自動車ルーフパネル
【課題】熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を総合的に抑制した、アルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造を提供する。
【解決手段】自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネル1と鋼製サイドパネル6の互いのフランジ1c、6cに、立壁2a、3aを各々有する凹状段部2、3を相対応するように各々設け、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、前記ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するように、ルーフパネル1側の凹状段部2を相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせ、その上で互いのフランジ1c、6c同士を接合する。
【解決手段】自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネル1と鋼製サイドパネル6の互いのフランジ1c、6cに、立壁2a、3aを各々有する凹状段部2、3を相対応するように各々設け、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、前記ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するように、ルーフパネル1側の凹状段部2を相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせ、その上で互いのフランジ1c、6c同士を接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行性や操作性を向上するために、自動車車体上部の軽量化が有効である。自動車上部車体構造は、ルーフ(屋根)パネルと、ヘッダーパネルやルーフパネルリインフォースメントなどのルーフ補強材、サイドパネルとしての、車体上部側からサイドパネルアウタ(ルーフサイドアウタパネルあるいはサイドメンバアウタパネルなどとも言う)、ルーフサイドレール、サイドパネルインナ(ルーフサイドインナパネルあるいはサイドメンバインナパネルなどとも言う)などから構成される。
【0003】
これら自動車上部車体構造の軽量化のためには、上記各上部構造構成部材に、従来から使用されてきた鋼材に代わって、アルミニウム合金材を使用することが有効である。
【0004】
しかし、自動車上部車体構造全てにアルミニウム合金材を使用した場合に、車体衝突時の車体の剛性確保が難しくなる。また、アルミニウム合金材は鋼材に比べれば成形しにくいため、自動車上部車体構造の構成部材に、全てアルミニウム合金材を使用した場合、部材の成形や車体の組み立てが、鋼材に比べれば、やりにくい問題もある。
【0005】
このため、アルミニウム合金材の使用はルーフパネルなどの限定的として、他の自動車上部車体構造の構成部材を鋼材とした複合構造(ハイブリッド構造)とする方が合理的である。自動車上部車体構造を、このような鋼材との複合構造にした場合でも、全てを鋼材とした場合に比して、アルミニウム合金材使用による上部車体構造の軽量化効果は大きい。
【0006】
この点、従来から、鋼製であるルーフパネルをより軽量なアルミニウム合金製パネルに置き換えることが提案乃至適用されつつある(例えば、特許文献1、2、3など参照) 。ルーフパネルにアルミニウム合金を適用した場合には、太陽放射による侵入熱量の遮熱性を高めることができるなどの利点もある(例えば、特許文献4参照) 。
【0007】
ただ、自動車のルーフパネルに対してアルミニウム合金パネルを適用する場合には、異種金属同士の組み合わせとなるために、アルミニウム合金と鋼との間で生じる電食(電位差による生じる腐食)への対策が必要となる。
【0008】
ルーフパネルとサイドメンバアウタパネルとの、フランジ同士などの接合手段としては、通常の鋼製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの組み合わせ、あるいはアルミニウム合金製ルーフパネルとアルミニウム合金製サイドパネルとの組み合わせなど、同種金属同士の組み合わせであれば、接合施工の効率からも、スポット溶接が汎用される。
【0009】
しかし、本発明が対象とするアルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの異種金属同士の組み合わせでは、このようなスポット溶接や機械的な接合手段だけでは、アルミニウム合金と鋼との間で電食が生じる。このため、このような異材間の電食対策と接合強度の向上を目的に、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドメンバアウタとの接合には、主として接着樹脂が使用されることが多い。具体的には、両者の接合用のフランジ同士の間に、全面的あるいは部分的などの広域に、構造用の熱硬化型(熱硬化性)接着樹脂を塗布して介在させ、これを自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程で加熱硬化させて、これらフランジを互いに接合する。
【0010】
この熱硬化型接着樹脂の接合強度を補う意味で、SPR=セルフ・ピアシング・リベットや、あるいはボルトなどの機械的な締結手段を適用することも多い。また、これら機械的な締結手段に加えて、あるいは替えて、溶接接合 (スポット溶接等) が適用されることもある。
【0011】
ただ、このような熱硬化型接着樹脂の接合による場合、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける熱ひずみの問題が特に浮上してくる。本発明のように、ルーフパネルをアルミニウム合金製とした場合、アルミニウム合金製ルーフパネルと、鋼製のサイドパネル(サイドメンバアウタパネルやサイドメンバインナパネル、ルーフサイドレール)とでは、線膨張係数が大きく違う。アルミニウム合金の線膨張係数は周知の通り鋼の約2倍である。これによって、車体が高温に加熱された際には、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製のサイドパネルとでは、熱による変形量が異なって、アルミニウム合金製ルーフパネルの側に大きな膨張変形(熱ひずみ)が生じる。
【0012】
特に、大型車などで面積が大きく、かつ軽量化のために2.0mm以下に薄肉化されたアルミニウム合金製ルーフパネルでは、自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程での170〜180 ℃×20〜30分などの条件での、比較的低温の加熱処理によっても、大きな膨張変形(熱ひずみ)が生じる。
【0013】
アルミニウム合金製ルーフパネルに、このような膨張変形(熱ひずみ)が大きく生じた場合には、アルミニウム合金製ルーフパネルが、前記鋼製サイドパネルを車幅方向外側に向かって押し広げるような熱変形が生じる。そして、このような熱変形が生じるのは、前記した、自動車車体の焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記した接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であり、これらの樹脂の接合強度は全く当てにできない。
【0014】
このため、熱荷重、すなわち前記熱変形により負荷される荷重は、樹脂接合箇所以外の、前記した比較的数少ない、あるいは間隔が大きくあいた、溶接接合箇所やSPRボルトなどの機械的な接合箇所だけで局所的に負担することとなる。この結果、これら溶接接合箇所やボルトなどの機械的な接合箇所が無い、熱硬化型樹脂による接合箇所が、前記熱荷重に耐えられずに剥がれるなどの破損する可能性が高くなる。
【0015】
また、ルーフパネルの前記熱荷重が大きい場合には、ルーフパネル側縁部のフランジの取り付け部に生じる面ひずみ量も大きくなる。このため、フランジの取り付け部に、接合点間の口開き部分が生じる変形「口開き変形」が起こったり、このフランジ自体の位置が、本来の設計位置よりも車幅方向のより外側へずれるなどの「ズレ変形」が起こってしまう。自動車車体組み立て後に、このような変形が生じた場合、ルーフパネルの意匠性やシール性(水密性)、ひいては車体の商品価値を大きく阻害する。
【0016】
ちなみに、ルーフパネルとサイドパネルとが、汎用されている鋼製同士の場合には、互いに同じ熱膨張係数、熱膨張量であるために、前記接合箇所に過大な熱荷重の負担は発生せず、これらの接合箇所が破損、破断あるいは剥がれることはない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も生じない。したがって、このような問題は、アルミニウム合金製ルーフパネルを鋼製サイドパネルに取り付ける際の特有の問題である。
【0017】
従来から、このようなアルミニウム合金ルーフパネルの熱ひずみ対策は種々提案されている。例えば、ルーフパネルの側縁部に、ビード(溝)を設けて、アルミニウム合金ルーフパネルの剛性を上げ、膨張変形を抑制する対策がある。しかし、このようなビードを設けても、ルーフパネルとサイドパネルとのフランジ同士の接合部に作用する、前記熱荷重自体を小さくできるわけではない。このため、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ同士の前記熱硬化型樹脂による接合方式では、この樹脂による接合箇所が熱荷重によって破損する前記した問題を解決できない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も効果的に防止できない。しかも、自動車のデザイン上重要な、ルーフパネル形状の設計変更をもたらすことになる制約が生じる。
【0018】
また、ルーフサイドレールをアルミニウム合金製中空形材から構成し、ルーフパネルとルーフサイドレールとをアルミニウム合金同士として接合することで、互いの線膨張率を同じとする。これによって、鋼材との線膨張率の違いによって、座屈強度が低いアルミニウム合金ルーフパネル側に大きなひずみが生じるのを抑制して、ルーフパネル側縁部の前記取り付け部に、接合点間に口開き部分が生じるなどの変形が起こるのを防止することが提案されている(特許文献5) 。しかし、この方法では、鋼製のサイドパネル(サイドメンバアウタ6 やサイドメンバインナパネル7)との線膨張率の差による変形の問題を解決できない。そして、ルーフサイドレールを含めて鋼製とした、汎用される既存の鋼製サイドパネルには適用できない。
【0019】
また、アルミニウム合金ルーフパネルの熱伸縮や熱変形を吸収する方法も、特許文献6、7などで提案されている。特許文献6は、ルーフパネルフランジと、ルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部の接合用樹脂を、加熱により発泡するタイプの熱発泡型樹脂として、比較的柔らかく接合する。これによって、アルミニウム合金ルーフパネル側に生じた熱伸縮や熱変形を吸収する。また、特許文献7は、鋼製サイドパネルに剛性が低い部位を設けることで、アルミニウム合金ルーフパネルの熱伸縮や熱変形を吸収しようとしている。
【0020】
しかし、このような方法でも、やはりルーフパネルとサイドパネルとのフランジ同士の接合部に作用する、前記熱荷重自体を小さくできるわけではない。このため、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ同士の前記熱硬化型樹脂による接合方式では、この樹脂による接合箇所が熱荷重によって破損する前記した問題を解決できない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も効果的に防止できない。
【0021】
更に、アルミニウム合金製ルーフパネルの膨張変形(熱ひずみ)が生じた場合の、ルーフパネルにおける車体側面側意匠面の上下方向の部分的な変形を抑制してルーフパネルの意匠性を保持するとともに、併せて、ルーフパネル側縁部の取り付け部の変形も抑制したルーフパネルも、本出願人から提案されている(特許文献8、9)。
【0022】
特許文献8では、アルミニウム合金製ルーフパネルを鋼製サイドメンバアウタパネルに取り付けた構造において、前記ルーフパネルの側縁部と前記サイドメンバアウタパネルの上端部とをリベットあるいはボルトによって接合するに際して、剪断強度が、JIS K6850 に規定された試験方法による引張剪断強度で、2MPa以下であるような、柔らかい樹脂層を介して接合している。
【0023】
また、特許文献9、10では、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける車体側面側をL字状に折り曲げて、略垂直な立壁と、これに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、前記フランジに、車体前後方向に延在する、上方に凸な凸型ビードを、間隔を開けて複数個、一体に、かつ、前記車体側面側の外方に平坦部分を残して設け、このフランジの凸型のビード以外の平坦部分において、自動車上部車体構造と接合している。そして、この凸型のビードによって、このルーフパネル意匠面の膨張変形による上下方向の変形を抑制し、ルーフパネルの意匠性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平7-132855号公報
【特許文献2】特開2004ー17682 号公報
【特許文献3】特開2003ー341547号公報
【特許文献4】特開2002ー234460号公報
【特許文献5】特開2004ー130985号公報
【特許文献6】特開2004ー130986号公報
【特許文献7】特許第4228752号公報
【特許文献8】特許第4317352号公報
【特許文献9】特許第4438520号公報
【特許文献10】特開2008ー195244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
確かに、これら特許文献7、8によって、ルーフパネルにおける車体側面側意匠面の上下方向の部分的な変形を抑制してルーフパネルの意匠性を保持するとともに、併せて、ルーフパネルのフランジの口開きなどの変形も抑制される。
【0026】
ただ、これらの対策によっても、ルーフパネルの前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態では、前記した、ルーフパネルフランジの樹脂接合部の破損やフランジ自体のズレ変形をなかなか抑制できない。このようなルーフパネルフランジの樹脂接合部の破損やフランジ自体のズレ変形などは、ルーフパネルの意匠性やシール性(水密性)、ひいては車体としての商品価値を大きく低下させる。
【0027】
したがって、本発明の目的は、前記熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を、総合的に(押しなべて)抑制した、アルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的を達成するために、本発明のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造の要旨は、自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造であって、前記ルーフパネルの車幅方向の両端を折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成する一方、車幅方向の両側にあって前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネルの車幅方向の内側端部も折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置であって、車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、成形によって一体に各々設け、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせ、その上で互いの前記フランジ同士が接合されていることである。
