説明

自動車用シートの高さ調整装置

【課題】 簡単な構成により、操作ノブの操作荷重を低減でき、しかもシートの最低高を低く抑え易い自動車用シートの高さ調整装置を提供する。
【解決手段】 シート高さ調整用のリンク3、4を左右対にシートの前後に配置して、各リンク3、4を左右のシート設置ブラケット1a、1bと左右のシートサイドフレーム2とに掛け渡すと共に、左右のリンク3、4を連結シャフト5、6で一体に保持したリンク基枠15を備え、シートの片側部に操作ノブ7を備え付けると共に、操作ノブ7とリンク基枠15との間を操作伝達部20により接続し、操作ノブ7の操作に対応してリンク基枠15を上下に揺動可能に組み立てられてなり、リンク基枠15がシートサイドフレーム2の側面側に配置されたスパイラルスプリング25により立上り方向に付勢されている、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート全体を高さ調整可能に装備する自動車用シートの高さ調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドレール上に自動車用シートの高さ調整装置を介して座席が装着されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この自動車用シートの高さ調整装置は、図6に示すように、スライドレールSのアッパーレールAのレール上に設置される左右の立付けブラケット1a,1bと、シートクッションのシートサイドフレーム2との間に備え付けられており、リンク3,4を左右対にシートの前後に備え、各リンク3,4をシート設置ブラケット1a,1bとシートサイドフレーム2との間に、支軸3a、3b、4a、4bを介して掛け渡し、リンク3,4の左右相互を連結シャフト5,6で一体に保持させて組み立てたリンク基枠15をベースに構成されている。
【0003】
このリンク基枠15を動作させるために、更に、シートサイドフレーム2の片側部に備え付けられる操作ノブ7と、操作ノブ7の回転軸7aと同軸上でシートサイドフレーム2の内側に取り付けられるピニオンギヤ8と、ピニオンギヤ8と噛み合ってシートサイドフレーム2に支軸9aで回動自在に取り付けられるセクタギヤ9と、セクタギヤ9と後側リンク4との間に連結されるリンクロッド10とを備えている。
【0004】
この自動車用シートの高さ調整装置では、シート高の最下端の状態で、前後のリンク3,4が後倒しに保たれている。この状態から、操作ノブ7を回転操作すると、ピニオンギヤ8が回転し、セクタギヤ9が支軸9aを中心とする半径の小さい方向に首振り回転することにより、リンクロッド10が連結ピン9bを支点として前方方向に引張られて移動する。これに伴って、後側リンク4が支軸4aを支点として立ち上る方向に引っ張られると共に、前側リンク3が立上り揺動することにより、シート高を高く調整することができる。シート高を再び低い位置に調整するには、操作ノブ7を逆方向に操作することにより行うことができる。
【0005】
このような自動車用シートの高さ調整装置では、リンク基枠の前後のリンク3、4に自動車用シートの全荷重が負荷されており、乗員が着座状態では、更に、乗員の体重も負荷されている。操作ノブ7を操作して自動車用シートの高さを高く調整する際には、操作ノブ7の操作だけでこれらの全ての荷重に抗してリンク基枠を立ち上げなければならず、操作荷重が大きくなり易く、操作し難かった。
そのため、リンク基枠を立上げ方向に付勢する付勢手段を設けることにより操作荷重を低減したものが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかし、自動車用シートの全荷重や乗員の体重からなる負荷に対して十分な付勢力を得るためには、大型の付勢手段を用いなければならならない。また、特許文献2では、偏心シャフトを用いて付勢手段の小形化が図られているものの、偏心シャフトの動作を確保しなければならない。そのため、高さ調整装置が大型化して、シート高の最低高が高くなり易いという問題点があった。高さ調整装置全体としては小型化して
ない。
【0006】
【特許文献1】WO 2004/094180A1公報
