説明

自動製パン器

【課題】穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、粉砕工程後にパン原料を適切に自動投入し易い自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器は、穀物粒を粉砕した後の所定のタイミングでパン容器に投入されるパン原料を収納するパン原料収納容器80を備える。パン原料収納容器80は、パン原料を収納するとともにパン原料をパン容器に排出するための排出口81aが設けられる収納部81と、排出口81aを開閉する蓋部83と、蓋部83によって排出口81aが閉じられた状態が維持されるロック状態を得るためのロック機構(図示せず)と、ロック解除手段(図示せず)によって前記ロック状態が解除されて排出口81aが開かれた場合に収納部81に衝突する衝突部82と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として一般家庭で使用される自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の家庭用自動製パン器は、パン原料を入れたパン容器を本体内の焼成室に入れ、パン容器内のパン原料を混練ブレードで混練して練り上げ(練り工程)、発酵工程を経た後に、パン容器をそのままパン焼き型としてパンを焼き上げる(焼成工程)仕組みのものが一般的である。
【0003】
このような自動製パン器の中には、レーズン、ナッツ類、チーズ等の具入りパンを焼き上げることができるように具材容器を備えたものがある(例えば特許文献1〜3参照)。そして、このような自動製パン器においては、例えばプログラム制御により、練り工程時に具材容器に入った具材がパン容器に自動的に投入されるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3191645号公報
【特許文献2】特開2006−255071号公報
【特許文献3】特開2008−279034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来においては、自動製パン器を用いてパンを製造する場合、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料を混ぜたミックス粉を入手し、これをパン原料として用いてパンを製造していた。しかしながら、一般家庭においては米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物を所持していることがある。このために、自動製パン器を用いて穀物粒から直接パンを製造することができれば非常に便利である。このようなことから、本出願人らは、鋭意研究の末、穀物粒を原料としてパンを製造する方法を発明している。なお、これについては、先に特許出願を行っている(特願2008−201507)。
【0006】
ここで、先に出願したパンの製造方法について紹介する。このパンの製造方法では、まず、穀物粒を液体と混合し、この混合物を粉砕ブレードによって粉砕する(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉に例えばグルテンやイースト等を加えて生地に練り上げ(練り工程)、生地を発酵(発酵工程)させた後、パンに焼き上げる(焼成工程)。
【0007】
上記製造工程が適用される自動製パン器においては、粉砕工程で穀物粒を粉砕した後に、例えばグルテンやドライイースト等のパン原料をパン容器に投入する必要がある。このため、自動製パン器の構成として、例えばブザー音等を用いてユーザにグルテン等のパン原料の投入タイミングを報知し、ユーザ自身がグルテン等のパン原料を投入する構成を採用することが考えられる。しかし、このような構成の自動製パン器では、前述の投入タイミングになるまでユーザは機器の近くに居なければならず非常に不便である。
【0008】
このようなことから、粉砕工程後に投入されるパン原料を自動投入できるように構成するのが好ましい。粉砕工程後に、例えばグルテンやドライイースト等のパン原料を自動投入するにあたって、例えば特許文献1から3に示されるような具材容器を使用することが考えられる。
【0009】
しかしながら、グルテンやドライイーストといった粉体は、レーズンやナッツ類等の具材に比べて容器内に残留しやすい。このために、従来知られている具材容器を用いてグルテンやドライイースト等を自動投入しようとすると、自動投入されるパン原料の量が不正確となり、不出来なパンを製造してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、粉砕工程後にパン原料を適切に自動投入し易い自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器と、加熱手段が設けられ、前記パン容器が収容される焼成室と、パン原料として前記パン容器に投入される穀物粒を粉砕する粉砕手段と、前記パン容器内の穀物粒を粉砕した後の所定のタイミングで前記パン容器に投入されるパン原料を収納するパン原料収納容器と、前記パン原料収納容器が有するロック機構のロック状態を解除するロック解除手段と、前記パン容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、前記加熱手段、前記粉砕手段、前記ロック解除手段、及び前記混練手段を制御可能に設けられ、パンを焼き上げる製パンコースを実行させる制御手段と、を備える自動製パン器であって、前記パン原料収納容器は、パン原料を収納するとともにパン原料を前記パン容器に排出するための排出口が設けられる収納部と、前記排出口を開閉する蓋部と、前記蓋部によって前記排出口が閉じられた状態が維持される前記ロック状態を得るための前記ロック機構と、前記ロック解除手段によって前記ロック状態が解除されて前記排出口が開かれた場合に前記収納部に衝突する衝突部と、を有することを特徴としている。
【0012】
本構成によれば、穀物粒からパンを焼き上げる場合に、穀物粒を粉砕した後の所定のタイミングでパン原料収納容器の開口部が開いた状態となるようにロック解除手段を制御することによって、例えばグルテンやドライイースト等のパン原料を自動投入することができる。このために、本構成の自動製パン器はユーザにとって使い勝手がよい。そして、自動製パン器が備えるパン原料収納容器は、パン原料をパン容器に投入する際に、収納部と衝突部との間で衝突が起こるようになっている。この衝突に伴って収納部に衝撃が加わる(振動が生じる)ために、収納部内にグルテンやドライイースト等の粉体が残留する量を低減することができる。すなわち、本構成の自動製パン器では、グルテン等のパン原料を自動投入する際に、パン原料収納容器に粉が残存してパン容器内のパン原料の量が不正確になるという事態を抑制できる。
【0013】
上記構成の自動製パン器において、前記衝突部は、前記収納部を囲むように配置されて前記収納部に対して相対移動する枠体部であって、前記ロック解除手段によって前記ロック状態が解除されて前記排出口が開かれた場合に、前記相対移動により前記収納部と前記枠体部との間に衝突が起こることとしてもよい。本構成によれば、粉体が残留し難いパン原料収納容器を大型化することなく形成することが可能である。
