説明

自動変速機

【課題】自動変速機のフリクションロスを抑制する。
【解決手段】自動変速機は3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3と、4つのクラッチC1〜C4と、2つのブレーキB1,B2と、2つのギヤ列G1,G2を備える。第1要素Saと第4要素Sbとが、第6要素Rbと第7要素Scと第1駆動ギヤG1aとが、第3要素Raと入力軸2とが、第9要素Rcと第2駆動ギヤG2aとが、第2従動ギヤG2bと出力軸3とが夫々連結される。第1クラッチC1は第2要素Caと第2連結体Rb−Scとを、第2クラッチC2は第1従動ギヤG1bと出力軸3とを、第3クラッチC3は第3要素Raと第8要素Ccとを、第4クラッチC4は第3要素Raと第2要素Caとを夫々連結自在に構成される。第1ブレーキB1は第1連結体Sa−Sbを、第2ブレーキB2は第5要素Cbを、夫々変速機ケース1に固定自在に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転を変速機ケース内に配置した複数の遊星歯車機構を介して複数段に変速して出力部材から出力する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力用の第1遊星歯車機構と変速用の第2と第3の2つの遊星歯車機構と6つの係合機構とを用いて、前進8段の変速を行うことができるようにした自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のものでは、入力用の遊星歯車機構を、第1サンギヤと、第1リングギヤと、互いに噛合すると共に一方が第1サンギヤに噛合し他方が第1リングギヤに噛合する一対の第1ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第1キャリアとからなるいわゆるダブルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定した場合、サンギヤとリングギヤが同一方向に回転するため、プラス遊星歯車機構又はポジティブ遊星歯車機構ともいう。因みに、リングギヤを固定した場合には、サンギヤとキャリアとが互いに異なる方向に回転する。)で構成している。
【0004】
第1遊星歯車機構は、第1サンギヤが変速機ケースに固定される固定要素、第1キャリアが入力軸に連結される入力要素、第1リングギヤが入力要素たる第1キャリアの回転速度を減速して出力する出力要素とされている。
【0005】
又、変速用の2つの遊星歯車機構は、第2サンギヤと、第3サンギヤと、第3リングギヤと一体化された第2リングギヤと、互いに噛合すると共に一方が第2サンギヤ及び第2リングギヤに噛合し他方が第3サンギヤに噛合する一対の第2ピニオンを自転及び公転自在に軸支する第2キャリアとからなるラビニヨ型の遊星歯車機構で構成されている。
【0006】
このラビニヨ型の遊星歯車機構は、共線図(各回転要素の相対速度の比を直線で表すことができる図)においてギヤ比に対応する間隔を存して順に、第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素及び第4回転要素とすると、第1回転要素は第2サンギヤ、第2回転要素は第3キャリアと一体化された第2キャリア、第3回転要素は第3リングギヤと一体化された第2リングギヤ、第4回転要素は第3サンギヤとなる。
【0007】
又、係合機構として、第1遊星歯車機構の出力要素たる第1リングギヤと第3サンギヤから成る第4回転要素とを解除自在に連結する第1湿式多板クラッチと、入力軸と第2キャリアから成る第2回転要素とを解除自在に連結する第2湿式多板クラッチと、出力要素たる第1リングギヤと第2サンギヤから成る第1回転要素とを解除自在に連結する第3湿式多板クラッチと、入力要素たる第1キャリアと第2サンギヤから成る第1回転要素とを解除自在に連結する第4湿式多板クラッチと、第2サンギヤから成る第1回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第1ブレーキと、第2キャリアから成る第2回転要素を変速機ケースに解除自在に固定する第2ブレーキとを備える。
【0008】
以上の構成によれば、第1湿式多板クラッチと第2ブレーキとを係合することで1速段が確立され、第1湿式多板クラッチと第1ブレーキとを係合することで2速段が確立され、第1湿式多板クラッチと第3湿式多板クラッチとを係合することで3速段が確立され、第1湿式多板クラッチと第4湿式多板クラッチとを係合することで4速段が確立される。
【0009】
又、第1湿式多板クラッチと第2湿式多板クラッチとを係合することで5速段が確立され、第2湿式多板クラッチと第4湿式多板クラッチとを係合することで6速段が確立され、第2湿式多板クラッチと第3湿式多板クラッチとを係合することで7速段が確立され、第2湿式多板クラッチと第1ブレーキとを係合することで8速段が確立される。
【0010】
又、従来の自動変速機は、入力軸の軸線上に8つの列を構成する。具体的には、トルクコンバータ側から順に、第1列が第4クラッチ及び第1ブレーキ、第2列が第1遊星歯車機構、第3列が第1クラッチ、第4列が第3クラッチ(第3クラッチは、スケルトン図上では、第1遊星歯車機構と同列に見えるが、実際には、第1クラッチと出力ギヤとの間に第3クラッチ用のピストンと油路とが構成されるため。)、第5列が出力ギヤ、第6列が第2遊星歯車機構、第7列が第3遊星歯車機構、第8列が第2クラッチ及び第2ブレーキとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−273768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来例のものでは、各変速段において係合する係合機構の数が2つになる。そのため、開放している残りの4つの係合機構の引き摺りによるフリクションロスが大きくなり、自動変速機の効率が悪化する不具合がある。