説明

自動車の側部車体構造

【課題】デザイン自由度を確保しつつ、サイドシルアウタの下端境界部分の外観性向上が可能な自動車の側部車体構造を提供する。
【解決手段】サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16bと下端部11bより車幅方向外側に張り出す第2閉断面部20を設けると共に、第3下フランジ部16bと下端部11bとの下断面を第2上壁部18eに当接させる。また、車体のフレーム部材であるサイドシルレインフォースメント18により第2閉断面部20と第3閉断面部21とを形成したため、分割ラインを第2閉断面部20と一体として視認させることができ、車体剛性向上と外観性の向上とが両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の側部車体構造に関し、特に、車体下部の表面を形成するサイドボディアウタパネルに連結されたサイドシルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、車体左右両側面の下方に車体前後方向に延びるサイドシルが配設されている。このサイドシルは、車体下部の剛性を維持しながら車体重量を低減することを狙いとして、車幅方向内側のサイドシルインナと車幅方向外側のサイドシルアウタとによって閉断面構造で形成されている。
【0003】
一方、近年、視認による安定感等車体側面の見栄え向上を狙いとして、車体下部の外観上のボリュームを大きくする構造が知られている。この見栄え向上のため、車体外側を覆うサイドシルアウタを車幅方向外側に大きく張り出す構造が考えられるが、以下の問題が存在する。
【0004】
第1に、サイドシルアウタに車幅方向外側に大きく張り出す膨出部を形成する場合、鋼板部分が大幅に増加し、車体重量が増加する。この車体重量増加は、同時にコストアップを招くこととなる。第2に、車体成形性の問題が考えられる。一般的なモノコックボディでは、サイドドア開口周りの表面を形成するサイドボディアウタパネルは、車体上下方向下方に延長されてサイドシルアウタを一体的に形成する構成となっている。この構成によって、プレス加工による成形時、サイドボディアウタパネルとサイドシルアウタとを同時に成形している。
【0005】
プレス加工を行う場合、鋼板材料の流動性の観点から、部材の端部領域は部材の中央領域に比べて塑性加工性が劣り、この傾向は、加工領域が大きいほど、また、車体表面のように加工量が多いほど顕著になる。従って、加工量が多く、サイドボディアウタパネルのように大きな部材の端部領域に膨出部を形成しようとすると、割れ等の加工上の問題が発生する。
【0006】
そこで、見栄え向上やデザイン性の拡大を図りつつ、前述した問題を解決する手法の1つとして、サイドシルに車幅方向外側を覆うサイドシルモールを取り付け、車体下部の外観上のボリュームを大きくする構造が知られている。(特許文献1)
【0007】
特許文献1は、図13に示すように、サイドシルインナ101とサイドシルアウタ102とを有し、サイドシルインナ101とサイドシルアウタ102との間にサイドシル100を補強すると共に、サイドシルインナ101と協働して閉断面を形成するサイドシルレインフォースメント103を有する構造が開示されている。更に、特許文献1では、サイドシル100の車幅方向外側及び下面側を覆うように、サイドシル100上の車体前後方向に延設され、サイドシル100の側面を覆う側面部105とサイドシル100の下面を覆う下面部106とジャツキ用凹部107とからなる突出部を備えるサイドシルモール(ガーニッシュ)104が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−261480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、車体剛性部材を用いることなく、見栄え向上を図ることができる。更に、ジャッキとサイドシルモールとの干渉を回避しながら、サイドシルとサイドシルモールとの間に砂等の異物が侵入し堆積することを抑制することが可能となる。また、車体下部を車幅方向外側に張り出すことによって、車両の走行による砂や石等のチッピング抑制やホイールハウス内に流入する走行風低減による空力特性改善が期待できる。
【0010】
しかしながら、先行技術の構成では、サイドシルアウタの下方部分を短く、所謂車体上下方向上方に配置することが可能になるが、充分なデザイン自由度の拡大を得ることはできない。つまり、サイドシルアウタの接合面部の下端とサイドシルレインフォースメントとの境界部分、つまり両者の分割ラインを隠すため、サイドシルアウタの接合面部の下端を下方に延長、或いはサイドシルモールの突出部を上方に延長することで、分割ラインをサイドシルモールの内側に配置する必要があり、デザイン自由度が規制される。
