説明

自動車用ウィンドモール

【課題】リップ片の先端が窓枠周壁から突出することによる美観の低下や自動車走行時の風切り音発生を防ぐことができ、さらには、ウィンドモールの波打ちによる美観の低下や、ウィンドガラスのコーナー部におけるウィンドガラスの円弧状の縁とウィンドモールのピン角状接合部間で生じる違和感を抑えることができるウィンドモールを目的とする。
【解決手段】ウィンドガラス内面G1の縁近傍G3に貼着される本体部11と、本体部11の窓枠周壁側側面16に突設されたリップ片19とを有し、リップ片19の根元19bを本体部11のウィンドガラス貼着面15よりも低い位置に設けると共に、ウィンドガラス貼着面15と窓枠周壁側側面16の交差する角部17を略R形状に面取りした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウィンドモールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントウィンドガラス等の周囲にはウィンドガラスの縁と車体の窓枠の周壁間の隙をシールするためにウィンドモールが装着されている。また近年においては、図5及びその6−6断面を示す図6のように、ウィンドガラスGの外面G2の縁G4に被さらない、いわゆる意匠部レスタイプのウィンドモール80が用いられるようになってきた。符号Aは前記ウィンドガラスGを車体の窓枠Fに固定する接着剤、F1は窓枠Fの周壁、F2は窓枠Fのウィンドガラス取付面である。
【0003】
前記ウィンドモール80はプラスチックあるいはゴム等の変形可能な合成樹脂の押出成形品からなり、前記ウィンドガラスの内面G1の縁近傍G3に貼着される本体部81と、前記本体部81の窓枠周壁側側面83に前記本体部81のウィンドガラス貼着面85と同一高さで突設されたリップ片89を備える。
【0004】
前記ウィンドモール80は、前記ウィンドガラス貼着面85に設けられた両面接着テープなどからなる貼着材Bにより、前記ウィンドガラスの内面G1の縁近傍G3に貼着され、その後、前記ウィンドガラスGと共に車体の窓枠Fに組み付けられる。これにより、前記リップ片89が前記窓枠Fの周壁F1に圧接し、前記ウィンドガラスGの縁と窓枠の周壁F1との間の隙Sをシールする。
【0005】
しかし、従来の意匠部レスタイプのウィンドモール80にあっては、ウィンドガラスGの組み付け時のバラツキや、前記窓枠Fの組み立て時のバラツキなどにより、前記ウィンドガラスGの縁と窓枠の周壁F1との間の隙Sが狭くなって、図7に示すように、前記リップ片89の先端89aが窓枠の周壁F1から外方へ突出して、見栄えの低下を生じたり、自動車走行時にリップ片89による風切り音を生じたりするおそれがある。また、前記隙間Sのバラツキを見越してリップ片89の長さが定められるため、前記リップ片89を短く形成して前記窓枠の周壁F1から前記リップ片の先端89aが突出するのを防ぐこともできなかった。
【0006】
そこで、本発明者は、後に詳述する本発明において、図8に示すウィンドモール90のように、リップ片96の根元を本体部91のウィンドガラス貼着面92に対して低くすることにより、前記リップ片96の先端96aが窓枠の周壁から外方へ突出する前記不具合を解消したのである。
【0007】
しかし、前記リップ片96の根元を本体部91のウィンドガラス貼着面92に対して低くした場合、ウィンドモール90を前記ウィンドガラスの内面G1の縁近傍G3に貼着する際に、貼着作業のバラツキ等により、ウィンドモール90がウィンドガラスGの外形線Lに対して僅かながら波打つことがあり、その波打ちがウィンドモール90の本体部91におけるウィンドガラス貼着面92と窓枠周壁側側面93との交差する角部94で目立ち、美観を損なう場合があることが判明した。
【0008】
