説明

自動車のステアリングサポートメンバー補強構造

【課題】車両前方からの衝撃荷重に対する耐衝撃特性や耐振動特性を低コストで向上可能なステアリングサポートメンバーの補強構造を提供する。
【解決手段】ステアリングサポートメンバー2の車幅方向中間部とフロアトンネル上部10とを連結するロアブレース4およびベースブラケット5を備え、ベースブラケット5は、フロアトンネル上部10への接合部となる周辺フランジ部51と、該周辺フランジ部で囲まれた中央膨出部52とを有し、フロアトンネル上部10との間に閉断面が形成されている。ロアブレース4は、略上下方向に延在する本体部(40,41,42)と、前記本体部に対して折曲部を介して車幅方向に延出した下端部43とを有しており、下端部43のボルト挿通用孔45に挿通したボルト34を、ベースブラケット5の後部上面53(ウエルドナット35)に螺合締結することにより、ベースブラケット5を介してフロアトンネル上部10に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングサポートメンバーの補強構造に関し、さらに詳しくは、ステアリングサポートメンバーの車幅方向中間部とフロアトンネル上部との結合構造に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室前部には、左右の車体側壁(ダッシュサイドパネル)を車体幅方向に連結するステアリングサポートメンバーが配設されている。ステアリングサポートメンバーの運転席側にステアリングコラムが支持されるとともに、インストルメントパネルや車載オーディオ、空調機器などの重量のある部品が懸架される。ステアリングサポートメンバーは鋼管等で構成され、所定の強度および剛性を有する剛性部材であるが、車室全幅に亘って延在する長尺な部材であるため、それのみで剛性を確保することは困難である。
【0003】
ステアリングサポートメンバー周辺の剛性が低いと、ステアリングの振動が運転者に伝わり不快感を与えるほか、機器類の振動により軋み音が発生する。また、衝突事故などで車両前方から衝撃荷重が作用し、ダッシュパネル上部およびカウルパネルが車室内に入り込む変形を生じると、ステアリングサポートメンバーが後方に変形され、ステアリングハンドルが後退するが、このような後方への移動は最小限に留める必要がある。
【0004】
そこで、ステアリングサポートメンバー自体の剛性および車体への結合剛性を補填し、耐振動特性や耐衝撃特性を改善するために、ステアリングサポートメンバーとカウルパネルを前後方向に連結するアッパーブレースや、ステアリングサポートメンバーとフロアトンネル部を上下方向に連結するロアブレースなどの補強部材が併設されている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
上記アッパーブレースには意図的な脆弱部が設定される場合がある。車両前方からの衝撃荷重が付加された際に、アッパーブレースが早期に座屈変形することで、衝撃を吸収すると同時に、ステアリングサポートメンバーへの衝撃を緩和することが意図されている。しかし、アッパーブレースが変形に至るまでそして変形後においても、前方からの荷重はステアリングサポートメンバーに付加されており、その間、ロアブレースの下端結合部には後上方に向かう引張力や曲げ応力が作用することになる。
【0006】
したがって、ロアブレースのフロアトンネル部での結合剛性や接合強度が低い場合には耐衝撃特性への寄与が期待できない。車体各部を構成するパネルは、軽量化のため板厚が制限されており、ロアブレースが結合されるフロアトンネル部(フロアパネル前端部またはダッシュパネル下端部)も例外ではない。特許文献1に開示されたロアブレースの下端部は、フロアトンネル部の右端の上面ないしは側面に溶接されたブラケットを横に貫通するボルトで固定されているので、後方への曲げ応力に対する結合剛性は得られないうえ、ブラケットをフロアトンネル部にスポット溶接する打点も限られ、後上方に向かう引張力に対する接合強度の向上は見込めない。
【0007】
上記以外に、ステアリングサポートメンバーからフロアトンネル部の両脇に2本のブレースを延設する補強構造もある(例えば特許文献2を参照)。しかし、このような補強構造は、車両重量の増加による燃費の悪化や、部品点数および加工工数の増加による生産コストの増加を招くうえ、フロアトンネル上部の空間的な制約が大きくなり、運転者のペダル周りの空間確保が難しくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭57−4466号公報
