説明

自動車用ドアトリム

【課題】ウェストガーニッシュに設ける当てリブを高さ寸法の低い形状にすることによって、成形時のショートショット現象を起こさずしかも不織布テープ等の吸音材を堅固に貼付可能とすべくなし、たとえインナーシールを装着するためにウェストガーニッシュを使用したとしても、トリム本体のウェスト部に補強構成を施した。
【解決手段】ウェストガーニッシュ6にトリム本体2側に開口する凹部8を形成し、凹部8の底壁部8bにおける外側壁面8b−1に、ドア本体1への当てリブ9を形成し、且つ、トリム本体2のウェスト部3に補強リブ3−1を起立形成し、補強リブ3−1をウェストガーニッシュ6に形成した凹部8内に収容するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア本体の車室側を美装するための自動車用ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動車用ドアトリムは、一般には図1に示すように、ドア本体1の車室側を美装するトリム本体2を有し、トリム本体2の略中央部にアームレスト部2−1を膨出形成すると共に、トリム本体2の下部側にポケット部2−2或いはスピーカグリル2−3などを設けて構成している。
【0003】
また、トリム本体2の上部側を構成するウェスト部3における車外側には、ドア本体1に昇降可能に装着されたドアガラス4からの車室内への雨水や騒音等の侵入を防止するためのインナーシール5が取着されている(図6参照)。
【0004】
インナーシール5は、ドア本体1或いはトリム本体2の形状等が許す場合には、ウェスト部3に取着フランジ部(不図示)を形成することにより直接トリム本体2に取着するようにしているが、成形金型の型抜きの制約等により、取着フランジ部をウェスト部に一体に形成することができないような場合には、ウェスト部3に装着した別体構成のウェストガーニッシュ6を介在させて、取着するようにしている。
【0005】
かかるウェストガーニッシュ6は、一般に、樹脂成形品で構成されており、トリム本体2のウェスト部3の自動車前後方向に延在添設するような形状を有しており、しかも、ドア本体1側の構成にも配慮しなければならない。
【0006】
そこで、従来のウェストガーニッシュ6は、図7に示すように、自動車の車幅方向に略半円形に弯曲し、自動車の前後方向に延在するように形成されており、一端側に形成した取付け孔6aにウェスト部3の車外側に突出形成した溶着ボス部3aを嵌合し、溶着ボス部3aの取付け孔6aから突出させた部位を高周波溶着等により加締めることにより、ウェスト部3に装着するようになっている。
【0007】
更に、ウェストガーニッシュ6をウェスト部3に装着した際に、ウェストガーニッシュ6は、その内壁に突出形成した複数の当てリブ9をドア本体1側に当接させることによって、ドア本体1に支持されるように構成している(図6参照)。
【0008】
そして、当てリブ9がドア本体1に当接したことにより、打音や擦れ音等の異音の発生を防止するために、当てリブ9の先端に、図7に示すように、不織布製テープ等の吸音材7を貼付することにより、構成している(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平7−78036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、ウェストガーニッシュ6は、自動車前後方向に長尺となっており、しかも、略半円形等の均一な断面形状に形成されているために、強度的に弱く成形時の条件や使用環境によって非常に変形しやすく、例えば、直射日光が直接当たるウェスト部3に近接しているために、熱変形しやすい部品であるといえる。
【0010】
また、ウェストガーニッシュ6に設けた当てリブ9は、ドア本体1に当接させるためには、高さ寸法を大きくする必要があって、このために射出成形等の成形金型側の当てリブ形成凹部が底深い形状にならざるを得ず、その分当てリブ形成凹部の先端まで溶融樹脂が行き渡らずにショートショット(欠肉現象)を起こしてしまうおそれがあり、また、高さ寸法が高い故に当てリブ9自体の剛性が低くなり、乗員がトリム本体2のウェスト部3にひじを乗せたような際に生ずる荷重に対し十分に耐えられないおそれもある。
【0011】
また、当てリブ9とドア本体1との間に介在する不織製テープ等の吸音材7は、当てリブ9の先端部に急角度で折り返すように貼付せざるを得ず、このために、貼付のために折り曲げた状態から元の形状への復帰力が常に働いており、この復帰力によって当てリブ9から剥れやすくなっているといえる。