さらに、前記ウィンドモール90は、図9及び図10に示すように、ウィンドガラスGのコーナー部G5の裏面に貼着される部分では、前記ウィンドモール90が長さ方向Kに対して斜めに切断され、その切断面を互いに突き合わせて溶着することによりウィンドモール90がピン角状に接合されている。符号97はピン角状接合部である。しかし、ウィンドガラスGのコーナー部G5は縁が円弧状に形成されているため、ウィンドモール90の本体部91におけるピン角91aが実際以上に強調され、ウィンドガラスGのコーナー部G5における円弧状の縁との間で違和感を生じやすいことが判明した。
【0009】
【特許文献1】特開2004−66983号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、リップ片の先端が窓枠周壁から突出することによる美観の低下や自動車走行時の風切り音発生を防ぐことのできるウィンドモールの提供を目的とする。さらには、ウィンドガラスへのウィンドモール貼着時等に生じるウィンドモールの波打ちによる美観の低下や、ウィンドガラスのコーナー部におけるウィンドガラスの円弧状の縁とウィンドモールのピン角状接合部間で生じる違和感を抑えることができるウィンドモールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ウィンドガラスの内面の縁近傍に貼着されて前記ウィンドガラスの縁と車体の窓枠の周壁間をシールする自動車用ウィンドモールにおいて、前記ウィンドガラスの内面の縁近傍に貼着される本体部と、前記本体部における窓枠周壁側側面に突設されたリップ片とを有し、前記リップ片の根元が前記本体部のウィンドガラス貼着面よりも低い位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記本体部におけるウィンドガラス貼着面と窓枠周壁側側面の交差する角部が略R形状に面取りされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明のウィンドモールによれば、リップ片の根元が本体部のウィンドガラス貼着面よりも低い位置に設けられているため、ウィンドガラスの組み付け時のバラツキや、窓枠の組み立て時のバラツキなどにより、ウィンドガラスの縁と窓枠の周壁との間の隙が狭くなっても、リップ片の先端が窓枠の周壁から外方へ突出するのを防止することができ、ウィンドガラスの縁において美観を向上させ、また、自動車走行時にリップ片による風切り音の発生を抑えることができる。
【0014】
請求項2の発明のウィンドモールによれば、本体部におけるウィンドガラス貼着面と窓枠周壁側側面との交差する角部が略R形状に面取りされているため、前記ウィンドガラス貼着面と窓枠周壁側側面との交差による角部が目立たず、ウィンドガラスへの貼着作業のバラツキ等により、ウィンドモールがウィンドガラスの外形線に対して僅かながら波打つことがあっても、その波打ちがウィンドモールの前記角部で目立ち難く、美観の低下を抑えることができる。
【0015】
さらに、請求項2の発明のウィンドモールによれば、ピン角状接合部付近においても本体部のウィンドガラス貼着面と窓枠周壁側側面との交差する角部が略R形状に面取りされているため、ピン角状接合部のピン角が強調され難く、ウィンドガラスのコーナー部における円弧状の縁とウィンドモールのピン角状接合部間で違和感を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るウィンドモールの断面図、図2は同実施形態に係るウィンドモールをウィンドガラスに貼着した状態の部分斜視図、図3は同実施形態に係るウィンドモールのピン角状接合部付近とウィンドガラスのコーナー部付近を示す部分斜視図、図4は同実施形態に係るウィンドモールの組み付け状態を示す断面図である。
【0017】
図1に示すウィンドモール10は、意匠部レスタイプからなり、図2に示すように、ウィンドガラスGの内面G1の縁近傍G3に両面接着テープ等の貼着材Bで貼着された後、図4に示すように、前記ウィンドガラスGと共に車体の窓枠Fに組み付けられ、その組み付けによってウィンドガラスGの周縁と車体の窓枠Fの周壁F1との隙間Sをシールするものである。また、前記ウィンドモール10は、図3に示すように、前記ウィンドガラスGのコーナー部G5の裏面に貼着される部分では、斜めに切断されてピン角状に接合されている。符号21はウィンドモール10のピン角状接合部である。前記窓枠Fへの組み付け時、前記ウィンドガラスの内面G1の縁近傍G3と対向する前記窓枠Fのウィンドガラス取付面F2には、ウィンドガラス固定用の接着剤Aが予め設けられる。