【0011】
また、サイドシルモールを設置する場合、サイドシルモールの新規設計、また、別途組立工程の追加が必要となり、材料費以外のコスト面での課題も発生する。更に、サイドシルモールは外観性向上を図れるものの、車両の基本的要求である安全性向上を図る場合、車体剛性に寄与することができない。
【0012】
本発明の目的は、サイドシルアウタを車体上下方向上方に配置可能として、デザイン自由度を確保しつつ、サイドシルアウタの下端境界部分の外観性向上が可能な自動車の側部車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の自動車の側部車体構造は、車体側部の表面を形成するサイドボディアウタパネルと、車体前後方向に延びると共に前記サイドボディアウタパネルに連結されたサイドシルとを有する。
【0014】
請求項1の発明は、前記サイドシルは、前記サイドボディアウタパネルの下部に設けられるサイドシルアウタと、このサイドシルアウタの車幅方向内側のサイドシルインナと、このサイドシルインナと前記サイドシルアウタとの間に介在すると共に前記サイドシルアウタの接合面部と接合される板状補強部材と、前記接合面部より車幅方向外側に張り出す突出部とを有し、この突出部の上壁部は、前記接合面部の下端と略同一高さに設けられることを特徴とする。
【0015】
請求項1の発明では、接合面部より車幅方向外側に張り出す突出部を有するため、接合面部の下端を突出部の上壁部と略同一高さに設けることができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、開閉可能なサイドドアを有し、前記サイドシルアウタの接合面部の下端と前記サイドドアの下端部とが略同一高さに設けられることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記突出部が、前記板状補強部材に形成されると共に、前記接合面部から車幅方向外側に膨出する膨出部からなることを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記サイドドアは、閉状態のとき、前記サイドドアと前記サイドシルとの間をシールするシール部材を有し、前記サイドシルアウタは、前記接合面部の上方に前記シール部材が当接するシール面部を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの発明において、前記サイドボディアウタパネルは、車体前後方向後方に後輪を収容するホイールハウス部と、このホイールハウス部と前記サイドドアとの間で且つ前記サイドドアが閉状態のとき、前記サイドドアと略連続する面を形成するホイールハウスアーチ部とを有し、このホイールハウスアーチ部の下端部が、前記接合面部の下端と略同一高さに設けられることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記ホイールハウスアーチ部の下端部を覆うと共に、前記突出部の上壁部上に装着されるガーニッシュを有することを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1〜6の何れかの発明において、前記突出部は、後輪の車幅方向外側境界面よりも外側まで張り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、サイドシルアウタを車体上下方向上方に配置可能として、突出部のデザイン自由度を確保しつつ、サイドシルアウタの下端境界部分の外観性向上が可能とできる。つまり、サイドシルアウタの接合面部の下端を突出部の上壁部と略同一高さに設けるため、ユーザに境界部分と突出部とを一体として視認させることができる。これにより、サイドシルアウタの分割ラインを目立たなくすることができ、サイドシルアウタの下端を下方に延長、或いはサイドシルモールの突出部を上方に延長することなく外観性の向上を図ることができる。
【0023】
また、車体剛性向上を狙いとして、車体のフレーム部材によって突出部を形成したとしても、境界部分が車体の構成部材による突出部と一体として視認させることができ、車体剛性向上と外観性の向上とが両立できる。
【0024】
請求項2の発明によれば、サイドシルアウタの接合面部の下端とサイドドアの下端部とが略同一高さに設けられるため、サイドドアが閉状態のときは、サイドドアでサイドシルアウタの接合面部を隠すことができ、サイドドアが開状態のときは、ユーザに境界部と突出部とを一体として視認させることができることから、更に、外観性の向上が図れる。
【0025】
