説明

自動車の車体後部構造

【課題】 組付け作業が容易で、強度をさらに高めることができる自動車の車体後部構造
を提供すること。
【解決手段】 リヤクォータインナパネルとサイドボディアウタパネルとによってサイドボディが構成され、ルーフパネルの後端とその下側に取り付けられたルーフバックメンバとによってリヤルーフレールが構成され、前記リヤクォータインナパネルと前記ルーフバックメンバとが接続されて車両のバックドア開口上部が構成される自動車の車体後部構造において、前記ルーフバックメンバ21の端部に溶接作業用穴24を形成するとともに、一端を前記サイドボディアウタパネル11に結合したバックピラアッパリンフォース13の他端を、前記リヤクォータインナパネル12と前記サイドボディアウタパネル11との上端開口を覆い、前記リヤクォータインナパネル12の上端部に結合させた構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5ないし図7は、従来の自動車の車体後部構造を示しており、図5はサイドボディとリヤルーフレールを示した斜視図、図6は図5におけるVI−VI線縦断面図,図7は図5におけるVII−VII線断面図である。
この車体では、図6に示すように、サイドボディアウタパネル1とリヤクォータインナパネル2とによってサイドボディ3が構成され、図7に示すように、ルーフパネル4の後端部とルーフバックメンバ5とによってリヤルーフレール6が構成されている。
この車体では、図6に示すように、サイドボディアウタパネル1の上端にクォータアッパパネル7を延設して、車体の側部の強度を高めており、また、図7に示すように、ルーフパネル4のバックドアヒンジ取付け部にヒンジリンフォース8を添設して、バックドアヒンジ9の取付け強度を高めている。
【特許文献1】特開平9−263265号公報
【特許文献2】特開平8−164872号公報
【特許文献3】特開平11−321706号公報
【特許文献4】特開2002−87326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の車体では、サイドボディ3のリヤクォータインナパネル2にルーフバックメンバ5を取り付け、そこにルーフパネル4を投入して、そのルーフパネル4をサイドボディ3およびルーフバックメンバ5に取り付けており、組付け作業が煩雑になっている。
また、ルーフバックメンバ5とリヤクォータインナパネル2の結合は、溶接作業を容易にするために、スポット溶接によって行なわれているが、そのため、補強部材であるクォータアッパパネル7を溶接部を越えて車体幅方向内方へ延設することができない。
さらにまた、バックドアヒンジ9を取り付ける周辺の補強構造は、ヒンジリンフォース8を予め取り付ける必要があり、部品点数が増し、かつそれを溶接する必要があるため、コストアップになる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決し、組付け作業が容易で、強度をさらに高めることができる自動車の車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、リヤクォータインナパネルとサイドボディアウタパネルとによってサイドボディが構成され、ルーフパネルの後端とその下側に取り付けられたルーフバックメンバとによってリヤルーフレールが構成され、前記リヤクォータインナパネルと前記ルーフバックメンバとが接続されて車両のバックドア開口上部が構成される自動車の車体後部構造において、前記ルーフバックメンバの端部に溶接作業用穴を形成するとともに、一端を前記サイドボディアウタパネルに結合したバックピラアッパリンフォースの他端を、前記リヤクォータインナパネルと前記サイドボディアウタパネルとの上端開口を覆い、前記リヤクォータインナパネルの上端部に結合させたことにある。
また、本発明は、前記バックピラアッパリンフォースの車体幅方向内方側端部に、縦壁を形成したことにある。
さらに、本発明は、一端を前記ルーフバックメンバに結合したクォータアッパリンフォースの他端を、前記バックピラアッパリンフォースを覆い、前記サイドボディアウタパネルに結合させたことにある。
またさらに、本発明は、前記クォータアッパリンフォースの車体幅方向内方側端部に、縦壁を形成したことにある。
また、本発明は、前記クォータアッパリンフォースを、前記ルーフパネルのバックドアヒンジ取付け部の裏面に当接させ、バックドアヒンジを、前記ルーフパネルおよびクォータアッパリンフォースに取り付けたことにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、溶接作業用穴を介してルーフバックメンバとリヤクォータインナパネルを溶接することができるので、バックピラアッパリンフォースの先端部をルーフバックメンバに溶接することができる。
