説明

自動車の後部車体構造

【課題】後突荷重を車体前方へ伝達する荷重分散用メンバの如き追加メンバの車体前後方向の曲げ剛性を、追加メンバの大型化や厚板化することなく、高く設定できるようにし、後突による車体後部の変形量の低減、衝突ストロークの短縮を効果的に行うこと。
【解決手段】リヤフロアパネル10の左右両側を車体前後方向に延在する左右のリアサイドフレーム14と、リヤフロアパネル14に形成されたスペアタイヤパン部12の車体前部側を当該スペアタイヤパン部12の車体幅方向の断面形状に倣って車体幅方向に延在し、当該スペアタイヤパン部12に結合されて箱形断面形状をなし、左右の端部を左右のリアサイドフレーム14に結合されたスペアタイヤパンクロスメンバ24と、スペアタイヤパン部12の底部に沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に一直線状に延在し、前端をスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁に突き当て結合されたリアセンタフレーム26とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部車体構造に関し、特に、スペアタイヤパンを有する後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スペアタイアを収容するスペアタイヤパン(スペアタイヤハウス)を有する自動車の後部車体構造として、スペアタイヤパンの下底面を這うように車体前後方向に沿って延びる荷重分散用メンバがスペアタイヤパンに組付けられ、荷重分散用メンバの前端部が左右一対のリヤサイドメンバ(リアサイドフレーム)間に架設されたクロスメンバに結合され、当該荷重分散用メンバの後端部が一対のリヤサイドメンバの後端側に配設されたバックパネルに結合されたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
この後部車体構造では、荷重分散用メンバが左右のリヤサイドメンバ間を車体前後方向に延在し、前端をクロスメンバに結合されていることにより、荷重分散用メンバがリヤサイドメンバと共に後部衝突荷重(後突荷重)をクロスメンバに伝達する働きをする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−88740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されているような後部車体構造では、荷重分散用メンバは、スペアタイヤパンの下底面を這う配置のため、スペアタイヤパンの側断面形状に倣って途中に曲折部を含む形状をなしているから、後突荷重のクロスメンバへの伝達において、曲げモーメントを生じ、大型化や厚板化することなく車体前後方向の曲げ剛性を高く設定することが難しい。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、後突荷重を車体前方へ伝達する荷重分散用メンバの如き追加メンバの車体前後方向の曲げ剛性を、追加メンバの大型化や厚板化することなく、高く設定できるようにし、後突(特にオフセット後突)による車体後部の変形量の低減、衝突ストロークの短縮を効果的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動車の後部車体構造は、リヤフロアパネル(10)の後部に、スペアタイヤ(ST)を収容するために窪んだ形状のスペアタイヤパン部12を有する自動車の後部車体構造であって、前記リヤフロアパネル(10)の左右両側を車体前後方向に延在する左右のリアサイドフレーム(14)と、前記スペアタイヤパン部(12)の車体前部側を当該スペアタイヤパン部(12)の車体幅方向の断面形状に倣って車体幅方向に延在し、当該スペアタイヤパン部(12)に結合されて箱形断面形状をなし、左右の端部を前記左右のリアサイドフレーム(14)に結合されたスペアタイヤパンクロスメンバ(24)と、前記スペアタイヤパン部(12)の底部に沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に一直線状に延在し、前端を前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に突き当て結合されたリアセンタフレーム(26)とを有する。
【0008】
