説明

自動車のボディ構造

【課題】本発明は、自動車のドアに対して側面方向から衝突加重を受けたときのドアの車室内への進入を抑制するとともに、ドアの車室内への進入抑制対策に要するコストを低く抑えることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る自動車のボディ構造は、自動車のドアに対する側面方向からの衝突荷重Fをそのドアのインパクトビーム2、ドアボックス4を介してボディの荷重受け部材20に伝え、その荷重受け部材20からクロスメンバ10に伝達させる構成の自動車のボディ構造であって、荷重受け部材20は、左右のドアの間で、車幅方向に延びるように配置された直線状の管体であり、前記衝突荷重を一方のドアのドアボックス4から他方のドアのドアボックスまで伝達可能に構成された荷重受け管30と、荷重受け管30を左右のドアの近傍で支え、その荷重受け管を前記クロスメンバに連結する連結部40とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに対する側面方向からの衝突荷重をそのドアのインパクトビーム、ドアボックスを介してボディの荷重受け部材で受け、その荷重受け部材からクロスメンバに伝達させる構成の自動車のボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関する従来の自動車のボディ構造が特許文献1に記載されている。
特許文献1に係るボディ構造では、図12に示すように、車室フロア面102fを構成するクロスメンバ102の上面の車幅方向両側部分に段差状の荷重受け部材104が固定されている。荷重受け部材104は、端面104fの部分で荷重を受けられるように構成されており、その端面104fがリヤドア(図示省略)のドアボックス103と車幅方向において対向する位置に位置決めされている。このため、自動車のリヤドアに対して側面方向から衝突荷重が加わったときに、その衝突荷重がリヤドアのインパクトビーム101、ドアボックス103を介して前記荷重受け部材104の端面104fに伝わり、前記荷重受け部材104からクロスメンバ102に伝達される。即ち、自動車のリヤドアが荷重受け部材104及びクロスメンバ102によって支えられるため、前記リヤドアの車室内への進入を抑えることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−22485号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したボディ構造では、段差状の荷重受け部材104がクロスメンバ102の上面の車幅方向両側部分に固定されている。このため、例えば、左側のリヤドアのインパクトビーム101、ドアボックス103を介してボディに伝達された衝突荷重Fは、荷重受け部材104が固定されているクロスメンバ102の左端部分に集中するようになる。このため、クロスメンバ102の厚肉化等による補強が必要になり、クロスメンバ102の補強に要するコストが高くなる。
また、荷重受け部材104がクロスメンバ102の車幅方向両側部分に固定される構成のため、車種によってクロスメンバ102の位置とドアボックス103の位置とが車両前後方向にずれている場合等は、車種毎に異なる形状の荷重受け部材104を製作する必要があり、荷重受け部材104の製作コストが高くなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、自動車のドアに対して側面方向から衝突加重を受けたときのドアの車室内への進入を抑制するとともに、ドアの車室内への進入抑制対策に要するコストを低く抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、自動車のドアに対する側面方向からの衝突荷重をそのドアのインパクトビーム、ドアボックスを介してボディの荷重受け部材で受け、その荷重受け部材からクロスメンバに伝達させる構成の自動車のボディ構造であって、前記荷重受け部材は、左右のドアの間で、車幅方向に延びるように配置された直線状の管体であり、前記衝突荷重を一方のドアのドアボックスから他方のドアのドアボックスまで伝達可能に構成された荷重受け管と、前記荷重受け管を左右のドアの近傍で支え、その荷重受け管を前記クロスメンバに連結する連結部とから構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ドアのインパクトビーム、ドアボックスを介して荷重受け部材に入力された衝突荷重は、荷重受け管から連結部を介してクロスメンバに伝達されるとともに、その荷重受け管によって反対側のドアのボックスに伝達される。即ち、自動車のドアに対して側面方向から衝突荷重が加わったときに、そのドアが荷重受け管、連結部を介してクロスメンバによって支えられるとともに、前記荷重受け管を介して反対側のドアに支えられるため、前記ドアの車室内への進入を抑えることができる。
