説明

自動車充電装置

【課題】冷却装置を自動車充電装置に組み込む必要がなく、しかも自動車充電装置内部の温度が上昇した場合にもブレーカがトリップして充電停止となることのない自動車充電装置を提供する。
【解決手段】充電ケーブル3を介して充電自動車2に充電を行う自動車充電装置1であり、負荷側の過電流または漏電電流を検出したときに充電電路を遮断するブレーカ7と、自動車充電装置の内部温度を検出する温度センサ20と、充電制御部10とを備える。充電制御部10は、充電自動車に許容電流値の情報をパルス信号によって出力するパルス出力回路12と、計測された内部温度に応じた許容電流値を判定する判定回路22と、許容電流値に対応してパルス出力を変化させるパルス幅変更手段(電流制限手段)15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電ケーブルを介して充電自動車に充電を行う自動車充電装置に関するものであり、特に充電自動車と自動車充電装置との間で通信を行って充電を制御する機能を備えた自動車充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今後急速な普及が予想される電気自動車やプラグインハイブリッドカー等の充電システムについては、米国のSAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)と日本のJEVA(現JARI日本自動車研究所)が標準システムを定めている。この標準システム中にも複数のモードが設定されており、例えば自動車充電装置については地上側の設備として充電ケーブルと漏電遮断手段のみが要求されるモード(モード1)のほか、地上側の設備としてさらに車両側の充電制御部に対してパイロット回路信号(CPLT)を送るコントロールパイロット回路を含む制御手段が要求されるモード(モード3)がある。モード3の自動車充電装置は充電自動車との間で上記制御をパルス信号による通信により行い、充電自動車に充電コネクタを接続後、充電自動車への充電が自動的に開始される。同時に自動車充電装置は、その仕様に応じた許容電流値の情報を充電自動車に与え、充電自動車は許容電流値に応じた範囲内で給電を行う。充電開始直後は定電流にて充電(特許文献1)し、充電満了が近くなると定電圧による充電が行われて充電が完了する方式が取られている。
【0003】
充電時における充電電流の許容値は、自動車充電装置に設置されている充電ケーブルの容量等により定められている。このために自動車充電装置には充電電路の電流値を検出し、許容値を超える過大な電流が流れたときに充電電路を遮断するブレーカを設け、充電ケーブル等の損傷を防止している。しかし、自動車充電装置の設置環境によっては外部の日射等により自動車充電装置内部の温度が想定温度よりも上昇するおそれがあり、その場合にはブレーカのバイメタルの遮断特性が温度により変化し、定格電流未満であってもブレーカがトリップして充電が中断されることがある。
【0004】
この対策として冷却装置を自動車充電装置に組み込むことが考えられるが、コストが掛かるうえ、実際に自動車充電装置を設置してみないと日射や路面からの照り返しの影響を予測し難く、適切な冷却装置の選定が難しいという問題がある。また実際に自動車充電装置を設置した後にそれに必要な冷却装置を後付けすることも可能であるが、設置工事が必要となり、しかも外観が見苦しくなるおそれがある。このほか、自動車充電装置の内部の通気を良くして放熱性を高めることも考えられるが、自動車充電装置は内部に電子基板等が設置されているために高度な防水機能が求められ、内部の通気を確保することは容易ではない。しかも自動車充電装置は通常の配電盤に比較して筺体が小さく、熱の影響を受け易いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−70838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決して、自動車充電装置内部の温度が上昇した場合にもブレーカがトリップして充電が中断されることのない自動車充電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、充電ケーブルを介して充電自動車に充電を行う自動車充電装置であって、負荷側の過電流または漏電電流を検出したときに充電電路を遮断するブレーカと、自動車充電装置の内部温度を検出する温度センサと、充電制御部とを備え、この充電制御部は、充電自動車に許容電流値の情報をパルス信号によって出力するパルス出力回路と、計測された内部温度に応じた許容電流値を判定する判定回路と、許容電流値に対応してパルス出力を変化させる電流制限手段とを備えたものであることを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、電流制限手段は、許容電流値に応じてパルスのデューティ比(デューティ・サイクル)を変更する機能を備えたものとすることができる。