自動車用ドアグラスラン取付固定構造
【課題】 チャンネル部材やストッパ部材等の部材を使用することなく、ドアインナーパネルとドアアウターパネルの間にドアグラスランを取付ける。
【解決手段】 断面略U字状に形成された本体部11と、本体部11の一対の側壁部11b,11cの先端部から基底部11aに向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ12,13と、一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部14,15と、を備えたドアグラスラン1を、ドアインナーパネル2とドアアウターパネル3のフランジ部21,31間に挿入固定する。前記フランジ部21,31の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことによりドアグラスランの基底部11aを支持するストッパ32を形成する。ドアグラスランのモール部13,14の内面には、ストッパを切り起こした跡の開口部33に係合可能な係止リップ16を設ける。
【解決手段】 断面略U字状に形成された本体部11と、本体部11の一対の側壁部11b,11cの先端部から基底部11aに向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ12,13と、一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部14,15と、を備えたドアグラスラン1を、ドアインナーパネル2とドアアウターパネル3のフランジ部21,31間に挿入固定する。前記フランジ部21,31の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことによりドアグラスランの基底部11aを支持するストッパ32を形成する。ドアグラスランのモール部13,14の内面には、ストッパを切り起こした跡の開口部33に係合可能な係止リップ16を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアグラスラン取付固定構造に関し、特にチャンネル部材を使用することなく、チャンネル部材を使用したのと同様にドアグラスランを位置決めできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のドアグラスランとして図10に示すものが知られている。前記ドアグラスラン101は、基底部102と該基底部102の両側から略平行に伸びる一対の側壁部103,104とにより断面略U字状に形成された本体部105と、前記一対の側壁部103,104の先端部から基底部102に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ106,107と、前記一対の側壁部103,104の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部108,109と、を備えている。
【0003】
前記ドアグラスラン101は、ドアインナーパネル201のフランジ部202とドアアウターパネル204のフランジ部205間に前記略U字状の本体部105を挿入するとともに、前記一方の側壁部103と一方のモール部108の間に前記ドアインナーパネル201のフランジ部202を挿入し、前記他方の側壁部104と他方のモール部109の間に前記ドアアウターパネル203のフランジ部204を挿入することによりドアに取付けられている。
【0004】
前記ドアインナーパネル201のフランジ部202とドアアウターパネル203のフランジ部204間にはチャンネル部材205が取付けられていて、該チャンネル部材205により前記ドアグラスラン101の基底部102が支持されている。なお、206はドアガラスである。(例えば特許文献1)
また、図11に示すように、ドアインナーパネル201にスポット溶接206等によりストッパ部材208を取付け、該ストッパ部材208により前記ドアグラスラン101の基底部102を支持するようにしたものも開発されている。(例えば特許文献2)
前記チャンネル部材205やストッパ部材208は、ドアガラス206の昇降時に前記基底部102が押されて動くことにより前記モール部108,109の先端がドアインナーパネル201やドアアウターパネル203の表面から浮き上がり、これらパネル201,204との間に隙間が発生するのを防止する作用をなしている。
【特許文献1】実開平6−74445号公報
【特許文献2】特開2003−260934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、上述したようにチャンネル部材205やストッパ部材208をドアインナーパネル201やドアアウターパネル203に取付ける構成になっていたために、部品点数が増えるとともに、チャンネル部材205やストッパ部材208をドアインナーパネル201やドアアウターパネル203に取付けるためのスポット溶接207等の取付け作業が必要になり、このためコストが高くなるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、前記従来の問題点を解決し、チャンネル部材やストッパ部材等の部材を使用することなく、ドアインナーパネルとドアアウターパネルの間にドアグラスランを取付けることのできる自動車用ドアグラスラン取付固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基底部と該基底部の両側から略平行に伸びる一対の側壁部とにより断面略U字状に形成された本体部と、前記一対の側壁部の先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップと、前記一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部と、を備えたドアグラスランを、所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入固定する自動車用ドアグラスラン取付固定構造であって、