【0014】
上記構成の自動製パン器の具体的な構成例として、前記パン原料収納容器から前記パン容器にパン原料が投入される状態において、前記枠体部はその開口面が前記パン容器の開口面と略平行となるように固定配置され、前記収納部は、前記排出口が前記パン容器の開口と対向するように配置されるとともに前記パン容器の開口面と略垂直な方向に可動するように設けられ、前記蓋部は、前記枠体部に回動可能に取り付けられ、前記収納部の側壁外面には、前記排出口を挟んで略対向配置される一対の第1の腕部が設けられ、前記第1の腕部は前記収納部の可動方向と略平行な方向に延びる第1の筒状部を有し、前記枠体部の側壁外面には、その開口を挟んで略対向配置される一対の第2の腕部が設けられ、前記第2の腕部は、前記第1の筒状部と略平行な方向に延びるとともに前記第1の筒状部と嵌め合う第2の筒状部を有し、前記第1の筒状部及び前記第2の筒状部の内部には、前記蓋部によって前記排出口が閉じられた状態において前記収納部を前記蓋部に向けて付勢する付勢部材が収容され、前記ロック状態が解除されて前記蓋部が回転することにより、前記収納部が前記付勢部材の付勢方向に移動して、前記第1の腕部と前記第2の腕部とが衝突することしてもよい。
【0015】
本構成では、枠体部を固定配置し、収納部が可動する構成とすることで、枠体部が収納部に対して相対移動する構成を得て、該相対移動を利用して収納部と枠体部との衝突が得られるようになっている。この構成では、パン原料が収納される収納部側を動かすために、収納部にパン原料が残留する可能性を低減しやすい。
【0016】
上記構成の自動製パン器において、前記ロック状態が解除されて前記収納部が前記付勢方向に移動して、前記収納部の一部が前記枠体部から前記付勢方向に突出した状態となった場合において、前記蓋部を回転させることにより、前記収納部が前記蓋部に押されて前記付勢方向と逆方向に移動できるように、前記収納部には斜面部が形成されているのが好ましい。
【0017】
本構成によれば、パン原料収納容器の蓋部を閉める際に、収納部を先に持ち上げておいてから収納部の排出口を閉じるために蓋部を回転するという動作を行わなくてよい。すなわち、蓋部の回転によって同時に収納部を持ち上げることができるために、パン原料収納容器の蓋部を閉める動作が容易となり、ユーザにとって使い勝手がよい。
【0018】
上記構成の自動製パン器において、前記収納部には、パン原料を投入するための開閉可能な原料投入口が前記排出口とは別に設けられていることとしてもよい。これにより、ユーザは、排出口の開閉を行うための蓋部を閉めた状態でパン原料を投入することができるために便利である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、穀物粒からパンを製造できる自動製パン器であって、粉砕工程後にパン原料を適切に自動投入し易い自動製パン器を提供できる。このため、家庭でのパン製造をより身近なものとして、家庭でのパン作りが盛んになることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の自動製パン器の垂直断面図
【図2】図1に示す本実施形態の自動製パン器を図1と直角の方向に切断した一部垂直断面図
【図3】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略斜視図
【図4】本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略平面図
【図5】混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図6】混練ブレードが開き姿勢にある場合のパン容器の上面図
【図7】混練ブレードが開き姿勢にある場合のクラッチの状態を示す概略平面図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略図
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略断面図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の動作を説明するための概略図
【図11】本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図
【図12】本実施形態の自動製パン器における米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な時間や温度等はあくまでも例示であり、本発明の内容を限定するものではない。
【0022】
図1は、本実施形態の自動製パン器の垂直断面図である。図2は、図1に示す本実施形態の自動製パン器を図1と直角の方向に切断した一部垂直断面図である。図3は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略斜視図で、斜め下方から見た場合の図である。図4は、本実施形態の自動製パン器が備える粉砕ブレード及び混練ブレードの構成を説明するための概略平面図で、下から見た図である。図5は、混練ブレードが折り畳み姿勢にある場合のパン容器の上面図である。図6は、混練ブレードが開き姿勢にある場合のパン容器の上面図である。以下、主に図1から図6を参照しながら、本実施形態の自動製パン器1の構成について説明する。
【0023】
なお、以下においては、図1における左側が自動製パン器1の正面(前面)、右側が自動製パン器1の背面(後面)とする。また、自動製パン器1に正面から向き合った観察者の左手側が自動製パン器1の左側、右手側が自動製パン器1の右側であるものとする。
【0024】
自動製パン器1は、合成樹脂製の外殻により構成される箱形の本体10を有する。本体10には、その左側面と右側面の両端に連結したコの字状の合成樹脂製ハンドル11が設けられ、これにより運搬容易となっている。本体10の上面前部には操作部20が設けられる。操作部20には、図示は省略するが、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(米粒からパンを製造するコース、米粉からパンを製造するコース、小麦粉からパンを製造するコース等)を選択する選択キー等の操作キー群と、操作キー群によって設定された内容やエラー等を表示する表示部が設けられている。なお、表示部は、例えば、液晶表示パネルと、発光ダイオードを光源とする表示ランプとによって構成される。
【0025】
操作部20から後ろの本体上面は、合成樹脂製の蓋30で覆われる。蓋30は、図示しない蝶番軸で本体10の背面側に取り付けられており、その蝶番軸を支点として垂直面内で回動する構成となっている。なお、図示しないが、蓋30には耐熱ガラスからなる覗き窓が設けられており、後述の焼成室40を覗けるようになっている。
【0026】
本体10の内部には、平面形状略矩形の焼成室40が設けられている。焼成室40は板金製で、上面が開口しており、ここからパン容器50が入れられる。焼成室40は水平断面略矩形の4つの周側壁40aと底壁40bとを備える。焼成室40の内部には、シーズヒータ41が焼成室40に収容されたパン容器50を包囲するように配置され、パン容器50内のパン原料を加熱できるようになっている。なお、シーズヒータ41は、本発明の加熱手段の実施形態である。