【特許文献2】特開平7−81376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両前方からの衝撃荷重に対する耐衝撃特性や耐振動特性を低コストで向上可能なステアリングサポートメンバーの補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明に係るステアリングサポートメンバー補強構造は、ステアリングサポートメンバー(2)の車幅方向中間部とフロアトンネル上部(10)とを連結すべく前記ステアリングサポートメンバーに剛結合されたロアブレース(4)と、前記フロアトンネル上部に接合されたベースブラケット(5)と、を備え、前記ベースブラケット(5)は、前記フロアトンネル上部への接合部となる周辺フランジ部(51)と、前記周辺フランジ部で囲まれ、前記フロアトンネル上部との間に閉断面を形成する中央膨出部(52)とを有し、前記中央膨出部は、車両前後方向の略中央から後下方に傾斜した後部上面(53)を有し、該後部上面に穿設された透孔の裏面側にウエルドナット(35)が固定される一方、前記ロアブレース(4)は、略上下方向に延在する本体部(40,41,42)と、前記本体部に対して折曲部を介して車幅方向に延出した下端部(43)とを有し、該下端部には、前記透孔に対応するボルト挿通用孔(45)が穿設されており、前記ボルト挿通用孔に挿通したボルト(34)を、前記後部上面の前記透孔を通じて前記ウエルドナット(35)に螺合締結することにより、前記ロアブレース(4)の前記下端部(43)が、前記ベースブラケット(5)を介して前記フロアトンネル上部(10)に連結されている。
【0011】
本発明に係るステアリングサポートメンバー補強構造の好適な態様では、前記ロアブレースの前記本体部は、前記ステアリングサポートメンバー(2)に剛結合された上端から下方ないしは後下方に延びる上端部(40)と、その下側に屈曲部を介して前下方に傾斜して延在する主要部分(41,42)とを含む(図1,2)。
【0012】
本発明に係るステアリングサポートメンバー補強構造のさらに好適な態様では、前記ベースブラケット(5)は、車両前後方向に略水平に延在するフロア側のフロアトンネル上部(12b)と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側のフロアトンネル上部(12a)との折曲部(12c)に跨って接合されており、前記周辺フランジ部(51)は、略水平に延在するフロア側フランジ部(51b)と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側フランジ部(51a)と含み、前記中央膨出部(52)と前記フロアトンネル上部(10,12a,12b)との間に、側面視において略菱形をなす閉断面が形成されている(図2,3)。
【0013】
本発明に係るステアリングサポートメンバー補強構造の他の好適な態様では、前記ベースブラケットが接合される前記フロアトンネル上部(12a,12b)が、ダッシュパネル(12)とフロアパネル(11)との接合部(18)に隣接したダッシュパネル(12)側にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るステアリングサポートメンバー補強構造は、上述した通り構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0015】
ベースブラケット(5)が、フロアトンネル上部(10)への接合部となる周辺フランジ部(51)と、周辺フランジ部で囲まれた中央膨出部(52)とを有し、中央膨出部の後下方に傾斜した後部上面(53)に、ロアブレースの下端部(43)がボルト(34)で固定された構成により、ベースブラケットの周辺フランジ部にフロアトンネル上部に対する多くのスポット溶接点を確保でき、かつ、各スポット溶接点が、ロアブレース下端部とのボルト締結箇所の周りに放射状に分散配置されることで、ロアブレース下端部とフロアトンネル上部との間に、ベースブラケットを介して、良好な接合強度が得られる。