【0029】
上記要旨において、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の高さと、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁の高さとを、前記ルーフパネルの板厚の1.2倍〜3.0倍の範囲の高さと限定することが好ましい。また、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の壁面であって、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を前記車幅方向の外側より支持する壁面の延在方向が、限定的に、自動車車体の焼き付け塗装工程における前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、正対する方向に限定することが好ましい。前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁と前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁とを互いに接触させた状態で、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせることが好ましい。
【0030】
また、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部と、前記ルーフパネル側の凹状段部とが、各々の前記フランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されているか、前記フランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されているよう限定することが好ましい。また、前記アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、前記サイドメンバアウタパネルのフランジとが熱硬化型接着樹脂によって接合されているよう限定することが好ましい。また、前記サイドメンバアウタパネルに加えて、前記鋼製サイドパネルを構成するルーフサイドレールの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、あるいは、更に前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバインナパネルの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設け、これらの凹状段部を前記サイドメンバアウタパネルの凹状段部に下側から各々重ね合せるように限定することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの両方に、立壁を有する凹状段部を互いに段部同士が相対応するように設ける。そして、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を、車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせている。
【0032】
このように構成することによって、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁(壁面)が、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を、前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向から支持する。
【0033】
したがって、自動車車体の焼き付け塗装工程において、前記ルーフパネルから負荷される熱荷重を、あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形を、これと相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向で阻止あるいは受け止めることができる。この場合の阻止あるいは受け止めは、狭い「点」ではなく、より広い「面」で受け持ち、かつ、鋼製サイドメンバアウタパネルの平板状ではない立体構造あるいは鋼製サイドパネル全体としての中空構造からして、剛的でなく、弾力的あるいは弾性的である。
【0034】
すなわち、この鋼製サイドメンバアウタパネル側の立壁によって、アルミニウム合金製ルーフパネル側の立壁から伝わる熱荷重あるいはズレ変形により負荷される荷重はより広い「面」で受け持ち、しっかりと弾力的あるいは弾性的に受け止められて、更に、サイドメンバアウタパネルのフレキシブルな構造(柔軟な弾性構造)によって吸収される。
【0035】
このため、前記熱荷重やズレ変形を、前記ルーフパネルに局所的に大きな荷重を与えることなく、弾力的あるいは弾性的に吸収することが可能となる。これによって、ルーフパネルの前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態でも、前記アルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重は、樹脂接合箇所以外の、溶接接合箇所やボルトなどの機械的な接合箇所への負担も含めて、大きく低減、抑制されることとなる。また、フランジ自体のズレ変形も弾力的あるいは弾性的に受け止められて吸収される。この結果、前記ルーフパネルフランジの樹脂接合部への局所的な熱荷重負荷による破損や、フランジ自体の位置の車幅方向へのズレ変形を効果的に抑制できる。
【0036】
また、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの剛性を、互いに平坦な従来の場合に比して、大きく向上させる。この剛性向上は、前記熱荷重やズレ変形の大きさ自体を低減する効果もあり、薄板からなる両パネルの、成形後の車体組み立て工程への搬送時や組み立て時の座屈変形を防止する効果もある。
【0037】
更に、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、互いにフランジが平坦な従来の場合に比して、アルミニウム合金製ルーフパネルと、鋼製サイドメンバアウタパネル、ひいては鋼製サイドパネルとの接合強度を、平坦なフランジ同士の接合に比して、大きく増加させる。
【0038】
また、この凹状段部を設ける互いのフランジは自動車上部車体構造の構成部材の取付部であり、意匠面ではないため、意匠性は不要である。そして、この凹状段部は、これらフランジにおける自動車上部車体構造の構成部材との取付部を確保した上で設けることができ、ルーフパネルの取り付けに与える不都合は何もない。
【0039】
更に、このような凹状段部は、特に大きく、あるいは特に深く設ける必要はなく、互いのフランジのあるいは全体形状のプレス成形時の一貫として、一体に、簡便に設けることが可能である。したがって、このような凹状段部は、その狙いとするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重の低減に対して効果的というだけでなく、副次的な問題が発生することなく簡便に設けることができる点で、著しく実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明ルーフパネル取り付け構造の一態様を示す斜視図である。
【図2】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す斜視図である。
【図3】図1あるいは図2のA−A断面図である。
【図4】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図5】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図6】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図7】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図8】比較例のルーフパネル取り付け構造を示す断面図である。
【図9】代表的なルーフパネルの構造を示し、図9(a)はルーフパネル全体の斜視図、図9(b)は(a) のR a 方向の断面図、図9(c)は(a) のR b 方向の断面図である。
【図10】自動車車体の斜視図である。
【図11】従来のルーフパネル取り付け構造を示す図10の車体前後方向の断面図である。
【図12】ルーフパネルの熱変形によるルーフフランジの「口開き変形」を示す側面図である。
【図13】ルーフパネルの熱変形によるルーフフランジの「ズレ変形」を示す平面図(a)と断面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明自動車ルーフパネルの実施の形態について、図を用いて、以下に説明する。なお、本発明では、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ構造以外のパネル構造や自動車上部車体構造は、これまでと同じである。
【0042】
すなわち、これらのパネル構造自体を大きく変えることなく、また、ルーフパネルの構造自体を大きく変えることなく、前記熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を総合的に抑制できる点が、本発明の利点でもある。
【0043】
ルーフパネルの構造例:
先ず、本発明の前提となる自動車車体におけるルーフパネルの構造例(代表例)を図9に示す。図9(a)はルーフパネル全体の斜視図、図9(b)は図9(a)のR a 方向の断面図、図9(c)は図9(a)のR b 方向の断面図である。本発明においてルーフパネルの構造自体は従来と同じである。この図9(a)、(b) において、ルーフパネル1 における車幅方向の両側(車体両側面側) の側縁部は、端部を、この例では L字状に折り曲げたもので、車体の上下方向に延在する垂直な立壁1bと、これに続く平坦なフランジ1cとからなる。
【0044】
ルーフパネル1 は、通常、ルーフパネル中央部の車体左右方向の曲率 R aと車体前後方向の曲率R b を有するよう、図9(b)や図9(c)に示した略箱型形状に設計される。そして、図9(a)に示すように、ルーフパネルリインフォースメント32a 、32b 、32c などのルーフ補強材を介し、また、ウインドシールドヘッダパネル33やバックウインドウフレームアッパ34などの付属フレームやパネルが設けられた上で、車体側に取り付けられる。
【0045】
このようなルーフパネルを自動車車体へ取り付ける態様を図10、11に示す。図10はルーフパネルを取り付けた自動車車体5を斜視図で示す。また、この図10における、ルーフパネル1 の両側面G-G 部やH-H 部の側縁部を、図11に断面図にて示す。
【0046】
この図11のように、ルーフパネル1は、平坦なフランジ1cにおいて、車幅方向の両側にあって鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネル6の平坦なフランジ6cと図の点線で囲んだ部分10で接合される。この際、通常は、鋼製サイドパネルを構成する他のサイドメンバインナパネル7の平坦なフランジ7cやルーフサイドレール8 の平坦なフランジ8cも、これらフランジ1cやフランジ6cと一体に接合される。
【0047】
なお、前記鋼製のサイドパネルは、周知の通り、車幅方向の両側(車体の両側)にあって、車体前後方向に延在している。そして、サイドメンバアウタパネル6の車幅方向の内側端部も、この例では L字状に折り曲げたもので、立壁6bとこれに続く平坦なフランジ6cとからなる側縁部を構成している。これは鋼製サイドパネルを構成する他のサイドメンバインナパネル7の平坦なフランジ7cやルーフサイドレール8 の平坦なフランジ8cも同様である。
【0048】
本発明が対象とするアルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの異種金属同士の組み合わせでは、アルミニウム合金と鋼との間で生じる電食への対策が前記した通り必要となる。このため、このような異材間の電食対策と接合強度の向上を目的に、後述する図1、2などのアルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cと、鋼製サイドメンバアウタ6のフランジ6cとの接合には、主として接着樹脂が使用される。具体的には、フランジ1cとフランジ6cとの間に、全面的あるいは部分的などの広域に、構造用の熱硬化型(熱硬化性)接着樹脂を塗布して介在させ、これを自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程で加熱硬化させて、これらフランジを互いに接合する。
【0049】
この熱硬化型接着樹脂の接合強度を補う意味で、SPR=セルフ・ピアシング・リベットや、あるいはボルトなどの機械的な締結手段を適用しても良い。また、これら機械的な締結手段に加えて、あるいは替えて、溶接接合 (スポット溶接等) を適用しても良い。
【0050】
ちなみに、前記図10におけるルーフパネル1 の車体前後側のK-K 部は、前記図9(a)のウインドシールドヘッダパネル33と、図示はしないが、マスチック接着剤で接合されている。更に、ルーフパネル1 の中央部は、前記図9(a)における鋼製のルーフパネルリインフォースメント32と、マスチック接着剤で接合されている。
【0051】
熱ひずみの問題:
このような熱硬化型接着樹脂の接合では、前記した通り、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける熱ひずみの問題を解決する必要がある。アルミニウム合金製ルーフパネルでは、自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程での加熱処理によって膨張変形(熱ひずみ)が生じ、このような膨張変形が大きい場合には、アルミニウム合金製ルーフパネルが、鋼製サイドパネル、特にサイドメンバアウタパネル6を車幅方向外側に向かって押し広げるような熱変形が生じる。
【0052】
このような熱変形が生じるのは、前記焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であり、これらの樹脂の接合強度は全く当てにできない。このため、熱荷重、すなわち前記熱変形により負荷される荷重を受け止め負担する、新たな手段が必要となる。
【0053】
このような手段が無い、前記図11で示した、従来のルーフパネル1の平坦なフランジ1cとサイドメンバアウタパネル6の平坦なフランジ6cとの接合では、図12にこのフランジ側面を示す、前記熱荷重を数少ないあるいは間隔が大きくあいた溶接や機械的な接合箇所11だけで局所的に負担することとなる。
【0054】
このため、前記熱荷重により、ルーフパネル側縁部のフランジに生じる面ひずみ量も大きくなり、図12に示す通り、接合点11間のルーフパネルのフランジ1cが、接合の相手であるサイドメンバアウタパネル6のフランジ6cよりも上方に拡がる口開き部分が生じる「口開き変形」が起こる。
【0055】
また、図13に示すように、このフランジ1c自体の位置が図13(a)の平面図で示す、本来の設計位置であるB―B断面の位置から、図13(b)で示す断面図のA―A断面の位置へと、車幅方向のより外側へずれる「ズレ変形」が起こる。
【0056】
更に、このような変形によって、接合点11間のルーフパネルのフランジ1cの熱硬化型樹脂による接合箇所では、前記焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であるので、前記熱荷重に耐えられずに剥がれるなどの破損する可能性が高くなる。
