説明

自動車用廃熱利用システム

【課題】ランキン回路を有した自動車用廃熱利用システムであって、膨張機の作動を断接クラッチを介して直接に内燃機関に伝達するとともに作動流体を送出するポンプと膨張機とを同軸上に一体に配し、断接クラッチの異常時であっても、ポンプと膨張機の過回転を防止でき、ポンプと膨張機とが内燃機関の不要な負荷とならないようにできる自動車用廃熱利用システムを提供する。
【解決手段】制御手段(60)からの断接クラッチ(48)の接続制御指令及び切断制御指令に対し断接クラッチの作動異常が発生したことが異常検出手段(54)により検出されると、膨張機(42)への作動流体の流通を制限手段(36,38)により制限するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用廃熱利用システムに係り、詳しくは、車両の内燃機関の廃熱を回収して内燃機関の駆動力をアシストする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自動車用廃熱利用システムは、作動流体としての冷媒の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器、該蒸発器を経由した作動流体を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機、該膨張機にて発生した回転駆動力が伝達される被動力伝達装置、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を上記蒸発器に送出するポンプが順次介装されたランキン回路を備えている。
そして、このような自動車用廃熱利用システムにおいて、例えば、ポンプと膨張機と被動力伝達装置としての発電機兼電動機とを同軸上に配し、ランキン回路による膨張機の作動時には発電機兼電動機を発電機として機能させるとともにポンプを回転させる構成の廃熱利用装置が公知である(特許文献1)。
【0003】
ところで、このような構成の廃熱利用装置では、ランキン回路による膨張機の作動時に発電機に異常が生じると、通常は発電機による発電を中止して膨張機を無負荷状態にするようにしている。しかしながら、膨張機を無負荷状態にすると、膨張機が許容回転速度を超えて加速することとなり、膨張機が騒音や振動を発したり、破損したりすることとなり好ましいことではない。
そこで、上記廃熱利用装置では、例えば膨張機の異常時に膨張機に流入する作動流体の流れを停止する一方、膨張機バイパス流路に作動流体を流すようにして、膨張機の加速を防止するように図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−170185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、被動力伝達装置が内燃機関である構成の自動車用廃熱利用システムも開発されており、かかる構成では、ランキン回路による膨張機の作動を断接クラッチを介して直接に内燃機関に伝達して内燃機関の駆動をアシストするようにしている。つまり、断接クラッチを断接制御することで、膨張機の生じる駆動力を内燃機関の駆動力として適宜利用するようにしている。
このような構成の廃熱利用システムでは、断接クラッチの作動に異常を生じた場合、例えば断接クラッチが接続状態から意図せずに切断状態となった場合、膨張機の生じる駆動力を内燃機関の駆動力として適切に利用できず膨張機が過回転して上記同様の問題を引き起こすことになり、或いは断接クラッチを切断状態にしようとしても接続状態のままであると膨張機が内燃機関の不要な負荷となり、好ましいことではない。
【0006】
特に、最近では上記作動流体を送出するポンプと膨張機とを同軸上に一体に配した廃熱利用システムも開発されており、このような廃熱利用システムでは、膨張機とともにポンプも過回転するために膨張機の過回転が助長され、或いは、膨張機とともにポンプも内燃機関の不要な負荷になるという問題がある。
この点に関し、上記特許文献1には、膨張機の作動を断接クラッチを介して直接に内燃機関に伝達する構成についての断接クラッチの異常時対応については何ら言及されておらず、特にポンプと膨張機とが内燃機関の不要な負荷とならないようにすることについては何ら示唆さえもされていない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、ランキン回路を有した自動車用廃熱利用システムであって、膨張機の作動を断接クラッチを介して直接に内燃機関に伝達するとともに作動流体を送出するポンプと膨張機とを同軸上に一体に配し、断接クラッチの異常時であっても、ポンプと膨張機の過回転を防止でき、ポンプと膨張機とが内燃機関の不要な負荷とならないようにできる自動車用廃熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、請求項1の自動車用廃熱利用システムは、作動流体の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器、該蒸発器を経由した作動流体を膨張させる膨張機、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を前記蒸発器に送出するポンプが順次介装されたランキン回路を有した自動車用廃熱利用システムであって、前記膨張機と前記ポンプとは同軸にして流体機械として一体に構成され、該流体機械の回転軸と内燃機関の回転軸とを断接クラッチを介して連結する伝達手段と、前記断接クラッチの接続制御及び切断制御を行う制御手段と、前記循環路に設けられ、前記膨張機への作動流体の流通を制限する制限手段とを備え、該制限手段は、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し前記断接クラッチの作動異常が発生したことを検出する異常検出手段を含み、該異常検出手段により前記断接クラッチの作動異常が検出されると、前記膨張機への作動流体の流通を制限することを特徴とする。