【0016】
また、ベースブラケット(5)とフロアトンネル上部(10)との間に閉断面が形成されることで、ロアブレース下端部付近におけるフロアトンネル上部の剛性が向上され、かつ、ロアブレース下端部とベースブラケットの後部上面との間に充分な接合座面が確保されることで、ロアブレース下端部とフロアトンネル上部との間に、ベースブラケットを介して良好な結合剛性が得られる。
【0017】
上記のように、ロアブレース下端部とフロアトンネル上部との間に、ベースブラケットを介して、良好な接合強度と結合剛性が得られるうえ、フロアトンネル上部に対して広範囲かつ均等に荷重を分散させることで、ステアリングサポートメンバーに車両前方からの衝撃荷重が入力された場合に、衝撃荷重によってロアブレース下端部に負荷される引張力および曲げ応力に対抗し得る良好な補強構造を得ることができ、車両前方からの衝撃荷重に対する耐衝撃特性や耐振動特性を向上するうえで有利である。
【0018】
しかも、ベースブラケットの中央膨出部(53)は、ウエルドナットとボルトの締結分の厚み程度の膨出量があれば良く、比較的扁平な形状に留まっているので、プレス成形時の成形性が良好であるとともに、スポット溶接も容易に実施でき、部品点数や加工工数の増加ともならないので、生産コスト面でも有利である。また、車室内空間への突出も少なく、フロアトンネル上部に沿った膨出形状であるため、運転者のペダル周りの空間確保という点でも有利である。
【0019】
本発明において、前記ロアブレースの前記本体部は、前記ステアリングサポートメンバー(2)に剛結合された上端から下方ないしは後下方に延びる上端部(40)と、その下側に屈曲部を介して前下方に傾斜して延在する主要部分(41,42)とを含む態様では、ロアブレースの主要部分の延在方向が、ベースブラケットの後部上面とほぼ垂直になり、ロアブレースを介して入力される後上方への引張荷重を、荷重に垂直な面で受けることで、ベースブラケットを介した結合部における曲げ応力を低減でき、ベースブラケットの車両前後方向前方側における溶接点を引き剥がすような引張力が低減され、ベースブラケットの接合強度の向上と、車両前方からの衝撃荷重に対する耐衝撃特性向上に有利である。
【0020】
本発明において、前記ベースブラケット(5)は、車両前後方向に略水平に延在するフロア側のフロアトンネル上部(12b)と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側のフロアトンネル上部(12a)との折曲部(12c)に跨って接合されており、前記周辺フランジ部(51)は、略水平に延在するフロア側フランジ部(51b)と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側フランジ部(51a)と含み、前記中央膨出部(52)と前記フロアトンネル上部(10,12a,12b)との間に、側面視において略菱形をなす閉断面が形成されている態様では、ダッシュパネルの折曲部が、該折曲部と交差して前後方向に延びる閉断面を形成する立体形状のベースブラケットによって補強されることで、ダッシュパネルの変形を抑制することができる。
【0021】
本発明において、前記ベースブラケットが接合される前記フロアトンネル上部(12a,12b)が、ダッシュパネル(12)とフロアパネル(11)との接合部(18)に隣接したダッシュパネル(12)側にある態様では、比較的板厚の薄いダッシュパネルをベースブラケットとの接合面としつつも、フロアパネルと重合され板厚が増す接合部によって周囲の面剛性が確保され、良好な接合強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る補強構造を実施した自動車のステアリングサポートメンバー付近を車室内後方から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る補強構造を実施したロアブレース下端部とフロアトンネル上部の連結部を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る補強構造を実施したロアブレース下端部とフロアトンネル上部の連結部を示す側断面図である。
【図4】図3のY−Y断面図である。