【0027】
また、本体10の内部には板金製の基台12が設置されている。基台12には、焼成室40の中心にあたる箇所に、アルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器支持部13が固定されている。パン容器支持部13の内部は焼成室40の内部に露出している。
【0028】
パン容器支持部13の中心には原動軸14が垂直に支持されている。原動軸14に回転を与えるのはプーリ15、16である。なお、プーリ15と原動軸14の間にはクラッチが配置されていて、プーリ15を一方向に回転させて原動軸14に回転を伝える時、原動軸14の回転はプーリ16に伝わらず、プーリ16をプーリ15とは逆方向に回転させて原動軸14に回転を伝える時、原動軸14の回転はプーリ15には伝わらない仕組みになっている。
【0029】
プーリ15を回転させるのは、基台12に固定された混練モータ60である。混練モータ60は竪軸であって、下面から出力軸61が突出する。出力軸61には、プーリ15にベルト63で連結されるプーリ62が固定されている。混練モータ60自身が低速・高トルクタイプであり、その上、プーリ62がプーリ15を減速回転させるので、原動軸14は低速・高トルクで回転する。
【0030】
プーリ16を回転させるのは同じく基台12に支持された粉砕モータ64である。粉砕モータ64も竪軸であって、上面から出力軸65が突出する。出力軸65には、プーリ16にベルト67で連結されるプーリ66が固定されている。粉砕モータ64は、後述する粉砕ブレードに高速回転を与える役割を担う。そのため、粉砕モータ64には高速回転のものが選定され、プーリ66とプーリ16の減速比はほぼ1:1になるように設定されている。
【0031】
パン容器50は板金製で、バケツのような形状をしており、口縁部には手提げ用のハンドル(図示せず)が取り付けられている。パン容器50の水平断面は四隅を丸めた矩形である。また、パン容器50の底部には、詳細は後述する粉砕ブレード54とカバー70を収容する凹部55が形成されている。凹部55は平面形状円形で、カバー70の外周部と凹部55の内面の間には、パン原料の流動を可能とする隙間56が設けられている。また、パン容器50の底面には、アルミニウム合金のダイキャスト成型品である筒状の台座51が設けられている。パン容器50は、この台座51がパン容器支持部13に受け入れられた状態で、焼成室40内に配置されるようになっている。
【0032】
パン容器50の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸52が、シール対策が施された状態で支持されている。ブレード回転軸52には、原動軸14よりカップリング53を介して回転力が伝えられる。カップリング53を構成する2部材のうち、一方の部材はブレード回転軸52の下端に固定され、他の部材は原動軸14の上端に固定されている。カップリング53の全体は、台座51とパン容器支持部13に囲い込まれる。
【0033】
パン容器支持部13の内周面と台座51の外周面とには、それぞれ図示しない突起が形成されており、これらの突起は周知のバヨネット結合を構成する。詳細には、パン容器50をパン容器支持部13に取り付ける際、台座51の突起がパン容器支持部13の突起に干渉しないようにしてパン容器50を下ろす。そして、台座51がパン容器支持部13に嵌り込んだ後、パン容器50を水平にひねると、パン容器支持部13の突起の下面に台座51の突起が係合する。これにより、パン容器50が上方に抜けなくなる。また、この操作で、カップリング53の連結も同時に達成される。
【0034】
ブレード回転軸52には、パン容器50の底部より少し上の箇所に、粉砕ブレード54が取り付けられている。粉砕ブレード54は、ブレード回転軸52に対して回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード54は、ステンレス鋼板製であり、図3及び図4に示すように、飛行機のプロペラのような形状(この形状はあくまでも一例である)を有している。粉砕ブレード54の中心部はブレード回転軸52に嵌合するハブ54aとなっている。このハブ54aの下面には、ハブ54aを直径方向に横断する溝54bが形成されている。
【0035】
粉砕ブレード54をブレード回転軸52の上から嵌め込んだ場合に、ブレード回転軸52を水平に貫くピン(図示せず)が、ハブ54aを受け止め、また、溝54bに係合し、粉砕ブレード54をブレード回転軸52に対して回転不能に連結する。粉砕ブレード54は、ブレード回転軸52から引き抜いて取り外せるようになっており、製パン作業終了後の洗浄や、切れ味が悪くなった時の交換を手軽に行うことができる。なお、この粉砕ブレード54は、粉砕モータ64と共に、本発明の粉砕手段の実施形態である。
【0036】
ブレード回転軸52の上端には、平面形状円形のドーム状カバー70が取り付けられている。カバー70は、アルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、粉砕ブレード54のハブ54a(図2及び図3参照)によって受け止められ、粉砕ブレード54を覆い隠す。このカバー70もブレード回転軸52から簡単に引き抜くことができるので、製パン作業終了後の洗浄を手軽に行うことができる。
【0037】
カバー70の上部外面には、ブレード回転軸52から離れた箇所に配置された垂直方向に延びる支軸71により、平面形状「く」の字形の混練ブレード72が取り付けられている。混練ブレード72はアルミニウム合金のダイキャスト成型品である。支軸71は、混練ブレード72に固定ないし一体化されており、混練ブレード72と動きを共にする。
【0038】
混練ブレード72は、支軸71を中心として水平面内で回動し、図5に示す折り畳み姿勢と、図6に示す開き姿勢とをとる。折り畳み姿勢では、混練ブレード72はカバー70に形成したストッパ部73に当接しており、それ以上カバー70に対し時計方向の回動を行うことができない。混練ブレード72の先端は、この時、カバー70から少し突き出している。開き姿勢では、混練ブレード72の先端はストッパ部73から離れ、混練ブレード72の先端はカバー70から大きく突き出す。
【0039】
なお、混練ブレード72は、混練モータ60と共に、本発明の混練手段の実施形態である。また、カバー70には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓74と、各窓74に対応して内面側に設けられて粉砕ブレード54によって粉砕された粉砕物を窓74の方向に誘導するリブ75と、が形成されている。この構成により、粉砕ブレード54を用いた粉砕の効率が高められている。
【0040】