【0018】
前記ウィンドモール10は、合成樹脂等の押出成形品からなり、前記ウィンドガラスの内面G1の縁近傍G3に貼着される本体部11と、前記本体部11における窓枠周壁側側面16に突設されて前記組み付け時に車体の窓枠Fの周壁F1に圧接するリップ片19とを備える。
【0019】
前記本体部11は、前記ウィンドガラスの内面G1と対向する側にウィンドガラス貼着面15を有する頭部12と、前記頭部12の裏面側(前記ウィンドガラス貼着面15とは反対側)に形成された脚部13とを有する。本実施形態の脚部13は、前記頭部12における窓枠周壁側の縁から略直角に形成され、前記頭部12と前記脚部13により前記本体部11が略逆L字状の断面形状に形成されている。なお、前記ウィンドガラス貼着面15に設けられる両面接着テープ等からなる貼着材Bは、通常、前記ウィンドモール10の成形後に設けられる。
【0020】
前記本体部11は、前記ウィンドガラス貼着面15と窓枠周壁側側面16との交差する角部17が略R形状に面取りされている。前記略R形状は半径1〜3mm程度が好ましい。略R形状の半径が小さ過ぎると、ウィンドガラスGの内面G1の縁近傍G3にウィンドモール10を貼着した際に、前記背景技術の欄で示したウィンドモールの波打ちが目立ち易くなると共にウィンドガラスGのコーナー部G5とウィンドモール10のピン角状接合部21間で違和感が大きくなる。一方、前記略R形状の半径が大き過ぎると、前記ウィンドモール10のウィンドガラス貼着面15における平坦部分が少なくなって、ウィンドガラスGへの貼着性が損なわれるようになる。
【0021】
前記リップ片19は、弾性を有するものであって、前記本体部11のウィンドガラス貼着面15よりもリップ片19の根元19bが低い位置に設けられている。また、前記リップ片19の根元19bの位置は、前記頭部12と前記脚部13の境界付近が好ましい。すなわち、前記ウィンドガラス貼着面15から前記リップ片19の根元19bまでの距離(段差)yが、前記頭部12の厚みx程度とされるのが好ましい。前記ウィンドガラス貼着面15から前記リップ片19の根元19bまでの距離(段差)yが小さ過ぎる場合、前記ウィンドガラスGの組み付け時のバラツキや、前記窓枠Fの組み立て時のバラツキなどにより、前記ウィンドガラスGの縁と窓枠の周壁F1との間の隙Sが狭くなった際に、前記リップ片19の先端19aが窓枠の周壁F1から外方へ突出するようになって、見栄えの低下を生じたり、自動車走行時にリップ片19による風切り音を生じたりするようになる。一方、前記ウィンドガラス貼着面15から前記リップ片19の根元19bまでの距離(段差)yが大きくされ、前記脚部13の先端寄りに前記リップ片19の根元19bが位置する場合、前記ウィンドモール10が窓枠Fに組み付けられた際に、前記リップ片19が窓枠周壁F2と当接して屈曲することにより生じるリップ片19の弾性反発力が、前記ウィンドモール10を傾けるモーメントとして働くため、前記ウィンドモール10が傾いたり、前記ウィンドガラスGから剥離したりし易くなる。
【0022】
前記ウィンドモール10は、前記リップ片19の根元19bが本体部11のウィンドガラス貼着面15よりも低い位置に設けられているため、ウィンドガラスGの組み付け時のバラツキや、窓枠Fの組み立て時のバラツキなどにより、ウィンドガラスGの縁と窓枠の周壁F1との間の隙Sが狭くなっても、前記リップ片19の先端19aが窓枠の周壁F1から外方へ突出するのを防止することができ、ウィンドガラスGの縁において美観を向上させることができると共に、自動車走行時のリップ片による風切り音発生を抑えることができる。
【0023】
