説明

自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁

【課題】この発明は、隙間に詰まる異物や隙間に生成される生成物を二次側流路内の二次側加圧水の圧力制御時に弁部を流出する一次側加圧水とともに流出させ、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置および圧力調整弁を得る。
【解決手段】圧力調整弁500は、二次圧導入室58、二次圧導入室58に二次圧を導入する二次圧導入ポート59、一次圧導入室60、一次圧導入室60に一次圧を導入する一次圧導入ポート61、一次圧導入室を大気に開閉する弁体64および弁座66を有する弁ボディ57と、二次圧導入室59内の二次圧が所定圧力に達すると弁体64を弁座66から離反させて開弁し、二次圧導入室59内の二次圧が所定圧力未満であると弁体64を弁座66に当接させて閉弁させる弁駆動機構と、を備え、溝部67が弁座66に形成され、閉弁時に、一次圧導入室60と大気とを連通する所定の隙間を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高速自動車道等のトンネルに設置されて放水ヘッドに加圧水を供給して放水させる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の散水システムがトンネルに用いられる場合、トンネルの長手方向を所定の距離毎に区切って防火区画を設定し、火災発生時にその火元を含む防火区画を特定し、その防火区画の領域全体に散水する。この散水システムでは、加圧水供給源に接続された主配管が埋設されてトンネル内に敷設され、各防火区画において、分岐配管が主配管から分岐してトンネルの側壁に沿って立ち上がり、その先端に放水ヘッドが接続される。放水ヘッドは防火区画の大きさに合わせて必要な個数が設けられる。各分岐配管には、仕切り弁が設けられ、さらに、その二次側に自動弁装置が設けられる。この自動弁装置は、火災発生時に開いて放水ヘッドに加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッドへの加圧水の供給を停止させる。
【0003】
このような従来の自動弁装置は、放水ヘッドに加圧水を供給する自動弁と、自動弁の弁体を開閉駆動するアクチュエータと、アクチュエータに所定圧力に調整された駆動用の加圧水を供給する圧力調整弁と、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態で圧力調整弁を経由してアクチュエータの加圧水を排水させる自動排水弁と、などを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動弁装置においては、放水ヘッドからの放水が終了し、アクチュエータに対する加圧水の供給が停止した状態となると、アクチュエータ内の加圧水が、圧力調整弁内に入り、オリフィスを通って圧力調整弁の配管側の部屋に移動する。ついで、圧力調整弁から配管に流れ出し、配管内を流れて自動排水弁からドレインに排水され、アクチュエータ内の圧力が低下し、自動弁の弁体が閉じられる。
【0006】
この圧力調整弁内のオリフィスは、アクチュエータによる圧力調整時に、アクチュエータの動作に影響を及ぼさず、かつアクチュエータの加圧水を排水させるときに、過度の水撃を発生させないように、微小な隙間に調整されている。そこで、加圧水中の異物がオリフィスに詰まり、さらには生成物がオリフィスに生成され、最悪の場合には、自動弁の弁体が閉じられなくなるという不具合が発生する。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、自動弁の主弁を閉弁させるために作動室内の一次側加圧水を大気に流出させる隙間を、二次側流路内の二次側加圧水の圧力を所定圧力に制御するために作動室内の一次側加圧水を流出させる弁部に形成し、隙間に詰まる異物や隙間に生成される生成物を二次側流路内の二次側加圧水の圧力制御時に弁部を流出する一次側加圧水とともに流出させ、主弁が閉じられない事態の発生を回避できる自動弁装置およびそれに用いられる圧力調整弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による自動弁装置は、弁座により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記弁座に対して