【0057】
これらの問題発生を防止し、前記熱荷重を受け止め負担する、本発明の新たな手段につき、図1〜8を用いて以下に説明する。
【0058】
凹状段部の定義:
先ず、本発明で言う凹状段部とは、ルーフパネルやサイドメンバアウタパネルの平坦なフランジに設けられた、これら各フランジの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。したがって、前記特許文献9、10のような、ルーフパネルフランジに設けられた、上方に向かって凸な凸型ビードとは、凹凸の向きが反対(逆)であり、厳に区別される。
【0059】
更に、本発明の凹状段部は、ルーフパネル側の凹状段部における立壁を、サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における立壁(壁面)が、車幅方向の外側より支持するものである。したがって、必然的に、本発明の凹状段部は、このような立壁(壁面)を、ルーフパネル側やサイドメンバアウタパネル側の凹状段部(フランジ)に各々有するものである。
【0060】
凹状段部の具体的な態様:
以下、本発明の凹状段部を、図1〜8などを用いて具体的に説明する。本発明では、図1、2に示すように、ルーフパネル1の平坦なフランジ1cに、立壁2aを有する凹状段部2を設ける。また、同時に、サイドメンバアウタパネルの平坦なフランジ6cにも、立壁3aを有する凹状段部3を設ける。これら凹状段部2、3は、これら互いの凹状段部2、3同士が相対応する各フランジ位置であって、フランジの車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、これらパネルのプレス成形などの成形によって一体に設ける。
【0061】
これらサイドメンバアウタパネル6側(=サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設けられたの意味)の凹状段部3と、ルーフパネル1側の凹状段部(=ルーフパネル1のフランジ1cに設けられたの意味)との前記延在の態様は、図1のように、前記各々のフランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されていても良い。また、図2のように、前記各々のフランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されていても良い。
【0062】
図1〜図4に示すように、これら互いの凹状段部2、3は、前記した通り、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の平坦な各フランジ1cや6cの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。そして、車幅方向の断面形状において、車幅方向の外側(外方側)に、段差としての各々立壁2a、3aを必須に有し、この立壁2a、3aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部2c、3cを必然的に有する。この立壁2a、3aはいわば凹状段部2、3(フランジ1cや6c)の車幅方向外側の立壁である。
【0063】
図1〜3のように、これら互いの凹状段部2、3が、底部2c、3cから上方に向かって立ち上がる車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを有する、車幅方向の矩形断面形状を有しても良い。また、図4のように、これら互いの凹状段部2、3が、これら車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを有さなくても良い。この立壁2b、3bはいわば凹状段部2、3(フランジ1cや6c)の車幅方向内側の立壁である。
【0064】
図1〜3の場合、これら互いの凹状段部2、3は、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の各フランジ1cや6cの平坦部分を、凹状段部2、3の車幅方向の内側(内方側)と車幅方向の外側(外方側)との両側に各々有している。言い換えると、図1〜3の凹状段部2、3は、各フランジ1cや6cの平坦部分を車幅方向の両側に有した大きさと、各フランジ1cや6cの位置に設けられている。
【0065】
また、図4の場合、これら互いの凹状段部2、3は、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の各フランジ1cや6cの平坦部分を、凹状段部2(立壁2a)の車幅方向の外側(外方側)のみか、凹状段部3(立壁3a)の車幅方向の内側(内方側)のみか、片側だけに有している。言い換えると、図4の凹状段部2、3は、各フランジ1cや6cの平坦部分を車幅方向の片側のみに有した大きさと、各フランジ1cや6cの位置に設けられている。
【0066】
ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との平坦なフランジ1cと6c同士を重ね合わせて接合する際に、同時に、これら互いの凹状段部2、3同士も同時に重ね合わせる。すなわち、これらの態様では、各々図示する通り、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における車幅方向内側の立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における車幅方向外側の立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう、これら互いの立壁2a、3a同士を接触させた状態で、ルーフパネル1側の凹状段部2を、相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせている。つまり、互いに重ね合わせた態様において、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における車幅方向外側の立壁3aは、車幅方向の外側より、ルーフパネル1側の凹状段部における車幅方向外側の立壁2aに接触および支持している。
【0067】
ここで、サイドメンバアウタパネル6側の前記立壁3aが、ルーフパネル1側の前記立壁2aを、車幅方向の外側より支持するためには、これら立壁3aと立壁2aとが、互いに隙間無く接触させた状態として、前記凹状段部3、2同士を重ね合わせることが好ましい。ただ、条件が許せば、必ずしも、互いに隙間無く接触させた状態とする必要はなく、目的とする効果を損なわない範囲で、これら立壁3aと立壁2aとが互いに若干あるいは多少の隙間(クリアランス)を有して、前記凹状段部3、2同士が重ね合わされてもよい。
【0068】
このように、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)3aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持する。ここで、この車幅方向の外側より支持するとは、より具体的には、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向から支持することである。
【0069】
凹状段部2は、ルーフパネル素材である平板状のアルミニウム合金板をプレス成形にて制作する際に同時に成形可能である。アルミニウム合金製ルーフパネル1の車幅方向の両端を例えばL字状に折り曲げて、立壁1bとこれに続く平坦なフランジ1cとからなる側縁部をプレス成形にて形成する際に、一連のプレス成形工程によって一体に設けることが可能で好ましい。また、凹状段部3も、車幅方向の両側にあって鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネル6の車幅方向の内側端部を例えばL字状に折り曲げて、立壁6bとこれに続く平坦なフランジ6cとからなる側縁部をプレス成形にて形成する際に、一連のプレス成形工程によって一体に設けることが可能で好ましい。
【0070】
凹状段部の主たる効果:
このように凹状段部2、3を構成および互いに重ね合わせることによって、自動車車体の焼き付け塗装工程において、ルーフパネル1側から負荷される熱荷重を、あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形を、これと相対する方向、好ましくは正対する方向で阻止あるいは受け止めることができる。しかも、この阻止あるいは受け止めは、狭い「点」ではなく、より広い「面」や「範囲」で受け取め、鋼製サイドメンバアウタパネル6の平板状ではない立体構造あるいは鋼製サイドパネル全体としての中空構造からして、反力を与える剛的ではなく、反力を与えない弾力的あるいは弾性的な支持である。このため、この鋼製サイドメンバアウタパネル6側の立壁6aによって、アルミニウム合金製ルーフパネル1側の立壁3aから伝わる熱荷重あるいはズレ変形により負荷される荷重が弾力的あるいは弾性的にしっかりと受け止められ、更に、サイドメンバアウタパネル6のフレキシブルな構造(柔軟な弾性構造)によって吸収される。
【0071】
このため、前記熱荷重やズレ変形を、ルーフパネル1側へ大きな反力を与えることなく、弾力的あるいは弾性的に吸収することが可能となる。これによって、ルーフパネル1の前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態でも、アルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cに負荷される熱荷重は、樹脂接合箇所は勿論、それ以外の溶接や機械的な接合箇所11への負担も含めて、大きく低減、抑制される。また、フランジ1c自体のズレ変形も弾力的あるいは弾性的に受け止められて吸収される。この結果、ルーフパネルフランジ1cの全域に亘る樹脂接合部の局所的な熱荷重負荷による破損や、フランジ1c自体の位置の車幅方向へのズレ変形も効果的に抑制できる。
【0072】
凹状段部の設計条件:
これら凹状段部の設計条件は、下方への深さ(立壁高さ)、車幅方向の幅、車体前後方向の長さ、間隔の長さ、設ける個数などである。これらは、アルミニウム合金製ルーフパネル1側の設計条件と、自動車車体の焼き付け塗装工程条件(温度×時間)によって定まる、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量によって定まる。
【0073】
ここで、前記したアルミニウム合金製ルーフパネル1 側の設計条件とは、パネルの厚みや強度(0.2% 耐力) 、車幅方向の長さ (幅) 、ルーフパネル1 の側縁部の長さ、ルーフパネル意匠面1aの面積などである。すなわち、これらルーフパネル1 の設計条件が大きくなり、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量が大きくなるほど、凹状段部の設計条件を大きくする。
【0074】
凹状段部の立壁の高さ:
このうち、前記した凹状段部の作用効果を、汎用されるルーフパネル1 の設計条件や自動車車体の焼き付け塗装工程条件(温度×時間)によって、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量に対して発揮させるためには、凹状段部における、立壁3aや立壁2aの高さ(平坦なフランジ面からの深さ)hが重要となる。より具体的には、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aの高さ(平坦なフランジ6c面からの深さ)hと、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aの高さ(平坦なフランジ1c面からの深さ)hとが重要となる。
【0075】
この点、これらの高さhは、ルーフパネル1の板厚tの1.2倍〜3.0倍の範囲の高さを有することが好ましい。言い換えると、凹状段部2、3の深さが、この関係を満たしていることが好ましい。この凹状段部2、3の深さが浅いと、あるいは立壁2aや立壁3aの高さhが小さすぎると、熱荷重発生元であるルーフパネル1の板厚tに応じた熱荷重やズレ変形の発生量に対応できずに、これら熱荷重やズレ変形を弾力的あるいは弾性的に受けとめ、吸収することが困難となる。
【0076】
凹状段部の形状:
これら図1、2の態様では、凹状段部の形状につき、各フランジ1cや6cの下方に凹む、平面的に矩形な形状の段差あるいは凹みを例示している。すなわち、各々の凹状段部2、3における、車幅方向外側に存在している各立壁2a、3aだけでなく、車幅方向内側に存在している立壁2b、3bを含めて、四周囲(図1)あるいは対向する2面(図2)に立壁を有する矩形凹部形状を例示している。
【0077】
これらサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3と、ルーフパネル1側の凹状段部2との各々のフランジにおける延在の態様は、前記した通り、図1のように間隔をあけて複数個配置されていても良く、図2のように一体に延在する樋状に形成しても良い。ただ、これらの凹状段部2、3は、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう、互いに接触させた状態で重ね合わせることが可能であることが前提となる。したがって、この条件を満たすことを前提に、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置に、前記したルーフパネル1の設計条件などに応じて所定の効果が発揮される、その車幅方向と車体前後方向との延在長さ=平面的な大きさ(面積)、設うける個数、間隔などの形状が適宜設計される。
【0078】
この点、凹状段部の形状は、必ずしも図1、2のような矩形凹部形状でなくとも良く、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)6aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、熱荷重の負荷方向あるいはルーフパネル1のズレ変形の変形方向に対して、相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向から支持できるものであれば良い。この点で、凹状段部の平面形状は、矩形形状でなくとも、円形、楕円、これらが組み合わさった形状であっても良い。
【0079】
図4は、この凹状段部2、3形状の変形例であり、前記した通り、前記図1、2と違って、車幅方向の内側の立壁がなく、車幅方向の外側にのみ立壁2a、3aが存在する、断面が段差状あるいは階段状のへこみ(凹部)形状となっている。すなわち、凹状段部2、3における立壁2a、3aは、各フランジの車幅方向の外側で、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向に、最低存在すれば良い。
【0080】
また、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aの壁面は、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するような壁面の延在方向とする。この点で、サイドメンバアウタパネル6側の立壁3aの壁面は、自動車車体の焼き付け塗装工程におけるルーフパネル1からの熱荷重の負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向に前記壁面を延在させる。
【0081】
ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aの壁面も、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aによる車幅方向外側よりの支持を確実なものとし、お互いに接触するためには、この立壁3aと同じ壁面の形状および延在方向とすることが好ましい。ただ、本発明で狙いとする前記立壁2aの支持効果を阻害しない範囲での、多少の互いの立壁壁面の形状および延在方向の違いなどは許容される。ちなみに、これら互いの壁面は、上下方向や横方向に平坦な直線的である必要はなく、成形および互いに接触可能であれば、上下方向や横方向に、円弧状などの曲線的であっても、段差などの凹凸があっても良い。
