説明

自動車の運転状態を制御するための方法

【課題】 自動車の運転状態を制御するための方法。
【解決手段】 車両の取り扱いを制御する方法を提供し、その方法はタイヤセンサの信号から決定される少なくとも車両の重量(G)と重心(SP)の瞬間的位置が必要である。他の実施例において、本発明は、基本的データとして車両の基本的重量分配、すなわち、荷重が異なる場合においても常に等しい分配を有する重量分配モデルの使用が必要である。さらに、乗客、荷物等のような変更可能な重量およびその位置は、タイヤセンサ信号によって決定され、変更可能な重量分配として重量分配モデルと協働する。そのようなデータをすべて知って、車両の運動の工学的変数の特徴は決定することができ、そして、ヨーイング率センサまたは横方向の加速度センサからの信号によらないで適切な計算によって決定される車両のヨーイング率と滑り角度を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載されたタイプの自動車の運転状態を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの方法は、たとえば、EP0444109B1に開示されている。従来の方法が用いられている自動車は、タイヤに作用する力とモーメントを検知するためのタイヤセンサに加えて、重心の加速度を決定するセンサと、各車輪の周面速度を検出する車輪センサと、車輪のサスペンションの状態を決定する高さセンサとを有している。重心において加速度を決定するセンサを使用するには、自動車の重心が知られている必要がある。しかしながら、自動車は常に異なった応力と荷重にさらされているので、重心は、一方においてダイビングやウエービング運動のような車両の固有の運動のために、他方において異なった荷重のために変化する。従って、自動車の静的重心に基づく車両工学の計算はあまり正確でない値が得られる。
【特許文献1】EP0444109B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、車両工学のより信頼性のある決定が可能で、付加的センサのごく僅かの工夫のみによって上述のタイプの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施におけるこの問題は、請求項1の特徴部分の態様によって解決される。本発明の原理は、タイヤセンサによって発生した信号から自動車の実際の重心を決定し、そして少なくとも車両の質量を検知することにある。この方法は、自動車の実際の運転状態をより正確に示す、時間との関係において変更可能な実際の基準値(actual reference value)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
このタイプの方法の制御品質は、自動車が点とされた質量(pointed mass)としてではなく、むしろ限定された拡張における車体(body of finite expansion)として静的に決定される場合においてより改良されるであろう。かかる質量分配モデル(mass distribution model)に集められるものは、例えば、エンジン、ギヤボックス、車体および空間的に分配された対象物のような自動車に提供される周知の質量である。例えば、車両は、4つのスプリングによって支持された静的な車体であるとして記述することが出来る。
【0006】
実際の質量分配を決定するために、付加的な変更可能な質量がタイヤセンサの信号を通して質量の基本的な分配(basic distribution of mass)に追加することができ、モデルとしては、簡単にする目的で、付加的な質量を荷重の代表的な点(typical point)にのみ設けることが出来る。荷重の代表的な点は、例えば、車両の座席、荷物室および、選択的には車両の屋根である。
【0007】
計算は、もし付加的な質量が代表的な荷重位置(typical loading site)の重心に位置する質点(mass point)として規定されるならば特に簡単である。これらは、例えば、平均的な運転者の身体の重心の質量、荷物室の下部の中心またはそのようなところである。
【0008】
予め定められた質量分配に関する静的な車体を推量することは、屋根の荷重について、荷重の高さに応じて自動車の空気力学的抵抗(aerodynamic drag)の増加に伴ない、車両の重心が幾分上方へシフトするような、少なくとも屋根のラックの荷重に関する実際の状態を良く反映するであろう。
【0009】
タイヤセンサシステムについて考慮すると、個々の車輪における荷重は知られており、加えて、質量の重心が決定され、予め定めた条件における車両の状態が容易に再現できる。例えば、特別なカーブを通って運転する場合の予め定めた車輪によって発生されることが出来る横方向の案内力(lateral guiding force)を計算することが可能である。
【0010】
しかしながら、−質量分配モデルの助けにより−、瞬間的な運転条件を決定することもまた可能であり、名目的な値の余分正確な計算をすることをせずに、さらにリニア1トラックモデル(linear one-track model)又は類似のものを使用することが必要とされる。
【0011】
本発明を、添付した2つの図面を参照してより詳細に述べると、図1は、本発明の方法を適用できる車両の概略を示す図であり、図2は、自動車のヨーイングモーメント(yawing moment)を制御するための、本発明の方法の実施例の形態を示す図である。
【0012】
図1は、図1aと図1bとに分割されている。図1aは、車両の概略的平面図を示していて、車輪支持面の幾何学的位置を示している。各タイヤに作用する重力は、力G1、G2、G3およびG4によって表される。それ故、タイヤの座標はx1、y1からx4、y4である。
【0013】
図1bは、同じ車両の概略的側面を示している。さらに、想像上の重心SPの位置がそこに記されている。全体の重力Gは、上記重心に作用する。
【0014】
車両の質量は、簡単な方法で、車輪に作用する各重力を合計しその合計を重力加速度gで割ることによって決められる。
【数1】