【図5】本発明実施形態に係るベースブラケットを車室内後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1おいて、自動車1の車室前部を画成するダッシュパネル12の上部には、フロントウインドウの下縁に沿って車幅方向に延在するカウルトップパネル13が接合されている。ダッシュパネル12の左右両側は、車体側壁の一部を構成するダッシュサイドパネル14,15に接合されている。
【0024】
ダッシュパネル12の後方には、車幅方向に延在するステアリングサポートメンバー2が配設されている。ステアリングサポートメンバー2の左右両側の端部にはブラケット21,22が固着されており、ステアリングサポートメンバー2は、これらのブラケット21,22を介して、左右のダッシュサイドパネル14,15に固定される。
【0025】
ステアリングサポートメンバー2は、断面円形の鋼製直管で構成され、図中右側となる運転席側の大径部2aに、図中概略的に示されたステアリングコラム6を取付けるための一対のブラケット23,23が固着される一方、図中左側となる助手席側が相対的に小径に構成され、軽量化が図られている。ステアリングサポートメンバー2のステアリングコラム取付け部(23,23)から前方やや斜上方に向けてアッパーブレース3が延設され、アッパーブレース3の前端はカウルトップパネル13に固定されている。
【0026】
ステアリングサポートメンバー2の大径部2aと小径部2bとの間にはテーパ部2cが設けられ、テーパ部2cに隣接したステアリングサポートメンバー2の大径部2aには、下方に向けてロアブレース4が延設されている。また、テーパ部2cに隣接したステアリングサポートメンバー2の小径部2b側には、図示しない車載機器類(車載オーディオやカーナビゲーションシステム等)を取付けるためのステイ24、および、車載空調機器8a,8bを懸架するためのステイ25が下方に延設されている。
【0027】
ロアブレース4は、ステアリングサポートメンバー2に溶接される上端部40を含む本体上部41(ロアブレースアッパー)と、ベースブラケット5を介してフロアトンネル上部10に接合される下端部43を含む本体下部42(ロアブレースロア)の2部材で構成され、本体上部41と本体下部42は、それらの重合部分を貫通して締結される2つのボルト32,32とウエルドナット33,33で剛結合されている。
【0028】
ロアブレース4の本体上部41は、ロアブレース4全体の約2/3の長さを有し、車幅方向に扁平なUチャンネル状にプレス成形され、上端部40は、ステアリングサポートメンバー2から下方やや後方に向かってステイ24と平行に延在しかつ該ステイ24とバーで連結されている。本体上部41の主要部分は、上端部40の下側に屈曲部を介して前下方に傾斜して延在している。
【0029】
ロアブレース4の本体下部42は、図2に示すように、本体上部41の延長上に延在する主要部分と、該主要部分の下側に折曲部を介して車幅方向に延出した下端部43とを有し、下端部43には、ボルト挿通用孔45が穿設されている。本体下部42は、本体上部41と同様の扁平なUチャンネル状にプレス成形されているが、主要部分の中央部には上下長手方向に延びる2本の補強ビード42a,42aが形成されることでさらに剛性が高められており、これらの補強ビード42a,42aは、折曲部を経て下端部43に至り、下端部43ではボルト挿通用孔45の周囲に平面部を形成するように迂回して両側縁のフランジ部に連続している。
【0030】
ロアブレース4の下端部43が接合されるフロアトンネル上部10には、下端部43の接合面を補強するためのベースブラケット5が配設されている。
【0031】
ベースブラケット5は、図2〜5に示すように、フロアトンネル上部10への接合部となる周辺フランジ部51と、周辺フランジ部51で囲まれた中央膨出部52とを有する扁平なカップ形状にプレス成形されており、中央膨出部52とフロアトンネル上部10との間に閉断面が形成されている。
【0032】
中央膨出部52は、車両前後方向の略中央に車幅方向に延びる稜線を境に後下方に傾斜した後部上面53を有し、後部上面53の略中央には、図5に示すように、ロアブレース下端部43のボルト挿通用孔(45)に対応する透孔55が穿設され、その裏面側には、図3,4に示すように、ウエルドナット35が溶接固定されている。また、図4,5に示すように、後部上面53の透孔55に隣接して爪孔54が穿設されており、該爪孔54に、ロアブレース下端部43の縁端から下方に突設された爪44を係合することで、ロアブレース下端部43をボルト34で締結固定する際の位置決めおよび回り止めが可能となる。