【0082】
また、これら互いの立壁(縦壁)2a、立壁(縦壁)3aは、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における立壁2aを、車幅方向の外側より、接触および支持することができれば、必ずしも垂直方向に立つ必要はない。例えば、。図1〜図4に示すように、上下方向に斜めに傾く(角度を有する)など、傾斜角度を持って立つ壁でも良い。これは、車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを設ける場合も同様である。また、立壁2a、3aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部2c、3cも、水平であるか平坦である必要は必ずしも無い。互いの凹状段部2、3の重ね合わせあるいは噛み合わせに支障がなければ、底部2c、3cは車幅方向に向かって角度を有して傾斜していても、微小な段差や凹凸を有していても良い。
【0083】
凹状段部同士の重ね合わせ:
以上のような構成からなる互いの凹状段部同士を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう重ね合わせる。すなわち、これら互いの立壁2a、3a同士を、立壁2aが車幅方向内側、立壁3aが車幅方向外側となるように、接触させた状態で、ルーフパネル1側の凹状段部2を、相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせる。
【0084】
その上で、アルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cと、鋼製サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cとの互いのフランジ同士が、前記した通り、構造用の熱硬化型接着樹脂によって主として接合される。
【0085】
図6、図8は、このルーフパネルのフランジ1cとサイドメンバアウタパネルのフランジ6cとの接合の際に、鋼製サイドパネルを構成する、他のルーフサイドレール8の車幅方向の内側に設けたフランジ8cや、サイドメンバインナパネル7の車幅方向の内側に設けたフランジ7cには凹状段部を設けずに、平坦な従来の態様のままで、これらを一体に接合した態様を示している。
【0086】
一方、図5は、ルーフサイドレール8のフランジ8cにも立壁4bを有する凹状段部4を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設けて、この凹状段部4をサイドメンバアウタパネル6の凹状段部3に下側から各々重ね合せた態様を示している。
【0087】
また、図7は、サイドメンバインナパネル7のフランジ7cにも、立壁9bを有する凹状段部9を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設けて、この凹状段部9を、サイドメンバアウタパネル6の凹状段部3に、ルーフサイドレール8側の凹状段部4とともに、下側から各々重ね合せた態様を示している。
【0088】
これらの凹状段部4、9の形状は、図5、図7に示すように、前記した凹状段部2、3と同じく、前記各フランジ8cや7cの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。そして、車幅方向の断面形状において、前記した凹状段部2、3と同じく、車幅方向の外側(外方側)に、段差としての各々立壁4a、9aを有し、この立壁4a、9aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部4c、9cを有する。
【0089】
そして、図5の凹状段部4のように、これらの凹状段部4、9が、底部4c、9cから上方に向かって立ち上がる車幅方向の内側(内方側)の立壁4b、9bを有する、車幅方向の矩形断面形状を有しても良い。また、図7のように、これらの凹状段部4、9が、これら車幅方向の内側(内方側)の立壁4b、9bを有さなくても良い。
【0090】
総じて、これらの凹状段部4、9の形状や、各フランジ8c、7cに各々設ける要領は、前記したサイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3と同じとする。これら凹状段部4、9は、その立壁4a、9aにおいて、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、凹状段部3の立壁3aの外側から支持しても良い。
【0091】
ただ、これら凹状段部4、9は、サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3と違って、必ずしも、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、凹状段部3の立壁3aの外側から支持しなくても良い。但し、その場合でも、これら凹状段部4、9をサイドメンバアウタパネル6の凹状段部3の下側から各々重ね合せるためには、これら凹状段部4、9の大きさや形状、そして設けるフランジ位置は、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを凹状段部3の立壁3aの外側から支持する場合と同様に、サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3に対応させる必要がある。
【0092】
図5、図7に示すように、ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との平坦なフランジ1cと6c同士を重ね合わせて接合する際に、同時に、ルーフサイドレール8のフランジ8cやサイドメンバインナパネル7のフランジ7cを重ね合わせて、これらの凹状段部4、9も、ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との凹状段部2、3に、選択的に重ね合わせる。そして、これらの凹状段部4、9によって、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3を、車体上下方向の下側からであって、車幅方向の外側より支持した上で、前記した樹脂などの接合手段にて、互いのフランジ同士を一体に接合する。
【0093】
凹状段部のその他の効果:
以上のような本発明の互いに重なり合う凹状段部は、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの剛性を大きく向上させる。この剛性向上は、前記熱荷重やズレ変形の大きさ自体を低減する効果もあり、薄板からなる両パネルの、成形後の車体組み立て工程への搬送時や組み立て時の座屈変形を防止する効果もある。また、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジよりも内側にあるルーフパネル意匠面1aの剛性、あるいは局部的な変形抵抗を高める効果もある。この結果、ルーフパネル意匠面1aの、前記膨張変形による上下方向の変形を抑制することができ、ルーフパネルの意匠性を保持する効果もある。
【0094】
更に、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、従来の平坦なフランジ同士を接合する場合に比して、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの接合強度を大きく増加させる。また、この凹状段部を設ける互いのフランジは自動車上部車体構造の構成部材の取付部であり、意匠面ではないため、意匠性は不要である。そして、この凹状段部は、これらフランジにおける自動車上部車体構造の構成部材との取付部を確保した上で設けることができ、ルーフパネルの取り付けに与える不都合は何もない。
【0095】
また、このような凹状段部は前記したような大きさや深さであり、特に大きく、あるいは特に深く設ける必要はなく、互いのフランジのあるいは全体形状のプレス成形時の一貫として、一体に、簡便に設けることが可能である。したがって、このような凹状段部は、その狙いとするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重の低減に対して効果的というだけでなく、副次的な問題が発生することなく簡便に設けることができる点で、著しく実用的である。
【0096】
段部(段差)の比較例:
前記特許文献9、10のように、ルーフパネルフランジに上方に凸な凸型ビードを幾ら設けても、フランジの剛性が多少向上するのみである。すなわち、本発明のサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3とルーフパネル1側の凹状段部2とが共同で達成するような、前記熱荷重やズレ変形を、ルーフパネル1側へ大きな反力を与えることなく弾力的あるいは弾性的に受け止めて吸収する作用効果は達成できない。
【0097】
また、図8は凹状段部の比較例であり、凹状段部2、3において、各フランジの車幅方向の外側の立壁2a、3aが無く、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2bが、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)3bとともに、車幅方向内側に存在しているのみである。このような態様では、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3bは、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2bを、外側から支持しているものの、その支持方向は車幅方向内側からであって、本発明で規定している、車幅方向外側からの支持ができていない。このため、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向から支持する効果がない。
【0098】
素材アルミニウム合金板:
本発明で用いるルーフパネル用の素材アルミニウム合金板は、通常、板の製造がしやすく、ルーフパネルへの成形が容易で、強度にも優れたAA乃至JIS 3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が適宜選択して用いられる。特に、6000系アルミニウム合金は、自動車車体の塗装焼き付け処理条件での人工時効硬化性を有する。このため、軽量化のために薄肉化されたルーフパネルとして必要な強度 (耐力) を得るのに合金元素量が少なくて済み、そのスクラップを元の6000系アルミニウム合金の溶解原料としてリサイクルできる利点がある。
【0099】
これらアルミニウム合金材は、冷間圧延に溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理(質別記号T6) されて、ルーフの成形素材として用いられる。アルミニウム合金板の厚さtは、軽量化のためにも2.0mm以下の1〜2mmの範囲から選択されることが好ましい。
【0100】
素材鋼材:
本発明で用いる鋼製サイドパネル用の素材鋼板は、従来からこれらに汎用される通常の鋼板、その表面に亜鉛系などの被覆層がめっきなどで被覆されている鋼板、鋼種として、軟鋼、高張力鋼(ハイテン)などの種々の鋼板が適用される。これら鋼板の厚さtも0.5〜3.0mmから選択されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を、総合的に抑制した、アルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造を提供することができる。このため、本発明は、上部の軽量化を目指した自動車車体構造に好適であり、上部車体構造の軽量化を促進でき、自動車の種類に依らず、共通して、走行安定性や操縦性を増すことができ、また、アルミニウム合金材の用途も一層拡大することができる。
【符号の説明】
【0102】
1:ルーフパネル、1b: 立壁、1c: フランジ平坦部分 (凹状段部間の間隔部分) 、
2、3、4、9: 凹状段部、2a、3a、4a、9a: 立壁、2b、3b: 立壁、2c、3c、4c、9c:底部、5:自動車車体、6:サイドメンバアウタ、7:サイドメンバインナ、8:ルーフサイドレール、10: 接合部、32: ルーフパネルリインフォースメント、33: ウインドシールドヘッダパネル、34: バックウインドウフレームアッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行性や操作性を向上するために、自動車車体上部の軽量化が有効である。自動車上部車体構造は、ルーフ(屋根)パネルと、ヘッダーパネルやルーフパネルリインフォースメントなどのルーフ補強材、サイドパネルとしての、車体上部側からサイドパネルアウタ(ルーフサイドアウタパネルあるいはサイドメンバアウタパネルなどとも言う)、ルーフサイドレール、サイドパネルインナ(ルーフサイドインナパネルあるいはサイドメンバインナパネルなどとも言う)などから構成される。
【0003】
これら自動車上部車体構造の軽量化のためには、上記各上部構造構成部材に、従来から使用されてきた鋼材に代わって、アルミニウム合金材を使用することが有効である。
【0004】
しかし、自動車上部車体構造全てにアルミニウム合金材を使用した場合に、車体衝突時の車体の剛性確保が難しくなる。また、アルミニウム合金材は鋼材に比べれば成形しにくいため、自動車上部車体構造の構成部材に、全てアルミニウム合金材を使用した場合、部材の成形や車体の組み立てが、鋼材に比べれば、やりにくい問題もある。
【0005】
このため、アルミニウム合金材の使用はルーフパネルなどの限定的として、他の自動車上部車体構造の構成部材を鋼材とした複合構造(ハイブリッド構造)とする方が合理的である。自動車上部車体構造を、このような鋼材との複合構造にした場合でも、全てを鋼材とした場合に比して、アルミニウム合金材使用による上部車体構造の軽量化効果は大きい。
【0006】
この点、従来から、鋼製であるルーフパネルをより軽量なアルミニウム合金製パネルに置き換えることが提案乃至適用されつつある(例えば、特許文献1、2、3など参照) 。ルーフパネルにアルミニウム合金を適用した場合には、太陽放射による侵入熱量の遮熱性を高めることができるなどの利点もある(例えば、特許文献4参照) 。
【0007】
ただ、自動車のルーフパネルに対してアルミニウム合金パネルを適用する場合には、異種金属同士の組み合わせとなるために、アルミニウム合金と鋼との間で生じる電食(電位差による生じる腐食)への対策が必要となる。
【0008】
ルーフパネルとサイドメンバアウタパネルとの、フランジ同士などの接合手段としては、通常の鋼製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの組み合わせ、あるいはアルミニウム合金製ルーフパネルとアルミニウム合金製サイドパネルとの組み合わせなど、同種金属同士の組み合わせであれば、接合施工の効率からも、スポット溶接が汎用される。
【0009】
しかし、本発明が対象とするアルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの異種金属同士の組み合わせでは、このようなスポット溶接や機械的な接合手段だけでは、アルミニウム合金と鋼との間で電食が生じる。このため、このような異材間の電食対策と接合強度の向上を目的に、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドメンバアウタとの接合には、主として接着樹脂が使用されることが多い。具体的には、両者の接合用のフランジ同士の間に、全面的あるいは部分的などの広域に、構造用の熱硬化型(熱硬化性)接着樹脂を塗布して介在させ、これを自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程で加熱硬化させて、これらフランジを互いに接合する。