【特許文献2】特開2000−108734号公報
【特許文献3】特開2000−127313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡単な構成により、操作ノブの操作荷重を低減し易く、しかもシートの最低高を低く抑え易い自動車用シートの高さ調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、シート高さ調整用のリンクを左右対にシートの前後に配置して、各リンクを左右のシート設置ブラケットと左右のシートサイドフレームとに掛け渡すと共に、左右のリンクを連結シャフトで一体に保持したリンク基枠を備え、シートの片側部に操作ノブを備え付けると共に、操作ノブとリンク基枠との間を操作伝達部により接続し、操作ノブの操作に対応してリンク基枠を上下に揺動可能に組み立てられてなる自動車用シートの高さ調整装置において、シートサイドフレームの側面側にスパイラルスプリングを配置し、シートサイドフレームにリンクを枢支する支軸にスパイラルスプリングの内側端部を固定して、外側端部によりリンク基枠を立上り方向に付勢したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、スパイラルスプリングの外側端部が、内側端部を固定した支軸により枢支されるリンクに固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、シート高さ調整用のリンクを左右対にシートの前後に配置して、各リンクを左右のシート設置ブラケットと左右のシートサイドフレームとに掛け渡すと共に、左右のリンクを連結シャフトで一体に保持したリンク基枠を備え、シートの片側部に操作ノブを備え付けると共に、操作ノブとリンク基枠との間を操作伝達部により接続し、操作ノブの操作に対応してリンク基枠を上下に揺動可能に組み立てられてなる自動車用シートの高さ調整装置において、操作伝達部が、操作ノブの操作に対応して回動可能な回動伝達部材と、回動伝達部材の回動中心から偏心した位置とリンク基枠とを接続するリンクロッドとを有し、シートサイドフレームの側面側にスパイラルスプリングを配置し、シートサイドフレームに回動伝達部材を枢支する支軸にスパイラルスプリングの内側端部を固定して、外側端部によりリンクロッドと回動伝達部材とを連結する連結ピンをリンク基枠の立上り方向に付勢したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の自動車用シートの高さ調整装置によれば、スパイラルスプリングによりリンク基枠を立上り方向に付勢しているので、操作ノブを操作してリンク基枠を上方に揺動させる際、操作ノブの操作荷重を低減することができる。
しかも、このスパイラルスプリングの内側端部が、シートサイドフレームにリンクを枢支する支軸に固定されているため、スパイラルスプリングを支持するための部材が不要で、部品点数を少なくして構造を簡単にすることができる。
同時に、このスパイラルスプリングがシートサイドフレームの側面側に配置されているので、シートサイドフレームの縦方向の幅により、スパイラルスプリングを配置するためのスペースを確保し易く、大型のスパイラルスプリングを配置しても、シートの最低高を低く抑え易い。
従って、簡単な構成により、操作ノブの操作荷重を低減し易く、しかも、最低高を低く抑えることが可能な自動車用シートの高さ調整装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、スパイラルスプリングの外側端部が、内側端部を固定した支軸により枢支されるリンクに固定されているので、スパイラルスプリングにより、リンクの回動中心である支軸に対してリンクを回転方向に付勢することができ、リンクの回動量に関わらず、安定した付勢力を得易い。