説明

自動機による位置出し方法及び自動機の位置出し装置

【課題】 安価で正確且つ迅速に位置出しを行なうことができる自動機による位置出し方法及び自動機の位置出し装置の提供。
【解決手段】 X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアーム1と、当該アーム1の旋回面に対して平行であり、且つ略平坦な作業テーブル2を備え、アーム1の先端部に作業テーブル2へ向けたチャック3を回転自在に支持した自動機による位置出し方法において、アーム1の先端部に作業テーブル2又は作業テーブル2上の物体の表面の高低を検出するセンサ4を支持し、作業テーブル2又は作業テーブル2上の物体におけるターゲットポイントに球面状ゲージ5を載せ、センサ4で作業テーブル2又は作業テーブル2上の物体のターゲットエリアをX軸方向への移動とθ方向への旋回で走査し、センサ4から得た検出信号の変化を以って球面状ゲージ5の頂部を検出し、当該頂部の位置座標を保存する自動機による位置出し方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動機によるパレットの位置出し方法及び自動機の位置出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の搬送・加工行程の中で、ワークの存在位置や加工位置などを探し出して、位置座標を入力する方法は極めて時間を要し、PLC制御データの入力にも、専門知識や相当の時間を要する。
そこで、搬送・加工エリアの画像を取得して、ワークを供給する位置、又は加工位置を検出する方法も存在する(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−32435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、専門知識を駆使した加工装置や制御プログラムは高価であり、容易に入手できないのが実体である。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて成されたものであって、安価で正確且つ迅速に位置(例えば、原点)出しを行なうことができる自動機による位置出し方法及び自動機の位置出し装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明による自動機による位置出し方法は、X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアームと、当該アームの旋回面(旋回軌道により形成される仮想の面)に対して平行であり、且つ略平坦な作業テーブル(例えば、水平な平滑面を有する作業テーブル)を備え、アームの先端部に作業テーブルへ向けたチャックを回転自在に支持した自動機による位置出し方法において、アームの先端部に作業テーブル又は作業テーブル上における物体の表面の高低を検出するセンサを支持し、作業テーブル又は作業テーブル上の物体におけるターゲットポイントに球面状ゲージを載せ、センサで作業テーブル又は作業テーブル上の物体のターゲットエリアをX軸方向への移動とθ方向への旋回で走査し、センサから得た検出信号の変化(例えば強弱等)を以って球面状ゲージの頂部を検出し、当該頂部の位置座標を保存することを特徴とする。
【0007】
尚、X軸方向とは、トレーに平行する平面の直角座標(X,Y)のX軸方向を指す。
前記センサの支持手法としては、それをチャックの保持部に支持することでアームの先端部に支持する手法を採っても良い(図14(A)参照)。
ここでターゲットポイントとは、走査領域の基準点を(X,θ)平面座標の中央に含む地点を言い、ターゲットエリアとは、走査領域における一部領域又は全領域であって、ターゲットポイントを含み、且つ当該ターゲットポイントに球面状ゲージを載せることによって、当該球面状ゲージの頂部が当該領域の最高位となる状態にある領域を言う。
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明による自動機の位置出し装置は、X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアームと、当該アームの旋回面に対して平行であり、且つ略平坦な作業テーブルを備え、アームの先端部に作業テーブルへ向けたチャックを回転自在に支持し、アームの先端部に作業テーブル又は作業テーブル上における物体の表面の高低を検出するセンサを支持し、X軸方向への移動とθ方向への旋回を以って前記センサで作業テーブル又は作業テーブル上の物体のターゲットエリアを走査する様にアームを制御するアーム制御手段と、センサから得た検出信号の変化を以って作業テーブル又は作業テーブル上の物体におけるターゲットポイントに載せた球面状ゲージの頂部を検出すると共に、当該頂部の位置座標を保存する位置検出手段を備えることを特徴とする。
