説明

自動車用ウエザーストリップ

【課題】車体側のパネル面に対するウエルト部のシール性の向上を図ったウエザーストリップを提供する。
【解決手段】ウエルト部4に中空シールリップ5を備え、ウエルト部4のうち車室外側の脚部5bの先端側に高発泡スポンジゴム製の軟質シール層11を備えている。脚部5bに止水リップ13を斜めに突出形成することでV字状空間14を形成するとともに、脚部5bおよび止水リップ13の先端面15a,13aを車体パネル1とほぼ平行な同一面上に揃えてある。V字状空間14を含んだ先端面15a,13a側に、最先端面がV字状空間14を含んだ先端面15a,13a側と略相似形状をなすように、V字状空間16とシールリップ17,18を備えた軟質シール層11を延長形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウエザーストリップ、特に車体側のラゲッジルームの開口部となるトランクリッド開口部またはバックドア(テールゲート)開口部に装着されて、開閉体であるトランクリッドまたはバックドア等と弾接して車室内外をシールする自動車用ウエザーストリップの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車のバックドアやトランクリッドと弾接して車室内外をシールすることになるウエザーストリップは、車体側のフランジ部に嵌合保持される断面略U字状のウエルト部と、そのウエルト部と一体に形成された中空シールリップ等のメインシール部を基本要素とするものであるが、上記メインシール部とは別に、ウエルト部の脚部にシール片を突設して、そのシール片をもってフランジ部の根元側でのシールを行うようにしたものがある。その代表的なものとして、例えば特許文献1の第5図に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56−9910号公報 上記特許文献1に記載のものでは、ウエルト部の一方の脚部からソリッドゴム片を斜めに突出させた上で、さらにそのソリッドゴム片の先端側からスポンジ状軟質ゴム製のシール片を延長形成し、そのシール片を車体パネルに圧接させて所定のシール性能を得るようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造では、スポンジ状軟質ゴム製のシール片の根元部のみがソリッドゴムでバックアップされているだけであるから、シール機能上最も重要なシール片の先端部側での剛性または車体パネル面に対する押付力に乏しく、いわゆるシール面圧の不足のために組み付け時の捲れ込みや折れ、あるいは波打ち等の不具合が発生しやすく、シール性向上の上でなおも課題を残している。
【0005】
特に上記シール面圧の不足のためにシール線の連続性が途切れるおそれがあるほか、車体パネル側のジョッグル結合部やペイントシール塗布部での段差に対する追従性が悪く、これらがシール性を低下させる要因となっている。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、車体側のパネル面に対するウエルト部のシール性の向上を図った自動車用ウエザーストリップの構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、一対の脚部同士を両者にまたがる連接部で接続することで断面略U字状に形成されて、車体パネルに起立形成されたフランジ部に嵌合保持されるウエルト部と、このウエルト部の連接部の外側に一体成形されたメインシール部とを備え、上記ウエルト部のうち少なくとも室外側となる一方の脚部を車体パネルに圧接させることでその車体パネルに対するウエルト部のシール機能を具備させた自動車用ウエザーストリップの構造を前提とする。
【0008】
その上で、上記ウエルト部のうち室外側となる一方の脚部の先端部外面に、ウエルト部と同じソリッド材料にて止水リップを斜めに突出形成することでその一方の脚部と止水リップとでV字状空間を形成するとともに、上記一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面をフランジ部が起立形成されたパネル面とほぼ平行な同一面上に揃えてあり、上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側に、高発泡スポンジ材料にて軟質シール層を一体に延長形成してあることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、請求項2に記載のように、上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側に、最先端面が上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側と略相似形状をなすように、軟質シール層を一体に延長形成してあるものとする。
【0010】
より望ましくは、請求項3に記載のように、上記軟質シール層の最先端面におけるV字状空間の少なくとも最深部に相当する部分は、フランジ部に対するウエルト部の正規嵌合保持状態で上記パネル面に当接しないように設定してあって、上記軟質シール層は二重シールのかたちでシール機能を発揮するようになっているものとする。
【0011】
この場合において、請求項4に記載のように、上記軟質シール層を形成する高発泡スポンジ材料の比重は例えば0.2〜0.5程度であるものとする。
【0012】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、軟質シール層は一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面でバックアップされているので、組み付け時の捲れ込みや折れ、あるいは波打ち等の不具合が発生する余地がないだけでなく、剛性または押付力ひいてはシール面圧が不足することもないので、必要十分なシール性能を確保できることになる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、軟質シール層のシール面圧を十分に確保することができるので、いわゆるシール線の途切れが発生することもなければ、パネル面側の段差追従性に優れたものとなり、シール性能が大幅に向上する。