接離可能に上記一次側流路に配設された主弁、上記主弁を上記弁座に接する方向に付勢する付勢手段、上記二次側流路を介して上記主弁に対向し、かつ軸心方向を上記主弁の接離方向として上記胴本体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動自在に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室への一次側加圧水の供給により移動して上記主弁を開放させるピストンを有する自動弁と、二次圧導入室、一次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に対して開閉するとともに、閉じられているときに所定の隙間が形成されている弁部、および上記二次圧導入室内の圧力が所定圧力に達すると上記弁部を開弁させる弁駆動機構を有する圧力調整弁と、上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、上記第1配管の経路中に配設され、上記一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備えている。そして、上記圧力調整弁は、上記一次側加圧水が上記起動弁により上記第1配管を介して上記作動室に供給されている状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の上記二次側加圧水の圧力が上記所定圧力に達すると上記弁部を開けて上記作動室内の一次側加圧水を大気に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が上記所定圧力に達していないと上記弁部を閉じて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を高め、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が上記所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、上記一次側加圧水が上記起動弁により上記第1配管を介して上記作動室に供給されていない状態では、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管および上記一次圧導入室を介して上記隙間から大気に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、作動室内の一次側加圧水を流出させて主弁を閉弁させるための隙間が、二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力、即ち二次側流路内の二次側加圧水の圧力が所定圧力となるように、作動室内の一次側加圧水を大気に流出させる弁部に形成されている。そこで、一次側加圧水中の異物が隙間に入り込み、あるいは生成物が隙間に生成されても、自動弁装置が作動中には、弁部が開閉されるので、異物や生成物は弁部から流出する一次側加圧水の流れに繰り返し曝され、一次側加圧水とともに流出される。これにより、弁部に形成された隙間がふさがり、主弁の閉弁時間が長くなったり、主弁が閉じなくなるような事態の発生が未然に回避される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係る自動弁装置における低圧放水状態を説明する図である。
【図3】この発明に係る自動弁装置における規定圧放水状態を説明する図である。
【図4】この発明に係る自動弁装置における復旧時の状態を説明する図である。
【図5】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図である。
【図6】この発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を構成するプラグを示す上面図である。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の自動弁装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
図1はこの発明に係る自動弁装置を示す概略構成図である。