【0009】
前記センサの支持構造としては、それをチャックの保持部に支持することでアームの先端部に支持する構造を採っても良い。
上記センサは、非接触センサが望ましく、光センサ、近接センサ、又は超音波センサ等から適宜選択すれば良い。
【0010】
アームに障害物による干渉に対して退避する首振り機構を設ければ、アーム、チャック、若しくは障害物、又は人の損傷を回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による自動機による位置出し方法は、X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアームと、略水平で且つ平坦な作業テーブルを備え、アームに作業テーブルに向けたチャックを回転自在に支持した構造を用いることによって、小型で安価に構成でき、無駄なスペースをとらず広い稼動エリアをカバーすることができる。また、θ方向への旋回を採用することによって、右旋回又は左旋回を適宜採用した細かく高精度な制御が可能となるなど、X−Y軸構成では達成し得ない効果を奏する。
【0012】
作業テーブル又は作業テーブル上の物体におけるターゲットポイントに球面状ゲージを載せることによって、球面状ゲージの頂部が存在する単数又は複数の位置を適宜位置出しの基準点とすることができる。
【0013】
チャックの保持部に作業テーブル又は作業テーブル上の物体の表面の高低を検出するセンサを支持し、X軸方向への移動とθ方向への旋回を以って、当該アームのチャックに保持したセンサで作業テーブル又は作業テーブル上の物体の表面を走査する様にアームを制御するアーム制御手段と、センサから得た検出信号の強弱を以って走査領域の頂部を検出し、当該頂部の位置座標を自動機の位置出しの基準点とすることによって、X−Y各軸に対して各々基準点が必要なX−Y軸構成とは異なり、単一の基準点に対し、X軸方向の両側における対照的な位置において(X,θ)平面座標の補正を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による自動機の位置出し装置の実施態様例を示す斜視図である。
【図2】本発明による自動機による位置出し方法におけるアーム及びセンサの軌道の一例を示す説明図である。
【図3】本発明による自動機の位置出し装置の実施態様例を示す要部斜視図である。
【図4】本発明による自動機の位置出し装置の実施態様例を示す要部斜視図である。
【図5】本発明による自動機による位置出し方法におけるアームの軌道の一例を示す説明図である。
【図6】本発明による自動機による位置出し方法に用いる球面状ゲージ及び冶具の一例を示す、(A):斜視図、及び(B):断面図である。
【図7】本発明による自動機による位置出し方法における、(A)及び(B):センサ軌道の平面図、(A´)及び(B´):センサ軌道の断面図、(A´´)及び(B´´):センサ軌道に対応したセンサ出力を示すグラフである。
【図8】本発明によるチャックの一例を示す断面図である。
【図9】本発明による自動機による位置出し方法に用いられるロボットアームの構造を示す、(A):表側から見た分解斜視図、(B):裏側から見た分解斜視図である。
【図10】本発明による自動機による位置出し方法に用いられるロボットアームにおける、(A):カバーを除去した斜視図、(B):同ロボットアームに対する干渉の検出方向の例を示す斜視図である。
【図11】本発明による自動機による位置出し方法に用いられるロボットアームにおける首振り機構の態様例を示す、(A):平面図、(B):側面図である。
【図12】(A):本発明による自動機による位置出し方法に用いられるX−θ軸構造での可動範囲(走査エリア)、及び(B):X−Y軸構造での可動範囲(走査エリア)を示す説明図である。
【図13】本発明による自動機の位置出し装置の制御システムの一例を示す説明図である。
【図14】本発明による自動機による位置出し方法及び自動機の位置出し装置に用いられるロボットアームにおけるセンサの装着例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による自動機による位置出し方法、及び自動機の位置出し装置の実施の形態を図面に基づき説明する。
ここで、自動機とは、部品の供給、搭載、又は固定等の工程を自動的に行なうものである。
【0016】
