自動車の後部車体構造
【課題】 車輪から伝達される荷重など車幅方向所定の位置に作用する荷重を後部車体の全体に効率的に伝達することができ、これにより後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上する。
【解決手段】 車体の前後方向に延びるリヤフロアパネル5と、このリヤフロアパネル5の車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁6と、リヤフロアパネル5と左右の一対の車体側壁6とを各々間接的に連結する左右一対のガセット部材11,12とを備える。車幅方向に沿って延び両端が車体側壁6に接合される補強クロスメンバ7がリヤフロアパネル5上に接合されるとともに、第1および第2ガセット部材11,12の一端部がこの補強クロスメンバ7の所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバ7を介してリヤフロアパネル5に間接的に接合されている。
【解決手段】 車体の前後方向に延びるリヤフロアパネル5と、このリヤフロアパネル5の車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁6と、リヤフロアパネル5と左右の一対の車体側壁6とを各々間接的に連結する左右一対のガセット部材11,12とを備える。車幅方向に沿って延び両端が車体側壁6に接合される補強クロスメンバ7がリヤフロアパネル5上に接合されるとともに、第1および第2ガセット部材11,12の一端部がこの補強クロスメンバ7の所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバ7を介してリヤフロアパネル5に間接的に接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材を備えた自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後部車体の捩り剛性を向上させる観点から、車体の前後方向に沿って延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの上方に車幅方向に沿って配設されたリヤパッケージメンバとを、或いはリヤフロアパネルの車幅方向両端側に配設された車体側壁とを連結する左右一対のブレース状ガセット部材が設けられた自動車の後部車体構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リヤフロアパネルの中央部で車体の前後方向に沿って延びるトンネル部と、このトンネル部に沿って配設されトンネル部との間に閉断面を形成するトンネルレインフォースメントと、上記リヤフロアパネルの上方で車幅方向に延びるリヤパッケージメンバとを備え、後部車体の捩り剛性を向上させるために、上記トンネルレインフォースメントとリヤパッケージとを連結する左右一対のV字状ガセット部材をさらに備えた後部車体構造が知られている。
【特許文献1】特開2003−137137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の後部車体構造によれば、衝突時または後突時にトンネルレインフォースメントに入力された荷重をガセット部材を通してリヤパッケージメンバに効率的に分散させることができる反面、例えば路面状況等に応じて車輪から入力される荷重や遠心力により作用する荷重等、車幅方向の所定位置に作用する荷重を効率的に分散し難いものであった。
【0005】
近年、自動車の高出力化等に伴い、車輪から入力される荷重など車幅方向所定の位置に作用する荷重も大きくなる傾向にあり、当該荷重を後部車体の全体に効率的に伝達分散させて後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに高めることが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車輪から伝達される荷重など車幅方向所定の位置に作用する荷重を後部車体の全体に効率的に伝達させることができ、これにより後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができる自動車の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明に係る自動車の後部車体構造は、車体の前後方向に延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁と、上記リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材とを備えた自動車の後部車体構造において、車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるとともに、上記ガセット部材の一端部がこの補強クロスメンバの所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバを介してリヤフロアパネルに間接的に接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるので、車輪から入力される荷重等、車幅方向所定の位置に作用する荷重を当該補強クロスメンバに伝達することができる。ここで、従来の後部車体構造ではリヤフロアパネルの下側に車幅方向に延びるリヤクロスメンバが設けられていることが多く、このリヤクロスメンバにも上記車幅方向の所定位置に作用する荷重が伝達されることになるが、上記リヤフロアパネルの上側に上記補強クロスメンバを設けることにより、このリヤクロスメンバとともに荷重を分担することができる。
【0009】
しかも、この補強クロスメンバはその両端が車体側壁に接合されているとともに、その所定箇所にガセット部材の一端部が接合されているので、補強クロスメンバに作用する荷重を効率的に後部車体の全体に伝達して分散させることができる。特に、ガセット部材が補強クロスメンバを介して間接的にリヤフロアパネルに接合されているので、この補強クロスメンバにより車体側壁にも荷重を分散させてこのガセット部材に作用する荷重を適度に軽減させることができ、これにより後部車体の全体に満遍なく荷重を分散させ、後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
上記対のガセット部材の配置位置やセット数を特に限定するものではないが、上記ガセット部材は、車幅方向内側に設けられる第1ガセット部材と車幅方向外側に設けられる第2ガセット部材との内外少なくとも2対設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成すれば、各ガセット部材でさらに荷重を効率的に分散させて伝達することができ、しかもリヤフロアパネル等に作用する荷重を車幅方向に沿って4点で支持することができ、これにより後部車体の剛性をさらに向上させることができる。
【0012】
この場合、第1ガセット部材の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば棒状部材、断面H字状部材等であってもよいが、例えば上記第1ガセット部材は、車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、その下端部が上記補強クロスメンバの前面に接合されているのが好ましい(請求項3)。
【0013】
すなわち、第1ガセット部材は、車幅方向内側に配設されるため、車体の前後方向について厚みがあると、このガセット部材の後方のスペースが制限されることになる。従って、ガセット部材が車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、第1ガセット部材が補強クロスメンバの前面に接合されているので、車幅方向ないしは車高方向に作用する荷重に対する強度を向上させて後部車体の剛性の向上を図りながら、第1ガセット部材の後方スペースを可及的に広く確保することができる。
【0014】
この場合、上記第1ガセット部材は、車体の前後方向に沿った断面が閉断面として形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成すれば、平板状に形成されることにより車体の前後方向に沿った荷重に対する強度低下が懸念される第1ガセット部材の強度を簡単な構成で向上させることができる。
【0016】
一方、第2ガセット部材の具体的形状は特に限定するものではなく、第1ガセット部材と同様に形成するものであってもよいが、例えば、上記第2ガセット部材は、車体の前後方向に沿って所定の幅を有する平面部と、この平面部における車体の前後方向両端縁から略垂直方向に延びる前後側壁部とを有し、この第2ガセット部材の下端部における平面部が上記補強クロスメンバの上面に沿って配設されているのが好ましい(請求項5)。
【0017】
このように構成すれば、平面部に加え、前後側壁部を有するので第2ガセット部材の剛性を向上させることができ、しかもこれらの第2ガセット部材の端部が補強クロスメンバに沿って配設されるので、荷重の伝達をスムーズに行うことができる。
【0018】
さらに、平面部、前後側壁部を有する第2ガセット部材について、断面コ字状に形成するもの等であってもよいが、例えば上記第2ガセット部材の前側壁部は、上記平面部から垂下して形成され、一方、第2ガセット部材の後側壁部は、上記平面部から略垂直に立ち上がって形成され、これら前後側壁部で所定の部材に接合されているのが好ましい(請求項6)。
【0019】
このように構成すれば、第2ガセット部材の剛性を低下させることなく、第2ガセット部材の車体への取付けにあたって前側からの作業だけで取り付けることができ、取付け作業性が向上する。
【0020】
この発明において、上記補強クロスメンバは、車体側壁に直接接合されるものであってもよいが、上記補強クロスメンバは、上記車体側壁に沿って車高方向に延び、かつ、この車体側壁とともに車幅方向に沿った縦断面について閉断面を形成する連結部材を介して車体側壁に接合されているのが好ましい(請求項7)。
【0021】
このように構成すれば、連結部材を介して補強クロスメンバが例えばリヤピラー等の車体側壁に連結されていることから、補強クロスメンバに入力された荷重を分散させて車体側壁に伝達することができ、しかも車体側壁や連結部材等により閉断面を形成するので、荷重が伝達される車体側壁の剛性を向上させることができ、キャブサイドを含めた後部車体の剛性をより一層高めることができる。
【0022】
この場合において、上記ガセット部材の上端部は、上記連結部材に接合されることにより当該連結部材を介して上記車体側壁に間接的に接合されているのが好ましい(請求項8)。
【0023】
このように構成すれば、高剛性の連結部材を介してガセット部材からの荷重を車体側壁に効率よく伝達することができ、これにより後部車体の剛性をより一層向上させることができる。
【0024】
また、この発明において、上記補強クロスメンバの上方における上記車体側壁間にリヤパッケージメンバが架設され、上記ガセット部材の上端部はこのリヤパッケージメンバの車幅方向端部に接合されることにより当該リヤパッケージメンバを介して上記車体側壁に間接的に接合されているのが好ましい(請求項9)。
【0025】
このように構成すれば、当該リヤパッケージメンバ、補強クロスメンバおよび車体側壁によって枠状体を形成するとともにガセット部材により当該枠状体の桟部を形成することができ、これにより後部車体の剛性を飛躍的に高めることができる。
