前記工具姿勢定義部は、角速度を指標とした工具姿勢を定義する際に、工具軸の回転運動の基準となる回転軸を操作者が指定できる
ことを特徴とする請求項5に記載の自動プログラミング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動プログラミング装置を動作させる
ことを特徴とする動作プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−183528(P2011−183528A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53365(P2010−53365)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】