また、前記衝突荷重は、荷重受け管からクロスメンバに伝達されて、前記クロスメンバで受けられる荷重(伝達荷重)と、前記荷重受け管に対して軸方向に加わりその荷重受け管、及び反対側のドアで受けられる荷重(軸方向加重)とに分散される。このように、衝突荷重が分散されることで、前記クロスメンバに加わる荷重(伝達荷重)が減少し、ドアの車室内への進入抑制対策のためのクロスメンバの補強を低く抑えることができる。
また、荷重受け部材は、荷重受け管を連結部でクロスメンバに連結する構成である。このため、荷重受け部材を予め製作しておき、その荷重受け部材を前記クロスメンバに対して後工程で取り付けることが可能になる。したがって、異なる車種において荷重受け部材を共用化することが可能になる。
このため、ドアの車室内への進入抑制対策に要するコストを低く抑えることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、荷重受け管の軸方向両端は、端末に近づくにつれて拡開するラッパ状に形成されていることを特徴とする。
このため、車高のばらつきによる衝突荷重の入力方向差を効率的に吸収できるようになる。
請求項3の発明によると、連結部は車幅方向一端側と他端側とにそれぞれ個別に設けられており、各々の連結部は、荷重受け管が固定される上側固定部と、クロスメンバに固定される下側固定部とを備えており、前記下側固定部は、上側固定部よりも車幅方向において幅広に形成されて、その上側固定部よりも車幅方向内側に配置されるように構成されていることを特徴とする。
このため、連結部が荷重受け管を軸方向から支える強度が向上し、衝突荷重により荷重受け管が軸方向に移動し難くなる。
【0009】
請求項4の発明によると、ドアボックスには、衝突荷重を受けたインパクトビームが当接可能な受け面が形成されており、前記受け面には、その受け面に当接した前記インパクトビームが前記受け面から外れるのを防止する鉤状の突起が形成されていることを特徴とする。
このため、インパクトビームが衝突時の衝撃でドアボックスの受け面から外れるようなことがなく、衝突荷重を確実にドアボックスに伝達できる。
【0010】
請求項5の発明によると、ドアボックスには、衝突荷重を受けたインパクトビームが当接可能な受け面が形成されており、前記受け面は、斜め前方から加わる前記インパクトビームからの衝突荷重を車幅方向の衝突荷重に変換可能な前側傾斜面と、斜め後方から加わる前記インパクトビームからの衝突荷重を車幅方向の衝突荷重に変換可能な後側傾斜面とを備えていることを特徴とする。
このため、衝突によりドア等が変形し、ドアボックスの受け面に対して斜め前方、あるいは斜め後方から前記インパクトビームを介して衝突荷重が加わった場合でも、その衝突荷重を車幅方向の衝突荷重に変換して効率的に荷重受け管に伝達できる。
【0011】
請求項6の発明によると、ドアボックスは、ドアを構成するドアインナパネルの開口に通された状態でそのドアインナパネルに取付けられており、前記ドアボックスの上面には、そのドアボックスが衝突荷重を受けて車室方向に変位する際に、前記ドアインナパネルの開口周縁に係合する鉤部が設けられていることを特徴とする。
このため、衝突荷重を受けたドアボックスが車室方向に変位する際、ドアボックスの上面の鉤部がドアインナパネルの開口周縁に係合するため、前記ドアボックスが下方に回動して荷重受け管に当たらなくなるような不具合を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、自動車のドアに対して側面方向から衝突加重を受けたときのドアの車室内への進入を抑えることができるとともに、ドアの車室内への進入抑制対策に要するコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図8に基づいて本発明の実施形態1に係る自動車のボディ構造について説明する。ここで、図1は本実施形態に係る自動車のボディ構造において使用される荷重受け部材の全体斜視図及び分解斜視図、図2は自動車のボディ構造を表す縦断面図、図3、図4は自動車のボディ構造を表す全体斜視図である。また、図5から図8は、図3、図4の各部矢視断面図を表している。
