説明

自動変速機の油圧制御装置

【課題】電磁式油圧制御弁の電力消費を低減させることができる自動変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】油圧制御装置は、ライン圧を調圧して油圧係合要素CLに供給する電磁式油圧制御弁1と、電磁式油圧制御弁1を制御するコントローラとを備える。電磁式油圧制御弁1は、開弁方向に駆動力を発生させるソレノイド5と、開弁度合いによりライン圧の導入量を変化させて調圧した出力油圧を生成する調圧室15と、出力油圧の一部をフィードバック油圧として導入し閉弁方向への付勢力を発生させるフィードバック室16とを備える。フィードバック室16へのフィードバック油圧の供給状態と遮断状態とを切り換える切換弁2を設ける。コントローラは、電磁式油圧制御弁1による調圧動作が不要であるとき、切換弁2によりフィードバック油圧を遮断状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧供給源から供給されるライン圧を調圧して油圧係合要素(クラッチ)に供給するリニアソレノイド弁(電磁式油圧制御弁)と、この電磁式油圧制御弁の作動を制御するコントローラとを備える油圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、変速段を切り替えるとき、ライン圧をリニアソレノイド弁で調圧してクラッチに供給することによりクラッチの係合制御がなされ、変速段が確立されたときには、リニアソレノイド弁からライン圧を出力してクラッチを完全係合させた状態で維持させている。また、リニアソレノイド弁として、電力が供給されると開弁方向に作動するノーマルクローズタイプのものが用いられており、クラッチを完全係合させた状態で通電状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−332862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の油圧制御装置に採用されるリニアソレノイド弁は、閉弁方向に付勢するフィードバック油圧として出力油圧の一部を導入するフィードバック室を備えている。フィードバック圧は、出力油圧の増減に応じて増減するので、リニアソレノイド弁による調圧時にライン圧が変動しても、その変動による出力油圧への影響を排除して精度の高い調圧を行うことができる。
【0006】
しかし、リニアソレノイド弁の出力油圧によりクラッチを完全係合させた状態で維持させるときであっても、フィードバック室のフィードバック圧により閉弁方向への付勢力が発生する。このため、リニアソレノイド弁を一定の開弁状態に維持させる場合には、フィードバック圧による閉弁方向への付勢力に対抗してリニアソレノイド弁への給電量を大きくしなければならず、リニアソレノイド弁における電力消費が大となる不都合がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、電磁式油圧制御弁における電力消費を低減させることができる自動変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、油圧係合要素の作動により変速段を成立させる変速機構を備える自動変速機に設けられ、油圧供給源から供給されるライン圧を調圧して前記油圧係合要素に供給する電磁式油圧制御弁と、該電磁式油圧制御弁の作動を制御するコントローラとを備える油圧制御装置であって、前記電磁式油圧制御弁が、前記コントローラによる制御に応じて開弁方向に駆動力を発生させるソレノイドと、該ソレノイドの駆動による開弁度合いによりライン圧の導入量を変化させて調圧した出力油圧を生成する調圧室と、該調圧室から導出された出力油圧の一部をフィードバック油圧として導入し閉弁方向への付勢力を発生させるフィードバック室とを備えるものにおいて、前記電磁式油圧制御弁のフィードバック室へフィードバック油圧を供給する供給状態とこのフィードバック油圧を断つ遮断状態とに切換自在に構成された切換弁を設け、前記コントローラは、前記電磁式油圧制御弁による調圧動作が不要であるとき、前記切換弁によりフィードバック油圧を遮断状態とすることを特徴とする。
【0009】
電磁式油圧制御弁による調圧動作が不要であるとき、電磁式油圧制御弁の弁開度を一定に維持するためにソレノイドに電力が供給される。本発明によれば、前記切換弁を設けたことにより、電磁式油圧制御弁のフィードバック室へのフィードバック油圧の供給を遮断することができる。フィードバック油圧の供給を遮断すると、閉弁方向への付勢力が生じなくなる。このため、電磁式油圧制御弁の弁開度を一定に維持するためにソレノイドに供給する電力を低減することができる。従って、調圧動作が行われていないとき切換弁を遮断状態にすれば、ソレノイドによる開弁方向への駆動力をフィードバック油圧が供給されてるときに比べて少なくすることができ、電磁式油圧制御弁の電力消費を低減させることができる。