図1において、自動弁装置は、主弁7の開度を変化させて、一次側流路2から二次側流路3に流れる一次側加圧水の流量を調整する自動弁100と、一次側加圧水が供給されて、所定の遅延時間経過後に主弁7の開度を初期開度から設定開度に切り換える初期放水圧力制御弁200と、自動弁100の主弁7の主弁駆動機構および初期放水圧力制御弁200に一次側加圧水を供給して自動弁装置を起動する起動弁300と、二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したことを感知して主弁7の開度を設定開度に制御する圧力調整弁500と、自動弁100の二次側に配置され、放水ヘッドから放水時には開放し、放水ヘッドから放水せず、自動弁100のテストをするときなどに閉鎖する制水弁25と、二次側流路3内の二次側加圧水を排水する排水ユニット400と、自動弁100の二次側加圧水の圧力が低圧放水圧以上となると放水信号を監視室などに発信する圧力スイッチ20と、を備えている。
【0013】
この自動弁装置は、自動弁100の一次側流路2が主配管(図示せず)に接続され、二次側流路3が制水弁25を介して二次側配管15に接続され、放水ヘッド16が二次側配管15の先端に設けられている。この自動弁装置は、火災発生時に自動弁100が開いて放水ヘッド16に加圧水を供給し、鎮火後閉じて放水ヘッド16への加圧水の供給を停止させる。
【0014】
まず、自動弁100の構造について説明する。
自動弁100は、胴本体部1aと胴本体部1aの両側に同軸に相対して配設される一次側および二次側管路1b、1cとからなる胴体部1を備える。胴本体部1aは、同軸に配設された一次側および二次側管路1b,1cの軸心(以降、胴体部軸心とする)と直交する断面形状が円形であり、かつ該円形断面の直径が一次側管路1bから二次側管路1cに向かって徐々に大きくなり、最大値を経て徐々に小さくなる外形形状の膨出体形状に作製されている。
【0015】
隔離壁4が胴体部1内を一次側流路2と二次側流路3とに区画するように配設されている。連通孔5が一次側流路2と二次側流路3とを連通するように隔離壁4に穿設されている。一次側流路2には、一次側加圧水が一次側管路1bを介して供給され、二次側流路3は、二次側管路1cを介して二次側配管15に接続される。円筒状のシリンダ6が、軸心を連通孔5の孔中心に一致させて、かつ、二次側流路3を挟んで連通孔5と相対して、二次側流路3に開口するように胴本体部1aに形成されている。このシリンダ6は、シリンダ6の軸心を胴体部1の軸心と直交させて胴本体部1aの円形断面が最大径の部位に突設されている。
【0016】
主弁7が胴体部1の一次側流路2内に連通孔5の外周縁部に形成される弁座4aに胴体部1の軸心と直交する方向に接離自在に配設されている。また、付勢手段としてのスプリング8が主弁7を二次側流路3側に押圧するように一次側流路2内に縮設されている。これにより、主弁7が弁座4aに密接し、一次側流路2と二次側流路3との間の流路を閉止している。
ピストン9がシリンダ6内に摺動自在に挿入され、Oリング10がピストン9の外周部に嵌装されて、シリンダ6内が二次側流路3側のピストン室6aと二次側流路3と反対側の作動室6bとに区画されている。さらに、ステム11が、一端をピストン9の中心位置に固着され、他端を主弁7の中心位置に嵌着されて、その軸心がシリンダ6の軸心に一致するように取り付けられている。ここで、シリンダ6、スプリング8、ピストン9およびステム11などにより主弁駆動機構が構成されている。そして、シリンダ6の軸心が主弁7の接離方向に一致している。
【0017】
円筒状のケース12が、シリンダ6の作動室6bに開口するように、シリンダ6の軸心と同軸に取り付けられている。そして、有底円筒状のリフト設定アジャスタ13が、ケース12の他端側内壁面に進退自在に装着されている。また、シャフト14の一端がピストン9に固着され、他端側がアジャスタ13内に挿入されて、シリンダ6の軸心に一致するように配設されている。そして、シャフト14はピストン9の移動に連動して、シリンダ6の軸心方向に移動する。このとき、シャフト14の他端側に形成された大径部14aがアジャスタ13の内壁面を摺動移動する。
【0018】
なお、アジャスタ13のケース12に対する進退量を変えることで、初期状態から大径部14aがアジャスタ13から抜ける(大径部14aとアジャスタ13の内壁面との摺動関係がなくなる)までのピストン9のストローク量が変えられる。つまり、アジャスタ13のケース12に対する進退量を調整することで、主弁7の初期開度が調整される。
【0019】
つぎに、初期放水圧力制御弁200の構造について説明する。