なお、図中における前後左右及び上下は自動車の前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<自動車のボディ構造の概要について>
本実施形態に係る自動車のボディ構造は、図2に示すように、自動車のリヤドアDrに対して側面方向から衝突荷重Fが加わったときに、そのリヤドアDrの車室内への進入を抑えるためのものである。
リヤドアDrは、図2等に示すように、ドアアウタパネル1とドアインナパネル3とを備えており、両パネル1,3間に高張力鋼パイプからなる二本のインパクトビーム2が前後に延びるように取り付けられている。また、ドアアウタパネル1とドアインナパネル3間には、下部のインパクトビーム2から衝突荷重Fを受ける位置にドアボックス4が配置されており、そのドアボックス4の一部がドアインナパネル3から車室側に突出するように構成されている。なお、ドアインナパネル3、ドアボックス4は、車室内側が内装パネル5によって覆われている。
本実施形態に係るボディ構造では、図2、図3等に示すように、前記衝突荷重FをリヤドアDr(図2では左側のリヤドア)のインパクトビーム2、ドアボックス4で受けてボディB側の荷重受け部材20に伝え、その荷重受け部材20によってクロスメンバ10、及び右側のリヤドアのドアボックス等(図示省略)に伝達する構成である。
即ち、上記した左側のリヤドアDrは、ボディB側の荷重受け部材20を介してクロスメンバ10、及び右側のリヤドアに支えられることで、車室内への進入が抑制される。なお、図2では、クロスメンバ10は省略されている。
【0015】
<荷重受け部材20について>
荷重受け部材20は、リヤドアDrのドアボックス4からの衝突荷重Fを受けて、その衝突荷重Fをクロスメンバ10、及び反対側のリヤドアのドアボックス(図示省略)に伝達するための部材である。荷重受け部材20は、図1(A)等に示すように、パイプ状の荷重受け管30と、その荷重受け管30の軸方向両端部を支え、前記荷重受け管30をクロスメンバ10に連結する左右一対の連結部40とから構成されている。
荷重受け管30は、図3、図4に示すように、左右のリヤドアDrの間で、車幅方向に延びるように配置されており、その荷重受け管30の長さ寸法が左右のリヤドアDr間の距離よりも若干小さな値に設定されている。このため、荷重受け管30が左右のリヤドアDr間に位置決めされた状態で、図2に示すように、荷重受け管30の端面とリヤドアDrの内装パネル5との間には空間Sが形成される。
荷重受け管30は、図1に示すように、所定長さ寸法のパイプからなる直管部32と、その直管部32の両端に設けられた拡開部34とから構成されている。前記直管部32には、例えば、直径約30mm、肉厚約2mmの鋼製のパイプが使用される。
【0016】
拡開部34は、図1(B)、図5等に示すように、端末に近づくにつれて拡開する断面角形のラッパ状に形成されている。拡開部34は、その拡開部34の上半分を構成する断面コ字形の上側拡開片35と、下半分を構成する断面コ字形の下側拡開片36と、前記拡開部34の端末面(荷重受け管30の端面)を構成する角形の縦平板37とを備えている。また、上側拡開片35、下側拡開片36の先端部分(端末面と反対側)には、半円筒部35e,36eが形成されており、それらの半円筒部35e,36eの内側に前記直管部32が通される。直管部32は、図5に示すように、その端面が縦平板37の内壁面に当接するまで拡開部34の内側に挿入される。そして、この状態で、前記直管部32の外周面が上側拡開片35、及び下側拡開片36の半円筒部35e,36eに溶接により接合される。前記拡開部34は、例えば、肉厚約2mmの鋼板により成形されている。
【0017】
連結部40は、図1(A)、図6(図3、4のVI矢視断面図)に示すように、縦断面略山形に成形された板状体であり、その連結部40の頂部分に半円筒状の凹部41が成形されている。連結部40の凹部41は、荷重受け管30の拡開部34の近傍に位置する直管部32を下方から支持する部分であり、溶接等により前記直管部32に接合される。