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑み、フリクションロスを低減できる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、変速機ケース内に回転自在に軸支されると共に駆動源からの動力により回転される入力軸と、該入力軸に平行に配置された出力軸とを備え、前記入力軸の回転を複数段に変速して前記出力軸から出力する自動変速機であって、サンギヤ、キャリア及びリングギヤからなる3つの要素を夫々有する第1から第3の3つの遊星歯車機構と、第1駆動ギヤと該第1駆動ギヤに噛合する第1従動ギヤを有する第1ギヤ列と、第2駆動ギヤと該第2駆動ギヤに噛合する第2従動ギヤとを有し前記第1ギヤ列よりギヤ比が小さく設定された第2ギヤ列とを備え、前記第1遊星歯車機構の3つの要素を、相対回転速度比を直線で表すことができる共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、前記第2遊星歯車機構の3つの要素を、前記共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、前記第3遊星歯車機構の3つの要素を、前記共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、前記第1要素と前記第4要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第6要素と前記第7要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第3要素が前記入力軸に連結される。
【0015】
そして、前記第1ギヤ列の第1駆動ギヤは前記第2連結体に固定又は軸支され、前記第1ギヤ列の第1従動ギヤは前記出力軸に軸支又は固定され、前記第2ギヤ列の第2駆動ギヤは前記第9要素に固定され、前記第2ギヤ列の第2従動ギヤは前記出力軸に固定され、係合機構として、前記第2要素と前記第2連結体とを連結自在な第1クラッチと、前記第1駆動ギヤと前記第1従動ギヤとのうち前記第2連結体又は前記出力軸に軸支されるギヤを、当該ギヤを軸支する前記第2連結体又は前記出力軸に連結自在な第2クラッチと、前記第3要素と前記第8要素とを連結自在な第3クラッチと、前記第1遊星歯車機構の第1から第3の3つの要素のうち何れか2つを連結自在な第4クラッチと、前記第1連結体を前記変速機ケースに固定自在な第1ブレーキと、前記第5要素を前記変速機ケースに固定自在な第2ブレーキとを備え、前記第1から第4の4つのクラッチと、前記第1と第2の2つのブレーキの合計6つの係合機構のうち、少なくとも3つの係合機構を連結状態又は固定状態とすることにより、各変速段を確立することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、4つのクラッチと2つのブレーキの合計6つの係合機構のうち、各変速段において3つの係合機構が係合して連結状態又は固定状態となる。そのため、各変速段で連結及び固定状態でなく開放される係合機構の数は3つになり、従来のように各変速段で4つの係合機構が開放されるものに比し、開放されている係合機構によるフリクションロスを低減でき、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0017】
又、本発明では、入力軸と平行に配置された出力軸を設け、第1と第2の2つのギヤ列のうち少なくとも一方のギヤ列を介して出力軸へ駆動力を伝達している。このため、第1と第2の2つのギヤ列に代えて、入力軸と同心の第4の遊星歯車機構と、第4の遊星歯車機構の何れかの要素の回転を出力軸に伝達させる1つのギヤ列とを設けた場合に比し、第4の遊星歯車機構のギヤの噛合による駆動力の伝達ロスがないため、駆動力の伝達効率を向上させることができる。
【0018】
又、入力軸の回転は、第1ギヤ列又は第2ギヤ列を介して出力軸に伝達される。このため、2つのギヤ列のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)を調節することで各変速段のギヤレシオを容易に変更でき、各変速段のギヤレシオの設定自由度が向上される。
【0019】
[2]本発明においては、第1従動ギヤを出力軸に軸支し、第1駆動ギヤを第2連結体に固定し、入力軸の軸線上に一方から、第3遊星歯車機構、第1クラッチ、第1遊星歯車機構、第4クラッチ、第2遊星歯車機構、第1ギヤ列の第1駆動ギヤ、第2ギヤ列の第2駆動ギヤの順に配置し、第3クラッチを第1クラッチの径方向外方に配置し、第1ブレーキを第4クラッチの径方向外方に配置し、第2ブレーキを第2遊星歯車機構の径方向外方に配置し、第2クラッチを第2遊星歯車機構及び前記第2ブレーキと対応する位置で出力軸上に配置することもできる。
【0020】
かかる構成によれば、入力軸の軸線上において、第1クラッチと第3クラッチとが、第4クラッチと第1ブレーキとが、第2遊星歯車機構と第2ブレーキと第2クラッチとが、夫々同一位置に配置される。このため、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができ、車両(特にFF式の車両)への搭載性を向上させることができる。
【0021】
又、第1ブレーキを第1遊星歯車機構の径方向外方に配置し、第2ブレーキを第4クラッチの径方向外方に配置し、第2クラッチを第2遊星歯車機構と対応する位置で出力軸上に配置することもできる。かかる構成によっても、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができる。又、第2クラッチや第2ブレーキとして径方向の寸法が比較的大きなものを用いても、第2クラッチと第2ブレーキとが径方向で重ならないため、自動変速機の径方向のサイズが大きくなることを防止できる。
【0022】
[3]本発明においては、第1クラッチを噛合機構で構成することが好ましい。これによれば、フリクションロスをより低減させることができる。