この後部車体構造によれば、リアセンタフレーム(26)がスペアタイヤパン部(12)の底部に沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に一直線状に延在し、前端をスペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に突き当て接合されているので、後突荷重のスペアタイヤパンクロスメンバ(24)への伝達において、曲げモーメントを生じることがなく、荷重分散のための追加メンバであるリアセンタフレーム(26)の車体前後方向の曲げ剛性を当該リアセンタフレーム(26)の大型化や厚板化を招くことなく高く設定できる。
【0009】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記リアセンタフレーム(26)は、車幅方向両側にフランジ片部を有する凹形の横断面形状をしていて、前記フランジ片部を前記スペアタイヤパン部(12)の底部に結合されて箱形断面形状をなしている。
【0010】
この後部車体構造によれば、スペアタイヤパン部(12)とリアセンタフレーム(26)とで箱形断面形状をなすことにより、リアセンタフレーム(26)の車体前後方向の曲げ剛性を当該リアセンタフレーム(26)の大型化や厚板化を招くことなく更に高く設定できる。
【0011】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、更に、前記リアセンタフレーム(26)の凹形部分の内側に、前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に対向する前壁を有して凹形の横断面形状をしたスチフナ(36、38)が結合されている。
【0012】
この後部車体構造によれば、スチフナ(36、38)の設置によってリアセンタフレーム(26)の車体前後方向の曲げ剛性が更に高くなり、スチフナ(36、38)がスペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に対向する前壁を有していることにより、リアセンタフレーム(26)よりスペアタイヤパンクロスメンバ(24)への衝突荷重の伝達がスチフナ(36、38)を介しても行われる。
【0013】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁と前記リアセンタフレーム(26)の凹形部分の底部とに結合されて前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)とで箱形断面形状をなし、前記スチフナ(36、38)の前壁に直接対向する後壁を具備した衝突荷重伝達メンバ(34)を更に有する。
【0014】
この後部車体構造によれば、衝突荷重伝達メンバ(34)によってスペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に対するリアセンタフレーム(26)の結合強度が補強され、リアセンタフレーム(26)よりスペアタイヤパンクロスメンバ(24)への衝突荷重の伝達がより一層良好に行われ得るようになる。
【0015】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記リアセンタフレーム(26)は、前部リアセンタフレーム(30)と後部リアセンタフレーム(32)とに分割され、前記前部リアセンタフレーム(30)が前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に突き当て結合され、且つ当該前部リアセンタフレーム(30)に前記衝突荷重伝達メンバ(34)が結合され、後部リアセンタフレーム(32)に前記スチフナ(36、38)が結合されている。
【0016】
この後部車体構造によれば、前部リアセンタフレーム(30)と衝突荷重伝達メンバ(34)とをスペアタイヤパンクロスメンバ(24)の後壁に結合した後、後部リアセンタフレーム(32)の結合作業を行うことができる。
【0017】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記スチフナは、前部スチフナ(36)と後部スチフナ(38)とに分割され、前記前部スチフナ(36)と前記後部スチフナ(38)との間に前記リアセンタフレーム(26)の折れ部(A)を形成する。更には、前記折れ部(A)より車体前方位置にスへアタイヤ(ST)の中心部(B)を前記スペアタイヤパン部(12)の底部に締結するタイア締結部(44)が設けられている。
【0018】
この後部車体構造によれば、前部スチフナ(36)と後部スチフナ(38)との間が他の部分より脆弱になってリアセンタフレーム(26)の折れ部(A)が明確に形成され、激しい後突時には折れ部(A)でリアセンタフレーム(26)が折れ曲がることにより、車室空間部の変形を招くことなく後突エネルギの吸収が設計箇所にて確実に行われるようになる。