したがって、この発明によれば、応力が集中し易い車体後端側部を構成するサイドボディアウタパネルとリヤクォータインナパネルの上部の開口、即ち、バックピラの上部の開口がバックピラアッパリンフォースによって塞がれるので、車体の剛性を高めることができる。
また、この発明では、予めルーフパネルをルーフバックメンバに組み付けて部組みを行ない、それをサイドボディに取り付けることができるため、組付け作業効率がよい。
請求項2の発明によれば、縦壁がバルクヘッドとして働き、それによってねじり剛性が高められる。
【0007】
請求項3の発明によれば、車体後端側部を構成するサイドボディアウタパネルとリヤクォータインナパネルの上部の開口に、バックピラアアッパリンフォースとクォータアッパリンフォースとによって2重の閉断面が形成されるので、車体の剛性をさらに高めることができる。
【0008】
請求項4の発明によれば、縦壁がバルクヘッドとして働き、それによってねじり剛性がさらに高められる。
【0009】
請求項5の発明によれば、ヒンジ取付け部のヒンジリンフォースを削減することができ、バックドアを、ルーフパネルおよびクォータアッパリンフォースを介してルーフバックメンバで支持することができるので、バックドアの支持強度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る自動車の車体後部構造を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る自動車の車体後部構造を示したもので、サイドボディとルーフ部分を分解して示した斜視図、図2は、本発明に係る自動車の車体後部構造のルーフの構成を示したもので、ルーフパネル,ルーフバックメンバおよびクォータアッパリンフォースを示した分解斜視図、図3は、図1におけるIII−III線断面図,図4は、図1におけるIV−IV線断面図である。
【0011】
車体後部は、図3に示すように、サイドボディアウタパネル11,リヤクォータインナパネル(リヤクォータアッパエクステンション)12等によって構成されるサイドボディ10と、図4に示すように、車体の両側に亘って配置されるルーフバックメンバ21,ルーフパネル22の後端部,クォータアッパリンフォース23等によって構成されるリヤルーフレール20とを備えている。
【0012】
図3に示すように、リヤクォータインナパネル12の上端は、車体幅方向内方側に湾曲し、バックドア用の開口上部を構成している。そして、当該部位の補強の為、サイドボディ10の上端のサイドボディアウタパネル11とリヤクォータインナパネル12の間の開口には、該開口を覆うようにして、バックピラアッパリンフォース13が配置されている。このバックピラアッパリンフォース13は、その車体幅方向中央部が上方に向けて湾曲(凸形状)され、その車体幅方向内方端部には、上下方向に延びる縦壁13aが形成され、その下端に車体幅方向内方側に屈曲されたフランジ13bが形成されている。
【0013】
そして、バックピラアッパリンフォース13の車体幅方向内方端部に形成されたフランジ13bが、リヤクォータインナパネル12の上端部12aに重ね合わされて溶接w1によって結合され、車体幅方向外方端13cがドリップレール14の基端14aを挟んでサイドボディアウタパネル11の上端11aに溶接w2によって結合されている。さらに、バックピラアッパリンフォース13とリヤクォータインナパネル12とは、車体前後側においても溶接され、車体幅方向内方側に湾曲したバックドア用の開口上部に強固な閉断面を構成している。
【0014】
一方、ルーフパネル22の後端部は、図2に示すように、ルーフバックメンバ21とその両端に配置されたクォータアッパリンフォース23にて補強されている。このクォータアッパリンフォース23は、その車体幅方向中央部が上方に向けて湾曲(凸形状)され、その車体幅方向内方端部には、上下方向に延びる縦壁が形成され、その下端に車体幅方向内方側に屈曲されたフランジ23gが形成されている。図4に示すように、ルーフパネル22の後端部は、下方に延びる端壁22a,該端壁22aの下端から水平に後方へ延びる段壁22b,該段壁22bから斜め下方に延びる傾斜壁22c,該傾斜壁22cからほぼ垂直後方へ曲折されたフランジ22dによって形成されている。
クォータアッパリンフォース23の後端部は、ルーフパネル22の後端部に倣うように、端壁23a,段壁23b,傾斜壁23c,フランジ23dによって形成されており、前端部は、下方に延びる傾斜壁23e,該傾斜壁23eの下端から前方斜め下方に延びるフランジ23fによって形成されている。