【0023】
[4]本発明においては、第2クラッチを噛合機構で構成することが好ましい。これによれば、フリクションロスをより低減させることができる。又、第2クラッチが出力軸上に設けられる場合には、噛合機構のスリーブを移動させるシフトフォークのレイアウト自由度が向上される。
【0024】
[5]本発明においては、第1から第3の3つの遊星歯車機構を、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤ及びリングギヤと噛合するピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなる所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定した場合、サンギヤとリングギヤとが互いに異なる方向に回転するため、マイナス遊星歯車機構又はネガティブ遊星歯車機構ともいう。因みに、リングギヤを固定した場合には、サンギヤとキャリアとが同一方向に回転する。)で構成することが好ましい。
【0025】
これによれば、遊星歯車機構を、サンギヤと、リングギヤと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤに噛合し他方がリングギヤに噛合する一対のピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなる所謂ダブルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定した場合、サンギヤとリングギヤが同一方向に回転するため、プラス遊星歯車機構又はポジティブ遊星歯車機構ともいう。因みに、リングギヤを固定した場合、サンギヤとキャリアが互いに異なる方向に回転する。)で構成した場合に比し、入力軸から出力部材までの間の動力が伝達される経路における、ギヤが噛み合う個所を減少させることができ、伝達効率をより向上させることができる。
【0026】
[6]本発明においては、駆動源の動力を入力軸に伝達自在な発進クラッチを設けてもよい。
【0027】
[7]本発明においては、駆動源の動力をトルクコンバータを介して入力軸に伝達させるように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の自動変速機を示すスケルトン図。
【図2】実施形態の自動変速機の第1〜第3遊星歯車機構の各要素の相対回転速度の比を示す共線図。
【図3】実施形態の自動変速機の変速段毎における各係合機構の状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の自動変速機の実施形態を示している。本実施形態の自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外の内燃機関(エンジン)等の駆動源ENGが出力する駆動力がロックアップクラッチLC及びダンパDAを有するトルクコンバータTCを介して伝達される入力軸2と、入力軸2と平行に配置された出力軸3とを備えている。出力軸3の回転は、図外のデファレンシャルギヤやプロペラシャフトを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。尚、トルクコンバータTCに代えて、摩擦係合自在に構成される単板型又は多板型の発進クラッチを設けてもよい。
【0030】
又、変速機ケース1内には、第1〜第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜3が入力軸2と同心に配置されている。
【0031】
第1遊星歯車機構PGS1は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとから成る所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定した場合、サンギヤとリングギヤが互いに異なる方向に回転するため、マイナス遊星歯車機構又はネガティブ遊星歯車機構ともいう。因みに、リングギヤを固定した場合には、サンギヤとキャリアとが同一方向に回転する。)で構成されている。
【0032】
図2の上段に示す第1遊星歯車機構PGS1の共線図(サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの要素の相対回転速度の比を直線(速度線)で表すことができる図)を参照して、第1遊星歯車機構PGS1の3つの要素Sa,Ca,Raを、共線図におけるギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaになる。
【0033】
ここで、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比をhとして、h:1に設定される。尚、共線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0034】
第2遊星歯車機構PGS2も、サンギヤSbと、リングギヤRbと、サンギヤSb及びリングギヤRbに噛合するピニオンPbを自転及び公転自在に軸支するキャリアCbとから成る所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
【0035】
図2の中段に示す第2遊星歯車機構PGS2の共線図を参照して、第2遊星歯車機構PGS2の3つの要素Sb,Cb,Rbを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSb、第5要素はキャリアCb、第6要素はリングギヤRbになる。サンギヤSbとキャリアCb間の間隔とキャリアCbとリングギヤRb間の間隔との比は、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比をiとして、i:1に設定される。
【0036】