前記所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことにより前記ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入した前記ドアグラスランの基底部を支持するストッパをパネルと一体に形成するとともに、前記ドアグラスランのモール部の内面には、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に係合可能な係止リップを設けた。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の自動車用ドアグラスラン取付固定構造において、
前記係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部に係合させた。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の自動車用ドアグラスラン取付固定構造において、
前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に、前記係止リップの先端部を前記開口部内に導入する係止リップ導入ガイド部を設けた。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことによりこれと一体に形成したストッパでドアグラスランの基底部を支持する構成にしたので、前記従来のチャンネル部材やストッパ部材等の部材が不必要になり、そのぶん部品点数を減らすことができるとともに、スポット溶接等によるこれら部品の取付け作業も無くすことができる。また、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に前記ドアグラスランのモール部の内面に形成した係止リップを係合させたので、前記モール部の浮き上がり等を防止することができる。
【0011】
請求項2の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、前記係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部に係合させたので、前記係止リップが所謂返しとなってドアグラスランのパネルからの抜けを防止することができる。
【0012】
請求項3の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に、前記係止リップの先端部を前記開口穴内に導入する係止リップ導入ガイド部を設けたので、ドアグラスランをドアパネルに組付ける際、即ちドアグラスランの略U字状に形成された本体部をドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の間に挿入し、一方の側壁部と一方のモール部の間に前記ドアインナーパネルのフランジ部を挿入し、前記他方の側壁部と他方のモール部の間に前記ドアアウターパネルのフランジ部を挿入して組付ける際に、前記モール部の内面に形成した係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に形成した係止リップ導入ガイド部を介して前記係止リップの先端部を前記開口部内に導入して、前記係止リップの先端部を前記開口部のパネル開口側縁部に確実に係合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5は、第1の実施例を示す。図1は自動車用ドアグラスラン取付固定構造を分解した状態の斜視図、図2は組み立てた状態の斜視図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。
【0014】
図1において1はドアグラスランを示し、該ドアグラスラン1は、ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3の間に取り付けられる。
【0015】
前記ドアグラスラン1は、基底部11aと該基底部11aの両側から略平行に伸びる一対の側壁部、即ちアウター側の側壁部11bおよびインナー側の側壁部11cとにより断面略U字状に形成された本体部11と、前記一対の側壁部11b,11cの先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ即ちアウター側のメインシールリップ12およびインナー側のメインシールリップ13と、前記一対の側壁部11b,11cの先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されているアウター側のモール部14とインナー側のモール部15と、を備えている。前記インナー側のモール部15の内面には、次に説明するドアインナーパネル3のフランジ部31にストッパ32を切り起こし形成した跡の開口部33に係合する係止リップ16が形成されている。前記ドアグラスラン1は、ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3のフランジ部21,31の間に挿入固定される。
【0016】
前記ドアインナーパネル3のフランジ部31には、前記ドアグラスラン1の基底部11aを支持する複数のストッパ32がドアアウターパネル2のフランジ部21側に向けて切り起こし形成されている。
【0017】
前記複数のストッパ32は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31に所定の間隔Dをもって略コ字状の切欠き部を形成し、該コ字状の切欠き部内を前記ドアアウターパネル2のフランジ部21側に向けて略直角に折り曲げることにより形成されている。なお、4はドアガラスである。
【0018】
次に、前記ドアグラスラン1のパネルへの組付けについて説明する。前記ドアグラスラン1の断面略U字状の本体部11を前記ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3のフランジ部21,31の間に挿入するとともに、前記ドアグラスラン1のアウター側の側壁部11bとアウター側のモール部14との間に前記ドアアウターパネル2のフランジ部21を挿入し、前記ドアグラスラン1のインナー側の側壁部11cとインナー側のモール部15の間に前記ドアインナーパネル3のフランジ部31を挿入することにより、図2に示すように、前記ドアグラスラン1は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31のドアアウターパネル2とドアインナーパネル3の間に取り付けられる。そして、図4に示すように、ドアグラスラン1の基底部11aは、ドアインナーパネル3のフランジ部31に切り起こし成形されたストッパ32により支持される。