請求項3の発明によれば、前記突出部が、前記板状補強部材に形成されると共に、前記接合面部から車幅方向外側に膨出する膨出部からなるため、サイドシルモールを用いることなく、サイドシルの閉断面を増加し、車体剛性を向上しつつ、外観性の向上を図ることができる。
【0026】
請求項4の発明によれば、前記サイドシルアウタは、前記接合面部の上方にサイドドアのシール部材が当接するシール面部を有するため、サイドシルアウタの接合面部がサイドドアの下端位置に近接するような車体上方に位置する場合でも、外観性の向上とドアシール性の確保とを両立することができる。
【0027】
請求項5の発明によれば、ホイールハウスアーチ部の下端部が、前記接合面部の下端と略同一高さに設けられるため、ホイールハウスアーチ部の下端部と前記接合面部の下端、所謂突出部の上壁部とをサイドドアのパーティングラインと連続させることができ、一層外観性の向上が図れる。
【0028】
請求項6の発明によれば、前記ホイールハウスアーチ部の下端部を覆うと共に、前記突出部の上壁部上に装着されるガーニッシュを有するため、ホイールハウスアーチ部のデザインに拘わらず、サイドシルアウタの接合面部と分割ラインとをガーニッシュで覆うことができ、外観性の向上が図れる。
【0029】
請求項7の発明によれば、前記突出部は、後輪の車幅方向外側境界面よりも外側まで張り出すため、車両の走行による砂や石等のチッピング抑制及びホイールハウス内に流入する走行風低減による空力特性改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係る自動車の側部車体構造を示す側面図である。
【図2】実施例1に係るサイドドアを外した状態の側部車体構造を示す側面図である。
【図3】図2に示す側部車体構造の分解図である。側部車体構造の要部斜視図である。
【図4】実施例1に係る側部車体構造の要部斜視図である。
【図5】図2におけるV−V線断面を示す図である。
【図6】図2におけるVI−VI線断面を示す図である。
【図7】図2におけるVII−VII線断面を示す図である。
【図8】図2におけるVIII−VIII線断面を示す図である。
【図9】実施例2に係る側部車体構造の要部斜視図である。
【図10】実施例2における図7に相当する断面図である。
【図11】実施例2におけるガーニッシュ取付け部分の説明図である。
【図12】実施例3における図6に相当する断面図である。
【図13】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施する為の最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明の実施例1について、図面を参照しつつ説明する。図1は実施例1に係る自動車の側部車体構造を示す側面図、図2はサイドドアを外した状態の側部車体構造を示す側面図、図3は図2に示す側部車体構造の分解図、図4は側部車体構造の要部斜視図である。
【0033】
図1に示すように、実施例1に係る車両1は、4ドアタイプの乗用車であり、車体側面には、サイドフレームアウタ2(サイドボディアウタパネル)と、フロントドア3と、その車体前後方向後方のリアドア4と、前輪5と、後輪6とが設けられている。フロントドア3とリアドア4との下方には、サイドフレームアウタ2に連結されると共に、車両1のフレーム部材として車体前後方向に延びる長尺状のサイドシル7が配設されている。
【0034】
図2に示すように、サイドフレームアウタ2は、サイドフレームアウタ2の後方領域で且つ後輪6周囲のホイールハウスアーチ部8と、後述するホイールハウスアウタ14とホイールハウスインナ15とから形成されるホイールハウス部とを有している。
【0035】
また、サイドフレームアウタ2は、乗員が乗降すると共にフロントドア3が開閉可能にヒンジ結合されるフロント開口9と、フロント開口9と同様にリアドア4が開閉可能にヒンジ結合されるリア開口10と、フロント開口9とリア開口10との間に設けられると共にサイドフレームアウタ2の上端部分と下端部分とを車体上下方向に連結するセンタピラーアウタ11とを有している。尚、サイドフレームアウタ2は、所定厚さ、例えば、0.7mmの鋼板からブランキングされた後、プレス加工成形によって形成されている。
【0036】
また、センタピラーアウタ11は、センタピラーインナ12(図5参照)と協働して閉断面構造のセンタピラー13を構成している。センタピラー13の上端部は閉断面構造のルーフサイドレールに、下端部はサイドシル7に夫々連結されている。
【0037】