【0010】
電磁式油圧制御弁による調圧動作が不要となるときとして、具体的には、電磁式油圧制御弁の弁開度を全開に維持するとき、或いは、電磁式油圧制御弁の出力油圧により前記油圧係合要素の係合状態が維持されているとき等が挙げられる。更に、電磁式油圧制御弁の出力油圧により前記油圧係合要素の係合状態が維持されているときとして、何れかの変速段が確立しているときの定常走行状態が挙げられる。
【0011】
そして、定常走行状態のように前記油圧係合要素が係合状態となっているときに、係合に必要な油圧が電磁式油圧制御弁から供給されていれば、ソレノイドに供給する電力を低減させても油圧係合要素に滑りや急激な係合に伴うショックは発生しない。
【0012】
そこで、前記電磁式油圧制御弁の出力油圧により前記油圧係合要素の係合状態が維持されているときに、前記コントローラが前記切換弁によりフィードバック油圧を前記遮断状態とすることで、油圧係合要素に滑りや急激な係合に伴うショックを発生させることなく、電磁式油圧制御弁の電力消費を低減させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記コントローラは、前記切換弁によりフィードバック油圧を前記遮断状態から前記供給状態に切り換えるとき、少なくとも該切換弁が切り換え動作を開始する直前から切り換え動作が完了するまでの間、前記ライン圧を昇圧させることが好ましい。
【0014】
前記切換弁によりフィードバック油圧を前記遮断状態から前記供給状態に切り換えられると、フィードバック油圧が復帰して閉弁方向への付勢力が急激に増加する。このため、電磁式油圧制御弁の出力油圧が極度に低下するおそれがある。そこで、少なくとも切換弁2が切り換え動作を開始する直前から切り換え動作が完了するまでの間に、フィードバック油圧の復帰に先立ってライン圧を昇圧させておくことにより、フィードバック油圧の復帰に伴う電磁式油圧制御弁の出力油圧の極度な低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の油圧制御装置の一実施形態の要部を示す模式図。
【図2】本実施形態の油圧制御装置の作動タイミングを示す線図。
【図3】本発明の油圧制御装置の他の実施形態を示す線図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の油圧制御装置は、図1に一部を示すように、自動車に設けられた自動変速機の変速機構(図示せず)の油圧係合要素であるクラッチCLに、ライン圧PLを調圧して供給するリニアソレノイド弁1(電磁式油圧制御弁)と、リニアソレノイド弁1の出力油圧の一部がフィードバック油圧として供給される切換弁2と、リニアソレノイド弁1及び切換弁2を制御するコントローラである図外のトランスミッション・コントロール・ユニット(以下、TCUという)とを備えている。
【0017】
前記クラッチCLは、リニアソレノイド弁1を介して供給される油圧により係合状態となり、前記変速機構における複数の変速段のうち所定の変速段を確立させるものである。従って、図示省略されているが、変速機構における各変速段に対応して、複数のクラッチCL及びリニアソレノイド弁1が設けられる。
【0018】
リニアソレノイド弁1は、通電停止状態(非通電状態)で閉弁されるノーマルクローズタイプのものであり、スリーブ3と、スリーブ3に摺動自在に内挿されたスプール4とを備えている。
【0019】
更に、スプール4の基端側には、スプール4を一方向(図1において下方向)に駆動するソレノイド5が設けられており、スプール4の先端側には、ソレノイド5によるスプール4の駆動方向と反対方向(図1において上方向)に付勢するスプリング6が設けられている。
【0020】
スリーブ3には、入力ポート7、出力ポート8、排出ポート9、及びフィードバックポート10が穿設されている。入力ポート7には、油圧供給源であるオイルポンプ(図示省略)から供給される油圧をレギュレータ弁(図示省略)により調圧したライン圧PLが供給される。出力ポート8は、クラッチ作動用油路11を介して前記クラッチCLに接続されている。
【0021】
スプール4は、所定間隔を存して配設された第1弁部12、第2弁部13、及び第3弁部14を一体に備えている。そして、スリーブ3内においては、第1弁部12と第2弁部13とにより調圧室15が画成され、第2弁部13と第3弁部14とによりフィードバック室16が画成される。