図1に示す自動機は、上記工程を行なう工具(当該例ではチャック3)と、当該チャック3を保持するロボットアーム(以下アーム1と記す)と、アーム1を支持するアームベース1aと、ベースフレーム7に水平に支持した作業テーブル2とで構成される。
【0017】
作業テーブル2は、アームベース1aが移動する側を、その直線的な走行軌道xに沿って成形し、表面(基面2a)が略平面的に成形されている必要がある。それ以外の形態形状は、使用状態に応じて適宜選定すれば良い。高さの異なる基面が複数存在しても良い。
【0018】
尚、当該例では、長方形の平坦な単一の基面2aを持ち、且つ位置出し用の位置決め孔2b、及びワークの供給に際して多数のワークを整列して載せるべくトレー8をノックピン2fで位置決めする為の支持孔2c、若しくは当該トレー8を保持する為の支持枠2dが設けてある。
また、この例で用いるトレー8は、平坦な表面に複数の丸孔をワーク配列孔8aとして縦横に整列して設けた方形状のトレーである。位置決め用の丸孔8bを、その表面に別途設けても良い。
【0019】
アームベース1aは、アーム制御手段による制御の下、作業テーブル2の側縁(走行軌道x(X軸))に沿って直線的に移動する走行手段を備える。
アームベース1aを走行させる走行手段としては、作業テーブル2の側縁(X軸と平行に設定)2eに沿って直線的に走行ガイド(図示省略)を設けると共に、当該走行ガイドに支持されたアームベース1aにX軸駆動用の移動プーリ(図示省略)を動滑車として備え、当該動滑車を巻取り送出し手段(図示省略)に巻かれたワイヤ(図示省略)で走行ガイドに沿って移動させる手法が挙げられる。
【0020】
即ち、前記ワイヤの両端部を走行軌道x(図2参照)の両端に支持したプーリに各々架け、更に動滑車に架けて再び折り返し、一方の端を巻取り送出し手段のプーリへ正転方向に巻き付け、他方の端を巻取り送出し手段のプーリへ逆転方向に巻き付ければ、当該巻取り送出し手段の駆動(回転)方向に応じてアームベース1aがX軸に沿って進退するものである。
【0021】
尚、当該例では、一方のワイヤの端を更に折り返して、単一の巻取り送出し手段のプーリへ巻き付けてある。
巻取り送出し手段及び旋回駆動手段としては、サーボモータ等を用いれば良い。
【0022】
アーム1は、アームベース1aに旋回可能に固定され、平坦な作業テーブル2の表面の上方において、アーム制御手段による制御の下、当該作業テーブル2の表面と平行な平面に沿ってθ方向へ旋回する。
当該例のアーム旋回手段は、アームベースに固定された旋回駆動手段23及びその回転軸に連結する減速器11からなる(図1及び図11参照)。
【0023】
〔チャックについて〕
チャック3は、チャック爪3b、チャックホルダ3c、及び操作ロッド3dからなる。
【0024】
チャック爪3bは、操作ロッド3dの進退量を各チャック爪3bの遠心方向及び向心方向への揺動量に変換するカム部を備え、保持するワークの形態に合わせてチャックホルダ3cに揺動可能に保持される。
【0025】
チャックホルダ3cは、チャック爪3bの基部が揺動自在に収まる様に、当該チャックホルダ3cの長手方向に沿った切り込み3eを、当該チャックホルダ3cの全周に亘って少なくともチャック爪3bと同数ほぼ等角度間隔で穿設すると共に、その外面に、前記切り込み3eを横切る支え溝3fを全周に亘って穿設し、当該支え溝3fに、チャック爪3bの揺動支点となる支点リング3gを装填した構成である。
【0026】
更に、支点リング3gの安定や、チャックホルダ3cからの離脱防止を目的としてチャックリング3hを装着することができる。
チャックリング3hは、チャックホルダ3cにおける先端部の周囲に留まる径の円筒状を呈する。
当該チャックリング3hは、チャックホルダ3cにおける先端部の周囲に留まる際に、切り込みに収まるチャック爪3bの基部、及びチャックホルダ3cの支え溝3fに装填した支点リング3gを覆い、当該支点リング3gを外側から支える。
【0027】
操作ロッド3dは、前記チャックホルダ3cの中空部を進退する太さの円筒状のパイプであって、その先端部に前記チャック爪3bの基部を内側から押圧する加圧部を備える。
前記操作ロッド3dは、チャックホルダ3cの中空部に、進退可能に、且つ回転自在に挿通し、チャックホルダ3cのチャックリング3h又は支点リング3gと操作ロッド3dの加圧部で、揺動支点に係る複数のチャック爪3bの基部を挟持する。
【0028】
この様な構成によって、チャックリング3hの内部に所定数のチャック爪3bをそれぞれ同じ条件で保持する。
この様に保持されたチャック爪3bは、前記操作ロッド3dの進退に伴う当該チャック爪3bの基部に対する加圧・挟持領域のシフトによって、チャックリング3hに保持された各チャック爪3bの先端部の開きを調整する。
