説明

自動車用シートの振動抑制装置

【課題】自動車用シートに座った乗員にかかる振動をより低減することができる自動車用シートの振動抑制装置を提供する。
【解決手段】乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサー11と、背もたれ部2及び座部3に内蔵されたエアクッション12A,12B,12C,12Dと、エアクッション12A,12B,12C,12Dのそれぞれに空気を供給する空気供給手段13,14,15A,15B,15C,15Dと、背もたれ部2及び座部3の角度を変化させる角度調整手段18A,18B,19A,19Bと、乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする背もたれ部2及び座部3の硬さと角度である最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部16と、最適パターンを記憶部16から読み出して、背もたれ部2及び座部3の硬さと角度を最適化させる制御部17を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれ部と座部からなる自動車用シートにかかる振動を抑制する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車は現代社会において欠かせないものになっているが、運転手の疲労による漫然運転で、多くの人が交通事故で亡くなっているという現状がある。
運転中の疲労の原因の一つに、運転手が長時間振動に曝されていることが挙げられる。この振動には、自動車の加速減速及び旋回によるものや、路面の凹凸によるものがあり、運転手等の乗員が受ける振動が大きいとそれだけ疲労は大きくなる。
【0003】
そこで、従来からサスペンションを制御することによって振動の軽減がなされているが、さらに乗員への負荷を低減するための自動車用シートの振動抑制装置が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
これらは、運転状況に応じて、自動車用シートに内蔵したエアクッションの硬度を調整等して乗員にかかる振動や加速度をアクティブ(能動的)に制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−90834号公報
【特許文献2】特開2008−455号公報
【特許文献3】特開2008−284949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、自動車用シートに内蔵したエアクッションの圧力を上昇及び下降することについては開示されているが、エアクッションの圧力をどの程度の圧力とするかは具体的に開示されていないため、その制御によって振動が効果的に軽減されているかは不明である。
また、特許文献2に記載の発明は、自動車の加速状態において、アクチュエータによって自動車用シートを後方に移動させ、急激な慣性力の変化を緩和させるものであるが、路面の凹凸による振動の上下方向の加速度については何ら考慮がなされていないため(段落番号(0063))、乗員にかかる振動をより低減させるためには改善の余地がある。
【0006】
また、特許文献3に記載の発明は、加速度等から自動車のロール角やピッチ角を予測して、それに基づいて自動車用シートの座部の角度を制御するものであるが、やはり路面の凹凸による振動については考慮がなされていない。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、自動車用シートに座った乗員にかかる振動をより低減することができる自動車用シートの振動抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、背もたれ部(2)と座部(3)からなる自動車用シート(1)にかかる振動を抑制する装置であって、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサー(11)と、前記背もたれ部(2)及び前記座部(3)の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)と、前記複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)のそれぞれに空気を供給する空気供給手段(13,14,15A,15B,15C,15D)と、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の硬さである最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部(16)と、前記振動センサー(11)が検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部(16)から読み出して、前記空気供給手段(13,14,15A,15B,15C,15D)を介して空気を前記複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)に供給して前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の硬さを最適化させる制御部(17)を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、背もたれ部(2)と座部(3)からなる自動車用シート(1)にかかる振動を抑制する装置であって、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサー(11)と、前記背もたれ部(2)及び前記座部(3)の両方又は一方の角度(θ,φ)を変化させる角度調整手段(18A,18B,19A,19B)と、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の角度(θ,φ)である最