【0009】
請求項2の自動車用廃熱利用システムでは、請求項1において、前記制限手段は、作動流体の流れを前記膨張機を迂回させるバイパス手段であって、前記異常検出手段により前記断接クラッチの作動異常が検出されると、該バイパス手段により作動流体の流れを迂回させることを特徴とする。
請求項3の自動車用廃熱利用システムでは、請求項1または2において、前記制限手段は、前記膨張機への作動流体の流れを停止させる遮断手段であって、前記異常検出手段により、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令に対し前記断接クラッチの作動異常が検出されると、該遮断手段により作動流体の流れを停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項4の自動車用廃熱利用システムでは、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記断接クラッチは電磁式クラッチであって電力の供給を受けて断接作動するものであり、該断接クラッチへ供給される電流を計測する電流計を備え、前記異常検出手段は、前記電流計であって、前記制限手段は、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し前記電流計により計測される電流に異常が検出されると、前記膨張機への作動流体の流通を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の自動車用廃熱利用システムによれば、ランキン回路を有した自動車用廃熱利用システムであって、膨張機とポンプとが同軸にして流体機械として一体に構成され、流体機械の回転軸と内燃機関の回転軸とが断接クラッチを介して伝達手段により連結されている場合において、制御手段による断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し断接クラッチの作動異常が発生したことが異常検出手段により検出されると、膨張機への作動流体の流通を制限手段により制限するようにしたので、制御手段により断接クラッチの接続制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチが正常に接続作動しない場合に、膨張機への作動流体の流通が制限され、膨張機が内燃機関の駆動力をアシストすることなく空転することによる膨張機及びポンプの過回転を防止でき、膨張機及びポンプの過回転による騒音や振動を防止し、膨張機及びポンプの故障を防止することができる。
【0012】
また、制御手段により断接クラッチの切断制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチが正常に切断作動しない場合に、膨張機への作動流体の流通が制限され、内燃機関により強制的に作動させられる膨張機の仕事量を小さくして内燃機関の不要な負荷を軽減することができ、内燃機関における燃料消費量を抑制して車両における燃費の悪化を防止することができる。
【0013】
請求項2の自動車用廃熱利用システムによれば、制限手段は作動流体の流れを膨張機を迂回させるバイパス手段であるので、制御手段により断接クラッチの接続制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチが正常に接続作動しない場合に、バイパス手段により作動流体の流れを迂回させることにより、膨張機の上流側における作動流体の高圧の圧力を下流側に逃がすようにでき、良好に膨張機及びポンプの過回転を防止できる。
また、制御手段により断接クラッチの切断制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチが正常に切断作動しない場合に、バイパス手段により作動流体の流れを迂回させることにより、良好に内燃機関の不要な負荷を軽減することができる。
【0014】
請求項3の自動車用廃熱利用システムによれば、制限手段は膨張機への作動流体の流れを停止させる遮断手段であるので、制御手段により断接クラッチの接続制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチが正常に接続作動しない場合に、遮断手段により膨張機への作動流体の流れを停止させることにより、良好に膨張機及びポンプの過回転を防止できる。
請求項4の自動車用廃熱利用システムによれば、制御手段による断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し電流計により計測される電流に異常が検出されると、膨張機への作動流体の流通を制限するので、簡単な構成で断接クラッチの作動異常を検出でき、自動車用廃熱利用システムの簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る自動車用廃熱利用システムを模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施例に係る自動車用廃熱利用システムを模式的に示す図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第3実施例に係る自動車用廃熱利用システムを模式的に示す図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