【0010】
この熱硬化型接着樹脂の接合強度を補う意味で、SPR=セルフ・ピアシング・リベットや、あるいはボルトなどの機械的な締結手段を適用することも多い。また、これら機械的な締結手段に加えて、あるいは替えて、溶接接合 (スポット溶接等) が適用されることもある。
【0011】
ただ、このような熱硬化型接着樹脂の接合による場合、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける熱ひずみの問題が特に浮上してくる。本発明のように、ルーフパネルをアルミニウム合金製とした場合、アルミニウム合金製ルーフパネルと、鋼製のサイドパネル(サイドメンバアウタパネルやサイドメンバインナパネル、ルーフサイドレール)とでは、線膨張係数が大きく違う。アルミニウム合金の線膨張係数は周知の通り鋼の約2倍である。これによって、車体が高温に加熱された際には、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製のサイドパネルとでは、熱による変形量が異なって、アルミニウム合金製ルーフパネルの側に大きな膨張変形(熱ひずみ)が生じる。
【0012】
特に、大型車などで面積が大きく、かつ軽量化のために2.0mm以下に薄肉化されたアルミニウム合金製ルーフパネルでは、自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程での170〜180 ℃×20〜30分などの条件での、比較的低温の加熱処理によっても、大きな膨張変形(熱ひずみ)が生じる。
【0013】
アルミニウム合金製ルーフパネルに、このような膨張変形(熱ひずみ)が大きく生じた場合には、アルミニウム合金製ルーフパネルが、前記鋼製サイドパネルを車幅方向外側に向かって押し広げるような熱変形が生じる。そして、このような熱変形が生じるのは、前記した、自動車車体の焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記した接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であり、これらの樹脂の接合強度は全く当てにできない。
【0014】
このため、熱荷重、すなわち前記熱変形により負荷される荷重は、樹脂接合箇所以外の、前記した比較的数少ない、あるいは間隔が大きくあいた、溶接接合箇所やSPRボルトなどの機械的な接合箇所だけで局所的に負担することとなる。この結果、これら溶接接合箇所やボルトなどの機械的な接合箇所が無い、熱硬化型樹脂による接合箇所が、前記熱荷重に耐えられずに剥がれるなどの破損する可能性が高くなる。
【0015】
また、ルーフパネルの前記熱荷重が大きい場合には、ルーフパネル側縁部のフランジの取り付け部に生じる面ひずみ量も大きくなる。このため、フランジの取り付け部に、接合点間の口開き部分が生じる変形「口開き変形」が起こったり、このフランジ自体の位置が、本来の設計位置よりも車幅方向のより外側へずれるなどの「ズレ変形」が起こってしまう。自動車車体組み立て後に、このような変形が生じた場合、ルーフパネルの意匠性やシール性(水密性)、ひいては車体の商品価値を大きく阻害する。
【0016】
ちなみに、ルーフパネルとサイドパネルとが、汎用されている鋼製同士の場合には、互いに同じ熱膨張係数、熱膨張量であるために、前記接合箇所に過大な熱荷重の負担は発生せず、これらの接合箇所が破損、破断あるいは剥がれることはない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も生じない。したがって、このような問題は、アルミニウム合金製ルーフパネルを鋼製サイドパネルに取り付ける際の特有の問題である。
【0017】
従来から、このようなアルミニウム合金ルーフパネルの熱ひずみ対策は種々提案されている。例えば、ルーフパネルの側縁部に、ビード(溝)を設けて、アルミニウム合金ルーフパネルの剛性を上げ、膨張変形を抑制する対策がある。しかし、このようなビードを設けても、ルーフパネルとサイドパネルとのフランジ同士の接合部に作用する、前記熱荷重自体を小さくできるわけではない。このため、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ同士の前記熱硬化型樹脂による接合方式では、この樹脂による接合箇所が熱荷重によって破損する前記した問題を解決できない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も効果的に防止できない。しかも、自動車のデザイン上重要な、ルーフパネル形状の設計変更をもたらすことになる制約が生じる。
【0018】
また、ルーフサイドレールをアルミニウム合金製中空形材から構成し、ルーフパネルとルーフサイドレールとをアルミニウム合金同士として接合することで、互いの線膨張率を同じとする。これによって、鋼材との線膨張率の違いによって、座屈強度が低いアルミニウム合金ルーフパネル側に大きなひずみが生じるのを抑制して、ルーフパネル側縁部の前記取り付け部に、接合点間に口開き部分が生じるなどの変形が起こるのを防止することが提案されている(特許文献5) 。しかし、この方法では、鋼製のサイドパネル(サイドメンバアウタ6 やサイドメンバインナパネル7)との線膨張率の差による変形の問題を解決できない。そして、ルーフサイドレールを含めて鋼製とした、汎用される既存の鋼製サイドパネルには適用できない。
【0019】
また、アルミニウム合金ルーフパネルの熱伸縮や熱変形を吸収する方法も、特許文献6、7などで提案されている。特許文献6は、ルーフパネルフランジと、ルーフサイドレールやサイドメンバアウタパネルとの取り付け部の接合用樹脂を、加熱により発泡するタイプの熱発泡型樹脂として、比較的柔らかく接合する。これによって、アルミニウム合金ルーフパネル側に生じた熱伸縮や熱変形を吸収する。また、特許文献7は、鋼製サイドパネルに剛性が低い部位を設けることで、アルミニウム合金ルーフパネルの熱伸縮や熱変形を吸収しようとしている。
【0020】
しかし、このような方法でも、やはりルーフパネルとサイドパネルとのフランジ同士の接合部に作用する、前記熱荷重自体を小さくできるわけではない。このため、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ同士の前記熱硬化型樹脂による接合方式では、この樹脂による接合箇所が熱荷重によって破損する前記した問題を解決できない。また、前記したフランジの「口開き変形」や「ズレ変形」も効果的に防止できない。
【0021】
更に、アルミニウム合金製ルーフパネルの膨張変形(熱ひずみ)が生じた場合の、ルーフパネルにおける車体側面側意匠面の上下方向の部分的な変形を抑制してルーフパネルの意匠性を保持するとともに、併せて、ルーフパネル側縁部の取り付け部の変形も抑制したルーフパネルも、本出願人から提案されている(特許文献8、9)。
【0022】
特許文献8では、アルミニウム合金製ルーフパネルを鋼製サイドメンバアウタパネルに取り付けた構造において、前記ルーフパネルの側縁部と前記サイドメンバアウタパネルの上端部とをリベットあるいはボルトによって接合するに際して、剪断強度が、JIS K6850 に規定された試験方法による引張剪断強度で、2MPa以下であるような、柔らかい樹脂層を介して接合している。
【0023】
また、特許文献9、10では、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける車体側面側をL字状に折り曲げて、略垂直な立壁と、これに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、前記フランジに、車体前後方向に延在する、上方に凸な凸型ビードを、間隔を開けて複数個、一体に、かつ、前記車体側面側の外方に平坦部分を残して設け、このフランジの凸型のビード以外の平坦部分において、自動車上部車体構造と接合している。そして、この凸型のビードによって、このルーフパネル意匠面の膨張変形による上下方向の変形を抑制し、ルーフパネルの意匠性を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平7-132855号公報
【特許文献2】特開2004ー17682 号公報
【特許文献3】特開2003ー341547号公報
【特許文献4】特開2002ー234460号公報
【特許文献5】特開2004ー130985号公報
【特許文献6】特開2004ー130986号公報
【特許文献7】特許第4228752号公報
【特許文献8】特許第4317352号公報
【特許文献9】特許第4438520号公報
【特許文献10】特開2008ー195244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
確かに、これら特許文献7、8によって、ルーフパネルにおける車体側面側意匠面の上下方向の部分的な変形を抑制してルーフパネルの意匠性を保持するとともに、併せて、ルーフパネルのフランジの口開きなどの変形も抑制される。
【0026】
ただ、これらの対策によっても、ルーフパネルの前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態では、前記した、ルーフパネルフランジの樹脂接合部の破損やフランジ自体のズレ変形をなかなか抑制できない。このようなルーフパネルフランジの樹脂接合部の破損やフランジ自体のズレ変形などは、ルーフパネルの意匠性やシール性(水密性)、ひいては車体としての商品価値を大きく低下させる。
【0027】
したがって、本発明の目的は、前記熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を、総合的に(押しなべて)抑制した、アルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的を達成するために、本発明のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造の要旨は、自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造であって、前記ルーフパネルの車幅方向の両端を折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成する一方、車幅方向の両側にあって前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネルの車幅方向の内側端部も折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置であって、車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、成形によって一体に各々設け、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせ、その上で互いの前記フランジ同士が接合されていることである。
【0029】
上記要旨において、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の高さと、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁の高さとを、前記ルーフパネルの板厚の1.2倍〜3.0倍の範囲の高さと限定することが好ましい。また、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の壁面であって、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を前記車幅方向の外側より支持する壁面の延在方向が、限定的に、自動車車体の焼き付け塗装工程における前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、正対する方向に限定することが好ましい。前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁と前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁とを互いに接触させた状態で、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせることが好ましい。
【0030】
また、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部と、前記ルーフパネル側の凹状段部とが、各々の前記フランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されているか、前記フランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されているよう限定することが好ましい。また、前記アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、前記サイドメンバアウタパネルのフランジとが熱硬化型接着樹脂によって接合されているよう限定することが好ましい。また、前記サイドメンバアウタパネルに加えて、前記鋼製サイドパネルを構成するルーフサイドレールの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、あるいは、更に前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバインナパネルの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設け、これらの凹状段部を前記サイドメンバアウタパネルの凹状段部に下側から各々重ね合せるように限定することが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの両方に、立壁を有する凹状段部を互いに段部同士が相対応するように設ける。そして、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を、車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせている。
【0032】
このように構成することによって、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁(壁面)が、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を、前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向から支持する。
【0033】
したがって、自動車車体の焼き付け塗装工程において、前記ルーフパネルから負荷される熱荷重を、あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形を、これと相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向で阻止あるいは受け止めることができる。この場合の阻止あるいは受け止めは、狭い「点」ではなく、より広い「面」で受け持ち、かつ、鋼製サイドメンバアウタパネルの平板状ではない立体構造あるいは鋼製サイドパネル全体としての中空構造からして、剛的でなく、弾力的あるいは弾性的である。
【0034】
すなわち、この鋼製サイドメンバアウタパネル側の立壁によって、アルミニウム合金製ルーフパネル側の立壁から伝わる熱荷重あるいはズレ変形により負荷される荷重はより広い「面」で受け持ち、しっかりと弾力的あるいは弾性的に受け止められて、更に、サイドメンバアウタパネルのフレキシブルな構造(柔軟な弾性構造)によって吸収される。
【0035】