【0014】
また、組み付け時の軟質シール層の捲れ込みや折れ、あるいは波打ち等の不具合が発生しにくいために、組付作業性も併せて良好なものとなる。
【0015】
請求項2,3に記載の発明によれば、軟質シール層がいわゆる二重シール構造のかたちとなることで、シール性能のさらなる向上がを期待できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る自動車用ウエザーストリップの第1の実施の形態を示す図で、図2の(A),(B)のa−a線に沿う拡大断面説明図。
【図2】(A),(B)共に図1に示したウエザーストリップ全体の閉ループ形状示す概略説明図。
【図3】本発明に係る自動車用ウエザーストリップの第2の実施の形態を示す図で、図1と同等部位の拡大断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係るウエザーストリップ構造により具体的な第1の実施の形態としてその断面図を示している。図2に示すように、車体側のトランクリッド開口部またはバックドア開口部には同図(A)または(B)の形態でほぼ均一断面形状のウエザーストリップ3がいわゆる閉ループ状に装着されることから、ここでは図2の(A),(B)のa−a線に沿う断面図を図1に示してある。なお、図2の(A),(B)における符号3aは接続部を示している。
【0018】
図1に示すように、車体側のトランクリッド開口部またはバックドア開口部にの周囲には車体パネル1側からフランジ部2が起立または直立形成されていて、このフランジ部2にウエザーストリップ3が装着される。ここでは、フランジ部2の右側が車室外側、同左側が車室内側となっている。
【0019】
ウエザーストリップ3は、周知のように取付基部として機能する断面略U字状のウエルト部4と、そのウエルト部4と一体に形成されたメインシール部としての中空シールリップ5とを備えていて、その中空シールリップ5に対してトランクリッドまたはバックドア等の開閉体6が弾接することで車室内外がシールされることになる。
【0020】
より具体的には、ウエルト部4は車室内外の一対の脚部5a,5b同士をその両者にまたがる連接部5cをもって接続することで断面略U字状に形成されていて、内部には金属製あるいは樹脂製の所定の芯材7を長手方向に沿って埋設してある。ウエルト部4における各脚部5a,5bの内側面にはそれぞれに一対の保持リップ8または9を突出形成してあり、ウエルト部4をフランジ部2に差し込むことでそれらの保持リップ8,9が撓みつつフランジ部2を両面から挟持し、これをもって断面略U字状のウエルト部4がフランジ部2に嵌合保持されることになる。
【0021】
なお、ウエルト部4における車室内側の脚部5aにはカバーリップ10を突出形成してある。このカバーリップ10は、例えば車室内側に装着されるフィニッシャー等の図示外のトリム部品の端末部を隠蔽または連続性を持たせる際に使用される。
【0022】
また、ウエルト部4の脚部5a,5bおよび連接部5cが例えばソリッドゴムにて形成されるのに対して、中空シールリップ5やカバーリップ10、さらには保持リップ9の先端部9aはソリッドゴムよりも軟質のスポンジゴムで形成される。
【0023】
ウエルト部4における車室外側の脚部5bの先端には、そのウエルト部4よりも肉厚を大きくしたいわゆる極太形状の軟質シール層11を一体に形成してあるとともに、車室内側の脚部5aの先端にも軟質シール層12を形成してある。ここでは、車室外側の脚部5bの先端部外面(外側面)に、脚部5bと同等の肉厚の止水リップ13を斜めに突出形成して、その車室外側の脚部5bと止水リップ13とでV字状空間14を形成してある。その上で、V字状空間14を含んだ車室外側の脚部5bおよび止水リップ13のそれぞれの先端面15a,13a側に軟質シール層11を一体に延長形成してある。
【0024】
より具体的には、軟質シール層11のうち車室外側の脚部5bの先端面15aやV字状空間14に相当する部分では、その車室外側の脚部5bの先端面15aやV字状空間14をそのまま車体パネル1側に延長形成した形状となっている一方、軟質シール層11のうち斜状のシールリップ13に相当する部分では、そのシールリップ13の斜状軸線方向に沿ってそのまま拡大しつつ延長形成した形状となっている。結果として、軟質シール層11の最先端面は、ウエルト部4側のV字状空間14を含んだ脚部5bおよび止水リップ13のそれぞれの先端面15a,13a側を車室外側に拡大したような略相似形状をなしていて、V字状空間16を挟んで二条のシールリップ17,18を並設したいわゆる二重シールリップ形状となっている。
【0025】
そして、双方の脚部5a,5bおよび止水リップ13のそれぞれの先端面15b,15a,13aは、図1のような正規組付状態において、フランジ部2が起立形成された車体パネル1側のパネル面とほぼ平行となる同一平面上に揃えてあり、それらの先端面15b,15a,13aを境界としてそれぞれの軟質シール層11または12を形成してある。これらの軟質シール層11,12は、シールリップ5やカバーリップ10を形成しているスポンジゴムよりもさらに軟質のゴム材料、例えば高発泡スポンジゴムにて形成されている。各軟質シール層11,12を形成する高発泡スポンジゴムの比重は例えば0.2〜0.5程度とする。
【0026】
これにより、後述するように車室外側の脚部5bの先端の軟質シール層11が車体パネル1側のパネル面に圧接・着座して撓み変形した場合でも、軟質シール層11側のV字状空間16が押し潰されて当該V字状空間16が完全に消失してしまうことがないように、そのV字状空間16の一部である最深部側が残されるように考慮してある。
【0027】
したがって、このように構成されたウエザーストリップ3によれば、図1に示すようにウエルト部4を車体パネル1側のフランジ部2に嵌合保持させた正規組付状態では、車室外側の脚部5bの先端に形成した軟質シール層11が車体パネル1側のパネル面に圧接・着座することになり、その軟質シール層11の撓み変形をもって所定のシール性能が確保されることになる。