それぞれ有底円筒状に形成された一対の第1および第2シリンダ30,31が、開口を相対してセパレータ32を挟持して締着固定されている。そして、有底円筒状に形成された第1ピストン33が、開口をセパレータ32に向けて第1シリンダ30内に摺動可能に配設されている。さらに、有底円筒状に形成された第2ピストン34が、開口をセパレータ32に向けて第1ピストン33内に配設されている。そして、作動スプリング35が、第1ピストン33の内底面と第2ピストン34の開口縁部から径方向外側に突設されたフランジ部34aとの間に配設されている。さらに、復帰スプリング36が、第2ピストン34の内底面とセパレータ32との間に配設されている。
【0020】
ここで、加圧室37が第1シリンダ30と第1ピストン33とにより構成され、一次側加圧水が第1シリンダ30の頂部に形成されたポートP3を介して加圧室37に供給できるようになっている。さらに、第1ピストン位置調整用ボルト39が、第1シリンダ30の頂部に螺着されている。
また、作動スプリング35のばね力が復帰スプリング36のばね力よりも大きく設定されている。そして、加圧室37内に一次側加圧水が供給されていない初期状態では、第2ピストン34のフランジ部34aは作動スプリング35の付勢力により第1ピストン33のフランジ部33aに当接している。さらに、初期状態では、第1ピストン33は、復帰スプリング36の付勢力により第1ピストン位置調整用ボルト39の加圧室37内に延出している端部に当接している。
【0021】
オイル室40は第2シリンダ31とセパレータ32とにより構成された密閉空間であり、シリコーンオイル41が内部に充填されている。そして、シャフト42がオイル室40を貫通して、第2シリンダ31の軸心方向に往復移動可能に配設されている。このシャフト42の一端は第2ピストン34の底部に固着され、他端は後述する開閉弁46側に延出している。
【0022】
制動用仕切板43がオイル室40を第2シリンダ31の軸方向に第1および第2オイル室40a,40bに分離するようにシャフト42に固着されている。この制動用仕切板43は、シャフト42の移動に連動して、第2シリンダ31の内周壁面を摺動して移動する。また、オリフィス44が第1および第2オイル室40a,40bを連通するように制動用仕切板43に形成されている。
開閉弁46は、入力ポートP1と、出力ポートP2と、入力ポートP1と出力ポートP2との間を開閉する弁体45と、を備えている。
【0023】
このように構成された初期放水圧力制御弁200では、第1ピストン位置調整用ボルト39の進退量を変えることで、即ち加圧室37内への延出量を変えることで、第1ピストン33の初期位置が変えられる。これにより、復帰スプリング36の長さが変えられるので、シャフト42のストローク量が変えられ、一次側加圧水の供給から開閉弁46を閉弁するまでの閉弁時間(遅延時間)が変えられる。
また、制動用仕切板43の下降動作時、第2オイル室40b内のシリコーンオイル41が制動用仕切板43に設けられたオリフィス44を介して第1オイル室40aに流入する。従って、制動用仕切板43の下降速度は流体の粘度、流体の温度特性の影響を受けなくなり、オリフィス44の口径で制御される。そこで、制動用仕切板43の下降速度は環境温度に拘わらず安定したものとなる。
【0024】
起動弁300は、パイロット弁18と、手動起動弁19と、からなり、第1配管70に並列に配設されている。また、止め弁17が第1配管70の起動弁300の上流側に配設されている。
制水弁25は、制水弁取付フランジ27を用いて胴体部1の二次側管路1cに取り付けられている。
排水ユニット400は、自動排水弁21と、手動によるボール弁22とからなり、第2配管72に配設されている。圧力スイッチ20が第2配管72に配設されている。
【0025】
つぎに、圧力調整弁500の構造について図5乃至図7を参照しつつ説明する。図5はこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を示す断面図、図6はこの発明に係る自動弁装置に用いられる圧力調整弁を構成するプラグを示す上面図、図7は図6のVII−VII矢視断面図である。
【0026】