図3及び図4に示すように、ホイールハウスアーチ部8の車幅方向内側には、車幅方向外側に位置するホイールハウスアウタ14と、車幅方向内側に位置するホイールハウスインナ15とが配置されている。ホイールハウスアウタ14とホイールハウスインナ15とは、左右両端部分及び上端部分が重合接合されており、中央領域には後輪6が収容される収容空間が形成されている。
【0038】
次に、図5〜図8に基づき、サイドシル7の構造について詳細に説明する。尚、図5は図2のV−V線断面図、図6は図2のVI−VI線断面図、図7は図2のVII−VII線断面図、図8は図2のVIII−VIII線断面図である。
【0039】
サイドフレームアウタ2に連結されるサイドシル7は、サイドフレームアウタ2の下部で構成されるサイドシルアウタ16と、サイドシルアウタ16の車幅方向内側に位置するサイドシルインナ17と、サイドシルレインフォースメント18(板状補強部材)とから構成している。また、サイドシルレインフォースメント18は、所定厚さ、例えば、1.4mmの長尺状の鋼板からブランキングされた後、プレス加工成形によって形成されている。尚、サイドフレームアウタ2の車体前後方向中央部分はセンタピラーアウタ11を構成すると共に、サイドフレームアウタ2の下方部分はサイドシルアウタ16を構成している。
【0040】
略U字状のサイドシルレインフォースメント18は、車幅方向内側の略ハット状のサイドシルインナ17と車幅方向外側のサイドシルアウタ16との間に配置されており、サイドシルインナ17のフランジを形成する第1上フランジ部17a及び第1下フランジ部17bとサイドシルレインフォースメント18のフランジを形成する第2上フランジ部18a及び第2下フランジ部18bとが夫々溶接接合されている。サイドシル7の下端部には、サイドシルインナ17の第1下フランジ部17bとサイドシルレインフォースメント18の第2下フランジ部18bとからなるフランジ部23が形成されている。
【0041】
サイドシルレインフォースメント18の断面は、第2上フランジ部18aの下端部に連続して車幅方向外側に延びる第1上壁部18c、第1上壁部18cの外側端部に連続すると共に車体上下方向下方に延びる略平面状の接合部18d、接合部18dの下端部から車幅方向外側に屈曲して略水平方向に延びる第2上壁部18e、第2上壁部18eの外側端部に連続すると共に車体上下方向下方に延びる平板状の面を有する平板部18f、平板部18fの下端部から第2下フランジ部18bの下端部よりも車体上下方向下方に凸設されると共に車体上下方向上方に湾曲して車幅方向内側の第2下フランジ部18bの上端部に連続する段差部18gとから構成している。また、第1上壁部18cと接合部18dと第2上壁部18eと平板部18fと段差部18gとは、夫々車体前後方向に延びる面を形成している。
【0042】
サイドシルレインフォースメント18とサイドシルインナ17とは、車体前後方向に延びる閉断面を形成している。この閉断面は、サイドシルインナ17と第1上壁部18cと接合部18dと第2下フランジ部18bとで規定される第1閉断面部19と、第1閉断面部19の車幅方向外側に位置すると共に第2上壁部18eと平板部18fで規定される第2閉断面部20と、第1閉断面部19と第2閉断面部20との下方に位置すると共に段差部18gで規定される第3閉断面部21とから構成している。第2閉断面部20は、後輪6の車幅方向外側端面となる境界Aよりも、更に車幅方向外側に張り出す構成とされている。尚、第2閉断面部20と、第3閉断面部21の一部とが本発明の膨出部に相当している。
【0043】
また、図5に示すように、センタピラー13が設置される領域では、センタピラーインナ12が、第1下フランジ部17bと第2下フランジ部18bとの溶接接合部分まで車体上下方向下方に延設されている。つまり、サイドシルレインフォースメント18とサイドシルインナ17とは、センタピラーインナ12を挟み込んだ状態で、第1上フランジ部17aとセンタピラーインナ12と第2上フランジ部18aとが3重溶接され、第1下フランジ部17bとセンタピラーインナ12と第2下フランジ部18bとが3重接合されている。この構成によって、センタピラー13の領域において、第1閉断面部19はセンタピラーインナ12により車幅方向外側の領域と車幅方向内側の領域とに2分されている。
【0044】
センタピラーアウタ11の下端部11bは、略平面状の接合部18dの下端部まで車体上下方向下方に延設され、その下端部11bの下断面は第2上壁部18eに当接して配置されている。センタピラーアウタ11の下端部11bにおける車幅方向内側面は、接合部18dの車幅方向外側面に面接触した状態で溶接接合される。つまり、第1上壁部18cは、センタピラー13を車体上下方向で区分する節を形成している。
【0045】
