説明

自動変速制御装置

【課題】エンジン出力制限手段による徐変制御移行後に速やかに変速機の変速禁止を解除して変速機の変速を許可することで、変速機を適切に変速できる自動変速制御装置を提供する。
【解決手段】自動変速制御装置が、車両の走行状態に応じて、エンジン出力を制限するエンジン出力制限手段30と、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限中は、変速機T/Mの変速を禁止する変速禁止手段31と、エンジン出力制限手段30がエンジン出力の制限を徐々に解除する徐変制御を行っていると判定したときには、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限中であっても、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する変速禁止解除手段32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンに連結された変速機を変速する自動変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスリップや横滑りを防止するためにスリップ量や車両姿勢を検出してエンジン出力(エンジントルク)を制限する安全システム(例えば、ASR(アンチ・スリップ・レギュレータ)やESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール))が車両に装備されている場合、それらの安全システムが作動しているときには変速機の自動変速を行わないことで安全システムの効果を高めている。
【0003】
具体的には、安全システムがエンジン出力を制限している状態を検出した場合に、変速機の自動変速を禁止し、その後、安全システムがエンジン出力の制限を解除した状態を検出した場合には、変速機の自動変速禁止を解除して変速機の自動変速を許可する。
【0004】
なお、特許文献1には、自動変速機に給排する油の油温を検出する油温検出手段と、前記油温が第1の所定油温よりも高くなった場合に、エンジンの出力を制限するエンジン出力制限手段と、前記油温が第1の所定油温よりも低い第2の所定油温よりも低くなった場合に、前記エンジンの出力制限を解除するエンジン出力制限解除手段と、を備えた自動変速機の制御装置において、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記エンジンの出力制限中に前記車両に加速要求がされた場合に、前記エンジンの出力制限を中止するエンジン出力制限中止手段と、を備える自動変速機の制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−215237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の安全システムは、エンジン出力の制限が不要になった場合に、エンジン出力の制限を急に解除せずにエンジン出力の制限を少しずつ解除する場合がある(徐変制御)。例えば、安全システムは、エンジン出力制限値を「50%→100%」と急に上げずに、エンジン出力制限値を「50%→55%→60%→・・・・→85%→100%」のように段階的に100%に近づけてからエンジン出力の制限を解除する。
【0007】
これに対し、自動変速制御装置側は安全システム側がエンジン出力の制限を完全に停止するまでは変速機の自動変速を禁止しているため、エンジン出力制限手段がエンジン出力の制限を少しずつ解除している間も変速機の変速許可の判定を行わない。このため、変速機を自動変速できない状態が継続し、エンジン回転が上昇しているにも関わらずシフトアップできず煩わしいと運転者が感じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、エンジン出力制限手段による徐変制御移行後に速やかに変速機の変速禁止を解除して変速機の変速を許可することで、変速機を適切に変速できる自動変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明は、エンジンに連結された変速機を変速する自動変速制御装置において、車両の走行状態に応じて、エンジン出力を制限するエンジン出力制限手段と、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力の制限中は、前記変速機の変速を禁止する変速禁止手段と、前記エンジン出力制限手段がエンジン出力の制限を徐々に解除する徐変制御を行っていると判定したときには、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力の制限中であっても、前記変速禁止手段による前記変速機の変速禁止を解除して前記変速機の変速を許可する変速禁止解除手段とを備えたものである。
【0010】
前記エンジン出力制限手段は、車両の運転状態に応じて得られるエンジン出力に対してエンジン出力制限値を乗算することで、エンジン出力を制限するものであり、前記変速禁止解除手段は、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間継続し、且つ、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力制限値が所定値以上であるときに、前記エンジン出力制限手段が前記徐変制御を行っていると判定するものであっても良い。