第3遊星歯車機構PGS3も、サンギヤScと、リングギヤRcと、サンギヤSc及びリングギヤRcに噛合するピニオンPcを自転及び公転自在に軸支するキャリアCcとから成る所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成される。
【0037】
図2の下段に示す第3遊星歯車機構PGS3の共線図を参照して、第3遊星歯車機構PGS3の3つの要素Sc,Cc,Rcを、共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はサンギヤSc、第8要素はキャリアCc、第9要素はリングギヤRcになる。サンギヤScとキャリアCc間の間隔とキャリアCcとリングギヤRc間の間隔との比は、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0038】
又、本実施形態の自動変速機では、第1遊星歯車機構PGS1のサンギヤSa(第1要素)と第2遊星歯車機構PGS2のサンギヤSb(第4要素)とが連結されて、第1連結体Sa−Sbが構成されている。又、第2遊星歯車機構PGS2のリングギヤRb(第6要素)と第3遊星歯車機構PGS3のサンギヤSc(第7要素)とが連結されて、第2連結体Rb−Scが構成されている。又、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)は入力軸2に連結されている。
【0039】
又、本実施形態の自動変速機は、第1駆動ギヤG1aとこの第1駆動ギヤG1aに噛合する第1従動ギヤG1bとからなる第1ギヤ列G1と、第2駆動ギヤG2aとこの第2駆動ギヤG2aに噛合する第2従動ギヤG2bとからなる第2ギヤ列G2とを備える。第1ギヤ列G1のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)をmとし、第2ギヤ列G2のギヤ比をnとすると、本実施形態においては、両ギヤ比はm>nとなるように設定されている。
【0040】
第1駆動ギヤG1aは第2連結体Rb−Scに連結・固定され、第1従動ギヤG1bは出力軸3に回転自在に軸支されている。第2駆動ギヤG2aは第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)に連結・固定され、第2従動ギヤG2bは出力軸3に連結・固定されている。
【0041】
又、本実施形態の自動変速機は、係合機構として、第1から第4の4つのクラッチC1〜C4と、第1と第2の2つのブレーキB1,B2とを備える。
【0042】
第1クラッチC1は、ドグクラッチ又は同期機能を有するシンクロメッシュ機構からなる噛合機構であり、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2連結体Rb−Scとを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。尚、第1クラッチC1を湿式多板クラッチで構成してもよい。
【0043】
第2クラッチC2は、ドグクラッチ又は同期機能を有するシンクロメッシュ機構からなる噛合機構であり、第1従動ギヤG1bを出力軸3に連結・固定する連結状態と、この連結・固定を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。出力軸3上に配置される第2クラッチC2を噛合機構で構成すれば、出力軸3上には、他のクラッチや遊星歯車機構が配置されていないため、スリーブを移動させるシフトフォークを比較的自由に配置することができ、シフトフォークのレイアウト自由度が向上される。尚、第2クラッチC2は湿式多板クラッチで構成してもよい。
【0044】
第3クラッチC3は、湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。第4クラッチC4は、湿式多板クラッチであり、第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)とキャリアCa(第2要素)とを連結する連結状態と、この連結を断つ開放状態とに切換自在に構成されている。
【0045】
尚、本発明の第4クラッチC4は、上記の構成に限らず、第1遊星歯車機構PGS1の第1から第3の3つの要素Sa,Ca,Raのうち何れか2つの要素を連結自在に構成されていればよい。
【0046】
第1ブレーキB1は、湿式多板ブレーキであり、第1連結体Sa−Sbを変速機ケース1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。第2ブレーキB2は、湿式多板ブレーキであり、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)を変速機ケース1に固定する固定状態と、この固定を解除する開放状態とに切換自在に構成されている。
【0047】
各クラッチC1〜C4及び各ブレーキB1,B2は、図外のトランスミッション・コントロール・ユニットにより、走行速度等の車両情報に基づいて、状態が切り換えられる。
【0048】
入力軸2の軸線上には、駆動源ENG及びトルクコンバータTC側から、第3遊星歯車機構PGS3、第1クラッチC1、第1遊星歯車機構PGS1、第4クラッチC4、第2遊星歯車機構PGS2、第1駆動ギヤG1a、第2駆動ギヤG2aの順番で配置されている。第3クラッチC3は第1クラッチC1の径方向外方に配置されている。又、第1ブレーキB1は、第4クラッチC4の径方向外方に配置されている。又、第2ブレーキB2は第2遊星歯車機構PGS2の径方向外方に配置されている。又、第2クラッチC2は第2遊星歯車機構PGS2と対応する位置で出力軸3上に配置されている。このように構成することにより、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができ、車両(特にFF式の車両)への搭載性を向上させることができる。
【0049】