図6に示すように、センタピラー13の車体前後方向後方側にはリア開口10が形成される。第1上フランジ部17aと第2上フランジ部18aとサイドシルアウタ16の第3下フランジ部16b上方でリア開口10の縁部を構成する第3上フランジ部16aとが3重接合されている。
【0046】
第3上フランジ部16aの下端部に連続して車幅方向外側に延びる張出部16cは、第1上壁部18cに対向配置され、第1上壁部18cと協働して第4閉断面22を形成し、張出部16cの外側端部から車体上下方向下方に延設して第3下フランジ部16bを構成している。尚、第3下フランジ部16bは下端部11bの車体前後方向の延長上に連続して存在しており、第3下フランジ部16bと下端部11bとが、本発明の接合面部に相当している。
【0047】
第3下フランジ部16bは、略平面状の接合部18dの下端部まで車体上下方向下方に延設され、第3下フランジ部16bの下断面は第2上壁部18eに当接して配置されている。第3下フランジ部16bにおける車幅方向内側面は、接合部18dの車幅方向外側面に面接触した状態で溶接接合される。この構成によって、第3下フランジ部16bの下断面、所謂分割ラインを第2閉断面部20の起点部、所謂屈曲線とを一体として視認させることができる。
【0048】
また、リアドアアウタ4aとリアドアインナ4bとからなるリアドア4の下端部は、接合部18dの下端部、つまり、第2上壁部18eの外側端部と対向する位置とされ、センタピラーアウタ11の下端部11bの下断面、所謂サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16bの下断面と水平方向から見て略同一高さとなるよう構成している。この構成によって、リアドア4が閉状態とされたとき、リアドア4の下端部は路面との間にサイドシル7の第2閉断面部20第3閉断面部21の一部とからなる膨出部を介在させた状態となっている。
【0049】
リアドアインナ4bの下端面には、車室内への水等の侵入を防止するウェザーストリップ4cが装着されており、リアドア4が閉状態とされたとき、張出部16cの外側端部に形成されるシール部25と当接してシール性を確保している。
【0050】
図7及び図8に示すように、車体前後方向後方領域では、サイドシルアウタ16とサイドシルレインフォースメント18が後方に向かって延設されている。サイドシルレインフォースメント18の後端領域は、ホイールハウスアーチ部8に当接すると共に、第2上フランジ部18aと第2下フランジ部18bとは、夫々ホイールハウスアウタ14の車幅方向外側面に当接し、ホイールハウスインナ15と3重接合されている。
【0051】
図8に示すように、平面視で確認できる面は、サイドシルアウタ16とシール部25と第2上壁部18eと平板部18fとされる。ホイールハウスアーチ部8の車両前後方向前側の下端部8bは、サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16bと同様に、サイドシルレインフォースメント18の第2上壁部18eに当接して配置され、接合部18dの車幅方向外側面に面接触した状態で溶接接合される。つまり、下端部8bの下断面は、リアドア4のパーティングラインと連続するよう構成されている。
【0052】
第2上壁部18cは、上壁とこの上壁よりも下方の下壁との2段構造とされ、ホイールハウスアーチ部8との当接領域の増大を図るよう構成している。また、ホイールハウスアーチ部8の車体前後方向前方領域においても、第2上壁部18eと平板部18fで規定される第2閉断面部20は、車両1の正面から見て後輪6の車幅方向外側端面となる境界Aよりも、更に車幅方向外側に張り出す構成とされている。
【0053】
次に、本実施例1に係る本側部車体構造の作用、効果を説明する。
サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16bと下端部11bより車幅方向外側に張り出す第2閉断面部20を設けると共に、第3下フランジ部16bと下端部11bとの下断面、所謂分割ラインを第2閉断面部20を構成する第2上壁部18eに当接させるため、サイドシルアウタ16の分割ラインを目立たなくすることができ、外観性向上が可能とできる。
【0054】
しかも、サイドシルアウタ16を車体上下方向上方に配置することで、サイドシルアウタ16ではなくサイドシルレインフォースメント18によって膨出部を形成することができ、膨出部のデザイン自由度の拡大を図ることが可能となる。
【0055】
また、車体のフレーム部材であるサイドシルレインフォースメント18により第2閉断面部20と第3閉断面部21とを形成したため、分割ラインが第2閉断面部20と一体として視認させることができ、車体剛性向上と外観性の向上とが両立できる。
【0056】