先ず、第1実施例について説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る自動車用廃熱利用システムを模式的に示した図である。
廃熱利用システム1は、例えば車両に搭載され、エンジン(内燃機関)10、冷却水回路20、ランキン回路30から構成されている。
エンジン10は、車両に駆動力を与える駆動源であり、エンジン10のクランクシャフトから延びる主軸11の先端にはプーリ12が設けられている。また、エンジン10には主軸11の回転速度、即ちエンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ16が設けられている。
【0017】
冷却水回路20は、エンジン10の冷却水通路に連通された冷却水の循環路22に、冷却水の流れ方向で視て順に、ランキン蒸発器24、何れも図示しないラジエータ、サーモスタット、水ポンプなどが介装されて閉回路を構成し、エンジン10を冷却している。
ランキン回路30は、作動流体の循環路32に、作動流体の流れ方向で視て順に、上記ランキン蒸発器24、ランキン蒸発器24にて加熱され過熱状態となる作動流体の膨張によって回転駆動力を発生する膨張機42、ランキンコンデンサ(凝縮器)34、作動流体を循環させるポンプ44などが介装されて閉回路を構成し、ランキン蒸発器24にて冷却水回路20を循環する冷却水との間で熱交換を行うことでエンジン10の廃熱を回収している。
【0018】
ところで、ランキン回路30の上記膨張機42及びポンプ44は、流体機械40として一体に構成されている。即ち、膨張機42とポンプ44とが同一の回転軸45によって回転作動する流体機械40として一体に構成されている。そして、流体機械40には、回転軸45、即ち膨張機42の膨張機回転速度Niを検出する膨張機回転速度センサ43が設けられている。
ここに、膨張機42は例えばスクロール型膨張機であり、また、ポンプ44は例えば低圧の作動流体を高圧に高めることの可能な可変容量式ポンプであるが、これらの詳細については公知であり、ここでは説明を省略する。
【0019】
流体機械40の回転軸45の先端には、プーリ46が設けられており、当該プーリ46と上記エンジン10側のプーリ12とは無端状のベルト14で連結されている(伝達手段)。
プーリ46には、プーリ46と回転軸45との連通と遮断を行う断接クラッチ48が内装されており、これによりプーリ46ひいては膨張機42及びポンプ44をプーリ12ひいてはエンジン10と同期回転させたり、或いは、プーリ46ひいては膨張機42及びポンプ44をプーリ12ひいてはエンジン10から解放したりすることが可能である。
断接クラッチ48は、例えば電磁式クラッチからなり、当該電磁式クラッチからなる断接クラッチ48の電磁コイル(図示せず)には、リレースイッチ49を介してバッテリ50が接続され、リレースイッチ49は電子コントロールユニット(ECU)(制御手段)60に電気的に接続されている。そして、リレースイッチ49とバッテリ50とを繋ぐ電力線52には電流計(異常検出手段)54が設けられている。
【0020】
また、ランキン回路30において、循環路32の作動流体の流れ方向で視て膨張機42よりも上流側部分には、電磁開閉弁(遮断弁)(遮断手段、制限手段)36が介装されており、これにより循環路32を膨張機42に向けて流れる作動流体の流通と遮断とを切換可能である。
さらに、ランキン回路30において、循環路32の膨張機42よりも上流側部分と下流側部分との間には、膨張機42をバイパスするバイパス流路37が設けられており、バイパス流路37には上記電磁開閉弁36と同様の機能を有する電磁開閉弁(バイパス弁)(バイパス手段、制限手段)38が介装されている。これにより、循環路32を流れる作動流体を膨張機42に流したり、膨張機42を迂回して短絡させたりすることが可能である。
【0021】
ECU60は、CPUやメモリ等から構成された制御装置であり、ECU60の入力側にはエンジン回転速度センサ16、膨張機回転速度センサ43、電流計54等の各種センサ類が電気的に接続され、出力側には電磁開閉弁36、電磁開閉弁38、断接クラッチ48のリレースイッチ49等のデバイス類が電気的に接続されている。
そして、ECU60は、膨張機42でエンジン10をアシスト可能な場合には断接クラッチ48を接続し、アシストできない場合には断接クラッチ48を切断するよう指令を出す。
【0022】
また、ECU60は、上記ECU60からの断接クラッチ48の制御指令に対し電流計54により検出される電流値情報や膨張機回転速度Nexとエンジン回転速度Neとの情報に基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定し、電磁開閉弁36及び電磁開閉弁38を開閉制御する。
以下、このように構成された本発明に係る自動車用廃熱利用システムの作動内容、即ち断接クラッチ48の異常処理制御内容について説明する。
図2には、第1実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、同フローチャートに基づき説明する。
【0023】