ルーフバックメンバ21は、車体前後方向中間部が下方に向かって湾曲(凹形状)し、前端部と後端部にフランジ21a,21bを備えている。また、このルーフバックメンバ21の車体幅方向端部21cには、図3に示すように、溶接作業用穴24が形成されている。
【0015】
そして、このリヤルーフレール20では、図4に示すように、その後端において、クォータアッパリンフォース23のフランジ23dを挟んでルーフパネル22のフランジ22dとルーフバックメンバ21のフランジ21aが重ね合わされ、溶接w3によって結合され、前端において、クォータアッパリンフォース23のフランジ23fとルーフバックメンバ21のフランジ21bが重ね合わされ、溶接w4によって結合されている。なお、フランジ23f,21bは、ルーフパネル22から遠ざかるように下方に傾斜されているので、スポット溶接が可能になる。
また、クォータアッパリンフォース23の車体幅方向内方の端部フランジ23gはルーフバックメンバ21の溶接作業用穴24よりも車体幅方向中央側となる端部21cに重ね合わされ、溶接w5によって結合されている。
また、このリヤルーフレール20では、ルーフパネル22の段壁22bとクォータアッパリンフォース23の段壁23bが重ね合わされ、その重合部に穴20aが貫設されている。そして、該穴20aにバックドアヒンジ25のボルト部25aが挿入され、クォータアッパリンフォース23の下面側からナット20bによって固着される。
【0016】
このように構成されたリヤルーフレール20は、ルーフパネル22と共に、サイドボディ10の上部に被せられ、図3に示すように、ルーフパネル22の端部22eが、クォータアッパリンフォース23の端部23hを挟んでドリップレール14に溶接w6され、ルーフバックメンバ21の端部21cが、溶接作業用穴24の車体幅方向外方でリヤクォータインナパネル12の上端部12aに溶接w7される。この溶接は、溶接作業用穴24を介してスポット溶接によって行なわれる。つまり、クォータアッパリンフォース23は、車体幅方向内方の端部がルーフバックメンバ21に溶接されているとともに、溶接作業用穴24及びバックピラアッパリンフォース13の上方を通過(覆い)し、車体幅方向外方の端部がドリップレール14を介してサイドボディアウタパネル11に溶接されている。なお、クォータアッパリンフォース23の車両前方側は、ピラアッパリンフォース13を挟んでリヤクォータインナパネル12とも溶接結合されているとともに、その車体幅方向外方の端部は、車両の前方に延びてルーフ側部に車両の前後方向に延在するルーフサイドレールの補強部材に溶接結合されている。また、クォータアッパリンフォース23の車両後方側は、ルーフパネル22とリヤクォータインナパネル12とに挟まれて溶接結合されている。クォータアッパリンフォース23を設けることと上記接合によって、バックドア用の開口上部に強固な閉断面を構成し、車体後部構造の剛性を向上させている。
【0017】
上記実施の形態によれば、以下のような効果を有する。
溶接作業用穴24を介してルーフバックメンバ21とリヤクォータインナパネル12を溶接w7することができるので、バックピラアッパリンフォース13の先端部13bをリヤクォータインナパネル12に溶接w1することができる。
したがって、応力が集中し易い車体後端側部を構成するサイドボディアウタパネル11とリヤクォータインナパネル12の上部の開口、即ち、バックピラの上部の開口がバックピラアッパリンフォース13によって塞がれるので、車体の剛性を高めることができる。
また、上記実施の形態では、予めルーフパネル22にルーフバックメンバ21およびクォータアッパリンフォース23を組み付けて部組みを行ない、それをサイドボディ10に取り付けるため、組付け作業効率がよい。
バックピラアッパリンフォース13の車体幅方向内方側端部に、縦壁13aを形成したので、縦壁13aがバルクヘッドとして働き、それによって自動車の車体後部構造の剛性が高められる。
一端を前記ルーフバックメンバ21に結合したクォータアッパリンフォース23の他端を、前記バックピラアッパリンフォース13を覆い、前記サイドボディアウタパネル11に結合させることにより、車体後端側部を構成するサイドボディアウタパネル11とリヤクォータインナパネル12の上部の開口に、バックピラアアッパリンフォース13とクォータアッパリンフォース23とによって2重の閉断面が形成されるので、車体の剛性をさらに高めることができる。
