説明

自動車の内装部品

【課題】取り外し時に工具が挿入しやすく、部品の表面に傷を付ける虞がない自動車の内装部品を提供する。
【解決手段】本体7を覆うカバー体8の端部8bと本体7の棚部5との間であり且つカバー体8を本体7に支持する爪部11に対応した部位には、工具12を挿入可能なる離間寸法の挿入部13が形成されてなり、カバー体8の端部8bの内面8a側と爪部11との間には、カバー体8の端部8bの内面8a側から該爪部11側に向けて挿入部13の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部14が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の内装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部品としては、例えば、自動車のドアに設けられるグリップがある。該グリップは、車体としてのドアインナパネルに固定されると共に固定部に開口を有する本体と、該本体の開口を覆う板状に形成されてなる合成樹脂製のカバー体とより構成されてなり、前記カバー体の内面側には、該開口に形成された縁部を係合することで支持可能なると共に撓ませることにより縁部から離脱して外れることが可能なる爪部を突出形成してなる。そして、グリップを外すなど一旦組み上がった状態でカバー体を外す必要が生じた時には、カバー体と本体との間に、先端が薄い工具(例えば、ドライバー)を挿入して爪部に力を加えることで、カバー体を外している(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】実開昭61−5222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる工具を簡易に挿入できる専門工具を用意すれば、原価高騰の一原因になる。また、先端が薄い汎用工具(例えば、ドライバー)であれば、工具自体の原価は低減できるが、カバー体と本体との間に工具が挿入しずらく、作業性が悪化して原価高騰の一原因になる。更に、工具が挿入できずに滑ると、カバー体や本体に滑り傷を付けてしまい、商品価値を落としてしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、取り外し時に工具が挿入しやすく、部品の表面に傷を付ける虞がない自動車の内装部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、車体に固定されると共に周囲に棚部が形成された開口を有する本体と、該本体の開口を覆う板状に形成されてなる合成樹脂製のカバー体とより少なくとも構成されてなり、前記カバー体の内面側には、該開口の棚部に形成された縁部に係合することで支持可能なると共に撓ませることにより棚部の縁部から離脱して外れることが可能なる爪部を突出形成してなる自動車の内装部品であって、前記カバー体の端部と本体の棚部との間であり且つ前記爪部に対応した部位には、工具を挿入可能なる離間寸法の挿入部が形成されてなり、前記カバー体の端部の内面側と爪部との間には、該端部の内面側から該爪部側に向けて前記挿入部の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部が形成されてなることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車の内装部品であって、前記ガイド部は、挿入部より開口側に挿入した工具により本体の棚部よりカバー体が外れる方向に持ち上げ可能なリブにより形成されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自動車の内装部品であって、前記カバー体の外側には、金属製の加飾部材が支持されてなり、前記カバー体の挿入部が形成されてなる端部には、前記加飾部材の端部の折り返し部がカバー体の端部より突出させてなる段部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自動車の内装部品であって、前記ガイド部の最も本体の棚部に近接した部位と本体の棚部との寸法は、前記工具の挿入時の上下寸法よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前記カバー体の端部と本体の棚部との間であり且つ前記爪部に対応した部位には、工具を挿入可能なる離間寸法の挿入部が形成されてなるため、取り外し時に工具を挿入部に当てるだけで工具が挿入しやすくなり、取り外し作業の作業性が著しく向上する。しかも、該爪部に対応した位置に挿入部が形成されてなるため、工具の挿入力が爪部に加わりやすく、爪部の変形が簡易となる。また、挿入部に工具がしっかり支持されることで、部品の表面に傷を付ける虞がない。更に、前記カバー体の端部の内面側と爪部との間には、該端部の内面側から該爪部側に向けて前記挿入部の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部が形成されてなることにより、外側から挿入部をのぞき込んでも中側が見えにくく、見栄えを損なうことがない。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ガイド部は、挿入部より開口側に挿入した工具により本体の棚部よりカバー体が外れる方向に持ち上げ可能なリブにより形成されてなるため、取り外し時に工具をリブに当てて挿入するだけでカバー体を持ち上げる力が加わり、外しやすくなる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記カバー体の外側には、金属製の加飾部材が支持されてなり、前記カバー体の挿入部が形成されてなる端部には、前記加飾部材の端部の折り返し部より突出させてなる段部が形成されてなるため、前記加飾部材がカバー体を覆っているにも関わらず、工具を挿入する際に段部によって加飾部材の端部の折り返し部に工具が接触せず、加飾部材が傷つくのを確実に防止できる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記ガイド部の最も本体の棚部に近接した部位と本体の棚部との寸法は、前記工具の挿入時の上下寸法よりも小さいため、前記工具の挿入により楔状になっているガイド部が容易に持ち上げられることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