ステップS10では、膨張機42でエンジン10のアシストが可能な状態か否かを判断する。判別結果が真(Yes)で膨張機42によりアシスト可能であれば、ステップS12に進む。
ステップS12では、リレースイッチ49に制御指令を発し、例えばパイロット電流を供給して断接クラッチ48を接続するように制御する。
ステップS14では、電流計54により所定電流値I0(例えば、0アンペア)よりも大きな電流Iが検出されるか否か、即ちバッテリ50から断接クラッチ48の電磁コイルに所定電流値I0よりも大きな電流Iが流れているか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で電流計54により計測された電流Iが所定電流値I0よりも大きい場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48に正常に電力が供給されているとみなすことができ、ステップS16に進む。
【0024】
ステップS16では、さらに修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが等しいか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが等しく一致していれば、断接クラッチ48は正常に作動して接続され、エンジン10と流体機械40ひいては膨張機42とは同期回転しているとみなすことができ、ステップS18に進む。
ステップS18では、電磁開閉弁36を開制御する。そして、ステップS20では、電磁開閉弁38を閉制御する。即ち、通常の状態として作動流体が膨張機42を流れるようにする。
【0025】
上記ステップS14の判別結果が偽(No)で電流計54により計測された電流Iが所定電流値I0以下である場合、或いは、ステップS16の判別結果が偽(No)で修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが異なり膨張機回転速度Nexが修正エンジン回転速度ρNeよりも大きい場合には、断接クラッチ48は正常に接続しておらず異常を来していると判定することができ、ステップS22に進む。
ステップS22では、電磁開閉弁36を閉制御する。そして、ステップS24では、電磁開閉弁38を開制御し、循環路32の膨張機42の上流側部分と下流側部分とを短絡させる。即ち、作動流体が膨張機42を迂回して流れ、膨張機42に流れないようにする。
【0026】
このようにすれば、ECU60から断接クラッチ48を接続させるべく制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチ48が正常に接続しない場合には、膨張機42はエンジン10の駆動力をアシストすることなく空転し、特に当該流体機械40では膨張機42とともにポンプ44も回転することから、膨張機42の上流側で作動流体が高圧に維持され、膨張機42及びポンプ44が過回転し続けてしまうことになるのであるが、膨張機42に作動流体を流すことなく膨張機42の上流側の作動流体の高圧の圧力を下流側に逃がすことが可能となり、膨張機42及びポンプ44の過回転が防止される。これにより、膨張機42及びポンプ44の過回転による騒音や振動を防止することができ、膨張機42及びポンプ44の故障を防止することができる。
【0027】
一方、上記ステップS10の判別結果が偽(No)で膨張機42によりエンジン10のアシストができない状態の場合には、ステップS26に進み、リレースイッチ49にパイロット電流を供給することなく断接クラッチ48を切断するように制御指令を発する。
ステップS28では、電流計54により所定電流値I0以下(例えば、0アンペア)の電流Iが検出されるか否か、即ちバッテリ50から断接クラッチ48の電磁コイルに流れる電流Iが所定電流値I0以下であるか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で電流計54により計測された電流Iが所定電流値I0以下の場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48には電力が供給されておらず正常、即ち断接クラッチ48が切断状態とみなすことができ、ステップS30に進む。
【0028】
ステップS30では、さらに修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが等しいか否かを判別する。判別結果が偽(No)で修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが異なり膨張機回転速度Nexが修正エンジン回転速度ρNe以下であれば、断接クラッチ48は正常に作動して切断されていると判定することができ、上記ステップS18に進む。
上記ステップS28の判別結果が偽(No)で電流計54により計測された電流Iが所定電流値I0より大きい場合、或いは、ステップS30の判別結果が真(Yes)で修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとが等しく一致しており、エンジン10と流体機械40ひいては膨張機42とが同期回転してしまっているような場合には、断接クラッチ48は正常に作動しておらず接続状態であり異常を来していると判定することができ、ステップS32に進む。
【0029】
ステップS32では、電磁開閉弁38を開制御し、循環路32の膨張機42の上流側部分と下流側部分とを短絡させる。即ち、作動流体が膨張機42を迂回して流れるようにする。なお、電磁開閉弁36については開状態を保持する。