尚、第1ブレーキB1を第1遊星歯車機構PGS1の径方向外方に配置し、第2ブレーキB2を第4クラッチC4の径方向外方に配置し、第2クラッチC2を第2遊星歯車機構PGS2と対応する位置で出力軸3上に配置してもよい。これによっても、自動変速機の軸長の短縮化を図ることができる。又、第2クラッチC2や第2ブレーキB2として径方向の寸法が比較的大きなものを用いても、第2クラッチC2と第2ブレーキB2とが径方向で重ならないため、自動変速機の径方向のサイズが大きくなることを防止できる。
【0050】
変速機ケース1には、第1駆動ギヤG1aと第2遊星歯車機構PGS2との間に位置させて、径方向内方へ延びる側壁1aが設けられている。この側壁1aには、軸方向に向かって延びて第1駆動ギヤG1aの径方向内方に位置する筒状部1bが設けられている。第1駆動ギヤG1aは筒状部1bにベアリングを介して回転自在に軸支されている。このように構成することにより、変速機ケース1に連なる機械的強度の高い筒状部1bで第1駆動ギヤG1aをしっかりと軸支させることができる。
【0051】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態の自動変速機の各変速段を確立させる場合を説明する。
【0052】
1速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを連結状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とする。第2ブレーキB2を固定状態とすることにより、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)の回転速度が「0」になる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2連結体Rb−Scとが同一速度で回転する。又、第2クラッチC2を連結状態とすることにより、出力軸3が第2連結体Rb−Scの回転速度の1/mで回転する。そして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「1st」となり、1速段が確立される。
【0053】
2速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを連結状態とし、第1ブレーキB1を固定状態とする。第1ブレーキB1を固定状態とすることで、第1連結体Sa−Sbの回転速度が「0」になる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2連結体Rb−Scとが同一速度で回転する。又、第2クラッチC2を連結状態とすることにより、出力軸3が第2連結体Rb−Scの回転速度の1/mで回転する。そして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「2nd」となり、2速段が確立される。
【0054】
3速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第4クラッチC4とを連結状態とする。第4クラッチC4を連結状態とすることで、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)がリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転し、第1遊星歯車機構PGS1の第1から第3の3つの要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第2連結体Rb−Scが第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と同一速度の「1」で回転する。又、第2クラッチC2を連結状態とすることにより、出力軸3が第2連結体Rb−Scの回転速度の1/mで回転する。そして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「3rd」となり、3速段が確立される。
【0055】
4速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3とを連結状態とする。第2クラッチC2を連結状態とすることで、第2連結体Rb−Scは、第1ギヤ列G1、出力軸3、第2ギヤ列G2を介して第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)と連結され、第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度のm/nで回転する。又、第3クラッチC3を連結状態とすることで、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。そして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「4th」となり、4速段が確立される。
【0056】
尚、4速段においては第1クラッチC1は必ずしも連結状態とする必要はなく、開放状態としても4速段を確立することができるが、第1クラッチC1は3速段及び後述する5速段において連結状態とする必要があるため、4速段からの変速をスムーズに行うことができるように、4速段においても連結状態とすることが好ましい。
【0057】