【0033】
ベースブラケット5は、図5に示すように、中央膨出部52を囲む周辺フランジ部51に分散配置された7箇所でスポット溶接されフロアトンネル上部10に接合されている。ベースブラケット5の図中右側のフロア傾斜面(ダッシュパネル12)には、フットレストベース17がスポット溶接されている。ダッシュパネル12のフロア傾斜面に上部には車幅方向に延在するダッシュリンフォースメント16が接合されている。
【0034】
ベースブラケット5のフロアトンネル上部10の接合面は、ダッシュパネル12とフロアパネル11の縁部が重ねて溶接接合された接合部18に隣接したダッシュパネル12上にある。この接合面は、車両前後方向に略水平に延在するフロア側のフロアトンネル上部12bと、その前側に前上方への上り傾斜を有するフロアトンネル上部12aとの折曲部12cに跨っており、ベースブラケット5の周辺フランジ部51は、略水平に延在するフロア側フランジ部51bと、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側フランジ部51aとを有している。この構成により、ベースブラケット5の中央膨出部52とフロアトンネル上部10(12a,12b)との間には、側面視(図3)において略菱形をなす閉断面が形成されている。
【0035】
ステアリングサポートメンバー2が、アッパーブレース3で前後方向に補強されかつロアブレース4で上下方向に補強されることで耐振動特性が向上されることは既に述べた通りである。また、衝突事故などで車両前方から衝撃荷重が作用し、ダッシュパネル上部およびカウルパネルが車室内に入り込むような変形を生じると、アッパーブレース3を介してステアリングサポートメンバー2に衝撃荷重が入力され、適度に剛性が調整されているアッパーブレース3の座屈変形で衝撃が吸収され、ステアリングサポートメンバー2への衝撃が緩和されるが、アッパーブレース3の変形時および変形後においても、前方からの荷重は、ステアリングサポートメンバー2に付加されており、その間、ロアブレース4の下端結合部(43)に、図3に示されるように、後上方に向かう引張力Fや曲げ応力Mが作用すること、そのため、ロアブレース4の引張強度や曲げ強度は勿論、ロアブレース4の下端結合部(43)の結合剛性がステアリングサポートメンバー2(ステアリングハンドル)の後方への移動を抑制するうえで重要であることも既に述べた通りである。
【0036】
この点、本発明に係る補強構造は、ロアブレース下端部43の取付け部となるベースブラケット5が、フロアトンネル上部10への接合部となる周辺フランジ部51と、周辺フランジ部で囲まれた中央膨出部52とを有し、中央膨出部52の後部上面53に、ロアブレースの下端部43がボルト34で固定された構成により、ベースブラケット5の周囲に多くのスポット溶接点を確保できるとともに、各スポット溶接点が、ロアブレース下端部43とのボルト締結箇所(34,54)の周りに放射状に分散配置されることで、ロアブレース下端部43とフロアトンネル上部10との間に、ベースブラケット5を介して良好な接合強度が得られる。
【0037】
しかも、ベースブラケット5とフロアトンネル上部10との間に閉断面が形成されることで、ロアブレース下端部43付近におけるフロアトンネル上部10の剛性が向上され、かつ、ロアブレース下端部43とベースブラケット5の後部上面53との間に充分な接合座面が確保されることで、ロアブレース下端部43とフロアトンネル上部10との間に、ベースブラケット5を介して良好な結合剛性が得られる。
【0038】
したがって、上記のように、ロアブレース下端部43とフロアトンネル上部10との間の接合強度および結合剛性が改善されることに加えて、フロアトンネル上部10に対して広範囲かつ均等に引張力Fや曲げ応力Mを分散させることで、それらに対抗し得る良好な補強構造および衝撃吸収構造を得ることができ、耐衝撃特性を向上するうえで有利である。
【0039】