このようにすれば、ECU60から断接クラッチ48を切断させるべく制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチ48が正常に作動せず接続状態である場合には、膨張機42は強制的にエンジン10と同期回転させられてしまい、不要にエンジン10の負荷となってしまうことになるのであるが、膨張機42を流れる作動流体の量を減らして強制的に作動させられる膨張機42の仕事量を小さくすることができ、エンジン10の負荷を軽減することができる。
【0030】
以上のように、本発明に係る自動車用廃熱利用システムでは、ECU60からプーリ46に内装された断接クラッチ48を接続させるべく制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチ48が正常に接続作動しない場合、電磁開閉弁36を閉制御して膨張機42への作動流体の流れを停止するとともに、電磁開閉弁38を開制御して循環路32を短絡させ、作動流体を膨張機42を迂回して流すようにしているので、膨張機42及びポンプ44の過回転を防止でき、膨張機42及びポンプ44の過回転による騒音や振動を防止し、膨張機42及びポンプ44の故障を防止することができる。
【0031】
また、ECU60からプーリ46に内装された断接クラッチ48を切断させるべく制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチ48が正常に切断作動しない場合、電磁開閉弁38を開制御して循環路32を短絡させ、作動流体を膨張機42を迂回して流すようにしているので、膨張機42を流れる作動流体の量を減らしてエンジン10により強制的に作動させられる膨張機42の仕事量を小さくすることができ、エンジン10の不要な負荷を軽減することができる。これにより、エンジン10における燃料消費量を抑制でき、車両における燃費の悪化を防止することができる。
【0032】
また、ここでは、ステップS14やステップS28において電流計54により検出された電流Iに基づき、さらにはステップS16やステップS30においてエンジン回転速度Neと膨張機回転速度Nexとの比較に基づき断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしているので、断接クラッチ48の作動異常がバッテリ50から断接クラッチ48までの間の電力供給系にある場合であっても、断接クラッチ48自体に問題がある場合であっても、確実に断接クラッチ48の異常処理を行うことが可能である。
なお、ここでは、上記の如く電流計54により計測された電流I及びエンジン回転速度Neと膨張機回転速度Nexとの比較に基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしているが、電流計54により計測された電流Iのみに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしてもよい。或いは、エンジン回転速度Neと膨張機回転速度Nexとの比較のみに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしてもよい。このようにすれば、簡単な構成にして断接クラッチ48の作動異常を判定でき、自動車用廃熱利用システムの簡素化を図ることができる。
【0033】
次に、第2実施例について説明する。
第2実施例では、上記第1実施例の図1のシステム構成に対し、電流計54を電圧計(異常検出手段)55に置き換えた点が異なっており、ここでは第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
図3に示すように、本発明の第2実施例では、自動車用廃熱利用システムは、リレースイッチ49とバッテリ50とを繋ぐ電力線52に電圧計55が設けられて構成されている。
このように構成された自動車用廃熱利用システムでは、ECU60は、上記ECU60からの断接クラッチ48の制御指令に対し電圧計55により検出される電圧値情報、及び、膨張機回転速度Nexと修正エンジン回転速度ρNeとの一致性に基づいて、断接クラッチ48の作動異常を判定し、電磁開閉弁36及び電磁開閉弁38を開閉制御する。
【0034】
即ち、図4には、第2実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示す図2同様のフローチャートが示されているが、ステップS14’において、電圧計55により所定電圧値E0(例えば、0ボルト)よりも大きな電圧Eが検出されるか否か、即ちバッテリ50から断接クラッチ48の電磁コイルに所定電圧値E0よりも大きな電圧Eが印加されているか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で電圧計55により計測された電圧Eが所定電圧値E0よりも大きい場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48に正常に電力が供給されているとみなすことができ、ステップS16に進む。
一方、ステップS14’の判別結果が偽(No)で電圧計55により計測された電圧Eが所定電圧値E0以下である場合には、断接クラッチ48は正常に作動しておらず異常を来していると判定することができ、ステップS22に進む。
【0035】