5速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第3クラッチC3と第4クラッチC4とを連結状態とする。第4クラッチC4を連結状態とすることで、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)がリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転し、第1遊星歯車機構PGS1の第1から第3の3つの要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第2連結体Rb−Scが第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と同一速度の「1」で回転する。又、第3クラッチC3を連結状態とすることにより、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。第3遊星歯車機構PGS3は、サンギヤSc(第7要素)とキャリアCc(第8要素)とが同一速度の「1」で回転することとなり、第7から第9の3つの要素Sc,Cc,Rcが相対回転不能なロック状態となって、リングギヤRc(第9要素)の回転速度も「1」となる。そして、出力軸3が第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度の1/nで回転する。このようにして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「5th」となり、5速段が確立される。
【0058】
6速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第3クラッチC3とを連結状態とし、第1ブレーキB1を固定状態とする。第1ブレーキB1を固定状態とすることで、第1連結体Sa−Sbの回転速度が「0」になる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2連結体Rb−Scとが同一速度で回転する。又、第3クラッチC3を連結状態とすることにより、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。そして、出力軸3が第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度の1/nで回転する。このようにして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「6th」となり、6速段が確立される。
【0059】
7速段を確立させる場合には、第1クラッチC1と第3クラッチC3とを連結状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とする。第2ブレーキB2を固定状態とすることにより、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)の回転速度が「0」になる。又、第1クラッチC1を連結状態とすることにより、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)と第2連結体Rb−Scとが同一速度で回転する。又、第3クラッチC3を連結状態とすることにより、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。そして、出力軸3が第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度の1/nで回転する。このようにして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「7th」となり、7速段が確立される。
【0060】
8速段を確立させる場合には、第3クラッチC3を連結状態とし、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2を固定状態とする。第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2を固定状態とすることで、第1連結体Sa−Sbと第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)との回転速度が同一速度の「0」となる。従って、第2遊星歯車機構PGS2の第4から第6の3つの要素Sb,Cb,Rbが相対回転不能なロック状態となり、第2連結体Rb−Scの回転速度も「0」になる。又、第3クラッチC3を連結状態とすることにより、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。そして、出力軸3が第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度の1/nで回転する。このようにして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「8th」となり、8速段が確立される。
【0061】
9速段を確立させる場合には、第3クラッチC3と第4クラッチC4とを連結状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とする。第4クラッチC4を連結状態とすることで、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)がリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転し、第1遊星歯車機構PGS1の第1から第3の3つの要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。又、第2ブレーキB2を固定状態とすることにより、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)の回転速度が「0」になる。又、第3クラッチC3を連結状態とすることにより、第3遊星歯車機構PGS3のキャリアCc(第8要素)が第1遊星歯車機構PGS1のリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転する。そして、出力軸3が第3遊星歯車機構PGS3のリングギヤRc(第9要素)の回転速度の1/nで回転する。このようにして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「9th」となり、9速段が確立される。
【0062】