【0022】
調圧室15には、前記入力ポート7及び出力ポート8が配設され、フィードバック室16には、前記フィードバックポート10が配設されている。
【0023】
また、フィードバック室16は、その基端側端面を構成する第2弁部13の表面積が、先端側端面を構成する第3弁部14の表面積よりも大きくなるように設定されている。これにより、フィードバックポート10からフィードバック油圧が供給されてフィードバック室16の内圧が上昇すると、第2弁部13が基端側に向かって押圧され、スプリング6と同一方向の付勢力がスプール4に付与されるようになっている。
【0024】
フィードバックポート10には、出力ポート8に接続されたクラッチ作動用油路11から分岐するフィードバック用油路17が接続され、このフィードバック用油路17に前記切換弁2が介設されている。
【0025】
切換弁2は、図1において模式的に示すが、ソレノイド2aとスプール2bとスプリング2cとを備える電磁式であり、ソレノイド2aへの通電停止状態(非通電状態)でフィードバック用油路17を閉弁するノーマルクローズタイプのものが採用される。即ち、通電停止状態ではスプール2bがセット位置(図1の状態)にあって、フィードバック用油路17を遮断状態とし、通電状態ではスプール2bが作動位置にあって、フィードバック室16にフィードバック油圧を供給する状態とする。また、スプール2bがセット位置(図1の状態)にあるとき、フィードバック室16内の油圧が排出される。
【0026】
リニアソレノイド弁1は、TCUの制御によりソレノイド5への通電量(駆動電流)を増加させると、スプール4がスプリング6の付勢力に抗して先端方向に移動し、入力ポート7の開度が大きくなる。これにより、出力ポート8からは入力ポート7の開度に応じた油圧が出力油圧として出力される。
【0027】
このとき、TCUの制御により切換弁2を作動位置に位置させると、出力ポート8から出力される油圧の一部はフィードバック用油路17を介してフィードバック室16に供給される。このため、フィードバック室16に供給されるフィードバック圧は、出力ポート8からの出力油圧の増減に応じて増減する。
【0028】
即ち、例えば、オイルポンプの作動に伴うライン圧PLの脈動により入力ポート7から調圧室15に導入される油圧が一時的に増加すると、フィードバック室16に供給される油圧も増加する。これに伴い、フィードバック室16による付勢力が増加して入力ポート7の開度が減少するので、増加した分の油圧がカットされて出力油圧への影響が排除される。逆に、入力ポート7から調圧室15に導入される油圧が一時的に減少すると、フィードバック室16で発生する付勢力が低下して入力ポート7の開度が増加するので、油圧の供給が増加して出力油圧への影響が排除される。
【0029】
これにより、リニアソレノイド弁1による調圧時にライン圧PLが変動しても、その変動による出力油圧への影響を排除して高精度な調圧が可能であり、後述する変速動作に際して前記クラッチCLの接続を円滑に行うことができる。
【0030】
次に、本発明の要旨にかかる本実施形態の油圧制御装置の作動を図2を参照して説明する。図2においては、自動車の走行に伴って確立される複数の変速段のうち、2速段(2nd)から3速段(3rd)へのシフトアップ時の作動及び3速段(3rd)による定常状態の作動を示している。
【0031】
図2に示すように、2速段(2nd)から3速段(3rd)へのシフトアップが開始されると、TCUが切換弁2のソレノイド2aへの通電を開始すると共にリニアソレノイド弁1のソレノイド5への通電を開始する。
【0032】
これにより、切換弁2のスプール2bが作動位置に移動して、フィードバック室16へのフィードバック油圧の供給が可能な状態となる。一方、TCUはリニアソレノイド弁1のソレノイド5への供給電流を徐々に増加させ、調圧された出力油圧をクラッチCLに供給する。この間、前述したようにフィードバック室16に供給されるフィードバック油圧によりライン圧PLの変動が抑制されて高精度な調圧が行われる。そして、リニアソレノイド弁1の調圧により、出力油圧を次第に増加させるので、クラッチCLの急激な係合によるショックの発生を防止することができる。
【0033】
その後、図2に示すように、リニアソレノイド弁1の調圧により出力油圧がクラッチCLを係合状態とする必要クラッチ圧になると、3速段(3rd)が確立し、定常走行状態となる。定常走行状態では、リニアソレノイド弁1の出力油圧を一定(入力ポート7を全開)とし、ライン圧PLの調圧動作が不要となる。
【0034】