また、ステップS28’において、電圧計55により所定電圧値E0以下(例えば、0ボルト)の電圧Eが検出されるか否か、即ちバッテリ50から断接クラッチ48の電磁コイルに印加される電圧Eが所定電圧値E0以下であるか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で電圧計55により計測された電圧Eが所定電圧値E0以下である場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48に電力が供給されておらず正常、即ち切断状態とみなすことができ、ステップS30に進む。
一方、ステップS28’の判別結果が偽(No)で電圧計55により計測された電圧Eが所定電圧値E0より大きい場合には、断接クラッチ48は正常に作動しておらず異常、即ち接続状態と判定することができ、ステップS32に進む。
【0036】
このように、電圧計55により検出された電圧Eに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしても、上記第1実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、図4によれば、第2実施例においても、電圧計55により検出された電圧E及び修正エンジン回転速度ρNeと膨張機回転速度Nexとの比較に基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしているが、電圧計55により検出された電圧Eのみに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしてもよい。これにより、自動車用廃熱利用システムの簡素化を図ることができる。
【0037】
次に、第3実施例について説明する。
第3実施例では、上記第1実施例の図1のシステム構成に対し、作動流体の圧力を測定する圧力計(異常検出手段)33と圧力計(異常検出手段)35を設けた点が異なっており、ここでは第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
図5に示すように、本発明の第3実施例では、自動車用廃熱利用システムは、例えば循環路32のうちランキンコンデンサ34の上流側部分を流れる作動流体の圧力を検出する圧力計33とランキンコンデンサ34の下流側部分を流れる作動流体の圧力を検出する圧力計35を備えて構成されている。
このように構成された自動車用廃熱利用システムでは、ECU60は、上記ECU60からの断接クラッチ48の制御指令に対し、圧力計33により検出されるランキンコンデンサ34の上流側部分を流れる作動流体の圧力と圧力計35により検出されるランキンコンデンサ34の下流側部分を流れる作動流体の圧力との差圧(圧力損失)から作動流体の流量を推定することができる。従って、当該推定された作動流体の流量に基づいて、断接クラッチ48の作動異常を判定し、電磁開閉弁36及び電磁開閉弁38を開閉制御する。
【0038】
即ち、図6には、第3実施例に係る断接クラッチ異常処理制御の制御ルーチンを示す図2同様のフローチャートが示されているが、ステップS16’において、圧力計33により検出された圧力と圧力計35により検出された圧力との差圧から推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0以下であるか否かを判別する。ここに、所定流量Q0は、例えばエンジン回転速度Neに応じて定まる値である。判別結果が真(Yes)で推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0以下と判定された場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48が正常に接続しているとみなすことができ、ステップS18に進む。
【0039】
一方、判別結果が偽(No)で推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0より大きいと判定された場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48は正常に作動しておらず切断していると判定することができ、ステップS22に進む。
また、ステップS30’において、推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0より小さいか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0より小さいと判定された場合には、ECU60からの制御指令に対して断接クラッチ48が正常に作動している、即ち切断状態とみなすことができ、ステップS18に進む。
一方、ステップS30’の判別結果が偽(No)で推定した作動流体の流量Qが所定流量Q0以上である場合には、断接クラッチ48は正常に作動しておらず接続していると判定することができ、ステップS32に進む。
【0040】
このように、推定した作動流体の流量Qに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしても、上記第1実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、図6によれば、第2実施例においても、電流計54により検出された電流I及び推定した作動流体の流量Qに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしているが、推定した作動流体の流量Qのみに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしてもよい。