後進段を確立させる場合には、第2クラッチC2と第4クラッチC4とを連結状態とし、第2ブレーキB2を固定状態とする。第4クラッチC4を連結状態とすることで、第1遊星歯車機構PGS1のキャリアCa(第2要素)がリングギヤRa(第3要素)と同一速度の「1」で回転し、第1遊星歯車機構PGS1の第1から第3の3つの要素Sa,Ca,Raが相対回転不能なロック状態となる。又、第2ブレーキB2を固定状態とすることにより、第2遊星歯車機構PGS2のキャリアCb(第5要素)の回転速度が「0」になる。又、第2クラッチC2を連結状態とすることにより、出力軸3が第2連結体Rb−Scの回転速度の1/mで回転する。そして、第1から第3の3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3の各速度線が図2に示す「Rvs」となり、逆転(車両が後進する方向の回転)の後進段が確立される。
【0063】
尚、図2中の点線で示す速度線は、3つの遊星歯車機構PGS1〜PGS3のうち動力伝達する遊星歯車機構に追従して他の遊星歯車機構の各要素が回転(空回り)することを表している。
【0064】
図3(a)は、上述した各変速段におけるクラッチC1〜C4、ブレーキB1,B2の状態を纏めて表示した図であり、クラッチC1〜C4及びブレーキB1,B2の列の「○」は連結状態又は固定状態を示し、空欄は開放状態を示している。又、図3(b)には、図3(d)に示すように、第1遊星歯車機構PGS1のギヤ比hを2.500、第2遊星歯車機構PGS2のギヤ比iを2.600、第3遊星歯車機構PGS3のギヤ比jを1.700、第1ギヤ列G1のギヤ比mを2.110、第2ギヤ列G2のギヤ比nを1.020とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力軸3の回転速度)を示している。これによれば、図3(c)に示すように、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、図3(d)に示したレシオレンジ(1速段のギヤレシオ/最高速段である9速段のギヤレシオ)も適切になる。
【0065】
本実施形態の自動変速機によれば、前進9段の変速を行うことができる。又、各変速段において、湿式多板クラッチ及び湿式多板ブレーキの開放数が3つ以下となり、フリクションロスを抑制して、駆動力の伝達効率を向上させることができる。
【0066】
又、本実施形態の自動変速機では、入力軸2と平行に配置された出力軸3を設け、第1と第2の2つのギヤ列G1,G2のうち少なくとも一方のギヤ列を介して出力軸3へ駆動力を伝達している。このため、第1と第2の2つのギヤ列G1,G2に代えて、入力軸2と同心の第4の遊星歯車機構と、第4の遊星歯車機構の何れかの要素の回転を出力軸に伝達させる1つのギヤ列とを設けた場合に比し、第4の遊星歯車機構のギヤの噛合による駆動力の伝達ロスがないため、自動変速機の駆動力の伝達効率を向上させることができる。
【0067】
又、入力軸2の回転は、第1ギヤ列G1又は第2ギヤ列G2を介して出力軸3に伝達される。このため、2つのギヤ列G1,G2のギヤ比m,nを調節することで各変速段のギヤレシオを容易に変更でき、各変速段のギヤレシオの設定自由度が向上される。
【0068】
又、7速段を所定の中速段、1速段から所定の中速段たる7速段までを低速段域、所定の中速段たる7速段を超える8速段から9速段までを高速段域と定義して、所定の中速段たる7速段を超える8速段から9速段までの高速段域においては、湿式多板クラッチと比較してフリクションロスが少ない噛合機構で構成される第1クラッチC1が開放状態となる。
【0069】
又、1速段から4速段までと後進段とを除いた他の変速段(5速段から9速段)の全てで開放状態となる第2クラッチC2も噛合機構で構成されている。従って、高速段域においては、湿式多板クラッチ及び湿式多板ブレーキの開放数が1となり、車両の高速走行時におけるフリクションロスを低減させて燃費を向上させることができる。
【0070】
又、噛合機構からなる第1クラッチC1は、所定の中速段たる7速段と8速段との間で連結状態と開放状態とに切り換えられるのみである。7速段(所定の中速段)における第1クラッチC1での伝達トルク(伝達駆動力)は比較的小さいため、第1クラッチC1を噛合機構としてのドグクラッチで構成しても、7速段と8速段の間の変速時に連結状態と開放状態との切り換えをスムーズに行うことができる。
【0071】
又、全ての遊星歯車機構PGS1〜PGS3が所謂シングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されているため、サンギヤと、リングギヤと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤに噛合し他方がリングギヤに噛合する一対のピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなる所謂ダブルピニオン型の遊星歯車機構(キャリアを固定した場合、サンギヤとリングギヤが同一方向に回転するため、プラス遊星歯車機構又はポジティブ遊星歯車機構ともいう。因みに、リングギヤを固定した場合には、サンギヤとキャリアとが互いに異なる方向に回転する。)で構成されるものに比し、駆動力の伝達経路上におけるギヤの噛合回数を減少させることができ、伝達効率を向上させることができる。
【0072】
尚、本実施形態においては、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を噛合機構で構成したものを説明したが、両者を湿式多板クラッチで構成しても、各変速段における湿式多板クラッチ及び湿式多板ブレーキの開放数を3つ以下に抑え、フリクションロスを抑制することができるという本発明の効果を得ることができる。
【0073】