更に、第3下フランジ部16bと下端部11bとの下断面とリアドア4の下端部とが略同一高さに設けられるため、リアドア4が閉状態のときは、リアドア4でサイドシルアウタ16の接合面部を隠すことができ、リアドア4が開状態のときは、ユーザに分割ラインと第2閉断面部20とを一体として視認させることができる。
【0057】
しかも、第2閉断面部20が、サイドシルレインフォースメント18に形成されると共に、第3下フランジ部16bと下端部11bとから車幅方向外側に膨出するため、サイドシルモール等別部材を用いることなく、サイドシル7に形成される閉断面の面積を増加し、車体剛性を向上すると共に、走行に伴うチッピング抑制や空力特性改善を図ることができる。
【0058】
また、サイドシルアウタ16は、第3下フランジ部16bの上方、所謂張出部16cの外側端部にリアドア4のウェザーストリップ4cが当接するシール部25を有するため、第3下フランジ部16bがリアドア4の下端位置に近接するほど車体上方に位置する場合であっても、外観性の向上とシール性の確保とを両立することができる。
【0059】
ホイールハウスアーチ部8の下端部8bが、第3下フランジ部16bと下端部11bとの下断面と略同一高さに設けられるため、下端部8bと第2閉断面部20を構成する第2上壁部18eとをリアドア4のパーティングラインと連続させることができ、外観性の向上が図れる。
【実施例2】
【0060】
次に、図9〜図11に基づき、実施例2を説明する。尚、実施例1と同様の構成は同じ符号を付している。また、図10は、実施例1の図7に相当する断面図を示している。
【0061】
ホイールハウスアーチ部8は、車幅方向外側に位置するホイールハウスアウタ14と、車幅方向内側に位置するホイールハウスインナ15とから構成している。ホイールハウスアウタ14とホイールハウスインナ15とは、左右両端部分及び上端部分が重合接合されており、中央領域には後輪6が収容される収容空間が形成されている。
【0062】
図10に示すように、車体前後方向後方領域では、サイドシルアウタ16とサイドシルレインフォースメント18が後方に向かって延設されている。サイドシルレインフォースメント18の後端領域は、ホイールハウスアーチ部8に当接すると共に、第2上フランジ部18aと第2下フランジ部18bとは、夫々ホイールハウスアウタ14の車幅方向外側面に当接し、ホイールハウスインナ15と3重接合されている。
【0063】
ホイールハウスアーチ部8の下端部8bは、車幅方向内側に向かって凹部が形成されており、サイドシルレインフォースメント18の第2上壁部18eに当接して配置され、接合部18dの車幅方向外側面に面接触した状態で溶接接合される。
【0064】
第1上壁部18cは、上壁とこの上壁よりも下方の下壁との2段構造とされ、ホイールハウスアーチ部8との当接領域の拡大を図るよう構成している。また、車体前後方向後方領域においても、第2上壁部18eと平板部18fで規定される第2閉断面部20は、後輪6の車幅方向外側端面となる境界Aよりも、更に車幅方向外側に張り出す構成とされている。
【0065】
図11に示すように、ホイールハウスアーチ部8の下端部8bの車幅方向外側には、樹脂製のガーニッシュ24が設置されている。ガーニッシュ24は三角柱形状とされ、車幅方向外側の第1面部24a、車体前後方向前端面を形成する第2面部24b、車体前後方向後端面を形成する第3面部24c、車幅方向内側に設けられたビス状の係合部24dとから構成している。ガーニッシュ24は、係合部24dをホイールハウスアーチ部8の下端部8bに設けられた被係合部8eに係合することで車体1に装着している。
【0066】
第1面部23aは、上端部がホイールハウスアーチ部8の表面と面一とされると共に、車体上下方向下方に向かって車幅方向外側に張り出す形状とされ、下端部は平板部18fと面一となるよう構成している。
【0067】
次に、本実施例2に係る本側部車体構造の作用、効果を説明する。
実施例1と同様に、車体構成部材であるサイドシルレインフォースメント18で車幅方向外側境界Aよりも外側に膨出部である第2閉断面20を形成するため、車両の走行に起因する砂や石等のチッピングを膨出部によって遮断し、車体側部への砂や石等の飛散を防止できる。
【0068】
また、第2閉断面20が車幅方向外側境界Aよりも膨出すると共に、第2閉断面20の上方においてもガーニッシュ24が車幅方向外側に突出することが可能であるため、ホイールハウス内に流入する走行風を更に減少でき、空力特性改善が期待できる。しかも、ガーニッシュ24の形状を任意に変更できることから、ホイールハウスアーチ部8のデザインに拘わらず、サイドシルアウタ16の接合面部と分割ラインとをガーニッシュ24で覆うことができ、外観性の向上が図れる。
【実施例3】
【0069】