【0026】
さらに、この発明において、上記補強クロスメンバの下側には、上記リヤフロアパネルを挟んで車幅方向に沿って延びるクロスメンバが配設され、上記補強クロスメンバにおける第2ガセット部材の接合部分に対応する上記クロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられているのが好ましい(請求項10)。
【0027】
このように構成すれば、リヤクロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられるので、車輪から入力される荷重をリヤクロスメンバに伝達することができ、しかも、このリヤクロスメンバに入力される荷重をリヤフロアパネルを介して補強クロスメンバに即座に伝達することができる。従って、車幅方向の所定位置に入力される上下方向の荷重を効率的に分散させることができ、これにより後部車体の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、リヤフロアパネル上を車幅方向に延びる補強クロスメンバによって、車幅方向所定の位置に作用する荷重を車体側壁やガセット部材に分散して伝達することができ、これにより車幅方向の所定位置に作用する荷重を後部車体の全体に分散させることができ、後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができるという利点がある。特に、ガセット部材が補強クロスメンバを介して間接的にリヤフロアパネルに接合されているので、補強クロスメンバによりこのガセット部材に作用する荷重を適度に軽減させることができ、これにより後部車体の全体に満遍なくしかも円滑に荷重を分散させて、後部車体の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本実施形態の車両の後部車体構造を示す平面図であり、図2は同構造を示す車体の前後方向に沿った縦断面図である。図3は同構造の正面図であり、図4は後部車体構造のうちサスペンションのダンパー部材の取り付け構造を示す斜視図である。なお、図1は後部車体の右側のみを示している。また、各図中、Fは車体の前方向を示す矢印である。
【0031】
本実施形態の車両の後部車体構造は、図2および図3に明示するように、車体の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム2と、車幅方向に沿ってこれらのリヤサイドフレーム2間に架設されたリヤクロスメンバ3と、このリヤクロスメンバ3に軸支されたリヤサスペンション4と、上記リヤサイドフレーム2及びリヤクロスメンバ3上に接合されたリヤフロアパネル5と、このリヤフロアパネル5の車幅方向(左右方向)両端部に配設された左右一対の車体側壁6(リヤピラー、クォータパネル等)と、これらの一対の車体側壁6間に架設された補強クロスメンバ7と、この補強クロスメンバ7の上方であって上記車体側壁6間に架設されたリヤパッケージメンバ8とを備え、後部車体の剛性を高めるべく、車体側壁6と補強クロスメンバ7とを連結する第1および第2ガセット部材11,12をさらに備える。すなわち、第1および第2ガセット部材11,12は補強クロスメンバ7を介して間接的にリヤフロアパネル5に接続されている。
【0032】
リヤサイドフレーム2は、長手方向に直交する断面が略U字状に形成されたフレーム本体21と、このフレーム本体21の開口上端縁から左右方向に延出するフレームフランジ部22とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。フレームフランジ部22は、その上面がリヤフロアパネル5の下面に重ね合わされるとともに当該リヤフロアパネル5の下面にスポット溶接等により接合され、フレーム本体21とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。
【0033】
リヤクロスメンバ3は、車幅方向に延び、その長手方向両端部が二股状に分岐して形成されている。すなわち、リヤクロスメンバ3は、車幅方向に沿って直線状に延びるメインクロスメンバ30と、このメインクロスメンバ30の左右両端部からぞれぞれ分岐した分岐メンバ31とを有し、この分岐メンバ31がメインクロスメンバ30の側面における所定箇所に接合されることにより形成されている。
【0034】
メインクロスメンバ30は、車幅方向に略一直線状に延びて形成された、断面略U字状のメンバ本体32と、このメンバ本体32の開口上端縁から前後方向に延出するメンバフランジ部33とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。また、図5に示すように、メンバ本体32の左右両端部(長手方向両端部)が外側に拡開してリヤサイドフレーム2の外側面に接合される接合フランジ部34、35が形成されている。
【0035】
そして、メンバフランジ部33は、その上面がリヤフロアパネル5の下面に重ね合わされるとともにスポット溶接等により接合され、メンバ本体32とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。メンバ本体32の長手方向両端部に形成された接合フランジ部34,35は、それぞれリヤサイドフレーム2のフレーム本体21の外側面および外側底面にスポット溶接等により接合され、これによりリヤサイドフレーム2間にリヤクロスメンバ3が架設されている。
【0036】
一方、分岐メンバ31は、メインクロスメンバ30の長手方向両端部の所定位置から後方に向かって分岐し、平面視において略くの字状に形成されている。なお、分岐方向は特に問わず、車体前方に向かうものとしてもよい。この分岐メンバ31は、その長手方向に直交する断面が略U字状に形成された分岐メンバ本体36と、この分岐メンバ本体36の開口上端縁から外側に延出する分岐フランジ部37とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。この分岐メンバ31は、本実施形態では、上記メインクロスメンバ30よりも底浅に形成され、従って取付け状態においてその底面がメインクロスメンバ30の底面よりも高い位置に位置するものとなされている。また、図5に示すように、分岐メンバ本体36のリヤサイドフレーム2側の端部が外側に拡開してリヤサイドフレーム2の外側面に接合される接合フランジ部38、39が形成されている。
【0037】
そして、分岐フランジ部37は、メンバフランジ部と同様に、リヤフロアパネル5の下面にスポット溶接等により接合され、分岐メンバ本体36とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。また、分岐メンバ本体36の各接合フランジ部38,39も接合フランジ部34,35と同様に、リヤサイドフレーム2のフレーム本体21の外側面及び外側底面にスポット溶接等により接合され、これによりリヤサイドフレーム2に対するリヤクロスメンバ3の取付け強度を増大させてその剛性を向上させるものとなされている。本実施形態では、上記分岐メンバ本体36とリヤフロアパネル5とで形成される閉断面の閉領域面積は、メインクロスメンバ30に接合される基端部側からリヤサイドフレーム2に接合される先端部側にかけて適宜小さくなるように形成されている。
【0038】
上記メインクロスメンバ30と分岐メンバ31との間には、ブラケット9を介してリヤサスペンション4のダンパー部材40が両メンバ30,31に跨って枢支されている。
【0039】
ブラケット9は、図6に示すように、車幅方向外側が切り欠かれたコ字型筒状のブラケット本体90と、このブラケット本体90の下端縁から略水平方向に延設され、メインクロスメンバ30及び分岐メンバ31の各本体32,36の外側底面に取り付けられる重合片91,92とを有し、各重合片91,92において各メンバ30,31にボルト止めされている。本実施形態では、重合片91は2箇所でボルト止めにより分岐メンバ31に接合され、一方、重合片92は1箇所でボルト止めによりメインクロスメンバ30に接合されている。これらの接合箇所は、図1において93で示す。
【0040】
ブラケット本体90は、対向する側壁(前側と後側側壁)上部にダンパー部材40を枢支するための取付孔90aが側壁を貫通して形成され、この取付孔90aにダンパー部材40の支軸405が軸支される(図7参照)。
【0041】
リヤサスペンション4は、本実施形態ではマルチリンク型サスペンションとして構成されている。すなわち、リヤサスペンション4は、図1に示すように、一端が上下方向揺動可能に車体に取り付けられ他端に車輪を回転可能に支持する車輪支持部材が設けられた左右一対のトレーリングアーム41と、車幅方向に延びてトレーリングアーム41を支持する3本の第1〜第3アーム42,43,44と、上端部が上記リヤクロスメンバ3に支持され下端部がトレーリングアーム41に支持されたダンパー部材40と、左右一対のトレーリングアーム41を連結するサスペンションクロスメンバ45とを備え、左右の後輪を独立懸架するものとなされている。
【0042】
トレーリングアーム41は、図1及び図2に示すように、車体の前後方向に延びるアーム本体41aと、このアーム本体41aの一端部(前端部)に形成された車体取付ブッシュ41bと、アーム本体41aの他端部(後端部)に形成されたダンパー取付ブラケット41cと、アーム本体41aの他端部に形成されたアーム取付部41d,41e(第2アーム43の取付部は図示せず)とを備え、アーム本体41aには第2アーム43を挿通させるための挿通孔41fが設けられている。
【0043】
サスペンションクロスメンバ45は、リヤサスペンション4の骨格をなすものであり、第1ないし第3アーム42,43,44の車幅方向内側端部が支持される。なお、このサスペンションクロスメンバ45は、マウントラバーを介してリヤサイドフレーム2の所定箇所に取り付けられている。
【0044】
ダンパー部材40は、ショックアブソーバ、すなわち衝撃吸収器(緩衝器)として機能するものであり、サスペンションスプリングのリバウンドを抑制して振動の減衰を早めるものである。このダンパー部材40の減衰比は、本実施形態では通常の減衰比の2倍程度に設定され、従って、路面状況等に応じて車輪(図示せず)から入力された衝撃力に対する反力も比較的大きいものとなっている。このダンパー部材40は、図7に明示するように、上下のダンパ支軸405,406を備え、この支軸405,406によりリヤクロスメンバ3およびトレーリングアーム41に取り付けられる。
【0045】
すなわち、ダンパー部材40は、その上端部がブラケット9を介してリヤクロスメンバ3に取り付けられ、一方、その下端部がトレーリングアーム41に取り付けられている。そして、この取付状態において、下端から上端に向かって車幅方向内側でかつ車体の前後方向前側に傾倒した状態で配置されている。具体的には、ダンパー部材40の上側支軸405はメインクロスメンバ30と分岐メンバ31とに跨って取り付けられたブラケット9の取付孔90aに枢支されている。一方、ダンパ部材40の下側支軸406は、トレーリングアーム41のダンパー取付ブラケット41cに支持され、車輪を介して入力される衝撃荷重を当該ダンパー部材40により緩衝するものとなされている。
【0046】
一方、車体側壁6は、図3および図8に明示するように、リヤフェンダーをなすクォータパネル部61aおよびその上部に延びてルーフ(図示せず)を支持するリヤピラー部61bとが一体成形されたキャブサイドアウターパネル61と、クォータパネル部61aのインナーであるクォータパネルインナー部62aおよびリヤピラー部61bのインナーであるリヤピラーインナー部62bとが一体成形されたキャブサイドインナーパネル62とを備え、ホイルハウス60の上側に配置され、このホイルハウス60とともに閉断面を形成している。