カバー70とブレード回転軸52の間には、例えば図4に示すようなクラッチ76が介在する。クラッチ76は、混練モータ60が原動軸14を回転させるときのブレード回転軸52の回転方向(この回転方向を「正方向回転」とする。図4においては時計方向回転が該当。)において、ブレード回転軸52とカバー70を連結する。逆に、粉砕モータ64が原動軸14を回転させるときのブレード回転軸52の回転方向(この回転方向を「逆方向回転」とする。図4においては反時計方向回転が該当。)では、クラッチ76はブレード回転軸52とカバー70の連結を切り離す。なお、図5及び図6では、前記「正方向回転」は反時計方向回転となり、前記「逆方向回転」は時計方向回転となる。
【0041】
クラッチ76は、混練ブレード72の姿勢に応じて連結状態を切り換える。すなわち、混練ブレード72が図5に示す折り畳み姿勢にある場合は、図4に示すように、第2係合体76b(例えば支軸71に固定される)は第1係合体76a(例えば粉砕ブレード54のハブ54aに固定される)の回転軌道に干渉しており、ブレード回転軸52が正方向回転すると、第1係合体76aと第2係合体76bは係合し、ブレード回転軸52の回転力がカバー70及び混練ブレード72に伝達される。一方、混練ブレード72が図6に示す開き姿勢にある場合には、図7に示すように、第2係合体76bは第1係合体76aの回転軌道から逸脱した状態にあり、ブレード回転軸52が逆方向回転しても、第1係合体76aと第2係合体76bは係合しない。従って、ブレード回転軸52の回転力はカバー70及び混練ブレード72に伝達されない。なお、図7は、混練ブレードが開き姿勢にある場合のクラッチの状態を示す概略平面図である。
【0042】
図1及び図2に戻って、本実施形態の自動製パン器1は、蓋30に取り付けられるパン原料収納容器80を備える。なお、本実施形態ではパン原料収納容器80を蓋30に取り付ける構成としているが、場合によっては本体10に取り付ける構成としても構わない。このパン原料収納容器80は、パンを焼き上げる製パンコースの実行途中で、一部のパン原料をパン容器50に自動投入できるように設けられた容器である。以下、図8、図9及び図10を参照して、このパン原料収納容器80の構成について説明する。
【0043】
なお、図8は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略図で、図8(a)は斜め上から見た場合の斜視図、図8(b)は図8(a)に示す破線矢印方向に沿って見た場合の側面図、図8(c)は上から見た場合の平面図である。図9は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の構成を示す概略断面図で、図9(a)は図8(b)のA−A位置における断面図、図9(b)は図8(c)のB−B位置における断面図、図9(c)は図9(a)における投入口用蓋部が開かれた状態を示す図である。図10は、本実施形態の自動製パン器が備えるパン原料収納容器の動作を説明するための概略図で、図10(a)は図9(a)の蓋部が開いた場合の状態を示す図、図10(b)は図9(b)の蓋部が開いた場合の状態を示す図である。
【0044】
図8から図10に示すように、パン原料収納容器80は、大きくは、パン原料を収納する収納部81と、収納部81を囲むように配置されて収納部81に対して相対移動する枠体部82と、収納部81に設けられる排出口81aを開閉する蓋部83と、蓋部83が収納部81の排出口81aを閉じた状態を維持する(この維持状態が本発明のロック状態に該当)ためのロック機構84と、を備えている。
【0045】
収納部81は例えば樹脂成型によって得られる箱形部材であって、上から見た場合の平面形状は略長方形状(図8(c)参照)となっており、長手方向に沿って見た場合の側面形状は略五角形状(図9(a)参照)となっている。また、収納部81は、パン原料収納容器80が取り付けられた蓋30が閉められた状態において、排出口81aとなる箱の開口部分(平面形状略長方形)がパン容器50(例えば図1参照)の開口と対向する姿勢(図8〜図10に示す姿勢が該当する)で配置される。
【0046】
収納部81の短手方向の側壁(平面形状略五角であり、2つある)の各外面側には、第1の腕部811が互いに略対称な関係となるように設けられている。すなわち、収納部81の側壁外面には、排出口81aを挟んで略対向配置される一対の第1の腕部811が設けられている。第1の腕部811は、収納部81の側壁上部側から収納部81の長手方向と略平行な方向に延出する第1の延出部811aと、第1の延出部811aに対して略垂直な方向であって下向きに延びる第1の筒状部811bとを有する。
【0047】
なお、本実施形態においては、収納部81の上面側(排出口81aと対向する面側)には、パン原料を投入できるように原料投入口81b(図9(c))が設けられている。この原料投入口81bは、収納部81の側壁に設けられるヒンジ部813によって回動可能に支持される投入口用蓋部812によって開閉可能となっている。図9(a)に示すように、投入口用蓋部812の内面側にはフック部812aが形成されており、これが、収納部81の側壁内面側に形成される係合部81cと係合することによって、投入口用蓋部81の閉じられた状態が維持できるようになっている。本実施形態においては、ユーザがパン原料収納部80にパン原料を収納し易いように原料投入口81b(それに伴って、投入口用蓋部812及びヒンジ部813)を設ける構成としているが、この原料投入口81bは設けない構成としても構わない。本実施形態における投入口用蓋部812及びヒンジ部813は、第1の腕部811とともに本発明の収納部の一部である。
【0048】
枠体部82(本発明の衝突部の実施形態)は、例えば樹脂成形によって得られる平面形状略長方形の部材であり、上から見た場合に、その開口部分のサイズは収納部81のサイズより若干大きめとなっている(図8(c)参照)。枠体部82は、パン原料収納容器80が取り付けられた蓋30が閉められた状態において、その開口面(平面形状略長方形)がパン容器50の開口面と略平行となる姿勢で配置される。上述の収納部81との関係を説明すると、収納部81が枠体部82の開口に嵌め込まれたような状態となる。枠体部82の高さ(厚み)は収納部81の高さより低く、図8や図9に示すように、枠体部81の開口に嵌め込まれた収納部81は枠体部82から突出する。
【0049】
枠体部82の短手方向の側壁(2つある)の各外面側には、第2の腕部821が互いに略対称な関係となるように設けられている。すなわち、枠体部82の側壁外面には、その開口を挟んで略対向配置される一対の第2の腕部821が設けられている。第2の腕部821は、枠体部82の側壁下部側から枠体部82の長手方向と略平行な方向に延出する第2の延出部821aと、第2の延出部821aに対して略垂直な方向であって上向きに延びる第2の筒状部821bとを有する。第2の筒状部821bは、収納部81に設けられる第1の筒状部811bよりサイズが小さく、その上部側の一部が第1の腕部811bに嵌め込まれた状態となっている。なお、本実施形態の構成とは逆に、第1の筒状部811bのサイズを第2の筒状部821bのサイズより小さくし、それらが互いに嵌め合う構成としても構わない。
【0050】
第1の筒状部811b及び第2の筒状部821bの内部には、一方端が第1の筒状部811bの上部に固定され、他方端が第2の筒状部821bの下部に固定される付勢バネ85(本発明の付勢部材の実施形態)が収容されている。
【0051】