次に、図12に基づき、実施例3を説明する。尚、実施例1と同様の構成は同じ符号を付している。また、図12は、実施例1の図6に相当する断面図を示している。
【0070】
サイドフレームアウタ2に連結されるサイドシル7は、サイドフレームアウタ2の下部で構成されるサイドシルアウタ16と、サイドシルアウタ16の車幅方向内側に位置するサイドシルインナ17と、サイドシルレインフォースメント18と、サイドシルレインフォースメント18の車幅方向外側に装着される樹脂製のサイドシルモール26から構成している。
【0071】
略ハット字状のサイドシルレインフォースメント18は、車幅方向内側の略ハット状のサイドシルインナ17と車幅方向外側のサイドシルアウタ16との間に配置されており、サイドシルインナ17のフランジを形成する第1上フランジ部17a及び第1下フランジ部17bとサイドシルレインフォースメント18のフランジを形成する第2上フランジ部18a及び第2下フランジ部18bとが夫々溶接接合されている。
【0072】
サイドシルレインフォースメント18の断面は、第2上フランジ部18aの下端部に連続して車幅方向外側に延びる上壁部18c、第1上壁部18cの外側端部に連続すると共に車体上下方向下方に延びる略平面状の側壁部18h、側壁部18hの下端部から車幅方向内側へ延設され、第2下フランジ部18bの上端部に連続する下壁部18iとから構成している。また、第1上壁部18cと側壁部18hと下壁部18iとは、夫々車体前後方向に延びる面を形成している。サイドシルレインフォースメント18とサイドシルインナ17とは、車体前後方向に延びる第5閉断面部27を形成している。
【0073】
センタピラー13の車体前後方向後方側にはリア開口10が形成される。第1上フランジ部17aと第2上フランジ部18aとサイドシルアウタ16の第3下フランジ部16b上方でリア開口10の縁部を構成する第3上フランジ部16aとが3重接合されている。第3上フランジ部16aの下端部に連続して車幅方向外側に延びる張出部16cは、第1上壁部18cに対向配置され、第1上壁部18cと協働して第4閉断面22を形成し、張出部16cの外側端部から車体上下方向下方に延設して第3下フランジ部16bを構成している。
【0074】
第3下フランジ部16bは、略平面状の側壁部18hの中央部分まで車体上下方向下方に延設され、側壁部18hの車幅方向外側面に面接触した状態で溶接接合される。
【0075】
サイドシルモール26は、車幅方向外側に向かってリアドア4の下端部より外側まで延びる上壁モール部26a、上壁モール部26aの車幅方向外側に連続すると共に、車体上下方向下方に延びる略平面状の側壁モール部26b、側壁モール部26bの下端部から第2下フランジ部18bの下端部よりも車体上下方向下方に凸設されると共に第2下フランジ部18bまで延設される下壁モール部26cとから構成している。サイドシルモール26は、車体方向前後端部及び中間部分で車体に対して図示しないビスを用いて装着している。
【0076】
上壁モール部26aは、車幅方向内側先端が側壁部18hの表面に当接すると共に、サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16bの下断面に当接するよう構成している。下壁モール部26cは、車幅方向内側部分において、その上面が下壁部18iの下面に面接触するように構成している。本実施例では、サイドシルモール26が本発明の突出部に相当している。
【0077】
次に、本実施例3に係る本側部車体構造の作用、効果を説明する。
実施例1と同様に、サイドシルモール26がリアドア4の下端部より外側まで突出されるため、車両の走行に起因する砂や石等のチッピングを膨出部によって遮断し、車体側部への砂や石等の飛散を防止できる。
【0078】
また、上壁モール部26aは、サイドシルアウタ16の第3下フランジ部16b下断面に当接するため、第3下フランジ部16bの下断面をサイドシルモール26と一体として視認させることができる。
【0079】
しかも、後輪6の前方において、サイドシルモール26を車幅方向外側に突出することが可能であるため、ホイールハウス内に流入する走行風を更に減少でき、空力特性改善が期待できる。しかも、サイドシルモール26の形状を任意に変更できることから、デザイン自由度の拡大が図れる。
【0080】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、サイドフレームアウタとサイドシルアウタとを一体形成した例を説明したが、サイドフレームアウタとサイドシルアウタとが別体であるものについても適用可能であり、同様の効果を奏することができる。
【0081】