【0047】
この車体側壁6には、そのキャブサイドインナーパネル62の中間部にリヤパッケージメンバ8が接合されるとともに、そのキャブサイドインナーパネル62の下端部に補強クロスメンバ7が連結部材63を介して接合されている。なお、これらの各部材8,63が接合される車体側壁6の具体的箇所は特に限定するものではなく、例えばキャブサイドインナーパネル62のクォータパネルインナー部62aやリヤピラーインナー部62b或いはこれら跨って接合されているものであってもよい。
【0048】
この連結部材63には、リヤパッケージメンバ8の下面壁81に接合され、この下面壁81とキャブサイドインナーパネル62との間を連結する天壁部630と、この天壁部630の内縁部に接合されて車高方向に延びる内側壁部631と、上端部がこの内側壁部631の下端部に接合されるとともに下端部がリヤフロアパネル5に接合される側壁ガセット部632と、内側壁部631の前後側縁から車高方向に延びる前後側壁部633とを備え、リヤフロアパネル5、車体側壁6、ホイルハウス60等とともに車幅方向に沿った断面について閉断面635を形成している。なお、図3および図8中、10はリヤパッケージメンバ8と補強クロスメンバ7との間に配設される第1ガセット部材11の上端部が取り付けられる取付ブラケットであり、12は連結部材63と補強クロスメンバ7との間に配設される第2ガセット部材である。これらについては後述する。
【0049】
次に、リヤパッケージメンバ8は、車幅方向に沿って延びる角筒状に形成され、両端が車体側壁6に接合されることにより補強クロスメンバ7の上方における左右の車体側壁6間に架設されている。このリヤパッケージメンバ8の長手方向両端部の下側には上記連結部材63が接合されており、相互の剛性向上が図られている。
【0050】
具体的には、図4および図8に示すように、リヤパッケージメンバ8は、下面壁81とこの下面壁81に対向する上面壁82とを含み、長手方向に直交する断面が変形五角形状に形成されている。そして、このリヤパッケージメンバ8には図示省略のバルクヘッドが接合されることにより、このバルクヘッドで車両の内部空間をキャビン側と荷室側とに仕切っている。
【0051】
ところで、本実施形態のリヤサスペンション4においては、減衰比が高めに設定されたダンパー部材40を用いているため、ダンパー部材40の上端部に作用する反力も比較的高いものとなっている。このため、このダンパー部材40の上端部を支持しているリヤクロスメンバ3にも車幅方向に沿って下方からの突き上げ荷重が作用し、この車幅方向の所定位置に作用する荷重を車幅方向に沿って効率的に分散させることが望ましい。そこで、本実施形態では、補強クロスメンバ7が、上記リヤフロアパネル5を挟んでリヤクロスメンバ3の長手方向両端部に対向する状態に配設されている。なお、ダンパー部材40について減衰比の高いものを採用しない場合でも補強クロスメンバ7を車幅方向に沿って配設してもよいことはいうまでもない。
【0052】
すなわち、補強クロスメンバ7は、車幅方向に沿って延びて両端が車体側壁6のキャブサイドインナーパネル62に連結部材63を介して接合されている。この補強クロスメンバ7は、図4および図7に明示するように、長手方向に直交する断面が略U字状に形成された補強メンバ本体70と、この補強メンバ本体70の開口下端縁から前後方向に延出する補強フランジ部71とを備え、全体として断面ハット状に形成されている。この補強メンバ本体70は、本実施形態では、上記分岐メンバ31の分岐メンバ本体36と比較して、その深さが略同等に形成され、一方、車体の前後方向に沿った開口幅が分岐メンバ本体36よりも若干広くなるように形成されている。
【0053】
そして、補強フランジ部71は、その下面がリヤフロアパネル5の上面に重ね合わされるとともに当該リヤフロアパネル5の上面にスポット溶接等により接合され、補強メンバ本体70とリヤフロアパネルとで閉断面を形成している。本実施形態では、この閉断面の閉領域面積が分岐メンバ31とリヤフロアパネル5とで形成される閉断面の閉領域面積よりも大きく形成されている。
【0054】
この補強クロスメンバ7の取付箇所は、具体的には、図7に示すように、補強フランジ部71のうち後側の補強フランジ部71が、分岐フランジ部37のうち後側の分岐フランジ部37よりも若干車体前寄りの位置でリヤフロアパネル5に接合され、一方、前側の補強フランジ部71が、前側の分岐フランジ部37に略対向した状態でリヤフロアパネル5に接合されている。すなわち、補強クロスメンバ7は、その両端部が分岐メンバ31(リヤクロスメンバ3の左右両端部)に対向した位置に配置され、この対向状態でリヤフロアパネル5に接合されている。
【0055】
そして、上記補強クロスメンバ7は、その長手方向両端部で連結部材63、具体的には連結部材63の側壁ガセット部632に接合されている。この接合構造は、補強クロスメンバ7の長手方向両端部が外側に拡開して形成された接合片(図示せず)でスポット溶接等により接合されており、上記リヤサイドフレーム2に対するリヤクロスメンバ3の接合構造と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
すなわち、補強クロスメンバ7は、連結部材63等により形成される閉断面領域を介して車体側壁6に接合され、これによりリヤクロスメンバ3に作用して車幅方向の所定位置に局所的に作用する荷重を分担しつつ、この補強クロスメンバ7に伝達された荷重を車体側壁6に逃がすように構成されている。
【0057】
そして、この後部車体構造においては、剛性をさらに向上すべく、リヤフロアパネル5と車体側壁6とを間接的に連結する第1および第2ガセット部材11,12が設けられている。具体的には、この後部車体構造においては、上記補強クロスメンバ7とリヤパッケージメンバ8および連結部材63とを連結する第1ガセット部材11と、補強クロスメンバ7および連結部材63を連結する第2ガセット部材12とを備えている。
【0058】
すなわち、第1ブレース部材11aは、リヤパッケージメンバ8の前面側に左右一対設けられ、各上端部が連結部材63の前側壁633に取り付けられた取付ブラケット10にボルト止めにより接合されているとともに、各下端部が補強クロスメンバ7の前面長手方向略中央部にボルト止めにより接合され、これにより補強クロスメンバ7と連結部材63とを相互に連結し、ひいてはリヤフロアパネル5と車体側壁6と間接的に相互に連結している。また、左右一対の第1ガセット部材11は、上端に向かうにしたがって外側に傾斜して配置され、全体として正面視略V字状に配設されている。従って、連結部材63およびリヤパッケージメンバ8は各第1ガセット部材11によって筋交状に支持され、その剛性、特に捩り剛性を向上させるように構成されているとともに、補強クロスメンバ7に作用する荷重を連結部材63およびリヤパッケージメンバ8に伝達可能に構成されている。
【0059】
この第1ガセット部材11の具体的構成を、車幅方向一方側(右側)に配設される第1ガセット部材11を例にとって説明するが、車幅方向他方側(左側)に配設される第1ガセット部材11も同様に構成されている。図9は、この車幅方向右側に配設される第1ガセット部材11を示す斜視図である。図10は、図3のX−X線断面図である。
【0060】
第1ガセット部材11は、図7および図9に示すように、車体の前方に向かって開口する凹陥溝110を有する第1ブレース部材11aと、この第1ブレース部材11aの凹陥溝110の前面開口部を閉塞する第2ブレース部材11bと、第1ブレース部材11aの凹陥溝110の底面と第2ブレース部材11bの後面との間に所定間隙を形成するスペーサー11cを有し、この第1および第2ブレース部材11a,11bの両者をスペーサー11cを介して組み付けることにより、閉断面11dが形成されるとともに、車体の前後方向に沿った厚みが薄い平板状に形成されている。
【0061】
つまり、第1ブレース部材11aは、平板をプレス加工することにより前面が開口するフランジ112付きプレート状部材として形成され、その凹陥溝110に沿って複数個の貫通孔111が設けられている。そして、これらの貫通孔111のうち第1ブレース部材11aの長手方向両端部に設けられた貫通孔111がこの第1ブレース部材11aを車体に取り付けるためのボルト挿通孔111aとして形成されている。一方、第2ブレース部材11bは、平板をプレス加工することにより後方に突出するフランジ117付き蓋状部材として形成され、その長手方向に沿って上記凹陥溝110に嵌合する嵌合突出部115を有し、第1ブレース部材11aと同様に、貫通孔116およびボルト挿通孔116aが設けられている。上記嵌合突出部115の突出量は、上記凹陥溝110の凹陥量よりも小さく設定され、従って嵌合突出部115と凹陥溝110との間に所定の間隙が形成されるようになっている。そして、両者を組み付けて後部車体の所定箇所にボルトにより締め付けるにあたって当該間隙を潰さないように両ブレース部材11a,11bの間にスペーサー11cが設けられている。なお、このスペーサー11cは、第1ガセット部材11の両端部に対応する大きさに設定されている。
【0062】
一方、第2ガセット部材12は、図2および図3に示すように、リヤパッケージメンバ8の下方に左右一対設けられ、各上端部が連結部材63に取り付けられた取付ブラケット13にボルト止めにより接合されているとともに、各下端部が補強クロスメンバ7にボルト止めにより接合され、これにより補強クロスメンバ7と連結部材63とを相互に連結し、ひいてはリヤフロアパネル5と車体側壁6(特にキャブサイドインナーパネル62)とを相互に間接的に連結している。また、左右一対の第2ガセット部材12は、図3に示すように、第1ガセット部材11の車幅方向外側に設けられ、正面視略V字状に配設されている。従って、補強クロスメンバ7と連結部材63、ひいては車体側壁6と筋交状に連結され、相互にその剛性を向上させるように構成されているとともに、補強クロスメンバ7に作用する荷重を連結部材63、ひいては車体側壁6に伝達可能に構成されている。
【0063】
この第2ガセット部材12の取付位置を具体的に説明すると、図3、図8および図12に示すように、第2ガセット部材12は、その上端部が連結部材63の内側壁部631に直接および取付ブラケット13を介して間接的に接合されているとともに、その下端部が補強クロスメンバ7の両端部に接合されている。特に本実施形態では、第2ガセット部材12の下端部は、補強クロスメンバ7の両端部であって、リヤサスペンション4におけるダンパー部材40の上端部に対応した位置に接合されている。
【0064】
この第2ガセット部材12の具体的構成を、車幅方向一方側(右側)に配設される第2ガセット部材12を例にとって説明するが、車幅方向他方側(左側)に配設される第2ガセット部材も同様に構成されている。図11は、この車幅方向右側に配設される第2ガセット部材12を示す斜視図である。図12は、図3のXII−XII線断面図である。
【0065】
第2ガセット部材12は、車体の前後方向に所定幅(本実施形態では補強クロスメンバ7の補強メンバ本体70の車体の前後方向に沿った幅と同等の幅)を有する平面部120と、この平面部120における車体の前後方向前端縁から略垂直に垂下して形成された前側壁部121と、上記平面部120における車体の前後方向後端縁から略垂直に立ち上がって形成された後側壁部122とを有し、図7に明示するように、長手方向に直交する断面がクランク状になるように形成されている。