しかも、スパイラルスプリングにより、他の部材を介することなく、リンクを直接付勢することができるため、スパイラルスプリングの付勢力のロスが少なく、効率よく付勢することができ、スパイラルスプリングの小形化を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の自動車用シートの高さ調整装置によれば、請求項1と同様に、操作ノブの操作荷重を低減することができる上、回動伝達部材を枢支する支軸にスパイラルスプリングの内側端部を固定するので、構造を簡単にすることができ、同時に、大型のスパイラルスプリングを配置しても、シートの最低高を低く抑え易い。しかも、リンクロッドと回動伝達部材とを連結する連結ピンをリンク基枠の立上り方向に付勢するので、回動伝達部材に回動方向の付勢力を直接付与することができ、回動伝達部材に他の部材を介して付勢する場合に比べて、回動伝達部材の円滑な動作を確保し易く、操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して説明すると、図示実施の形態に係る自動車用シートの高さ調整装置は、図1で示すようにシート全体(図示せず)を前後に位置移動可能に支持する左右対のスライドレールS(以下、全て片側のみ図示)を備え、シート全体をロアレールRで車体フロアのフロア面に設置するスライド式シートに備え付けられている。また、リクライニング式シートのシートクッションからシートバックを含むシート全体を高さ調整するものとして備え付けられている。
【0015】
その自動車用シートにおいては、高さ調整装置は、アッパーレールAのレール上に設置される左右のシート設置ブラケットとしての立付けブラケット1a,1bとシートサイドフレーム2との間に備え付けられたリンク基枠15をベースに組み立てられている。このリンク基枠15は、シートサイドフレーム2間の内側に配置されており、リンク3,4を左右対にシートの前後に備え、各リンク3,4を立付けブラケット1a,1bとシートサイドフレーム2との間に掛け渡し、リンク3,4の左右相互を連結シャフト5,6で一体に保持させて組み立てられている。
【0016】
前側リンク3は、左右のシートサイドフレーム2の内面側に配置されている。各前側リンク3は、左右対称に形成され、シートサイドフレーム2と立付けブラケット1aとの間に掛け渡される本体部3cと、本体部3cから外側に略くの字状となるように延長された延長部3dとを有するプレート部材からなる。本体部3cは前側リンク3の折曲り中腹部となる本体部3cの上端寄りが支軸3bでシートサイドフレーム2に軸承枢支されると共に、下端寄りが支軸3aで立付けブラケット1aに軸承枢支されることにより、立付けブラケット1aとシートサイドフレーム2とに掛渡し装着されている。
【0017】
後側リンク4は、左右のシートサイドフレーム2の内面側に配置されており、片側の後側リンク4はシートサイドフレーム2と立付けブラケット1bとの間に掛け渡される本体部4cと、本体部4cから外側に延長された延長部4dとを有する略くの字状のプレート部材からなると共に、他片側の後側リンク4が延長部4dのない本体部4cに対応する略直線状に形成されたプレート部材(図示せず)からなる。
【0018】
この後側リンク4では、左右相互を一方の本体部4cの上端寄りと他方の上端寄りとで連結シャフト6により一体に保持されている。詳細な図示は省略されているが、この連結シャフト6の両端部から車幅方向外側に突出した支軸4bによりシートサイドフレーム2の板面に軸承枢支され、下端寄りが支軸4aで立付けブラケット1bに軸承枢支されることにより、立付けブラケット1bとシートサイドフレーム2とに掛渡し装着されている。
この実施の形態では、後側リンク4の支軸4a、4b間の距離は、前側リンク3の支軸3a、3b間の距離より長く形成されている。
【0019】
左右の前側リンク3の本体部3cの下側縁部と、左右の後側リンク4の支軸4a、4b間の下側縁部とには、それぞれ突起状のストッパ部3e、4eが設けられている。このストッパ部3e、4eは、シート高が最下端位置に達したときに、アッパーレールAに当接するように構成されている。
【0020】
図2乃至は図4に示すように、この高さ調整装置ではこのようなリンク基枠15を上下に揺動させるための操作ノブ7がシートの片側部に備え付けられ、操作ノブ7とリンク基枠15との間が操作伝達部20により接続されて組み立てられている。
【0021】