この状態においては、リニアソレノイド弁1のスプール4を出力油圧が必要クラッチ圧となる位置に保持させるために、スプリング6の付勢力とフィードバック室16でのフィードバック油圧の付勢力との合力に対抗する駆動力をスプール4に付与する必要がある。このため、TCUは、リニアソレノイド弁1のソレノイド5への供給電流を比較的高い状態に維持させる。
【0035】
一方、本実施形態においては、前記切換弁2を設けてフィードバック室16へのフィードバック油圧の供給が遮断可能となっているので、図2に示す作動により、定常走行状態におけるリニアソレノイド弁1の消費電力を低減させることができる。
【0036】
即ち、本実施形態においては、先ず、定常走行状態となってライン圧PLの調圧動作が不要となった場合に、TCUが切換弁2のソレノイド2aへの通電を停止させる。これにより、切換弁2のスプール2bがセット位置(図1に示す状態)に戻り、フィードバック室16へのフィードバック油圧の供給が遮断される。
【0037】
次いで、図2に示すように、フィードバック油圧の遮断時から、予め設定された第1の設定時間が経過したとき、TCUはリニアソレノイド弁1のソレノイド5へ供給する電流を低下させる。フィードバック油圧が遮断されると、フィードバック油圧による付勢が解除されるので、スプリング6による付勢力のみがスプール4に作用する。従って、フィードバック油圧を遮断することによりリニアソレノイド弁1のソレノイド5へ供給する電流を低下させることができる。
【0038】
具体的には、変速時(調圧動作時)及び定常走行状態(本実施形態では入力ポート7が全開)であるときのリニアソレノイド弁1の必要電流値は1.2Aであるのに対し、定常走行状態においてフィードバック油圧を遮断した状態のリニアソレノイド弁1の必要電流値は0.4Aに低下する。これにより、定常走行状態におけるリニアソレノイド弁1の消費電力を低減させることができる。
【0039】
なお、リニアソレノイド弁1のソレノイド5へ供給する電流を低下させたとき、TCUは、定常走行時のギヤレシオによりクラッチCLの滑り発生を監視し、クラッチCLに滑りが発生しない電流をソレノイド5へ供給する制御も行っている。これにより、消費電力を低減させながら、変速機構の動力伝達ロスを防止して確実に必要クラッチ圧が保持できる。
【0040】
その後、3速段(3rd)による定常走行を経て、3速段(3rd)から4速段(4th)へのシフトアップが指示されると、図2に示すように、TCUは、当該シフトアップ動作に先立って、リニアソレノイド弁1のソレノイド5へ供給する電流を3速段(3rd)が確立されたときと同じ電流に上昇させる。
【0041】
次いで、予め設定された第2の設定時間が経過した時点で切換弁2のソレノイド2aへの通電を開始する。これにより、切換弁2のスプール2bが作動位置に移動し、図2に示すように、フィードバック室16へのフィードバック油圧の供給が復帰する。
【0042】
更に、リニアソレノイド弁1のソレノイド5へ供給する電流を上昇させてから、切換弁2のスプール2bが作動位置に移動するまでの間(少なくとも切換弁2が切り換え動作を開始する直前から切り換え動作が完了するまでの間)に、TCUは、図2に示すように、ライン圧PLを所定圧まで昇圧させる。ライン圧PLの昇圧は前記レギュレータ弁(図示省略)により行われる。
【0043】
フィードバック室16におけるフィードバック油圧が復帰すると、リニアソレノイド弁1のスプール4に付与される付勢力が急激に増加するため、リニアソレノイド弁1の出力油圧が極度に低下するおそれがあるが、フィードバック室16におけるフィードバック油圧の復帰に先立ってライン圧PLを昇圧させておくことにより、フィードバック油圧の復帰に伴うリニアソレノイド弁1の出力油圧の低下を抑えることができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、クラッチCLの係合状態が維持されている3速段(3rd)による定常走行状態のときに切換弁2によりフィードバック油圧を遮断状態とする例を挙げたが、フィードバック油圧を遮断状態とするのはリニアソレノイド弁1による調圧動作が不要であるときであればよく、例えば、リニアソレノイド弁1の入力ポート7を全開とした状態が維持されているときであってもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、3速段による定常走行状態でのリニアソレノイド弁1におけるフィードバック油圧の遮断のみを説明したが、本発明は、変速機構により確立される各変速段による定常走行状態の全てで当該フィードバック油圧の遮断を行ってもよく、或いは、何れかの変速段を選択してその定常走行状態のときに当該フィードバック油圧の遮断を行ってもよい。