【0066】
この第2ガセット部材12の平面部120は、その長手方向一端部が屈曲されて補強クロスメンバ7の上面壁に略沿って、すなわちこの上面壁に略重ね合わされるように配設されているとともに、他端部が屈曲されて連結部材63の内側壁に沿って、すなわちこの内側壁に重ね合わされるように配設され、これら両端部の重ね合わせ部分においては、前側壁部121も各部材7,63に重ね合わされるように配設されている。この平面部120には、その長手方向に沿って複数個の孔120aが設けられ、軽量化が図られている。
【0067】
この前側壁部121は、下端縁部が折り起こされて補強フランジ部121aが形成され、この前側壁部121の強度を向上させるものとなされている。また、前側壁部121には、平面部120の重ね合わせ部分に対応して各部材7,63に取り付けるためのボルトが挿通されるボルト挿通孔121bが当該前側壁部121を貫通して設けられている。なお、本実施形態では、連結部材63に取り付けるためのボルト挿通孔121bが1個、補強クロスメンバ7に取り付けるためのボルト挿通孔121bが2個設けられている。
【0068】
一方、後側壁部122には、その長手方向に沿ってビード122aが形成され、その強度の向上が図られるとともに、平面部120の重ね合わせ部分に対応して各部材7,63に取り付けるためのボルト挿通孔122bが当該後側壁部122を貫通して設けられている。そして、この後側壁部122は、図4および図7に示すように、断面門形状に形成された取付ブラケット14を介してボルト止め等により補強クロスメンバ7に取り付けられている。本実施形態では、連結部材63に取り付けるためのボルト挿通孔122bが1個、補強クロスメンバ7に取り付けるためのボルト挿通孔122bが1個設けられている。
【0069】
このように第2ガセット部材12の前側壁部121を、上記平面部120から垂下して形成し、一方、第2ガセット部材12の後側壁部122を、上記平面部120から略垂直に立ち上がって形成し、これら前後側壁部121,122で上記補強クロスメンバ7及び連結部材63に接合されているので、第2ガセット部材12を車体の前後方向前側からだけで取り付けることができ、取付け作業性が向上する。
【0070】
なお、これらのボルト挿通孔121b,122bは、挿通されるボルト径よりも大きく開口し、寸法誤差を吸収し得るものとなされている。
【0071】
上記自動車の後部車体構造によれば、補強クロスメンバ7がリヤフロアパネル5を挟んで上記リヤクロスメンバ3の分岐メンバ31に対向する状態に配設されているので、図10に示すように、ダンパー部材40を介して入力される荷重(図中、白抜き矢印ア)はリヤクロスメンバ3に作用し(図中、白抜き矢印イ)、このリヤクロスメンバ3からリヤサイドフレーム2だけでなく、リヤフロアパネル5を介して補強クロスメンバ7に直ちに入力される(図中、白抜き矢印ウ、エ)。そして、補強クロスメンバ7は、その長手方向両端部が連結部材63に接合され、この連結部材63が車体側壁6に接合されているので、補強クロスメンバ7に作用する荷重エは、連結部材63に作用し(図中、白抜き矢印オ)、この連結部材63を介して車体側壁6に作用する(図中、白抜き矢印カ)。このため、リヤクロスメンバ3に入力された荷重をリヤサイドフレーム2だけではなく、補強クロスメンバ7、ひいては車体側壁6に効率的に分散させることができ、これにより車幅方向所定の位置に作用する荷重を車幅方向で満遍なく分散させることができ、また、これによりリヤクロスメンバ3の変位を効果的に抑制することができる。
【0072】
特に、ダンパー部材40が車幅方向に傾倒して設けられている場合には、車幅方向にも荷重が作用することになるが、この車幅方向に延びるクロスメンバとして構成されている補強部材(補強クロスメンバ7)で上記荷重に対する強度も向上させることができ、これにより車体後部の構造を強固に補強することができる。
【0073】
しかも、補強クロスメンバ7と連結部材63との間に筋交状に第1および第2ガセット部材11,12が設けられているので、補強クロスメンバ7に作用した荷重エは第2ガセット部材12にも分散作用し(図中、白抜き矢印キ)、この第2ガセット部材12を通じて連結部材63に作用する。ここで、この連結部材63はホイルハウス60等とともに閉断面を形成しているので、その剛性が高く、従って、入力された荷重を効率的に伝達することができるとともに、後部車体の剛性が向上される。そして、この荷重も上記と同様に、車体側壁6等に分散して伝達される。
【0074】
また、補強クロスメンバ7に作用する荷重エは、第1ガセット部材11にも作用し(図中、白抜き矢印ク)、この荷重が連結部材63やリヤパッケージメンバ8等に分散して伝達される。これにより自動車の後部車体の全体に亘って満遍なく、しかも効率的に荷重を分散伝達することができる。
【0075】
すなわち、この後部車体構造によれば、リヤサスペンション4のダンパー部材40からリヤクロスメンバ3に入力された荷重を補強クロスメンバ7や第1および第2ガセット部材11,12を含む車体後部の各部に分散させて伝達することができ、ダンパー部材40が取り付けられたリヤクロスメンバ3の当該取付部分やリヤフロアパネル5の変位を効果的に抑制することができるとともに後部車体の剛性を飛躍的に向上することができる。
【0076】
ここで、図13では車幅方向一端側のダンパー部材40から入力される荷重に基づいて荷重の作用方向を簡易に説明しているが、実際の作用方向は車幅方向両端側のダンパー部材40から荷重が作用している等の理由により複雑に作用している。
【0077】
なお、本発明の車体後部構造の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。例えば、次のように変更することができる。
【0078】
(1)上記実施形態では、補強クロスメンバ7についてその断面形状を略ハット型に形成したものを用いたが、この断面形状等の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば角筒状等の公知の形状を採用するものであってもよい。
【0079】
(2)また、上記実施形態では、補強クロスメンバ7が連結部材63を介して車体側壁に接合されるものとなされているが、補強クロスメンバ7の両端部を湾曲形性する等して車体側壁6に直接接合するものであってもよいことはいうまでもない。
【0080】
(3)上記実施形態では、第2ガセット部材12として断面略クランク状に形成されたものを用いたが、第2ガセット部材12の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば管状のガセット部材や断面視コ字状、断面視H字状のガセット部材等、その他の断面視公知形状の第2ガセット部材を用いるものであってもよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、リヤサスペンションについてマルチリンク型のものを用いたが、その他のサスペンションについても適用可能なことはいうまでもない。
【0082】
(5)上記実施形態では第1ガセット部材11および第2ガセット部材12のいずれもがその上端部が連結部材63に接合されることにより間接的に車体側壁6に接合されているが、各ガセット部材11、12の上端部において直接車体側壁6やリヤパッケージメンバ8に接合されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態に係る車両の後部車体構造を補強クロスメンバや各ガセット部材を省略した状態で示す平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】同後部車体構造を示す正面図である。
【図4】同後部車体構造を示す要部拡大斜視図である。
【図5】同後部車体構造のリヤクロスメンバを示す斜視図である。
【図6】同後部車体構造のブラケットを示す斜視図である。
【図7】図2の要部拡大図である。
【図8】図2のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】第1ガセット部材を示す斜視図である。
【図10】図3のX−X線断面図dえある。
【図11】第2ガセット部材を示す斜視図である。
【図12】図3のXII−XII線断面図である。
【図13】同後部車体構造の作用を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0084】
2 リヤサイドフレーム
3 リヤクロスメンバ
4 リヤサスペンション
5 リヤフロアパネル
6 車体側壁
7 補強クロスメンバ
8 リヤパッケージメンバ
11 第1ガセット部材(ガセット部材)
12 第2ガセット部材(ガセット部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材を備えた自動車の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後部車体の捩り剛性を向上させる観点から、車体の前後方向に沿って延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの上方に車幅方向に沿って配設されたリヤパッケージメンバとを、或いはリヤフロアパネルの車幅方向両端側に配設された車体側壁とを連結する左右一対のブレース状ガセット部材が設けられた自動車の後部車体構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、リヤフロアパネルの中央部で車体の前後方向に沿って延びるトンネル部と、このトンネル部に沿って配設されトンネル部との間に閉断面を形成するトンネルレインフォースメントと、上記リヤフロアパネルの上方で車幅方向に延びるリヤパッケージメンバとを備え、後部車体の捩り剛性を向上させるために、上記トンネルレインフォースメントとリヤパッケージとを連結する左右一対のV字状ガセット部材をさらに備えた後部車体構造が知られている。
【特許文献1】特開2003−137137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の後部車体構造によれば、衝突時または後突時にトンネルレインフォースメントに入力された荷重をガセット部材を通してリヤパッケージメンバに効率的に分散させることができる反面、例えば路面状況等に応じて車輪から入力される荷重や遠心力により作用する荷重等、車幅方向の所定位置に作用する荷重を効率的に分散し難いものであった。
【0005】