【0029】
前記チャック3には、保持その他の目的を達成すべく、種々の部材を保持することができる。
当該自動機による位置出しを行うには、操作ロッド3dの中空部に、作業テーブル2又は作業テーブル2上の物体の表面の高低を検出するセンサ4としてファイバセンサを挿通し、当該操作ロッド3dの先端部に、投射する光及び受光する光を通過するレンズをチャックで保持する(図3及び図4参照)。
【0030】
〔ロボットアームについて〕
ロボットアーム1は、上方へ屈曲する関節を持ったアーム筐体9と、アーム筐体9に実装される種々の部材、及びそれらを覆うアームカバー10を備える(図9(A)参照)。
【0031】
アーム筐体9は、関節で繋がる前筐体9a及び後筐体(回転軸側)9bからなる。
前筐体9aは、その先端部にチャック軸受部9aaを備え、その後端部に関節軸を保持する関節軸受部9abを備える。関節軸受部9abは、相平行する軸受板9acを対照的に備え、両軸受板9acを各々の下位を水平板で支持したものであって、当該水平板の後端面から延出し後筐体9bの下面に沿う直方体状のストッパ9adを備える。
【0032】
後筐体9bは、アームベースと連結する為の筐体ベース9baを備え、当該ベース9baの上位から水平に直方体状の腕9bbを延設し、関節軸受部9abに収まる様に幅を狭くした腕9bbの先端部に、両側方へ水平に突出した関節軸9bcを備える(図11参照)。
後筐体9bとアームベースとの連結は、アームベースに固定された旋回駆動手段23及びその回転軸に連結する減速器11の出力軸にその筐体ベース9baを固定することによって実現する。その結果、後筐体9bは、前筐体9aを先端に保持しつつ、アーム制御手段により制御された旋回を行うこととなる。
【0033】
前筐体9aの関節軸受部9abで後筐体9bの関節軸9bcを保持することにより、前後筐体9bが、上下揺動可能に連結し、前筐体9aの後端面から延設したストッパ9adが、後筐体9bの下面に当接することにより、後筐体9bに対する前筐体9aの下方への揺動が規制される。
【0034】
前筐体9aは、中間部に板バネ12を固定する為の平坦な裏面プラットホーム9aeを備え、その先端側及び末端側の各々に、上下を貫通する縦穴9afに位置決めスイッチ13を裏に面して支持すると共に、各縦穴9afを水平方向で一直線上に且つ対照的に挟む様に球状頭部を有する止めネジ14を、後筐体9bの裏側から螺合する(図9(B)参照)。位置決めスイッチ13は、近接センサやリミットスイッチ等、検出面に対する物体の近接や離隔を検出できる部材を適宜選択すれば良い。
【0035】
{スリップリングについて}
ファイバセンサ等、位置出しに用い得る各種センサ、又は近接センサ若しくはリミットスイッチが出力するセンサ信号や、ロボットアーム1に設置されたアクチュエータ等への制御信号は、制御部において処理するが、ロボットアームに制御部を搭載すると、ロボットアーム1自体の重量が増し、バランスをとる為のウエイトの装備等により、動作スピードの低下等により操作性が減退する原因となる他、高い能力を持ったアクチュエータが要求される等により製造コストが高くなる等の問題が生じる。
【0036】
そこで、制御部は、アームベース外のベースフレーム等に設置し、センサ信号や制御信号が流れる回路はスリップリング15を介して制御部へ接続する(図11参照)。
スリップリング15の必要端子数を節約すべく、ロボットアーム1に、それらの信号が各々流れる回路を適宜統合する回路基板16を付設しても良い。
【0037】
{非常停止機構について}
前筐体9aにおける位置決めスイッチ13及び止めネジ14の頭部の上に各々金具17を載せ、板バネ12で両金具17,17を前筐体9aの裏面側から押える(図9(B)参照)。
【0038】
金具17は、前筐体9aの裏面に沿う位置決め部17aと、当該位置決め部17aの両端から直角に屈曲し前筐体9aの側壁に沿う連結部17bとからなり、位置決め部17aには、止めネジ14の頭部が各々嵌まる穴17cを備え、連結部17bには、前筐体9aの表面、側面、及び前面を覆うアームカバー10の側壁を連結する為の穴17dを設ける。連結部17bは、その先端部に受圧部17eをT字状に設け、後筐体9bの先端に加圧片18を固定して形成した加圧部による押圧を受ける。
【0039】
当該例のアームカバー10は、前筐体9aの先端部の半円形状に倣って丸みを帯びた前壁10a、平坦な側壁10b、及びそれらの上方を覆う上壁10c、並びに上壁10cの後端縁から上方へ延びる突片10dとからなる。左右両側壁10b、10bは、前記金具17の連結部17bとビス止めする。
【0040】