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部(16)と、前記振動センサー(11)が検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部(16)から読み出して、前記角度調整手段(18A,18B,19A,19B)を介して前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の角度(θ,φ)を最適化させる制御部(17)を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、背もたれ部(2)と座部(3)からなる自動車用シート(1)にかかる振動を抑制する装置であって、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサー(11)と、前記背もたれ部(2)及び前記座部(3)の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)と、前記複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)のそれぞれに空気を供給する空気供給手段(13,14,15A,15B,15C,15D)と、前記背もたれ部(2)及び前記座部(3)の両方又は一方の角度(θ,φ)を変化させる角度調整手段(18A,18B,19A,19B)と、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の硬さ及び前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の角度(θ,φ)である最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部(16)と、前記振動センサー(11)が検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部(16)から読み出して、前記空気供給手段(13,14,15A,15B,15C,15D)を介して空気を前記複数のエアクッション(12A,12B,12C,12D)に供給して前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の硬さを最適化させるとともに、前記角度調整手段(18A,18B,19A,19B)を介して前記背もたれ部(2)又は前記座部(3)の角度(θ,φ)を最適化させる制御部(17)を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、前記最適パターンは、前記自動車用シート(1)に座った乗員にかかる振動の周波数に加え、乗員の体格にも対応していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、前記振動センサー(11)は、前記自動車用シート(1)に座った乗員の頭部(H)にかかる振動の周波数を検出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、前記振動センサー(11)は、シート(1)下部の床上に設置されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の自動車用シート(1)の振動抑制装置(10)は、前記最適パターンは、仮想試験システムによって算出されたことを特徴とする。
【0015】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を振動センサーによって検出すると、制御部が背もたれ部及び座部の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッションのそれぞれに空気供給手段を介して空気を供給するので、背もたれ部又は座部の硬さを任意に設定でき、乗員にかかる振動を低減することができる。この振動センサーで検出する振動は、その発生原因によらず乗員にかかるものであるので、自動車の加速減速や旋回による振動、及び路面の凹凸による振動のいずれも低減することができる。
しかも、制御部は、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応して、振動を最小とするように背もたれ部又は座部の硬さを最適化させるので、どの周波数に対しても同じように振動を制御する場合に比べて、振動をより低減することができる。
さらに、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする背もたれ部又は座部の硬さである最適パターンが、記憶部のパターン表に予め入力されており、制御部がその最適パターンを記憶部から読み出して背もたれ部又は座部の硬さを最適化させるので、振動を検出するたびに制御部がその周波数に対応して、振動を最小とする背もたれ部又は座部の硬さを演算し、それに基づいて硬さを最適化する場合に比べ、背もたれ部又は座部の硬さの制御を高速に行うことができる。よって、乗員にかかる振動を瞬時に低減することができるので、乗員は快適で疲れ難い。
【0017】
また、請求項2に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を振動センサーによって検出すると、制御部が角度調整手段を介して背もたれ部又は座部の両方又は一方の角度を変化させるので、背もたれ部又は座部の角度を任意に設定でき、乗員にかかる振動を低減することができる。この振動センサーで検出する振動は、その発生原因によらず乗員にかかるものであるので、自動車の加速減速や旋回による振動、及び路面の凹凸による振動のいずれも低減することができる。
しかも、制御部は、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応して、振動を最小とするように背もたれ部又は座部の角度を最適化させるので、どの周波数に対しても同じように振動制御する場合に比べて、振動をより低減することができる。