また、連結部40には、断面略山形に成形された板状体の裾部分に、図1(A)、図6に示すように、ボルト受け部43が車幅方向に二箇所設けられている。そして、連結部40のボルト受け部43がクロスメンバ10の上面14uにボルト止めにより固定される。連結部40は、例えば、肉厚約2mmの鋼板により成形されている。
前記連結部40の凹部41は、図6に示すように、ボルト受け部43よりも一定寸法Lだけ後方で、かつ一定寸法Hだけ上方に位置決めされている。即ち、連結部40のボルト受け部43がクロスメンバ10の上面14uにボルト止めされた状態で、荷重受け管30はクロスメンバ10から寸法Lだけ後方、かつ寸法Hだけ上方に配置される。なお、前記寸法L、寸法Hは、荷重受け管30がリヤドアDrのドアボックス4と車両前後方向及び高さ方向において同位置となるような値に設定されている。
また、連結部40のボルト受け部43の車幅方向における間隔寸法は、前記凹部41の軸方向の長さ寸法よりも大きく設定されており、さらに前記ボルト受け部43はその凹部41よりも車幅方向内側に配置されている。
即ち、連結部40の凹部41を備える頂部分が本発明の上側固定部に相当し、連結部40のボルト受け部43が形成される裾部分が本発明の下側固定部に相当する。
【0018】
<クロスメンバ10について>
連結部40のボルト受け部43がボルト止めされるクロスメンバ10は、図6、図8(図3、4のVIII矢視断面図)に示すように、車室内の後部で階段状に形成された車室後部フロア12と、その車室後部フロア12の段差部12fを前方から覆う断面略逆L字形の前部成形パネル14とから構成されている。
前部成形パネル14は、図6、図8に示すように、上部後側端縁に形成された上部フランジ14fと、下部前側端縁に形成された下部フランジ14dとを備えている。そして、前部成形パネル14の上部フランジ14fが車室後部フロア12の上面12uに溶接等され、前部成形パネル14の下部フランジ14dが車室後部フロア12の底面12bに溶接等されることで、断面略角形をした中空閉断面状のクロスメンバ10が形成される。クロスメンバ10は、車幅方向に水平に延びて、その両端部がボディBの左右両側に設けられたロッカ7(図3参照)に接続されている。
クロスメンバ10を構成する前部成形パネル14には、連結部40のボルト受け部43がボルト止めされる部位の裏側に、補強板15が取り付けられている。
【0019】
<車室後部フロア12について>
車室後部フロア12の上面12u及びクロスメンバ10の上面14uには、荷重受け部材20が取り付けられた後、リヤシート9(図2参照)が設置される。
前述のように、荷重受け部材20の荷重受け管30はクロスメンバ10から寸法Lだけ後方、かつ寸法Hだけ上方に配置されるため、前記荷重受け管30は車室後部フロア12の上面12uの上方に位置している。このため、車室後部フロア12の上面12uには、荷重受け管30の真下位置で、連結部40の凹部41の近傍に、図5、図7に示すように、荷重受け管30の直管部32を支持する支持ベース51と支持架台53とが設けられている。なお、図5は、図3、図4のV矢視断面図であり、図7は、図3、図4のVII矢視断面図である。
【0020】
<荷重受け部材20の取り付けについて>
荷重受け部材20は、図1(A)に示すように、荷重受け管30の両端部に連結部40が接続された状態で、ボディBに取り付けられる。即ち、左右の連結部40のボルト受け部43がクロスメンバ10の上面14uにボルト止めされることで、荷重受け部材20がクロスメンバ10に連結される。さらに、荷重受け管30の直管部32が車室後部フロア12の上面12uに設けられた支持ベース51及び支持架台53に支持され、直管部32が溶接等により支持架台53に固定される。この状態で、図3、図4に示すように、ボディBに対する荷重受け部材20の取り付けが完了する。
次に、車室後部フロア12の上面12uにリヤシート9が設置され、図2に示すように、前記荷重受け部材20は前記リヤシート9によって覆われる。このとき、荷重受け部材20の荷重受け管30の端面もリヤシート9の側壁部9eによって覆われるようになる。
【0021】
<本実施形態に係る自動車のボディ構造の働きについて>