近年、自動車の高出力化等に伴い、車輪から入力される荷重など車幅方向所定の位置に作用する荷重も大きくなる傾向にあり、当該荷重を後部車体の全体に効率的に伝達分散させて後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに高めることが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車輪から伝達される荷重など車幅方向所定の位置に作用する荷重を後部車体の全体に効率的に伝達させることができ、これにより後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができる自動車の後部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明に係る自動車の後部車体構造は、車体の前後方向に延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁と、上記リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材とを備えた自動車の後部車体構造において、車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるとともに、上記ガセット部材の一端部がこの補強クロスメンバの所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバを介してリヤフロアパネルに間接的に接合されていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるので、車輪から入力される荷重等、車幅方向所定の位置に作用する荷重を当該補強クロスメンバに伝達することができる。ここで、従来の後部車体構造ではリヤフロアパネルの下側に車幅方向に延びるリヤクロスメンバが設けられていることが多く、このリヤクロスメンバにも上記車幅方向の所定位置に作用する荷重が伝達されることになるが、上記リヤフロアパネルの上側に上記補強クロスメンバを設けることにより、このリヤクロスメンバとともに荷重を分担することができる。
【0009】
しかも、この補強クロスメンバはその両端が車体側壁に接合されているとともに、その所定箇所にガセット部材の一端部が接合されているので、補強クロスメンバに作用する荷重を効率的に後部車体の全体に伝達して分散させることができる。特に、ガセット部材が補強クロスメンバを介して間接的にリヤフロアパネルに接合されているので、この補強クロスメンバにより車体側壁にも荷重を分散させてこのガセット部材に作用する荷重を適度に軽減させることができ、これにより後部車体の全体に満遍なく荷重を分散させ、後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができる。
【0010】
上記対のガセット部材の配置位置やセット数を特に限定するものではないが、上記ガセット部材は、車幅方向内側に設けられる第1ガセット部材と車幅方向外側に設けられる第2ガセット部材との内外少なくとも2対設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0011】
このように構成すれば、各ガセット部材でさらに荷重を効率的に分散させて伝達することができ、しかもリヤフロアパネル等に作用する荷重を車幅方向に沿って4点で支持することができ、これにより後部車体の剛性をさらに向上させることができる。
【0012】
この場合、第1ガセット部材の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば棒状部材、断面H字状部材等であってもよいが、例えば上記第1ガセット部材は、車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、その下端部が上記補強クロスメンバの前面に接合されているのが好ましい(請求項3)。
【0013】
すなわち、第1ガセット部材は、車幅方向内側に配設されるため、車体の前後方向について厚みがあると、このガセット部材の後方のスペースが制限されることになる。従って、ガセット部材が車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、第1ガセット部材が補強クロスメンバの前面に接合されているので、車幅方向ないしは車高方向に作用する荷重に対する強度を向上させて後部車体の剛性の向上を図りながら、第1ガセット部材の後方スペースを可及的に広く確保することができる。
【0014】
この場合、上記第1ガセット部材は、車体の前後方向に沿った断面が閉断面として形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成すれば、平板状に形成されることにより車体の前後方向に沿った荷重に対する強度低下が懸念される第1ガセット部材の強度を簡単な構成で向上させることができる。
【0016】
一方、第2ガセット部材の具体的形状は特に限定するものではなく、第1ガセット部材と同様に形成するものであってもよいが、例えば、上記第2ガセット部材は、車体の前後方向に沿って所定の幅を有する平面部と、この平面部における車体の前後方向両端縁から略垂直方向に延びる前後側壁部とを有し、この第2ガセット部材の下端部における平面部が上記補強クロスメンバの上面に沿って配設されているのが好ましい(請求項5)。
【0017】
このように構成すれば、平面部に加え、前後側壁部を有するので第2ガセット部材の剛性を向上させることができ、しかもこれらの第2ガセット部材の端部が補強クロスメンバに沿って配設されるので、荷重の伝達をスムーズに行うことができる。
【0018】
さらに、平面部、前後側壁部を有する第2ガセット部材について、断面コ字状に形成するもの等であってもよいが、例えば上記第2ガセット部材の前側壁部は、上記平面部から垂下して形成され、一方、第2ガセット部材の後側壁部は、上記平面部から略垂直に立ち上がって形成され、これら前後側壁部で所定の部材に接合されているのが好ましい(請求項6)。
【0019】
このように構成すれば、第2ガセット部材の剛性を低下させることなく、第2ガセット部材の車体への取付けにあたって前側からの作業だけで取り付けることができ、取付け作業性が向上する。
【0020】
この発明において、上記補強クロスメンバは、車体側壁に直接接合されるものであってもよいが、上記補強クロスメンバは、上記車体側壁に沿って車高方向に延び、かつ、この車体側壁とともに車幅方向に沿った縦断面について閉断面を形成する連結部材を介して車体側壁に接合されているのが好ましい(請求項7)。
【0021】
このように構成すれば、連結部材を介して補強クロスメンバが例えばリヤピラー等の車体側壁に連結されていることから、補強クロスメンバに入力された荷重を分散させて車体側壁に伝達することができ、しかも車体側壁や連結部材等により閉断面を形成するので、荷重が伝達される車体側壁の剛性を向上させることができ、キャブサイドを含めた後部車体の剛性をより一層高めることができる。
【0022】
この場合において、上記ガセット部材の上端部は、上記連結部材に接合されることにより当該連結部材を介して上記車体側壁に間接的に接合されているのが好ましい(請求項8)。
【0023】
このように構成すれば、高剛性の連結部材を介してガセット部材からの荷重を車体側壁に効率よく伝達することができ、これにより後部車体の剛性をより一層向上させることができる。
【0024】
また、この発明において、上記補強クロスメンバの上方における上記車体側壁間にリヤパッケージメンバが架設され、上記ガセット部材の上端部はこのリヤパッケージメンバの車幅方向端部に接合されることにより当該リヤパッケージメンバを介して上記車体側壁に間接的に接合されているのが好ましい(請求項9)。
【0025】
このように構成すれば、当該リヤパッケージメンバ、補強クロスメンバおよび車体側壁によって枠状体を形成するとともにガセット部材により当該枠状体の桟部を形成することができ、これにより後部車体の剛性を飛躍的に高めることができる。
【0026】
さらに、この発明において、上記補強クロスメンバの下側には、上記リヤフロアパネルを挟んで車幅方向に沿って延びるクロスメンバが配設され、上記補強クロスメンバにおける第2ガセット部材の接合部分に対応する上記クロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられているのが好ましい(請求項10)。
【0027】
このように構成すれば、リヤクロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられるので、車輪から入力される荷重をリヤクロスメンバに伝達することができ、しかも、このリヤクロスメンバに入力される荷重をリヤフロアパネルを介して補強クロスメンバに即座に伝達することができる。従って、車幅方向の所定位置に入力される上下方向の荷重を効率的に分散させることができ、これにより後部車体の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、リヤフロアパネル上を車幅方向に延びる補強クロスメンバによって、車幅方向所定の位置に作用する荷重を車体側壁やガセット部材に分散して伝達することができ、これにより車幅方向の所定位置に作用する荷重を後部車体の全体に分散させることができ、後部車体の剛性、特に捩り剛性をさらに向上させることができるという利点がある。特に、ガセット部材が補強クロスメンバを介して間接的にリヤフロアパネルに接合されているので、補強クロスメンバによりこのガセット部材に作用する荷重を適度に軽減させることができ、これにより後部車体の全体に満遍なくしかも円滑に荷重を分散させて、後部車体の剛性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は本実施形態の車両の後部車体構造を示す平面図であり、図2は同構造を示す車体の前後方向に沿った縦断面図である。図3は同構造の正面図であり、図4は後部車体構造のうちサスペンションのダンパー部材の取り付け構造を示す斜視図である。なお、図1は後部車体の右側のみを示している。また、各図中、Fは車体の前方向を示す矢印である。
【0031】
本実施形態の車両の後部車体構造は、図2および図3に明示するように、車体の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム2と、車幅方向に沿ってこれらのリヤサイドフレーム2間に架設されたリヤクロスメンバ3と、このリヤクロスメンバ3に軸支されたリヤサスペンション4と、上記リヤサイドフレーム2及びリヤクロスメンバ3上に接合されたリヤフロアパネル5と、このリヤフロアパネル5の車幅方向(左右方向)両端部に配設された左右一対の車体側壁6(リヤピラー、クォータパネル等)と、これらの一対の車体側壁6間に架設された補強クロスメンバ7と、この補強クロスメンバ7の上方であって上記車体側壁6間に架設されたリヤパッケージメンバ8とを備え、後部車体の剛性を高めるべく、車体側壁6と補強クロスメンバ7とを連結する第1および第2ガセット部材11,12をさらに備える。すなわち、第1および第2ガセット部材11,12は補強クロスメンバ7を介して間接的にリヤフロアパネル5に接続されている。
【0032】
リヤサイドフレーム2は、長手方向に直交する断面が略U字状に形成されたフレーム本体21と、このフレーム本体21の開口上端縁から左右方向に延出するフレームフランジ部22とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。フレームフランジ部22は、その上面がリヤフロアパネル5の下面に重ね合わされるとともに当該リヤフロアパネル5の下面にスポット溶接等により接合され、フレーム本体21とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。
【0033】
リヤクロスメンバ3は、車幅方向に延び、その長手方向両端部が二股状に分岐して形成されている。すなわち、リヤクロスメンバ3は、車幅方向に沿って直線状に延びるメインクロスメンバ30と、このメインクロスメンバ30の左右両端部からぞれぞれ分岐した分岐メンバ31とを有し、この分岐メンバ31がメインクロスメンバ30の側面における所定箇所に接合されることにより形成されている。
【0034】