取り外し時に工具が挿入しやすく、部品の表面に傷を付ける虞がない自動車の内装部品を提供する、という目的を、車体に固定されると共に周囲に棚部が形成された開口を有する本体と、該本体の開口を覆う板状に形成されてなる合成樹脂製のカバー体とより少なくとも構成されてなり、前記カバー体の内面側には、該開口の棚部に形成された縁部に係合することで支持可能なると共に撓ませることにより棚部の縁部から離脱して外れることが可能なる爪部を突出形成してなる自動車の内装部品であって、前記カバー体の端部と本体の棚部との間であり且つ前記爪部に対応した部位には、工具を挿入可能なる離間寸法の挿入部が形成されてなり、前記カバー体の端部の内面側と爪部との間には、該端部の内面側から該爪部側に向けて前記挿入部の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部が形成されてなることで、実現した。
【実施例1】
【0014】
本発明の一実施例を、図1〜図5に基づいて説明する。図1はドアトリム1にグリップ2を備えたアームレスト3が支持された状態を示す正面図であり、図2は図1の矢視Aに係る正面図であり、図3は図2のIII−III線に沿った断面図であり、図4は図3に示すグリップ2の挿入部13に工具12を当てた状態を示す断面図であり、図5は工具12によりグリップ2の本体7からカバー体8が離脱した状態を示す断面図である。
【0015】
自動車の「車体」としてのドア4の内面を覆うドアトリム1には、グリップ2を備えたアームレスト3が配され、ドア4の図示しないインナパネルに同じく図示しない固着手段によりグリップ2及びアームレスト3が取付けられている。
【0016】
グリップ2は、ドア4の図示しないインナパネルに固定されると共に図3に示すような棚部5が周囲に形成された開口6を有するポロプロピレンなどの合成樹脂製の本体7と、該本体7の開口6を覆う板状に形成されてなるポロプロピレンなどの合成樹脂製のカバー体8とより構成されてなる。該フリップ2には、ドア4のサイドウインドパネル9を昇降させるスイッチやサイドウインドパネル9の降下を阻止させるスイッチなどが設けられている。
【0017】
前記カバー体8の内面8a側には、該開口6の棚部5に形成された縁部10に係合することで支持可能なると共に撓ませることにより棚部5の縁部10から離脱して外れることが可能なる爪部11を突出形成してなる。
【0018】
また、前記グリップ2のカバー体8の端部8bと本体7の棚部5との間は、隙間が無い状態に近接してなり、前記爪部11に対応した部位のカバー体8の端部8bには、マイナスドライバーなどの工具12を挿入可能なる離間寸法の挿入部13が形成されてなり、前記カバー体8の端部8bの内面8a側と爪部11との間には、該端部8bの内面8a側から該爪部11側に向けて前記挿入部13の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部14が形成されてなる。前記爪部11には、棚部5の縁部10に係合する係合部11aが形成されてなる。
【0019】
前記ガイド部14は、挿入部13より開口6側に挿入した工具12により本体7の棚部5よりカバー体8が外れる方向に持ち上げ可能な複数のリブにより形成されてなる。
【0020】
前記カバー体8の外側には、アルミニュウムなど光沢を有する金属材よりなる薄板の加飾部材15が支持されてなり、前記カバー体8の挿入部13が形成されてなる端部8b(図3)には、前記加飾部材15の端部15aの折り返し部16が前記カバー体8の端部8bとほぼ同面状、より好ましくは突出させてなる段部17が形成されてなる。該段部17を除く端部8bの最下端と本体7の棚部5との寸法aは、前記工具12の先端部12aの挿入時の上下寸法cよりも大きい寸法関係にあり、前記加飾部材15の端部15aの折り返し部16と本体7の棚部5との寸法bは、前記寸法aよりも大きい寸法関係にある。
【0021】
前記ガイド部14の最も本体7の棚部5に近接した部位14aと本体7の棚部5との寸法dは、前記工具12の先端部12aの挿入時の上下寸法cよりも小さい寸法関係にある。
【0022】
この実施例に係るグリップ2は、以上説明した如く、前記カバー体8の端部8bと本体7の棚部5との間であり且つ前記爪部11に対応した部位には、図4に示すように、工具12を挿入可能なる離間寸法の挿入部13が形成されてなるため、取り外し時に工具12の先端部12aを挿入部13に当てるだけで工具12の先端部12aが挿入しやすくなり、取り外し作業の作業性が著しく向上する。
【0023】
しかも、図2に示すように、該爪部11に対応した位置に挿入部13が形成されてなるため、工具12の先端部12aの挿入力が爪部11に加わりやすく、爪部11の撓み変形が簡易となる。また、挿入部13に工具12の先端部12aがしっかり支持されることで、「部品」である加飾部材15の表面に傷を付ける虞がない。
【0024】
更に、前記カバー体8の端部8bの内面8a側と爪部11との間には、該端部8bの内面8a側から該爪部11側に向けて前記挿入部13の離間寸法a〜dが徐々に小さくなる底面部14bがガイド部14に形成されてなることにより、外側から挿入部13をのぞき込んでもグリップ2の中側が見えにくく、見栄えを損なうことがない。
【0025】