また、ベースブラケット5の中央膨出部53は、ウエルドナット35とボルト34の締結分の厚み程度の膨出量があれば良く、比較的扁平な形状に留まっているので、1回のプレス成形による絞り加工で成形でき、成形回数の増加やそれに伴い追加される型費によるコスト増を回避できる。さらに、車室内空間への突出も少なく、フロアトンネル上部10に沿った膨出形状であるため、シフトケーブルやダクト類、フロアコンソールなどのレイアウトへの影響もなく、運転者のペダル周りの空間確保という点でも有利である。
【0040】
また、中央膨出部53の後部上面53は、車両室内側に向かう傾斜面をなしているので、インストルメントパネルを搭載した後でもボルト34の締結作業を容易に行うことができる。さらに、ボルト34を締結するための透孔55およびウエルドナット35は完全に車室内部にあり、ダッシュパネル12やフロアパネル11にボルト締結用の孔は不要であるため、ボルト孔による錆や水漏れの心配もない。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0042】
1 自動車
2 ステアリングサポートメンバー
3 アッパーブレース
4 ロアブレース
5 ベースブラケット
10,12a,12b フロアトンネル上部
11 フロアパネル
12 ダッシュパネル
12c 折曲部
34 ボルト
35 ウエルドナット
40 上端部
41 本体上部(主要部分)
42 本体下部(主要部分)
43 下端部
44 爪
45 ボルト挿通用孔
51 周辺フランジ部
51a ダッシュパネル側フランジ部
51b フロア側フランジ部
52 中央膨出部
53 後部上面
54 爪孔
55 透孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングサポートメンバーの車幅方向中間部とフロアトンネル上部とを連結すべく前記ステアリングサポートメンバーに剛結合されたロアブレースと、
前記フロアトンネル上部に接合されたベースブラケットと、を備え、
前記ベースブラケットは、前記フロアトンネル上部への接合部となる周辺フランジ部と、前記周辺フランジ部で囲まれ、前記フロアトンネル上部との間に閉断面を形成する中央膨出部とを有し、前記中央膨出部は、車両前後方向の略中央から後下方に傾斜した後部上面を有し、該後部上面に穿設された透孔の裏面側にウエルドナットが固定される一方、
前記ロアブレースは、略上下方向に延在する本体部と、前記本体部に対して折曲部を介して車幅方向に延出した下端部とを有し、該下端部には、前記透孔に対応するボルト挿通用孔が穿設されており、
前記ボルト挿通用孔に挿通したボルトを、前記後部上面の前記透孔を通じて前記ウエルドナットに螺合締結することにより、前記ロアブレースの前記下端部が、前記ベースブラケットを介して前記フロアトンネル上部に連結されている、自動車のステアリングサポートメンバー補強構造。
【請求項2】
前記ロアブレースの前記本体部は、前記ステアリングサポートメンバーに剛結合された上端から下方ないしは後下方に延びる上端部と、その下側に屈曲部を介して前下方に傾斜して延在する主要部分とを含む、請求項1に記載の自動車のステアリングサポートメンバー補強構造。
【請求項3】
前記ベースブラケットは、車両前後方向に略水平に延在するフロア側のフロアトンネル上部と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側のフロアトンネル上部との折曲部に跨って接合されており、前記周辺フランジ部は、略水平に延在するフロア側フランジ部と、前上方への上り傾斜を有するダッシュパネル側フランジ部と含み、前記中央膨出部と前記フロアトンネル上部との間に、側面視において略菱形をなす閉断面が形成されている、請求項1または2に記載の自動車のステアリングサポートメンバー補強構造。
【請求項4】
前記ベースブラケットが接合される前記フロアトンネル上部が、ダッシュパネルとフロアパネルとの接合部に隣接したダッシュパネル側にある、請求項1、2、または3に記載の自動車のステアリングサポートメンバー補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76512(P2012−76512A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221442(P2010−221442)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】