本実施形態に係るボディ構造を備える自動車の左側のリヤドアDrに対して、図2に示すように、左側面方向から衝突荷重Fが加わると、その衝突荷重FはリヤドアDrのインパクトビーム2からドアボックス4に伝わり、そのドアボックス4から荷重受け部材20の荷重受け管30の左端面に伝達される。ここで、荷重受け管30の端部には拡開部34が設けられてラッパ状に拡開しているため、衝突荷重Fの入力方向差を効率的に吸収できるようになる。
荷重受け管30の左端面に加わった衝突荷重Fは、荷重受け管30を軸方向に押圧し、左右の連結部40を介してクロスメンバ10に伝達される。また、前記衝突荷重Fは、荷重受け管30を軸方向に押圧することで、右側のリヤドアDr(図示省略)のドアボックス、インパクトビームに伝達されるようになる。即ち、左側のリヤドアDrのドアボックス4等は、荷重受け管30、左右の連結部40を介してクロスメンバ10の左右両端部に支持されるとともに、前記荷重受け管30を介して右側のリヤドアDr(図示省略)のドアボックス等によって支持される。これにより、自動車の左側のリヤドアDrに対して、図2に示すように、左側面方向から衝突荷重Fが加わった場合でも、左側のリヤドアDrの車室内への進入を抑えることができる。
【0022】
<自動車のボディ構造の長所について>
本実施形態に係る自動車のボディ構造によると、衝突荷重Fは、荷重受け管30から連結部40を介してクロスメンバ10に伝達されて、そのクロスメンバ10で受けられる荷重(伝達荷重)と、荷重受け管30に対して軸方向に加わりその荷重受け管30、及び反対側(右側)のドアで受けられる荷重(軸方向加重)とに分散される。このように、衝突荷重Fが分散されることで、クロスメンバ10に加わる荷重(伝達荷重)が減少し、ドアの車室内への進入抑制対策のためのクロスメンバ10の補強を低く抑えることができる。
また、荷重受け部材20は、荷重受け管30を連結部40でクロスメンバ10に連結する構成である。このため、荷重受け部材20を予め製作しておき、その荷重受け部材20をクロスメンバ10に対して後工程で取り付けることが可能になる。したがって、異なる車種において荷重受け部材20を共用化することが可能になる。
このため、リヤドアDrの車室内への進入抑制対策に要するコストを低く抑えることができる。
【0023】
また、荷重受け管30の軸方向両端は、端末に近づくにつれて拡開するラッパ状に形成されているため、車高のばらつきによる衝突荷重Fの入力方向差を効率的に吸収できるようになる。
また、連結部40は、荷重受け管30が固定される上側固定部(凹部41が形成された頂部分)と、クロスメンバ10に固定される下側固定部(ボルト受け部43を有する裾部分)とを備えている。そして、下側固定部は、上側固定部よりも車幅方向において幅広に形成されて、その上側固定部よりも車幅方向内側に配置されるように構成されている。このため、連結部40が荷重受け管30を軸方向から支える強度が向上し、前記衝突荷重Fにより荷重受け管30が軸方向に移動し難くなる。
【0024】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、荷重受け管30の軸方向両端部を一対の連結部40で支える例を示したが、前記連結部40の数を増やし、例えば、荷重受け管30の中央部も連結部40で支持する構成も可能である。
また、荷重受け管30の拡開部34を断面角形のラッパ状に形成する例を示したが、拡開部34の断面形状は適宜変更可能である。
また、連結部40のボルト受け部43をクロスメンバ10にボルト止めする例を示したが、前記連結部を、例えば、溶接等により固定する構成でも可能である。
【0025】
[実施形態2]
以下、図9から図11に基づいて本発明の実施形態2に係る自動車のボディ構造について説明する。本実施形態に係る自動車のボディ構造は、実施形態1に係る自動車のボディ構造において使用されたドアボックス4を改良したものであり、他の構造については実施形態1に係る自動車のボディ構造と同様である。このため、実施形態1に係る自動車のボディ構造において説明した部材と同一の部材については、同一番号を付して説明を省略する。
ここで、図9は本実施形態に係るドアボックス60と荷重受け管30との位置関係を表す側面図、図10はドアボックス60の側面図(A図)及び正面図(A図のB-B矢視図)である。また、図11は変更例に係るドアボックス60の側面図(A図)、正面図(A図のB-B矢視図)及び平面図(A図のC-C矢視図)である。