圧力調整弁500は、ダイヤフラム51がダイヤフラムホルダ52に保持されてスプリングケース53と弁ボディ57とに挟持されて構成されている。スプリングケース53は、有底円筒状に作製されている。そして、自動弁100の二次側の規定圧力を設定するためのスプリング荷重を加えるスプリング54がスプリングシート55とダイヤフラムホルダ52との間に縮設されている。さらに、圧力調整用ボルト56がスプリングケース53の頂部を貫通するように螺着されており、圧力調整用ボルト56のスプリングケース53内への延出量を調整することによりスプリング54の収縮量を調整でき、スプリング荷重を調整できる。
【0027】
弁ボディ57には、ダイヤフラム51により画成される二次圧導入室58と、二次圧導入室58に二次圧を導入する二次圧導入ポート59と、一次圧導入室60と、一次圧導入室60に一次圧を導入する一次圧導入ポート61と、一次圧導入室60と大気とを連通する排水ポート62とが形成されている。
軸棒63は、一端をダイヤフラムホルダ52に固着され、二次圧導入室58を通過して弁ボディ57を貫通して一次圧導入室60内に延出するように配設され、ダイヤフラム51の変位に連動して往復移動可能に構成されている。なお、軸棒63の弁ボディ57の貫通部にはOリング68が装着され、二次圧導入室58と一次圧導入室60との間のシールが確保されている。
【0028】
プラグ65は、有底円筒状に作製され、底部側を一次圧導入室60に向けて排水ポート62に嵌着保持されている。プラグ65の底部には、所定口径の弁座66が形成されており、軸棒63の先端部に形成された弁体64が軸棒63の往復移動により弁座66に接離可能となっている。
ここで、弁体64と弁座66が弁部を構成する。弁体64は円錐形状に作製され、弁座66と同軸に配置されている。一方、弁座66には、弁体64が接したときに所定の隙間を形成するように溝部67が形成されている。また、ダイヤフラム51、スプリングケース53、スプリング54、軸棒63などにより、弁駆動機構を構成する。
【0029】
このように構成された圧力調整弁500では、圧力調整用ボルト56のスプリングケース53内への延出量が調整され、スプリング荷重が設定値となるように調整される。そして、ダイヤフラム51は、ダイヤフラムホルダ52を介して作用するスプリング荷重により一次圧導入室60側に変位し、弁体64が弁座66に当接し、閉弁状態となっている(初期状態)。
【0030】
ついで、二次圧が二次圧導入ポート59から二次圧導入室58に導入され、二次圧導入室58内の圧力が上昇してスプリング荷重に勝ると、ダイヤフラム51はスプリングケース53側に変位し、弁体64が弁座66から離反し、開弁状態となる。これにより、一次圧導入ポート61から一次圧導入室60内に導入されている一次圧が排水ポート62から排出される。
また、二次圧導入室58内の圧力が下降してスプリング荷重より劣ると、ダイヤフラム51は一次圧導入室60側に変位し、弁体64が弁座66に当接し、閉弁状態となる。これにより、排水ポート62からの一次圧の排出が停止される。
さらに、圧力調整弁500は、常閉式であるが、溝部67が弁座66に形成されているので、閉弁時に、一次圧の僅かな漏れがある。
【0031】
この圧力調整弁500は、後述するように、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、規定圧放水の規定圧を設定する規定圧設定機構として機能する。そして、スプリング荷重を調整することで、規定圧放水の圧力を調整できる。また、圧力調整弁500は、後述するように、作動室6bおよび分岐配管71内の一次側加圧水を溝部67を介して排出して主弁7を閉弁させる放水停止後の主弁7の閉弁機構として機能する。
【0032】
ここで、弁体64が弁座66に接したときに溝部67により形成される隙間の総断面積が0.4mmより小さくなると、当該隙間からの一次側加圧水の漏れ量が少なくなり、シリンダ6の作動室6b内への一次側加圧水の供給停止から自動弁100の主弁7の閉弁までの時間が長くなってしまう。当該隙間の総断面積が8mmを超えると、当該隙間からの一次側加圧水の漏れ量が多くなり、作動室6b内の圧力が上昇せず、圧力調整弁500の規定圧設定機能に影響を及ぼしてしまう。また、当該隙間の総断面積が4mmを超えると、主弁7の閉弁時(復旧時)に、構成部品の耐久性に影響を及ぼす3Mpaを超える水撃が発生し、信頼性を低下させてしまう。したがって、当該隙間の総断面積は、0.4mm以上、かつ、4mm以下となるように設定することが好ましい。
【0033】
つぎに、配管系統について説明する。