前筐体9aの裏面プラットホーム9aeに固定された板バネ12は、その前後にT字状に切り込まれたバネ部12aの弾性を以って、アームカバー10に連結された金具17の位置決め部17aを上向きに付勢する。
前筐体9aの表面とアームカバー10との間は、障害物に衝突すること等によるアームカバー10に加えられた上下左右の応力を以って前記金具17の穴17cの中心から外れた止めネジ14の頭部が、応力の解除によって穴17cの中心に復帰できる程度の隙間が設けられている(図9(B)参照)。
【0041】
金具17の穴17cの中心から止めネジ14の頭部が外れ、若しくは金具17が前筐体9aから離隔すると、位置決めスイッチ13の検出面と金具17との間隔が増し、位置決めスイッチ13が作動する。
当該例では、位置決めスイッチ13の作動を受けてロボットアーム1及びチャック(その他の工具)3の非常停止を行なう(例えば、図11参照)。
【0042】
前後二箇所に位置決めスイッチ13を設置することで、前方の位置決めスイッチ13が作動することでアームカバー10の前方部分へ加わった応力を検出し、後方の位置決めスイッチ13が作動することでアームカバー10の後方部分へ加わった応力を検出し、双方が同時に作動することで前後方向へかかる応力を検出できる。
【0043】
{チャックの支持構造について}
チャック3とロボットアーム1は、前筐体9aのチャック軸受部9aaに、前記チャック3のチャックホルダ3cを回転自在に支持することによって一体化する。
【0044】
軸受部9aaは、チャックホルダ3cの外面に接する回転軸受けを備え、当該軸受部9aaに支持されるチャックホルダ3cは、その上部に回転力の伝達を受けるためのプーリ3iを回転伝達手段の一部として一体的に備える。
回転伝達手段は、チャックの回転に用いる力を、チャックに対して伝達する部材又は部材の組み合わせであり、アームベースに固定された回転駆動手段(図示省略)、及びその回転を伝達するタイミングベルト19、及びそれが掛かるプーリ等からなる(図8、図9、及び図11参照)。
【0045】
当該例における回転伝達手段では、アーム筐体9に、チャックのチャックホルダ3cを回す回転伝達手段としてタイミングベルト19が渡し掛けられている。当該タイミングベルト19は、チャックホルダ3cのプーリ3iと、アーム筐体9の旋回軸付近(筐体ベース9ba)に固定された回転駆動手段における回転軸の伝動プーリ(図示省略)、並びに適宜設けられた中継プーリ20に掛けられる(図8、図9、及び図11参照)。
【0046】
{昇降手段について}
前記ロボットアーム1は、アーム筐体9に、操作ロッド3dを進退させる昇降手段21を備える。昇降手段21は、互いに平行に進退するシリンダ機構のピストンロッド21aと、チャック3の操作ロッド3dを伝動腕21bで連結したものである。
当該例における昇降手段21は、アーム筐体9に略直線的な横並びで配置された二つのシリンダ機構である。二つのシリンダ機構のピストンロッド21aは、その露出部をシリンダリンク21cで、各ピストンロッド21aに対して縦揺動自在に連結し、当該シリンダリンク21cに伝動腕21bの一端を固定する。
【0047】
当該例におけるシリンダリンク21cの両端部は各々二股に分かれており、二股に分かれた各腕には、連結ピン21dを挿通する孔を有する。シリンダリンク21cの股の間隙にピストンロッド21aの露出部を挟み、当該ピストンロッド21aの露出部に設けられた孔とシリンダリンク21cの両端に設けられた孔に連結ピン21dを通すことによって、両ピストンロッド21a,21aの露出部は相互に連結される。
【0048】
前記伝動腕21bは、前記の如く一端部をシリンダリンク21cに固定し、他端部を操作ロッド3dへ揺動可能に連結する。
当該例における伝動腕21bの先端部は二股に分かれており、伝動腕21bの股の間隙に操作ロッド3dの露出部を挟む。操作ロッド3dの露出部には、操作棒21eを水平に固定し、二股に分かれた伝動腕21bの先端部で当該操作棒21eを保持する。
【0049】
各シリンダ機構は、アーム筐体9に内装されている。即ち、当該例のアーム筐体9は、合成樹脂やアルミ合金等を角棒状に成形したものであり、その長手方向に沿って、シリンダを内蔵するための縦穴(シリンダ室)を二つ備え(図示省略)、両シリンダ室を結ぶ延長線上の先端側にチャック軸受部9aaが存在する位置関係とする。
【0050】
〔位置出しについて〕
位置出しを行う際に当たっては、先ず、走査領域における少なくとも一部領域であってターゲットポイントを含み、且つ当該ターゲットポイントに球面状ゲージを載せることによって、当該球面状ゲージの頂部が当該領域の最高位となる領域をターゲットエリアとして定める。