メインクロスメンバ30は、車幅方向に略一直線状に延びて形成された、断面略U字状のメンバ本体32と、このメンバ本体32の開口上端縁から前後方向に延出するメンバフランジ部33とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。また、図5に示すように、メンバ本体32の左右両端部(長手方向両端部)が外側に拡開してリヤサイドフレーム2の外側面に接合される接合フランジ部34、35が形成されている。
【0035】
そして、メンバフランジ部33は、その上面がリヤフロアパネル5の下面に重ね合わされるとともにスポット溶接等により接合され、メンバ本体32とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。メンバ本体32の長手方向両端部に形成された接合フランジ部34,35は、それぞれリヤサイドフレーム2のフレーム本体21の外側面および外側底面にスポット溶接等により接合され、これによりリヤサイドフレーム2間にリヤクロスメンバ3が架設されている。
【0036】
一方、分岐メンバ31は、メインクロスメンバ30の長手方向両端部の所定位置から後方に向かって分岐し、平面視において略くの字状に形成されている。なお、分岐方向は特に問わず、車体前方に向かうものとしてもよい。この分岐メンバ31は、その長手方向に直交する断面が略U字状に形成された分岐メンバ本体36と、この分岐メンバ本体36の開口上端縁から外側に延出する分岐フランジ部37とを備え、全体として断面略逆ハット状に形成されている。この分岐メンバ31は、本実施形態では、上記メインクロスメンバ30よりも底浅に形成され、従って取付け状態においてその底面がメインクロスメンバ30の底面よりも高い位置に位置するものとなされている。また、図5に示すように、分岐メンバ本体36のリヤサイドフレーム2側の端部が外側に拡開してリヤサイドフレーム2の外側面に接合される接合フランジ部38、39が形成されている。
【0037】
そして、分岐フランジ部37は、メンバフランジ部と同様に、リヤフロアパネル5の下面にスポット溶接等により接合され、分岐メンバ本体36とリヤフロアパネル5とで閉断面を形成している。また、分岐メンバ本体36の各接合フランジ部38,39も接合フランジ部34,35と同様に、リヤサイドフレーム2のフレーム本体21の外側面及び外側底面にスポット溶接等により接合され、これによりリヤサイドフレーム2に対するリヤクロスメンバ3の取付け強度を増大させてその剛性を向上させるものとなされている。本実施形態では、上記分岐メンバ本体36とリヤフロアパネル5とで形成される閉断面の閉領域面積は、メインクロスメンバ30に接合される基端部側からリヤサイドフレーム2に接合される先端部側にかけて適宜小さくなるように形成されている。
【0038】
上記メインクロスメンバ30と分岐メンバ31との間には、ブラケット9を介してリヤサスペンション4のダンパー部材40が両メンバ30,31に跨って枢支されている。
【0039】
ブラケット9は、図6に示すように、車幅方向外側が切り欠かれたコ字型筒状のブラケット本体90と、このブラケット本体90の下端縁から略水平方向に延設され、メインクロスメンバ30及び分岐メンバ31の各本体32,36の外側底面に取り付けられる重合片91,92とを有し、各重合片91,92において各メンバ30,31にボルト止めされている。本実施形態では、重合片91は2箇所でボルト止めにより分岐メンバ31に接合され、一方、重合片92は1箇所でボルト止めによりメインクロスメンバ30に接合されている。これらの接合箇所は、図1において93で示す。
【0040】
ブラケット本体90は、対向する側壁(前側と後側側壁)上部にダンパー部材40を枢支するための取付孔90aが側壁を貫通して形成され、この取付孔90aにダンパー部材40の支軸405が軸支される(図7参照)。
【0041】
リヤサスペンション4は、本実施形態ではマルチリンク型サスペンションとして構成されている。すなわち、リヤサスペンション4は、図1に示すように、一端が上下方向揺動可能に車体に取り付けられ他端に車輪を回転可能に支持する車輪支持部材が設けられた左右一対のトレーリングアーム41と、車幅方向に延びてトレーリングアーム41を支持する3本の第1〜第3アーム42,43,44と、上端部が上記リヤクロスメンバ3に支持され下端部がトレーリングアーム41に支持されたダンパー部材40と、左右一対のトレーリングアーム41を連結するサスペンションクロスメンバ45とを備え、左右の後輪を独立懸架するものとなされている。
【0042】
トレーリングアーム41は、図1及び図2に示すように、車体の前後方向に延びるアーム本体41aと、このアーム本体41aの一端部(前端部)に形成された車体取付ブッシュ41bと、アーム本体41aの他端部(後端部)に形成されたダンパー取付ブラケット41cと、アーム本体41aの他端部に形成されたアーム取付部41d,41e(第2アーム43の取付部は図示せず)とを備え、アーム本体41aには第2アーム43を挿通させるための挿通孔41fが設けられている。
【0043】
サスペンションクロスメンバ45は、リヤサスペンション4の骨格をなすものであり、第1ないし第3アーム42,43,44の車幅方向内側端部が支持される。なお、このサスペンションクロスメンバ45は、マウントラバーを介してリヤサイドフレーム2の所定箇所に取り付けられている。
【0044】
ダンパー部材40は、ショックアブソーバ、すなわち衝撃吸収器(緩衝器)として機能するものであり、サスペンションスプリングのリバウンドを抑制して振動の減衰を早めるものである。このダンパー部材40の減衰比は、本実施形態では通常の減衰比の2倍程度に設定され、従って、路面状況等に応じて車輪(図示せず)から入力された衝撃力に対する反力も比較的大きいものとなっている。このダンパー部材40は、図7に明示するように、上下のダンパ支軸405,406を備え、この支軸405,406によりリヤクロスメンバ3およびトレーリングアーム41に取り付けられる。
【0045】
すなわち、ダンパー部材40は、その上端部がブラケット9を介してリヤクロスメンバ3に取り付けられ、一方、その下端部がトレーリングアーム41に取り付けられている。そして、この取付状態において、下端から上端に向かって車幅方向内側でかつ車体の前後方向前側に傾倒した状態で配置されている。具体的には、ダンパー部材40の上側支軸405はメインクロスメンバ30と分岐メンバ31とに跨って取り付けられたブラケット9の取付孔90aに枢支されている。一方、ダンパ部材40の下側支軸406は、トレーリングアーム41のダンパー取付ブラケット41cに支持され、車輪を介して入力される衝撃荷重を当該ダンパー部材40により緩衝するものとなされている。
【0046】
一方、車体側壁6は、図3および図8に明示するように、リヤフェンダーをなすクォータパネル部61aおよびその上部に延びてルーフ(図示せず)を支持するリヤピラー部61bとが一体成形されたキャブサイドアウターパネル61と、クォータパネル部61aのインナーであるクォータパネルインナー部62aおよびリヤピラー部61bのインナーであるリヤピラーインナー部62bとが一体成形されたキャブサイドインナーパネル62とを備え、ホイルハウス60の上側に配置され、このホイルハウス60とともに閉断面を形成している。
【0047】
この車体側壁6には、そのキャブサイドインナーパネル62の中間部にリヤパッケージメンバ8が接合されるとともに、そのキャブサイドインナーパネル62の下端部に補強クロスメンバ7が連結部材63を介して接合されている。なお、これらの各部材8,63が接合される車体側壁6の具体的箇所は特に限定するものではなく、例えばキャブサイドインナーパネル62のクォータパネルインナー部62aやリヤピラーインナー部62b或いはこれら跨って接合されているものであってもよい。
【0048】
この連結部材63には、リヤパッケージメンバ8の下面壁81に接合され、この下面壁81とキャブサイドインナーパネル62との間を連結する天壁部630と、この天壁部630の内縁部に接合されて車高方向に延びる内側壁部631と、上端部がこの内側壁部631の下端部に接合されるとともに下端部がリヤフロアパネル5に接合される側壁ガセット部632と、内側壁部631の前後側縁から車高方向に延びる前後側壁部633とを備え、リヤフロアパネル5、車体側壁6、ホイルハウス60等とともに車幅方向に沿った断面について閉断面635を形成している。なお、図3および図8中、10はリヤパッケージメンバ8と補強クロスメンバ7との間に配設される第1ガセット部材11の上端部が取り付けられる取付ブラケットであり、12は連結部材63と補強クロスメンバ7との間に配設される第2ガセット部材である。これらについては後述する。
【0049】
次に、リヤパッケージメンバ8は、車幅方向に沿って延びる角筒状に形成され、両端が車体側壁6に接合されることにより補強クロスメンバ7の上方における左右の車体側壁6間に架設されている。このリヤパッケージメンバ8の長手方向両端部の下側には上記連結部材63が接合されており、相互の剛性向上が図られている。
【0050】
具体的には、図4および図8に示すように、リヤパッケージメンバ8は、下面壁81とこの下面壁81に対向する上面壁82とを含み、長手方向に直交する断面が変形五角形状に形成されている。そして、このリヤパッケージメンバ8には図示省略のバルクヘッドが接合されることにより、このバルクヘッドで車両の内部空間をキャビン側と荷室側とに仕切っている。
【0051】
ところで、本実施形態のリヤサスペンション4においては、減衰比が高めに設定されたダンパー部材40を用いているため、ダンパー部材40の上端部に作用する反力も比較的高いものとなっている。このため、このダンパー部材40の上端部を支持しているリヤクロスメンバ3にも車幅方向に沿って下方からの突き上げ荷重が作用し、この車幅方向の所定位置に作用する荷重を車幅方向に沿って効率的に分散させることが望ましい。そこで、本実施形態では、補強クロスメンバ7が、上記リヤフロアパネル5を挟んでリヤクロスメンバ3の長手方向両端部に対向する状態に配設されている。なお、ダンパー部材40について減衰比の高いものを採用しない場合でも補強クロスメンバ7を車幅方向に沿って配設してもよいことはいうまでもない。
【0052】
すなわち、補強クロスメンバ7は、車幅方向に沿って延びて両端が車体側壁6のキャブサイドインナーパネル62に連結部材63を介して接合されている。この補強クロスメンバ7は、図4および図7に明示するように、長手方向に直交する断面が略U字状に形成された補強メンバ本体70と、この補強メンバ本体70の開口下端縁から前後方向に延出する補強フランジ部71とを備え、全体として断面ハット状に形成されている。この補強メンバ本体70は、本実施形態では、上記分岐メンバ31の分岐メンバ本体36と比較して、その深さが略同等に形成され、一方、車体の前後方向に沿った開口幅が分岐メンバ本体36よりも若干広くなるように形成されている。
【0053】
そして、補強フランジ部71は、その下面がリヤフロアパネル5の上面に重ね合わされるとともに当該リヤフロアパネル5の上面にスポット溶接等により接合され、補強メンバ本体70とリヤフロアパネルとで閉断面を形成している。本実施形態では、この閉断面の閉領域面積が分岐メンバ31とリヤフロアパネル5とで形成される閉断面の閉領域面積よりも大きく形成されている。
【0054】
この補強クロスメンバ7の取付箇所は、具体的には、図7に示すように、補強フランジ部71のうち後側の補強フランジ部71が、分岐フランジ部37のうち後側の分岐フランジ部37よりも若干車体前寄りの位置でリヤフロアパネル5に接合され、一方、前側の補強フランジ部71が、前側の分岐フランジ部37に略対向した状態でリヤフロアパネル5に接合されている。すなわち、補強クロスメンバ7は、その両端部が分岐メンバ31(リヤクロスメンバ3の左右両端部)に対向した位置に配置され、この対向状態でリヤフロアパネル5に接合されている。