第1配管70は、一端が起動弁300を介して自動弁100の一次側流路2に接続され、他端が自動弁100の作動室6bに接続されている。分岐配管71は、第1配管70の起動弁300の下流側から分岐し、初期放水圧力制御弁200のポートP3に接続されている。そして、第2配管72は、一端が自動弁100の二次側流路3に接続され、他端が圧力調整弁500の二次圧導入室58に接続されている。また、第3配管73は、第1配管70から分岐し、圧力調整弁500の一次圧導入ポート61に接続されている。さらに、第4配管74は、一端が自動弁100のケース12(アジャスタ13)内部に接続され、他端が開閉弁46の入力ポートP1に接続されている。なお、第3配管73は、第1配管70を介さず、作動室6bに直接接続してもよい。また、第4配管74を介さず、ケース12と開閉弁46の入力ポートP1とを直接接続してもよい。
【0034】
つぎに、このように構成された自動弁装置の動作について図1乃至図4を参照しつつ説明する。図2はこの発明に係る自動弁装置における低圧放水状態を説明する図、図3はこの発明に係る自動弁装置における規定圧放水状態を説明する図、図4はこの発明に係る自動弁装置における復旧時の状態を説明する図である。
【0035】
まず、監視状態では、図1に示されるように、制水弁25が操作ハンドル26を操作して開放され、止め弁17が開放され、自動排水弁21が大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。
【0036】
ついで、パイロット弁18または手動起動弁19が開放されると、主配管(図示せず)から一次側流路2内に供給された一次側加圧水が、第1配管70を介して作動室6b内に流入し、充満される。この時、一次側加圧水のアジャスタ13内への流入が大径部14aにより阻止され、作動室6b内の圧力が上昇し、ピストン9が図1中左側に移動する。このピストン9の移動力がステム11を介して主弁7に伝達され、主弁7がスプリング8の付勢力に抗して図1中左側に移動する。そして、大径部14aがアジャスタ13から抜け出ると、作動室6bが第4配管74と連通される。そこで、作動室6b内に流入した一次側加圧水は、第4配管74に流入し、入力ポートP1から常開式の開閉弁46に流入し、出力ポートP2から排水される。そこで、作動室6b内の圧力が一定に保たれ、ピストン9には、それ以上の移動力が作用せず、主弁7は、図2に示されるように、初期開度に維持される。
【0037】
そこで、一次側加圧水が、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する。そして、図2に示されるように、一次側加圧水が二次側流路3に充水され、二次側加圧水となって二次側配管15を流通し、放水ヘッド16から放水される。この時、放水ヘッド16からの放水は、予備的な低圧放水となる。
【0038】
一方、パイロット弁18または手動起動弁19の開放と同時に、一次側流路2内の一次側加圧水が、第1配管70および分岐配管71を流通し、初期放水圧力制御弁200のポートP3から加圧室37に供給される。一次側加圧水が加圧室37内に充満すると、第1ピストン33が下降する。そして、第1ピストン33の下降力が作動スプリング35を介して第2ピストン34に伝達され、シャフト42を下降させるように作用する。この時、シリコーンオイル41の大きな抵抗力が制動用仕切板43に作用し、第2ピストン34が下降する代わりに、作動スプリング35が収縮して、第1ピストン33が下限まで下降する。
【0039】
ついで、作動スプリング35が、シリコーンオイル41の抵抗力と復帰スプリング36の反力を受けながら、伸長する。この作動スプリング35の伸長動作に連動して、第2オイル室40b内のシリコーンオイル41がオリフィス44から第1オイル室40aに流入し、シャフト42、即ち第2ピストン34が徐々に下降する。そして、第2ピストン34が下限まで下降すると、シャフト42の先端に押圧され、弁体45が入力ポートP1と出力ポートP2との間の流路を閉止する。
【0040】
これにより、出力ポートP2からの一次側加圧水の排水が停止される。そこで、第1配管70から流入する一次側加圧水により作動室6b内の圧力が再度上昇し、ピストン9が図2中左側に移動する。これにより、主弁7が更に開かれ、一次側流路2内から二次側流路3内に流入する一次側加圧水の流量が増加する。
【0041】