【0011】
エンジン出力制限値の所定値は、前記車両の積載量に応じて可変するように設定されても良い。
【0012】
前記変速禁止解除手段は、前記エンジン出力制限手段が前記徐変制御を行っているという条件に加え、エンジン回転が所定値以上であるという条件が成立したときに、前記変速禁止手段による前記変速機の変速禁止を解除して前記変速機の変速を許可するものであっても良い。
【0013】
エンジン回転の所定値は、前記車両の積載量に応じて可変するように設定されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジン出力制限手段による徐変制御移行後に速やかに変速機の変速禁止を解除して変速機の変速を許可することで、変速機を適切に変速できる自動変速制御装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動変速制御装置の概略図である。
【図2】変速禁止開始及び変速禁止解除の制御回路を示す図である。
【図3】エンジン出力制限値の時間変化を示す図である。
【図4】変速禁止開始及び変速禁止解除の制御回路の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
図1に示すように、エンジン(本実施形態ではディーゼルエンジン)Eと変速機T/Mとの間には、流体継手(フルードカップリング、トルクコンバータ)2と変速クラッチ(湿式多板クラッチ)3とが直列に介設されている。流体継手2はエンジンE側に配置され、変速クラッチ3は変速機T/M側に配置されている。
【0018】
流体継手2は、車両の発進時にクリープを生じさせるものであり、エンジンEの出力軸(クランク軸)1aに接続されたケーシング18と一体に回転するポンプ部4と、ケーシング18内でポンプ部4に対向され変速クラッチ3の入力軸3aに接続されたタービン部5と、タービン部5とポンプ部4との間に介設されたステータ部6とから主に構成される。ポンプ部4とタービン部5とは、ロックアップ装置20により、締結・切離される。ロックアップ装置20は、ポンプ部4とタービン部5との間に介設されたロックアップクラッチ7と、そのロックアップクラッチ7を作動する油圧回路19とからなる。
【0019】
変速クラッチ3は、その入力軸3aが流体継手2のタービン部5に接続され、出力側が変速機T/Mの入力軸8に接続されており、流体継手2と変速機T/Mとの間を断接するものである。変速クラッチ3は、変速機T/Mを変速する際、ギヤ抜き前に断され、ギヤイン後に接される。変速クラッチ3は、常時はスプリング(図示せず)で断方向に付勢され、油圧回路19からの圧油によって接にされる。詳しくは、変速クラッチ3は、油が満たされたクラッチケーシング(図示せず)内で、入力側と出力側とにそれぞれ複数枚ずつ互い違いにクラッチプレート(或いはクラッチディスク)がスプライン噛合され、これらクラッチプレート同士を押し付け合い、或いは解放して、変速クラッチ3の接続・分断を行うものである。なお、変速クラッチ3は、油圧によって作動されるものに限られず、オイル以外の流体(例えば水等)によって作動されるものでもよい。
【0020】
変速機T/Mは、変速クラッチ3の出力側に連結された入力軸8と、この入力軸8と同軸に配置された出力軸9と、これら入力軸8及び出力軸9に平行に配置された副軸10とを有し、所謂マニュアル式のものである。入力軸8には、入力主ギヤ11が設けられている。出力軸9には、1速主ギヤM1と、2速主ギヤM2と、3速主ギヤM3と、4速主ギヤM4と、リバース主ギヤMRとがそれぞれ軸支されていると共に、6速主ギヤM6が固設されている。副軸10には、入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12と、1速主ギヤM1に噛合する1速副ギヤC1と、2速主ギヤM2に噛合する2速副ギヤC2と、3速主ギヤM3に噛合する3速副ギヤC3と、4速主ギヤM4に噛合する4速副ギヤC4と、リバース主ギヤMRにアイドルギヤIRを介して噛合するリバース副ギヤCRとがそれぞれ固設されていると共に、6速主ギヤM6に噛合する6速副ギヤC6が軸支されている。
【0021】
この変速機T/Mによれば、出力軸9に固定されたハブH/R1にスプライン噛合されたスリーブS/R1を、リバース主ギヤMRのドグDRにスプライン噛合すると、出力軸9がリバース回転し、上述のスリーブS/R1を1速主ギヤM1のドグD1にスプライン噛合すると、出力軸9が1速相当で回転する。出力軸9に固定されたハブH/23にスプライン噛合されたスリーブS/23を、2速主ギヤM2のドグD2にスプライン噛合すると、出力軸9が2速相当で回転し、上述のスリーブS/23を3速主ギヤM3のドグD3にスプライン噛合すると、出力軸9が3速相当で回転する。出力軸9に固定されたハブH/45にスプライン噛合されたスリーブS/45を、4速主ギヤM4のドグD4にスプライン噛合すると、出力軸9が4速相当で回転し、上述のスリーブS/45を入力主ギヤ11のドグD5にスプライン噛合すると、出力軸9が5速相当(直結)で回転する。副軸10に固定されたハブH6にスプライン噛合されたスリーブS6を、6速副ギヤC6のドグD6にスプライン噛合すると、出力軸9が6速相当で回転する。