【0015】
車輪支持面の重心の座標は、従って、次の方程式によって決められる。
【数2】

【数3】

【0016】
車輪支持面に対し直角に延長する重心の座標は、たとえば、カーブを通過する規定された運転中に適用される横方向の力を測定することによって決定できる。
【0017】
既知の一般的質量分配は、エンジン、ギヤボックス、車体および他のアクセサリが想定された特定の車両に関する質量分配モデルに基礎を置くことができる。
【0018】
上述の基本的な質量分配に基づいて、車両に適用される可変の質量を考慮して、個々の車輪に作用しそして重力に限定されない力から、可変の質量分配を計算することが可能である。個々のタイヤにかかる付加的な荷重は、次いで、質量分配モデルにおいて、シート、荷物室および/またはルーフラックに適用される質量に変換される。可変の付加的荷重のための代表的な位置でのこれらの付加的な質量は、物理的に限られた拡張または質量点の両方を形成できる。もし、付加的な質量が車両の外側の輪郭内に位置している場合、点質量による近似は、点による質量の慣性の動作と差異のない完全な車両と比較し、限定された車体の慣性の動作として当を得たものである。もし可能であれば、物理的に限られた拡張によって近似されるべきものは車両の外側の輸郭の外に位置する質量のみであるが、それは、自動車および他の車両の空気力学的抗力が、質量の拡張が増加すると共にさらに変化することが可能であるからである。たとえば、ルーフラックの荷重を非常に高くすると車両の重心は上方へシフトされる。
【0019】
図2によれば、このタイプの質量分配モデル1は、ヨーイングモーメント制御の観点で運転の安定性を制御するためのプロセスに組み込まれる。制御プロセスの制御距離は、タイヤセンサが設けられた車両2によって形成される。上記タイヤセンサシステム3は、各タイヤに適用される横方向の力(lateral force)およびねじれの力(torsional force)と共に個々の車輪の荷重(wheel load)を検出する。さらに、各車輪の速度v1からv4が検出される。これらは、また適切なタイヤセンサシステムによって、または適切な車輪センサによって検出できる。車輪の荷重、個々の車輪に対する横方向の力(transverse force)および長手方向の力(longitudinal force)のような測定された力と同様に、個々の車輪の速度v1からv4は質量分配モデル1に取り入れられる。自動車のヨーイング角加速度(yawing angle acceleration)および横滑り角度の速度(speed of the side slip angle)は、付加的なヨーイング率センサ(yaw rate sensor)又は横方向の加速度信号(transverse acceleration signal)に依存することなく、かかる質量分配パターンを介して決定できるので、自動車のセンサシステムは簡単になり経済的になる。
【0020】
時間に関する積分によって、車両のヨーイング率(yaw rate)Ψおよび横滑り角度(side slip angle)βは、ヨーイング角加速度および横滑り角度の速度から計算される。それらは実際の条件としてそれ自体既知のヨーイングモーメント制御フォーミュラ4(yaw moment control formula 4)に統合される。
【0021】
制御のための名目的なプリセット値(nominal preset value)が別の方法で計算される。速度モニタ5において、個々の車輪の速度は車両基準速度(vehicle reference speed)vに変換される。線形のワントラックモニタ(linear one-track model )8は、横滑り角度の速度とヨーイング角加速度に関する目標値を、上述の基準速度vおよび前輪のステアリングロック角度(steering lock angle)δから計算する。さらに、これらの値は、車両のヨーイング率Ψおよび横滑り角度βに関するプリセット名目的値に積分される。
【0022】
あるいは、それぞれのヨーイング角加速度と横滑り角度の速度は直接互いに比較され、そしてヨーイングモーメント制御フォーミュラ4にしたがって処理されるようにしてもよい。
【0023】