二次側流路3内の二次側加圧水は、自動排水弁21を閉止させるとともに、第2配管72を介して圧力調整弁500の二次圧導入室58に供給されている。そして、二次側流路3内の二次側加圧水の圧力が上昇し、所定圧力より高くなると、圧力調整弁500が開弁される。これにより、第1配管70を介して自動弁100の作動室6b内に供給される一次側加圧水は、第3配管73から一次圧導入室60内に流れ、圧力調整弁500の排水ポート62から排水される。そこで、作動室6b内の圧力が一定に保たれ、ピストン9には、それ以上の移動力が作用せず、主弁7は、設定開度に維持される。
そこで、一次側加圧水が、図3に示されるように、一次側流路2内から二次側流路3内に流入し、所定圧力となった二次側加圧水が二次側配管15を流通し、放水ヘッド16から放水される。この時、放水ヘッド16からの放水は、規定圧で放水される本格放水(規定圧放水)となる。
【0042】
放水ヘッド16からの本格放水が終了し、パイロット弁18および手動起動弁19が閉弁されると、第1配管70を介して自動弁100の作動室6bへの一次側加圧水の供給がなくなる。そして、作動室6bおよび第1配管70内の一次側加圧水は、第3配管73および一次圧導入室60を通って圧力調整弁500の弁座66の溝部67から漏れ出し、大気に流出される。そこで、作動室6b内の一次側加圧水の圧力が低下し、スプリング8の付勢力により、主弁7が閉弁され、ピストン9が初期状態(監視状態)まで移動する。同時に、分岐配管71を介してポートP3からの一次側加圧水の供給がなくなり、第2ピストン34およびシャフト42が、復帰スプリング36の復帰力により、上昇を開始する。この第2ピストン34の上昇に同期して第1ピストン33が上昇する。この時、シリコーンオイル41が第1オイル室40aから第2オイル室40bに流入し、初期状態に復帰する。
【0043】
そして、弁体45が上昇し、入力ポートP1と出力ポートP2との間の流路が開放され、第4配管74内の一次側加圧水が排水される。
また、主弁7が閉弁されると、自動排水弁21が開放され、二次側配管15、二次側流路3および二次圧導入室58内の残水が第2配管72を介して自動排水弁21から排水される。
【0044】
ついで、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁500の設定確認を行う場合、操作ハンドル26を操作して制水弁25が閉止される。この時、自動排水弁21は大気圧により開放され、ボール弁22が閉止される。そして、起動弁300を操作し、主弁7を開閉して、自動弁100の開閉動作の確認や圧力調整弁500の設定確認を行う。
【0045】
このように構成された自動弁装置では、圧力調整弁500の弁座66に溝部67を形成して、本格放水停止後の主弁7の閉弁機構を構成している。また、自動弁装置の動作時に、圧力調整弁500の規定圧設定動作により、弁体64が弁座66に接離する。そこで、異物が溝部67に詰まっても、また生成物が溝部67に生成されても、異物や生成物は、弁体64の弁座66からの離反時における高圧の一次側加圧水の流れに繰り返し曝され、ついには一次側加圧水とともに流し出される。したがって、溝部67による隙間が狭くなり、主弁7の閉弁時間が長くなる、あるいは主弁7が閉じられなくなるという不具合の発生が未然に回避され、長期的に安定した動作を実現できる自動弁装置が得られる。
【0046】
また、圧力調整用ボルト56がスプリングケース53に取り付けられ、スプリング54の長さ、即ちスプリング荷重を調整可能になっているので、現場毎に、本格放水の規定圧を設定できる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、溝部を弁座に形成するものとしているが、溝部を弁体に形成してもよい。
また、上記実施の形態では、溝部を弁座に形成するものとしているが、隙間の形成手段は、溝部に限定されず、閉弁時に所定の総断面積が確保されていればよく、例えば、弁体と弁座の接触面を凹凸面としてもよい。また、弁体と弁座の嵌合部の面形状を異なるようにしてもよく、例えば、弁座を円形とし、弁体を楕円形としてもよい。