【0019】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記リヤフロアパネル(10)の前記スペアタイヤパン部(12)より車体前方部分を車体幅方向に延在するリヤクロスメンバ(46)と、前記リヤクロスメンバ(46)と前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)との間を前記スペアタイヤパン部(12)の前壁に沿って車体前後方向に延在する前壁補強メンバ(56)と更に有する。
【0020】
この後部車体構造によれば、前壁補強メンバ(56)によってペアタイヤパン部(12)の前壁の補強が効率よくなされる
【0021】
本発明による自動車の後部車体構造は、好ましくは、前記スペアタイヤパンクロスメンバ(24)にリアサスペンションアームの取付部(24C)が設けられている。
【0022】
この後部車体構造によれば、ペアタイヤパンクロスメンバ(24)がリアサスペンションアームの取付部(24C)として有効に利用され、リアサスペンションアームの支持強度が高くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による自動車の車体後部構造によれば、リアセンタフレームがスペアタイヤパン部の底部に沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に一直線状に延在し、前端をスペアタイヤパンクロスメンバの後壁に突き当て接合されているので、後突荷重のスペアタイヤパンクロスメンバへの伝達において、曲げモーメントを生じることがなく、荷重分散のための追加メンバであるリアセンタフレームの車体前後方向の曲げ剛性を当該リアセンタフレームの大型化や厚板化を招くことなく高く設定でき、後突による車体後部の変形量の低減、衝突ストロークの短縮を効果的に行うことができる。リアセンタフレームが設けられていることにより、後突荷重が左右のリアサイドフレームとリアセンタフレームの3本のフレームによって分散して車体前方へ伝達され、オフセット衝突時でも、左右何れかのリアサイドフレームとリアセンタフレームの2本のフレームによって後突荷重が車体前方へ分散伝達され、車体後部の変形が効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による自動車の車体後部構造の一つの実施例を示す下底面図(リアフロアパルを車外側から見た平面図)。
【図2】本実施例による自動車の車体後部構造の要部の下底面図。
【図3】本実施例による自動車の車体後部構造を、車室内側からリアフロアパルを透視して見た斜視図。
【図4】本実施例による自動車の車体後部構造の要部の側面図。
【図5】本実施例による自動車の車体後部構造の要部の下底面図。
【図6】本実施例による自動車の車体後部構造の要部を、車室内側から見た詳細な斜視図(リアフロアパルを取り外した状態の斜視図)。
【図7】本実施例による自動車の車体後部構造の要部を、車室外側から見た詳細な斜視図(リアフロアパルを取り外した状態の斜視図)。
【図8】本実施例による自動車の車体後部構造のリアセンタフレームおよびリアセンタフレームとペアタイヤパンクロスメンバとの結合部の詳細を示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明による自動車の車体後部構造の一つの実施例を、図1〜図8を参照して説明する。車体後部構造を構成するメンバは、ことわりがない限り鋼板をプレス加工したものである。また、以下の説明において、前後は、すべて車体の前後を、左右は、すべて車体の幅方向の左右を意味する。
【0026】
図1〜図5に示されているように、車体後部構造は、後部座席より車体後方のフロアを構成するフロアメンバとしてリヤフロアパネル10を有する。リヤフロアパネル10の後部には、スペアタイヤST(図4参照)を収容するために窪んだ形状のスペアタイヤパン部12が形成されている。スペアタイヤパン部12は、リヤフロアパネル10の一般面10Aより下方の底部10Bと、底部10Bより起立して一般面10Aに接続される前壁10C及び左右の側壁10Dとを有し、後方開放の浅いバスタブ形状をしている。
【0027】