操作ノブ7は、レバー形状を有し、シートサイドフレーム2の一方の前側リンク3付近の外側に沿って固定されたギヤケース22に装着されている。詳細な図示は省略されているが、操作ノブ7は、回転軸7aと、この回転軸7aの回動を所定回動角毎に解除可能に係止できるラチェット機構7cとを有しており、回転軸7aの先端部をギヤケース22の板面内側に挿通して、シートサイドフレーム2に支持させた状態で、軸受けフレーム7bをギヤケース22の板面外側に取付け固定することにより、装着されている。
【0022】
この操作ノブ7は、図1に示すシートサイドフレーム2の側面側のの中立位置Pから上向きr1及び下向きr2の両方向に所定量だけ回動操作が可能で、開放することにより中立位置Pに自動復帰可能となっている。この操作ノブ7の回動及び復帰を繰り返すことで、ラチェット機構7cにより回転軸7aの回動量を所定量毎に増加又は減少可能である。
【0023】
操作伝達部20は、シートサイドフレーム2の外面とギヤケース22の内面との間に形成された収容空間22a内に回動可能に配置されて操作ノブ7の回転軸7aに固定されたピニオンギヤ8と、同じく収容空間22a内に回動可能に配置されてピニオンギヤ8と噛み合わされた回動伝達部材としてのセクタギヤ9と、シートサイドフレーム2の内面側に配置されて、セクタギヤ9と後側リンク4の延長部4dとの間を連結するリンクロッド10とを備えて組み立てられている。
【0024】
セクタギヤ9は、シートサイドフレーム2を貫通して配置される前側リンク3の支軸3bに支持されている。
この支軸3bは、側周面に一対の平行面3gを有し、この側周面に対応した形状のシートサイドフレーム2の貫通孔2gに嵌合することにより、シートサイドフレーム2に対して回動不能に固定されている。
セクタギヤ9は、この支軸3bの端部に回動可能に枢支されており、支軸3bを回動中心としてシートサイドフレーム2に対して回動可能である。この支軸3bの他端部には前側リンク3が回動可能に枢支されているため、セクターギヤ9は、前側リンク3と同軸に相対回動可能となっている。
このセクタギヤ9が支軸3b側から広がる略扇形を呈し、その弧状部位でピニオンギヤ8と噛み合わされているため、操作ノブ7の操作によるピニオンギヤ8の回動に応じて、略扇形の弧状部位の範囲内で回動可能である。
【0025】
これらのピニオンギヤ8及びセクタギヤ9は、収容空間22a内で回動可能とされることで、シートサイドフレーム2の外面とギヤケース22の内面との間で変位が規制されている。この実施の形態では、ギヤケース22の内面側に変形された変形部22bとシートサイドフレーム2との間でピニオンギヤ8及びセクタギャ9を摺動可能に挟持することにより、ピニオンギヤ8とセクタギヤ9との噛み合わせ部位近傍の変位がより確実に規制されている。
【0026】
セクタギヤ9の支軸3bとは偏心したピニオンギヤ8の後方側となる位置には、図2及び図4に示すように、内側に向けて突出する連結ピン9bが回動不能に固定して設けられている。一方、シートサイドフレーム2の連結ピン9bに対応する位置には、支軸3bを中心に弧状の貫通孔としての長孔24aが設けられており、連結ピン9bは、この長孔24aを貫通してシートサイドフレーム2の内側に突出して配置されている。この長孔24aの長さはセクタギヤ9の最大の回動量を許容する長さとなっている。
【0027】
更に、前側リンク3の延長部3dの連結ピン9bに対応する位置にも、支軸3bを中心に弧状の長孔24bが設けられており、連結ピン9bは長孔24bを通して前側リンク3の内側に突出して配置されている。延長部3dの長孔24bの長さは、前側リンク3の本体部3cと後側リンク4の本体部4cとの長さの差などに起因して生じる前側リンク3の回動量とセクタギヤ9の回動量との差を許容する長さとなっている。なお、この長孔24bの幅は、連結ピン9bが摺動可能な狭い幅とすることにより、連結ピン9bの幅方向の変位を阻止するように構成してもよい。
【0028】
この前側リンク3の内側に突出した連結ピン9bの内側端部がリンクロッド10に回動可能に枢支されることにより、セクタギヤ9の支軸3bから偏心した位置とリンクロッド10とが連結されている。