2〕前記実施例においては、サイドシルアウタの第3下フランジが車体上下方向に延びると共に突出部と当接する例を説明したが、少なくとも第3下フランジの下断面(分割ライン)が突出部と一体的に視認されれば良く、第3下フランジの下断面と突出部とが微小間隔離れている構成、第3下フランジが所定角度を持って斜め下方に延びるものであっても、同様の効果を奏することができる。
【0082】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、車体側部の表面を形成するサイドボディアウタパネルに連結されたサイドシルを有する側部車体構造全般に利用することができ、特に、サイドシルアウタの下端境界部分の外観性向上が要求される自動車に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 車両
2 サイドフレームアウタ
4 リアドア
4c ウェザーストリップ
6 後輪
7 サイドシル
8 ホイールハウスアーチ部
8b 下端部
16 サイドシルアウタ
16b 第3下フランジ
16c 張出部
17 サイドシルインナ
18 サイドシルレインフォースメント
18c 上壁部
18d 接合部
18e 第2上壁部
18f 平板部
18g 段差部
18h 側壁部
20 第2閉断面部
23 フランジ部
24 ガーニッシュ
25 シール部
26 サイドシルモール
26a 上壁モール部
26b 側壁モール部
26c 下壁モール部

前記突出部は、後輪の車幅方向外側境界面よりも外側まで張り出すことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の自動車の側部車体構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の表面を形成するサイドボディアウタパネルと、車体前後方向に延びると共に前記サイドボディアウタパネルに連結されたサイドシルとを有する自動車の側部車体構造において、
前記サイドシルは、前記サイドボディアウタパネルの下部に設けられるサイドシルアウタと、このサイドシルアウタの車幅方向内側のサイドシルインナと、このサイドシルインナと前記サイドシルアウタとの間に介在すると共に前記サイドシルアウタの接合面部と接合される板状補強部材と、前記接合面部より車幅方向外側に張り出す突出部とを有し、
この突出部の上壁部は、前記接合面部の下端と略同一高さに設けられることを特徴とする自動車の側部車体構造。
【請求項2】
開閉可能なサイドドアを有し、
前記サイドシルアウタの接合面部の下端と前記サイドドアの下端部とが略同一高さに設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項3】
前記突出部が、前記板状補強部材に形成されると共に、前記接合面部から車幅方向外側に膨出する膨出部からなることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項4】
前記サイドドアは、閉状態のとき、前記サイドドアと前記サイドシルとの間をシールするシール部材を有し、
前記サイドシルアウタは、前記接合面部の上方に前記シール部材が当接するシール面部を有することを特徴とする請求項2または3に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項5】
前記サイドボディアウタパネルは、車体前後方向後方に後輪を収容するホイールハウス部と、このホイールハウス部と前記サイドドアとの間で且つ前記サイドドアが閉状態のとき、前記サイドドアと略連続する面を形成するホイールハウスアーチ部とを有し、
このホイールハウスアーチ部の下端部が、前記接合面部の下端と略同一高さに設けられることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動車の側部車体構造。
【請求項6】
前記ホイールハウスアーチ部の下端部を覆うと共に、前記突出部の上壁部上に装着されるガーニッシュを有することを特徴とする請求項5に記載の自動車の側部車体構造。
【請求項7】
前記突出部は、後輪の車幅方向外側境界面よりも外側まで張り出すことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の自動車の側部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−188757(P2010−188757A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32478(P2009−32478)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】