また請求項3のように、判定回路は、計測された内部温度が所定値以下になれば、電流制限手段によってデューティ比の変調を初期値に回復させるものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動車充電装置は、自動車充電装置の内部温度を温度センサにより検出し、計測された内部温度に応じた許容電流値を判定し、充電電流の制限を行う。このため自動車充電装置内部の温度が上昇した場合にはそれに応じて電流許容値を下げて充電自動車側に通信し、充電自動車が充電電流を低下させることにより、ブレーカのトリップを防止することができる。このため充電時間が延長されることがあるとしても、充電が中断されるトラブルを防止することができる。このため本発明の自動車充電装置は冷却装置を組み込む必要がなく、内部の通気を確保する必要もないので防水性が低下することもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】要部のブロック図である。
【図3】電流制限の要否判定のフロー図である。
【図4】充電制御信号の電圧変化を示すグラフである。
【図5】充電制御信号のデューティ比の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施形態を示すブロック図であり、破線で囲んだ1が自動車充電装置、2が充電自動車、3が充電ケーブル、4は充電自動車2の車載電池、5は充電自動車2の車両側制御回路である。この実施形態では充電自動車2はモード2として図示されている。交流電源6から供給される電力は、ブレーカ7を備えた充電電路8から充電ケーブル3を介して充電自動車2の車載電池4に供給され充電を行う。ブレーカ7は負荷側の過電流または漏電電流を検出したときに充電電路を遮断する漏電遮断器(ELB)である。この充電電路8には通電をオンオフするためのリレー(電磁接触器)9が設けられており、以下に説明する充電制御部10により充電電流のオンオフが制御される。なお11は交流を直流に変換して充電制御部10に直流電源を供給する電源回路である。
【0012】
まず本発明の前提となる自動車充電装置1と充電自動車2との間の充電制御信号のやり取りについて説明する。
【0013】
充電制御部10はパルス出力回路12を備え、車両側制御回路5との間で充電制御信号(CPLT)をやり取りする。パルス出力回路12は初期値として予め定められたデューティ比(パルス幅)の充電制御信号を発振する。充電制御信号のデューティ比の初期値は充電ケーブル3の種類等によって予め定められている。
【0014】
充電ケーブル3を自動車に接続していない状態における充電制御端子13の電圧は、図4に示すように12Vに調整されているが、充電ケーブル3を充電自動車2に接続すると車両側制御回路5に内蔵されている抵抗によって分圧され、充電制御端子13の電圧は9Vに低下する。この電圧変化は、車両側制御回路5を搭載していないモード1の充電自動車の場合には発生しないので、充電自動車のモード識別が可能となる。
【0015】
充電制御部10がモード2の充電自動車であると識別したときには、パルス出力回路12から発振される電圧は9Vに調整され、充電自動車2側に9Vの充電制御信号が入力されると、車両側制御回路5に内蔵された充電許可スイッチがオンとなる。その結果、充電制御信号の電圧は車両側制御回路5に内蔵されている別の抵抗によって分圧されて6V発振となり、受電準備完了となる。この状態において充電制御部10はリレー5にオン信号を出力し、充電が開始される。なおパルスの周波数はスタンドにより異なるが、電圧やデューティ比は規格化されている。
【0016】
上記した充電制御信号のデューティ比(パルス幅)は、充電制御部10のパルス幅変更手段15によって変更可能である。デューティ比(パルス幅/パルス周期)が大きいほど大きな充電電流が供給可能であることを意味する。このため充電自動車2の車両側制御回路5は、自動車充電装置1から出力される充電制御信号のデューティ比を読み取り、デューティ比に対応する充電電流の範囲内で、搭載した蓄電池への充電電流を制御する。換言すれば、充電自動車2は充電ケーブル3を介して自動車充電装置1との間で通信される充電制御信号のデューティ比が大きい自動車充電装置1に対しては充電電流の最大値を大きな電流値として充電を制御することができるが、デューティ比が小さい自動車充電装置1に対しては、充電電流の最大値は小さな電流値として充電を制御することとなる。このようにして、充電制御信号のデューティ比により自動車充電装置1の許容電流値の情報が充電自動車2側に送られる。
【0017】
車両側制御回路5は、この許容電流値の範囲内で充電が行われるように充電電流を制御する。車両側制御回路5は例えば1分程度の一定時間間隔でデューティ比を検知し、充電電流を制御する。また充電制御部10は充電電路8を流れる電流値を検出するCT16を備えており、所定値以上の電流を検出しないときにはリレー5をオフとして充電を停止する。なお、操作者が充電ケーブル3と充電自動車側の充電コネクタとの間のロックを解除した場合にはスイッチでロック解除を検出し、充電制御端子13の電圧を0Vとして充電を停止させる。