【0019】
上述したように、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31を前記ドアグラスラン1のインナー側の側壁部11cとインナー側のモール部15の間に挿入すると、前記開口部33以外の箇所においては、図3に示すように、前記インナー側のモール部15の内面に形成した係止リップ16は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面に圧着される。一方、前記開口部33においては、図4、図5に示すように、前記インナー側のモール部15の内面に形成した係止リップ16は、自身の弾発力によって前記開口部33内に侵入し、先端部16aが前記開口部33のパネル開口側縁部33aに係合して、前記ドアグラスラン1が矢印Aで示すパネルからの脱落方向に移動するのを阻止する。
【0020】
図6〜図7は、第2の実施例を示す。この実施例は、前記係止リップ16の先端部16aを前記開口部33内に導入し易くするための係止リップ導入ガイド部34を、前記開口部33のパネル開口側縁部33aの両側部に設けた場合を示している。
【0021】
図8に2点鎖線で示すように、前記係止リップ16が長すぎるなどして、該係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とがオーバーラップすると、前記係止リップ16の先端部16aが前記開口部33内に導入され難くなる。
【0022】
前記係止リップ導入ガイド部34は、前記係止リップ16の先端部16aの前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少、オーバーラップするような場合でも確実に前記係止リップ16の先端部16aを、前記開口部55のパネル開口側縁部33aに係合させるためのものである。
【0023】
前記係止リップ導入ガイド部34の高さH1は、前記開口部33の中央部の高さH2よりも大に形成されている。そして、前記開口部33の中央部においては、係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少、オーバーラップするような場合でも前記開口部33の両側部の係止リップ導入ガイド部34においては、前記係止リップ導入ガイド部34の高さH1と前記開口部33の中央部の高さH2の差H3で前記オーバーラップを吸収除去して、前記係止リップ16の先端部16aが前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面がオーバーラップするのを未然に防止して、前記開口部33の両側部の係止リップ導入ガイド部34から前記係止リップ16の先端部16aを開口部33内に確実に導入することができるようにしている。詳述すると図9に示すように、前記係止リップ導入ガイド部34では、係止リップ導入ガイド側縁部34aが前記差H3の分だけ、前記パネル開口側縁部33aより開口部33側に位置する。したがって、前記開口部33の中央部で前記係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少オーバーラップする場合でも、前記係止リップ導入ガイド部34では、前記係止リップ16の先端部16aを確実に導入することができ、図8の実線形状で示すように、それに引き込まれるように前記開口部33に前記係止リップ16の先端部16aを確実に導入することができる。他の構成は、第1の実施例の場合と同じであるので同一構成部分には同一符合を付して重複する説明を省略する。なお、前記第1、第2の実施例においては、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31側にストッパ32を切り起こし形成した場合を示したが、ドアアウターパネル2のフランジ部21側にストッパ32を切り起こし形成しても、或いはドアインナーパネル3のフランジ部31とドアアウターパネル2のフランジ部21の両方にストッパ32を切り起こし形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の自動車用ドアグラスラン取付固定構造を分解した状態の斜視図。
【図2】組み立てた状態の斜視図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】係止リップ部分の拡大図。
【図6】第2の実施例の斜視図。
【図7】第2の実施例の作用を示す斜視図。
【図8】図7のA−A断面図。
【図9】図7のB−B断面図。
【図10】従来例の断面図。
【図11】他の従来例の断面図。
【符号の説明】
【0025】
1…ドアグラスラン、2…ドアアウターパネル、3…ドアインナーパネル、11…略U字状の本体部、11a…基底部、11b,11c…一対の側壁部、12,13…一対のメインシールリップ、14,15…一対のモール部、16…係止リップ、21…ドアアウターパネルのフランジ部、31…ドアインナーパネルのフランジ部、32…ストッパ、33…ストッパを切り起こし形成した跡の開口部、34…係止リップ導入ガイド部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアグラスラン取付固定構造に関し、特にチャンネル部材を使用することなく、チャンネル部材を使用したのと同様にドアグラスランを位置決めできるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のドアグラスランとして図10に示すものが知られている。前記ドアグラスラン101は、基底部102と該基底部102の両側から略平行に伸びる一対の側壁部103,104とにより断面略U字状に形成された本体部105と、前記一対の側壁部103,104の先端部から基底部102に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ106,107と、前記一対の側壁部103,104の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部108,109と、を備えている。