クォータアッパリンフォース23の車体幅方向内方側端部に、縦壁13aを形成したので、縦壁13aがバルクヘッドとして働き、それによって剛性がさらに高められる。
クォータアッパリンフォース23を、前記ルーフパネル22のバックドアヒンジ取付け部の裏面に当接させ、バックドアヒンジ25を、前記ルーフパネル22およびクォータアッパリンフォース23に取り付けたので、ヒンジ取付け部のヒンジリンフォースを削減することができ、バックドアを、ルーフパネル22およびクォータアッパリンフォース23を介してルーフバックメンバ21およびサイドボディ10で支持することができるので、バックドアの支持強度が向上する。
【0018】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自動車の車体後部構造の側部を示したもので、サイドボディとルーフパネルを分解して示した斜視図である。
【図2】本発明に係る自動車の車体後部構造のルーフの構成を示したもので、ルーフパネル,ルーフバックメンバおよびクォータアッパリンフォースを示した分解斜視図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線断面図である。
【図5】従来の自動車の車体後部構造を示しており、サイドボディとリヤルーフレールを示した斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI線縦断面図である。
【図7】図5におけるVII−VII線断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 サイドボディ
11 サイドボディアウタパネル
11a 上端
12 リヤクォータインナパネル
12a 上端部
13 バックピラアッパリンフォース
13a 縦壁
13b フランジ
13c 車体幅方向外方端
14 ドリップレール
14a 基端
20 リヤルーフレール
20a 穴
20b ナット
21 ルーフバックメンバ
21a,21b フランジ
21c 端部
22 ルーフパネル
22a 端壁
22b 段壁
22c 傾斜壁
22d フランジ
22e 端部
23 クォータアッパリンフォース
23a 端壁
23b 段壁
23c 傾斜壁
23d フランジ
23e 傾斜壁
23f フランジ
23g 端部
23h 端部
24 溶接作業用穴
25 バックドアヒンジ
25a ボルト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤクォータインナパネルとサイドボディアウタパネルとによってサイドボディが構成され、ルーフパネルの後端とその下側に取り付けられたルーフバックメンバとによってリヤルーフレールが構成され、前記リヤクォータインナパネルと前記ルーフバックメンバとが接続されて車両のバックドア開口上部が構成される自動車の車体後部構造において、
前記ルーフバックメンバの端部に溶接作業用穴を形成するとともに、一端を前記サイドボディアウタパネルに結合したバックピラアッパリンフォースの他端を、前記リヤクォータインナパネルと前記サイドボディアウタパネルとの上端開口を覆い、前記リヤクォータインナパネルの上端部に結合させたことを特徴とする自動車の車体後部構造。
【請求項2】
前記バックピラアッパリンフォースの車体幅方向内方側端部に、縦壁を形成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項3】
一端を前記ルーフバックメンバに結合したクォータアッパリンフォースの他端を、前記バックピラアッパリンフォースを覆い、前記サイドボディアウタパネルに結合させたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項4】
前記クォータアッパリンフォースの車体幅方向内方側端部に、縦壁を形成したことを特徴とする請求項3に記載の自動車の車体後部構造。
【請求項5】
前記クォータアッパリンフォースを、前記ルーフパネルのバックドアヒンジ取付け部の裏面に当接させ、バックドアヒンジを、前記ルーフパネルおよびクォータアッパリンフォースに取り付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動車の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−55419(P2007−55419A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242647(P2005−242647)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】