リヤフロアパネル10の左右両側には車体前後方向に互いに平行に延在する左右のリアサイドフレーム14が設けられている。左右のリアサイドフレーム14は、各々左右両側にフランジ片部14Aを有する上方開口の凹形の横断面形状、所謂ハット形断面形状をしていて、フランジ片部14Aをリヤフロアパネル10の左右両側の一般面10Aの下底面(車室外側の面)にスポット溶接によって結合されることにより、リヤフロアパネル10と協働して箱形断面形状(閉じ断面形状)を構成している。
【0028】
左右のリアサイドフレーム14の車体前側の端部は車体前後方向に互いに平行に延在する左右のサイドシル16の後端部にスポット溶接によって結合されている(図1参照)。左右のリアサイドフレーム14の車体後側の端部には箱形断面形状の左右のバンパエクステンションメンバ18が結合されている(図1参照)。左右のバンパエクステンションメンバ18には、当該両者を橋渡しするように、リアバンパフレーム20がスポット溶接によって結合されている(図1参照)。
【0029】
リヤフロアパネル10の車体前側の縁部には車体幅方向に延在して左右の端部を左右のリアサイドフレーム14の前端部にスポット溶接によって結合された第1のリヤフロアクロスメンバ22が設けられている。第1のリヤフロアクロスメンバ22は、前後両側にフランジ片部22Aを有する下方開口の凹形の横断面形状(ハット形断面形状)をしていて、フランジ片部22Aをリヤフロアパネル10の前縁部の上面(車室内側の面)にスポット溶接によって結合されることにより、リヤフロアパネル10と協働して箱形断面形状(閉じ断面形状)を構成している。
【0030】
スペアタイヤパン部12の車体前部側には、スペアタイヤパン部12の車体幅方向の断面形状に倣って車体幅方向に延在し、左右の端部を左右のリアサイドフレーム14にスポット溶接によって結合されたスペアタイヤパンクロスメンバ24が設けられている。スペアタイヤパンクロスメンバ24は、前後両側にフランジ片部24Aを有する上方開口の凹形の横断面形状(ハット形断面形状)をしていて、スペアタイヤパン部12の底部10Bと左右の側壁10Dの車室外側をぴったりと這うよう設けられ、フランジ片部24Aをスペアタイヤパン部12の底部10Bと左右の側壁10Dの全域に亘って結合されることにより、リヤフロアパネル10と協働して箱形断面形状(閉じ断面形状)を構成している。
【0031】
スペアタイヤパンクロスメンバ24の左右両側には、図示されていないリアサスペンションアームの取付部24C(図5、図6参照)が設けられている。
【0032】
スペアタイヤパン部12の底部10Bの車体幅方向の中央部には、底部10Bに沿って大きい屈曲部を含むことなく車体前後方向に一直線状に延在し、前端をスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに突き当て結合されたリアセンタフレーム26が設けられている。
【0033】
リアセンタフレーム26の詳細を、図5〜図8を参照して説明する。リアセンタフレーム26は、比較的短尺の前部リアセンタフレーム30と比較的長尺の後部リアセンタフレーム32とに分割して構成されている。前部リアセンタフレーム30と比較的長尺の後部リアセンタフレーム32とは、各々、左右両側にフランジ片部30A、32Aを有する上方開口の凹形の横断面形状(ハット形断面形状)をしていて、前部リアセンタフレーム30の前端と後部リアセンタフレーム32の後端とが一部重合する形態で互いに連結されて一直線状をなしてスペアタイヤパン部12の底部10Bの車室外側をぴったりと這うよう設けられ、フランジ片部30A、32Aをスペアタイヤパン部12の底部10Bにスポット溶接によって結合されることにより、リヤフロアパネル10と協働して箱形断面形状(閉じ断面形状)を構成している。
【0034】
前部リアセンタフレーム30の前端の左右両側にはフランジ片部30Bが折曲形成されている。フランジ片部30Bはスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bにスポット溶接によって接合されている。これにより、前部リアセンタフレーム30は、スペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに突き当て結合される。
【0035】
スペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24B側には衝突荷重伝達メンバ34が設けられている。衝突荷重伝達メンバ34は、左右両側にフランジ片部34Aを有する前方開口の凹形の横断面形状(ハット形断面形状)をしていて、スペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bより車体後方に位置する後壁34Bを有する。衝突荷重伝達メンバ34の後壁34Bはスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bと平行な壁部である。