また、上記実施の形態では、規定圧放水前に低圧放水を行う自動弁装置を例にあげて説明しているが、低圧放水を行わない自動弁装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 胴体部、2 一次側流路、3 二次側流路、4a 弁座、6 シリンダ、6b 作動室、7 主弁、8 スプリング(付勢手段)、9 ピストン、18 パイロット弁(起動弁)、19 手動起動弁(起動弁)、51 ダイヤフラム(弁駆動機構)、53 スプリングケース(弁駆動機構)、54 スプリング(弁駆動機構)、57 弁ボディ、58 二次圧導入室、59 二次圧導入ポート、60 一次圧導入室、61 一次圧導入ポート、63 弁棒(弁駆動機構)、64 弁体(弁部)、66 弁座(弁部)、67 溝部、70 第1配管、72 第2配管、73 第3配管、100 自動弁、300 起動弁、500 圧力調整弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座により仕切られた一次側流路と二次側流路とを有する胴体部、上記弁座に対して接離可能に上記一次側流路に配設された主弁、上記主弁を上記弁座に接する方向に付勢する付勢手段、上記二次側流路を介して上記主弁に対向し、かつ軸心方向を上記主弁の接離方向として上記胴本体部に突設された筒状のシリンダ、および上記シリンダ内に摺動自在に配設され、該シリンダ内の上記二次側流路と反対側に画成される作動室への一次側加圧水の供給により移動して上記主弁を開放させるピストンを有する自動弁と、
二次圧導入室、一次圧導入室、上記一次圧導入室を大気に対して開閉するとともに、閉じられているときに所定の隙間が形成されている弁部、および上記二次圧導入室内の圧力が所定圧力に達すると上記弁部を開弁させる弁駆動機構を有する圧力調整弁と、
上記一次側流路と上記作動室とを連通する第1配管と、
上記第1配管の経路中に配設され、上記一次側加圧水の上記作動室への供給を制御する起動弁と、
上記二次側流路と上記二次圧導入室とを連通する第2配管と、
上記作動室と上記一次圧導入室とを連通する第3配管と、を備え、
上記圧力調整弁は、
上記一次側加圧水が上記起動弁により上記第1配管を介して上記作動室に供給されている状態では、上記二次側流路から上記第2配管を介して供給される上記二次圧導入室内の上記二次側加圧水の圧力が上記所定圧力に達すると上記弁部を開けて上記作動室内の一次側加圧水を大気に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が上記所定圧力に達していないと上記弁部を閉じて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を高め、上記二次圧導入室内の二次側加圧水の圧力が上記所定圧力となるように上記主弁の開度を制御し、
上記一次側加圧水が上記起動弁により上記第1配管を介して上記作動室に供給されていない状態では、上記作動室内の一次側加圧水を上記第3配管および上記一次圧導入室を介して上記隙間から大気に流出させて上記作動室内の一次側加圧水の圧力を下げ、上記主弁を閉じるように構成されていることを特徴とする自動弁装置。
【請求項2】
上記隙間は、その総断面積が、0.4mm以上、かつ、4mm以下となるように上記弁部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動弁装置。
【請求項3】
二次圧導入室、上記二次圧導入室に二次圧を導入する二次圧導入ポート、一次圧導入室、上記一次圧導入室に一次圧を導入する一次圧導入ポート、上記一次圧導入室を大気に開閉する弁部を有する弁ボディと、
上記二次圧導入室内の二次圧が所定圧力に達すると上記弁部を開弁し、上記二次圧導入室内の二次圧が所定圧力未満であると上記弁部を閉弁させる弁駆動機構と、を備え、
上記弁部は、閉弁時に、上記一次圧導入室と大気とを連通する所定の隙間を有していることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項4】
上記弁駆動機構は、上記二次圧導入室を挟んで上記弁ボディに取り付けられるスプリングケースと、上記弁ボディと上記スプリングケースとに挟持されて上記二次圧導入室を画成するダイヤフラムと、上記スプリングケース内に配設されて上記ダイヤフラムに所定の荷重を印加するスプリングと、上記ダイヤフラムの変位に連動して移動し、上記弁部を開閉する軸棒と、を備えていることを特徴とする請求項3記載の圧力調整弁。
【請求項5】
上記隙間は、その総断面積が、0.4mm以上、かつ、4mm以下となるように上記弁部に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139467(P2012−139467A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1083(P2011−1083)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】