又、本実施形態の自動変速機においては前進9速段の変速を行うものを説明したが、これに限らず、何れか1つ以上の変速段を省略することにより、前進8速段以下の変速を行うように構成してもよい。例えば、何れか3つの変速段を省略して前進6速段の変速を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…変速機ケース、2…入力軸、3…出力軸、ENG…駆動源、LC…ロックアップクラッチ、DA…ダンパ、TC…トルクコンバータ、PGS1…第1遊星歯車機構、Sa…サンギヤ(第1要素)、Ca…キャリア(第2要素)、Ra…リングギヤ(第3要素)、Pa…ピニオン、PGS2…第2遊星歯車機構、Sb…サンギヤ(第4要素)、Cb…キャリア(第5要素)、Rb…リングギヤ(第6要素)、Pb…ピニオン、PGS3…第3遊星歯車機構、Sc…サンギヤ(第7要素)、Cc…キャリア(第8要素)、Rc…リングギヤ(第9要素)、Pc…ピニオン、G1…第1ギヤ列、G1a…第1駆動ギヤ、G1b…第1従動ギヤ、G2…第2ギヤ列、G2a…第2駆動ギヤ、G2b…第2従動ギヤ、C1〜C4…第1〜第4クラッチ、B1,B2…第1,第2ブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケース内に回転自在に軸支されると共に駆動源からの動力により回転される入力軸と、該入力軸に平行に配置された出力軸とを備え、前記入力軸の回転を複数段に変速して前記出力軸から出力する自動変速機であって、
サンギヤ、キャリア及びリングギヤからなる3つの要素を夫々有する第1から第3の3つの遊星歯車機構と、第1駆動ギヤと該第1駆動ギヤに噛合する第1従動ギヤを有する第1ギヤ列と、第2駆動ギヤと該第2駆動ギヤに噛合する第2従動ギヤとを有し前記第1ギヤ列よりギヤ比が小さく設定された第2ギヤ列とを備え、
前記第1遊星歯車機構の3つの要素を、相対回転速度比を直線で表すことができる共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、
前記第2遊星歯車機構の3つの要素を、前記共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、
前記第3遊星歯車機構の3つの要素を、前記共線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第7要素、第8要素及び第9要素として、
前記第1要素と前記第4要素とを連結して第1連結体が構成され、前記第6要素と前記第7要素とを連結して第2連結体が構成され、前記第3要素が前記入力軸に連結され、
前記第1ギヤ列の第1駆動ギヤは前記第2連結体に固定又は軸支され、前記第1ギヤ列の第1従動ギヤは前記出力軸に軸支又は固定され、前記第2ギヤ列の第2駆動ギヤは前記第9要素に固定され、前記第2ギヤ列の第2従動ギヤは前記出力軸に固定され、
係合機構として、
前記第2要素と前記第2連結体とを連結自在な第1クラッチと、
前記第1駆動ギヤと前記第1従動ギヤとのうち前記第2連結体又は前記出力軸に軸支されるギヤを、当該ギヤを軸支する前記第2連結体又は前記出力軸に連結自在な第2クラッチと、
前記第3要素と前記第8要素とを連結自在な第3クラッチと、
前記第1遊星歯車機構の第1から第3の3つの要素のうち何れか2つを連結自在な第4クラッチと、
前記第1連結体を前記変速機ケースに固定自在な第1ブレーキと、
前記第5要素を前記変速機ケースに固定自在な第2ブレーキとを備え、
前記第1から第4の4つのクラッチと、前記第1と第2の2つのブレーキの合計6つの係合機構のうち、少なくとも3つの係合機構を連結状態又は固定状態とすることにより、各変速段を確立することを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速機において、
前記第1従動ギヤは前記出力軸に軸支され、
前記第1駆動ギヤは前記第2連結体に固定され、
前記入力軸の軸線上に一方から、前記第3遊星歯車機構、前記第1クラッチ、前記第1遊星歯車機構、前記第4クラッチ、前記第2遊星歯車機構、前記第1ギヤ列の第1駆動ギヤ、前記第2ギヤ列の第2駆動ギヤの順に配置され、
前記第3クラッチは、前記第1クラッチの径方向外方に配置され、
前記第1ブレーキは、前記第4クラッチの径方向外方に配置され、
前記第2ブレーキは前記第2遊星歯車機構の径方向外方に配置され、
前記第2クラッチは前記第2遊星歯車機構及び前記第2ブレーキと対応する位置で前記出力軸上に配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動変速機において、
前記第1クラッチは噛合機構で構成されることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項記載の自動変速機において、
前記第2クラッチは噛合機構で構成されることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項記載の自動変速機において、
前記第1から第3の3つの遊星歯車機構は、サンギヤと、リングギヤと、サンギヤ及びリングギヤと噛合するピニオンを自転及び公転自在に軸支するキャリアとからなるシングルピニオン型の遊星歯車機構で構成されることを特徴とする自動変速機。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項記載の自動変速機において、
前記駆動源の動力を前記入力軸に伝達自在な発進クラッチが設けられることを特徴とする自動変速機。
【請求項7】
請求項1から請求項5の何れか1項記載の自動変速機において、
前記駆動源の動力は、トルクコンバータを介して前記入力軸に伝達されることを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127399(P2012−127399A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278447(P2010−278447)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】