リンクロッド10は、このような連結ピン9bの内側端部と後側リンク4の延長部4dに固定された連結ピン9cとの間を連結することにより、セクタギヤ9の前後方向の回動をリンク基枠15に伝達するようになっている。
【0029】
そして、図2乃至は図4示すように、前側リンク3とセクタギヤ9との間のシートサイドフレーム2の内側となる位置には、スパイラルスプリング25が配置されている。このスパイラルスプリング25は、図5に示すように、内側端部がセクタギヤ9及び前側リンク3を支持する支軸3bの一対の平行面3gに回動不能に固定されている。
このスパイラルスプリング25は、前側リンク3の倒れ方向周りに拡径するように支軸3b周囲に巻回され、外側端部がセクタギヤ9とリンクロッド10とを連結する連結ピン9bに係止されることにより、セクタギヤ9がリンク基枠15の前側リンク3及び後側リンク4の立上り方向となる回動方向に付勢されている。
【0030】
一方、操作ノブ7が配置されていない側のシートサイドフレーム2では、操作伝達部20が設けられておらず、図6に示すように、シートサイドフレーム2の外側に、前側リンク3の延長部3dに対応する形状の補強プレート26が配置されている。この補強プレート26は、シートサイドフレーム2を貫通して配置されている支軸3bから偏心した位置に設けられた連結ピン3fにより、前側リンク3の延長部3dに移動不能に固定されている。また、シートサイドフレーム2の連結ピン3fに対応する位置には、支軸3bを中心に弧状の長孔24aが設けられており、連結ピン3fは長孔24aを貫通した状態で配置されている。この補強プレート26は前側リンク3と一体に支軸3bを中心に回動可能である。
【0031】
補強プレート26と前側リンク3との間のシートサイドフレーム2の内側となる位置には、上述と同様のスパイラルスプリング25が配置されている。このスパイラルスプリング25は、内側端が支軸3bに回動不能に係止されると共に、外側端が連結ピン3fに係止されており、リンク基枠15の前側リンク3を、直接、立上り方向に付勢している。
【0032】
このように構成された自動車用シートの高さ調整装置では、図1に示すように、シート全体の高さが最下位に配置されていると、セクタギヤ9がピニオンギヤ8と噛み合った状態で回動範囲の一端側に配置され、これによりリンクロッド10がセクタギヤ9で後に押し込められた状態で、前後のリンク3,4が後倒しに保たれている。このとき、各リンク3、4のストッパ部3e、4eが、立付けブラケット1a、1bが設置されたアッパーレールAに当接した状態となっている。
【0033】
その状態から、操作ノブ7を図1の矢印r1方向に回動操作すると、ラチェット機構7を介してピニオンギヤ8が回転し、シートサイドフレーム2とギヤケース22との間で支持された状態でピニオンギヤ8の回転がセクタギヤ9に伝達され、スパイラルスプリング25により付勢されつつ、支軸3bを中心としてセクタギヤ9が回動範囲の他端側に回動する。これにより、セクタギヤ9に連結ピン9bで連結されたリンクロッド10が前方に引張られて移動し、後側リンク4が支軸4aを支点として立ち上る方向に引っ張られる。このとき、操作ノブ7bが設けられていない側の前側リンク3もスパイラルスプリング25により立上り方向に付勢されている。そして、この操作ノブ7の回動操作により、リンク基枠15が上方に揺動し、図7に示すようにシート全体の高さが上昇する。操作ノブ7の回動操作の終了後には、ラチェット機構7cにより回転軸7aが係止されて、上昇後のシート全体の高さが保持される。
なお、シート全体の高さを下降させるには、操作ノブ7を前記と反対の矢印r2方向に回動操作することにより、シート重量などが負荷された状態で、リンク基枠15を下方に揺動させることにより行う。
【0034】
そのシート全体の高さ調整に伴っては、リンク基枠15の後側リンク4が、セクタギヤ9及びリンクロッド10を介してスパイラルスプリング25によりリンク基枠15の立上り方向に付勢され、また、セクタギヤ9及びリンクロッド10が設けられていない側の前側リンク3がスパイラルスプリング25により直接立上り方向に付勢されているので、リンク基枠15にシートの荷重や乗員の荷重が負荷されていても、操作ノブを操作してリンク基枠15を上方に揺動させる際の操作ノブ7の操作荷重は低減され、スパイラルスプリング25を設けない場合に比べて、簡単に少ない力で操作することができる。