また、前記ウィンドモール10は、前記本体部11におけるウィンドガラス貼着面15と窓枠周壁側側面16との交差する角部17が略R形状に面取りされているため、前記ウィンドガラス貼着面15と窓枠周壁側側面16との交差による角部17が目立たず、前記ウィンドガラスGへの貼着作業のバラツキ等により、前記ウィンドモール10がウィンドガラスGの外形線Lに対して僅かながら波打つことがあっても、その波打ちがウィンドモールの前記角部17で目立ち難く、美観の低下を抑えることができる。なお、前記角部17における略R形状の面取りは、円弧によるものに限られず、複数の直線で構成される多角形の外周の一部からなるものであってもよい。
【0024】
さらに、前記ウィンドモール10は、前記ピン角状接合部21付近においても本体部11のウィンドガラス貼着面15と窓枠周壁側側面16との交差する角部17が略R形状に面取りされているため、ピン角状接合部21のピン角が強調され難く、前記ウィンドガラスGのコーナー部G5における円弧状の縁とウィンドモール10のピン角状接合部21間で違和感を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るウィンドモールの断面図である。
【図2】同実施形態に係るウィンドモールをウィンドガラスに貼着した状態の部分斜視図である。
【図3】同実施形態に係るウィンドモールのピン角状接合部付近とウィンドガラスのコーナー部付近を示す部分斜視図である。
【図4】同実施形態に係るウィンドモールの組み付け状態を示す断面図である。
【図5】ウィンドモールが組み付けられた自動車の部分斜視図である。
【図6】従来のウィンドモールに関して図5の6−6断面を示す図である。
【図7】従来のウィンドモールにおけるリップ先端突出の不具合を示す断面図である。
【図8】リップ片をウィンドガラス貼着面から低く設けたウィンドモールにおける波打ちの不具合を示す部分斜視図である。
【図9】リップ片をウィンドガラス貼着面から低く設けたウィンドモールにおけるピン角状接合部付近の不具合を示す平面図及びそのA−A断面図である。
【図10】ピン角状接合部付近の不具合を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 ウィンドモール
11 本体部
12 頭部
13 脚部
15 ウィンドガラス貼着面
16 本体部における窓枠周壁側側面
17 ウィンドガラス貼着面と窓枠周壁側側面の交差する角部
19 リップ片
19a リップ片先端
19b リップ片の根元
21 ウィンドモールのピン角状接合部
F 窓枠
F1 窓枠の周壁
F2 窓枠のウィンドガラス取付面
G ウィンドガラス
G1 ウィンドガラスの内面
G2 ウィンドガラスの外面
G3 ウィンドガラスの内面の縁近傍
G4 ウィンドガラスの外面の縁
G5 ウィンドガラスのコーナー部
S ウィンドガラスの周縁と車体の窓枠の周壁との隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドガラスの内面の縁近傍に貼着されて前記ウィンドガラスの縁と車体の窓枠の周壁間をシールする自動車用ウィンドモールにおいて、
前記ウィンドガラスの内面の縁近傍に貼着される本体部(11)と、前記本体部(11)における窓枠周壁側側面(16)に突設されたリップ片(19)とを有し、
前記リップ片(19)の根元(19b)が前記本体部(11)のウィンドガラス貼着面(15)よりも低い位置に設けられていることを特徴とするウィンドモール。
【請求項2】
前記本体部(11)におけるウィンドガラス貼着面(15)と窓枠周壁側側面(16)の交差する角部(17)が略R形状に面取りされていることを特徴とする請求項1に記載のウィンドモール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−118669(P2007−118669A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310670(P2005−310670)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】