さらに、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする背もたれ部又は座部の角度である最適パターンが、記憶部のパターン表に予め入力されており、制御部がその最適パターンを記憶部から読み出して背もたれ部又は座部の角度を最適化させるので、振動を検出するたびに制御部がその周波数に対応して、振動を最小とする背もたれ部又は座部の角度を演算し、それに基づいて角度を最適化する場合に比べ、背もたれ部又は座部の角度の制御を高速に行うことができる。よって、乗員にかかる振動を瞬時に低減することができるので、乗員は快適で疲れ難い。
【0018】
また、請求項3に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を振動センサーによって検出すると、制御部が、背もたれ部及び座部の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッションのそれぞれに空気供給手段を介して空気を供給するとともに、角度調整手段を介して背もたれ部又は座部の両方又は一方の角度を変化させるので、背もたれ部又は座部の硬さ及び角度を任意に設定でき、乗員にかかる振動を低減することができる。この振動センサーで検出する振動は、その発生原因によらず乗員にかかるものであるので、自動車の加速減速や旋回による振動、及び路面の凹凸による振動のいずれも低減することができる。また、背もたれ部又は座部の硬さと、背もたれ部又は座部の角度を同時に制御するので、振動抑制の効果が大きい。
しかも、制御部は、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応して、振動を最小とするように背もたれ部又は座部の硬さ及び背もたれ部又は座部の角度を最適化させるので、どの周波数に対しても同じように振動制御する場合に比べて、振動をより低減することができる。
さらに、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする背もたれ部又は座部の硬さ及び背もたれ部又は座部の角度である最適パターンが、記憶部のパターン表に予め入力されており、制御部がその最適パターンを記憶部から読み出して背もたれ部又は座部の硬さ及び背もたれ部又は座部の角度を最適化させるので、振動を検出するたびに制御部がその周波数に対応して、振動を最小とする背もたれ部又は座部の硬さ及び背もたれ部又は座部の角度を演算し、それに基づいて硬さ及び角度を最適化する場合に比べ、背もたれ部又は座部の硬さ及び背もたれ部又は座部の角度の制御を高速に行うことができる。よって、乗員にかかる振動を瞬時に低減することができるので、乗員は快適で疲れ難い。
【0019】
また、請求項4に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、最適パターンは、自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に加え、乗員の体格にも対応しているので、体格の違いにより頭部にかかる振動が異なる子供と大人では、それぞれ異なる制御を行うことができ、確実に乗員にかかる振動を軽減することができる。
【0020】
また、請求項5に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、振動センサーは、自動車用シートに座った乗員の頭部にかかる振動の周波数を検出するので、制御部によって振動を最小とするように制御される対象は、頭部にかかる振動となる。つまり、人体の各部位のうち最も振動が大きくなり易い頭部において、その振動を小さくできるので、乗員はより快適である。
【0021】
また、請求項6に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、振動センサーは、シート下部の床上に設置されているので、車体下部からシートに伝わる振動の周波数を、乗員に伝わる前に検出することができる。つまり、振動はタイヤ、車体下部、シート、乗員の順に伝わるので、振動が乗員に伝わる前に車体下部が振動した段階で振動抑制装置を作動させることができ、乗員はより快適である。
【0022】
また、請求項7に記載の自動車用シートの振動抑制装置によれば、前記最適パターンは、仮想試験システムによって算出されたので、それぞれの振動の周波数について実測して最適パターンを作成する場合に比べ、最適パターンを短時間で得ることができる。これは特に請求項4に記載の発明のように、最適パターンが振動の周波数に加え、乗員の体格にも対応している場合に顕著である。
【0023】
なお、本発明の自動車用シートの振動抑制装置のように、最適パターンを予め入力した記憶部から読み出して、背もたれ部又は座部の硬さや角度を最適化させる制御部を備える点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車用シートに座った乗員にかかる振動の検出位置を示す側面図である。
【図2】仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)による、図1における各部位での周波数ごとの上下方向加速度比(各部位の加速度/床上加速度)を示す図である。
【図3】仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)による、自動車用シートの座部の硬さを変更した後の頭部の周波数ごとの上下方向加速度比(頭部の加速度/床上加速度)を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置を示す側面図である。