【0012】
更には、トリム本体2のウェスト部3は、ウェストガーニッシュ6が装着されるために、ウェストガーニッシュ6自体が邪魔となって補強リブ等を設けることができずに、トリム本体2自体の剛性を低くしてしまうおそれがある。
【0013】
そこで、本発明は、第1の目的として、ウェストガーニッシュに設ける当てリブを高さ寸法の低い形状にすることによって、成形時のショートショット現象を起こさずしかも不織布テープ等の吸音材を堅固に貼付可能とすべくなした自動車用ドアトリムを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、第2の目的として、たとえインナーシールを装着するためにウェストガーニッシュを使用したとしても、トリム本体のウェスト部に補強構成を施すことができ、トリム本体の高剛性構造化を可能とした自動車用ドアトリムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の自動車用ドアトリムは、かかる第1の目的を達成するために、トリム本体におけるウェスト部に、ウェストガーニッシュを取着して、該ウェストガーニッシュにインナーシールを装着するようになした自動車用ドアトリムにおいて、前記ウェエストガーニッシュに前記トリム本体側に開口する凹部を形成し、該凹部の底壁部における外側壁面に、前記ドア本体への当てリブを形成したことを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成を有することから、ウェストガーニッシュにトリム本体側に開口する凹部を形成したことにより、ウェストガーニッシュの断面剛性を高めることができ、成形時の条件や使用環境によって変形しにくい構成にすることができる。
【0017】
また、ウェストガーニッシュに設けた当てリブは、凹部の底壁部における外側壁面に形成したことによりドア本体に近付かせた部位に形成されることになって、高さ寸法を低い形状にすることができて、成形時のショートショット現象を起こさずしかも凹部の存在により剛性を高くして、乗員がトリム本体のウェスト部に肘を載せたような際に生ずる荷重に対し十分に耐えられる構造をとることができる。
【0018】
また、当てリブは、凹部の底壁部における外側壁面に高さ寸法の低い形状に形成できることから、不織布テープ等の吸音材を当該当てリブを跨ぐようにして凹部の底壁部における外側壁面に貼付したとしても、当該吸音材を急角度で折り返さなくても貼付することができ、しかも、吸音材を底壁部の外側壁面における比較的平らな箇所まで貼付することができて、貼付後に吸音材に復帰力が生じることによる剥れ現象を充分抑制することができる。
【0019】
また、本発明は、前記トリム本体の前記ウェスト部に補強リブを起立形成し、該補強リブを前記ウェストガーニッシュに形成した凹部内に収容するように構成したことを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成により、ウェスト部に起立形成した補強リブは、ウェストガーニッシュの形成した凹部内に収容されていることから、たとえ当該ウェスト部にウェストガーニッシュを装着したとしても、当該ウェストガーニッシュに邪魔されることなく設けることができ、ウェスト部の強度剛性とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ウェストガーニッシュにトリム本体側に開口する凹部を形成したことにより、ウェストガーニッシュの断面剛性を高めることができ、成形時の条件や使用環境によって変形しにくい構成にすることができ、また、ウェストガーニッシュに設けた当てリブは、凹部の底壁部における外側壁面に形成していることによりドア本体により近付いた部位に形成されることになって、高さ寸法の低い形状を小さくすることができ、成形時のショートショット現象を起こさずしかも凹部の存在により剛性を高くして、乗員がトリム本体のウェスト部に肘を乗せたような際に生ずる荷重に対し十分に耐えられる構造をとることができ、しかも、当てリブが、凹部の底壁部における外側壁面に高さの低い形状に形成できることから、不織布テープ等の吸音材を当該当てリブを跨ぐようにして凹部の底壁部における外側壁面に貼付することから、当該吸音材を急角度で折り返さなくても貼付することができ、しかも、吸音材を底壁部の外側壁面における比較的平らな箇所まで貼付することができて、貼付後に吸音材生じる復帰力を吸収して剥れ現象を充分抑制することができる。