【0003】
前記ドアグラスラン101は、ドアインナーパネル201のフランジ部202とドアアウターパネル204のフランジ部205間に前記略U字状の本体部105を挿入するとともに、前記一方の側壁部103と一方のモール部108の間に前記ドアインナーパネル201のフランジ部202を挿入し、前記他方の側壁部104と他方のモール部109の間に前記ドアアウターパネル203のフランジ部204を挿入することによりドアに取付けられている。
【0004】
前記ドアインナーパネル201のフランジ部202とドアアウターパネル203のフランジ部204間にはチャンネル部材205が取付けられていて、該チャンネル部材205により前記ドアグラスラン101の基底部102が支持されている。なお、206はドアガラスである。(例えば特許文献1)
また、図11に示すように、ドアインナーパネル201にスポット溶接206等によりストッパ部材208を取付け、該ストッパ部材208により前記ドアグラスラン101の基底部102を支持するようにしたものも開発されている。(例えば特許文献2)
前記チャンネル部材205やストッパ部材208は、ドアガラス206の昇降時に前記基底部102が押されて動くことにより前記モール部108,109の先端がドアインナーパネル201やドアアウターパネル203の表面から浮き上がり、これらパネル201,204との間に隙間が発生するのを防止する作用をなしている。
【特許文献1】実開平6−74445号公報
【特許文献2】特開2003−260934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、上述したようにチャンネル部材205やストッパ部材208をドアインナーパネル201やドアアウターパネル203に取付ける構成になっていたために、部品点数が増えるとともに、チャンネル部材205やストッパ部材208をドアインナーパネル201やドアアウターパネル203に取付けるためのスポット溶接207等の取付け作業が必要になり、このためコストが高くなるという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、前記従来の問題点を解決し、チャンネル部材やストッパ部材等の部材を使用することなく、ドアインナーパネルとドアアウターパネルの間にドアグラスランを取付けることのできる自動車用ドアグラスラン取付固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、基底部と該基底部の両側から略平行に伸びる一対の側壁部とにより断面略U字状に形成された本体部と、前記一対の側壁部の先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップと、前記一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部と、を備えたドアグラスランを、所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入固定する自動車用ドアグラスラン取付固定構造であって、
前記所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことにより前記ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入した前記ドアグラスランの基底部を支持するストッパをパネルと一体に形成するとともに、前記ドアグラスランのモール部の内面には、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に係合可能な係止リップを設けた。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の自動車用ドアグラスラン取付固定構造において、
前記係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部に係合させた。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の自動車用ドアグラスラン取付固定構造において、
前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に、前記係止リップの先端部を前記開口部内に導入する係止リップ導入ガイド部を設けた。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことによりこれと一体に形成したストッパでドアグラスランの基底部を支持する構成にしたので、前記従来のチャンネル部材やストッパ部材等の部材が不必要になり、そのぶん部品点数を減らすことができるとともに、スポット溶接等によるこれら部品の取付け作業も無くすことができる。また、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に前記ドアグラスランのモール部の内面に形成した係止リップを係合させたので、前記モール部の浮き上がり等を防止することができる。
【0011】
請求項2の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、前記係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部に係合させたので、前記係止リップが所謂返しとなってドアグラスランのパネルからの抜けを防止することができる。
【0012】
請求項3の自動車用ドアグラスラン取付固定構造にあっては、前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に、前記係止リップの先端部を前記開口穴内に導入する係止リップ導入ガイド部を設けたので、ドアグラスランをドアパネルに組付ける際、即ちドアグラスランの略U字状に形成された本体部をドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の間に挿入し、一方の側壁部と一方のモール部の間に前記ドアインナーパネルのフランジ部を挿入し、前記他方の側壁部と他方のモール部の間に前記ドアアウターパネルのフランジ部を挿入して組付ける際に、前記モール部の内面に形成した係止リップの先端部を、前記開口部のパネル開口側縁部の両側部に形成した係止リップ導入ガイド部を介して前記係止リップの先端部を前記開口部内に導入して、前記係止リップの先端部を前記開口部のパネル開口側縁部に確実に係合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5は、第1の実施例を示す。図1は自動車用ドアグラスラン取付固定構造を分解した状態の斜視図、図2は組み立てた状態の斜視図、図3は図2のA−A断面図、図4は図2のB−B断面図である。