このため、前記熱荷重やズレ変形を、前記ルーフパネルに局所的に大きな荷重を与えることなく、弾力的あるいは弾性的に吸収することが可能となる。これによって、ルーフパネルの前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態でも、前記アルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重は、樹脂接合箇所以外の、溶接接合箇所やボルトなどの機械的な接合箇所への負担も含めて、大きく低減、抑制されることとなる。また、フランジ自体のズレ変形も弾力的あるいは弾性的に受け止められて吸収される。この結果、前記ルーフパネルフランジの樹脂接合部への局所的な熱荷重負荷による破損や、フランジ自体の位置の車幅方向へのズレ変形を効果的に抑制できる。
【0036】
また、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの剛性を、互いに平坦な従来の場合に比して、大きく向上させる。この剛性向上は、前記熱荷重やズレ変形の大きさ自体を低減する効果もあり、薄板からなる両パネルの、成形後の車体組み立て工程への搬送時や組み立て時の座屈変形を防止する効果もある。
【0037】
更に、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、互いにフランジが平坦な従来の場合に比して、アルミニウム合金製ルーフパネルと、鋼製サイドメンバアウタパネル、ひいては鋼製サイドパネルとの接合強度を、平坦なフランジ同士の接合に比して、大きく増加させる。
【0038】
また、この凹状段部を設ける互いのフランジは自動車上部車体構造の構成部材の取付部であり、意匠面ではないため、意匠性は不要である。そして、この凹状段部は、これらフランジにおける自動車上部車体構造の構成部材との取付部を確保した上で設けることができ、ルーフパネルの取り付けに与える不都合は何もない。
【0039】
更に、このような凹状段部は、特に大きく、あるいは特に深く設ける必要はなく、互いのフランジのあるいは全体形状のプレス成形時の一貫として、一体に、簡便に設けることが可能である。したがって、このような凹状段部は、その狙いとするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重の低減に対して効果的というだけでなく、副次的な問題が発生することなく簡便に設けることができる点で、著しく実用的である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明ルーフパネル取り付け構造の一態様を示す斜視図である。
【図2】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す斜視図である。
【図3】図1あるいは図2のA−A断面図である。
【図4】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図5】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図6】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図7】本発明ルーフパネル取り付け構造の他の態様を示す断面図である。
【図8】比較例のルーフパネル取り付け構造を示す断面図である。
【図9】代表的なルーフパネルの構造を示し、図9(a)はルーフパネル全体の斜視図、図9(b)は(a) のR a 方向の断面図、図9(c)は(a) のR b 方向の断面図である。
【図10】自動車車体の斜視図である。
【図11】従来のルーフパネル取り付け構造を示す図10の車体前後方向の断面図である。
【図12】ルーフパネルの熱変形によるルーフフランジの「口開き変形」を示す側面図である。
【図13】ルーフパネルの熱変形によるルーフフランジの「ズレ変形」を示す平面図(a)と断面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明自動車ルーフパネルの実施の形態について、図を用いて、以下に説明する。なお、本発明では、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとのフランジ構造以外のパネル構造や自動車上部車体構造は、これまでと同じである。
【0042】
すなわち、これらのパネル構造自体を大きく変えることなく、また、ルーフパネルの構造自体を大きく変えることなく、前記熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を総合的に抑制できる点が、本発明の利点でもある。
【0043】
ルーフパネルの構造例:
先ず、本発明の前提となる自動車車体におけるルーフパネルの構造例(代表例)を図9に示す。図9(a)はルーフパネル全体の斜視図、図9(b)は図9(a)のR a 方向の断面図、図9(c)は図9(a)のR b 方向の断面図である。本発明においてルーフパネルの構造自体は従来と同じである。この図9(a)、(b) において、ルーフパネル1 における車幅方向の両側(車体両側面側) の側縁部は、端部を、この例では L字状に折り曲げたもので、車体の上下方向に延在する垂直な立壁1bと、これに続く平坦なフランジ1cとからなる。
【0044】
ルーフパネル1 は、通常、ルーフパネル中央部の車体左右方向の曲率 R aと車体前後方向の曲率R b を有するよう、図9(b)や図9(c)に示した略箱型形状に設計される。そして、図9(a)に示すように、ルーフパネルリインフォースメント32a 、32b 、32c などのルーフ補強材を介し、また、ウインドシールドヘッダパネル33やバックウインドウフレームアッパ34などの付属フレームやパネルが設けられた上で、車体側に取り付けられる。
【0045】
このようなルーフパネルを自動車車体へ取り付ける態様を図10、11に示す。図10はルーフパネルを取り付けた自動車車体5を斜視図で示す。また、この図10における、ルーフパネル1 の両側面G-G 部やH-H 部の側縁部を、図11に断面図にて示す。
【0046】
この図11のように、ルーフパネル1は、平坦なフランジ1cにおいて、車幅方向の両側にあって鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネル6の平坦なフランジ6cと図の点線で囲んだ部分10で接合される。この際、通常は、鋼製サイドパネルを構成する他のサイドメンバインナパネル7の平坦なフランジ7cやルーフサイドレール8 の平坦なフランジ8cも、これらフランジ1cやフランジ6cと一体に接合される。
【0047】
なお、前記鋼製のサイドパネルは、周知の通り、車幅方向の両側(車体の両側)にあって、車体前後方向に延在している。そして、サイドメンバアウタパネル6の車幅方向の内側端部も、この例では L字状に折り曲げたもので、立壁6bとこれに続く平坦なフランジ6cとからなる側縁部を構成している。これは鋼製サイドパネルを構成する他のサイドメンバインナパネル7の平坦なフランジ7cやルーフサイドレール8 の平坦なフランジ8cも同様である。
【0048】
本発明が対象とするアルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの異種金属同士の組み合わせでは、アルミニウム合金と鋼との間で生じる電食への対策が前記した通り必要となる。このため、このような異材間の電食対策と接合強度の向上を目的に、後述する図1、2などのアルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cと、鋼製サイドメンバアウタ6のフランジ6cとの接合には、主として接着樹脂が使用される。具体的には、フランジ1cとフランジ6cとの間に、全面的あるいは部分的などの広域に、構造用の熱硬化型(熱硬化性)接着樹脂を塗布して介在させ、これを自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程で加熱硬化させて、これらフランジを互いに接合する。
【0049】
この熱硬化型接着樹脂の接合強度を補う意味で、SPR=セルフ・ピアシング・リベットや、あるいはボルトなどの機械的な締結手段を適用しても良い。また、これら機械的な締結手段に加えて、あるいは替えて、溶接接合 (スポット溶接等) を適用しても良い。
【0050】
ちなみに、前記図10におけるルーフパネル1 の車体前後側のK-K 部は、前記図9(a)のウインドシールドヘッダパネル33と、図示はしないが、マスチック接着剤で接合されている。更に、ルーフパネル1 の中央部は、前記図9(a)における鋼製のルーフパネルリインフォースメント32と、マスチック接着剤で接合されている。
【0051】
熱ひずみの問題:
このような熱硬化型接着樹脂の接合では、前記した通り、アルミニウム合金製ルーフパネルにおける熱ひずみの問題を解決する必要がある。アルミニウム合金製ルーフパネルでは、自動車車体組み立て後の車体の焼き付け塗装工程での加熱処理によって膨張変形(熱ひずみ)が生じ、このような膨張変形が大きい場合には、アルミニウム合金製ルーフパネルが、鋼製サイドパネル、特にサイドメンバアウタパネル6を車幅方向外側に向かって押し広げるような熱変形が生じる。
【0052】
このような熱変形が生じるのは、前記焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であり、これらの樹脂の接合強度は全く当てにできない。このため、熱荷重、すなわち前記熱変形により負荷される荷重を受け止め負担する、新たな手段が必要となる。
【0053】
このような手段が無い、前記図11で示した、従来のルーフパネル1の平坦なフランジ1cとサイドメンバアウタパネル6の平坦なフランジ6cとの接合では、図12にこのフランジ側面を示す、前記熱荷重を数少ないあるいは間隔が大きくあいた溶接や機械的な接合箇所11だけで局所的に負担することとなる。
【0054】
このため、前記熱荷重により、ルーフパネル側縁部のフランジに生じる面ひずみ量も大きくなり、図12に示す通り、接合点11間のルーフパネルのフランジ1cが、接合の相手であるサイドメンバアウタパネル6のフランジ6cよりも上方に拡がる口開き部分が生じる「口開き変形」が起こる。
【0055】
また、図13に示すように、このフランジ1c自体の位置が図13(a)の平面図で示す、本来の設計位置であるB―B断面の位置から、図13(b)で示す断面図のA―A断面の位置へと、車幅方向のより外側へずれる「ズレ変形」が起こる。
【0056】
更に、このような変形によって、接合点11間のルーフパネルのフランジ1cの熱硬化型樹脂による接合箇所では、前記焼き付け塗装工程(加熱炉)途中であり、前記接合用の熱硬化型樹脂も未硬化の状態であるので、前記熱荷重に耐えられずに剥がれるなどの破損する可能性が高くなる。
【0057】
これらの問題発生を防止し、前記熱荷重を受け止め負担する、本発明の新たな手段につき、図1〜8を用いて以下に説明する。
【0058】
凹状段部の定義:
先ず、本発明で言う凹状段部とは、ルーフパネルやサイドメンバアウタパネルの平坦なフランジに設けられた、これら各フランジの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。したがって、前記特許文献9、10のような、ルーフパネルフランジに設けられた、上方に向かって凸な凸型ビードとは、凹凸の向きが反対(逆)であり、厳に区別される。
【0059】
更に、本発明の凹状段部は、ルーフパネル側の凹状段部における立壁を、サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における立壁(壁面)が、車幅方向の外側より支持するものである。したがって、必然的に、本発明の凹状段部は、このような立壁(壁面)を、ルーフパネル側やサイドメンバアウタパネル側の凹状段部(フランジ)に各々有するものである。
【0060】
凹状段部の具体的な態様:
以下、本発明の凹状段部を、図1〜8などを用いて具体的に説明する。本発明では、図1、2に示すように、ルーフパネル1の平坦なフランジ1cに、立壁2aを有する凹状段部2を設ける。また、同時に、サイドメンバアウタパネルの平坦なフランジ6cにも、立壁3aを有する凹状段部3を設ける。これら凹状段部2、3は、これら互いの凹状段部2、3同士が相対応する各フランジ位置であって、フランジの車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、これらパネルのプレス成形などの成形によって一体に設ける。
【0061】
これらサイドメンバアウタパネル6側(=サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設けられたの意味)の凹状段部3と、ルーフパネル1側の凹状段部(=ルーフパネル1のフランジ1cに設けられたの意味)との前記延在の態様は、図1のように、前記各々のフランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されていても良い。また、図2のように、前記各々のフランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されていても良い。
【0062】
図1〜図4に示すように、これら互いの凹状段部2、3は、前記した通り、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の平坦な各フランジ1cや6cの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。そして、車幅方向の断面形状において、車幅方向の外側(外方側)に、段差としての各々立壁2a、3aを必須に有し、この立壁2a、3aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部2c、3cを必然的に有する。この立壁2a、3aはいわば凹状段部2、3(フランジ1cや6c)の車幅方向外側の立壁である。
【0063】
図1〜3のように、これら互いの凹状段部2、3が、底部2c、3cから上方に向かって立ち上がる車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを有する、車幅方向の矩形断面形状を有しても良い。また、図4のように、これら互いの凹状段部2、3が、これら車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを有さなくても良い。この立壁2b、3bはいわば凹状段部2、3(フランジ1cや6c)の車幅方向内側の立壁である。
【0064】
図1〜3の場合、これら互いの凹状段部2、3は、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の各フランジ1cや6cの平坦部分を、凹状段部2、3の車幅方向の内側(内方側)と車幅方向の外側(外方側)との両側に各々有している。言い換えると、図1〜3の凹状段部2、3は、各フランジ1cや6cの平坦部分を車幅方向の両側に有した大きさと、各フランジ1cや6cの位置に設けられている。
【0065】
また、図4の場合、これら互いの凹状段部2、3は、ルーフパネル1やサイドメンバアウタパネル6の各フランジ1cや6cの平坦部分を、凹状段部2(立壁2a)の車幅方向の外側(外方側)のみか、凹状段部3(立壁3a)の車幅方向の内側(内方側)のみか、片側だけに有している。言い換えると、図4の凹状段部2、3は、各フランジ1cや6cの平坦部分を車幅方向の片側のみに有した大きさと、各フランジ1cや6cの位置に設けられている。
【0066】
ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との平坦なフランジ1cと6c同士を重ね合わせて接合する際に、同時に、これら互いの凹状段部2、3同士も同時に重ね合わせる。すなわち、これらの態様では、各々図示する通り、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における車幅方向内側の立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における車幅方向外側の立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう、これら互いの立壁2a、3a同士を接触させた状態で、ルーフパネル1側の凹状段部2を、相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせている。つまり、互いに重ね合わせた態様において、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における車幅方向外側の立壁3aは、車幅方向の外側より、ルーフパネル1側の凹状段部における車幅方向外側の立壁2aに接触および支持している。