【0036】
衝突荷重伝達メンバ34の左右両側と後壁24Bの下縁部にはフランジ片部34Cが折曲形成されている。衝突荷重伝達メンバ34は、フランジ片部34Aをスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bにスポット溶接によって結合され、フランジ片部34Cを前部リアセンタフレーム30の凹形部分の底部30Cにスポット溶接によって結合され、スペアタイヤパンクロスメンバ24と協働して箱形断面形状をなしている。
【0037】
後部リアセンタフレーム32の凹形部分の内側には、上方開口の凹形横断面形状をした前部スチフナ36と後部スチフナ38とがスポット溶接によって結合されている。前部スチフナ36と後部スチフナ38とは、後部リアセンタフレーム32に、車体前後方向に間隙40をおいて配置されている。
【0038】
後部リアセンタフレーム32が間隙40に対応する部分は、前部スチフナ36と後部スチフナ38が設けられている部分より脆弱であり、間隙40に対応する部分がリアセンタフレーム26の折れ部A(図4、図8参照)になっている。なお、折れ部Aは、本実施例では、大きい鈍角をもって開いたV字形になっているスペアタイヤパン部12の底部10Bの緩い折曲部10Eに位置している。これにより、後部リアセンタフレーム32が折れ部Aにて、更に折れ曲がり易くなる。
【0039】
前部スチフナ36の前部は、後部リアセンタフレーム32の前端より車体前方に突出しており、前部リアセンタフレーム30の凹形部分の内側に進入している。前部スチフナ36は前端部に底部より起立した前壁36Aを有する。前壁36Aは、スペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bと衝突荷重伝達メンバ34の後壁34Bとに平行に対向している。なお、この実施例では、前部スチフナ36の前壁36Aと衝突荷重伝達メンバ34の後壁34Bとは、小さい車体前後方向の間隙35をおいて対向している。
【0040】
前部スチフナ36の前壁36Aは、前部スチフナ36の左右の側壁36Bの折曲前端部とスポット溶接によって結合され、左右の側壁36Bと協働してボックス状をなし、高剛性化を図られている。
【0041】
後部リアセンタフレーム32の後端には起立片部32Bが折曲形成されている。後部リアセンタフレーム32の後部には、一端を起立片部32Bに結合され、他端を後部リアセンタフレーム32の後端近傍底部32Cに結合された牽引フックメンバ42が取り付けられている。
【0042】
スペアタイヤパン部12の底部10Bの車室内側には、図3に示されているように、間隙40によって設定された折れ部Aより車体前方位置に、スへアタイヤSTの中心部B(図4参照)をスペアタイヤパン部12の底部10Bに締結するための突起形状のタイア締結メンバ44がスポット溶接によって結合されている。
【0043】
図1〜図3に示されているように、リヤフロアパネル10のスペアタイヤパン部12より車体前方部分には、車体幅方向に延在して左右の端部を左右のリアサイドフレーム14にスポット溶接によって結合された第2のリヤフロアクロスメンバ46が設けられている。
【0044】
この実施例では、リヤフロアパネル10のスペアタイヤパン部12より車体前方側の車室外部分に、燃料タンク、燃料ポンプ(図示省略)等が配置されることにより、リヤフロアパネル10のスペアタイヤパン部12より車体前方部分に燃料ポンプのメンテナンスホール10Fがあけられている。第2のリヤフロアクロスメンバ46は、このメンテナンスホール10Fを車体幅方向に横切るように配置されていることにより、前後両側にフランジ片部48A、50Aを有する下方開口の凹形の横断面形状(ハット形断面形状)をしていて、フランジ片部48A、50Aをリヤフロアパネル10の上面(車室内側の面)にスポット溶接によって結合され、リヤフロアパネル10と協働して箱形断面形状(閉じ断面形状)を構成する左右の側部メンバ48、50と、左右端部をボルト52によって着脱可能に側部メンバ48、50に連結されてメンテナンスホール10Fの部分に位置する中央メンバ54とに3分割されている。
【0045】