【0022】
更に、本発明は、トリム本体のウェスト部に補強リブを起立形成し、補強リブをウェストガーニッシュに形成した凹部内に収容するように構成することにより、ウェスト部に起立形成した補強リブが、ウェストガーニッシュの形成した凹部内に収容されていることになって、たとえ当該ウェスト部にウェストガーニッシュを装着したとしても、当該ウェストガーニッシュに邪魔されることなく設けることができ、ウェスト部の強度剛性とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による自動車用ドアトリムの実施例について、図面を用いて説明する。
【0024】
図1は一般的な自動車用ドアトリムをドア本体に装着した状態を車室側から描画した斜視図、図2は本発明に係る第1の実施例を採用した場合の図1のA−A断面図、図3は本発明の第1の実施例に係るウェストガーニッシュの一部分を描画した斜視図、図4は図3のB矢視図である。なお、以下の説明においては、従来の技術に対応する部分について、同一符号を付して説明することとする。
【0025】
先ず、図1によれば、自動車用ドアトリムは、ドア本体1の車室側を美装するトリム本体2を有し、トリム本体2の略中央部にアームレスト部2−1を膨出形成すると共に、トリム本体2の下部側にポケット部2−2或いはスピーカグリル2−3などを設けて構成している。
【0026】
また、トリム本体2の上部は、図2に明白に示すように、車外側に弯曲するように形成してウェスト部3となっており、ウェスト部3には、ウェストガーニッシュ6が装着されている。
【0027】
ウェストガーニッシュ6は、樹脂成形品で構成されており、図3に示すように、自動車の車幅方向に略半円形に弯曲するとともに、自動車の前後方向に延在するように形成されており、一辺6−1側に複数個形成した取付け孔(不図示)に、ウェスト部3の車外側に突出形成した溶着ボス部(不図示)を嵌合し、当該溶着ボス部の取付け孔6aから突出させた部位を高周波溶着等により加締めることにより、ウェスト部3に装着されるように構成されている。
【0028】
ウェストガーニッシュ6の一辺6−1側から頂上弯曲部6−2に至る間において、互いに離間する位置において複数個の凹部8が形成されている。
【0029】
凹部8は、その上部及びウェストガーニッシュ6の一辺6−1側すなわちトリム本体2側が開口し、自動車の前後方向及びウェストガーニッシュ6の他辺6−3方向において側壁部8aを有するとともに、下部が有底部に形成されて、底壁部8bを有して構成している。
【0030】
底壁部8bの外側壁面8b−1には、図4に示すように、凸状を呈するドア本体1への当てリブ9が形成されている。当てリブ9は、自動車の車幅方向に延在するように形成されて、ウェストガーニッシュ6をウェスト部3に装着した際に、ドア本体1側に当接させることによって、ウェストガーニッシュ6をドア本体1に対して支持するように構成することになる。
【0031】
そして、当てリブ9を跨るように、外側壁面8b−1には、不織布等のから構成する吸音材7が貼付されており、吸音材7により、当てリブ9がドア本体1に当接したことにより、打音や擦れ音等の異音の発生を防止するように構成されることになる。
【0032】
また、ウェストガーニッシュ6の他辺6−3には、ドア本体1に昇降可能に装着されたドアガラス4からの車室内への雨水や騒音等の侵入を防止するためのインナーシール5が取着されている(図2参照)。
【0033】
そして、インナーシール5をウェストガーニッシュ6に取着するために、インナーシール5には、取付け片5aが複数個形成され、取付け片5aをウェストガーニッシュ6の他辺6−3に形成した取付け孔6aに弾性的に変形させながら嵌合する様に構成されている。
【0034】
更に、トリム本体2のウェスト部3には、ウェストガーニッシュ6の凹部8に収容されるように対向した位置に、補強リブ3−1が起立形成されている。
【0035】
以上のように構成する場合、ウェストガーニッシュ6は、トリム本体2側に開口する凹部8を形成したことにより断面剛性を高めることができ、成形時の条件や使用環境によって変形しにくい構成にすることができる。
【0036】