【図5】自動車用シートを示す側面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置の電気構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置におけるパターン表を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置における具体的なパターン表を示す図であり、(a)は振動解析モデルにおけるばね定数及び粘性減衰係数を、(b)は最適パターンである背もたれ部及び座部のエアクッションのばね定数及び粘性減衰係数を、(c)は最適パターンである背もたれ部及び座部の角度を示す。
【図9】本発明の第一実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置の制御を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第二実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置を示す側面図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置におけるパターン表を示す図である。
【図12】本発明の第二実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置の制御を示すフローチャートである。
【図13】本発明の他の実施形態に係る自動車用シートの振動抑制装置におけるエアクッションを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
車体に路面からの振動が自動車用シート1まで伝わったときに、自動車用シート1に座った乗員の体の各部位は、どの部位も全て同じように共振するわけではないので、まず、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動のうち、どの部位における振動が最も大きいかを調べた。最も振動の影響を受ける部位の振動を抑制することにより、効果的に乗員の快適さを向上させることができる。その結果を図1乃至図3を参照して説明する。
最初に、一般的な体格の乗員を想定して、振動解析モデルを用い、ルンゲクッタ・ギル法により振動解析(コンピューターシミュレーション)を行った。共振点として解析した部位は図1に示すように、頭部H、胴体部C、大腿部T、下腿部Sである。
【0026】
その振動解析の結果が図2である。図2における縦軸は頭部Hにおける上下方向の加速度の車体比である。
これにより、共振による加速度は頭部Hにおいて最も大きいことがわかったので、以下では頭部Hにおける振動の加速度を抑制する。
【0027】
次に、自動車用シート1の特性を変化させることで、どの程度の振動抑制効果があるかを仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)によって検証する。ここでは、自動車用シート1の特性のうち、座部3の硬さの変更による振動抑制効果を調べた。
自動車用シート1の座部3の硬さの最適化方法として、滑降シンプレックス法を採用し、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動の加速度を最小とする座部3の硬さを決定した。具体的には、通常乗員が不快に感じ易い振動の周波数帯域4〜8Hzに、頭部Hにおける振動の周波数のピーク値が入らないようにした。その結果が図3である。
これにより、上下方向の加速度のピーク値が約25%低減可能であることが確認できた。また、座部3の硬さの最適化前には加速度のピーク値が、人間が不快に感じる周波数である4Hz付近にあったが、最適化後ではピーク値が不快な4〜8Hzから外れた2Hz付近にシフトした。
【0028】
以上のように、自動車用シート1の特性(ここでは座部3の硬さ)を変化させることで、乗員の頭部Hにかかる振動を抑制できることが確認できた。同様にして、自動車用シート1の背もたれ部2の硬さ、背もたれ部2の角度θ、座部3の角度φを変化させることでも乗員の頭部Hにかかる振動を抑制できる。
【0029】
次に、図4乃至図9を参照して、本発明の第一実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10を説明する。
この自動車用シート1の振動抑制装置10は、ヘッドレスト2aを有する背もたれ部2と座部3からなる自動車用シート1にかかる振動を抑制するものであって、主に振動センサー11と、エアクッション12A,12B,12C,12Dと、モーター18A,18Bと、記憶部16と、制御部17と、を備えるものである。
【0030】
振動センサー11は、シート下部の床上に設置されており、自動車用シート1に座った乗員の頭部Hにかかる振動の周波数及び上下方向の加速度を検出する。この振動センサー11は乗員の頭部Hに取付けられていないので、振動センサー11によって乗員の頭部Hにかかる振動を直接測定できるわけではない。しかし、シート下部の床上にかかる振動と乗員の頭部Hにかかる振動には、一定の相関関係があるので、振動センサー11でシート下部の床上にかかる振動を検出すると同時に、その振動を乗員の頭部Hにかかる振動として変換している。
【0031】
エアクッション12A,12B,12C,12Dは、背もたれ部2には乗員の背中及び腰部を支えるように上下に二つ(第一エアクッション12A及び第二エアクッション12B)、座部3には臀部及び大腿部を支えるように前後に二つ(第三エアクッション12C及び第四エアクッション12D)内蔵されている。
いずれのエアクッション12A,12B,12C,12Dも、空気供給管13を通してコンプレッサー14から空気が供給される。そして、エアクッション12A,12B,12C,12Dとコンプレッサー14との間には空気供給管13にそれぞれバルブ15A,15B,15C,15Dが設けられており、それぞれのエアクッション12A,12B,12C,12Dは他のエアクッションとは独立してその圧力(内圧)を調整できるようになっている。