スペアタイヤパン部12の前壁10Cの車室外側には、第2のリヤフロアクロスメンバ46とスペアタイヤパンクロスメンバ24との間をスペアタイヤパン部12の前壁10Cに沿って車体前後方向に延在する前壁補強メンバ56が設けられている。前壁補強メンバ56は、スペアタイヤパン部12の前壁10Cにスポット溶接によって結合されてていると共に、上部前端を側部メンバ48、50のフランジ片部48A、50Aとリヤフロアパネル10とで3重にスポット溶接され、下部後端をスペアタイヤパンクロスメンバ24のフランジ片部24Aとリヤフロアパネル10とで3重にスポット溶接されている。
【0046】
上述した実施例による車体後部構造によれば、リアセンタフレーム26がスペアタイヤパン部12の底部10Bに沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に、大きい屈曲部を含むことなく一直線状に延在し、前端をスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに突き当て接合されているので、荷重分散のための追加メンバであるリアセンタフレーム26の車体前後方向の曲げ剛性を、リアセンタフレーム26の大型化や厚板化を招くことなく、高く設定でき、後突による車体後部の変形量の低減、衝突ストロークの短縮が効果的に行われる。
【0047】
リアセンタフレーム26が設けられていることにより、後突荷重が左右のリアサイドフレーム14とリアセンタフレーム26の3本のフレームによって分散して車体前方へ伝達され、オフセット衝突時でも、左右何れかのリアサイドフレーム14とリアセンタフレーム26の2本のフレームによって後突荷重が車体前方へ分散伝達され、車体後部の変形が効果的に抑制される。
【0048】
更には、スペアタイヤパン部12の底部10Bとリアセンタフレーム26とで箱形断面形状をなしていることにより、リアセンタフレーム26の車体前後方向の曲げ剛性を、リアセンタフレーム26の大型化や厚板化を招くことなく、更に高く設定することができる。
【0049】
更には、前部スチフナ36、後部スチフナ38が設置されていることにより、リアセンタフレーム26の車体前後方向の曲げ剛性が更に高くなる。また、前部スチフナ36がスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに対向する前壁を有していることにより、リアセンタフレーム26よりスペアタイヤパンクロスメンバ24への衝突荷重の伝達が前部スチフナ36を介しても行われるようになる。
【0050】
また、衝突荷重伝達メンバ34が設けられていることにより、スペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに対す前部リアセンタフレーム30の結合強度が補強され、リアセンタフレーム26よりスペアタイヤパンクロスメンバ24への衝突荷重の伝達がより一層良好に行われ得るようになる。なお、衝突荷重伝達メンバ34は、剛性向上のために、上端を閉じられたボックス形状に構成されていてもよい。
【0051】
この実施例では、前部リアセンタフレーム30がスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに突き当て結合され、且つ前部リアセンタフレーム30に衝突荷重伝達メンバ34が結合され、後部リアセンタフレーム32に前部スチフナ36と後部スチフナ38とが結合されているので、リアセンタフレーム26の荷重伝達効率が向上する。また、前部リアセンタフレーム30と衝突荷重伝達メンバ34とをスペアタイヤパンクロスメンバ24の後壁24Bに結合した後、後部リアセンタフレーム32の結合作業を行うことができる。
【0052】
前部スチフナ36と後部スチフナ38との間に間隙40が設けられていることにより、間隙40の部分が他の部分より脆弱になってリアセンタフレーム26の折れ部Aが明確に形成され、激しい後突時には折れ部Aでリアセンタフレーム26が確実に折れ曲がる。これにより、車室空間部の変形を招くことなく、後突エネルギの吸収が設計箇所にて確実に行われるようになる。
【0053】
また、前壁補強メンバ56が設けられていることにより、ペアタイヤパン部12の前壁10Aの補強がなされ、ペアタイヤパン部12の前壁10Aに当たってペアタイヤSTが上方へ持ち上がる挙動が、より確実になる。
【0054】
スペアタイヤパンクロスメンバ24にリアサスペンションアームの取付部24Cが設けられていることにより、ペアタイヤパンクロスメンバ24がリアサスペンションアームの取付部24Cとして有効に利用され、リアサスペンションアームの支持強度が高くなる。
【0055】
また、リアセンタフレーム26は、後部リアセンタフレーム32の後端部に牽引フックメンバ42が取り付けられていることにより、牽引フックメンバ42の取付部の補強メンバとしても機能する。
【符号の説明】
【0056】