また、枠体部82の短手方向の側壁(2つある。第2の腕部821が設けられている側壁である。)の各外面の上部寄りには取付部822が設けられており、これにより、枠体部82は自動製パン器1の蓋30(図1参照)に固定配置されるようになっている。なお、枠体部82の開口に嵌め込まれる収納部81は固定されることなく可動する(枠体部82の開口面、換言すればパン容器50の開口面と略垂直な方向に可動する)ようになっている。このため、収納部81を基準とした場合には枠体部82は移動するように見え、枠体部82は収納部81に対して相対移動する構成となっている。
【0052】
蓋部83は、例えば樹脂成形によって得られる平面形状略長方形の部材である。この蓋部83は、枠体部82の長手方向の側壁の一方(図8(b)において背面側の側壁)の下部側外面に設けられるヒンジ部823(図9(a)参照)によって、枠体部82の開口面及び長手方向の側壁(互いに略直交する関係にある)に略平行な回転軸AX(図9(a)において紙面と略垂直な方向に延びる軸)を中心として回動可能に枠体部82に取り付けられている。蓋部82は、収納部81の排出口81aを完全に覆うサイズとなっており、本実施形態においては、枠体部82の枠のサイズと同等となっている。
【0053】
ロック機構84は、枠体部82の短手方向の側壁の一方の外面側に設けられるフック支持部824と、フック支持部824にシャフト86を中心として回動可能に支持されるフック87(例えば樹脂成型品)と、フック87をフック支持部824が設けられる外壁から離れる方向に付勢するバネ88と、によって構成されている。バネ88に付勢されたフック87が、蓋部83の側面に設けられる図示しない係合部に引っ掛けられた状態となることにより、蓋部83によって収納部81の排出口81aが閉じられた状態が維持されるロック状態(図8、図9に示す状態)が得られる。なお、図8及び図9に示すロック状態においては、第1の腕部811及び第2の腕部812の内部に収容される付勢バネ85は収納部81を蓋部83に向けて付勢しており、収納部81の下面は、蓋部83の内面を押圧しながら蓋部83の内面に当接している。
【0054】
フック87がバネ88の付勢力に抗して押圧されると、フック87と蓋部83に設けられる係合部との係合が解除されて、蓋部83が回転軸AX(図9(a)参照)を中心として反時計方向に回転する(図10(a)参照)。蓋部83が回転すると、ロック状態において蓋部83によって支持されていた収納部81は蓋部83による支持を得られなくなるために、付勢バネ85の付勢力によって付勢方向(鉛直方向下向き)に移動を開始する。移動を開始した収納部81は、収納部81に設けられる第1の筒状部811b(第1の腕部811が有する)の先端(下端)が枠体部82に設けられる第2の延出部821a(第2の腕部821が有する)に衝突して、その移動を止められ、枠体部82に支持されるようになる(図10(b)参照)。
【0055】
ところで、本実施形態においては、箱形状に形成される収納部81を略直方体形状とせずに斜面部81dを設けて、長手方向に沿って側面視した場合に略五角形状となるように構成している。これは、収納部81の一部が枠体部82から下側に突出した状態(図10(a)の状態)から蓋部83によって収納部81の排出口81aが閉じられた状態(図9(a)の状態)とする場合に、蓋部83回転によって同時に収納部81を持ち上げられるようにするためである。
【0056】
すなわち、収納部81が略直方体形状の場合(図10(a)に破線で示す形状の場合)、排出口81aを閉じるために蓋部83を時計方向回転させると、蓋部83の内面側が鉛直方向と平行な状態に近い状態で収納部81にぶつかるために、そのまま蓋部83を回転させようとしても収納部81が邪魔となって蓋部83の回転を行えない。このため、ユーザは、収納部81を持ち上げる動作を先に行ってから蓋部83を回転させる必要がある。この点、本実施形態のように構成すれば、蓋部83の内面が鉛直方向に垂直な方向に近い状態で収納部81にぶつかるようにできるために、蓋部83の回転によって同時に収納部81を持ち上ることができる。このために、本実施形態の構成がユーザの使い勝手が良く好ましい。ただし、本実施形態のように斜面部81dを設けずに、収納部81を略直方体形状等としても構わない。
【0057】
図11は、本実施形態の自動製パン器の制御ブロック図である。図11に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置90によって行われる。制御装置90は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置90は、焼成室40の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置90には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。この制御装置90は本発明の制御手段の実施形態である。
【0058】
制御装置90には、上述の操作部20と、温度センサ18と、ソレノイド駆動回路91と、粉砕モータ駆動回路92と、混練モータ駆動回路93と、ヒータ駆動回路94と、が電気的に接続されている。温度センサ18は、焼成室40の温度を検知できるように設けられるセンサである。
【0059】
ソレノイド駆動回路91は、制御装置90からの指令の下でソレノイド19の駆動を制御する回路である。ソレノイド19は、上述のパン原料収納容器80が備えるロック機構84のロック状態を解除するために設けられ、例えば自動製パン器1の蓋30に取り付けられている。ただし、ソレノイド19は場合によっては、本体10に取り付けてもよい。ソレノイド19が駆動されると、プランジャーのハウジングからの突出量が増大する。そして、このプランジャー、或いは、このプランジャーに押圧されて可動する可動部材によってロック機構84を構成するフック87が押圧され、ロック機構84のロック状態が解除されるようになっている。なお、ソレノイド19は、本発明のロック解除手段の実施形態である。
【0060】
粉砕モータ駆動回路92は、制御装置90からの指令の下で粉砕モータ64の駆動を制御する回路である。また、混練モータ駆動回路93は、制御装置90からの指令の下で混練モータ60の駆動を制御する回路である。ヒータ駆動回路94は、制御装置90からの指令の下でシーズヒータ41の動作を制御する回路である。
【0061】
制御装置90は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出し、ソレノイド駆動回路91を介してソレノイド19の動作制御、粉砕モータ駆動回路92を介して粉砕モータ64による粉砕ブレード54の回転制御、混練モータ駆動回路93を介して混練モータ60による混練ブレード72の回転制御、ヒータ駆動回路94を介してシーズヒータ41による加熱動作制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
【0062】