【0067】
ここで、サイドメンバアウタパネル6側の前記立壁3aが、ルーフパネル1側の前記立壁2aを、車幅方向の外側より支持するためには、これら立壁3aと立壁2aとが、互いに隙間無く接触させた状態として、前記凹状段部3、2同士を重ね合わせることが好ましい。ただ、条件が許せば、必ずしも、互いに隙間無く接触させた状態とする必要はなく、目的とする効果を損なわない範囲で、これら立壁3aと立壁2aとが互いに若干あるいは多少の隙間(クリアランス)を有して、前記凹状段部3、2同士が重ね合わされてもよい。
【0068】
このように、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)3aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持する。ここで、この車幅方向の外側より支持するとは、より具体的には、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向から支持することである。
【0069】
凹状段部2は、ルーフパネル素材である平板状のアルミニウム合金板をプレス成形にて制作する際に同時に成形可能である。アルミニウム合金製ルーフパネル1の車幅方向の両端を例えばL字状に折り曲げて、立壁1bとこれに続く平坦なフランジ1cとからなる側縁部をプレス成形にて形成する際に、一連のプレス成形工程によって一体に設けることが可能で好ましい。また、凹状段部3も、車幅方向の両側にあって鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネル6の車幅方向の内側端部を例えばL字状に折り曲げて、立壁6bとこれに続く平坦なフランジ6cとからなる側縁部をプレス成形にて形成する際に、一連のプレス成形工程によって一体に設けることが可能で好ましい。
【0070】
凹状段部の主たる効果:
このように凹状段部2、3を構成および互いに重ね合わせることによって、自動車車体の焼き付け塗装工程において、ルーフパネル1側から負荷される熱荷重を、あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形を、これと相対する方向、好ましくは正対する方向で阻止あるいは受け止めることができる。しかも、この阻止あるいは受け止めは、狭い「点」ではなく、より広い「面」や「範囲」で受け取め、鋼製サイドメンバアウタパネル6の平板状ではない立体構造あるいは鋼製サイドパネル全体としての中空構造からして、反力を与える剛的ではなく、反力を与えない弾力的あるいは弾性的な支持である。このため、この鋼製サイドメンバアウタパネル6側の立壁6aによって、アルミニウム合金製ルーフパネル1側の立壁3aから伝わる熱荷重あるいはズレ変形により負荷される荷重が弾力的あるいは弾性的にしっかりと受け止められ、更に、サイドメンバアウタパネル6のフレキシブルな構造(柔軟な弾性構造)によって吸収される。
【0071】
このため、前記熱荷重やズレ変形を、ルーフパネル1側へ大きな反力を与えることなく、弾力的あるいは弾性的に吸収することが可能となる。これによって、ルーフパネル1の前記膨張変形(熱ひずみ)が大きく、前記した熱変形=熱荷重が大きく生じた場合で、しかも、前記した焼き付け塗装工程を通過途中で前記接合用熱硬化型樹脂が未硬化の状態でも、アルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cに負荷される熱荷重は、樹脂接合箇所は勿論、それ以外の溶接や機械的な接合箇所11への負担も含めて、大きく低減、抑制される。また、フランジ1c自体のズレ変形も弾力的あるいは弾性的に受け止められて吸収される。この結果、ルーフパネルフランジ1cの全域に亘る樹脂接合部の局所的な熱荷重負荷による破損や、フランジ1c自体の位置の車幅方向へのズレ変形も効果的に抑制できる。
【0072】
凹状段部の設計条件:
これら凹状段部の設計条件は、下方への深さ(立壁高さ)、車幅方向の幅、車体前後方向の長さ、間隔の長さ、設ける個数などである。これらは、アルミニウム合金製ルーフパネル1側の設計条件と、自動車車体の焼き付け塗装工程条件(温度×時間)によって定まる、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量によって定まる。
【0073】
ここで、前記したアルミニウム合金製ルーフパネル1 側の設計条件とは、パネルの厚みや強度(0.2% 耐力) 、車幅方向の長さ (幅) 、ルーフパネル1 の側縁部の長さ、ルーフパネル意匠面1aの面積などである。すなわち、これらルーフパネル1 の設計条件が大きくなり、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量が大きくなるほど、凹状段部の設計条件を大きくする。
【0074】
凹状段部の立壁の高さ:
このうち、前記した凹状段部の作用効果を、汎用されるルーフパネル1 の設計条件や自動車車体の焼き付け塗装工程条件(温度×時間)によって、フランジ1cに負荷される熱荷重量や熱変形量に対して発揮させるためには、凹状段部における、立壁3aや立壁2aの高さ(平坦なフランジ面からの深さ)hが重要となる。より具体的には、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aの高さ(平坦なフランジ6c面からの深さ)hと、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aの高さ(平坦なフランジ1c面からの深さ)hとが重要となる。
【0075】
この点、これらの高さhは、ルーフパネル1の板厚tの1.2倍〜3.0倍の範囲の高さを有することが好ましい。言い換えると、凹状段部2、3の深さが、この関係を満たしていることが好ましい。この凹状段部2、3の深さが浅いと、あるいは立壁2aや立壁3aの高さhが小さすぎると、熱荷重発生元であるルーフパネル1の板厚tに応じた熱荷重やズレ変形の発生量に対応できずに、これら熱荷重やズレ変形を弾力的あるいは弾性的に受けとめ、吸収することが困難となる。
【0076】
凹状段部の形状:
これら図1、2の態様では、凹状段部の形状につき、各フランジ1cや6cの下方に凹む、平面的に矩形な形状の段差あるいは凹みを例示している。すなわち、各々の凹状段部2、3における、車幅方向外側に存在している各立壁2a、3aだけでなく、車幅方向内側に存在している立壁2b、3bを含めて、四周囲(図1)あるいは対向する2面(図2)に立壁を有する矩形凹部形状を例示している。
【0077】
これらサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3と、ルーフパネル1側の凹状段部2との各々のフランジにおける延在の態様は、前記した通り、図1のように間隔をあけて複数個配置されていても良く、図2のように一体に延在する樋状に形成しても良い。ただ、これらの凹状段部2、3は、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう、互いに接触させた状態で重ね合わせることが可能であることが前提となる。したがって、この条件を満たすことを前提に、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置に、前記したルーフパネル1の設計条件などに応じて所定の効果が発揮される、その車幅方向と車体前後方向との延在長さ=平面的な大きさ(面積)、設うける個数、間隔などの形状が適宜設計される。
【0078】
この点、凹状段部の形状は、必ずしも図1、2のような矩形凹部形状でなくとも良く、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)6aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、熱荷重の負荷方向あるいはルーフパネル1のズレ変形の変形方向に対して、相対する(対峙する、向き合う)方向、好ましくは正対する方向から支持できるものであれば良い。この点で、凹状段部の平面形状は、矩形形状でなくとも、円形、楕円、これらが組み合わさった形状であっても良い。
【0079】
図4は、この凹状段部2、3形状の変形例であり、前記した通り、前記図1、2と違って、車幅方向の内側の立壁がなく、車幅方向の外側にのみ立壁2a、3aが存在する、断面が段差状あるいは階段状のへこみ(凹部)形状となっている。すなわち、凹状段部2、3における立壁2a、3aは、各フランジの車幅方向の外側で、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向に、最低存在すれば良い。
【0080】
また、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aの壁面は、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するような壁面の延在方向とする。この点で、サイドメンバアウタパネル6側の立壁3aの壁面は、自動車車体の焼き付け塗装工程におけるルーフパネル1からの熱荷重の負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向に前記壁面を延在させる。
【0081】
ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aの壁面も、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aによる車幅方向外側よりの支持を確実なものとし、お互いに接触するためには、この立壁3aと同じ壁面の形状および延在方向とすることが好ましい。ただ、本発明で狙いとする前記立壁2aの支持効果を阻害しない範囲での、多少の互いの立壁壁面の形状および延在方向の違いなどは許容される。ちなみに、これら互いの壁面は、上下方向や横方向に平坦な直線的である必要はなく、成形および互いに接触可能であれば、上下方向や横方向に、円弧状などの曲線的であっても、段差などの凹凸があっても良い。
【0082】
また、これら互いの立壁(縦壁)2a、立壁(縦壁)3aは、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部における立壁2aを、車幅方向の外側より、接触および支持することができれば、必ずしも垂直方向に立つ必要はない。例えば、。図1〜図4に示すように、上下方向に斜めに傾く(角度を有する)など、傾斜角度を持って立つ壁でも良い。これは、車幅方向の内側(内方側)の立壁2b、3bを設ける場合も同様である。また、立壁2a、3aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部2c、3cも、水平であるか平坦である必要は必ずしも無い。互いの凹状段部2、3の重ね合わせあるいは噛み合わせに支障がなければ、底部2c、3cは車幅方向に向かって角度を有して傾斜していても、微小な段差や凹凸を有していても良い。
【0083】
凹状段部同士の重ね合わせ:
以上のような構成からなる互いの凹状段部同士を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3aが、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、車幅方向の外側より支持するよう重ね合わせる。すなわち、これら互いの立壁2a、3a同士を、立壁2aが車幅方向内側、立壁3aが車幅方向外側となるように、接触させた状態で、ルーフパネル1側の凹状段部2を、相対応するサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に重ね合わせる。
【0084】
その上で、アルミニウム合金製ルーフパネル1のフランジ1cと、鋼製サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cとの互いのフランジ同士が、前記した通り、構造用の熱硬化型接着樹脂によって主として接合される。
【0085】
図6、図8は、このルーフパネルのフランジ1cとサイドメンバアウタパネルのフランジ6cとの接合の際に、鋼製サイドパネルを構成する、他のルーフサイドレール8の車幅方向の内側に設けたフランジ8cや、サイドメンバインナパネル7の車幅方向の内側に設けたフランジ7cには凹状段部を設けずに、平坦な従来の態様のままで、これらを一体に接合した態様を示している。
【0086】
一方、図5は、ルーフサイドレール8のフランジ8cにも立壁4bを有する凹状段部4を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設けて、この凹状段部4をサイドメンバアウタパネル6の凹状段部3に下側から各々重ね合せた態様を示している。
【0087】
また、図7は、サイドメンバインナパネル7のフランジ7cにも、立壁9bを有する凹状段部9を、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設けて、この凹状段部9を、サイドメンバアウタパネル6の凹状段部3に、ルーフサイドレール8側の凹状段部4とともに、下側から各々重ね合せた態様を示している。
【0088】
これらの凹状段部4、9の形状は、図5、図7に示すように、前記した凹状段部2、3と同じく、前記各フランジ8cや7cの車体上下方向の下方に向かって凹む段差あるいは凹みである。そして、車幅方向の断面形状において、前記した凹状段部2、3と同じく、車幅方向の外側(外方側)に、段差としての各々立壁4a、9aを有し、この立壁4a、9aから車幅方向の内側(内方側)に向かって横方向に延在する底部4c、9cを有する。
【0089】
そして、図5の凹状段部4のように、これらの凹状段部4、9が、底部4c、9cから上方に向かって立ち上がる車幅方向の内側(内方側)の立壁4b、9bを有する、車幅方向の矩形断面形状を有しても良い。また、図7のように、これらの凹状段部4、9が、これら車幅方向の内側(内方側)の立壁4b、9bを有さなくても良い。
【0090】
総じて、これらの凹状段部4、9の形状や、各フランジ8c、7cに各々設ける要領は、前記したサイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3と同じとする。これら凹状段部4、9は、その立壁4a、9aにおいて、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、凹状段部3の立壁3aの外側から支持しても良い。
【0091】
ただ、これら凹状段部4、9は、サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3と違って、必ずしも、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、凹状段部3の立壁3aの外側から支持しなくても良い。但し、その場合でも、これら凹状段部4、9をサイドメンバアウタパネル6の凹状段部3の下側から各々重ね合せるためには、これら凹状段部4、9の大きさや形状、そして設けるフランジ位置は、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを凹状段部3の立壁3aの外側から支持する場合と同様に、サイドメンバアウタパネル6のフランジ6cに設ける凹状段部3に対応させる必要がある。
【0092】