【0055】
そして、上記補強クロスメンバ7は、その長手方向両端部で連結部材63、具体的には連結部材63の側壁ガセット部632に接合されている。この接合構造は、補強クロスメンバ7の長手方向両端部が外側に拡開して形成された接合片(図示せず)でスポット溶接等により接合されており、上記リヤサイドフレーム2に対するリヤクロスメンバ3の接合構造と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0056】
すなわち、補強クロスメンバ7は、連結部材63等により形成される閉断面領域を介して車体側壁6に接合され、これによりリヤクロスメンバ3に作用して車幅方向の所定位置に局所的に作用する荷重を分担しつつ、この補強クロスメンバ7に伝達された荷重を車体側壁6に逃がすように構成されている。
【0057】
そして、この後部車体構造においては、剛性をさらに向上すべく、リヤフロアパネル5と車体側壁6とを間接的に連結する第1および第2ガセット部材11,12が設けられている。具体的には、この後部車体構造においては、上記補強クロスメンバ7とリヤパッケージメンバ8および連結部材63とを連結する第1ガセット部材11と、補強クロスメンバ7および連結部材63を連結する第2ガセット部材12とを備えている。
【0058】
すなわち、第1ブレース部材11aは、リヤパッケージメンバ8の前面側に左右一対設けられ、各上端部が連結部材63の前側壁633に取り付けられた取付ブラケット10にボルト止めにより接合されているとともに、各下端部が補強クロスメンバ7の前面長手方向略中央部にボルト止めにより接合され、これにより補強クロスメンバ7と連結部材63とを相互に連結し、ひいてはリヤフロアパネル5と車体側壁6と間接的に相互に連結している。また、左右一対の第1ガセット部材11は、上端に向かうにしたがって外側に傾斜して配置され、全体として正面視略V字状に配設されている。従って、連結部材63およびリヤパッケージメンバ8は各第1ガセット部材11によって筋交状に支持され、その剛性、特に捩り剛性を向上させるように構成されているとともに、補強クロスメンバ7に作用する荷重を連結部材63およびリヤパッケージメンバ8に伝達可能に構成されている。
【0059】
この第1ガセット部材11の具体的構成を、車幅方向一方側(右側)に配設される第1ガセット部材11を例にとって説明するが、車幅方向他方側(左側)に配設される第1ガセット部材11も同様に構成されている。図9は、この車幅方向右側に配設される第1ガセット部材11を示す斜視図である。図10は、図3のX−X線断面図である。
【0060】
第1ガセット部材11は、図7および図9に示すように、車体の前方に向かって開口する凹陥溝110を有する第1ブレース部材11aと、この第1ブレース部材11aの凹陥溝110の前面開口部を閉塞する第2ブレース部材11bと、第1ブレース部材11aの凹陥溝110の底面と第2ブレース部材11bの後面との間に所定間隙を形成するスペーサー11cを有し、この第1および第2ブレース部材11a,11bの両者をスペーサー11cを介して組み付けることにより、閉断面11dが形成されるとともに、車体の前後方向に沿った厚みが薄い平板状に形成されている。
【0061】
つまり、第1ブレース部材11aは、平板をプレス加工することにより前面が開口するフランジ112付きプレート状部材として形成され、その凹陥溝110に沿って複数個の貫通孔111が設けられている。そして、これらの貫通孔111のうち第1ブレース部材11aの長手方向両端部に設けられた貫通孔111がこの第1ブレース部材11aを車体に取り付けるためのボルト挿通孔111aとして形成されている。一方、第2ブレース部材11bは、平板をプレス加工することにより後方に突出するフランジ117付き蓋状部材として形成され、その長手方向に沿って上記凹陥溝110に嵌合する嵌合突出部115を有し、第1ブレース部材11aと同様に、貫通孔116およびボルト挿通孔116aが設けられている。上記嵌合突出部115の突出量は、上記凹陥溝110の凹陥量よりも小さく設定され、従って嵌合突出部115と凹陥溝110との間に所定の間隙が形成されるようになっている。そして、両者を組み付けて後部車体の所定箇所にボルトにより締め付けるにあたって当該間隙を潰さないように両ブレース部材11a,11bの間にスペーサー11cが設けられている。なお、このスペーサー11cは、第1ガセット部材11の両端部に対応する大きさに設定されている。
【0062】
一方、第2ガセット部材12は、図2および図3に示すように、リヤパッケージメンバ8の下方に左右一対設けられ、各上端部が連結部材63に取り付けられた取付ブラケット13にボルト止めにより接合されているとともに、各下端部が補強クロスメンバ7にボルト止めにより接合され、これにより補強クロスメンバ7と連結部材63とを相互に連結し、ひいてはリヤフロアパネル5と車体側壁6(特にキャブサイドインナーパネル62)とを相互に間接的に連結している。また、左右一対の第2ガセット部材12は、図3に示すように、第1ガセット部材11の車幅方向外側に設けられ、正面視略V字状に配設されている。従って、補強クロスメンバ7と連結部材63、ひいては車体側壁6と筋交状に連結され、相互にその剛性を向上させるように構成されているとともに、補強クロスメンバ7に作用する荷重を連結部材63、ひいては車体側壁6に伝達可能に構成されている。
【0063】
この第2ガセット部材12の取付位置を具体的に説明すると、図3、図8および図12に示すように、第2ガセット部材12は、その上端部が連結部材63の内側壁部631に直接および取付ブラケット13を介して間接的に接合されているとともに、その下端部が補強クロスメンバ7の両端部に接合されている。特に本実施形態では、第2ガセット部材12の下端部は、補強クロスメンバ7の両端部であって、リヤサスペンション4におけるダンパー部材40の上端部に対応した位置に接合されている。
【0064】
この第2ガセット部材12の具体的構成を、車幅方向一方側(右側)に配設される第2ガセット部材12を例にとって説明するが、車幅方向他方側(左側)に配設される第2ガセット部材も同様に構成されている。図11は、この車幅方向右側に配設される第2ガセット部材12を示す斜視図である。図12は、図3のXII−XII線断面図である。
【0065】
第2ガセット部材12は、車体の前後方向に所定幅(本実施形態では補強クロスメンバ7の補強メンバ本体70の車体の前後方向に沿った幅と同等の幅)を有する平面部120と、この平面部120における車体の前後方向前端縁から略垂直に垂下して形成された前側壁部121と、上記平面部120における車体の前後方向後端縁から略垂直に立ち上がって形成された後側壁部122とを有し、図7に明示するように、長手方向に直交する断面がクランク状になるように形成されている。
【0066】
この第2ガセット部材12の平面部120は、その長手方向一端部が屈曲されて補強クロスメンバ7の上面壁に略沿って、すなわちこの上面壁に略重ね合わされるように配設されているとともに、他端部が屈曲されて連結部材63の内側壁に沿って、すなわちこの内側壁に重ね合わされるように配設され、これら両端部の重ね合わせ部分においては、前側壁部121も各部材7,63に重ね合わされるように配設されている。この平面部120には、その長手方向に沿って複数個の孔120aが設けられ、軽量化が図られている。
【0067】
この前側壁部121は、下端縁部が折り起こされて補強フランジ部121aが形成され、この前側壁部121の強度を向上させるものとなされている。また、前側壁部121には、平面部120の重ね合わせ部分に対応して各部材7,63に取り付けるためのボルトが挿通されるボルト挿通孔121bが当該前側壁部121を貫通して設けられている。なお、本実施形態では、連結部材63に取り付けるためのボルト挿通孔121bが1個、補強クロスメンバ7に取り付けるためのボルト挿通孔121bが2個設けられている。
【0068】
一方、後側壁部122には、その長手方向に沿ってビード122aが形成され、その強度の向上が図られるとともに、平面部120の重ね合わせ部分に対応して各部材7,63に取り付けるためのボルト挿通孔122bが当該後側壁部122を貫通して設けられている。そして、この後側壁部122は、図4および図7に示すように、断面門形状に形成された取付ブラケット14を介してボルト止め等により補強クロスメンバ7に取り付けられている。本実施形態では、連結部材63に取り付けるためのボルト挿通孔122bが1個、補強クロスメンバ7に取り付けるためのボルト挿通孔122bが1個設けられている。
【0069】
このように第2ガセット部材12の前側壁部121を、上記平面部120から垂下して形成し、一方、第2ガセット部材12の後側壁部122を、上記平面部120から略垂直に立ち上がって形成し、これら前後側壁部121,122で上記補強クロスメンバ7及び連結部材63に接合されているので、第2ガセット部材12を車体の前後方向前側からだけで取り付けることができ、取付け作業性が向上する。
【0070】
なお、これらのボルト挿通孔121b,122bは、挿通されるボルト径よりも大きく開口し、寸法誤差を吸収し得るものとなされている。
【0071】
上記自動車の後部車体構造によれば、補強クロスメンバ7がリヤフロアパネル5を挟んで上記リヤクロスメンバ3の分岐メンバ31に対向する状態に配設されているので、図10に示すように、ダンパー部材40を介して入力される荷重(図中、白抜き矢印ア)はリヤクロスメンバ3に作用し(図中、白抜き矢印イ)、このリヤクロスメンバ3からリヤサイドフレーム2だけでなく、リヤフロアパネル5を介して補強クロスメンバ7に直ちに入力される(図中、白抜き矢印ウ、エ)。そして、補強クロスメンバ7は、その長手方向両端部が連結部材63に接合され、この連結部材63が車体側壁6に接合されているので、補強クロスメンバ7に作用する荷重エは、連結部材63に作用し(図中、白抜き矢印オ)、この連結部材63を介して車体側壁6に作用する(図中、白抜き矢印カ)。このため、リヤクロスメンバ3に入力された荷重をリヤサイドフレーム2だけではなく、補強クロスメンバ7、ひいては車体側壁6に効率的に分散させることができ、これにより車幅方向所定の位置に作用する荷重を車幅方向で満遍なく分散させることができ、また、これによりリヤクロスメンバ3の変位を効果的に抑制することができる。
【0072】
特に、ダンパー部材40が車幅方向に傾倒して設けられている場合には、車幅方向にも荷重が作用することになるが、この車幅方向に延びるクロスメンバとして構成されている補強部材(補強クロスメンバ7)で上記荷重に対する強度も向上させることができ、これにより車体後部の構造を強固に補強することができる。
【0073】
しかも、補強クロスメンバ7と連結部材63との間に筋交状に第1および第2ガセット部材11,12が設けられているので、補強クロスメンバ7に作用した荷重エは第2ガセット部材12にも分散作用し(図中、白抜き矢印キ)、この第2ガセット部材12を通じて連結部材63に作用する。ここで、この連結部材63はホイルハウス60等とともに閉断面を形成しているので、その剛性が高く、従って、入力された荷重を効率的に伝達することができるとともに、後部車体の剛性が向上される。そして、この荷重も上記と同様に、車体側壁6等に分散して伝達される。
【0074】