【0046】
また、変速機構においては、複数の変速段に対応して複数のクラッチCL及び各クラッチを制御する複数のリニアソレノイド弁1が設けられるため、一つのリニアソレノイド弁1に対して一つの切換弁2を設けてもよいが、より好ましくは、例えば、図3に模式的に示すように、複数のクラッチCL1,CL2,CL3を制御する複数のリニアソレノイド弁(第1リニアソレノイド弁1a、第2リニアソレノイド弁1b、及び第3リニアソレノイド弁1c)の各フィードバック用油路17a,17b,17cに対して単一の切換弁20を設けることができる。
【0047】
切換弁20は、ノーマルクローズタイプのものを採用し、単一のソレノイド20aによりスプール20bを移動させて複数の油路を切り換える。これにより、部品点数(切換弁の数)の増加を防止してコストを低減させることができるだけでなく、複数のリニアソレノイド弁に対応する複数の切換弁2を設けた場合に比べて変速動作に際して切換弁20を駆動するための電力消費を低減させることができる。
【0048】
即ち、図3において、1速段(Low)から2速段(2nd)へ変速する場合には、1速段に対応するクラッチCL1に供給する油圧を第1リニアソレノイド弁1aにより調圧してクラッチCL1による係合を解除し、且つ、2速段に対応するクラッチCL2に供給する油圧を第2リニアソレノイド弁1bにより調圧してクラッチCL2を係合させる動作を行う。
【0049】
このとき、第1リニアソレノイド弁1aと第2リニアソレノイド弁1bとの両方へのフィードバック油圧の供給(フィードバック用油路17aと17bの開弁動作)は単一の切換弁20(単一のソレノイド20a)への電力給電のみで行うことができる。前記切換弁2のソレノイド2aと切換弁20のソレノイド20aとは同じ作動電圧(本実施形態においては0.8A)であるから、単一の切換弁20への給電のみであれば、変速時に2つの切換弁2を作動状態とするのに比べ電力消費を低減させることができる。2速段(2nd)から3速段(3rd)へ変速する場合も同様である。
【符号の説明】
【0050】
CL,CL1,CL2,CL3…クラッチ(油圧係合要素)、1,1a,1b,1c…リニアソレノイド弁(電磁式油圧制御弁)、2,20…切換弁、5…ソレノイド、15…調圧室、16…フィードバック室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧係合要素の作動により変速段を成立させる変速機構を備える自動変速機に設けられ、油圧供給源から供給されるライン圧を調圧して前記油圧係合要素に供給する電磁式油圧制御弁と、該電磁式油圧制御弁の作動を制御するコントローラとを備える油圧制御装置であって、
前記電磁式油圧制御弁が、前記コントローラによる制御に応じて開弁方向に駆動力を発生させるソレノイドと、該ソレノイドの駆動による開弁度合いによりライン圧の導入量を変化させて調圧した出力油圧を生成する調圧室と、該調圧室から導出された出力油圧の一部をフィードバック油圧として導入し閉弁方向への付勢力を発生させるフィードバック室とを備えるものにおいて、
前記電磁式油圧制御弁のフィードバック室へフィードバック油圧を供給する供給状態とこのフィードバック油圧を断つ遮断状態とに切換自在に構成された切換弁を設け、
前記コントローラは、前記電磁式油圧制御弁による調圧動作が不要であるとき、前記切換弁によりフィードバック油圧を遮断状態とすることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記電磁式油圧制御弁の出力油圧により前記油圧係合要素の係合状態が維持されているとき、前記切換弁によりフィードバック油圧を前記遮断状態とすることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記切換弁によりフィードバック油圧を前記遮断状態から前記供給状態に切り換えるとき、少なくとも該切換弁が切り換え動作を開始する直前から切り換え動作が完了するまでの間、前記ライン圧を昇圧させることを特徴とする請求項1又は2記載の自動変速機の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−256884(P2011−256884A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129048(P2010−129048)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】