【0026】
ドアボックス60は、インパクトビーム2から受けた衝突荷重Fを荷重受け管30に伝達するための箱状部材である。ドアボックス60は、図9、図10(A)に示すように、ドアインナパネル3から車室側に突出する車室側ボックス61と、リヤドアDrの内部に配置される内側ボックス63とを備えている。車室側ボックス61と内側ボックス63とは開口を備える箱状に形成されており、各々の開口周縁にフランジ部61f,63fが形成されている。そして、車室側ボックス61のフランジ部61fと内側ボックス63のフランジ部63fとが接続されることによりドアボックス60が構成される。ドアボックス60は、内側ボックス63がドアインナパネル3の開口3hに通され、両フランジ部61f,63fが車室側からドアインナパネル3の開口3h周縁にボルト止めされることで、前記ドアインナパネル3に固定される。
【0027】
ドアボックス60の内側ボックス63の先端(フランジ部63fと反対側)には、リヤドアDrが衝突荷重Fを受けたときにインパクトビーム2が当接する受け面64が形成されている。そして、受け面64の下部に前後方向に延びる突条66が形成されている。これにより、インパクトビーム2が衝突時の衝撃でドアボックス60の受け面64から下方に外れるようなことがない。また、ドアボックス60の受け面64の上部には、インパクトビーム2がその受け面64から上方に外れるのを防止する鉤状の突起67が形成されている。
このように、インパクトビーム2が突条66、突起67の働きにより衝突時の衝撃でドアボックス60の受け面64から外れることがないため、衝突荷重Fをインパクトビーム2から確実にドアボックス60に伝達できる。
また、ドアボックス60の車室側ボックス61の先端(フランジ部61fと反対側)には、ドアボックス60が衝突荷重Fを受けたときに荷重受け管30に当接する当接面61xが形成されている。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ドアボックス60の受け面64を平坦に形成する例を示したが、図11(C)の平面図に示すように、斜め前方を指向する前側傾斜面64xと、斜め後方を指向する後側傾斜面64yとにより前記受け面64を山形に構成することも可能である。これにより、リヤドアDr等が変形し、ドアボックス60の受け面64に対して斜め前方、あるいは斜め後方からインパクトビーム2が衝突した場合でも、その斜め方向からの衝突荷重Fを車幅方向の衝突荷重Fwに変換して効率的に荷重受け管30に伝達できる。
また、ドアボックス60の内側ボックス63の上面63uには、図11(A)等に示すように、ドアインナパネル3の開口3h周縁と係合可能な鉤部69が形成されている。これにより、衝突荷重Fを受けたドアボックス60が車室方向に変位する際、ドアボックス60の上面63uの鉤部69がドアインナパネル3の開口3h周縁に係合するようになる。このため、衝突荷重Fを受けたドアボックス60が下方に回動して荷重受け管30に当接しなくなるような不具合を防止できる。
なお、図11に示すドアボックス60の受け面64の上部に、図10に示す鉤状の突起67を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態1に係る自動車のボディ構造において使用される荷重受け部材の斜視図(A図)、荷重受け部材の荷重受け管の端部分解斜視図(B図)である。
【図2】自動車のボディ構造を表す縦断面図である。
【図3】自動車のボディ構造を後方から見た全体斜視図である。
【図4】自動車のボディ構造を前方から見た全体斜視図である。
【図5】図3、図4のV部矢視断面図である。
【図6】図3、図4のVI部矢視断面図である。
【図7】図3、図4のVII部矢視断面図である。
【図8】図3、図4のVIII部矢視断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る自動車のボディ構造において使用されるドアボックスと荷重受け管との位置関係を表す側面図である。
【図10】ドアボックスの側面図(A図)及び正面図(A図のB-B矢視図(B図))である。
【図11】変更例に係るドアボックスの側面図(A図)、正面図(A図のB-B矢視図(B図))及び平面図(A図のC-C矢視図(C図))である。