また、背もたれ部2及び座部3におけるエアクッション12A,12B,12C,12Dの配置されている深さは、それぞれのエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力の調整によって、乗員が背もたれ部2及び座部3の硬さの変化を感じ取れる程度の深さである。
また、それぞれのエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力は圧力検出部20によりモニターされている。
【0032】
モーター18A,18Bは、ピニオン19A,19Bを介して背もたれ部2及び座部3の両方の角度θ,φを変化させる動力である。ここでいう背もたれ部2及び座部3の角度θ,φとは、図5に示すように、それぞれ背もたれ部2と水平面とのなす角θ、及び座部3と水平面のなす角φをいう。背もたれ部2用には第一モーター18Aが、座部3用には第二モーター18Bが設けられており、背もたれ部2の角度θと座部3の角度φはそれぞれ独立して変化させることができる。
また、ピニオン19A,19Bには角度検出部21が併設されており、角度検出部21でピニオン19A,19Bの回転量を計測することにより、背もたれ部2及び座部3の角度θ,φがモニターされている。
【0033】
記憶部16は、パターン表が記憶されており、パターン表には自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動の加速度を最小とする最適パターンが予め入力されている。
この最適パターンとして入力されているものとは、図7に示すように、2〜14Hzの周波数帯(2Hz間隔の平均値)及び乗員の体格(身長、体重)に対応して、仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)で滑降シンプレックス法を用いることによって算出され、最適化された背もたれ部2の硬さ及び座部3の硬さ(最適硬さ)、すなわちそれぞれのエアクッション12A,12B,12C,12Dの最適圧力と、背もたれ部2の角度θ及び座部3の角度φ(最適角度)である。
これらの具体的な数値としては、図8に示すようになる。図8(a)は、振動解析モデルにおける各部位と図8(b)に示すばね定数kn及び粘性減衰係数cnとの関係を示している。図8(b)では、背もたれ部2及び座部3の硬さを、エアクッション12A,12B,12C,12Dのばね定数kn及び粘性減衰係数cnとして算出している。なお、このn=1,2,3,4は第一エアクッション12Aから順に対応している。このようにばね定数kn及び粘性減衰係数cnを最適パターンとしてパターン表に入力していても、ばね定数kn及び粘性減衰係数cnをエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力や、背もたれ部2及び座部3の硬さに変換可能である。
なお、パターン表におけるパラメータとして、周波数と体格だけでなく、男女の別、年齢、体型等を加えた最適パターンを予め準備しておくと、振動抑制がより向上する。また、周波数帯の分割を細かくするほど、振動抑制がより向上する。
【0034】
制御部17は、振動センサー11が検出した振動の周波数及び乗員の体格に対応した最適パターンを記憶部16から読み出して、その最適パターンと圧力検出部20で検出された現状のエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力との差分を算出する。そして、制御部17は、コンプレッサー14やバルブ15A,15B,15C,15Dを介して空気を複数のエアクッション12A,12B,12C,12Dに供給して背もたれ部2及び座部3の硬さを最適化させる。
それと同時に制御部17は、最適パターンと、角度検出部21で検出された現状の背もたれ部2及び座部3の角度θ,φとの差分を算出し、モーター18A,18Bを介して背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを最適化させる。
【0035】
入力部22では、乗員が自分の身長(または座高)、体重を入力する。
ここで、入力部22で乗員が自ら入力する手間を省くために、座高を測定する赤外線センサーや、体重を測定する重量センサーを設けておいてもよい。
さらには、指紋や静脈等の生体認証によって、個人データを入力(呼び出し)可能にしておいてもよい。
【0036】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、本発明の第一実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10のアクティブ制御について説明する。
まず、システム全体の初期化を行う(ステップS101(以下、「ステップ」という語を省略する))。
次に、制御部17は、乗員によって入力され記憶部16に記憶された乗員の身長、体重を読み込む(S102)。
【0037】
次に、制御部17は圧力検出部20から各エアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力の測定値を読み込む(S103)。これと同時に、角度検出部21から背もたれ部2の角度θ及び座部3の角度φの測定値を読み込む(S104)。
【0038】
次に、制御部17は振動センサー11からの信号を読み込み、乗員にかかる振動の有無を判断する(S105)。
このとき、振動があれば振動センサー11からその振動の周波数を読み込む(S106)。
【0039】
次に、制御部17はその周波数及び乗員の体格に対応した最適パターン(エアクッション12A,12B,12C,12Dの最適圧力、背もたれ部2及び座部3の最適角度)を読み込む(S107)。
【0040】
次に、制御部17は、エアクッション12A,12B,12C,12Dの最適圧力とエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力測定値とを比較して、コンプレッサー14の出力制御を行ったり、バルブ15A,15B,15C,15Dを開放又は閉鎖して、各エアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力を最適圧力に合わせせることで、背もたれ部2及び座部3の硬さを最適化させる(S108)。