【0022】
上述の各スリーブSは、運転者が運転室内のシフトレバー21を操作することによって図示しないシフトフォーク及びシフトロッドを介してマニュアル操作されるか(マニュアル変速モード)、或いは図示しないギヤシフトアクチュエータがエンジンEの運転状態(アクセルペダル23の踏み込み量、車速等)に応じて上述のシフトフォーク及びシフトロッドを作動することでオートマチックに操作される(オート変速モード)。マニュアル変速モード或いはオート変速モードにより変速機T/Mのギヤ段が切り替えられる際には、現ギヤ段のギヤ抜き前に変速クラッチ3が断とされ、他のギヤ段へのギヤイン後に変速クラッチ3が接とされる。
【0023】
変速機T/Mの入力主ギヤ11又は入力主ギヤ11に噛合する入力副ギヤ12の近傍には、変速機T/Mの入力軸8の回転数(変速機入力軸回転数)を検出する回転センサ27が設けられており、その回転センサ27の検出値が制御手段(ECU)22に入力されるようになっている。ECU22は、回転センサ27の検出値(変速機入力軸回転数)が設定値(例えば、800rpm)以下のときには、流体継手2のロックアップ装置20(油圧回路19)を断側に作動させてロックアップクラッチ7を断とし、設定値(例えば、1000rpm)以上となったとき、ロックアップ装置20(油圧回路19)を接側に作動させてロックアップクラッチ7を接とする。
【0024】
また、アクセルペダル23の踏み込み量は、アクセルセンサ24により検出され、その踏み込み量がECU22に入力される。またブレーキペダル25の踏み込み量は、ブレーキセンサ26により検出され、その踏み込み量がECU22に入力される。
【0025】
ここで、本実施形態に係る自動変速制御装置は、車両の走行状態に応じて、エンジン出力(エンジントルク)を制限するエンジン出力制限手段(安全システム)30と、所定の変速禁止開始条件が成立したときに、変速機T/Mの変速を禁止する変速禁止手段31と、変速機T/Mの変速禁止中に所定の変速禁止解除条件が成立したときに、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する変速禁止解除手段32とを備える。本実施形態では、ECU22に、エンジン出力制限手段30、変速禁止手段31及び変速禁止解除手段32が装着される。なお、エンジン出力制限手段30、変速禁止手段31及び変速禁止解除手段32をそれぞれ、ECU22とは別のECU等に設けても良い。
【0026】
エンジン出力制限手段30(ECU22)は、車両のスリップや横滑り等を防止するために、車両の走行状態(スリップ量や車両姿勢等)に応じて、エンジン出力を制限する。具体的には、エンジン出力制限手段30は、車両の運転状態(例えば、回転センサ27により検出される変速機入力軸回転数(エンジン回転)や、アクセルセンサ24により検出されるアクセルペダル23の踏み込み量)に応じて得られるエンジン出力に対して、車両の走行状態(スリップ量や車両姿勢等)に応じて得られるエンジン出力制限値(0%〜100%)を乗算することで、目標となるエンジン出力を算出するようになっている。
【0027】
図2に示すように、変速禁止手段31(ECU22)は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が100%から100%以外に変化したとき、又は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(所定値)以下であるとき、変速機T/Mの変速を禁止する変速禁止開始条件OR部33を有する。よって、変速禁止手段31は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が100%から100%以外に変化したという条件が成立したとき、又は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(例えば、40%)以下であるという条件が成立したとき、変速機T/Mの変速を禁止する。エンジン出力制限値が100%から100%以外に変化したときには、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限が開始されたとみなせるためである。エンジン出力制限値がキャリ値(例えば、40%)以下となったときを変速禁止開始条件とするのは、何らかの要因で所謂徐変制御から再びエンジン出力の制限に復帰したような場合に、変速機T/Mの変速を禁止する必要があるためである。
【0028】
図2に示すように、変速禁止解除手段32(ECU22)は、後述する変速禁止解除条件AND部35からの出力信号が入力されたとき、又は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が100%であるとき、又は、エンジン出力制限手段30から信号の受信が所定時間(一定時間)できないとき、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する変速禁止解除条件OR部34を有する。
【0029】