次に、以上のように構成される本実施形態の自動製パン器1によって、米粒(穀物粒の一形態)からパンを製造する(焼き上げる)製パンコース(米粒用製パンコース)を実行する場合の動作を説明する。なお、本実施形態の自動製パン器1は、小麦粉や米粉をパン原料としてパンを焼き上げる製パンコースも実行可能に設けられているが、本発明は、穀物粒(米粒)を粉砕した後に、残りのパン原料を自動投入する仕組みに特徴を有する。このため、米粒用製パンコースを実行する場合の動作に絞って説明する。
【0063】
図12は、本実施形態の自動製パン器における米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図12に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0064】
米粒用製パンコースを実行するにあたって、ユーザは、パン容器50に、粉砕ブレード54と混練ブレード72付きのカバー70とを取り付ける。そして、ユーザは、米粒と水をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器50に入れる。なお、ここでは、米粒と水とを混ぜることにしているが、単なる水の代わりに、例えば、だし汁のような味成分を有する液体、果汁、アルコールを含有する液体等としてもよい。
【0065】
また、ユーザは、米粒と水以外のパン原料(通常複数ある)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン原料収納容器80に収納する。例えば、図9(c)に示すように、収納部81の排出口81aの開閉を行うために設けられる蓋部83は閉じた状態(ロック状態)とする。そして、投入口用蓋部812を開いた状態として、原料投入口81bから収納すべきパン原料を収納部81に収納する。そして、収納するべきパン原料を収納したら、投入口用蓋部812を閉じる。
【0066】
なお、パン原料収納容器80に収納されるパン原料としては、例えば、グルテン、ドライイースト、食塩、砂糖、ショートニング等が挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉及び/又は増粘剤(グアガム等)をパン原料収納容器80に収納するようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤は用いずに、例えばドライイースト、食塩、砂糖、ショートニングをパン原料収納容器80に収納するようにしてもよい。また、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングを米粒と共にパン容器50に投入し、パン原料収納容器80には例えばグルテン、ドライイーストのみを収納するようにしてもよい。
【0067】
この後、ユーザは、米粒と水とを投入したパン容器50を焼成室40に入れ、更に、パン原料収納容器80を所定の位置に取り付けて(枠体部82を蓋30に固定して)蓋30を閉じ、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、米粒からパンを製造する米粒用製パンコースが開始される。
【0068】
なお、パン原料収納容器80は、排出口81aが開かれた状態において、排出口81aの少なくとも一部がパン容器50の開口と対向するように配置される。排出口81aの一部だけがパン容器50の開口と対向する構成の場合には、パン原料が漏れなくパン容器50に投入されるように工夫する必要がある。このような工夫として、例えば、ロック状態が解除されて回転した蓋体83が斜めになった状態でパン容器50の縁と当接するようにパン原料収納容器80を構成し、パン原料が蓋体83上を滑りながらパン容器50内に投入されるようにすること等が挙げられる。この場合、収納部81の移動が蓋部83によって邪魔されないように構成する必要がある。
【0069】
米粒用製パンコースがスタートされると、制御装置90の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、米粒と水との混合物が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(本実施形態では50分)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0070】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する。このために、浸漬工程の時間は、例えば自動製パン器1が使用される環境温度等によって変動させるようにしてもよい。これにより、米粒の吸水度合いのばらつきを抑制できる。また、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程時にシーズヒータ41に通電して焼成室40の温度を高めるようにしてもよい。
【0071】
また、浸漬工程においては、その初期段階で粉砕ブレード54を回転させ、その後も断続的に粉砕ブレード54を回転させるようにしてもよい。このようにすると、米粒の表面に傷をつけることができ、米粒の吸液効率を高められる。
【0072】
上記所定時間が経過すると、制御装置90の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード54が高速回転される。具体的には、制御装置90は、粉砕モータ64を制御してブレード回転軸52を逆方向回転させ、米粒と水との混合物の中で粉砕ブレード54の回転を開始させる。なお、この際、カバー70もブレード回転軸52の回転に追随して回転を開始するが、次のような動作によってカバー70の回転はすぐに阻止される。
【0073】
粉砕ブレード54を回転させるためのブレード回転軸52の回転に伴うカバー70の回転方向は、図5において時計方向であり、混練ブレード72は、それまで折り畳み姿勢(図5に示す姿勢)であった場合には、米粒と水の混合物から受ける抵抗で開き姿勢(図6に示す姿勢)に転じる。混練ブレード72が開き姿勢になると、図7に示すように、クラッチ76は、第2係合体76bが第1係合体76aの回転軌道から逸脱するために、ブレード回転軸52とカバー70の連結を切り離す。同時に、開き姿勢になった混練ブレード72は図6に示すようにパン容器50の内側壁に当るために、カバー70の回転は阻止される。
【0074】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード54の回転は間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。なお、最後のサイクルでは、5分間の停止は行わない。粉砕ブレード54の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器50内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0075】
なお、自動製パン器1においては所定の時間(本実施形態では50分)で粉砕工程が終了するようにしている。しかしながら、米粒の硬さのばらつきや環境条件によって粉砕粉の粒度にばらつきが生じることがある。このため、粉砕工程の終了を、粉砕時の粉砕モータ64の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に判断する構成等としても構わない。