それと同時に制御部17は、背もたれ部2及び座部3の最適角度と角度測定値とを比較して、モーター18A,18Bを駆動し、背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを最適角度に合わせる(S109)。
以上が自動車用シート1の振動抑制装置10のアクティブな制御の1サイクルであり、制御を終了するか否か判断する(S110)。
このとき、制御を終了しない場合には、S105に戻る。
【0041】
なお、2サイクル目以降のS108では、制御部17は、最適圧力と1サイクル前における最適圧力とを比較してエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力を最適化する。同様に2サイクル目以降のS109では、制御部17は、最適角度と1サイクル前における最適角度とを比較して背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを最適化する。
また、S105において振動を検出しなかったが制御を終了しない場合には、振動を検出するまで待ち続ける。
【0042】
以上のように構成された自動車用シート1の振動抑制装置10によれば、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数を振動センサー11によって検出すると、制御部17が、背もたれ部2及び座部3に両方に内蔵された複数のエアクッション12A,12B,12C,12Dのそれぞれに空気供給手段(コンプレッサー14、空気供給管13、及びバルブ15A,15B,15C,15D)を介して空気を供給するとともに、角度調整手段(モーター18A,18B、ピニオン19A,19B)を介して背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを変化させるので、背もたれ部2及び座部3の硬さと角度θ,φを任意に設定でき、乗員にかかる振動を低減することができる。この振動センサーで検出する振動は、その発生原因によらず乗員にかかるものであるので、自動車の加速減速や旋回による振動、及び路面の凹凸による振動のいずれも低減することができる。また、背もたれ部2及び座部3の硬さと、背もたれ部2及び座部3の角度を同時に制御するので、振動抑制の効果が大きい。
【0043】
しかも、制御部17は、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数に対応して、振動を最小とするように背もたれ部2及び座部3の硬さを最適化させるとともに、背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを最適化させるので、どの周波数に対しても同じように振動制御する場合に比べて、振動をより低減することができる。
さらに、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする背もたれ部2の硬さ、座部3の硬さ、背もたれ部2の角度θ、及び座部3の角度φである最適パターンが、記憶部16のパターン表に予め入力されており、制御部17がその最適パターンを記憶部16から読み出して背もたれ部2の硬さ、座部3の硬さ、背もたれ部2の角度θ、及び座部3の角度φを最適化させるので、振動を検出するたびに制御部17がその周波数に対応して、振動を最小とする背もたれ部2の硬さ、座部3の硬さ、背もたれ部2の角度θ、及び座部3の角度φを演算し、それに基づいて硬さ及び角度θ,φを最適化する場合に比べ、背もたれ部2の硬さ、座部3の硬さ、背もたれ部2の角度θ、及び座部3の角度φの制御を高速に行うことができる。よって、乗員にかかる振動を瞬時に低減することができるので、乗員は快適で疲れ難い。
【0044】
また、最適パターンは、自動車用シート1に座った乗員にかかる振動の周波数に加え、乗員の体格にも対応しているので、体格の違いにより頭部Hにかかる振動が異なる子供と大人では、それぞれ異なる制御を行うことができ、確実に乗員にかかる振動を軽減することができる。
また、最適パターンは、仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)によって算出されたので、それぞれの振動の周波数について実測して最適パターンを作成する場合に比べ、最適パターンを短時間で得ることができる。しかも最適パターン作成にかかるコストが低廉である。
【0045】
また、振動センサー11は、自動車用シート1に座った乗員の頭部Hにかかる振動の周波数を検出するので、制御部17によって振動を最小とするように制御される対象は、頭部Hにかかる振動となる。つまり、人体の各部位のうち最も振動が大きくなり易い頭部Hにおいて、その振動を小さくできるので、乗員はより快適である。
さらに、振動センサー11は、シート1下部の床上に設置されているので、車体下部からシート1に伝わる振動の周波数を、乗員に伝わる前に検出することができる。つまり、振動はタイヤ、車体下部、シート、乗員の順に伝わるので、振動が乗員に伝わる前に車体下部が振動した段階で振動抑制装置1を作動させることができ、乗員はより快適である。
【0046】
(第二実施形態)
次に図10乃至図12を参照して、本発明の第二実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
【0047】
本実施形態の第一実施形態との違いは、背もたれ部2及び座部3の角度θ,φをアクティブ制御しないため、モーター18A,18Bやピニオン19A,19Bを有しないことである。その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。ブロック図としては、図6におけるモーター18A,18B、ピニオン19A,19B、角度検出部21を除いたものとなる。