また、補強クロスメンバ7に作用する荷重エは、第1ガセット部材11にも作用し(図中、白抜き矢印ク)、この荷重が連結部材63やリヤパッケージメンバ8等に分散して伝達される。これにより自動車の後部車体の全体に亘って満遍なく、しかも効率的に荷重を分散伝達することができる。
【0075】
すなわち、この後部車体構造によれば、リヤサスペンション4のダンパー部材40からリヤクロスメンバ3に入力された荷重を補強クロスメンバ7や第1および第2ガセット部材11,12を含む車体後部の各部に分散させて伝達することができ、ダンパー部材40が取り付けられたリヤクロスメンバ3の当該取付部分やリヤフロアパネル5の変位を効果的に抑制することができるとともに後部車体の剛性を飛躍的に向上することができる。
【0076】
ここで、図13では車幅方向一端側のダンパー部材40から入力される荷重に基づいて荷重の作用方向を簡易に説明しているが、実際の作用方向は車幅方向両端側のダンパー部材40から荷重が作用している等の理由により複雑に作用している。
【0077】
なお、本発明の車体後部構造の具体的構成は上記実施形態に限定されず、種々変更可能である。例えば、次のように変更することができる。
【0078】
(1)上記実施形態では、補強クロスメンバ7についてその断面形状を略ハット型に形成したものを用いたが、この断面形状等の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば角筒状等の公知の形状を採用するものであってもよい。
【0079】
(2)また、上記実施形態では、補強クロスメンバ7が連結部材63を介して車体側壁に接合されるものとなされているが、補強クロスメンバ7の両端部を湾曲形性する等して車体側壁6に直接接合するものであってもよいことはいうまでもない。
【0080】
(3)上記実施形態では、第2ガセット部材12として断面略クランク状に形成されたものを用いたが、第2ガセット部材12の具体的形状は特に限定するものではなく、例えば管状のガセット部材や断面視コ字状、断面視H字状のガセット部材等、その他の断面視公知形状の第2ガセット部材を用いるものであってもよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、リヤサスペンションについてマルチリンク型のものを用いたが、その他のサスペンションについても適用可能なことはいうまでもない。
【0082】
(5)上記実施形態では第1ガセット部材11および第2ガセット部材12のいずれもがその上端部が連結部材63に接合されることにより間接的に車体側壁6に接合されているが、各ガセット部材11、12の上端部において直接車体側壁6やリヤパッケージメンバ8に接合されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本実施形態に係る車両の後部車体構造を補強クロスメンバや各ガセット部材を省略した状態で示す平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】同後部車体構造を示す正面図である。
【図4】同後部車体構造を示す要部拡大斜視図である。
【図5】同後部車体構造のリヤクロスメンバを示す斜視図である。
【図6】同後部車体構造のブラケットを示す斜視図である。
【図7】図2の要部拡大図である。
【図8】図2のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】第1ガセット部材を示す斜視図である。
【図10】図3のX−X線断面図dえある。
【図11】第2ガセット部材を示す斜視図である。
【図12】図3のXII−XII線断面図である。
【図13】同後部車体構造の作用を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0084】
2 リヤサイドフレーム
3 リヤクロスメンバ
4 リヤサスペンション
5 リヤフロアパネル
6 車体側壁
7 補強クロスメンバ
8 リヤパッケージメンバ
11 第1ガセット部材(ガセット部材)
12 第2ガセット部材(ガセット部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁と、上記リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材とを備えた自動車の後部車体構造において、
車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるとともに、上記ガセット部材の一端部がこの補強クロスメンバの所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバを介してリヤフロアパネルに間接的に接合されていることを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
上記ガセット部材は、車幅方向内側に設けられる第1ガセット部材と車幅方向外側に設けられる第2ガセット部材との内外少なくとも2対設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の後部車体構造。
【請求項3】
上記第1ガセット部材は、車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、その下端部が上記補強クロスメンバの前面に接合されていることを特徴とする請求項2記載の自動車の後部車体構造。
【請求項4】
上記第1ガセット部材は、車体の前後方向に沿った断面が閉断面として形成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車の後部車体構造。
【請求項5】
上記第2ガセット部材は、車体の前後方向に沿って所定の幅を有する平面部と、この平面部における車体の前後方向両端縁から略垂直方向に延びる前後側壁部とを有し、この第2ガセット部材の下端部における平面部が上記補強クロスメンバの上面に沿って配設されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項6】
上記第2ガセット部材の前側壁部は、上記平面部から垂下して形成され、一方、第2ガセット部材の後側壁部は、上記平面部から略垂直に立ち上がって形成され、これら前後側壁部で所定の部材に接合されていることを特徴とする請求項5記載の自動車の後部車体構造。
【請求項7】
上記補強クロスメンバは、上記車体側壁に沿って車高方向に延び、かつ、この車体側壁とともに車幅方向に沿った縦断面について閉断面を形成する連結部材を介して車体側壁に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項8】
上記ガセット部材の上端部は、上記連結部材に接合されることにより当該連結部材を介して上記車体側壁に間接的に接合されていることを特徴とする請求項7記載の自動車の後部車体構造。
【請求項9】
上記補強クロスメンバの上方における上記車体側壁間にリヤパッケージメンバが架設され、上記ガセット部材の上端部はこのリヤパッケージメンバの車幅方向端部に接合されることにより当該リヤパッケージメンバを介して上記車体側壁に間接的に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項10】
上記補強クロスメンバの下側には、上記リヤフロアパネルを挟んで車幅方向に沿って延びるクロスメンバが配設され、上記補強クロスメンバにおける第2ガセット部材の接合部分に対応する上記クロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項1】
車体の前後方向に延びるリヤフロアパネルと、このリヤフロアパネルの車幅方向両側に配設された左右一対の車体側壁と、上記リヤフロアパネルと左右の一対の車体側壁とを各々直接的または間接的に連結する左右一対のガセット部材とを備えた自動車の後部車体構造において、
車幅方向に沿って延び両端が上記車体側壁に接合される補強クロスメンバが上記リヤフロアパネル上に接合されるとともに、上記ガセット部材の一端部がこの補強クロスメンバの所定箇所に接合されることにより補強クロスメンバを介してリヤフロアパネルに間接的に接合されていることを特徴とする自動車の後部車体構造。
【請求項2】
上記ガセット部材は、車幅方向内側に設けられる第1ガセット部材と車幅方向外側に設けられる第2ガセット部材との内外少なくとも2対設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の後部車体構造。
【請求項3】
上記第1ガセット部材は、車体の前後方向の厚みが薄い平板状に形成され、その下端部が上記補強クロスメンバの前面に接合されていることを特徴とする請求項2記載の自動車の後部車体構造。
【請求項4】
上記第1ガセット部材は、車体の前後方向に沿った断面が閉断面として形成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車の後部車体構造。
【請求項5】
上記第2ガセット部材は、車体の前後方向に沿って所定の幅を有する平面部と、この平面部における車体の前後方向両端縁から略垂直方向に延びる前後側壁部とを有し、この第2ガセット部材の下端部における平面部が上記補強クロスメンバの上面に沿って配設されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項6】
上記第2ガセット部材の前側壁部は、上記平面部から垂下して形成され、一方、第2ガセット部材の後側壁部は、上記平面部から略垂直に立ち上がって形成され、これら前後側壁部で所定の部材に接合されていることを特徴とする請求項5記載の自動車の後部車体構造。
【請求項7】
上記補強クロスメンバは、上記車体側壁に沿って車高方向に延び、かつ、この車体側壁とともに車幅方向に沿った縦断面について閉断面を形成する連結部材を介して車体側壁に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項8】
上記ガセット部材の上端部は、上記連結部材に接合されることにより当該連結部材を介して上記車体側壁に間接的に接合されていることを特徴とする請求項7記載の自動車の後部車体構造。
【請求項9】
上記補強クロスメンバの上方における上記車体側壁間にリヤパッケージメンバが架設され、上記ガセット部材の上端部はこのリヤパッケージメンバの車幅方向端部に接合されることにより当該リヤパッケージメンバを介して上記車体側壁に間接的に接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項10】
上記補強クロスメンバの下側には、上記リヤフロアパネルを挟んで車幅方向に沿って延びるクロスメンバが配設され、上記補強クロスメンバにおける第2ガセット部材の接合部分に対応する上記クロスメンバにリヤサスペンションのダンパー部材が取り付けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の後部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−62443(P2006−62443A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244964(P2004−244964)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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