しかしながら、本実施例において、横滑り角度とヨーイング率は互いに比較され、そして適用される名目的なヨーイングモーメント(nominal yaw moment)MGに変換される。この適用されるための上記名目的なヨーイングモーメントMGは、続いて車輪力の分配装置(wheel force distributor)6において各車輪に適用される車輪力Fに変換される。これらの力は、名目的な力である。実際の力は、タイヤセンサ3によって検知された測定された力Fmessに対応する。名目的な力Fと実際の力Fmessの間に差を形成することによって、個々の力の差は、たとえば、車輪力レギュレータ(wheel force regulator)7でブレーキ圧力に計算され、続いて、個々のタイヤの新しく変更された力条件と車輪速度の結果として、車両2に作用する。
【0024】
本発明の特別の特徴は、個々のタイヤの力とモーメントの検知の助けにより、高価な検知システムを除去することができ、車両の瞬間的条件を迅速に検知することができることにある。従って、測定された力Fmessは、それ以上の処理を必要とせずに、検出された名目的な力Fについて差を形成するために直接計算に組み込まれ、それによって、車輪力レギュレータ7の迅速な応答を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】図1aは、車両の概略的平面図を示している。
【図1b】図1bは、同じ車両の概略的側面を示している。
【図2】図2は、自動車のヨーイングモーメントを制御するための、本発明の方法の実施例の形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤに適用される力(fmess)を決定するためのタイヤセンサ(3)を有する自動車の運転状態を制御する方法であって、
測定されたタイヤカ(G1からG4)から、少なくとも実際の車両の質量と車両の重力(SP)の質量点の瞬間的な位置が計算されることを特徴とする方法。
【請求項2】
車両の基本的な質量分配を含む質量分配モデル(1)が記憶され、質量分配モデル(1)は測定されたタイヤ力fmessから車両の動特性(Ψ、β)の値を決定することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該質量分配モデルはタイヤセンサによって発生された信号から変更可能な質量分配を決定することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
変更可能な質量分配は、基本的な質量分配に関する該質量分配モデルが代表的な荷重位置に質量を加えることにより決定されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
該質量分配モデルの代表的な荷重位置の質量が質量の点として近似されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
かかる質量の点が、運転者、乗客、荷物室の荷重および/または屋根の荷重における重心の代表的な位置において提供されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの荷重の位置が車体における限定された拡張として適用されることを特徴とする請求項4ないし6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ヨーイング速度Ψまたは横滑り角度βまたはそれらの時間に関する導関数が該質量分配モデル(1)から計算されることを特徴とする請求項2ないし7いずれが1項記載の方法。
【請求項9】
正常な運転状態がリニア1トラックモデルから計算されるのに対し、自動車(2)の実際の運転状態のみが該質量分配モデル(1)から決定されることを特徴とする請求項8記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74392(P2008−74392A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−216212(P2007−216212)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【分割の表示】特願平10−501224の分割
【原出願日】平成9年6月13日(1997.6.13)
【出願人】(596029797)アイティーティー・マニュファクチャリング・エンタープライジズ・インコーポレーテッド (34)
【Fターム(参考)】