また、当該第3実施例においても、電流計54により検出された電流Iに代えて、上記第2実施例のように、電圧計55により検出された電圧Eに基づいて断接クラッチ48の作動異常を判定するようにしてもよい。
【0041】
また、ここでは、圧力計33により検出された圧力と圧力計35により検出された圧力との差圧から作動流体の流量を推定するようにしているが、ランキン回路30の循環路32に流量計を設け、流量計によって作動流体の流量を直接に検出するようにしてもよい。
以上で本発明の実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、第1乃至第3実施例において、電磁開閉弁(遮断弁)36と電磁開閉弁(バイパス弁)38とを備え、これら電磁開閉弁36及び電磁開閉弁38を開閉制御するようにしているが、例えばECU60から断接クラッチ48を接続させるべく制御指令を行ったにも拘わらず断接クラッチ48が正常に接続作動しない場合において、電磁開閉弁(遮断弁)36及び電磁開閉弁(バイパス弁)38のいずれか一方だけを制御するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、電磁開閉弁(遮断弁)36と電磁開閉弁(バイパス弁)38とを備えているが、電磁開閉弁(バイパス弁)38だけを備えてシステムを構成し、電磁開閉弁38だけを開閉制御するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、ランキン回路30は、ランキンコンデンサ34を介し冷却水回路20を循環する冷却水との間で熱交換を行うことでエンジン10の廃熱を回収しているが、これに代えて或いはこれと共に、例えばエンジン10の排気通路を流れる排ガスとの間で熱交換を行うことでエンジン10の廃熱を回収するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 廃熱利用システム
10 エンジン
12 プーリ(伝達手段)
14 ベルト(伝達手段)
16 エンジン回転速度センサ
20 冷却水回路
30 ランキン回路
33、35 圧力計(異常検出手段)
36 電磁開閉弁(遮断弁)(遮断手段、制限手段)
37 バイパス流路
38 電磁開閉弁(バイパス弁)(バイパス手段、制限手段)
40 流体機械
42 膨張機
43 膨張機回転速度センサ
44 ポンプ
46 プーリ(伝達手段)
48 断接クラッチ
49 リレースイッチ
50 バッテリ
54 電流計(異常検出手段)
55 電圧計(異常検出手段)
60 ECU(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器、該蒸発器を経由した作動流体を膨張させる膨張機、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を前記蒸発器に送出するポンプが順次介装されたランキン回路を有した自動車用廃熱利用システムであって、
前記膨張機と前記ポンプとは同軸にして流体機械として一体に構成され、
該流体機械の回転軸と内燃機関の回転軸とを断接クラッチを介して連結する伝達手段と、
前記断接クラッチの接続制御及び切断制御を行う制御手段と、
前記循環路に設けられ、前記膨張機への作動流体の流通を制限する制限手段とを備え、
該制限手段は、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し前記断接クラッチの作動異常が発生したことを検出する異常検出手段を含み、該異常検出手段により前記断接クラッチの作動異常が検出されると、前記膨張機への作動流体の流通を制限することを特徴とする自動車用廃熱利用システム。
【請求項2】
前記制限手段は、作動流体の流れを前記膨張機を迂回させるバイパス手段であって、前記異常検出手段により前記断接クラッチの作動異常が検出されると、該バイパス手段により作動流体の流れを迂回させることを特徴とする、請求項1記載の自動車用廃熱利用システム。
【請求項3】
前記制限手段は、前記膨張機への作動流体の流れを停止させる遮断手段であって、前記異常検出手段により、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令に対し前記断接クラッチの作動異常が検出されると、該遮断手段により作動流体の流れを停止させることを特徴とする、請求項1または2記載の自動車用廃熱利用システム。
【請求項4】
前記断接クラッチは電磁式クラッチであって電力の供給を受けて断接作動するものであり、該断接クラッチへ供給される電流を計測する電流計を備え、
前記異常検出手段は、前記電流計であって、
前記制限手段は、前記制御手段による前記断接クラッチの接続制御指令及び切断制御指令に対し前記電流計により計測される電流に異常が検出されると、前記膨張機への作動流体の流通を制限することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の自動車用廃熱利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−193690(P2012−193690A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59186(P2011−59186)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】