【0035】
ここでは、スパイラルスプリング25の内側端部がシートサイドフレーム2に支持された支軸3bに回動不能に固定されると共に、外側端部が支軸3bに回動可能に枢支されたセクタギヤ9又は前側リンク3の延長部3dに連結ピン9b、3fを介して固定されているので、スパイラルスプリング25を支持するための部材が不要で、部品点数を少なくでき、高さ調整装置の構造を簡単にすることができる。
【0036】
しかも、操作ノブ7が設けられていないシートサイドフレーム2側では、スパイラルスプリング25により、前側リンク3の回動中心である支軸3bに対して、前側リンク3を回動方向に付勢するため、直線的に付勢する場合などに比べ、リンク基枠15の揺動量や前側リンク3の回動量に関わらず、前側リンク3への安定した付勢力が得られる。一方、操作ノブ7が設けられているシートサイドフレーム2側では、スパイラルスプリング25によりセクタギヤ9の回動中心である支軸3bに対して、セクタギヤを回動方向に付勢するため、直線的に付勢する場合などに比べ、リンク基枠15の揺動量やセクタギヤ9の回動量に関わらず、セクタギヤ9への安定した付勢力が得られる。
その際、操作ノブ7が設けられていない側では、スパイラルスプリング25により、他の部材を介することなく、前側リンク3を直接付勢することができるため、スパイラルスプリング25の付勢力のロスが少なく、効率よく付勢することができ、スパイラルスプリング25の小形化を図ることができる。
一方、操作ノブ7が設けられている側では、リンクロッド10とセクタギヤ9とを連結する連結ピン9fに、スパイラルスプリング25を固定しているので、セクタギヤ25に回動方向の付勢力を直接付与することができ、他の部材を介してセクタギヤ25を付勢する場合に比べて、セクタギヤ25の円滑な動作を確保し易く、操作性を向上することができる。
【0037】
そして、この高さ調整装置では、スパイラルスプリング25をシートサイドフレーム2の側面側に配置しているため、シートサイドフレーム2の縦方向の幅により、スパイラルスプリング25の外径形状分の配置スペースを確保することができ、大型のスパイラルスプリング25を容易に配置することが可能である。そのため、十分な付勢力を確保すると同時に、大型のスパイラルスプリング25を配置しても、シート及び高さ調整装置の縦方向の幅を十分に抑えることができ、シートの最低高を低く抑えることが可能である。
【0038】
なお、上記実施の形態では、リンク基枠15の前側リンク3の支軸3bにスパイラルスプリング25を装着した例について説明したが、スパイラルスプリング25を後側リンク4の支軸4bに装着して前側リンク3を間接的に立上げ方向に付勢したり、後側リンク4を直接的に立上げ方向に付勢することも可能である。
【0039】
上記では、複数の前側又は後側リンク3、4を複数のスパイラルスプリング25により付勢した例について説明したが、スパイラルスプリング25の数、或いは付勢される前側又は後側リンク3、4の数等は何ら限定されるものではなく、一つのスパイラルスプリング25を装着してもよい。
上記では、付勢部材としてスパイラルスプリング25を用いた例について説明したが、引張りバネ、圧縮バネなどの他の付勢部材を用いることも可能であり、リンク基枠15を立ち上げる方向に付勢できる部材であれば、適宜選択できる。
【0040】
更に、回動伝達部材もピニオンギヤ8に噛合したセクタギヤ9に限らず、操作ノブ7の操作に応じて回動可能なアームやプレート部材等を配置して、スパイラルスプリング25により付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る自動車用シートの高さ調整装置を低位の設定状態で示す側面図である。
【図2】本発明に係る自動車用シートの高さ調整装置の前側リンク周りの分解斜視図である。
【図3】図1のB−B端面図である。
【図4】図1のC−C端面図である。