【0076】
粉砕工程が終了すると、制御装置90の指令によって練り工程が開始される。なお、この練り工程は、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で行う必要がある。このため、所定の温度範囲となった時点で練り工程を開始するようにしてもよい。
【0077】
練り工程が開始されると、制御装置90は混練モータ60を制御してブレード回転軸52を正方向回転させる。ブレード回転軸52の回転によって粉砕ブレード54が正方向回転し、粉砕ブレード54の周囲のパン原料が正方向に流動することにより、それにつられてカバー70が正方向(図6においては反時計方向)に回転する。カバー70が正方向に回転すると、パン容器50内のパン原料(この段階では米粒の粉砕粉と水との混合物)からの抵抗を受けて混練ブレード72が開き姿勢(図6参照)から折り畳み姿勢(図5参照)に転じる。これを受けてクラッチ76は、図4に示すように、第2係合体76bが第1係合体76aの回転軌道に干渉する角度となり、ブレード回転軸52とカバー70を連結する。これにより、カバー70と混練ブレード72は、ブレード回転軸52と一体となって正方向に回転する。なお、混練ブレード72の回転は低速・高トルクとされる。
【0078】
混練ブレード72の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置90によって制御される。混練ブレード72の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置90はソレノイド19を駆動させて、パン原料収納容器80が備えるロック機構84によるロック状態を解除させる。これにより、パン原料収納容器80の蓋部83が回転して収納部81の排出口81aが開かれ、例えば、グルテン、ドライイースト、食塩、砂糖、ショートニングといったパン原料がパン容器50内に自動投入される(図10に示す状態)。
【0079】
なお、排出口81aを開いた後の蓋部83の位置は、後に行われる発酵工程において、パン生地と接触しない位置となるように構成するのが好ましい。また、本実施形態では、パン原料収納容器80に収納されるパン原料を、混練ブレード72が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード72が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード72を回転した状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散させやすく好ましい。
【0080】
上述ように、パン原料収納容器80においては、収納部81の排出口81aを開く動作を行う(ロック状態から蓋部83が回転する)と、収納部81が付勢バネ85の付勢方向(鉛直方向下向き)に移動を開始して、収納部81と枠体部82との間で衝突(第1の筒状部811bと第2の延出部821aとの衝突)が起こる。この際にパン原料を収納する収納部81に衝撃が加わる(振動が生じる)ために、収納部81にパン原料が残留する可能性を低減できる。
【0081】
パン原料収納容器80に収納されたパン原料がパン容器50に投入された後は、混練ブレード72の回転によってパン容器50内のパン原料は混練され、所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード72が生地を振り回してパン容器50の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード72の回転によりカバー70も回転する。カバー70が回転すると、カバー70に形成されるリブ75も回転するために、カバー70内のパン原料は速やかに窓74から排出され、混練ブレード72が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0082】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(例えば10分)を採用する構成としている。ただし、練り工程の時間を一定とすると、環境温度等によってパン生地の出来上がり具合が変動する場合がある。このため、例えば、混練モータ60の負荷の大きさ(例えば、モータの制御電流等で判断できる)を指標に混練工程の終了を判断する構成等としても構わない。
【0083】
なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中でユーザの手によって投入するようにすればよい。このような具材についても、パン原料収納容器80でグルテンやイースト等と同時に投入しても構わないが、具材を練り工程の早い段階で投入すると具材が潰れて好ましくない。このために、グルテンやドライイースト等とは分けて、これらよりも遅いタイミングでパン容器50に投入するのが好ましい。
【0084】
練り工程が終了すると、制御装置90の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置90はシーズヒータ41を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)にする。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(本実施形態では60分)放置される。
【0085】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード72を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0086】
発酵工程が終了すると、制御装置90の指令によって焼成工程が開始される。制御装置90は、シーズヒータ41を制御して、焼成室40の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば125℃)まで上昇させ、焼成環境下で所定の時間(本実施形態では50分)パンを焼く。焼成工程の終了については、例えば操作部20の図示しない液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋30を開けてパン容器50を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0087】
以上のように、本実施形態の自動製パン器1によれば、米粒からパンを焼き上げることが可能であるために、非常に便利である。そして、米粒の粉砕後に投入される例えばグルテンやドライイースト等のパン原料を、自動的に正確に投入できるのでユーザにとって使い勝手がよい。
【0088】
なお、以上に示した自動製パン器は本発明の一例であり、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0089】