【図12】従来の自動車のボディ構造を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
F・・・・・衝突荷重
B・・・・・ボディ
Dr・・・・リヤドア
2・・・・・インパクトビーム
3・・・・・ドアインナパネル
3h・・・・開口
4・・・・・ドアボックス
10・・・・クロスメンバ
20・・・・荷重受け部材
30・・・・荷重受け管
32・・・・直管部
34・・・・拡開部
40・・・・連結部
41・・・・凹部(上側固定部)
43・・・・ボルト受け部(下側固定部)
60・・・・ドアボックス
64・・・・受け面
64x・・・前側傾斜面
64y・・・後側傾斜面
66・・・・突条(突起)
67・・・・突起
69・・・・鉤部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアに対する側面方向からの衝突荷重をそのドアのインパクトビーム、ドアボックスを介してボディの荷重受け部材で受け、その荷重受け部材からクロスメンバに伝達させる構成の自動車のボディ構造であって、
前記荷重受け部材は、
左右のドアの間で、車幅方向に延びるように配置された直線状の管体であり、前記衝突荷重を一方のドアのドアボックスから他方のドアのドアボックスまで伝達可能に構成された荷重受け管と、
前記荷重受け管を左右のドアの近傍で支え、その荷重受け管を前記クロスメンバに連結する連結部とから構成されていることを特徴とする自動車のボディ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された自動車のボディ構造であって
前記荷重受け管の軸方向両端は、端末に近づくにつれて拡開するラッパ状に形成されていることを特徴とする自動車のボディ構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された自動車のボディ構造であって、
前記連結部は車幅方向一端側と他端側とにそれぞれ個別に設けられており、
各々の連結部は、荷重受け管が固定される上側固定部と、クロスメンバに固定される下側固定部とを備えており、
前記下側固定部は、上側固定部よりも車幅方向において幅広に形成されて、その上側固定部よりも車幅方向内側に配置されるように構成されていることを特徴とする自動車のボディ構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された自動車のボディ構造であって、
前記ドアボックスには、衝突荷重を受けた前記インパクトビームが当接可能な受け面が形成されており、
前記受け面には、その受け面に当接した前記インパクトビームが前記受け面から外れるのを防止する鉤状の突起が形成されていることを特徴とする自動車のボディ構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された自動車のボディ構造であって、
前記ドアボックスには、衝突荷重を受けた前記インパクトビームが当接可能な受け面が形成されており、
前記受け面は、斜め前方から加わる前記インパクトビームからの衝突荷重を車幅方向の衝突荷重に変換可能な前側傾斜面と、斜め後方から加わる前記インパクトビームからの衝突荷重を車幅方向の衝突荷重に変換可能な後側傾斜面とを備えていることを特徴とする自動車のボディ構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された自動車のボディ構造であって、
前記ドアボックスは、ドアを構成するドアインナパネルの開口に通された状態でそのドアインナパネルに取付けられており、
前記ドアボックスの上面には、そのドアボックスが衝突荷重を受けて室内方向に変位する際に、前記ドアインナパネルの開口周縁に係合する鉤部が設けられていることを特徴とする自動車のボディ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−101988(P2009−101988A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236257(P2008−236257)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】