【0018】
以下に本発明の特徴的部分を説明する。
図1、図2に示すように、本発明の自動車充電装置1の内部には、温度センサ20が設けられている。この温度センサ20はブレーカ7の近傍またはブレーカ7の内部に配置しておくことが好ましい。計測された内部温度は温度入力回路21によりデジタル信号に変換されて判定回路22に入力される。判定回路22は計測された内部温度から許容電流値を判定し、その値に対応してパルス出力回路12に制御信号を出してパルス出力を変化させる。この部分の回路構成は図2に示す通りである。また判断のフローは図3に示す通りである。
【0019】
具体的には、判定回路22は計測された内部温度が所定温度を超えた場合には、充電制御信号のデューティ比を変調して許容電流値を低減させる。この情報は充電自動車2に伝達され、車両側制御回路5は許容された充電電流の範囲内で搭載した蓄電池への充電電流を制御する。これにより、充電自動車に供給される電流値が低減され、自動車充電装置の内部温度が低下する。また内部温度が所定値以下になれば、デューティ比の変調を電流制限手段によって回復させ、再び初期値に対して100%の充電電流で充電を可能とする。
【0020】
例えば、65℃未満の場合には、デューティ比は変調せず、初期値に対して100%の充電電流を供給できるものとする。自動車充電装置の内部温度が第1の閾値である65℃を超えた場合には、充電電流が初期値に対して80%に制限されるようなデューティ比に変調する。これにより、充電自動車への供給電流が制限され自動車充電装置の内部温度が低下する。自動車充電装置の内部温度が60℃未満となれば、デューティ比の変調を回復して、再び初期値に対して100%の充電電流を供給できるようなデューティ比とする。しかしデューティ比に変調によって充電電流を制限した場合であっても、自動車充電装置の内部温度が上昇して、第2の閾値である75℃超えた場合には、さらにデューティ比を変調して、初期値に対して60%の充電電流に制限するものとする。また、さらに温度が上昇する場合には、第3の閾値を設定してデューティ比を変調してもよい。この様子は例えば図5に示すとおりである。このようにパルス幅変更手段15が電流制限手段として機能している。
【0021】
なお、このような初期値に対する調整比率は設置環境により異なるため、設定手段を別途設けることが好ましく、通信ネットワークにより設定可能とすることが好ましい。また初期値に対する調整比率は内部温度のほかに、外気温や使用頻度を加味して設定することが好ましい。使用頻度等を記録手段に記録すれば、調整比率設定の判断材料とすることができる。このほか模擬回路を用い、実際の使用環境での温度による遮断状況を検証可能な試験回路を設置することもできる。
【0022】
以上に説明したように、本発明の自動車充電装置は冷却装置を自動車充電装置に組み込む必要がなく、しかも自動車充電装置内部の温度が上昇した場合には充電電流を制限するので、ブレーカがトリップして充電停止となることがない利点がある。
【符号の説明】
【0023】
1 自動車充電装置
2 充電自動車
3 充電ケーブル
4 車載電池
5 車両側制御回路
6 交流電源
7 ブレーカ
8 充電電路
9 リレー
10 充電制御部
11 電源回路
12 パルス出力回路
13 充電制御端子
15 パルス幅変更手段
16 CT
20 温度センサ
21 温度入力回路
22 判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ケーブルを介して充電自動車に充電を行う自動車充電装置であって、
負荷側の過電流または漏電電流を検出したときに充電電路を遮断するブレーカと、
自動車充電装置の内部温度を検出する温度センサと、
充電制御部とを備え、
この充電制御部は、充電自動車に許容電流値の情報をパルス信号によって出力するパルス出力回路と、計測された内部温度に応じた許容電流値を判定する判定回路と、許容電流値に対応してパルス出力を変化させる電流制限手段とを備えたものであることを特徴とする自動車充電装置。
【請求項2】
電流制限手段は、許容電流値に応じてパルスのデューティ比を変更する機能を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の自動車充電装置。
【請求項3】
判定回路は、計測された内部温度が所定値以下になれば、電流制限手段によってデューティ比の変調を初期値に回復させるものであることを特徴とする請求項1記載の自動車充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−60778(P2012−60778A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201614(P2010−201614)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】