つまり、振動に対して背もたれ部2及び座部3の硬さのみを最適化して、乗員の頭部Hにかかる振動を抑制する。
【0048】
もちろん、本実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10における記憶部16に予め入力されたパターン表には、図11に示すように、最適パターンとして、各エアクッション12A,12B,12C,12Dの最適圧力が入力されているのみで、背もたれ部2及び座部3の最適角度は入力されていない。
【0049】
次に、図12に示すフローチャートを参照して、本発明の第二実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10のアクティブ制御について説明する。
まず、システム全体の初期化を行う(S201)。
次に、制御部17は、乗員によって入力され記憶部16に記憶された乗員の身長、体重を読み込む(S202)。
【0050】
次に、制御部17は圧力検出部20から各エアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力の測定値を読み込む(S203)。
【0051】
次に、制御部17は振動センサー11からの信号を読み込み、乗員にかかる振動の有無を判断する(S205)。
このとき、振動があれば振動センサー11からその振動の周波数を読み込む(S206)。
【0052】
次に、制御部17はその周波数及び乗員の体格に対応した最適パターンを読み込む(S207)。
【0053】
次に、制御部17はエアクッション12A,12B,12C,12Dの最適圧力とエアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力測定値とを比較して、コンプレッサー14の出力制御を行い、バルブ15A,15B,15C,15Dを開放又は閉鎖して、各エアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力を最適圧力に合わせることで、背もたれ部2及び座部3の硬さを最適化させる(S208)。
そして、制御を終了するか否か判断する(S210)。制御を終了しない場合には、S205に戻る。
【0054】
このように構成された自動車用シート1の振動抑制装置10であっても、背もたれ部2及び座部3の硬さが最適化されるので、乗員にかかる振動を低減することができ、乗員は快適である。第一実施形態と異なり、制御の対象は背もたれ部2及び座部3の硬さのみであるが、背もたれ部2及び座部3の硬さを制御することによる振動抑制効果は、背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを制御することによる振動抑制効果よりも大きいので、乗員にかかる振動を効率よく低減することができる。
また、角度調整手段を備えない分、自動車用シート1の振動抑制装置10の構造が単純になるので、故障の可能性が低くなるとともに、コストも低廉となる。
【0055】
なお、制御の対象を第一実施形態においては背もたれ部2及び座部3の硬さと角度θ,φ、第二実施形態においては背もたれ部2及び座部3の硬さとしたが、これに限られるものではなく、背もたれ部2の硬さ、座部3の硬さ、背もたれ部2の角度θ、座部3の角度φのうち少なくとも一つであればよい。
【0056】
また、第一、第二実施形態において、エアクッション12A,12B,12C,12Dを四つとしたが、これに限られるものではなく、図13に示すように、エアクッション12A,12B,12C,12Dを背もたれ部2や座部3の左右両端にも設けてもよい。もちろん、これより少数でもよい。エアクッション12A,12B,12C,12Dの数を変更したときには、それに伴ってパターン表の最適パターンを変更する必要がある。
【0057】
また、最適パターンは、自動車用シート1に座った乗員の頭部Hにかかる振動の周波数及び乗員の体格に対応しているとしたが、少なくとも周波数に対応していればよい。
【0058】
また、振動センサー11は、自動車用シート1に座った乗員の頭部Hにかかる振動の周波数を検出するとしたが、胴体部Cや大腿部Tの振動の周波数を検出するものであってもよい。
さらに、振動センサー11は、シート1下部の床上に設置されているとしたが、これに限られるものではなく、例えばヘッドレスト2aに内蔵されていてもよい。
【0059】
また、GPS機能等を用い3D道路データを事前に取得することで、所定時間後の車体の振動を予測できるので、それによって車体側(サスペンション)により車体床下振動の最小化を図ることができる。このような振動の予見制御を行うことで、さらに乗員の乗り心地が向上する。
【0060】
また、本発明の実施形態に係る自動車用シート1の振動抑制装置10の配置場所は運転席に限られず、助手席や後部座席にも配置可能である。
また、角度調整手段として、モーター18A,18Bとピニオン19A,19Bを挙げたが、これに限られるものではなく、公知の他の機構によって背もたれ部2及び座部3の角度θ,φを調整してもよい。エアクッション12A,12B,12C,12Dの圧力調整も同様である。
【0061】
また、最適パターンとして入力されている物理量は、背もたれ部2及び座部3の硬さや角度に変換できるものであればよい。
また、最適パターンは、仮想試験システム(コンピューターシミュレーション)によって算出されたとしたが、それぞれの振動の周波数や体格等ごとに事前に実測して作成していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 自動車用シート
2 背もたれ部
2a ヘッドレスト
3 座部
10 自動車用シートの振動抑制装置
11 振動センサー
12 エアクッション
12A エアクッション(第一エアクッション)
12B エアクッション(第二エアクッション)
12C エアクッション(第三エアクッション)