【0028】
この場合において、車室外側の脚部5bの先端の軟質シール層11が撓み変形した際に、先に述べたように軟質シール層11側のV字状空間16の一部である最深部側を残すべく当該最深部が車体パネル1に当接しないように考慮してあるため、軟質シール層11はそのV字状空間16の最深部側を残した残りの部分が、車室外側の脚部5bや止水リップ13の先端面15a,13aにバックアップされながら所定のシール面圧をもっていわゆる二重シール構造のかたちで車体パネル1に圧接することになる。
【0029】
そのため、フランジ部2に対するウエザーストリップ3の取付時に、軟質シール層11の捲れ込みや折れ、あるいは波打ち等の不具合が発生することがない。しかも、必要十分なシール面圧を確保しつつ二重シールの形でシールできるため、例えば車体パネル1側に段差があったとしてもその段差に確実に追従することが可能であり、シール線の途切れ等を招くことなく確実にシールすることが可能となる。
【0030】
その上、上記のように軟質シール層11側のV字状空間16の一部である最深部側が押し潰されることなしに空間として残されるように考慮してあるため、当該空間部分が排水路として機能し、万が一その空間まで水が浸入した場合の排水性能も良好なものとなる。
【0031】
ここで、図1から明らかなように、車室外側の脚部5bの先端の軟質シール層11が車体パネル1に圧接するのに対して、車室内側の脚部5aの先端の軟質シール層12は車体パネル1に圧接しない。ただし、必要に応じて車室内側の脚部5aの先端の軟質シール層12も車体パネル1に圧接させる構造としても良い。
【0032】
また、上記第1の実施の形態では、ウエルト部4をソリッドゴムで、中空シールリップ5やカバーリップ10をスポンジゴムで、軟質シール層11,12を高発泡スポンジゴムでそれぞれ形成した場合について例示しているが、いずれの材質のものも熱可塑性エラストマー等のいわゆる樹脂系材料に置き換えることももちろん可能である。
【0033】
図3は本発明に係る自動車用ウエザーストリップの第2の実施の形態を示す図で、図1と共通する部分には同一符号を付してある。
【0034】
この第2の実施の形態では、図1と比較すると明らかなように、車室外側の脚部5bおよび止水リップ13の先端面15a,13a側に形成されるリップ状の軟質シール層21を実質的にいわゆる一重シールタイプとしたものである。
【0035】
この第2の実施の形態では、先の第1の実施の形態のような二重シール構造とはならないものの、車体パネル1に対する軟質シール層21の圧接面積をより大きく確保することが可能であり、先の第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果が得られることになる。
【符号の説明】
【0036】
1…車体パネル
2…フランジ部
3…ウエザーストリップ
4…ウエルト部
5…中空シールリップ(メインシール部)
5a…車室内側の脚部
5b…車室外側の脚部
5c…連接部
11…軟質シール層
13…止水リップ
13a…先端面
14…V字状空間
15a…先端面
16…V字状空間
17…シールリップ
18…シールリップ
21…軟質シール層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部同士を両者にまたがる連接部で接続することで断面略U字状に形成されて、車体パネルに起立形成されたフランジ部に嵌合保持されるウエルト部と、
このウエルト部の連接部の外側に一体成形されたメインシール部と、
を備え、
上記ウエルト部のうち少なくとも室外側となる一方の脚部を車体パネルに圧接させることでその車体パネルに対するウエルト部のシール機能を具備させた自動車用ウエザーストリップであって、
上記ウエルト部のうち室外側となる一方の脚部の先端部外面に、ウエルト部と同じソリッド材料にて止水リップを斜めに突出形成することでその一方の脚部と止水リップとでV字状空間を形成するとともに、
上記一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面をフランジ部が起立形成されたパネル面とほぼ平行な同一面上に揃えてあり、
上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側に、高発泡スポンジ材料にて軟質シール層を一体に延長形成してあることを特徴とする自動車用ウエザーストリップ。
【請求項2】
上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側に、最先端面が上記V字状空間を含んだ一方の脚部および止水リップのそれぞれの先端面側と略相似形状をなすように、軟質シール層を一体に延長形成してあることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウエザーストリップ。
【請求項3】
上記軟質シール層の最先端面におけるV字状空間の少なくとも最深部に相当する部分は、フランジ部に対するウエルト部の正規嵌合保持状態で上記パネル面に当接しないように設定してあって、
上記軟質シール層は二重シールのかたちでシール機能を発揮するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用ウエザーストリップ。
【請求項4】
上記軟質シール層を形成する高発泡スポンジ材料の比重は0.2〜0.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自動車用ウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−188850(P2010−188850A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34948(P2009−34948)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】