アーム制御手段は、X軸方向へアームが向いた状態をθ=0度とし、右回り(又は左回り)にアーム1の位相を変化させると共に、一回転毎にアームベースの位置を一定量ずつ変化させる(図2、図5、及び図7参照)。
【0051】
位置検出手段は、前記アーム制御手段による制御下でのロボットアーム1の動きに伴い、作業テーブル2に向けたチャック3に保持されたファイバセンサ4で、ターゲットエリアを走査する(ここでは、作業テーブル2の表面を全面に亘って走査する。)。そして、前記走査に伴い、所定のサンプリング時間毎に、作業テーブル2に向けたチャック3に保持されたファイバセンサ4が存在する位置の(X,θ)平面座標に対する当該ファイバセンサ4の出力を取得する(図7参照)。
【0052】
ファイバセンサ4は、作業テーブル2又は作業テーブル2上の物体(トレー8、又はパレット等、)の表面の高低を検出する(高低検出ステップ)。位置検出手段は、出力信号の強弱を数値の大小に変換した出力データとして記憶手段に保持・保存する(変換ステップ)。
更に、位置検出手段は、出力データの高値を得た(X,θ)平面座標を高部として導出し、低値を得た(X,θ)平面座標を低部として導出し(高低判定ステップ)、最高値を得た(X,θ)平面座標を走査領域の頂部として導出し、当該例では、これを位置出しの基準点として記憶手段に保持・保存する(基準点決定ステップ)。
【0053】
図2に示す例では、基準点のX座標を0とし、アーム1の旋回軸からセンサ4までの直線距離がrであるから、基準点を検出する際におけるアーム1の旋回軸のX座標は(rcosθ1)又は(rcosθ2)である。
当該例では、基準点を検出する位置を、「θ=θ1であり且つアーム1の旋回軸がX=rcosθ1の時」、又は「θ=θ2であり且つX=rcosθ2の時」として、当該位置を基に、(X,θ)平面座標の原点、即ち、ファイバセンサの位置座標:(0,0°)、又はアーム1の旋回軸の位置座標:(r,0°)の補正を行う。
【0054】
具体的には、作業テーブル2の位置決め孔2b、又は作業テーブル2の所定位置に固定されたトレー8のワーク配列孔8a若しくは当該トレー8の位置決め用の丸孔8bをターゲットポイントとし、当該ターゲットポイントに位置決め球を球面状ゲージ5として載せることによって、当該球面状ゲージ5の頂部が走査領域の基準点と一致することとなる。
【0055】
前記ターゲットポイントと球面状ゲージ5との間にジグ22を介在しても良い。ジグ22は、ターゲットポイントに緩み無く嵌まる形状とし、その上面の中央に球面状ゲージ5が求心する形状の支持穴22aを形成する。
球面状ゲージ5が求心する形状の支持穴22aとは、前記ターゲットポイントと中心を(X,θ)平面座標において等しくして形成され、且つその開口部が球面状ゲージ5の投影範囲に含まれる大きさであって円形又は正三角形等の縁を備える打ち抜き穴、又は球面状ゲージ5の表面が接する内面を有するすり鉢状の有底穴等である。
それらの支持穴22aに球面状ゲージ5を置くことによって、当該球面状ゲージ5の中心が、ターゲットポイント、及びジグ22の打ち抜き穴又はすり鉢状の有底穴の中心上に誘導され、当該球面状ゲージ5の頂部とターゲットポイントの中心軸が(X,θ)平面座標上で重なることとなる。
【0056】
位置決め孔2bとトレー8の支持孔2c若しくは支持枠2dとの相対位置、及びトレー8の支持孔2c若しくは支持枠2dと各ワークの配列孔8aとの相対位置を、位置検出手段に予め登録しておけば、各ワーク配列孔8aの位置座標を個々に導くことなく位置出しを行うことができる。
【0057】
〔加工及び移送について〕
図1(B)に示す例は、走行軌道xを挟んだ作業テーブル2の向側に、作業テーブル2の側縁と平行に、加工対象の走行路24を備える。当該走行路24は、加工対象の進行方向を左右走行ガイド24aで規制したものであり、走行路24には、所定の工作機器を備えた単数又は複数の加工ステーション24bを設定し、加工する際の必要に応じて、所定の加工ステーション24bに誘導すべく、加工対象の進行方向を左右走行ガイド24aで規制した分岐路24cを付設する。
走行路24における加工対象の誘導は、チャック3の先端部で送っても良いし、走行路24や分岐路24cの床を移動床としても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボットアーム,1a アームベース,x 走行軌道,
2 作業テーブル,
2a 基面,2b 位置決め孔,2c 支持孔,2d 支持枠,2e 側縁,
2f ノックピン,
3 チャック,3a 保持部,3b チャック爪,3c チャックホルダ,