【0014】
図1において1はドアグラスランを示し、該ドアグラスラン1は、ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3の間に取り付けられる。
【0015】
前記ドアグラスラン1は、基底部11aと該基底部11aの両側から略平行に伸びる一対の側壁部、即ちアウター側の側壁部11bおよびインナー側の側壁部11cとにより断面略U字状に形成された本体部11と、前記一対の側壁部11b,11cの先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップ即ちアウター側のメインシールリップ12およびインナー側のメインシールリップ13と、前記一対の側壁部11b,11cの先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されているアウター側のモール部14とインナー側のモール部15と、を備えている。前記インナー側のモール部15の内面には、次に説明するドアインナーパネル3のフランジ部31にストッパ32を切り起こし形成した跡の開口部33に係合する係止リップ16が形成されている。前記ドアグラスラン1は、ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3のフランジ部21,31の間に挿入固定される。
【0016】
前記ドアインナーパネル3のフランジ部31には、前記ドアグラスラン1の基底部11aを支持する複数のストッパ32がドアアウターパネル2のフランジ部21側に向けて切り起こし形成されている。
【0017】
前記複数のストッパ32は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31に所定の間隔Dをもって略コ字状の切欠き部を形成し、該コ字状の切欠き部内を前記ドアアウターパネル2のフランジ部21側に向けて略直角に折り曲げることにより形成されている。なお、4はドアガラスである。
【0018】
次に、前記ドアグラスラン1のパネルへの組付けについて説明する。前記ドアグラスラン1の断面略U字状の本体部11を前記ドアアウターパネル2とドアインナーパネル3のフランジ部21,31の間に挿入するとともに、前記ドアグラスラン1のアウター側の側壁部11bとアウター側のモール部14との間に前記ドアアウターパネル2のフランジ部21を挿入し、前記ドアグラスラン1のインナー側の側壁部11cとインナー側のモール部15の間に前記ドアインナーパネル3のフランジ部31を挿入することにより、図2に示すように、前記ドアグラスラン1は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31のドアアウターパネル2とドアインナーパネル3の間に取り付けられる。そして、図4に示すように、ドアグラスラン1の基底部11aは、ドアインナーパネル3のフランジ部31に切り起こし成形されたストッパ32により支持される。
【0019】
上述したように、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31を前記ドアグラスラン1のインナー側の側壁部11cとインナー側のモール部15の間に挿入すると、前記開口部33以外の箇所においては、図3に示すように、前記インナー側のモール部15の内面に形成した係止リップ16は、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面に圧着される。一方、前記開口部33においては、図4、図5に示すように、前記インナー側のモール部15の内面に形成した係止リップ16は、自身の弾発力によって前記開口部33内に侵入し、先端部16aが前記開口部33のパネル開口側縁部33aに係合して、前記ドアグラスラン1が矢印Aで示すパネルからの脱落方向に移動するのを阻止する。
【0020】
図6〜図7は、第2の実施例を示す。この実施例は、前記係止リップ16の先端部16aを前記開口部33内に導入し易くするための係止リップ導入ガイド部34を、前記開口部33のパネル開口側縁部33aの両側部に設けた場合を示している。
【0021】
図8に2点鎖線で示すように、前記係止リップ16が長すぎるなどして、該係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とがオーバーラップすると、前記係止リップ16の先端部16aが前記開口部33内に導入され難くなる。
【0022】
前記係止リップ導入ガイド部34は、前記係止リップ16の先端部16aの前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少、オーバーラップするような場合でも確実に前記係止リップ16の先端部16aを、前記開口部55のパネル開口側縁部33aに係合させるためのものである。
【0023】
前記係止リップ導入ガイド部34の高さH1は、前記開口部33の中央部の高さH2よりも大に形成されている。そして、前記開口部33の中央部においては、係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少、オーバーラップするような場合でも前記開口部33の両側部の係止リップ導入ガイド部34においては、前記係止リップ導入ガイド部34の高さH1と前記開口部33の中央部の高さH2の差H3で前記オーバーラップを吸収除去して、前記係止リップ16の先端部16aが前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面がオーバーラップするのを未然に防止して、前記開口部33の両側部の係止リップ導入ガイド部34から前記係止リップ16の先端部16aを開口部33内に確実に導入することができるようにしている。