12D エアクッション(第四エアクッション)
13 空気供給管(空気供給手段)
14 コンプレッサー(空気供給手段)
15A バルブ(空気供給手段)
15B バルブ(空気供給手段)
15C バルブ(空気供給手段)
15D バルブ(空気供給手段)
16 記憶部
17 制御部
18A モーター(第一モーター、角度調整手段)
18B モーター(第二モーター、角度調整手段)
19A ピニオン(角度調整手段)
19B ピニオン(角度調整手段)
20 圧力検出部
21 角度検出部
22 入力部
C 胴体部
H 頭部
S 下腿部
T 大腿部
θ 背もたれ部の角度
φ 座部の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部と座部からなる自動車用シートにかかる振動を抑制する装置であって、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサーと、
前記背もたれ部及び前記座部の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッションと、
前記複数のエアクッションのそれぞれに空気を供給する空気供給手段と、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部又は前記座部の硬さである最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部と、
前記振動センサーが検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部から読み出して、前記空気供給手段を介して空気を前記複数のエアクッションに供給して前記背もたれ部又は前記座部の硬さを最適化させる制御部を備えることを特徴とする自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項2】
背もたれ部と座部からなる自動車用シートにかかる振動を抑制する装置であって、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサーと、
前記背もたれ部及び前記座部の両方又は一方の角度を変化させる角度調整手段と、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部又は前記座部の角度である最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部と、
前記振動センサーが検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部から読み出して、前記角度調整手段を介して前記背もたれ部又は前記座部の角度を最適化させる制御部を備えることを特徴とする自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項3】
背もたれ部と座部からなる自動車用シートにかかる振動を抑制する装置であって、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数を検出する振動センサーと、
前記背もたれ部及び前記座部の両方又は一方に内蔵された複数のエアクッションと、
前記複数のエアクッションのそれぞれに空気を供給する空気供給手段と、
前記背もたれ部及び前記座部の両方又は一方の角度を変化させる角度調整手段と、
前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に対応した、振動を最小とする前記背もたれ部又は前記座部の硬さ及び前記背もたれ部又は前記座部の角度である最適パターンが予め入力されたパターン表が記憶された記憶部と、
前記振動センサーが検出した振動の周波数に対応した前記最適パターンを前記記憶部から読み出して、前記空気供給手段を介して空気を前記複数のエアクッションに供給して前記背もたれ部又は前記座部の硬さを最適化させるとともに、前記角度調整手段を介して前記背もたれ部又は前記座部の角度を最適化させる制御部を備えることを特徴とする自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項4】
前記最適パターンは、前記自動車用シートに座った乗員にかかる振動の周波数に加え、乗員の体格にも対応していることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項5】
前記振動センサーは、前記自動車用シートに座った乗員の頭部にかかる振動の周波数を検出することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項6】
前記振動センサーは、前記シート下部の床上に設置されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の自動車用シートの振動抑制装置。
【請求項7】
前記最適パターンは、仮想試験システムによって算出されたことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の自動車用シートの振動抑制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−62019(P2012−62019A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209724(P2010−209724)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)文部科学省(科学技術振興機構)による、「独創的シーズ展開事業」の平成19年度、「革新的ベンチャー活用開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(510251567)株式会社ダイモス (1)
【出願人】(307020545)公立大学法人岡山県立大学 (8)
【Fターム(参考)】