10 リヤフロアパネル
12 スペアタイヤパン部
14 リアサイドフレーム
16 サイドシル
18 バンパエクステンションメンバ
20 リアバンパフレーム
22 第1のリヤフロアクロスメンバ
24 スペアタイヤパンクロスメンバ
24B 後壁
24C リアサスペンションアームの取付部
26 リアセンタフレーム
30 前部リアセンタフレーム
32 後部リアセンタフレーム
34 衝突荷重伝達メンバ
34B 後壁
36 前部スチフナ
36A 前壁
38 後部スチフナ
42 牽引フックメンバ
44 タイア締結メンバ
46 第2のリヤフロアクロスメンバ
56 前壁補強メンバ
A 折れ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤフロアパネルの後部に、スペアタイヤを収容するために窪んだ形状のスペアタイヤパン部を有する自動車の後部車体構造であって、
前記リヤフロアパネルの左右両側を車体前後方向に延在する左右のリアサイドフレームと、
前記スペアタイヤパン部の車体前部側を当該スペアタイヤパン部の車体幅方向の断面形状に倣って車体幅方向に延在し、当該スペアタイヤパン部に結合されて箱形断面形状をなし、左右の端部を前記左右のリアサイドフレームに結合されたスペアタイヤパンクロスメンバと、
前記スペアタイヤパン部の底部に沿って配置されて車体幅方向の中央部を車体前後方向に一直線状に延在し、前端を前記スペアタイヤパンクロスメンバの後壁に突き当て結合されたリアセンタフレームと、
を有する自動車の車体後部構造。
【請求項2】
前記リアセンタフレームは、車幅方向両側にフランジ片部を有する凹形の横断面形状をしていて、前記フランジ片部を前記スペアタイヤパン部の底部に結合されて箱形断面形状をなしている請求項1に記載の自動車の後部車体構造。
【請求項3】
前記リアセンタフレームの凹形部分の内側に、前記スペアタイヤパンクロスメンバの後壁に対向する前壁を有して凹形の横断面形状をしたスチフナが結合されている請求項2に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項4】
前記スペアタイヤパンクロスメンバの後壁と前記リアセンタフレームの凹形部分の底部とに結合されて前記スペアタイヤパンクロスメンバとで箱形断面形状をなし、前記スチフナの前壁に直接対向する後壁を具備した衝突荷重伝達メンバを有する請求項3に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項5】
前記リアセンタフレームは、前部リアセンタフレームと後部リアセンタフレームとに分割され、前記前部リアセンタフレームが前記スペアタイヤパンクロスメンバの後壁に突き当て結合され、且つ当該前部リアセンタフレームに前記衝突荷重伝達メンバが結合され、後部リアセンタフレームに前記スチフナが結合されている請求項4に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項6】
前記スチフナは、前部スチフナと後部スチフナとに分割され、前記前部スチフナと前記後部スチフナとの間に前記リアセンタフレームの折れ部を形成する請求項3から5の何れか一項に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項7】
前記折れ部より車体前方位置にスへアタイヤの中心部を前記スペアタイヤパン部の底部に締結するタイア締結部が設けられている請求項6に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項8】
前記リヤフロアパネルの前記スペアタイヤパン部より車体前方部分を車体幅方向に延在するリヤクロスメンバと、
前記リヤクロスメンバと前記スペアタイヤパンクロスメンバとの間を前記スペアタイヤパン部の前壁に沿って車体前後方向に延在する前壁補強メンバと、
更に有する請求項1から7の何れか一項に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項9】
前記スペアタイヤパンクロスメンバにリアサスペンションアームの取付部が設けられている請求項1から8の何れか一項に記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81877(P2012−81877A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229998(P2010−229998)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】