変速禁止解除条件AND部35には、変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する必須の条件として2つの信号が入力されている。
【0030】
第1の信号は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間(一定時間)継続したことを示す信号である。エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間(例えば、0.2s)継続した状態は、エンジン出力制限手段30がエンジン出力の制限を急に解除せずにエンジン出力の制限を徐々に解除する徐変制御を行っているとみなせるためである。第1の信号は、エンジン出力制限手段30からの信号を図示しない比較器に適用することで得られる。
【0031】
第2の信号は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(所定値)以上であることを示す信号である。エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(例えば、50%)以上であるときは、スリップや横滑りの防止のためにエンジン出力の制限を行っているのではなく徐変制御に移行したとみなせるためである。第2の信号は、エンジン出力制限手段30からの信号を図示しない比較器に適用することで得られる。
【0032】
よって、変速禁止解除手段32は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間(例えば、0.2s)継続し、且つエンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(例えば、50%)以上であるという条件が成立したとき、又は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が100%であるという条件が成立したとき、又は、エンジン出力制限手段30から信号の受信が所定時間(例えば、1s)できないという条件が成立したとき、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する。エンジン出力制限値が100%であるときには、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限が停止したとみなせるためである。エンジン出力制限手段30から信号の受信が所定時間(例えば、1s)できないときを変速禁止解除条件とするのは、何らかの不具合でエンジン出力制限手段30から信号の受信ができないときには、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する必要があるためである。
【0033】
さらに、本実施形態に係る自動変速制御装置では、車両の積載量(或いは重量)によってスリップし易さ等が異なるため、上述のキャリ値(エンジン出力制限値の所定値)を、車両の積載量によって可変できるように設定した。具体的には、上述のキャリ値(エンジン出力制限値の所定値)を、車両の積載量が大きくなるに従い小さくなるように設定した。車両の積載量が大きくなる程スリップ等し易くなるため、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力制限値が小さくなり、徐変制御へもエンジン出力制限値がより小さい領域で移行すると考えられるためである。車両の積載量は、例えば、従来より車両に具備されている加速度センサからの加速度信号に基づいて算出される。
【0034】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0035】
図3は、エンジン出力制限手段30が車両発進時のスリップを防止するためにエンジン出力の制限を行っているときのデータ(エンジン出力制限値の時間変化)である。
【0036】
図3に示すAの領域ではエンジン出力制限手段30が意図的にエンジン出力の制限を行っているが、次のBの領域ではエンジン出力制限手段30がエンジン出力の制限を解除するまでの徐変制御を行っている場合がある。図3に示すBの領域では変速機T/Mを変速しても安全であるが、従来の自動変速制御装置では変速機T/Mの変速禁止が継続するため煩わしいと運転者が感じる場合がある。
【0037】
そこで、本実施形態に係る自動変速制御装置では、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限が図3に示すBの領域であるか否か(つまり、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限が徐変制御に移行したか否か)を判断し、図3に示すBの領域である(つまり、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限が徐変制御に移行した)と判定したときに、変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可するようにしている。
【0038】