【図5】本発明に係る自動車用シートの高さ調整装置にスパイラルスプリングを装着した状態をシートサイドフレームの内側から示す側面図である。
【図6】本発明に係る自動車用シートの高さ調整装置の操作ノブが設けられていない側のサイドフレーム周りを示す図1のB−B端面相当図である。
【図7】本発明に係る自動車用シートの高さ調整装置を高位の設定状態で示す側面図である。
【図8】従来の自動車用シートの高さ調整装置を低位の設定状態で示す側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1a,1b 立付けブラケット
2 シートサイドフレーム
3 前側リンク
3a、3b 支軸
3c 本体部
3d 延長部
3e ストッパ部
4 後側リンク
4a、4b 支軸
4c 本体部
4d 延長部
5、6 連結シャフト
7 操作ノブ
8 ピニオンギヤ
9 セクタギヤ
10 リンクロッド
15 リンク基枠
20 操作伝達部
22 ギヤケース
25 スパイラルスプリング
26 補強プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート高さ調整用のリンク(3)、(4)を左右対にシートの前後に配置して、各リンク(3)、(4)を左右のシート設置ブラケット(1a)、(1b)と左右のシートサイドフレーム(2)とに掛け渡すと共に、左右のリンク(3)、(4)を連結シャフト(5)、(6)で一体に保持したリンク基枠(15)を備え、シートの片側部に操作ノブ(7)を備え付けると共に、操作ノブ(7)とリンク基枠(15)との間を操作伝達部(20)により接続し、操作ノブ(7)の操作に対応してリンク基枠(15)を上下に揺動可能に組み立てられてなる自動車用シートの高さ調整装置において、
シートサイドフレーム(2)の側面側にスパイラルスプリング(25)を配置し、シートサイドフレーム(2)にリンク(3)、(4)を枢支する支軸(3b)、(4b)にスパイラルスプリング(25)の内側端部を固定して、外側端部によりリンク基枠(15)を立上り方向に付勢したことを特徴とする自動車用シートの高さ調整装置。
【請求項2】
スパイラルスプリング(25)の外側端部が、内側端部を固定した支軸(3b)、(4b)により枢支されるリンク(3)、(4)に係止されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用シートの高さ調整装置。
【請求項3】
シート高さ調整用のリンク(3)、(4)を左右対にシートの前後に配置して、各リンク(3)、(4)を左右のシート設置ブラケット(1a)、(1b)と左右のシートサイドフレーム(2)とに掛け渡すと共に、左右のリンク(3)、(4)を連結シャフト(5)、(6)で一体に保持したリンク基枠(15)を備え、シートの片側部に操作ノブ(7)を備え付けると共に、操作ノブ(7)とリンク基枠(15)との間を操作伝達部(20)により接続し、操作ノブ(7)の操作に対応してリンク基枠(15)を上下に揺動可能に組み立てられてなる自動車用シートの高さ調整装置において、
操作伝達部(20)が、操作ノブ(7)の操作に対応して回動可能な回動伝達部材(9)と、回動伝達部材(9)の回動中心から偏心した位置とリンク基枠(15)とを接続するリンクロッド(10)とを有し、
シートサイドフレーム(2)の側面側にスパイラルスプリング(25)を配置し、シートサイドフレーム(2)に回動伝達部材(9)を枢支する支軸(3b)にスパイラルスプリング(25)の内側端部を固定して、外側端部によりリンクロッド(10)と回動伝達部材(9)とを連結する連結ピン(9b)をリンク基枠(15)の立上り方向に付勢したことを特徴とする自動車用シートの高さ調整装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−282017(P2006−282017A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105422(P2005−105422)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】