図5、図7に示すように、ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との平坦なフランジ1cと6c同士を重ね合わせて接合する際に、同時に、ルーフサイドレール8のフランジ8cやサイドメンバインナパネル7のフランジ7cを重ね合わせて、これらの凹状段部4、9も、ルーフパネル1とサイドメンバアウタパネル6との凹状段部2、3に、選択的に重ね合わせる。そして、これらの凹状段部4、9によって、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3を、車体上下方向の下側からであって、車幅方向の外側より支持した上で、前記した樹脂などの接合手段にて、互いのフランジ同士を一体に接合する。
【0093】
凹状段部のその他の効果:
以上のような本発明の互いに重なり合う凹状段部は、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、鋼製サイドパネルのサイドメンバアウタパネルのフランジとの剛性を大きく向上させる。この剛性向上は、前記熱荷重やズレ変形の大きさ自体を低減する効果もあり、薄板からなる両パネルの、成形後の車体組み立て工程への搬送時や組み立て時の座屈変形を防止する効果もある。また、アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジよりも内側にあるルーフパネル意匠面1aの剛性、あるいは局部的な変形抵抗を高める効果もある。この結果、ルーフパネル意匠面1aの、前記膨張変形による上下方向の変形を抑制することができ、ルーフパネルの意匠性を保持する効果もある。
【0094】
更に、本発明のような、互いに重なり合う凹状段部は、従来の平坦なフランジ同士を接合する場合に比して、アルミニウム合金製ルーフパネルと鋼製サイドパネルとの接合強度を大きく増加させる。また、この凹状段部を設ける互いのフランジは自動車上部車体構造の構成部材の取付部であり、意匠面ではないため、意匠性は不要である。そして、この凹状段部は、これらフランジにおける自動車上部車体構造の構成部材との取付部を確保した上で設けることができ、ルーフパネルの取り付けに与える不都合は何もない。
【0095】
また、このような凹状段部は前記したような大きさや深さであり、特に大きく、あるいは特に深く設ける必要はなく、互いのフランジのあるいは全体形状のプレス成形時の一貫として、一体に、簡便に設けることが可能である。したがって、このような凹状段部は、その狙いとするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け用フランジに負荷される熱荷重の低減に対して効果的というだけでなく、副次的な問題が発生することなく簡便に設けることができる点で、著しく実用的である。
【0096】
段部(段差)の比較例:
前記特許文献9、10のように、ルーフパネルフランジに上方に凸な凸型ビードを幾ら設けても、フランジの剛性が多少向上するのみである。すなわち、本発明のサイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3とルーフパネル1側の凹状段部2とが共同で達成するような、前記熱荷重やズレ変形を、ルーフパネル1側へ大きな反力を与えることなく弾力的あるいは弾性的に受け止めて吸収する作用効果は達成できない。
【0097】
また、図8は凹状段部の比較例であり、凹状段部2、3において、各フランジの車幅方向の外側の立壁2a、3aが無く、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2bが、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁(壁面)3bとともに、車幅方向内側に存在しているのみである。このような態様では、サイドメンバアウタパネル6側の凹状段部3における立壁3bは、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2bを、外側から支持しているものの、その支持方向は車幅方向内側からであって、本発明で規定している、車幅方向外側からの支持ができていない。このため、ルーフパネル1側の凹状段部2における立壁2aを、ルーフパネル1側からの熱荷重の車幅方向外側への負荷方向あるいはルーフパネル1の熱膨張によるズレ変形の車幅方向外側への変形方向に対して、相対する方向、好ましくは正対する方向から支持する効果がない。
【0098】
素材アルミニウム合金板:
本発明で用いるルーフパネル用の素材アルミニウム合金板は、通常、板の製造がしやすく、ルーフパネルへの成形が容易で、強度にも優れたAA乃至JIS 3000系、5000系、6000系等のアルミニウム合金が適宜選択して用いられる。特に、6000系アルミニウム合金は、自動車車体の塗装焼き付け処理条件での人工時効硬化性を有する。このため、軽量化のために薄肉化されたルーフパネルとして必要な強度 (耐力) を得るのに合金元素量が少なくて済み、そのスクラップを元の6000系アルミニウム合金の溶解原料としてリサイクルできる利点がある。
【0099】
これらアルミニウム合金材は、冷間圧延に溶体化処理および焼き入れ処理 (質別記号T4) やその後の時効処理(質別記号T6) されて、ルーフの成形素材として用いられる。アルミニウム合金板の厚さtは、軽量化のためにも2.0mm以下の1〜2mmの範囲から選択されることが好ましい。
【0100】
素材鋼材:
本発明で用いる鋼製サイドパネル用の素材鋼板は、従来からこれらに汎用される通常の鋼板、その表面に亜鉛系などの被覆層がめっきなどで被覆されている鋼板、鋼種として、軟鋼、高張力鋼(ハイテン)などの種々の鋼板が適用される。これら鋼板の厚さtも0.5〜3.0mmから選択されることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、熱荷重が生じた場合のルーフパネルのフランジの樹脂接合部の破損や、口開き変形やズレ変形などの変形を、総合的に抑制した、アルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造を提供することができる。このため、本発明は、上部の軽量化を目指した自動車車体構造に好適であり、上部車体構造の軽量化を促進でき、自動車の種類に依らず、共通して、走行安定性や操縦性を増すことができ、また、アルミニウム合金材の用途も一層拡大することができる。
【符号の説明】
【0102】
1:ルーフパネル、1b: 立壁、1c: フランジ平坦部分 (凹状段部間の間隔部分) 、
2、3、4、9: 凹状段部、2a、3a、4a、9a: 立壁、2b、3b: 立壁、2c、3c、4c、9c:底部、5:自動車車体、6:サイドメンバアウタ、7:サイドメンバインナ、8:ルーフサイドレール、10: 接合部、32: ルーフパネルリインフォースメント、33: ウインドシールドヘッダパネル、34: バックウインドウフレームアッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造であって、前記ルーフパネルの車幅方向の両端を折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成する一方、車幅方向の両側にあって前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネルの車幅方向の内側端部も折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置であって、車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、成形によって一体に各々設け、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせ、その上で互いの前記フランジ同士が接合されていることを特徴とするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項2】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の高さと、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁の高さとが、前記ルーフパネルの板厚の1.2倍〜3.0倍の範囲の高さを有する請求項1に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項3】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の壁面であって、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を前記車幅方向の外側より支持する壁面の延在方向が、自動車車体の焼き付け塗装工程における前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、正対する方向である請求項1または2に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項4】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁と前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁とを互いに接触させた状態で、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせた請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項5】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部と、前記ルーフパネル側の凹状段部とが、各々の前記フランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されているか、前記フランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項6】
前記アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、前記サイドメンバアウタパネルのフランジとが熱硬化型接着樹脂によって接合されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項7】
前記サイドメンバアウタパネルに加えて、前記鋼製サイドパネルを構成するルーフサイドレールの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、あるいは、更に前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバインナパネルの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設け、これらの凹状段部を前記サイドメンバアウタパネルの凹状段部に下側から各々重ね合せた請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項1】
自動車車体におけるアルミニウム合金製ルーフパネルの鋼製サイドパネルへの取り付け構造であって、前記ルーフパネルの車幅方向の両端を折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成する一方、車幅方向の両側にあって前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバアウタパネルの車幅方向の内側端部も折り曲げて、立壁とこれに続く平坦なフランジとからなる側縁部を構成し、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、これら互いの凹状段部同士が相対応する各位置であって、車幅方向と車体前後方向とに亘って延在するよう、成形によって一体に各々設け、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁が前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を車幅方向の外側より支持するよう、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせ、その上で互いの前記フランジ同士が接合されていることを特徴とするアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項2】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の高さと、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁の高さとが、前記ルーフパネルの板厚の1.2倍〜3.0倍の範囲の高さを有する請求項1に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項3】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁の壁面であって、前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁を前記車幅方向の外側より支持する壁面の延在方向が、自動車車体の焼き付け塗装工程における前記ルーフパネルからの熱荷重の負荷方向あるいは前記ルーフパネルの熱膨張によるズレ変形の方向に対して、正対する方向である請求項1または2に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項4】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部における前記立壁と前記ルーフパネル側の凹状段部における前記立壁とを互いに接触させた状態で、前記ルーフパネル側の凹状段部を相対応する前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に重ね合わせた請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項5】
前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部と、前記ルーフパネル側の凹状段部とが、各々の前記フランジの車体前後方向に亘って間隔をあけて複数個配置されているか、前記フランジの車体前後方向に亘って一体に延在する樋状に形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項6】
前記アルミニウム合金製ルーフパネルのフランジと、前記サイドメンバアウタパネルのフランジとが熱硬化型接着樹脂によって接合されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【請求項7】
前記サイドメンバアウタパネルに加えて、前記鋼製サイドパネルを構成するルーフサイドレールの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、あるいは、更に前記鋼製サイドパネルを構成するサイドメンバインナパネルの車幅方向の内側に設けた平坦なフランジにも、これら互いの前記フランジに、立壁を有する凹状段部を、前記サイドメンバアウタパネル側の凹状段部に相対応する各位置と大きさに、成形によって一体に設け、これらの凹状段部を前記サイドメンバアウタパネルの凹状段部に下側から各々重ね合せた請求項1乃至6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金製ルーフパネルの取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【公開番号】特開2012−214112(P2012−214112A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80431(P2011−80431)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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