例えば、以上に示した実施形態におけるパン原料収納容器80の構成は適宜変更可能である。すなわち、第1の腕部811や第2の腕部821が設けられる側壁は短手方向の側壁でなく、長手方向の側壁であってもよく、また、各腕部の数は適宜変更しても構わない。また、蓋部83を開く際の蓋部の回転方向やロック機構84を設ける位置等についても適宜変更可能である。更に、収納部81が移動した場合における、収納部81と枠体部82とが衝突する箇所は、本実施形態の構成に限定されず適宜変更可能である。両者の衝突により、収納部81に衝撃が加われば他の構成でもよい。
【0090】
また、以上に示した実施形態では、枠体部82を固定し、収納部81を可動する構成とすることで、本発明における、収納部に対して相対移動する枠体部を得た。しかし、この構成に限らず、収納部81を例えば自動製パン器1の蓋30に固定配置し、枠体部82が可動する(すなわち、収納部81に対して相対移動する)構成としても構わない。この場合も、収納部81枠体部82とが衝突する構成を得られ、パン原料収納容器80内にパン原料が残留する可能性を低減できる。
【0091】
また、以上に示した実施形態では、枠体部82によって本発明の衝突部を構成したが、衝突部は枠体部82とは異なるもので構成してもよい。要は、ロック機構84によるロック状態が解除されて収納部81の排出口81aが開かれた場合に収納部81に衝突するものであれば他のもので構成してもよい。このようなものの中にソレノイド等を含んでもよい。
【0092】
また、以上に示した実施形態では、米粒からパンを製造する構成としたが、米粒に限らず、小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の穀物粒を原料としてパンを製造する場合にも、本発明は適用されるものである。
【0093】
また、以上に示した米粒用製パンコースで実行される製造工程は例示であり、他の製造工程としてもよい。例を挙げると、米粒からパンを製造するにあたって、粉砕工程の後に、粉砕粉に水を吸水させるために、再度浸漬工程を行ってから練り工程を行う構成等としてもよい。
【0094】
その他、以上に示した実施形態では、自動製パン器1が粉砕ブレード54と混練ブレード72との2つのブレードを備え、その各々に対して別々にモータを設ける構成とした。しかし、これに限らず、例えば粉砕と混練とを兼用するブレード及びモータを備える構成としてもよい。また、自動製パン器によって実行される製パンコースが、米粒用製パンコースのみである構成でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0096】
1 自動製パン器
19 ソレノイド(ロック解除手段)
40 焼成室
41 シーズヒータ(加熱手段)
50 パン容器
54 粉砕ブレード(粉砕手段の一部)
60 混練モータ(混練手段の一部)
64 粉砕モータ(粉砕手段の一部)
72 混練ブレード(混練手段の一部)
80 パン原料収納容器
81 収納部
81a 排出口
81b 原料投入口
81d 斜面部
82 枠体部(衝突部)
83 蓋部
84 ロック機構
85 付勢バネ(付勢部材)
86 シャフト(ロック機構の一部)
87 フック(ロック機構の一部)
88 バネ(ロック機構の一部)
90 制御装置(制御手段)
811 第1の腕部
811a 第1の延出部(第1の腕部の一部)
811b 第1の筒状部(第1の腕部の一部)
821 第2の腕部
821a 第2の延出部(第2の腕部の一部)
821b 第2の筒状部(第2の腕部の一部)
824 フック支持部(ロック機構の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン原料が投入されるパン容器と、
加熱手段が設けられ、前記パン容器が収容される焼成室と、
パン原料として前記パン容器に投入される穀物粒を粉砕する粉砕手段と、
前記パン容器内の穀物粒を粉砕した後の所定のタイミングで前記パン容器に投入されるパン原料を収納するパン原料収納容器と、
前記パン原料収納容器が有するロック機構のロック状態を解除するロック解除手段と、
前記パン容器内のパン原料をパン生地に練り上げる混練手段と、
前記加熱手段、前記粉砕手段、前記ロック解除手段、及び前記混練手段を制御可能に設けられ、パンを焼き上げる製パンコースを実行させる制御手段と、を備える自動製パン器であって、
前記パン原料収納容器は、パン原料を収納するとともにパン原料を前記パン容器に排出するための排出口が設けられる収納部と、前記排出口を開閉する蓋部と、前記蓋部によって前記排出口が閉じられた状態が維持される前記ロック状態を得るための前記ロック機構と、前記ロック解除手段によって前記ロック状態が解除されて前記排出口が開かれた場合に前記収納部に衝突する衝突部と、を有することを特徴とする自動製パン器。
【請求項2】
前記衝突部は、前記収納部を囲むように配置されて前記収納部に対して相対移動する枠体部であって、
前記ロック解除手段によって前記ロック状態が解除されて前記排出口が開かれた場合に、前記相対移動により前記収納部と前記枠体部との間に衝突が起こることを特徴とする請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記パン原料収納容器から前記パン容器にパン原料が投入される状態において、前記枠体部はその開口面が前記パン容器の開口面と略平行となるように固定配置され、前記収納部は、前記排出口が前記パン容器の開口と対向するように配置されるとともに前記パン容器の開口面と略垂直な方向に可動するように設けられ、
前記蓋部は、前記枠体部に回動可能に取り付けられ、
前記収納部の側壁外面には、前記排出口を挟んで略対向配置される一対の第1の腕部が設けられ、前記第1の腕部は前記収納部の可動方向と略平行な方向に延びる第1の筒状部を有し、
前記枠体部の側壁外面には、その開口を挟んで略対向配置される一対の第2の腕部が設けられ、前記第2の腕部は、前記第1の筒状部と略平行な方向に延びるとともに前記第1の筒状部と嵌め合う第2の筒状部を有し、
前記第1の筒状部及び前記第2の筒状部の内部には、前記蓋部によって前記排出口が閉じられた状態において前記収納部を前記蓋部に向けて付勢する付勢部材が収容され、
前記ロック状態が解除されて前記蓋部が回転することにより、前記収納部が前記付勢部材の付勢方向に移動して、前記第1の腕部と前記第2の腕部とが衝突することを特徴とする請求項2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記ロック状態が解除されて前記収納部が前記付勢方向に移動して、前記収納部の一部が前記枠体部から前記付勢方向に突出した状態となった場合において、前記蓋部を回転させることにより、前記収納部が前記蓋部に押されて前記付勢方向と逆方向に移動できるように、前記収納部には斜面部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記収納部には、パン原料を投入するための開閉可能な原料投入口が前記排出口とは別に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−206284(P2011−206284A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77200(P2010−77200)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】