詳述すると図9に示すように、前記係止リップ導入ガイド部34では、係止リップ導入ガイド側縁部34aが前記差H3の分だけ、前記パネル開口側縁部33aより開口部33側に位置する。したがって、前記開口部33の中央部で前記係止リップ16の先端部16aと前記ドアインナーパネル3のフランジ部31の外面とが多少オーバーラップする場合でも、前記係止リップ導入ガイド部34では、前記係止リップ16の先端部16aを確実に導入することができ、図8の実線形状で示すように、それに引き込まれるように前記開口部33に前記係止リップ16の先端部16aを確実に導入することができる。他の構成は、第1の実施例の場合と同じであるので同一構成部分には同一符合を付して重複する説明を省略する。なお、前記第1、第2の実施例においては、前記ドアインナーパネル3のフランジ部31側にストッパ32を切り起こし形成した場合を示したが、ドアアウターパネル2のフランジ部21側にストッパ32を切り起こし形成しても、或いはドアインナーパネル3のフランジ部31とドアアウターパネル2のフランジ部21の両方にストッパ32を切り起こし形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の自動車用ドアグラスラン取付固定構造を分解した状態の斜視図。
【図2】組み立てた状態の斜視図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】図2のB−B断面図。
【図5】係止リップ部分の拡大図。
【図6】第2の実施例の斜視図。
【図7】第2の実施例の作用を示す斜視図。
【図8】図7のA−A断面図。
【図9】図7のB−B断面図。
【図10】従来例の断面図。
【図11】他の従来例の断面図。
【符号の説明】
【0025】
1…ドアグラスラン、2…ドアアウターパネル、3…ドアインナーパネル、11…略U字状の本体部、11a…基底部、11b,11c…一対の側壁部、12,13…一対のメインシールリップ、14,15…一対のモール部、16…係止リップ、21…ドアアウターパネルのフランジ部、31…ドアインナーパネルのフランジ部、32…ストッパ、33…ストッパを切り起こし形成した跡の開口部、34…係止リップ導入ガイド部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底部と該基底部の両側から略平行に伸びる一対の側壁部とにより断面略U字状に形成された本体部と、前記一対の側壁部の先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップと、前記一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部と、を備えたドアグラスランを、所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入固定する自動車用ドアグラスラン取付固定構造であって、
前記所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことにより、前記ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入した前記ドアグラスランの基底部を支持するストッパを前記フランジ部と一体に形成するとともに、前記ドアグラスランのモール部の内面には、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に係合可能な係止リップを設けたことを特徴とする自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【請求項2】
前記係止リップは、先端部が前記開口部のパネル開口側縁部に係合していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【請求項3】
前記開口部のパネル開口側縁部の両側部には、前記係止リップの先端を前記開口部内に導入する係止リップ導入ガイド部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【請求項1】
基底部と該基底部の両側から略平行に伸びる一対の側壁部とにより断面略U字状に形成された本体部と、前記一対の側壁部の先端部から基底部に向けて傾斜した状態で伸びる一対のメインシールリップと、前記一対の側壁部の先端部から外側に向けて折り返した状態で形成されている一対のモール部と、を備えたドアグラスランを、所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入固定する自動車用ドアグラスラン取付固定構造であって、
前記所定の間隔をもって対向するドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部の少なくとも何れか一方のフランジ部を他方のフランジ部に向けて切り起こすことにより、前記ドアインナーパネルとドアアウターパネルのフランジ部間に挿入した前記ドアグラスランの基底部を支持するストッパを前記フランジ部と一体に形成するとともに、前記ドアグラスランのモール部の内面には、前記ストッパを切り起こした跡の開口部に係合可能な係止リップを設けたことを特徴とする自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【請求項2】
前記係止リップは、先端部が前記開口部のパネル開口側縁部に係合していることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【請求項3】
前記開口部のパネル開口側縁部の両側部には、前記係止リップの先端を前記開口部内に導入する係止リップ導入ガイド部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用ドアグラスラン取付固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−30680(P2007−30680A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216627(P2005−216627)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】
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