具体的には、変速禁止解除手段32は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間継続し、且つエンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値以上であるという条件が成立したときには、エンジン出力制限手段30によるエンジン出力の制限中(エンジン出力制限値が100%以外である状態)であっても、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可するようになっている。
【0039】
従って、本実施形態に係る自動変速制御装置によれば、エンジン出力の制限を解除するまでの徐変制御移行後に速やかに変速機T/Mの変速禁止が解除されて変速機T/Mの変速が許可されることとなるので、変速機T/Mを適切に変速できる。
【0040】
また、本実施形態に係る自動変速制御装置では、上述のキャリ値(エンジン出力制限値の所定値)を車両の積載量によって可変できるように設定したので、車両の積載量によって変わり得る徐変制御移行時期を的確に判断でき、変速機T/Mをより適切に変速できる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0042】
例えば、変速禁止解除手段32(ECU22)は、エンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間継続し、且つエンジン出力制限手段30からのエンジン出力制限値がキャリ値(所定値)以上であり、且つエンジン回転がキャリ値(所定値)以上であるという条件が成立したときに、変速禁止手段31による変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可するものであっても良い。
【0043】
係る場合、図4に示すように、変速禁止解除手段32は、変速禁止解除条件AND部36を有する。変速禁止解除条件AND部36には、変速機T/Mの変速禁止を解除して変速機T/Mの変速を許可する必須の条件として、上述の第1及び第2の信号に加え、第3の信号が入力される。第3の信号は、エンジン回転(エンジン回転数)がキャリ値(例えば、2500rpm)以上であることを示す信号である。エンジン回転がキャリ値(例えば、2500rpm)以上である状態は、シフトアップが可能であるとみなせるためである。第3の信号は、回転センサ27からの信号を図示しない比較器に適用することで得られる。また、上述のキャリ値(エンジン出力制限値の所定値、エンジン回転の所定値)をそれぞれ、車両の積載量によって可変できるように設定しても良い。具体的には、上述のキャリ値(エンジン出力制限値の所定値、エンジン回転の所定値)をそれぞれ、車両の積載量が大きくなるに従い小さくなるように設定することが考えられる。
【符号の説明】
【0044】
22 ECU
30 エンジン出力制限手段
31 変速禁止手段
32 変速禁止解除手段
E エンジン
T/M 変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに連結された変速機を変速する自動変速制御装置において、
車両の走行状態に応じて、エンジン出力を制限するエンジン出力制限手段と、
前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力の制限中は、前記変速機の変速を禁止する変速禁止手段と、
前記エンジン出力制限手段がエンジン出力の制限を徐々に解除する徐変制御を行っていると判定したときには、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力の制限中であっても、前記変速禁止手段による前記変速機の変速禁止を解除して前記変速機の変速を許可する変速禁止解除手段と、
を備えたことを特徴とする自動変速制御装置。
【請求項2】
前記エンジン出力制限手段は、車両の運転状態に応じて得られるエンジン出力に対してエンジン出力制限値を乗算することで、エンジン出力を制限するものであり、前記変速禁止解除手段は、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力制限値が増加方向である状態が所定時間継続し、且つ、前記エンジン出力制限手段によるエンジン出力制限値が所定値以上であるときに、前記エンジン出力制限手段が前記徐変制御を行っていると判定する請求項1に記載の自動変速制御装置。
【請求項3】
エンジン出力制限値の所定値は、前記車両の積載量に応じて可変するように設定される請求項2に記載の自動変速制御装置。
【請求項4】
前記変速禁止解除手段は、前記エンジン出力制限手段が前記徐変制御を行っているという条件に加え、エンジン回転が所定値以上であるという条件が成立したときに、前記変速禁止手段による前記変速機の変速禁止を解除して前記変速機の変速を許可する請求項1から3のいずれかに記載の自動変速制御装置。
【請求項5】
エンジン回転の所定値は、前記車両の積載量に応じて可変するように設定される請求項4に記載の自動変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−40624(P2013−40624A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175878(P2011−175878)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】