また、ウェストガーニッシュ6に設けた当てリブ9は、凹部8の底壁部8bにおける外側壁面8b−1に形成したことによりドア本体1に近付いた部位に形成されることになって、高さ寸法を低い形状にすることができて、成形時のショートショット現象を起こさずしかも剛性を高くして、乗員がトリム本体2のウェスト部3に肘を載せたような際に生ずる荷重に対し十分に耐えられる構造をとることができる。
【0037】
また、当てリブ9は、凹部8の底壁部8bにおける外側壁面8b−1に高さ寸法の低い形状に形成できることから、不織布テープ等の吸音材7を当てリブ9を跨ぐようにして凹部8の底壁部8bにおける外側壁面8b−1に貼付したとしても、吸音材7を急角度で折り返さなくても貼付することができ、しかも、吸音材7を底壁部8bにおける比較的平らな箇所に構成されている外側壁面8b−1に貼付することができて、貼付後に吸音材7に復帰力が生じることによる剥れ現象を充分抑制することができる。
【0038】
また、トリム本体2のウェスト部3に補強リブ3−1を起立形成したとしても、補強リブ3−1は、ウェストガーニッシュ6に形成した凹部8内に収容することができることから、ウェスト部3にウェストガーニッシュ6を装着したとしても、ウェストガーニッシュ6に邪魔されることなく設けることができ、ウェスト部3の強度剛性とすることができる。
【0039】
次に、図5を用いて、本発明に係る他の実施例について説明する。
【0040】
図5に示す実施例では、凹部8の底壁部8bにおける外側壁面8b−1に形成する当てリブ9が、ビード状に形成した点、上記実施例と相違しており、その他の構成を同じくしているものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、凹部を有することによるウェストガーニッシュ自体の剛性及びドアトリム本体への当てリブの剛性を高めることができると共に当てリブに貼付した吸音材を剥れ難くし、併せて、ウェストガーニッシュに凹部を存在させることによりウェスト部に補強リブを形成することができて剛性アップに寄与することができるために、自動車のドア本体の車室側を美装するための自動車用ドアトリム等に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一般的な自動車用ドアトリムをドア本体に装着した状態を車室側から描画した斜視図である。
【図2】本発明に係る第1の実施例を採用した場合の図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るウェストガーニッシュの一部分を描画した斜視図である。
【図4】図3のB矢視方向から描画した斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施例を採用したウェストガーニッシュの図3と同様な矢視方向から描画した部分斜視図である。
【図6】従来におけるウェストガーニッシュの一部分をドア本体のウェスト部分と共に描画した分解斜視図である。
【図7】同じく、ウェストガーニッシュの下面側から描画した斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ドア本体
2 トリム本体
3 ウェスト部
3−1 補強リブ
5 インナーシール
8 凹部
8b 底壁部
8b−1 外側壁面
9 当てリブ







【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリム本体におけるウェスト部に、ウェストガーニッシュを取着して、該ウェストガーニッシュにインナーシールを装着するようになした自動車用ドアトリムにおいて、前記ウェエストガーニッシュに前記トリム本体側に開口する凹部を形成し、該凹部の底壁部における外側壁面に、前記ドア本体への当てリブを形成したことを特徴とする自動車用ドアトリム。
【請求項2】
前記トリム本体のウェスト部に補強リブを起立形成し、該補強リブを前記ウェストガーニッシュに形成した凹部内に収容するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアトリム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−248736(P2009−248736A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98781(P2008−98781)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】