前記ガイド部14は、挿入部13より本体7の開口6側に挿入した工具12の先端部12aにより本体7の棚部5よりカバー体8が外れる方向に持ち上げ可能なリブにより形成されてなるため、取り外し時に工具12の先端部12aをリブよりなるガイド部14の底面部14bに当てて挿入するだけで、カバー体8を持ち上げる力が加わり、外しやすくなる。
【0026】
前記カバー体8の外側には、金属製の加飾部材15が支持されてなり、前記カバー体8の挿入部13が形成されてなる端部8bには、前記加飾部材15の端部15aの折り返し部16より前記カバー体8の端部8bとほぼ同面状、より好ましくは突出させてなる段部17が形成されてなるため、前記加飾部材15がカバー体8を覆っているにも関わらず、工具12の先端部12aを挿入する際に段部17によって加飾部材15の端部15aの折り返し部16に工具12の先端部12aが接触せず、加飾部材15が傷つくのを確実に防止できる。
【0027】
前記ガイド部14の最も本体7の棚部5に近接した部位14aと本体7の棚部5との寸法dは、前記工具12の先端部12aの挿入時の上下寸法cよりも小さいため、前記工具12の先端部12aの挿入により楔状になっているガイド部14の底面部14bが容易に持ち上げられることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
自動車の内装部品としてグリップを例にして説明したが、グリップに限定されるものではなく、車体に固定されると共に周囲に棚部が形成された開口を有する本体と、該本体の開口を覆う板状に形成されてなる合成樹脂製のカバー体とより構成されてなり、前記カバー体の内面側には、該開口の棚部に形成された縁部に係合することで支持可能なると共に撓ませることにより棚部の縁部から離脱して外れることが可能なる爪部を突出形成してなるものであれば、この発明の及ぶ範囲である。
【0029】
また、前記説明したグリップ2はアームレスト3と一体に形成されてなるものに限定されるものではなく、グリップ単体であっても良い。また、グリップが支持される部位の車体は、ドアに限らず、乗員の側部に配されるサイドパネルでも良い。
【0030】
更に、合成樹脂製のカバー体の表面には、天然木目印刷あるいは木目模様の塗装を施すか、あるいはかかる印刷/塗装のいずれかが施された表皮材を支持するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係るドアトリムにグリップを備えたアームレストが支持された状態を示す正面図。
【図2】図1の矢視Aに係る正面図。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図3に示すグリップの挿入部に工具を当てた状態を示す断面図。
【図5】工具によりグリップの本体からカバー体が離脱した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0032】
2 グリップ
4 ドア(車体)
5 棚部
6 開口
7 本体
8 カバー体
8a カバー体の内面
8b カバー体の端部
10 本体の縁部
11 爪部
12 工具
13 挿入部
14 ガイド部
14a ガイド部の最も本体の棚部に近接した部位
14b ガイド部の底面部
15 加飾部材
15a 加飾部材の端部
16 折り返し部
17 段部
a カバー体の端部の最下端と本体の棚部との寸法
b 加飾部材の端部の折り返し部と本体の棚部との寸法
c 工具の先端部の挿入時の上下寸法
d ガイド部の最も本体の棚部に近接した部位と本体の棚部との寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されると共に周囲に棚部が形成された開口を有する本体と、該本体の開口を覆う板状に形成されてなる合成樹脂製のカバー体とより少なくとも構成されてなり、前記カバー体の内面側には、該開口の棚部に形成された縁部に係合することで支持可能なると共に撓ませることにより棚部の縁部から離脱して外れることが可能なる爪部を突出形成してなる自動車の内装部品であって、
前記カバー体の端部と本体の棚部との間であり且つ前記爪部に対応した部位には、工具を挿入可能なる離間寸法の挿入部が形成されてなり、
前記カバー体の端部の内面側と爪部との間には、該端部の内面側から該爪部側に向けて前記挿入部の離間寸法が徐々に小さくなるガイド部が形成されてなることを特徴とする自動車の内装部品。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の内装部品であって、
前記ガイド部は、挿入部より開口側に挿入した工具により本体の棚部よりカバー体が外れる方向に持ち上げ可能なリブにより形成されてなることを特徴とする自動車の内装部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動車の内装部品であって、
前記カバー体の外側には、金属製の加飾部材が支持されてなり、
前記カバー体の挿入部が形成されてなる端部には、前記加飾部材の端部の折り返し部がカバー体の端部より突出させてなる段部が形成されてなることを特徴とする自動車の内装部品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自動車の内装部品であって、
前記ガイド部の最も本体の棚部に近接した部位と本体の棚部との寸法は、前記工具の挿入時の上下寸法よりも小さいことを特徴とする自動車の内装部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−76521(P2006−76521A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265406(P2004−265406)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】