3d 操作ロッド,3e 切り込み,3f 支え溝,3g 支点リング,
3h チャックリング,3i プーリ,
4 センサ,5 球面状ゲージ,6 首振り機構,7 ベースフレーム,
8 トレー,8a ワーク配列孔,8b 丸孔,
9 アーム筐体,
9a 前筐体,9aa チャック軸受部,9ab 関節軸受部,9ac 軸受板,
9ad ストッパ,9ae 裏面プラットホーム,9af 縦穴,
9b 後筐体,9ba 筐体ベース,9bb 腕,9bc 関節軸,
10 アームカバー,10a 前壁,10b 側壁,10c 上壁,10d 突片,
11 減速器,12 板バネ,12a バネ部,
13 位置決めスイッチ,14 止めネジ,15 スリップリング,16 回路基板,
17 金具,17a 位置決め部,17b 連結部,17c 穴,17d 穴,
17e 受圧部,18 加圧片,
19 タイミングベルト,20 中継プーリ,
21 昇降手段,21a ピストンロッド,21b 伝動腕,21c シリンダリンク,
21d 連結ピン,21e 操作棒,22 ジグ,22a 支持穴,
23 旋回駆動手段,
24 走行路,24a 走行ガイド,24b 加工ステーション,24c 分岐路,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアーム(1)と、当該アーム(1)の旋回面に対して平行であり、且つ略平坦な作業テーブル(2)を備え、アーム(1)の先端部に作業テーブル(2)へ向けたチャック(3)を回転自在に支持した自動機による位置出し方法において、
アーム(1)の先端部に作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上における物体の表面の高低を検出するセンサ(4)を支持し、
作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上の物体におけるターゲットポイントに球面状ゲージ(5)を載せ、センサ(4)で作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上の物体のターゲットエリアをX軸方向への移動とθ方向への旋回で走査し、センサ(4)から得た検出信号の変化を以って球面状ゲージ(5)の頂部を検出し、当該頂部の位置座標を保存する自動機による位置出し方法。
【請求項2】
前記センサ(4)をチャック(3)の保持部(3a)に支持する前記請求項1に記載の自動機による位置出し方法。
【請求項3】
センサ(4)は、非接触センサである前記請求項1又は請求項2のいずれかに記載の自動機による位置出し方法。
【請求項4】
X軸方向へ移動し、且つθ方向へ旋回するアーム(1)と、当該アーム(1)の旋回面に対して平行であり、且つ略平坦な作業テーブル(2)を備え、
アーム(1)の先端部に作業テーブル(2)へ向けたチャック(3)を回転自在に支持し、
アーム(1)の先端部に作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上における物体の表面の高低を検出するセンサ(4)を支持し、
X軸方向への移動とθ方向への旋回を以って前記センサ(4)で作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上の物体のターゲットエリアを走査する様にアーム(1)を制御するアーム制御手段と、
センサ(4)から得た検出信号の変化を以って作業テーブル(2)又は作業テーブル(2)上の物体におけるターゲットポイントに載せた球面状ゲージ(5)の頂部を検出すると共に、当該頂部の位置座標を保存する位置検出手段を備える自動機の位置出し装置。
【請求項5】
前記センサ(4)をチャック(3)の保持部(3a)に支持する前記請求項4に記載の自動機の位置出し装置。
【請求項6】
前記センサ(4)は、非接触センサである前記請求項4又は請求項5のいずれかに記載の自動機の位置出し装置。
【請求項7】
アーム(1)に障害物による干渉に対して退避する首振り機構(6)を設けた前記請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の自動機による位置出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−125982(P2011−125982A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288763(P2009−288763)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(592152266)株式会社KEC (9)
【Fターム(参考)】